健康情報: 3月 2012

2012年3月31日土曜日

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊

四物湯の加減方、合方
〔四物湯に黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を合方したもの〕
本方は、黄連解毒湯證(後出、瀉心湯類の項参照)に瘀血の症状をかねたもので、諸出血がつづいて貧血状となり、のぼせ、神経の興奮などを呈する。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、温清飲證を呈するものが多い。
一 月経過多、子宮出血、男子の下血、胃や腸の潰瘍による出血その他の諸出血。
一 皮膚掻痒症、湿疹その他の皮膚疾患。
一 そのほか、高血圧症、神経症など。

冬に悪くなる湿疹(益田総子)
(2)荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)  (一貫堂方)
〔当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)、黄連(おうれん)、黄芩(おんごん)、黄柏(おうばく)、梔子 (しし)、連翹(れんぎょう)、防風(ぼうふう)、薄荷(はっか)、荊芥(けいがい)、甘草(かんぞう)、枳殻(きこく)各一・五、柴胡(さいこ)、白芷 (びゃくし)、桔梗(ききょう)各二〕
本方は、温清飲に桔梗、白芷、連翹、荊芥、防風、薄荷、枳殻、甘草を加えたもので、温清飲の作用を表や上焦、特に首から上の部分に作用させ、上焦の炎症(化膿症)を消散させるもので、体質改善薬としても、しばしば用いられる。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、荊芥連翹湯證を呈するものが多い。
一 蓄膿症、鼻炎、衂血、中耳炎、外耳炎その他の耳鼻科疾患。
一 そのほか、面疱、扁桃炎、肺浸潤、肺結核、神経衰弱など。 
『一般用漢方処方の手引き』 厚生省薬務局 監修 薬業時報社 刊
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
〔成分及び分量〕 当帰1.5,芍薬1.5,川芎1.5,地黄1.5,黄連1.5,黄芩1.5,黄柏1.5,山梔子1.5,連翹1.5,防風1.5,薄荷葉1.5,枳殻(実)1.5,甘草1~1.5,白芷1.5~2.5,桔梗1.5~2.5,柴胡1.5~2.5,
(地黄,黄連,黄柏,薄荷葉のない場合も可)

〔用法及び用量〕 湯

〔効能又は効果〕 蓄膿症,慢性鼻炎,慢性扁桃炎,にきび

〔解説〕 一貫堂経験方
本方は解毒症体質(一種の肝臓機能低格症)または腺病性体質を改善する薬方である。



参考文献名
生薬名 当帰 芍薬 川芎 地黄 黄連 黄芩 黄柏 山梔子 連翹 荊芥 防風 薄荷葉 枳殻 甘草 白芷 桔梗 柴胡
診療医典 注1 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2 2 2
処方解説 注2 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2.5 2.5 2.5
治療の実際
1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1 1.5 1.5 1.5

応用の実際

注3

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5
(枳実)1.5
1

1.5

1.5

1.5
要方解説 注4 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2 2 2
診療の実際 注5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2 2 2
処方集 注6 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2.5 2.5 2.5

本来は蓄膿症・中耳炎等に用いられるもので,万病回春の耳病門・鼻病園の荊芥連翹湯の加減法である。この特有の体質者に発した諸病に応用される。(臨床応用漢方処方解説より抜粋)

注1 皮膚の色が暗褐色を示し,筋直筋が全体に緊張し,肝経と胃経に相当して腹筋の拘攣を認めることが多い。
青年期腺病体質の改善,急性慢性中耳炎,急性慢性上顎洞化膿症,肥厚性鼻炎などに用いられ,また扁桃炎,衂血,面疱,肺結核,神経衰弱,禿髪症などに応用される。

注2 皮膚の色は概してドス黒く,暗褐色を呈することが多い。脈は緊で,腹は直腹筋が全体に緊張して,肝経と胃経に相当して,腹筋の拘攣を認めることが多い。
本方は主として青年期腺病体質の改善,急性慢性中耳炎,急性慢性上顎洞化膿症,肥厚性鼻炎等に用いられ,また扁桃炎,衂血・肺浸潤,面疱,肺結核(増殖型のもの),神経衰弱,禿髪症等に応用される。

注3 耳が腫れ痛むとき用いる。初期のうちで,熱があるときは葛根湯を用いるが,それでも効果がないときや,やや長びいたときにはこの方がよい。
中耳炎,外耳道炎などにも応用される。

注4 この方の主治は原方の,“両耳腫痛するものを治す。腎経風熱あるなり。”(万病回春・耳病門)の如くであるが,耳病に限らず,解毒症体質の改善薬として広く応用される。清熱,和血,解毒作用あって,青年期に於ける腺病体質者に発する諸症に用いてよい。一般に皮膚浅黒く,光沢を帯び手足の裏に油汗多く,主として上焦に発せる鼻炎,扁桃腺炎,中耳炎,蓄膿症等に用いられる。脈腹共に緊張あるものである。
青年期腺病体質改善薬,急性中耳炎(加蝉退,蔓荊子各1.2g),急慢性上顎洞化膿症,肥厚性鼻炎,扁桃腺炎,鼻衂,肺浸潤初期,面疱にも用応される。

注5 急性穿孔性中耳炎,急性乳様突起炎(加蝉退・蔓荊子),急性鼻炎,慢性鼻カタル,上顎洞化膿症(加辛夷),衂血(加升麻,牡丹皮),アデノイド,扁桃肥大。

注6
体質的に浅黒く手足の裏に油汗多く脈腹好に緊張あるものを目標とする。急性中耳炎,蓄膿症,肥厚性鼻炎,扁桃腺炎,鼻血,にきび,肺結核初期,青年期腺病質改善に応用される。


『漢方処方応用の実際』 山田光胤著 南山堂刊
58.荊芥連翹湯(万病回春)
荊芥,連翹,防風,当帰,川芎,芍薬,柴胡,枳実,黄芩,梔子,白芷,桔梗各1.5, 甘草1.0

目標〕 耳が腫れ痛むとき用いる.初期のうちで,熱があるときは葛根湯を用いるが,それでも効果がないときや,やや長びいたときにはこの方がよい.

応用〕 中耳炎,外耳道炎 など.



『改訂版 漢方薬の選び方・使い方―健康保険が使える』 木下繁太郎著 土屋書店刊
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

症状 体質的に皮膚の色が浅黒く,手足の裏に油汗をかき,腹直筋が緊張して過敏なもので,蓄膿,慢性鼻炎,扁桃腺,にきび,があるようなものに用います。

①体質的に皮膚が浅黒い
②手足の裏に油汗をかきやすい。
③にきび、蓄膿,扁桃腺炎などを患ったことがある。

腹 腹直筋が緊張して過敏で、腹直筋を圧すとくすぐったがり,筋が硬くなったりします。
脈 緊脈。
舌 一定しません。

適応 蓄膿症,慢性鼻炎,慢性扁桃腺炎,にきび,肥厚性鼻炎,鼻血,肺血核,神経衰弱,禿髪症,各種の皮膚疾患。

【処方】当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、塾地黄(じゅくじおう)、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)、連翹(れんぎょう)、防風(ぼうふう)、薄荷葉(はっかよう)、荊芥(けいがい)、甘草(かんぞう)、枳殻(きこく) 各1.5g。柴胡2.0g。白芷(白芷、桔梗(ききょう) 各2.5g。

上記のような,独特の体質(解毒症体質・青年期の腺病体質)の人の体質改善薬で,こういう体質を示す人のいろいろの病気に応用できます。子供の頃には柴胡清肝湯(74頁)のきく体質で,青年期に達すると荊芥連翹湯が使えるようになることが多いようです。

健 シ・建・タ・ツ・虎(一貫堂方)


【一般用医薬品承認基準】
〔成分・分量〕
当帰1.5、芍薬1.5、川芎1.5、地黄1.5、黄連1.5、黄.1.5、黄柏1.5、山梔子1.5、連翹1.5、荊芥1.5、防風1.5、薄荷葉1.5、枳殻(実)1.5、甘草1-1.5、白.1.5-2.5、桔梗1.5-2.5、柴胡1.5-2.5(地黄、黄連、黄柏、薄荷葉のない場合も可)
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの次の諸症:
蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび



【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
〔地黄を含有する製剤に記載すること。〕
(3)´胃腸の弱い人。
〔地黄を含有しない製剤に記載すること。ただし、この場合(3)の項は記載しないこと。〕
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位
症 状
皮 膚
発疹・発赤、かゆみ
消化器
食欲不振、胃部不快感
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
間質性肺炎
階段を上ったり、.し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
偽アルドステロン症、
ミオパチー1)
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
144
肝機能障害
発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
3.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の.ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
〔地黄を含有する製剤に記載すること。〕
(3)´胃腸の弱い人。
145
〔地黄を含有しない製剤に記載すること。ただし、この場合(3)の項は記載しないこと。〕
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の.ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕






【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
  • 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
  • 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が褐色。

【その他】
  • 胃の不快感、食欲不振、吐き気、下痢
  • 発疹、発赤、かゆみ
  • 肝機能値の異常

六君子湯(りっくんしとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

六君子湯(りっくんしとう)
人参 白朮 茯苓 半夏各四・ 陳皮 生姜 大棗各二・ 甘草一・
 本方は四君子湯と二陳湯との合方で、胃腸虚弱にして四君子湯よりは胃内停水の多いものに用いる。心下部痞え・食欲不振・疲労し易く、貧血を呈し脈も腹も共に軟弱で、日常手足の冷え易い虚證のものを目標とする。
本方中の人参・白朮・茯苓・甘草は即ち四君子湯で、胃腸の機能を亢め、消化吸収をよくする。陳皮は人参と共に食欲を進め、半夏は白朮・茯苓と共に胃腸内の停水を去る。
以上の目的に従い本方は慢性胃腸カタル・胃弱症・病後の食欲不振・嘔吐・慢性腹膜炎・悪阻・小児虚弱者の感冒・神経衰弱・胃癌・胃潰瘍(止血後)等に応用される。

香砂六君子湯】(こうしゃりっくんしとう)
人参 朮 茯苓 半夏各三・ 陳皮 香附子各二・ 大棗 生姜各一・五 甘草 縮砂 藿香各一・
本方に香附子・砂仁・藿香を加えたもので、六君子湯の證で、特に心下痞塞を訴え、気鬱し、食欲不振・宿食を兼ね識ものに用いる。一般的にこの加減方が多く用いられる。

【柴芍六君子湯】(さいしゃくりっくんしとう)
六君子湯に柴胡 芍薬各三・を加える。
本方に柴胡・芍薬を加えたもので、六君子湯の症で、腹直筋の拘攣・或は腹痛のあるものに用いられる。


『漢方精撰百八方』
108.〔六君子湯〕(りっくんしとう)
〔出典〕薛立斉十六種

〔附方〕香砂六君子湯、柴芍六君子湯

〔処方〕人参、朮、茯苓、半夏 各3.0 陳皮、生姜、大棗 各2.0 甘草1.5

〔目標〕体質虚弱で、皮膚や筋肉の緊張が悪く、多くは痩せ型で貧血性の、いわゆる弛緩性体質の人。食欲がなく、体重が減り、食物が心下部につかえ、少し食べても胃が張り、吐きけや嘔吐が起こり、胃部の膨満感があり、大便が軟らかい。脈は弱く、腹部は軟弱で心下部や臍の附近に振水音をみとめる。

香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう):六君子湯を用いるような場合で、腹が痛んだり、気分が重く、憂鬱で精神不安があり、頭重、倦怠などがあり、疲れ易いものに用いる。

柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう):六君子湯を用いたいようなときで、胸脇苦満があり、神経質になっているものに用いる。

〔かんどころ〕虚弱体質ではあるが、余り痩せ衰えてはいない。食べ物を少しとると腹が張って食べられなくなる。腹部に心下部振水音がある。

〔応用〕胃アトニー症、胃下垂症、慢性胃腸カタル、神経症

〔治験〕11才の男児、わたしの甥である。  この子は、もともと身長は高いが、やせて顔色の青白い少年で、いつも家にこもって、本を読んだり、模型をいたずらしたりするばかりで、ほかの子供のように、戸外をとび歩いて遊ぶということがなかった。
食欲がなく、少し食事をとると、げぶげぶと吐きそうになるといって、母親がこばしに来た。  腹部を診ると、子供なのに、心下部の振水音が著明である。そこで、六君子湯を投与することにした。これが、昭和39年の5月初である。  それ以来、一日も欠かさず薬を飲ませた。すると、7月末、学校が夏休みになったので、久しぶりに遊びに来た甥を見て、わたしはすっかり驚いてしまった。からだは、がっちりして、顔は丸々と肥り、しかも赤々とした顔色になり、別人のように元気な子供になっていたからである。
  母親は欲が出て、もっともっと丈夫にするといい、その年の末まで薬を飲ませた。
山田光胤

漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
 7 裏証(りしょう)Ⅰ
虚弱な体質者で、消化機能が衰え、心下部の痞えを訴えるも の、また消化機能の衰退によって起こる各種の疾患に用いられる。建中湯類、裏証Ⅰ、 裏証Ⅱは、いずれも裏虚の場合に用いられるが、建中湯類は、特に中焦が虚したもの、裏証Ⅰは、特に消化機能が衰えたもの、裏証Ⅱは、新陳代謝機能が衰えた ものに用いられる。
裏証Ⅰの中で、柴胡桂枝湯加牡蠣茴香(さいこけいしとうかぼれいういきょう)・安中散(あんちゅうさん)は気の動揺があり、神経質の傾向を呈する。半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は、水の上逆による頭痛、嘔吐に用いる。
4 六君子湯(りっくんしとう)  (万病回春)
〔人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(茯苓)、半夏(はんげ)各四、陳皮(ちんぴ)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)各二、甘草(かんぞう)一〕
本方は、四君子湯に半夏、陳皮を加えたもので、四君子湯證よりもさらに胃内停水が強く、心下痞と四肢の厥冷を訴えるものに用いられる。また、 本方は消化機能をととのえる作用が強いため、虚証で貧血、疲労感、食欲不振、胃内停水、心下痞満、四肢の冷え、軟便または下痢便などを目標とする。ときと して浮腫、嘔吐、尿利減少を訴えることがある。また食後右側を下にして横になっていたがる傾向のあることもある。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、六君子湯證を呈するものが多い。
一 慢性胃カタル、胃下垂症、胃アトニー症、胃拡張症、胃潰瘍、胃癌、十二指腸潰瘍、慢性腹膜炎、腸カタルその他の消化器系疾患。
一 神経衰弱、神経症その他の神経系疾患。
一 そのほか、感冒、悪阻、心臓弁膜症など。
六君子湯の加減方
〔六君子湯に香附子(こうぶし)、縮砂(しゅくしゃ)、藿香(かっこう)各二を加えたもの〕
六君子湯證で、気うつし、心下部の痞塞感が強く、食物が停滞するため、食欲不振、腹満、腹痛を訴えるものを目標とする。
(2) 柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)  (本朝経験)
〔六君子湯に柴胡(さいこ)四、芍薬(しゃくやく)三を加えたもの〕
六君子湯證で、腹直筋の拘攣や胸脇苦満の状を呈するもの、あるいは腹痛を伴うものに用いられる。本方は、いちおう柴胡剤であるが、駆水剤(特に胃内停水を去る)である六君子湯の作用が主体であることからここにかかげた。
〔応用〕
六君子湯のところで示したような疾患に、柴芍六君子湯證を呈するものが多い。
その他
一 肝炎、膵臓炎その他の肝臓、膵臓、胆嚢の疾患。


《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
79.六君子湯(りっくんしとう) 和剤局方
人参4.0 白朮4.0 茯苓4.0 半夏4.0 陳皮2.0 大棗2.0 甘草1.0 乾生姜0.5
現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
貧血,冷え症で胃部に圧重感があり,軟便気味で疲れやしいもの。
平素から胃腸が虚弱で,しかも貧血気味で手足が冷えやすく,疲れやすくて胃部がたえず重苦しく,食欲が振わない胃腸無力症のものを対象に用いられる。したがって急性症状よりむしろ慢性に経過する前記消化器疾患に適し,人参湯,茯苓飲 などと同様に胃内停水が著明で,胃部振水音を証明し尿量減少の傾向があって水分の胃腸循環がよくないものに,連用させるとよい。本方を慢性胃腸カタルや胃腸無力症に用うる場合,貧血冷え症で軟便,泥状便が長びいたり,疲れやすくて食後すぐ,右を下側にして横になりたくなる傾向があるものによい。また乳児や小児の吐き下しに一般的に五苓散が適するが,吐物や便が消化不良であったり,胃腸機能が悪いものには五苓散よりも本方がよく奏効する。神経質な者や職業的に神経を酷使して,胃腸にストレスを与え,胃下垂,胃アトニー,胃神経症の傾向あるものに本方が適し,特に昼夜の別なく神経を酷使し,胃腸症状を訴えるドライバーに好評を得ている。手術を要しない胃潰瘍で,出血や潜血反応を認めないものに本方で奇効を得ることが少なくない。

