健康情報: 2月 2009

2009年2月26日木曜日

竹(タケ)と笹(ササ)について

タケやササの仲間は、通常はイネ科に分類されますが、別にタケ科を独立させる考え方もあります。
 タケとササの区別については、一般に小型の
ものをササと呼び大型のものをタケと呼んでい
ますが、明確な区別はありません。
 茎を利用するものをタケ,葉を利用するものを
ササといったともいわれます。
 植物学的には,タケはたけのこの皮(稈鞘)が
生長につれて落ちるものをいい、ササは皮が
残っていつまでも茎についているものをいいます。
ただ、この区別だと小型なオカメザサがタケとなり、
丈の高いメダケやヤダケがササとなってしまいます。

 ササ類は日本に種類が多いのですが、開花がふつう数十年に一度なので、
分類はまだ不完全です。
 1983年に林業試験場北海道支場から出された
「北海道ササ分布図」の蓄積量の計算には表のよう
なわかりやすい分類がなされています。すなわち、
稈長二メートル以上の大型ササをチシマザサ、
一~二メートルの中型をクマイザサ、一メートル以
下の小型をミヤコザサという三群に分けています。
 クマイ笹の語源は、一枝に九枚の葉がつくから
で、九枚笹という言味です。しかし、山の中で観察すると五~七枚くらいのものが多く、九枚のものはむしろまれで、多いものでは十二枚くらいついたものもあります。


竹・笹に関係する生薬
 竹葉(ちくよう) ハチクの葉
 淡竹葉(たんちくよう) ササクサの全草
 竹巻心(ちくけんしん) ハチクのまだ開いていない幼葉
 竹筎(ちくじょ) ハチクの茎の中間層
 竹瀝(ちくれき) ハチクの茎を火であぶって流れ出た液汁
 天竺黄(てんじくおう) 竹に寄生する竹黄蜂により竹竿に穴があき、その傷から病的に竹幹内に流出した液体が節間の中で乾燥して固まった塊状物質。
ササの成分
 ササの成分組成は、広葉樹と良く似ています。
 特異点を上げれば、ケイ酸の多いことと、ササのリグニンはうすいアルカリ溶液にも良く溶けることです。
 このケイ酸の多いことと、リグニンのアルカリ可溶性という二つの点は、イネ科植物に共通した特性です。
 
ササの作用
 健康茶が飲用され、俗に「健康の維持・増進に効果がある」、「美容に良い」などといわれています。
近年は免疫の増強作用が注目されています。
特に特殊な抽出方法で抽出されたものは、などに効果があると言われています。
癌(ガン)に使われる漢方薬や民間薬、健康食品などについては、下記もご参照下さい。

ガン治療に使われる漢方薬・民間薬・健康食品類

2009年2月24日火曜日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)と漢方

COPDは、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)と呼ばれ、日本には500万人以上のCOPD患者さんがいると推定されています。
初期の症状は、息切れ、しつこい慢性の咳や痰などがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などです。ありふれた症状ですので、年齢のせいだと思い込み、見過ごされやすいそうです。、 国内の有病者は530万人とも推定されていますが、実際に治療を受けている人は、22万人で、未診断・未治療の患者が多いとされています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断で重要なのが、肺活量やスパイロメトリーと呼ばれる呼吸機能検査です。ただ、一般の開業医では呼吸検査の関心が低いため普及率が低く、COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断の遅れにつながっていると言われています。
日本呼吸器学会では、分かりにくいスパイロメトリーの指標をもとに算出でき、国民にもなじみやすい指標として「肺年齢」(はいねんれい)を導入し、普及に努めています。

スパイロメトリーの検査には、スパイロメーターという検査機器が必要ですが、それほど高価でもなく、持ち運びに便利なタイプもあるようです。
血圧計を備える家庭も増えてきていますので、同様にスパイロメーターも備えてはいかがでしょうか?
スパイロメトリーの検査は、スパイロメーターを用い、最大限に息を吸えるだけ吸い、それを思い切り強く吐き出した空気の最大量「努力肺活量」(FVC)と、最初の1秒間に吐き出せる空気の量「1秒量」(FEV1)を測定し、「1秒量」を「努力肺活量」で割った「1秒率」(FEV1%)を算出します。 この1秒率が70%未満の場合は、COPDの可能性があります。

COPDチェックという所では、八つの質問(年齢、煙草の数、症状など)に答えることによって、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のチェックを行うこともできます。
http://www.spinet.jp/copd05_ch.html
スパイロメトリー検査ができない場合、次善の作としてチェックしてみてはいかがでしょうか?

