健康情報: 附子粳米湯(ぶしこうべいとう) の 効能・効果 と 副作用

2012年11月4日日曜日

附子粳米湯(ぶしこうべいとう) の 効能・効果 と 副作用

一般用漢方製剤承認基準 
附子粳米湯(ぶしこうべいとう)〔成分・分量〕 加工ブシ0.3-1.5、半夏5-8、大棗2.5-3、甘草1-2.5、粳米6-8

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力虚弱で、腹部が冷えて痛み、腹が鳴るものの次の諸症:
胃痛、腹痛、嘔吐、急性胃腸炎



漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
 附子粳米湯(ぶしこうべいとう)
附子〇・五~一・ 粳米七・ 半夏五・ 大棗三・ 甘草一・五 
本方の目標は、大建中湯と同じく、腹部に寒冷を覚えて、疼痛が激甚なる場合に用いるのであるが、大建中湯は蠕動不安による疼痛を主とし、本方は腹中が雷鳴して疼痛するものを治するのである。嘔吐は大建中湯の場合と同じく、あることもあり、ないこともある。
本方は附子・半夏・甘草・大棗・粳米の五味からなり附子は乾姜よりも高度の温性刺激薬にして、且つ鎮痛の効があり、半夏・粳米は嘔吐を止め、甘草・大棗は 急迫症状を治するから、この場合には、附子と組んで疼痛を緩解する効がある。本方は腸の疝痛・胃痙攣・腹膜炎等に使用する。解急蜀椒湯は大建中湯と此方と を合して作った薬方であって、二方の證が合併して現われた場合に用いる。
【解急蜀椒湯】(かいきゅうしょくしょうとう)
粳米八・ 半夏五・ 人参 大棗各三・ 蜀椒二・ 乾姜 甘草各一・五 附子〇・五 膠飴二〇



漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊 
6 建中湯類(けんちゅうとうるい)
建中湯類は、桂枝湯からの変方として考えることもできるが、桂枝湯は、おもに表虚を、建中湯類は、おもに裏虚にをつかさどるので項を改めた。
建中湯類は、体全体が虚しているが、特に中焦(腹部)が虚し、疲労を訴えるものである。腹直筋の拘攣や蠕動亢進などを認めるが、腹部をおさえると底力のないものに用いられる。また、虚弱体質者の体質改善薬としても繁用される。
 7 附子粳米湯(ぶしこうべいとう)  (金匱要略)
〔粳米(こうべい)六、半夏(はんげ)五、大棗三(たいそう)三、甘草(かんぞう)一・五、附子(ぶし)○・五〕
本方は、裏の虚寒証で新陳代謝の衰退したものに用いられる。したがって、腹部の寒冷は強く、腹痛、腹満、腹鳴、嘔吐を目標とする。本方證の腹痛は、激しく痛むのを特色とする。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、附子粳米湯を呈するものが多い。
一 胃痙攣、胃潰瘍、胃下垂症、腸狭窄症、腸閉塞症、膵臓炎、胆石症その他の消化器系疾患。
一 そのほか、子宮癌、腎臓結石など。



臨床応用 漢方處方解説』 矢数道明著 創元社刊
127 附子粳米湯(ぶしこうべいとう) 〔金匱要略〕
   附子〇・五~一・〇 粳米七・〇 半夏五・〇 大棗三・〇 甘草二・五

応用
 腹中に寒冷を覚え、激しい疼痛を発する場合に用いる。
 本方は主として胃痙攣・腸疝痛・幽門狭窄症・胃潰瘍・胆石症・膵臓炎・腹膜炎等に用いられ、また腹中に塊りがあって、両脚痛むもの、子宮癌などにて腹痛・腹鳴・嘔吐のあるものに応用される。

目標
 腹中の雷鳴と、激甚なる疼痛・嘔吐・悪寒を目標とする。虚寒性の激しい腹痛と嘔吐で腹鳴をともなうものである。
 脈は軟弱で、腹に水気を蓄え、腹部も軟弱にして膨満し、しかもぐさぐさと軟かく、腹中に雷鳴がある。腹診するとき何となく腹中に冷気を覚える。
 胸脇逆満とあるのは、下より胸脇部に向かって気が上逆することである。



方解
 附子は腹中の寒気を温め、甘草・大棗・粳米の甘味の薬は協力して雷鳴切痛を緩和する。半夏は逆満と嘔吐を治す。
 それら諸薬の協力によって腹中の寒を温め、急迫を緩めるものである。

加減
 痛み激しく、心胸に及び、蠕動不安をともなうものには大建中湯を合方し、解急蜀椒湯(かいきゅうしょくしょうとう)とする。外台にこの方あり、疝気、留飲家、腹中癒着あって寒冷に際し腹痛を発するものにこの証がある。
 外台に、「寒疝を主り、心腹刺す如く、臍を繞り、腹中尽く痛み、自汗出で絶せんと欲す」というのがその主治である。