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○体質が虚弱で,皮膚や筋肉の緊張が悪く,多く痩せ型の貧血性でいわゆる弛緩体質(無力性体質)の人が心下部(胃部)が痞え,食欲不振,痩削(体重減少)などを訴えるもの。
○疎註要験① 諸病の後で食が進まず,顔色悪く,痩せて皮膚が黄ばみ痰飲(水毒)の気みがあって,時として弱いしゃっくりをくり返したりからえずきするもの,ことに食事しようとすると,からえずきするものによい。四君子湯景の症に似て,更に消化力を打け,水毒を除く力が強いから,小児によく用いられる。
② 浮腫があって,手足がたるく,呼吸促迫し,疲れやすく,大便が下痢気味のものに,先ずこの方を用いるとよいとある。
○愚按口訣① 諸病誤治誤薬のとき,先ず消化機能を調えるため,本方を用いるとよい。
② 消化機能の衰えた人が急激に風寒に侵されたとき,補中益気湯などを用いず,本方を用いた方がよい。
③ 成人,小児をとわず,虚して(体力が低下していて)嘔吐,下痢するときは本方を先ず用いるとよい。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は四君子湯と二陳湯との合方で,胃腸虚弱にして四君子湯よりは胃内停水の多いものに用いる。 心下部痞え,食欲不振,疲労し易く,貧血を呈し脈も腹も共に軟弱で,日常手足の冷え易い虚証のものを目標とする。本方中の人参,白朮,茯苓,甘草は即ち四君子湯で,胃腸の機能を亢め,消化吸収をよくする。陳皮は人参と共に食欲を進め,半夏は白朮,茯苓と共に胃腸内の停水を去る。以上の目的に従い本方は慢性胃腸カタル,胃弱症,病後の食欲不振,嘔吐,慢性腹膜炎,悪阻,小児虚弱者の感冒,神経衰弱,胃癌,胃潰瘍(止血後)等に応用される。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 胃腸の弱い者で,胃内停水があり,脈腹ともに軟弱で,心下部痞塞感があり,食欲衰え,疲労しやすく,貧血して,日常手足冷えやすく,全体に虚証のものを目標とする。
 万病回春(補益門)
 脾胃虚弱,飲食少しく思ひ,或は久しく瘧痢を患ひ,若くは内熱を覚え,或は食飲化し難く,酸を作し,虚火に属するを治す。須らく炮姜を加えて其効甚だ速かなり。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は理中湯の変方にして中気を扶け,胃を開くの効あり,故に老人脾胃虚弱にして痰あり。飲食を思わず,或は大病後脾胃虚し,食味なき者に用ゆ。陳皮,半夏,胸中胃口の停飲を推し開くこと一層力ありて,四君子湯に比すれば,最も活用あり,千金方半夏湯の類数方あれども此方の平穏なるに如かず。

漢陰臆乗〉 百々 漢陰先生
 畢竟脾胃虚弱水湿を帯びるものを治す。予の治験とて別に単方を用ゆること少し。大病の死極まりたるものなど,真武,四逆の類を用いてなる程症はいかにも的当なれども,病人の元気至って虚し,附子の薬力に堪えず,薬煩するもの世にままにあるものなり。其時には此湯を与ふれば元気も引たてて,薬煩もせず,至ってらくなるものなり。

万病回春〉 龔 廷賢 先生
 脾胃虚弱,飲食少しく思ひ,或は久しく瘧痢を患ひ,若しくわ内熱を覚え,或は飲食化難く酸を作し,虚火に属するを治す。須らく炮姜を加えて其効甚だ速也。

医方口訣集〉 長沢 道寿先生
 気虚して痰有る者,脾胃衰弱して湿有る者之を主る。

牛山方考〉 香月 牛山先生
 脾胃虚弱にして痰飲を挟む者をなす。

経験筆記〉 津田 玄仙先生
 六君子湯は皆知っての如く甚だつかい道の多き方也。六君子湯は四君子湯と二陳湯の合方にて,元気虚弱にして痰ある症に用ひては正方の方也と知るべし。
○面色萎黄,脈微弱,手足のだるきは是脾胃の虚也。咳嗽痰涎は痰なり,故に六君子湯を用いたり。


※若しくわ内熱を覚え,→若しくは内熱を覚え,

2012年3月28日水曜日

麦門冬湯(ばくもんどうとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
麦門冬湯(ばくもんどうとう)
麦門冬一〇○・ 半夏 粳米各五・ 大棗三・ 人参 甘草各二・ 
本方は強壮・滋潤のある麦門冬・人参・粳米の外に、去痰・利尿の効ある半夏を配し、更に急迫を治する作用のある大棗と甘草とが伍しているから、大病後或 は慢性諸病・老人・虚人等で身体枯燥して、気上逆して咽喉不利するものを治する効がある。蓋し麦門冬・半夏と伍する時は、気の上逆を下す作用があるからで ある。
本方は主として気管支炎・肺炎等で既に解熱して後発作性に咳嗽が頻発し、顔面潮紅し喀痰の切れ難いもの、或はそのために音声の嘶嗄するも のに用い、急慢性咽喉炎で音声嘶嗄するもの、或は喉頭結核・肺結核にも使用することがある。また糖尿病で八味丸を用いる一歩手前に、本方を用いてよい場合 がある。もし此方を服して食欲減退するもの或は既に下痢の傾向のあるもの、もしくは喀痰が多くて切れ易いものには、本方を禁忌とする。身体枯燥のものに、 本方を使用すると、栄養血色潤沢となり、一時尿量の増加することがある。肺結核の喀血時に、本方に黄連・阿膠・地黄を加えて止血の目的に用い、また脳溢血 で脈洪大・上逆感のある者に、本方に石膏を加えて用いてよい場合がある。


漢方精撰百八方
62.〔方名〕麦門冬湯(ばくもんどうとう)

〔出典〕金匱要略

〔処方〕麦門冬10.0 半夏、粳米各5.0 大棗3.0 人参、甘草各2.0 

〔目標〕上気してのどに何かかかっている感じ。

〔かんどころ〕せきにしても、くしゃみにしても、しゃっくりにしても、下から、きゅっ、きゅっとつきあげてくるという点に眼をつける。

〔応用〕咽喉炎。百日咳。妊娠咳。アレルギー性鼻炎。しゃっくり。肺結核。気管支炎。

〔治験例〕
1.しゃっくり
一老医、脳軟化症にかかり、某病院に入院中。しゃっくりが出てとまらず、病院の医師がこもごも集まって手当をしたが、どうしてもとまらない。そこで、柿のへたを煎じて飲んだらよいだろうということになり、拙著「症候による漢方治療の実際」を買い求めて、よんだところ、呉茱萸湯がしゃっくりに効くとあり、また小承気湯や丁香柿蔕湯のきくこともあるというので、どれをのんでよいかに迷い、私に往診を乞うてきた。
私はこの患者を診察して、麦門冬湯を与えたが、これが奏効し、一服で、しゃっくりは半減し、二日で全治した。
なぜ麦門冬湯を用いたか。
この患者は、長く病床にいたため、栄養衰え、皮膚は枯燥していた。この枯燥は麦門冬湯を用いる目標である。舌も乾燥し、腹力も弱い。脈は大きいが、力に乏しい。
そこでこのしゃっくりを「大逆上気」の変形とみて、麦門冬湯を用いたのである。

2.くしゃみ
一婦人、妊娠中、くしゃみがやまない。アレルギー性のものと医師は診断したという。アレルギー性鼻炎には、葛根湯がよく効くので、これを用いたが効がない。そこで麦門冬湯を用いたところ、著効があり、たちまち、はげしいくしゃみがやんだ。  なぜ麦門冬湯を用いたか。  妊娠咳には、麦門冬湯で治るものが多い。そこで、くしゃみも、せきも「大逆上気」の変形で、同じものだと考えて、この方を用いたのである。  松原一閑斎は、麦門冬湯加石膏を中風で、気がのぼって、ふらつくものに用いている。
大塚敬節


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊

2 順気剤
順気剤は、各種の気の症状を呈する人に使われる。順気剤には、気の動揺 している場合に用いられる動的なものと、気のうっ滞している場合に用い られる静的なものとがある。静的なものは、体の一部に痞えや塞がりを感じるもので、この傾向が強くなるとノイローゼとなったり、自殺を考えたりする。動的 なものは、ヒステリーや神経衰弱症を訴えるが、この傾向が強くなると狂暴性をおびてくる。順気剤は単独で用いられる場合もあるが、半夏厚朴湯(はんげこう ぼくとう)などのように他の薬方と併用されるのもある。
順気剤の中で、半夏厚朴湯・梔子豉湯(しししとう)・香蘇散(こうそさん)は気のうっ滞に用いられ、柴胡加竜骨牡蠣湯・柴胡桂枝乾姜湯・桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は気の動揺が強いものに用いられ、釣藤散(ちょうとうさん)・甘麦大棗麦(かんばくたいそうとう)は気の動 揺と気のうっ滞をかねそなえたもので、麦門冬湯(ばくもんどうとう)は気の上逆による咳嗽を、小柴胡湯・加味逍遙散は、柴胡剤の項でのべたように潔癖症を 呈するものに用いられる。なおこのほか、駆瘀血剤の実証のもの、承気湯類(じょうきとうるい)などにも、精神不安を訴えるものがある。

