健康情報: 補陽還五湯(ほようかんごとう) の 効能・効果 と 副作用

2012年11月5日月曜日

補陽還五湯(ほようかんごとう) の 効能・効果 と 副作用

一般用漢方製剤承認基準
補陽還五湯(ほようかんごとう)
〔成分・分量〕 黄耆5、当帰3、芍薬3、地竜2、川芎2、桃仁2、紅花2

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力虚弱なものの次の諸症:
しびれ、筋力低下、頻尿、軽い尿漏


臨床応用 漢方處方解説』 矢数道明著 創元社刊
104 補陽還五湯(ほようかんごとう) 〔医林改錯〕
       黄耆五・〇 当帰・芍薬各三・〇 川芎・桃仁・紅花・地竜各二・〇
 「主身不随、口眼歪斜、言語蹇渋(げんごけんじゅう:なやみしぶる)、口角流涎、大便乾燥、遺尿失禁するを治す」
 本方は脳血栓にとくに効ありとて、ホンコンの陳太義氏が「漢方の臨床」誌(一一巻九号)に寄稿されたものである。わが国では珍しい処方である。
 脳軟化症・脳血栓に用いる。


『伝統医学Vol.3 No.3(2000.9)』 平馬直樹
補陽還五湯
 気虚血瘀証に用いる補気活血の方剤として,やは り『医林改錯』を出典とする補陽還五湯(ほようかんごとう) を紹介します。
中風後遺症の専剤として中国では使用頻度の高 い方剤です。 中風の後,瘀血が脈絡を阻滞するため脈絡が通利 せず,気血の運行が阻害されて,半身の気がめぐらず血は栄養することができなくなって生ずる半身不随・口眼歪斜・構音障害・膀胱障害などに用いま す。正気は虚衰し,瘀血は脈絡を阻塞し,麻痺の部位は,気虚血滞の状態となっています。このような 状態に対して,治法は補気を主として,補助的に活 血通絡を加えます。補法と活血法を結合させた扶正去瘀法の一種です。 補陽還五湯の組成は,黄耆(おうぎ) ・当帰尾・赤芍・川芎2・ 桃仁・紅花・地竜(じりゅう)の7味から成ります。主薬の黄耆は, 30~120gと大量に用い,脾胃の元気を振るい起こし, 気を盛んにして血の流行を促します。他の薬はみな, 3~9gの少量を用います。それらはすべて活血の働き がありますが,当帰は養血の効もあり,黄耆と合わせて気血を補っています。地竜(動物生薬ミミズ)は, ミミズが土中を走行するように,塞がった経脈を掘り 進むイメージの通経活絡の作用にすぐれます。合わせて元気を旺盛にして,血のめぐりを回復して,麻痺などの機能障害を改善する配合となっています。 血府逐瘀湯と補陽還五湯の創製者,清代の王清任は 『医林改錯』を著し,活血法に新機軸を打ち出しました。 この書には清任の創製した22方の理血剤が収録されていますが,気と血の流動が密接に連関していることから,彼の方剤はほとんどが気の調整と活血を結合したもので,理気活血の剤と補気活血の剤に大別できます。前者の代表方剤が血府逐瘀湯であり,後者の代表方剤が補陽還五湯です。王清任の功績は大きく,彼の後,清末の唐容川(とうようせん)は 『血証論(けっしょうろん) 』を著し,血の病証を詳しく分析し,活血法の応用を広げました。これらの成果は,周学海(しゅうがっかい)・張錫純(ちょうしゃくじゅん)らによってさらに発展を見て,現代では活血化瘀法が広い領域の疾患に応用されるようになっています。