健康情報: 苓桂味甘湯(りょうけいみかんとう) の 効能・効果 と 副作用

2012年11月10日土曜日

苓桂味甘湯(りょうけいみかんとう) の 効能・効果 と 副作用

一般用漢方製剤承認基準
苓桂味甘湯(りょうけいみかんとう)
〔成分・分量〕 茯苓4-6、甘草2-3、桂皮4、五味子2.5-3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、手足が冷えて顔が赤くなるものの次の諸症:
のぼせ、動悸、からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感



漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
11 駆水剤(くすいざい)
駆水剤は、水の偏在による各種の症状(前出、 気血水の項参照)に用いられる。駆水剤には、表の瘀水を去る麻黄剤、消化機能の衰退によって起こ る胃内停水を去る裏証Ⅰ、新陳代謝が衰えたために起こった水の偏在を治す裏証Ⅱなどもあるが、ここでは瘀水の位置が、半表半裏または裏に近いところにある ものについてのべる。
10 苓桂味甘湯(りょうけいみかんとう)
〔茯苓(ぶくりょう)六、桂枝(けいし)四、五味子(ごみし)三、甘草(かんぞう)二〕
本方は、苓桂五味甘草湯ともいわれ、苓桂朮甘湯の白朮のかわりに五味子を加えたものである。腎が虚し、瘀水があり、咳嗽(咳をするたびに上気して顔を赤くする)、動悸、息切れ、手足の冷え、麻痺、心下振水音などを目標とする。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、苓桂味甘湯證を呈するものが多い。
一 感冒、気管支炎、肺炎、気管支喘息、肺結核その他の呼吸器系疾患。
一 そのほか、子宮出血、陰部湿疹など。



金匱要略解説(39)』三潴忠道
苓桂五味甘草湯
 ここから気の上衝について論が移ります。
 「青竜湯下し已って、多唾し、口燥き、寸脈沈、尺脈微、手足厥逆し、気小腹より胸咽に上衝し、手足痺れ、その面翕熱して、酔える状のごとく、よってまた陰股に下流して、小便難く、時にまた冒するものは茯苓桂枝五味甘草湯を与えて、その気衝を治せ」。
 この「気小腹より胸咽に上衝し」のところは、「気小腹より上り、胸咽を衝き」とも読めます。どちらでもよいと思いますが、返り点のつけ方と送り仮名に矛盾がみられます。
 ここの文章は、この前の「小青竜湯これを主る」の続きですから、青竜湯とは小青竜湯のことでしょう。小青竜湯を飲み終って、小青竜湯の証は去ったのですが、今度は唾がたくさん出て、口が乾燥してきた。脈をみると、寸脈は沈で、尺脈は微である。ここで寸脈とは寸口の脈で、表裏の表における病変をみていると考えます。尺は尺中の脈で、裏の病変を判断します。小青竜湯は元来が表症に適応となり、また麻黄(マオウ)が配剤されて実証に用いるわけですから、この脈からは、小青竜湯証はすでに消失しています。
 そして手足が冷え、気が下腹部から胸や喉に衝き上げてくる、この気の上衝が動悸として下から衝き上げるように感じられれば、これは典型的な奔豚という病態です。ここでは動悸があるのかどうかはっきりしませんが、どちらでもよいと思います。そして手足がしびれ、顔が酒にでも酔ったようにパーッと赤くなる。ここに「翕熱して」とありますが、この熱は然の誤りで、正しくは「翕然」かと思われます。翕とは鳥が飛び立つ時の羽の形で、多くのものが一斉に起こるとか、集まるといった意味です。翕然とは『大漢和辞典』によれば、来り集まるさまとなっています。顔面に気がさあっと上衝して行く様子を形容しているのだと思います。
 その衝き上げた気がまた下の方へ流れて行き、小便の出が悪くなり、時々頭に何か被っているようにぼうっとする。このような時には、茯苓桂枝五味甘草湯を与えて、気が上衝してくるのを治しなさいということです。
 次にこの処方内容と、煎じ方、飲み方が出てきますが、今度は「桂苓五味甘草湯(ケイリョウゴミカンゾウトウ)の方」と方剤名が変わっています。さらに平常私どもは、苓桂五味甘草湯(リョウケイゴミカンゾウトウ)、あるいは苓桂味甘湯(リョウケイミカントウ)と略して呼んでいますし、同一の方剤がいくつかの方剤名で呼ばれているわけで、注意が必要です。
 「桂苓五味甘草湯の方。
 茯苓(四両)、桂枝(四両、皮を去る)、甘草(三両)、五味子(半升)。
 右四味、水八升をもって、煮て三升を取り、滓を去り、三つに分かちて温服す」。
 ここで甘草は、恐らく炙甘草、つまり火で炙った甘草を用いるべきものだと思います。
 本方は、顔が真っ赤になる反面、手足が冷える人、一種の自律神経発作である奔豚気病などで使用され、各種の呼吸器疾患、滲出性中耳炎、排尿異常、高血圧などに応用されています。