近年、COPD(慢性閉塞性肺疾患)は世界中で増加の一途をたどっており、今後も増え続けると予測されています。
日本での患者率については、2000年に行われた調査では、40歳以上の男女のうち8.6%の人がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の疑いのあることがわかりました。
年齢別にみると、70歳以上の高齢者が最も多くなっています。


COPD(慢性閉塞性肺疾患)の一番の原因(約90%)はタバコ(煙草)と言われていてます。、喫煙者、喫煙歴のある人、更には自信では吸っていなくても、家族が吸うことによる受動喫煙も原因になり易いようです。

タバコの煙には、非常に多くの化学物質(約4,000種とも言われます)が含まれ、この中の有害な化学物質が、気管支や肺を傷つけることにより、肺胞がこわれたり気管支に炎症が起きたりして、COPD(慢性閉塞性肺疾患)になると考えられています。


COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療は、気管支拡張薬(抗コリン薬、β2刺激薬、テオフィリン等)が基本となります(抗コリン薬>β2刺激薬>テオフィリン)。

咳(せき)や痰(たん)に用いる漢方薬方としては、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)小青竜湯(しょうせいりゅうとう)柴朴湯(さいぼくとう)桂麻各半湯(けいまかくはんとう)、桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいちとう)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)麦門冬湯(ばくもんどうとう)苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)、竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などが用いられます。茯苓甘草湯(ぶくりょうかんぞうとう)が外に効くこともあるそうです。
症状 麻杏甘石湯 越婢加半夏湯 柴朴湯 小青竜湯 桂麻各半湯 桂枝二越婢一湯 柴胡桂枝湯 桂枝加厚朴杏仁湯 麦門冬湯 竹葉石膏湯 苓甘杏味辛夏仁湯 麻黄附子細辛湯
尿の出が悪い









食欲不振










頭痛・頭重







悪寒・発熱







汗をかきやすい





体がだるい








疲れやすい








顔色が悪い










肩凝り・首や背中が張る










のどがゼ―ゼ―する








のどがチクチクする









咳が出る

薄い痰が多く出る









濃い痰が多く出る










口・のどが渇く







口の中が粘つき、苦い











体力を付ける目的で、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)八味丸(はちみがん)(別名:八味地黄丸(はちみじおうがん)腎気丸(じんきがん))、茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)なども用いられます。

癌性疼痛の除痛率

がん性疼痛に関する患者調査研究会が行った調査によると、医療機関で痛みの治療を受けた患者のうち、「痛みが完全にとれた割合」(除痛率)は、2割を切り、16.6%しかなかったそうです。
従来の調査・研究等では、五~六割の除痛率と言われていたので、かなりショッキングな数字です。
この調査に関わった若草病院外科部長の佐藤靖郎先生は、この除痛率の低さに対して、
「衝撃を受けた。再発で治療を受ける患者らが、治療への影響を心配して痛みを訴えないのではないか」とコメントしているそうです。

近年、QOL(キューオーエル、生活の質)の概念が普及し、いかに生活の質を良くするかが、医療に求められています。

疼痛緩和には、いわゆる「麻薬」(まやく)の類を使うので、中毒になるかもしれないなどの誤解もあり、以前はかなり抵抗感があったのですが、最近はそれなりに普及しているように聞いていました。

2007年6月に、日本では、「がん対策推進基本計画」が閣議決定され、「治療の初期段階から緩和ケアの実施」が重点課題の一つとして取り上げられていたそうですが、現場での緩和医療、疼痛治療はなかなか進んでいなかったようです。

先の「がん性疼痛に関する患者調査研究会」の調査によると、痛みについて、お医者さんなどに伝えていない人が11.2%と、1割強もいて、特に男性で伝えていない人が多いようです。

痛みが完全にとれた「完全除痛」は先に書きましたとおり、16.2%と二割にも満たず、「ある程度とれた」とする人は、52.2%で、残り三割強は、痛みがとれていないようです。