6 麦門冬湯(ばくもんどうとう) (金匱要略)
〔麦門冬(ばくもんどう)十、半夏(はんげ)、粳米(こうべい)各五、大棗(たいそう)三、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)各二〕
本方は少陽病の虚証で、身体枯燥(湿潤光沢を失って痩削すること)し、気の上逆による痙攣性咳嗽に用いられる。したがって、顔面紅潮(のぼせ)、咽喉乾燥感、咽喉刺激感、咳嗽(顔を赤くして咳き込む、痰の切れは悪い)がつづいて声が枯れるなどを目標とする。
痩削(そうさく) やせこける。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、麦門冬湯証を呈するものが多い。
一 感冒、気管支炎、百日咳、肺炎、肺結核その他の呼吸器系疾患。
一 脳溢血、高血圧、動脈硬化症その他の循環器系疾患。
一 そのほか、糖尿病、喀血など。



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会 
62.麦門冬湯(ばくもんどうとう) 金匱要略
麦門冬10.0 半夏5.0 粳米5.0 大棗3.0 人参2.0 甘草2.0

(金匱要略)
○大逆上気,咽喉不利,止逆下気者,本方主之(肺痿)


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
こみあげてくるような強い咳をしてい顔が赤くなるもの。通常喀痰は少量でねばく且つ喀出困難である,あるいは のぼせて咽喉がかわき,咽喉に異物感があるもの。
本方は劇しく咳込んでいる顔が真赤になるような症状によく用いられるが,この場合,から咳か喀痰はあっても少量,喀出困難で,時には血痰を伴なうこともあるから,喀痰の多い小青竜湯適応症との区別は明らかである。また のぼせ,咽喉の異物感が認められるから,これらの症状がなく発作時に頭汗のある麻杏甘石湯適応症とも鑑別できる。半夏厚朴湯との鑑別はやや困難であるが半夏厚朴湯適応症は神経症状が著明な一方,のぼせ,咽喉のかわきなどの症状は認められない。難治の百日咳は本方に桔梗,石膏を加えて著効を得ることがある。身体の衰弱が甚だしく,本方を与えて劇しい発作はおさまったが,なお咳嗽が続く時は人参養栄湯を試みるとよい。本方適応症で食欲不振があれば小柴胡湯を合方する。本方を服用後食欲減退や胃痛,下痢する場合は不適で安中散,小柴胡湯,柴胡桂枝干姜湯,半夏瀉心湯などで治療し,小柴胡湯,半夏厚朴湯合方などへの転方を考慮すべきである。また浮腫を生ずる場合は五苓散で治療するとよい。喀血に本方と黄連解毒湯を合方して与えると,止血の効果がある。糖尿病でのぼせて咽喉がかわくものに,八味丸を用いる前にも応用することがあるが,この場合は喀嗽はなくてもよい。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
咳がひどくて発咳時顔面が紅潮し,痰は粘く喀出が困難であり,時に血滴が混入したり,咽喉や胸部に異物感があったり,のぼせや口渇の傾向にあるもの。
本方は虚弱者や衰弱と言うほどではないが,その傾向ご認められるものの,下気道(咽喉,気管,気管支)や肺胞などに炎症があると考えられる症候に適する。すなわち前記応用の目標の記載のとおり,粘い痰がのどにからんで息苦しく,咳込んで顔が赤くなり少量の粘いタンを喀出するものによい。本方が適するものは老人に多く、平素のぼせる傾向や半夏厚朴湯証に見る咽喉の異物感,あるいは胸部のふさがるような自覚があって,前述のような咳を頻発するものに繁用されている。また急性気管支炎や肺炎の解熱後あるいは結核,慢性気管支炎や喘息,百日咳,愛煙家や人ごみで咽腔刺激を受けて,咳発作が激しいものや,のどの痛み,声嗄れなどを訴えるものに本方がよく適応する。百日咳その他ひどい咳と痰が主施となるものには,本方にキキョウ・セツコウを加えると効果がある。また老人や虚弱児の感冒で微熱があって,頭痛,さむけがして汗ばみ,ひどい咳が出てタンが出にくいものに本方と桂枝湯を合方すればよい。本方の症状に似て咳やタンで苦しみ,衰弱しているものやその傾向のあるものは,人参養栄湯を考慮すればよい。この合方は慢性に経過するものを目安とし,本方と桂枝湯との合方は急性または亜急性が目標となる。
 ※セツコウ=セッコウ=石膏


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○大逆上気,咽喉不利というのが目標で,のぼせぎみで顔が上気して赤みがかり,急迫性の咳が出て,咳嗽するとき痰が切れにくく,顔を赤くして激しく咳きこみ,痰が切れると一応咳がおさまる。 (大逆上気)咽喉が乾燥していらいらと異物感を生じそのため声が嗄れる。
○下からつきあげる症状を伴うもので,咳ばかりでなく,しゃっくりなどにも用いられる。また上気による難聴,めまいなどするものによい。
○(医療手引草)「此方は虚火を下へ導き,大逆上気を治するともあり,または火逆上気を治するともあり,兎角潤をして気を下方へ行らすと見えたり」「時疫の熱が大体さめて後,余熱あって耳聞こえず,あるいはふらふらするというにすべて用いて調理するなり。世上の大補湯(十全大補湯)などの場合には 古方家は 専ら(麦門冬湯)用うるなり」とある。
○本方は痰が切れにくい場合にはよいが,誤って痰多くてよく切れるものに用いると,かえって喀痰の量が増えて症状が悪化することがあるから注意をする。


漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○痰がのどのおくにへばりついたようで発作性に強くせき込むものに用いる。いろいろの咳のとき薬をのんだが効がないといって来る患者にこの型がある。肺結核の患者にも,気管支炎の患者にみられる。咳の出ない時は半時間も一時間も全く出ないが,出はじめるとあとからあとからひっきりなしに出て顔が赤くなるほどせき込み,へどが出そうになる。場合によっては吐く,そして痰らしいものは出ない。このような咳が永く続いて声が枯れていることもある。これには麦門冬湯を与える。肺に大きな空洞があって,痰がしきりに出るもの,或は気管支拡張症などのため痰の喀出の多い声に麦門冬湯を与えると反って咳がひどくなり,痰の量も多くなり,夜も眠れないほど苦しむことがある。だから痰の多いものには,麦門冬湯はよろしくない。麦門冬湯には滋潤強壮の効があって,からだに潤をつける効があり,これに人参,粳米が協力してこの作用を強化し半夏は痰をとかして気ののぼるのを下す作用があるから,咽喉に潤をつけて痰をとかして咳嗽をしずめる。更に大棗と甘草は緩和剤で急迫をゆるめて咳嗽発作を止める力がある。○古訓医伝「麦門冬湯の証は咳もなく,涎沫も吐せず,下に力なく,逆上の強きにより,咽喉口舌,倶に乾燥して滋潤なく,口中より咽喉の辺まで粘液のあるように思われて,咽喉の心持あしき証なり」とあり,ただのどが乾いて,何んなく気持がわるく,しめりを欲するような場合にも用いる。この方は乳幼児より老年の人に用いる機会が多い。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
本方は強壮,滋潤のある麦門冬,人参,粳米の外に,去痰,利尿の効ある半夏を配し,更に急迫を治する作用のある大棗と甘草とが伍しているから,大病後,或は慢性諸病,老人,虚人等で身体枯燥して,気上逆して咽喉不利するものを治する効がある。蓋し麦門冬,半夏と伍する時は,気の上逆を下す作用があるからで ある。本方は主として気管支炎,肺炎等で既に解熱して後発作性に咳嗽が頻発し,顔面潮紅し,喀痰の切れ難いもの,或はそのために音声の嘶嗄するものに用い,急慢性咽喉炎で音声嘶嗄するもの,或は喉頭結核,肺結核にも使用することがある。また糖尿病で八味丸を用いる一歩手前に,本方を用いてよい場合 がある。もし此方を服して食欲減退するもの或は既に下痢の傾向のあるもの,もしくは喀痰が多くて切れ易いものには,本方を禁忌とする。身体枯燥のものに本方を使用すると,栄養血色潤沢となり,一時尿量の増加することがある。肺結核の喀血時に,本方に黄連,阿膠,地黄を加えて止血の目的に用い,また脳溢血 で脈洪大,上逆感のある者に,本方に石膏を加えて用いてよい場合がある。



漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
運用 大逆上気 咽喉不利
これは金匱要略咳嗽病の「大逆上気し咽喉不利せざるもの。逆を止め気を下す。麦門冬湯之を主る。」によっているが,非常にうまく麦門冬湯の適応証を表現している。大逆を火逆とする説もあるが大逆が宜く,大逆に対して小逆というのは傷寒論太陽病中編火逆の次の誤吐の条にある。逆とか小逆とかに対する大逆なら誤治によることを現わすものだが,此処方を掲げた金匱要略には誤治にはあまり書いてないし,肺痿咳嗽に対して火針等を加える事も考えられないから,火逆と読むのは大体が無理な話である。自然に気が逆したというなら気逆と書くのが普通だし,大いに逆したなら大気逆とでも書くべきだろうが頭項強痛などの例にも見られるように大いに気逆し上気したのを大逆上気と書いたものであろう。大逆上気とは気検甚しということで,之を臨床的には次のように応用する。

(劇しく咳込むもの) 例えば百日咳のようなもの。或は百日咳以外の風邪,肺結核,肺炎などでも劇しい咳が出るものに使う。顔を赤くして咳込むのが大逆上気である。この場合大抵は空咳であって痰はあまり無い,併かも咽喉不利だから咽に刺激感,異物感,狭扼感,乾燥感など要するに通利せぬ感を伴うことが多い。肺結核では劇しい空咳に伴って喀血するときに本方を頻用する。浅田流では地黄,黄連,阿膠を加えて使うが必ずしもそれには及ばない。本方だけで充分目的が果せる。浅田流では百日咳に本方に橘皮,竹茹を加えて使うが,矢張り本方だけでもよく効く,加味すればそれだけよく効くように思うが実際にはそうとは限らない。

(上気するもの) 咳がなくても構わない。例えば脳出血などでのぼせ感と咽喉部の麻痺による異常感を訴えるものに使うことがある。この場合瀉心湯,救逆散などと鑑別を要する。瀉心湯は実証であることと心下痞,便秘などがあることに着眼し,救逆湯はのぼせは同じだが,咽喉不利はないことに着眼する。

(口渇感) 咽喉不利を咽喉乾燥感により,糖尿病などで咽喉乾燥感が強く,水はあまり飲みたくはないが咽を湿すために水を飲まずにはいられないような場合に使う。上気があればなお更よいが無くても差支えない。先輩の口訣により本方の運用法を補っておこう。
和久田先生「竹葉石膏湯の証に似て煩渇の証なく,痰気肺部を犯し,咳嗽あれども痰出がたく,咽喉不利して声朗かならず,或は声唖て出ざるもの,其腹状は胸満して腹部上に逼り,気上衝して小腹力なきもの麦門冬湯の証也。此方や麦門冬を以て主薬として特に分量多し。燥きを潤し煩を解し,疼を去り,咳も止て逆気を低するの意見るべし。或日虚労咳嗽痰出でがたく若くは咳血衂血のもの本方証に随て地黄石膏を加ふ。若くは狂癇にして衝逆するもの石膏,黄連を加ふ。大逆な大に咳嗽気逆するなり。上気は気逆して上部にせまるなり。衝気或は気上衝とな意自ら異り,邪衝気は気上て胸をつくなり。上気は但逆気上部にのぼりあつまるなり。例に曰,上気面浮腫肩息云々,見つべし。咽喉不利とはのどぶえのかよいあしく音声出がたく,痰かはかず,きれがたきの類をいう」
(腹証奇覧翼二編下)

※竹茹=竹筎
※逼(せま)る ← 迫る


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は肺痿,咳唾,涎沫止まず,咽燥而渇する者に用るが的治なり。金匱に大逆上気と計りありては慢然なれども,蓋し肺痿(肺結核)にても頓嗽(百日咳)にても労嗽(慢性気管支炎)にても,妊娠,咳逆にても,大逆上気の意味あるところへ用れば大に効ある故,此の四字簡古にて深旨ありと見ゆ。



2012年3月21日水曜日

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさん;よっかんさんかちんぴはんげ) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
抑肝散加陳皮半夏
(よくかんさんかちんぴはんげ)
当帰 釣藤 川芎各三・ 朮 茯苓各四・ 柴胡二・ 甘草一・五 陳皮三・ 半夏五・
本方は四逆散の変方である抑肝散に陳皮・半夏を加えたものである。抑肝散は肝経の虚熱という虚證の小児が脳神経の刺戟症状を発したものを鎮静させる効があ り、左の脇腹が拘攣するのを目標とする。本方即ち陳皮・半夏を加えたものは転じて成人殊に中年以後の更年期前後に発して神経症状が著しく、全体に虚状を呈 し、脈腹共に軟弱で、腹直筋の緊張は触れず、ただ左の臍傍から心下部にかけて大動悸が湧くが如く太く手に応ずるものを目標として用いる。これは「肝木の虚 と痰火の盛」なる貌として、この腹状を呈し、心悸亢進・胸さわぎ・恐怖・頭重・のぼせ・眩暈・肩凝り・不眠・全身倦怠等の神経症状の伴うものに偉効を奏す ることがある。これは浅井南溟の口伝によるところである。
方中の釣藤鈎は鎮痙薬で、肝木を平にして手足の拘攣を治する効がある。当帰は肝血を潤し、川芎は肝血を疎通し、柴胡・甘草・釣藤と組んで肝気の亢ぶるのを緩解し、茯苓・白朮で胃中の水飲を消導し、陳皮・半夏で痰飲を去る。
以上の目標に従って本方は、神経衰弱・ヒステリー・婦人更年期障害に発する神経症・中風・夜啼・疲労症・四肢萎弱症・悪阻・小児の癇症等に応用される。


『《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会 
78.抑肝散加陳皮半夏(よっかんさんかちんぴはんげ) 本朝経験
当帰3.0 釣藤3.0 川芎3.0 朮4.0 茯苓4.0 柴胡2.0 甘草1.5 陳皮3.0 半夏5.0

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
本方は体力や抵抗力が乏しいと見受けられる者の,精神興奮,不安感,全身倦怠感などの神経症状を目安に応用されている。
本方は目標欄記載のごとく,いわゆる疳(かん)が高ぶる神経過敏を抑制する,漢方の代表的な精神神経安定剤と言えるもので,興奮,緊張過度,不安,恐怖などを緩和させる効果がある。すなわち小建中湯や半夏厚朴湯などが対象になるような体質者で,神経症状が著しく腹部動悸が亢進して,胸脇部に圧迫感があり,頭重,のぼせ,めまい,肩こり,不眠,全身倦怠感,心悸亢進,不安感,恐怖感などを伴うものに,鎮静剤として著効を奏することがある。したかって神経衰弱,ノイローゼ,ヒステリー,神経質など心因性精神病と言われているものに,応用される機会が多い。また更年期に初発しやすい神経症,躁鬱病などにもしばしば用いられる。類方との鑑別は
半夏厚朴湯> 頭重,肩こり,不眠,不安感などで本方証に類似するが,本方は肝機能が悪くて腹部動悸を呼めるに対し,半夏厚朴湯の消化機能が悪く,胸部や咽喉部に痞塞感を自覚する点で異なる。

桂枝加竜骨牡蛎湯> 心悸亢進,のぼせ,頭重,不眠,腹部動悸,倦怠感などの症候群が類似するが,本方適応症状には認められない性的(陰萎,性的ノイローゼ,遺精)症状を伴うので,本方と区別ができる。

柴胡加竜骨牡蛎湯> 桂枝加竜骨牡蛎湯に似て,さらに著しい症状を認めるとともに,体力も旺盛であるものを目安に用いられる。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
抑肝散・・・・・・不機嫌で怒りやすく,神経過敏で,せっかちになり,興奮して夜眠れない。小児では,わけもなく泣きわめき,喧嘩をしたり,落ちつきがない。これらはすべて肝気がたかぶる症状である。また筋肉の過緊張や痙攣にも用いられる。腹証は左の腹直筋が拘攣していることが多いが,必ずしもこれがなくてもよい。
勿誤薬室方函口訣「この方は四逆散の変方で,すべて肝部に属し,筋脈強急(筋肉がこわばっている)を治す。四逆散は腹の任脈通り(正中線)拘急(ひきつれる)し,胸脇の下に衝く者を主とす。此方は左腹拘急よりして四肢筋脈に攣急する者を主とす。此方を大人の半身不随に用いるは東郭の経験なり。半身不随ならびに不寝の症に此方を用ゆるは,心下より任脈通り攣急,動悸あり,心下に気あつまりて痞する気味あり。
医手を以て按ぜばさのみ見えねども,病人に問えば必ず痞えるという。逍遥散と此方とは二味を異にして其効同じからず,ここに着眼して用ゆべし」とある。
抑肝散加陳皮半夏・・・・・・抑肝散証が慢性に経過して虚証になり腹筋が軟弱無力となり,左の腹部大動脈の動悸がひどく亢進したものに用いる。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
本方は四逆散の変方である抑肝散に陳皮,半夏を加えたものである。抑肝散は肝経の虚熱という虚證の小児が脳神経の刺戟症状を発したものを鎮静させる効があり,左の脇腹が拘攣するのを目標とする。本方即ち陳皮,半夏を加えたものは転じて成人殊に中年以後の更年期前後に発して神経症状が著しく,全体に虚状を呈し,脈腹共に軟弱で,腹直筋の緊張は触れず,ただ左の臍傍から心下部にかけて大動悸が湧くが如く太く手に応ずるものを目標として用いる。これは「肝木の虚と痰火の盛」なる貌として,この腹状を呈し,心悸亢進,胸さわぎ,恐怖,頭重,のぼせ,眩暈,肩凝り,不眠,全身倦怠等の神経症状の伴うものに偉効を奏することがある。これは浅井南溟の口伝によるところである。
方中の釣藤鈎は鎮痙薬で,肝木を平にして手足の拘攣を治する効がある。当帰は肝血を潤し,川芎は肝血を疎通し,柴胡,甘草,釣藤と組んで肝気の亢ぶるのを緩解し,茯苓,白朮で胃中の水飲を消導し,陳皮,半夏で痰飲を去る。
以上の目標に従って本方は,神経衰弱,ヒステリー,婦人更年期障害に発する神経症,中風,夜啼,疲労症,四肢萎弱症,悪阻,小児の癇症等に応用される。
保嬰撮要(急驚風門)「肝経の虚熱,搐を発し,或は木土に乗じて嘔吐痰喘,腹張食少なく,唾臥不安なるものを治す」

勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は四逆散の変方にて,凡て肝部に属し,筋脈強急する者を治す。四逆散は腹中任脈通り拘急して,胸脇の下に衝く者を主とす。此方は大人半身不随に用ゆるは,東郭の経験なり,半身不随並びに不寝の証に此方を用ゆるは,心下より任脈通り攣急動悸あり,心下に気聚りて痞する気味あり,医手を以って按ぜばさのみ見えねども,病人に問へば必ず痞えると云ふ。又左脇下柔なれども,少しく筋急ある症ならば,怒気はなしやと問ふべし。若し怒気あらば此方効なしと云ふことなし。又逍遙散と此方とは二味を異にして,其の効用同じからず,此処に着眼して用ゆべし。

浅井腹診録〉 浅井 南溟先生
臍の左の辺りより心下までも,動気の盛なるは,肝木の虚に痰火の甚しき証,北山人まさに抑肝散に陳皮(中)半夏(大)を加ふべし,験を取ること数百人に及ぶ,一子に非ざれば伝ふること勿れ。


日本東洋医学会誌〉 第15巻 第3号
抑肝散について 大塚 敬節先生

抑肝散の腹証

抑肝散の方は,元来小児のために設けたもので,患児とその母とが,ともにこれをのむことになっているが,わが国では,これを大人にも用いている。
新増愚按口訣集をよむと,北山友松が妊娠中の婦人にこの方を用いて著効を得ている。中でも和田東郭は好んでこの方を用い,大人の半身不随にこの方を使用したのは,東郭が最初だと云われている。
そこで東郭がこの方について,どのような考え方をしてい然かを知る必要がある。
蕉窓方意解には,次のようにのべている。
「此薬も亦四逆散の変方にて腹形大抵四逆散と同様なれども,拘攣腹表に浮みたるを抑肝の標的とす。四逆散は拘攣腹底に沈むを標的とすべし。其上抑肝の方には,多怒,不眠,性急の症など甚しきを主症とするなり。多怒,不眠,性急などは,肝気熾盛にして肝血も亦随て損耗す。故に帰芍,肝血を潤し,芎藭肝血を疎通し,柴胡,釣藤,甘草,肝気をゆるむ。既に右の通り,肝気充極して上み胸脇に引上るゆへ,腸胃の水飲も下降せずして,皆上みへ引上る也。右疎肝,緩肝,潤肝の薬にて両脇心下和らぎ,彼水飲も亦下降し易き時節になるゆえ,朮,茯苓にて,小水へ消導する也。本方芍薬なし,甘草の分量も亦少し。按ずるに,此薬専ら肝気を潤し緩むるを以て主とす。故に余常に芍薬甘草湯を合てこれを用ゆ。」
ここで東郭がのべているように,抑肝散の腹証は,四逆散と同様で,腹直筋の拘攣があり,私の経験でも,腹表に浮んで腹直筋を触れるものが多いが,中には腹直筋の拘攣をみとめにくいものもある。
浅田宗伯も,目黒道琢の説を参酌して,次のようにのべている。
「此方は四逆散の変方にて,すべて肝部にぞくし,筋脉強急する者を治す。四逆散は腹中任脉通り拘急して,胸脇の下に衝く者を主とす。此方は左腹拘急よりして,四肢筋脉に攣急する者を主とす。此方を大人半身不随に用ゆるは東郭の経験なり。半身不随並に不寝の症に此方を用ゆるは,心下より任脉通り,攣急動悸あり,心下に気聚りて痞する気味あり。医手を以って按ぜばさのみ見えねども,病人に問えば,必ず痞すと云ふ。また左脇下柔かなれども,少し筋急ある症ならば,怒はなしやと問ふべし。もし怒気あらば,この方効なしと云ふことなし。」

抑肝散の証に2つの型があり,1つは緊張興奮型で,他の1つは弛緩沈鬱型である。この弛緩沈鬱型の患者の腹証は,腹部は全般的に弛緩し,僅に季肋下で腹直筋を軽くふれるか,全く腹直筋の緊張をみとめず,臍の左側から,みずおちにかけて動悸の亢進をみとめるものがある。この臍部から,みずおちにかけて強く動悸をふれる患者に,浅井南溟は抑肝散加陳皮半夏を用いて著効を得たといい,矢数道明博士も,これを追試して奇効を得たことを報告している。私も同様の治験をもっているが,このような患者に,陳皮半夏を加えずに,抑肝散だけを用いても効のあることを,最近私は経験したが,これは症例が少いので,他日まとめて報告することにし,今日は緊張興奮型のものだけをまとめてみた。これらの症例の腹証は第2表にみられる通りである。この内の第4例と第5例とは,緊張型と弛緩型の中間にあって,どちらとも,きめかねたが,その腹証を他のものと比較するためにここに入れておいた。
第4例だけに,胸部において動悸の亢進している点に注意してほしい。

抑肝散の加方
すでにのべたように,和田東郭は抑肝散に芍薬を加えて用いたが,津田積山,浅田宗伯等も芍薬を加えている。ところで,山田椿庭は,椿庭夜話の中で,抑肝散に芍薬を加えるのは,立方の趣旨に反するといい,これに羚羊角を加えている。また北山人と浅井南溟は,この方に陳皮半夏を加えて,特異の腹証のものに用いている。私はこの方に芍薬黄連を加え,或は芍薬厚朴を加えて用いる。

抑肝散の二つの型
抑肝散に2つの型がある。1つは緊張,興奮型で,他の1つは弛緩,沈鬱型であることについては,腹証のところで,ちよっとふれておいた。東郭は,緊張,興奮型に,抑肝散を用いたので,芍薬を加え,甘草を増量した。北山人や浅井南溟は,弛緩,沈鬱型に,この方を用いたので,芍薬を加えずに,陳皮,半夏を加えた。ところで,山田業精は,浅井南溟ならば抑肝散加陳皮半夏を用いたであろう患者に,抑肝散を用いて著効を得ている。私も,このひそみにならって,最近抑肝散を用いてみるに,やはり効顕がある。参考のために,山田業精の治験を,和漢医林新誌から引用してみよう。

その1。本郷真砂町志母谷氏は皇居御造営掛を勤む。其人1日気力大に衰弱し,但平臥を嗜むのみ。気宇鬱閉,食に味ひなく,二便利せず,夜中快寝せず,其脉弦,腹部軟弱にして微動あり。乃ち抑肝散を法の如く蜜丸に作りて与ふるに,霍然として治す。

その2。神田湊川町鍛冶職中川氏至て貧にして大に職務に勉励す。而して1日,其妻貧を厭ふにより離別を乞て,其家を去れり。爾後,其人気力漸々に衰へ,唯平臥するを嗜む。食味美ならず,頭痛,肩背強急,二便不利,診するに,其脉弦,其腹軟,両脇下微脹,臍上大に動あり,前方を与て治す。

その3。駒込東片町茶商,川口弥十,年二十四,なり,腰以下力なく歩行し難く,終日坐するのみ。大便微溏,小便赤渋,飲食美ならず,夜中安眠しがたく,只夢みるのみ。診するに,其脉沈弦,腹中軟弱にして両肋下拘急せり。乃ち前方を与えて治す。

その4。本郷2丁目菓子商,青木政吉,年六十許,1日四支痿弱,起居転側自由ならず,遺尿,失便,診するに,脉弦にして腹部軟弱,心下拘急,一身温にして言語平の如く,気分大に変せず。前方を蜜煉にして服さしむ。頓に治す。

