健康情報: 12月 2011

2011年12月17日土曜日

黄連解毒湯(おうれんげどくとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
 本方は陽實證の藥方で皆消炎の劑を以て成り立ち、充血を去り,精神の不安を除く効がある。諸熱性病の經過中に用いて、日數を經たる殘餘餘熱を解する。患者は炎症充血による精神不安・煩悶を訴え、尿が赤く、或は諸出血を來し脈は沈んで力があり、心下部が痞えて抵抗がある。
 方中の黄連・黄芩は炎症・充血を去り、心下の痞え不安を治し、梔子・黄柏は消炎に利尿を兼ね、黄連・黄芩に協力する。
 以上の目標に從つて此方は、諸熱性病・喀血・吐血・衂血・下血・腦充血・腦溢血・精神病・血尿・皮膚瘙痒症等に応用される。


『漢方精撰百八方』
94.〔黄連解毒湯〕(おうれんげどくとう)
〔出典〕外台秘要
〔処方〕黄連2.0 黄芩3.0 梔子、黄柏 各2.0
〔目標〕体格はがっしりとして体質が頑丈な人、もしくは体格、体質中ぐらい人がのぼせ気味で、顔色が紅く、脈の緊張がよく、腹部は表面は柔軟であっても底に力があり、次のような症状があるものである。
(1)気分がいらいらし、気持ちが不安で、よく眠れず、胃部がつかえ、腹診すると心下が濡(表面は軟らかく、底の方に抵抗がある)のもの。
(2)上腹部が痛み、心下部一体が膨満して固く張り、押すと圧痛がある。
(3)頭痛、耳鳴、血圧亢進などがある。
(4)吐血、鼻出血、下血、潜出血などの出血があるもの。
 以上のほか、むなぐるしく、手足があつくるしく、或いは黄疸があるなどの点がみられる。
〔かんどころ〕黄連解毒湯の証は、三黄瀉心湯証によく似ているが、その違いは、便秘の傾向のないこととなっている。しかし、時には便秘することもあり、大黄入り黄解丸というのが作られているくらいである。両者の違いは、むしろ、この何ともいいようのない”むなぐるしさ”にある。
 そのほか、顔色の赤みがかっていてのぼせぎみというところも、かんどころである。
〔応用〕諸種の出血(喀血、吐血、衂血、子宮出血、下血、痔出血、脳出血等)、高血圧、不眠症、神経症、精神病、血の道、胃炎、胃潰瘍、胃酸過多症、宿酔、黄疸皮膚病、酒査鼻、肝斑、等
〔治験〕3,4年前、18才ぐらいの少女が母親につれられて来た。
 お腹が痛くて、3日ほど食物を何も食べていないという。また、はじめの夜、少し血を吐いたともいう。体格は中ぐらいで、顔色は余り悪くない。腹診すると、心下部一体がやや膨満しているが、余り固くないので、よほど注意しないと上腹部が緊張していることがわからない。脈も余り特徴がない。
 血を吐くような胃潰瘍があるとはとても思えないので、よく聞いてみると、友人と夜遊びして、洋酒を相当量のんだ翌日から悪くなったと、白状した。黄連解毒湯を与えたところ、2日ほどで痛みが止まり、1週間ほどですっかり治った。病気は急性胃炎であったろう。
山田光胤


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
10 瀉心湯類(しゃしんとうるい)
 瀉心湯類は、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)を主薬とし、心下痞硬(前出、腹診の項参照)および心下痞硬によって起こる各種の疾患を目標に用いられる。

4 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)  (外台秘要)
 〔黄芩(おうごん)三、梔子(しし)二、黄連(おうれん)、黄柏(おうばく)各一・五〕
  全身の実熱によって起こる炎症と充血を伴う症状を治す。したがって、胃部が痞え、炎症と充血によって顔面赤く、上衝し、不安焦燥にかられ、心 悸亢進、出血の傾向がある。気分がおちつかずイライラし、のぼせ、不眠などの精神症状などを目標とする。三黄瀉心湯證で、便秘の傾向が弱い。