痛みに効く漢方生薬としては、附子(ぶし)、蒼朮(そうじゅつ)、甘草(かんぞう)、芍薬(しゃくやく)、烏梅(うばい)などがあります。

烏梅(うばい)とは、未熟な梅の果実を、薫製(くんせい)にしたものです。
この烏梅(うばい)の鎮痛作用は非常に優れていて、モルヒネが効かないような痛みにも効くと言われています。
ただ、市販されている烏梅(うばい)の中には、熟して落下したものを使っているものもあるので、自分で作った方が良いよううです。
烏梅については、こちらもご参考下さい。

上記のサイトには、烏梅(うばい)の他、癌の治療に使われる漢方薬や民間薬、健康食品の情報もあります。

烏梅は痛みは抑えますが、癌(がん)そのものを改善するわけではありませんので、ご注意下さい。

先に書きましたQOL、すなわち生活の質の改善には非常に役立つと思われます。
癌の五年生存率は上がってきていますので、ガンの疼痛の緩和治療は、今後、更に重要になると思われます。





2009年2月20日金曜日

腎臓病に効く民間療法と漢方

腎臓は、肝腎要(かんじんかなめ)と言われるように、非常に重要な臓器ですが、
余り認識されていないようです。
痛い、ツライなどの症状が少なく、気が付いた時にはかなり症状が進んでしまっていることも多いようです。
慢性腎臓病(CKD)の患者数は国内で1300万人以上と推定され(2008年)、まさに国民病となってきています。
さらに、心筋梗塞を起こした人の約2/3が、この慢性腎臓病(CKD)であるとの報告もあり、今後腎臓の重要性が再認識されるかもしれません。

昔から腎臓病に良いと言われる民間薬は色々とあります。
ただ、現代医学的に見て、効果があるかどうかは不明なものもありますので、
用いる際は、必らず医師や薬剤師などの専門家に相談してから試して下さい。
ただ、全ての医師や薬剤師が漢方薬や民間薬に詳しいとは限りませんので、
その点は充分注意して下さい。

腎臓病は浮腫(ふしゅ;むくみ)と関わりが深いので、腎臓病に用いられる民間薬や漢方薬は、浮腫を目標に使われることもあります。更には、腹水にも利用されることもあります。
癌による腹水(癌性腹膜炎による腹水)もご参考下さい。



1.土筆(つくし)
・旬(しゅん)にはお浸し(おひたし)などで食べる。
・陰干し(かげぼし)したものを、一日六匁(22.5g)くらい煎じて、お茶代わりに飲む。

2.甘茶(あまちゃ)
一握り(ひとにぎり)を五六合(900~1,080mL)の水に入れて半量ほどに煎じ出し、お茶代わりに飲む。


3.山牛蒡(やまごぼう)の根 生薬名:商陸(しょうりく)
山牛蒡(やまごぼう)の根(商陸(しょうりく))は、強力な利尿剤
干したもの一匁(約3.75g)を一合五勺(270mL)の水に入れ一合(約180mL)に煎じ詰め、一日三度に分けて飲む。
  ただし、妊娠時は流産の虞れがあるので、注意(使用しないほうが良い)
山牛蒡の嫩葉(わかば、若葉)をお浸し(おひたし)にして食べても良い。

4.西瓜(すいか)
生のものを食べるのが最も効く
季節はずれには西瓜糖(すいかとう)(スイカの汁をどろどろに煮詰めたもの)を一日に一匁(約3.75g)ずつ三回、湯に溶かして服用。


5.玉蜀黍(トウモロシ)と桜桃(サクランボ)
玉蜀黍(トウモロコシ)の毛と、桜桃(サクランボ)の柄(え) 一掴み(ひとつかみ)ずつを、一合(約180mL)の水で半量に煎じ、お茶代わりに飲む。
桜桃(さくらんぼ)を食べる時は、柄を大切に取って置きましょう。

6.漢防已(オオツヅラフジ)
 漢防已(オオツヅラフジ)一握りを二合(360mL)の水で一合(180mL)に煎じ、お茶代わりに飲む。

7.の木(クワノキ)+甘草(カンゾウ)
 桑の木を皮ごと鰹節削り(かつおぶしけずり)で削(けず)り、これを一握りと甘草(かんぞう)少々に、二合(360mL)の水を加えて一合(180mL)に煎じ、お茶代わりに飲む。