主治
 金匱要略(腹満寒疝病門)に、「腹中寒気、雷鳴切痛、胸脇逆満、嘔吐スルハ附子粳米湯之ヲ主ル」とある。
 勿誤方函口訣には、「此方に粳米(コウベイ;うるち玄米)ヲ用ユル者ハ、切痛ヲ主トスルナリ。外台腹痛ニ秫米(ジュツマイ;もちごめ)一味ヲ用ユ、徴トスベシ。此方ハ寒疝ノ雷鳴切痛ノミナラズ、澼飲ノ腹痛甚シキ者ニ宜シ、又外台ニハ霍乱(急性食中毒)嘔吐に用ヒテアリ」とある。
 古方薬嚢には、「腹張りてゴロゴロと鳴り、腸が切られるほど痛み、脇腹から胸中へ押し上げてきて嘔吐する者、腹は発作の時または寒さを感じて余計にはり出し、病落ち着くか腹温まれば、張り減する者」とある。


鑑別
 ○芍薬甘草湯61腹痛・嘔吐や雷鳴はない)
 ○烏頭桂枝湯(腹痛・嘔吐や腹鳴はない)
 ○大烏頭煎(腹痛・嘔吐や腹鳴はない)
 ○大建中湯91腹痛蠕動亢進がある)


治例
 (一)両脚拘攣
 壮年の男子、梅毒を病むこと七年に及び、両脚拘攣して起たず、三十余人も医を変えたが治らない。脈遅緩にして腹に他の病はない。ただ臍下に塊があって築々と動悸を打っている。余はこれを疝と断じ、附子粳米湯を与えること三十日にして、徐々に脚が伸び、二百日の服薬で全治した。
(永富独嘯庵翁、漫遊雑記)

 (二)下痢腰痛
 四十余歳の婦人、下利と腰痛に悩み、膝や脛に少し浮腫があり、脈は沈んで結して絶えんとしている。食欲も衰えて一日に一~二杯しか食べない。腹底に塊があって、発作が起ると意識不明になる。余はこれを診て、この下利は腹底の塊によるものであり、腰に久しい寒冷があるからだとして、附子粳米湯を与え、絶対に酒色を禁じ、思慮を絶たしめた。若し酒色を慎まず、思慮を労して発作あるも、それは薬の罪ではないとさとして渡した。
 五十日ほどで八~九割はとれた。ところがたまたまその夫が女中を愛するのを知り、嫉妬して大いに怒ったところ、諸証再び悪化した。余は侍女に暇を出さしめ、再び附子粳米湯を与え、百余日にして全治した。
(永富独嘯庵翁、漫遊雑記)

 (三)寒疝症(腸疝痛)
 樋口長吉という魚商が、魚肉を過食し、上腹部の刺痛甚しく死せんばかりであった。備急円を与え吐利数回して痛みはなくなったので、黄連湯を与えたところ、ある夜ひどい嘔吐を発して命食口に入らず、苦悶すること甚しい。そこで甘草粉蜜湯を服させ嘔吐はやっと治った。その後寒疝痛を発し、少腹急痛し、雷鳴あり、甚しいときは胸中に迫って、自汗出でてまさに死せんばかりである。
 先ず附子粳米湯を与え、発作のときは大建中湯を兼用し、数十日で諸症全く癒えた。(浅田宗伯翁、橘窓書影)

 (四)寒疝症(腸疝痛)
 丹羽侯の老臣、鈴木与衛門の娘、年は十九、下腹に腫塊があって、心下部から下腹まで拘攣して痛み、時々上方に衝き上げて痛み甚しく、手を以て撫でることもできない。黙々として食事も欲しくない。脈は微細で足が冷え、いままでの医師は鬱労(ノイローゼ)だといって薬をくれない。私は診てこれは寒疝(腸に腫瘤や狭窄などがあり、寒さによって疝痛を起こす病)であるといって、解急蜀椒湯を与えた。数日間服用すると、突き上げるのが止んだ。下腹の腫塊も小さくなった。ただ腹皮拘急して、飲食が進まないので、小建中湯に蜀椒を加えて与えているうちにだんだんとよくなった。(浅田宗伯翁、橘窓書影巻二)

 (五)大腹痛(腸閉塞の疑い)
 一男子五十歳、大腹痛を発し便通がない。医師は腸閉塞かまたは腸の捻転ならんと言う。腸鳴があり、寒気によって症状が重くなるということから附子粳米湯を与えたところ一服で痛みおさまり、便通があって全治した。便は普通の軟便であったが、これは裏寒による便秘であったわけである。 (荒木性次氏、古方薬嚢)


※繞
[音]ニョウ(ネウ)(呉) ジョウ(ゼウ)(漢) 
[訓]まとう めぐる 〈ニョウ〉めぐる。かこむ。
「囲繞」 〈ジョウ〉
1 まとう。まつわる。「纏繞(てんじょう)」
2 めぐる。「囲繞」

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