その5。本郷西竹町,車夫伊藤,次男幸蔵と云へる児齢四年なり。1日右手の5指とも悉く縦緩して自ら屈することを得ず,而して唇吻左方に曲り,食飲減少,気宇閉て快然ならず。其脉弦にして遅なり。其右手を検するに氷冷恰も死体を撫でるが如し。余以て肝蔵鬱閉の所為となし,前方を与ふるに,追日快く,遂に左耳より膿汁淋出して瘳えたり。これらの治験は,いづれも,弛緩,沈鬱型で,その脉は弦であるが,腹部は軟弱で,ただ僅に季肋下において,腹筋の拘急をみるだけで,緊張興奮型の腹型とは異なるものである。

自家経験

第2表は,抑肝散を緊張興奮型の患者に用いた例で,第3例以外はすべて,抑肝散加芍薬黄連を用い,第3例は,抑肝散加芍薬厚朴を用いた。表によって説明する。
1) 約半ヶ年前に脳出血のため右半身に麻痺が起り,50日ほど某病院に入院した。発病以来,非常に気むづかしくなり,不眠を訴えるようになった。便秘気味である。初診時の血圧は124~86。左右の腹直筋が硬く突っばっている。右が殊にひどい。臍下の正中線に,軽く棒状の抵抗をふれる。
気むづかしいという症状,腹証によって,抑肝散加芍薬黄連を用いる。
服薬2ヵ月目位から,麻痺はほとんど回復し,安眠もできるようになった。ただ,便秘がつづくので,3週間目より,大黄3.0を加えた。

2) この患者は,時々癲癇様の痙攣発作があり,真正癲癇を疑って,某大学で診察をうけたが,脳波の検査では,癲癇ではないと診断せられた。不眠があって,食欲がない。のぼせと,頭重がある。月経は不順である。左右の腹直筋が図のように緊張している。のほせと不眠を目標に,黄連解毒湯を用いたところ,ねむれるようになったが,毎日,じんましんが出るようになり,頭痛,食欲不振がつづき,時々嘔吐を起すようになった。そして,服薬4週間目に,嘔吐のあとで,痙攣を起して,意識が消失した。そこで,不眠,嘔吐,痙攣,食欲不振という症状と腹証を目標にして,抑肝散加芍薬黄連にしたところ,1回の痙攣発作を起しただけで,他の症状も軽快した。

3) チック病で,のどをしきりに鳴らしたり,顔をゆがめたりする。それにいらいらして落つきがない。食欲が少い。腹直筋を季肋下で,少し硬くふれる。抑肝散加芍薬厚朴とする。これで漸次軽快,4ヵ月でほぼ全治。

4) 白内障と慢性腎炎がある。あごがだるいというのが主訴である。食事は1椀がやっとである。それに右側腹が坐位から立位に移る時に痛み,急に立ち上れない。気分が重い。腹直筋の緊張はなく,臍部で動悸をふれる。右の肩から肩胛間部がいたむ。抑肝散加芍薬黄連とする。10日の服薬で,あこのだるいのが治り,背や側腹の疼痛も1ヵ月あまりで消えた。

5) この患者は副鼻腔炎で手術をうけたことがあるが,約1ヵ年ほど前から,まばたきが多くなり,医師から結膜炎と診断せられて,治療をうけている中に,右の眼瞼がたれ下って,開かなくなった。右の肩がひどくこる。便秘の傾向がある。
腹診をしてみると,胸脇苦満があり,右の腹直筋が緊張している。
眼瞼を無理に押し開けようとすると,痙攣する。
抑肝散加芍薬黄連を用いる。
これをのむと,大便の通じがよくなり,何となく気分がよい。30日目頃から,少しづつ眼が開く。くびのつるのも軽快。疲れると,眼がしぶくなって,眼をつむりたくなるが,その他はよい。右季肋下の緊張がとれた。
10ヵ月ほど服薬して,全治。

6) 主訴は,何となく,自分に自信がないというだけである。それに時々幻聴がある。その他一切つかまえどころがない。腹診では,右季肋下がやや硬い。
抑肝散加芍薬黄連を用いる。
2週間分で,幻聴も消え,自分らしくなったと休薬。

7) この患者は,メニエール病とのふれこみで来院したが,めまい,耳鳴,嘔吐,足冷,発作性の多汗があり,脉は結滞し,便秘があった。腹部は膨満,緊張して,殊に下腹が膨満していた。
私はこれに抑肝散加芍薬黄連を用いたが,これでめまい,耳鳴,嘔吐がよくなり,便通も毎日あるようになり,1ヵ月足らずで全治した。

8) この患者は,物が二重にも,三重にも見えて,眼をあけていると,ひどいめまいと悪心が来て歩けない。左眼をつむってていると,どうやら歩ける。不眠がある。左の眼球が強直状になって,廻旋しない。某大学では,脳に何か異常を起しているらしいから,手術をしてみようと云われたが,手術を欲せず,当院に治を乞うた。
腹診してみるに,左右の腹直筋が緊張している。
抑肝散加芍薬黄連を用いる。漸々に軽快。全治まで10ヵ月あまりを要したが,手術をせず,漢方薬だけで,眼球が正常に運動するようになった。

9) 約3年前より健康を害し,高血圧があり,腰痛を訴えるようになり,最近は,下腹にも鈍痛があり,腰がひどく冷える。口渇,肩こり,頻尿があり,気分がいらつく。
腹診すると,胸脇苦満があり,臍下には,あまり力がない。大便は1日1行。ウロビリノーゲン陽性。
私はこれに抑肝散加芍薬黄連を用いたが,雨のふる日だけ肩がこる。いらつかなくなり,元気が出た。朝早く眼がさめるようになり,肉がしまり,血圧も正常となった。

10) 真性癩癇で,3歳より10年間,アレビアチンやルミナールをのみつづけた。ところが,1ヵ年ほど前から,これらの薬をのんでも効なく,毎日発作が起る。
発作時には,踊るような奇妙な恰好をする。それに幻聴がある。この幻聴は,専門の某医が,根本から治る薬だといって調合してくれた薬をのみはじめてから起るようになった。そのため,夜も,幻聴におびやかされて眠らない。しかし発作は少い。
腹部は,板のように硬い。診察中も,奇声を発する。便秘がある。
抑肝散加芍薬黄連を用いる。
これをのむと,便通が快通し,食がすすむようになった。幻聴も少くなった。1ヵ月ほどたつと,肉づきがよくなり,発作もなく落付いたが,ひどい口渇を訴えるので,白虎加人参湯とする。効がない。
そればかりか,ひどく興奮する。そこで,柴胡加竜骨牡蠣湯加芍薬去大黄を用いる。
口渇は依然として甚しく,幻聴がまた多く,奇声を発して,踊るような奇妙な恰好をする,夜間に,痙攣発作が頻発する。
そこで,柴胡桂枝湯中の芍薬を増量して与えたが,依然として変化がない。
そこで,また抑肝散加芍薬黄連にもどしたところ,急激に,発作が減じ,幻聴がなくなり,落付いている。

11) この患者は,23歳の時に,突然に意識が消失して,言語を発することが出来なくなり,それから1ヵ月に,2,3回癩癇様の発作を繰返すようになった。しかし発作のない時は,平素とかわらなかった。ところが,昭和36年の1月にまた意識が消失して,某病院に入院して,頭蓋骨を切開してもらった。
現在もやはり,1ヵ月15,6回の発作と,左半身不随があり,言語障害もある。安眠する。便秘の傾向。



【一般用漢方製剤承認基準】

抑肝散
〔成分・分量〕
当帰3、釣藤鈎3、川芎3、白朮4(蒼朮も可)、茯苓4、柴胡2-5、甘草1.5
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:
神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症注)
《備考》
注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】





抑肝散加芍薬黄連
〔成分・分量〕
当帰5.5、釣藤鈎1.5、川芎2.7、白朮5.3(蒼朮も可)、茯苓6.5、柴胡2、甘草0.6、芍薬4、黄連0.3
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度以上をめやすとして、神経のたかぶりが強く、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:
神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症注)
《備考》
注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】


抑肝散加陳皮半夏
〔成分・分量〕
当帰3、釣藤鈎3、川芎3、白朮4(蒼朮も可)、茯苓4、柴胡2-5、甘草1.5、陳皮3、半夏5
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:
神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症注)、歯ぎしり
《備考》
注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】




抑肝散
【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1. 次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
2. 服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位
症 状
皮 膚
発疹・発赤、かゆみ
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
間質性肺炎
階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
偽アルドステロン症、
ミオパチー1)
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
肝機能障害
発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1
g以上)含有する製剤に記載すること。〕
3. 1ヵ月位(小児夜泣きに服用する場合には1週間位)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
4. 長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状及び身体症状のことである。
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1. 次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2. 次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3. 服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4. 直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状及び身体症状のことである。