『《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
6.黄連解毒湯(おうれんげどくとう) 外台秘要方

黄連1.5 黄柏1.5 黄芩3.0 梔子2.0

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 のぼせて胃部がつかえるもの。あるいは軟便で便秘したり,目が充血するもの。
 本方は充血を去り,精神不安を除くから,喀血,吐血には止血と同時に神経症状も消散させる。また本方に配合されている黄連,黄柏は結核菌の化学療法による耐性菌にも有効であるから,本方と小柴胡湯を併用すれば食欲増進作用もあって,肺結核で療養中の者にしばしば著効が得られる。平素あまり強健でない人で2,3日便通がなく,しかも排便すれば軟便であるような場合に適するが,硬便で便秘するものには三黄瀉心湯のほうがよい。本方でも下痢するものには半夏瀉心湯が無難である。本方が高血圧に適応するものには目標欄記載の症状で特に項(うなじ)がこるものによいが,血圧降下作用は一過性であるから,高血圧症の根本治療には柴胡剤と合方すべきである。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
 本方は消炎,止血,鎮静作用が顕著なところから単方または他薬と合方して繁用されている。また本方に配合されているオウレン,オウバクの有効成分ベルベリンは,結核菌の化学療法による耐性菌にも有効であるところから,本方と柴胡剤の合方が補助療法として重宝されている。
(1) 諸出血 本方が適応する出血は比較的に量が多く出血の割に,著しい貧血を認めないもの。
(2) 高血圧,脳充血,脳溢血 目標欄記載の症状があるが,全般的に緩和なものに応用され,特に後頭部から首筋にかけてこりやすく,目が充血するものによい。
(3) 神経症 頭痛,不眠,肩こり,のぼせなどの神経症状を目安に,平素あまり強健でないものに応用する。
(4) ヒフ疾患 本方の消炎,解毒,止痒作用はヒフ疾患に必需的な存在になっている。すなわち小柴胡湯,十味敗毒湯,桂枝茯苓丸,四物湯などと合方して患部や全身瘙痒を訴えるもに投与すると,偉効を奏する。
(5) 二日酔 本方は五苓散とともに二日酔の不快症状を比較的速やかに消失せしめる。特に頭痛を伴うものによいが,五苓散と合方して用いるのもよい。
(6) 打撲症 打撲症および打撲の後遺症に,本方と等量の小麦粉を混和し,卵白か水でねり,患部に貼用する。古くてひどい打撲はチアノーゼが再現して後に治癒する。
(7) 便秘症 間歇的に便秘するが軟便で,下剤をのむと下痢や腹痛を起こすものによい。ひどい便秘で硬便には三黄瀉心湯を応用する。

 注意事項 出血多量で貧血したり,貧血症の諸出血には本方を用いず,芎帰膠艾湯を考える。三黄瀉心湯との鑑別は赤ら顔の卒中体質で硬便や宿便の便秘で本方症状があれば三黄瀉心湯が適応する。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
 体格はがっしりとして体質が頑丈な人,もしくは体句,体質が中ぐらいの人が,のぼせ,上逆感などの上衝の傾向があって瀉心湯(三黄瀉心湯)の証に準じ,しかも便秘の傾向がなく,さらに心煩,心中懊憹,煩熱,あるいは黄疸などがある場合である。


漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
 この方は発病後,日数を経て余熱が内にこもり,舌は乾燥し,時には黒苔を生じ,胸苦しく,口が渇き,悪心,不眠などのあるものに用いる。このさい体の表面にくわっくわっとした浮び出た熱はなく,深く沈んで小さくても力がある。腹にも底力がある。悪風や悪寒のある場合にはこの処方は用いない。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は陽実証の薬方で皆消炎の剤を以て成り立ち,充血を去り,精神の不安を除く効がある。諸熱性病の経過中に用いて,日数を経たる残余余熱を解する。患者は炎症充血による精神不安,煩悶を訴え,尿が赤く,或は諸出血を来し脈は沈んで力があり、心下部が痞えて抵抗がある。方中の黄連,黄芩は炎症,充血を去り,心下の痞え不安を治し,梔子,黄柏は消炎に利尿を兼ね.黄連,黄芩に協力する。以上の目標に従って此方は諸熱性病,喀血,吐血,衂血,下血,脳充血,脳溢血,精神病,血尿,皮膚瘙痒症等に応用される。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 三焦(上中下の三焦)の実熱によって起こる,炎症と充血をともなった諸症を治するのが目標である。小柴胡湯類の半外半裏の熱でもない一種特異の遷延熱を解するものである。実証で腹残力があり,脈も十分力があって,熱はあるが沈の傾向を帯びたものである。一般雑病のうち炎症と充血のため顔色赤き上衝し,不安焦躁,心悸亢進の気味があり,出血の傾向を有するものを参考として用いる。本方を不眠症として用いるときは,頭がさえてなかなか眠れない。気分が落ちつかず,つまらないことが気にかかる,いらいらする,のぼせる,というようなことを目標にする。高血圧症や更年期障害のときの不眠にこの症がある。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は胸中熱邪を清解するの聖剤也。一名倉公の火剤とす。其目的は梔子豉湯の証にして熱勢劇しき者に用ゆ。苦味に堪えかぬる者は泡剤にして与ふべし。大熱有て下利洞泄する者或痧病等の熱毒深く洞下する者を治す又狗猫鼠などの毒を解す又喜笑不止者を治す。是亦心中懊憹のなす所なれば也,又可氏は此方の弊を痛く論すれども実は其妙用を知らぬ者なり又酒毒を解するに妙なり。外台の文を熟読すべし。又外台に黄柏去り大黄を加えて大黄湯と名ずく。吉益東洞は其方を用し由証に依て加減すべし。


漢方と漢薬〉 第4巻 第10号 矢数 道明先生
(前略) 黄連解毒湯は肘後方の傷寒時気温病門に出で,黄連3両,黄柏,黄芩各2両,梔子14枚の4味で,主治は熱極,心下煩悶,狂言鬼を見,起走せんと欲す,煩嘔眠るを得ざるを治す。といふのである。
 此の方は三焦之火を瀉すと云ふて,火を消す薬である,即ち消炎,解熱,清涼の能があり,三黄瀉心湯の類似方に属する。而もその消炎作用が,血中の遊火,残熱余熱を司るものであり,発散によるものではなく,柴胡の和解によるものでもなく,大黄芒硝の瀉下によるものでもなく,石膏の主治する処でもないといふ熱をよくこの方によって治し得らるるといはれてゐる。茲に黄芩は上焦の火を瀉し,梔子は五臓の遊火を瀉すとて,三焦の火を悉く消してくれるといふのである。
 さて外台秘要巻1傷寒門に崔氏が方として本方の記載がある。それによると前軍督護劉車なる者が時疫を得て3日,已に汗して解した。因て酒を飲んだところ復劇しくなり煩悶乾嘔口燥に苦しむ,呻吟錯語臥すを得ず,そこで余此の黄連解毒湯を作らんことを思ひ,方,黄連3両,黄芩,黄柏各2両,梔子14枚,擘右四味切て水6升を以て似て2升を取り,1服を服せしめた処,目明かとなり。両服して粥を進むると。此に於て漸く差えた。余以て凡そ大熱盛んにして煩嘔呻吟錯語眠るを得ざるもの皆佳しと,語り伝へて諸人之を用ひて亦効があった。此れは直ちに熱毒を解し,酷熱を除くので,必ずしも酒を飲んで劇しき者のみでない。云々とあるが面白い記載である。目標としては私は和田東郭翁の口訣に如くはないと思ふてゐる。即ち之を利用すると,
(1)黄連解毒湯は半表半裏の熱にも非ず,又石膏,知母,麦門,粳米の類にて清涼潤燥する肉中の熱にも非ず,又大黄芒硝にて効を取る裏実の熱にもあらざるを云也,解毒湯の的症は日数を経ること久しく,俗に残熱余熱など云ふ位の熱にて,肌表はさのみ熱にてもなく底がつよくしぶくとき熱候を標的とすべし。これを名けてふるびたる熱とは云也。故に日数深からずクワックワッと勢つよき熱には用ゆべからず。且つ老少に限らず肌膚枯燥してかさかさとしたる手当りのものを標的とし,舌候は黒苔にして乾燥甚しきもの標的とすべし,黄苔白苔のものには宜しからず。云々。
(2)然れども此の症実火の症にして虚火の症にあらず,故に満腔上み心下に攣縮し,任脈水分に動悸なく,其の脈沈細,或は軟弱なれども底にしかと力あるものなり。此の脈腹と舌候及熱候とを以て標的とすべし。
とあって、即ち脈は沈細にして底に力あり、腹は心下に攣縮あり,動悸なく,舌は黒苔乾燥(必ずしも黒苔を要せざるものと思ふ),その證としては日数を経てふるびたる残余余熱により煩渇乾嘔眠るを得ず不安,等を目標とするものである。
 又蕉窓方意解に,結毒沉涸して諸薬効あらざるもの奇良軽粉の類を施せども効なきものに用ゆとあるが,先師森道伯先生は本方を以て胎毒による虚弱体質改造薬及諸種の病毒駆逐の根本とした。即ち柴胡清肝散竜胆瀉肝湯,荊芥連翹湯等の基本は四物湯と黄連解毒湯の合方即ち温清飲である。(後略)