和訓 類聚方広義 重校薬徴』 吉益東洞原著 尾台榕堂校註 西山英雄訓訳
四〇、苓桂五味甘草湯 126 127 129
 心下悸し、上衝し、咳して急迫する者を治す。
 茯苓桂枝各四両(八分) 甘草三両(六分) 五味子半斤(一銭)
右四味、水八升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、分け温めて三服す。
(一水合六勺を以て、煮て六勺を取る。)
 ○欬逆倚息し、臥すること得ざるは、小青竜湯128之を主る。青竜湯下し已って、多唾口燥し、「寸脈沈、尺脈微にして、」手足厥逆し、気小腹従り胸咽に上衝し、手足痺し、其の面翕然として酔状の如く、因て復た陰股に下流し、小便難く、時に復た冒する者は、茯苓桂枝五味甘草湯を与え、其の気衝を治せ。

126、以上の五方は其の症を論じ薬を用うるに、其の言、純粋にあらず、然して痰飲咳嗽喘急等の症に選用して皆効あり、宜しく症に随い南呂丸、陥胸丸、十棗湯、白散、紫円等を兼用すべし。

127、此の方は苓桂朮甘湯と僅かに一味易(かわ)るのみ、故に其の症も亦略ぼ相似る。学者宜しく其の方意、方用を意会し(心して、えとくせよ)以て之を施すべし。

128、小青竜湯は、内飲、外邪感動して触発し、咳喘を作す者を治す。

129、以下の五方は、発熱、悪風、頭痛、乾嘔の外候なく、 伹だ内飲により、咳嗽、嘔逆、欝冒、浮腫等を発する者を主治す。若し咳家にして稠涎膠痰、血絲、腐臭、蒸熱、口燥等の症ある者は五方の得て治する所に非らざるなり。