抑肝散加陳皮半夏
【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位
症 状
皮 膚
発疹・発赤、かゆみ
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
3.1ヵ月位(小児夜泣きに服用する場合には1週間位)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。







※搐(ちく):ひきつる、痙攣(けいれん)する


※浅井 南溟 (あさい なんめい)
1734-1781 江戸時代中期の医師。
享保19年11月18日生まれ。浅井図南の長男。
京都の人。朝廷につかえ,安永9年父の跡をついで尾張名古屋藩の藩医。
脈法に通じ,診脈の祖と称された。
天明元年10月13日死去。48歳。
名は正路(まさみち)。
字は由卿。
通称は周碩。

津田積山  津田玄仙
天明から文化年間にかけて、上総(干葉県)の片田舎に名医と崇敬された医家がいた。それが津田玄仙である。玄仙は元文二年(一七三七)岩代国(福島県)桑折村に生まれた。

玄仙は名を兼詮、号を積山と称し、また玄僊とも書く。後に田村家に入り、田村玄仙といった。津田氏は代々奥州白河藩松平越中守の待医で、奥羽の間に名が 聞こえていたが、父津田玄琳はなぜか辞職して白河を去り、岩代国桑折村に隠退した。玄仙は医業を家庭で学び、やや年長になってから水戸に遊学し、医業を芦 田松意に学び、さらに京都で饗庭道庵を師匠にして、その秘伝を受け、久しい間京都大坂に居た。後に江戸に来て開業したが、その治療は好評で、また医術を学 ぼうとする人も多かった。それが如何なる理由なのか、上総の片すみの馬籠(現在は木更津市に編入)に引っ込んだ。

この地に享保時代から、田村という医家があった。玄仙が馬籠に来て医業の盛名が上がっている頃、田村家に後継者がなくなり、玄仙が養嗣として迎えられ た。先人の記載に、玄仙は長身肥大で、音声は鐘の鳴るようであり、威厳があってしかも温容で、誠意をもって人に接したので、誰も敬服、心酔するばかりで あった。また、病家への往診にはいつも牛にのって出かけ、書物を牛の角に引っかけて読みながら行ったという。

この馬籠時代に、玄仙は次々と名著を残す。『療治茶談』『療治経験筆記』などがそれである。とりわけ『茶談』は日常の臨床経験による貴重な口訳集録で、 刊本で広くゆきわたったので、患者は門前市をなし、門人も百有余人あって、五十余州にわたったという。玄仙は文化六年(一八○九)没した。行年七十三歳。 墓は現在も子孫の田村家の家敷内にある。

玄仙の師、饗庭道庵の経歴はよくわかっていないが、専ら臨床経験によって処方を運用しようとする医家であったと考えられている。玄仙はその医風を継いで、補中益気湯をはじめとして、実際の臨床に役立つ医術をみがき、広めていった。

2012年3月20日火曜日

人参養栄湯(にんじんようえいとう) の 効能・効果 と 副作用

《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
57.人参養栄湯(にんじんようえいとう) 和剤局方

地黄4.0 当帰4.0 朮4.0 茯苓4.0 桂枝2.5 芍薬2.0 遠志2.0 陳皮2.0 黄耆1.5 人参3.0 甘草1.0 五味子1.0


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
やせて血色悪く,微熱,悪寒,咳嗽がとれずに倦怠感が著しく,食欲不振で精神不安,不眠,盗汗 などもあり,便秘気味のもの。
本方は黄耆建中湯の変方と見なされる処方で,病後で衰弱した場合によく用いられ,特に肺結核に応用されることが多い。即ち小柴胡湯補中益気湯を用いても微熱,悪寒,咳嗽がとれず,更に食欲が減退するものに奏効する。また頑固な咳嗽が続き,衰弱のため麻黄剤は使えないが麦門冬湯半夏厚朴湯,柴胡剤などでも効果がない場合本方を試みるとよい。本方適応症状には便秘の傾傾が認められるが,排泄される便は軟いのが普通である。従って衰弱したものや虚弱な老人の便秘にも応用される。本方と柴胡桂枝干姜湯との鑑別は,柴胡桂枝干姜湯適応症は神経症状が更に強く,胸内苦悶,胸部あるいは腹部に動悸を訴え,下痢の傾向があるから区別出来る。
従って本方服用後頭痛,のぼせを訴えるときは柴胡桂枝干姜湯を,胃痛,腹痛を訴えるときは小建中湯を考慮すべきである。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
本方は呼吸器疾患と消化器疾患が併発し,熱症状と胃腸症状ならびに神経症状などを伴う点で,あたかも柴胡桂枝湯の適応症状に似ているが,まったく異質なもので本方が適応するものは,応用の目標らんに記載のごとく,病勢が進んで体力が消耗し,それがために消耗熱や咳嗽,神経症状などを発現するものが対象になる。とくに本方投与の投象は病巣が進展する結核症に多く,内的再感染の傾向やシューブの疑いがあるなどのもので発熱しているが,一般解熱剤の投与に一考を要し,しかも激しい咳嗽と粘稠な痰を喀出し,消化障害があって食思が振るわず,ネアセ,精神不安など重篤な複合症候あるものによく適応する。

類似症状の鑑別 本方は以上のとおり病勢が発揚性で消耗熱,咳,タン,胃腸症状を目安にする。

柴胡桂枝干姜湯 臨床的にはまったく本方と似ているが,さらに衰弱が著しく内臓機能も全般的に悪く,消化不良性の下痢便,口渇,不眠,胸部の動悸や腹部の動悸が亢進して,本方以上に神経症状が著明な者によい。

十全大補湯 本方症状に似ているが病勢がややおちついて,熱,咳,喀痰などが緩和となり衰弱の徴候が主となるものを目安に用いる。

補中益湯気 病勢が停止し回復の傾向あるものの体力を増強し,自然治癒能力を高度に発揮させる薬方で,衰弱,貧血,疲労倦怠,無気力,食欲不振などを対象に応用する。


後世要方解説〉 矢数 道明先生
○和剤局方「積労虚損,四肢沈滞,骨肉酸疼,吸々として少気,行動喘啜,小腹拘急,腰背強痛,心虚驚悸,咽乾唇燥,飲食味ひ無く陽陰衰弱,悲憂惨戚,多臥少起,久しき者は積年,急なる者は百日,漸く痩削に至る。五臓気竭き,振復すべきこと難きを治す。又肺と大腸と倶に虚し,咳嗽下利,嘔吐,痰涎を治す。」
○医方口訣集「気血虚して心室衰ふる者之を主る」
即ち本方は補病困憊の極で,元気衰え,貧血を来し,津液枯涸して皮膚栄養が衰え,悪液質を呈し,五体の活気が悉く衰えたものを賦活しようとするものである。主治に咳嗽下利とあるが,咳嗽下痢のある場合は注意を要する。


当荘庵家方口解〉 矢数 道明先生
十全大補湯の症に似て,どこやら少し熱あるによし。心虚したる云ふ目的に用ひる也。心虚痰鬱の症にも用ひて効あることあり,虚人によし。


経記筆記〉 津田 玄仙先生
人参養栄湯を諸病に用ゆる目的は,第1毛髪随全,第2顔色無沢,第3忽々喜忘,第4只痰不食,第5心悸不眠,第6周身枯痰,第7爪枯筋涸 以上を人参養栄湯の七症と云ふなり。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は気血両虚を主とすれども十補湯に比すれば遠志,橘皮,五味子ありて脾肺を維持するの力を優なり。三因には肺与大腸倶虚を目的にて下利喘乏に用てあり,万病とも此意味のある処に用ゆべし又傷寒壊病に先輩炙甘草湯と此方を使ひ分てあり熟考すべし 又虚労熱有て咳し下痢する者に用ゆ。


【一般用医薬品承認基準】
人参養栄湯
〔成分・分量〕
人参3、当帰4、芍薬2-4、地黄4、白朮4(蒼朮も可)、茯苓4、桂皮2-2.5、黄耆1.5-2.5、陳皮(橘皮も可)2-2.5、遠志1-2、五味子1-1.5、甘草1-1.5

〔用法・用量〕


〔効能・効果〕
体力虚弱なものの次の諸症:
病後・術後などの体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血


【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位
症 状
皮 膚
発疹・発赤、かゆみ
消化器
胃部不快感
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
偽アルドステロン症、ミオパチー1)
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
肝機能障害
発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
539
3.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬
剤師又は登録販売者に相談すること
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
〔成分及び分量に関連する注意として,成分及び分量の項目に続けて以下を記載すること.〕
本剤の服用により,糖尿病の検査値に影響を及ぼすことがある.
〔1日最大配合量がオンジとして1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること.〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくても
よい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人
(6)次の症状のある人。
540
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