【一般用漢方製剤承認基準】
黄連解毒湯
〔成分・分量〕
黄連1.5-2、黄芩3、黄柏1.5-3、山梔子2-3
〔用法・用量〕
(1)散:1回1.5-2g 1日3回
(2)湯
〔効能・効果〕
体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症:
鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症注)、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎
《備考》
注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】


【添付文書等に記載すべき事項】
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称 症状
間質性肺炎 階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
肝機能障害 発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
3.1ヵ月位(鼻出血、二日酔に服用する場合には5~6回)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の.ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。

2011年12月14日水曜日

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
 半夏五・ 黄芩 乾姜 人参 甘草 大棗各二・五 黄連一・
 本方の目標は心下部痞塞感・悪心・嘔吐・食欲不振等で、他覚的には心下部に抵抗を増し、屡々胃内停水・腹中雷鳴・下痢を伴い、舌には白苔を生ずる。
 半夏は胃内停水を去り、嘔吐を止め、黄連・黄芩と共に胃腸の炎症を去る。黄連・黄芩は苦味剤で、消炎健胃の効があり、人参と乾姜は胃腸の血行をよくして機能の回復を促す。甘草・大棗は諸薬を調和してその協同作用を強化するものである。
  本方と黄連湯とは類似しているがその相違は、黄連湯では腹痛が目標の一つになっている。また腹部に圧痛がある。本方では腹痛及び腹部圧痛を伴うこともある が、黄連湯の恒常的なるに似ず、また程度も軽い。舌苔は黄連湯に著明であり、本方では欠くことが多い。本方の応用は胃カタル・腸カタルである。
 加減方としては生姜瀉心湯と甘草瀉心湯とがある。
【生姜瀉心湯】(しょうきょうしゃしんとう)
 半夏瀉心湯から乾姜一・を減じ生姜二・を加える。
  本方は半夏瀉心湯の處方中、乾姜の量を減じて生姜を加えたものである。応用目標は半夏瀉心湯の證で、噫気・食臭を発し、腹中雷鳴・下痢は胃腸内で発酵が盛 んな為であってこれは生姜の治する所である。応用は胃腸カタル・発酵性下痢・過酸症・胃拡張等である。
【甘草瀉心湯】(かんぞうしゃしんとう)
 半夏瀉心湯に甘草一・を加える。
 本方は半夏瀉心湯の處方中、甘草の量を増したものであって、半夏瀉心湯の證で腹中が雷鳴して不消化下痢を起し、或は下痢せずに心煩して気分不穏を覚える者を治する。甘草を増量したのは、甘草は急迫症状を緩和する効があって心煩・気分不穏を除くからである。
 本方の応用としては胃腸カタル、産後の口内糜爛を伴う下痢、神経衰弱・不眠症等である。


『漢方精撰百八方』
106.〔半夏瀉心湯〕(はんげしゃしんとう)
〔出典〕傷寒論、金匱要略
〔附方〕生姜瀉心湯、甘草瀉心湯
〔処方〕半夏4.0 黄芩、人参、甘草、大棗 各3.0 乾姜2.0 黄連1.0
〔目標〕食物が心下部(みぞおち)につかえ、食欲不振、吐きけ、嘔吐などがある。  
 腹が鳴って下痢する。  
 心下部がつかえて肩が凝る。  
 胃の異和感、存在感があって精神不安が起こる。このとき、舌に白苔を生じ、脈、腹部の緊張は中くらいで、腹証としては心下部が固く張り圧痛がある。ときに心下部に振水音をみとめる。  
 本方の適応症は、体格、体質が中等度のものである。  

 甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)は、半夏瀉心湯を用いたいような症状で、しかも腹鳴、下痢のひどい場合に用いる。  

 半夏瀉心湯や甘草瀉心湯を用いる下痢は、裏急後重がなくて渋り腹でなく、一度下痢すれば一応気持ちがよくなるような場合で、水瀉性下痢から軟便程度まで、ひどさはいろいろである。

 生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)は、半夏瀉心湯を用いたいような場合で、しかも嘈囃(むねやけ)がひどいときに用いる。

〔かんどころ〕体質中ぐらいの人。食べ物が胃部につかえ、みぞおちが張って、胃の存在感がある。舌に白苔がある。

〔応用〕急、慢性胃腸カタル、不眠症、神経症

〔治験〕34才の男子、旧知の青年が、このごろおかしいから診てくれと、その妻に連れられてきた。
 約1ヶ月前から、食欲がなくなり、便秘をさかんに訴えた。近所の医師にかかったが、よくならず、次第に痩せて、その上神経過敏になり、夜眠らなくなった。2週間ばかり前からつまらぬことを気にして、わけのわからないことを言うようになった。そのため勤めも休んでいるという。患者は、中肉中背。筋肉の緊張も大体良好、顔色悪く、憂鬱な顔つきで、余り口もきかない。舌に白苔があり、脈は緊張がよく、腹部をみると心下痞鞕がみとめられ、みぞおちに抵抗があって、圧迫すると痛みを訴える。半夏瀉心湯を用いたところ、10日ほどで食欲が出て、元気になった。神経症状も勿論なくなった。

 甘草瀉心湯:半夏瀉心湯に甘草1.0を加える。

 生姜瀉心湯:半夏瀉心湯から乾姜1.0を減じ、生姜2.0を加える。
山田光胤




漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
10 瀉心湯類(しゃしんとうるい)
 瀉心湯類は、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)を主薬とし、心下痞硬(前出、腹診の項参照)および心下痞硬によって起こる各種の疾患を目標に用いられる。

 6 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)  (傷寒論、金匱要略)
 〔半夏(はんげ)五、黄芩(おうごん)、乾姜(かんきょう)、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)各二・五、黄連(おうれん)一〕
  本方は、少陽病で瘀熱(おねつ、身体に不愉快な熱気を覚える)と瘀水が心下に痞え、その動揺によって嘔吐、腹中雷鳴、下痢などを程するものに 用いられる。したがって、悪心、嘔吐、心下部の痞え(自覚症状)、食欲不振、胃内停水、腹中雷鳴、上腹痛、軟便、下痢(裏急後重)、精神不安、神経過敏な どを目標とする。
 本方の心下痞をつかさどる黄連のかわりに胸脇苦満をつかさどる柴胡に、冷えをつかさどる乾姜のかわりに生姜に変えたものが小柴胡湯(前出、柴胡剤の項参照)である。
 〔応用〕
 つぎに示したような疾患に、半夏瀉心湯證を呈するものが多い。
 一 胃カタル、腸カタル、胃アトニー症、胃下垂症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍その他の胃腸系疾患。
 一 月経閉止、悪阻その他の婦人科系疾患。
 一 そのほか、不眠症、神経症、口内炎、食道狭窄、宿酔)など。


《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
64.半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) 傷寒論
 半夏5.0 黄芩2.5 乾姜2.5 人参2.5 甘草2.5 大棗2.5 黄連1.0 

(傷寒論)
「傷寒五六日,嘔而発熱者,柴胡証具,而以他薬下之,柴胡証仍在者,復与柴胡湯,此雖巳下之,不為逆,必蒸々而振,却発熱汗出而解,若心下満而硬痛者,此為結胸也,大陥胸湯主之」但満而不痛者,此為痞,「柴胡不中与之」宜半夏瀉心湯(太陽下)