類聚方広義解説(14)』 寺師 睦宗
 次に苓桂五味甘草湯(リョウケイゴミカンゾウトウ)について述べます。まず、条文を読んでみましょう。『方極』には「上衝し、咳して急迫せる者を治す」とあります。みぞおちの下に動悸があってのぼせ、咳が非常に出て急迫するものを治すということです。
 煎じ方は前と同じですが、「茯苓、桂枝、甘草、五味子の四味を、水八升をもって煮て三升を取り、滓を去って、分かち温めて三服す」とあります。
 本文は「欬逆倚息(がいぎゃくきそく)、臥すを得ず。小青竜湯(ショウセイリュウトウ)之を主る。青竜湯下し已り、多唾口燥、寸脈沈、尺脈微、手足厥逆して、気、小腹より胸咽に上衝し、手足痺し、その面翕然(きゅうぜん)として酔状のごとく、よってまた陰股に下流し、小便難く、時にまた冒する者は、茯苓桂枝五味甘草湯を与え、その気衝を治す」とあります。この条文は『金匱要略』の痰飲欬嗽篇に記載されております。
 条文を説明しますと、咳こんで呼吸が苦しく、ものに倚りかかって息をし、横臥できないものは小青竜湯で治しなさい。小青竜湯を服用したらたくさんの唾が出てきて、口がはしゃぎ、寸口の脈は沈で、尺中の脈は微である。手足は冷えて、下腹から胸、喉に向かって気がつきあがって手足がしびれ、顔は酔っぱらったように赤くなる。また気が陰茎部に向かって下ると小便が出にくくなる。その上にまた頭冒(ずぼう)するようなものは、苓桂五味甘草湯を与えると、その気の上衝を治すことができるということです。
 これをもう少し整理して解説してみます。小青竜湯を服用したら表を発した(体表の発熱、頭痛悪寒を除いた)ので表の抵抗力が衰えて虚してきたためき、下腹から気が上衝してきたわけです。表が虚した症状として、寸口の脈が沈となり、尺中の脈が微となって、手足が冷えて痺れるということです。
 気の上衝の症状として、下腹から胸や喉に向かって気がつきあげてきて、顔がぽっと酒で酔ったように赤くなり、口がはしゃく。またその気が陰茎部に下ると小便が出にくくなる。たくさん唾が出るということは、まだ水毒が残っているために起こる症状であるということです。このように気が上衝したり下降したりす識場合は、苓桂五味甘草湯を与えて気を治しなさい、という意味であります。
 本方の運用は、神経症、ノイローゼ、更年期障害、血の道症、ヒステリー、めまい、中耳炎、内耳炎、メニエール症候群、半身不随、のぼせ症、歯の痛み、皮膚炎、蕁麻疹などに用います。
 次の本方の治験例を述べましょう。浸出液の多い中耳炎の例です。23才の婦人で、昨日より右の耳が塞がって痛むといって来院しました。脈は沈微でほとんどわかりません。上衝(のぼせ)はいかと尋ねたら、数日前から食事をしたり、人と話をすると時々顔がほてってのぼせるといいます。同時に頭に何かかぶっている(冒がある)感じがし、その時は足が非常に冷たいといいます。
 患者は中耳炎を心配しています。そこでこれに苓桂五味甘草湯を与えましたところ、たった一日で耳の遠いのも、塞がったのも、のぼせるのも、足の冷えるのもよくなったというものです。これは大塚敬節先生の症例です。
 次は灼熱熱と痒みのある皮膚炎の症例です。26才の男性で、数日前から顔一面にかぶれができて、灼熱感と瘙痒があり、その部分は赤味を帯び、その上に粟粒状の発疹ができて、ところどころに水泡があります。近く結婚式をあげることになっているのに、こんなお化けのような顔では式場に出られないとあせっています。
 以上の症状から、苓桂五味甘草湯の証ではないかと考えて、次のようなことを聞きました。「足が冷えて頭に何かかぶったような感じはありませんか」「その通りです」「小便は遠くありませんか」「それは気づきません」ということです。脈は沈微であろうと考えながら見てみますと、浮、小でした。
 そこでどうしようかと迷いましたが、ほかによい思案もないので、苓桂五味甘草湯を与えました。ところが患者が三日目に来院した時は、顔面の赤味はうすれ、痒みもだいぶとれていました。七日分飲んで非常によくなって、めでたく結婚式を挙げることができました。
 苓桂五味甘草湯の脈は「寸口の脈は沈、尺中の脈は微」と書いてありますが、この症例は浮、小であったが効いたということは、必ずしも脈にとらわれる必要はないのだということを経験したというもので、これも大塚敬節先生の治験例です。
 次は歯槽膿漏の例です。21才の男子で、歯医者に行ったら、全部歯を抜いて入歯にするようにすすめられたという。診察してみると、前に胃潰瘍にかかって漢方を飲んだことがあるといいます。今度の症状は、足が冷えてのぼせ、頭に何かかぶった、いわゆる頭冒の感じがあり、胃の具合はよくないということです。
 そこで歯の痛みや、歯齦炎によく用い現れる苓桂五味甘草湯を用いたところ、経過もよくなり、抜歯せずにすんだということです。これは諏訪重雄先生の治験例です。
 苓桂五味甘草湯の鑑別診断を申し上げます。先ほど申しましたように、大塚先生は中耳炎を治されたのですが、中耳炎から来る難聴にも用います。これには葛根湯を用いることもあります。葛根湯の場合は、脈は沈微で、足が冷えるとか、のぼせて酒に酔ったようだというようなことや、小便が少ないということはありません。ここが葛根湯との違いであります。
 もう一つは蘇子降気湯(ソシコウキトウ)で、これも足が冷えてのぼせ、脈は沈で耳鳴りを訴えるものに用いますが、降気湯の場合は、中耳炎に用いることはなく、喘息に用います。
 また麦門冬湯(バクモンドウトウ)は、咳をするたびに上気して顔が赤くなるものに用いますが、苓桂五味甘草湯は、足が冷えて脈が沈んで触れるという点が、麦門冬湯とは違うわけです。


※慢性気管支炎 肺気腫 浸出性中耳炎 浮腫 などに応用。