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社

 胃部がつかえ,悪心や嘔吐があり,食欲不振で胃部に水分停滞感があり,腹鳴を伴なって下痢するもの。あるいは,軟便や粘液便を排出するもの。
 本方は下腹部で腹鳴がある冷え症の胃腸機能を高め,消化を助け,栄養の吸収をよくし,便通を整え血色をよくするので,漢方処方中胃腸薬と形r最も多く用いられる。安中散も冷え症に用いられる力置、安中散適応症状には水分停滞あるいは腹鳴はない。本方はあまり腹痛のひどくない慢性の下痢に奏効し,急性の水瀉性下痢あるいは発熱悪寒を伴なう下痢には無効で,この場合は五苓散,または葛根湯が適する。腹痛の激しい下痢には柴胡桂枝湯平胃散小建中湯大建中湯などを考慮すべきである。また虚弱者で下痢と便秘が交互にくるものにもよいが,同じ症状で充実体質には大柴胡湯が適応する。本方はまた黄連解毒湯でも強すぎる虚弱者の便秘によい。真武湯半夏厚朴湯茯苓飲との鑑別はそれぞれの処方の項を参照のこと。本方を服用後なお疲労倦怠感,食欲不振がとれない場合には小柴胡湯あるいは補中益気湯に転方すべきである。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
 本方は平素から若干の冷えを自覚したり,胃腸機能が悪い傾のものの,応用の目標欄記載の症候複合がある消化器疾患に用いられている。したがって腸内水分の再吸収や,利尿ホルモンのバランスがlくずれているもので,胃内や腸管に水分停滞が多く,それがために腸内腐敗現象や,消化管内水分停滞による腹鳴あるものが,本方応用のポイントになる。また本方が対象になる下痢は,比較的に排便量が少なく下痢便や軟便でありながら,間歇的に便秘して下剤を投与すると,その作用が激しく現われる下剤禁忌症であることが,他適応症と異なる。
 類似症状の鑑別
 安中散,冷えを自覚する消化器疾患に応用するが水分停滞感や腹鳴,または下痢軟便は認めない。
 五苓散,激しい水瀉性の下痢便で,口渇や微熱あるいは頭痛,頭重などを伴う点で区別する。
 平胃散,水分の停滞が主として胃に局限し,それがため消化不良,胃拡張をきたして下痢(水容便)し,下痢しても倦怠感や衰弱する傾向がなく,かえって爽快感をもたらすことが,平胃散適応の特徴といえる。
 半夏厚朴湯,悪心,嘔吐,胃腸機能が悪い点で類似するが,半夏厚朴湯が適応するものには,腹鳴や下痢がなく,精神不安が著しい点を考慮すればよい。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○体質,体力が中ぐらいの人で,食物が心下部(みぞおち)に痞え,食欲不振,嘔きけ,嘔吐,時に軽い上腹痛がある。腹が鳴って下痢する。心下部が痞えて肩がこる。みぞおちに異和感があり,胃の存在を感じ,精神不安,神経過敏を呈す。舌に白苔を生じ,脈,腹部の緊張は中ぐらいで,腹部は心下痞硬(心下部が硬く張って圧痛がある)時に心下部振水音を呈する。
○着眼点は心下痞硬である。心下は胸骨剣状突起より下で,臍より上の部分である。本方の心下痞硬は,その部分に軽い抵抗をふれるものである。
○心下痞硬がはっきりしないとき,細野史郎氏は胸骨剣状突起の直下を押してみて,圧痛があれば心下痞硬であるといっている。
○先哲医話(福井楓亭)に「脾労(胃弱)の証,心下痞し,腹中雷鳴し,痛まず下痢し,痢後心下が不快で,反って痞張するものは半夏瀉心湯がよい」とある。しかし半夏瀉心湯証の下痢は水瀉性下痢から軟便程度まで程度はいろいろあるが,裏急後重がなく,一度下痢すれば一応さっぱりする。
○山田業精の聞見録に「脳漏(蓄膿症などの鼻漏)に半夏瀉心湯がよいものがある。これは心下痞硬を目標にする。また半夏瀉心湯は張満(腹膜炎などで腹が張る病気)及び月経不順にもよいことがある」と書いてある。
○袖珍方には本方が車酔,船酔によいとある。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方の目標は心下部痞塞感,悪心,嘔吐,食欲不振等で,他覚的には心下部に抵抗を増し,屡々胃内停水,腹中雷鳴,下痢を伴い,舌には白苔を生ずる。半夏は胃内停水を去り,嘔吐を止め,黄連,黄芩と共に胃腸の炎症を去る。黄連,黄芩は苦味剤で,消炎,健胃の効があり,人参と乾姜は胃腸の血行をよくして機能の回復を促す。甘草,大棗は諸薬を調和してその協同作用を強化するものである。
本方と黄連湯とは類似しているがその相違は黄連湯では腹痛が目標の一つになっている。また腹部に圧痛がある。本方では腹痛及び腹部圧痛を伴うこともある が黄連湯の恒常的なるに似ず,また程度も軽い,舌苔は黄連湯に著明であり,本方では欠くことが多い。本方の応用は胃カタル,腸カタルである。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 心下部の痞塞感が第一で,悪心,嘔吐,食欲不振を訴え,他覚的には心下部に抵抗を認め,しばしば胃内停水腹中雷鳴,下痢を伴い,舌白苔を生ずることが多い。


漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
(構成)  乾姜の代りに生姜,黄連の代りに柴胡にすると小柴胡湯になる。言換えると本方は小柴胡湯に構成が近いからその適応症も稍それに近いのである。近いのは作用する部位が心下で,症状が嘔なのである。小柴胡湯は胸脇苦満,脇下満だし,本方は心下痞である。
 運用 1. 心下部が痞え,嘔又は腸鳴する。
 心下部とは胸元がつかえるという自覚症状で,他覚的に之を証明することは出来ない。心下部を触診すると多少の緊張を認めることはあるが,強く押しては深部に抵抗を証し得ない。嘔と腹鳴は相伴うこともあり,一方だけのこともある。要するに心下に痞えた気が上に動いて嘔になり,腹で動いて腸鳴すると思えばよい。「嘔して腸鳴し心下痞するもの」(金匱要略嘔吐)はこのことであり,小柴胡湯と似た所は「傷寒五六日,嘔して発熱するものは柴胡の証具る。而るに他薬を以て之を下し,柴胡の証仍を在るものは復た柴胡湯を与ふ。これに巳に之を下すと雖も逆となさず。必ず蒸々として振ひ,却て発熱汗出でて解す。若し心下満して硬痛する者は此を結胸となす。大陥胸湯之を主る。ただ満して痛まざるものは此を痞となす。柴胡之を与ふるに中らざるなり。半夏瀉心湯之を主る。」(傷寒論太陽病下篇)
 長文だがその要点は大陥胸湯,小柴胡湯,半夏瀉心湯の鑑別であって,痛むものは結胸で大陥胸湯,満だけで痛まぬのは気の痞えだから半夏瀉心湯,苦満又は痞硬するは痞に似てはいるが,実鬱だから小柴胡湯だというのである。同じく満しても気だけで充塞するものがないのを痞と云い,充塞があるのを痞硬とする。心下痞と嘔とを目標にして半夏瀉心湯は胃カタル,胃腸カタル,胃酸過多症,胃拡張,胃下垂,胃潰瘍,十二指張潰瘍,悪阻,蛔虫,薬剤副作用による悪心嘔吐,神経性嘔吐等の胃症状には頻用する。胸元は痞える位だから食欲は無論減退しており,舌は薄い白苔を被っていることがある。脉は普通であまり傾りはない。



勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は飲邪併結して心下痞硬する者を目的とす。故に支飲或は澼飲の痞硬には効なし。飲邪併結より来る嘔吐にも,噦逆にも,下痢にも皆運用して特効あり。千金翼に附子を加ふるものは,即ち附子瀉心湯の意にて,飲邪を温散させる老手段なり。又虚労或は脾労等心下痞して下痢する者,此方に生姜を加えてよし,即ち生姜瀉心湯なり。


【一般用漢方製剤承認基準】
半夏瀉心湯
〔成分・分量〕
半夏4-6、黄芩2.5-3、乾姜2-3、人参2.5-3、甘草2.5-3、大棗2.5-3、黄連1
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便又は下痢の傾向のあるものの次の諸症:
急・慢性胃腸炎、下痢・軟便、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症


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