8.やがらの嘴(くちばし)
 やがら(一種の魚)の長い嘴(くちばし)を陰干ししておき、これを濃く煎じ出して飲む。
【参考】ヤガラ
硬骨魚綱ヨウジウオ目ヤガラ科Fistulariidaeの海水魚。
日本の沿岸には、アオヤガラFistularia pentimbaとアカヤガラF. commeysoniiがいる。
主に食用にするのはアカヤガラ。
肉は淡泊でお吸い物の種や煮魚などに使われます。刺身もおいしいそうです。
『本朝食鑑(ほんちようしよくかん)』(1697)にも記載有。

9.玉蜀黍(トウモロコシ)と接骨木(ニワトコ)と芭蕉(バショウ)の根
 玉蜀黍(トウモロコシ)、接骨木(ニワトコ)、芭蕉(ばしょう)の根を、各五匁(約18.75g)ずつ一緒にして、水一合(180mL)~二合(360mL)を加え、半量になるまで煎じる。

10.きささげ(梓実(しじつ))
 きささげ(梓実(しじつ))とハブ草を約十五匁(約11.25g)ずつに甘草(かんぞう)一二匁(約3.75~7.5g)加えて、三合(540mL)の水で半量に煎じる。

11.芥子(からし)の腰湯(こしゆ)
 座って入れるくらいの大きさの盥(たらい)に、お湯を満たし、芥子(からし)の粉を一摘み(ひとつまみ)ほど入れて、よくかき混ぜ、着物を端折って座り、周囲に毛布を掛けて温かくし、腰を充分温める。
 これを一日に一回くらいずつ毎日続けると、知らず識らずのうちに治る。

12.牛の腎臓(じんぞう)の煎汁(せんじゅう)
 牛の腎臓(じんぞう)一個を一升(1.8L(1,800cc))の水で五合(900mL)くらいに煎じ、これを一日分としてお茶代わりに服用。

13.牛蒡(ごぼう)と(まむし)の黒焼き
 牛蒡(ごぼう)の黒焼き八にに蝮(まむし)の黒焼きを二の割合で混ぜ、一日二回、一回分に六分くらいずつ服用。

14.田螺(たにし)と蕎麦粉(そばこ)
 田螺(たにし)の殻(から)を去って、蕎麦粉(そばこ)を振りかけると、どろどろと融けます。これを布か日本紙にのべて、お臍(へそ)の下に貼(は)っておき、乾いたらその度に貼り替えます。

15.田螺(たにし)と(まむし)の黒焼
 田螺(たにし)約八個と、蝮の黒焼き一匁(約3.75g)を、よく練(ね)り合わせて、日本紙にのべ、臍(へそ)の下に貼り付けます。

16.田螺(たにし)と饂飩粉(うどんこ)
 田螺(たにし)を擂鉢(すりばち)ですり、饂飩(うどん)粉でねっとりするくらいに練(ね)り、臍(へそ)の下二寸(約6cm)ほどの所につける。

17.連銭草(れんせんそうカキドオシ)
 陰干しした連銭草(れんせんそう、垣通(かきどおし))一掴み(ひとつかみ)を水三四合(540mL~720mL)に入れ、三分の二くらいに煎じて飲む。

18.石南花(しゃくなげ石楠花)の葉
 石南(しゃくなげ)の葉三~四枚を三合(540mL)の水に入れ、可能であれば木斛(もっこく)の葉も二~三枚入れて、二合ほどに煎じ、お茶代わりに用いる。
葉は一度きりで捨てずに暫く(しばらく)は毎日二枚くらいずつ足しながら用いて良い。

19.枇杷の葉(びわのは)
 枇杷(びわ)の生葉(なまば)四~五枚を、洗わずに乾いた布巾(ふきん)できれいに拭(ふ)いて土瓶(どびん)に入れ、水四合(720mL)ほど注(さ)して弱火で半分くらいに煎じ詰め、食前でも食後でも、時を選ばず持薬(ぢやく)に用いると、腎臓病、殊(こと)に老人の萎縮腎(いしゅくじん)や慢性腎臓炎(まんせいじんぞうえん)に著効がある。

20.西瓜の種(すいかのたね)
 西瓜の種を丹念に洗って乾して貯えておき、大匙(おおさじ)一杯(いっぱい)を土瓶に入れ、水三合(540mL)を加えて二合(360mL)に煎じ、その汁をそのままか、砂糖で味加減するかして、一日に数回飲む。

21.玉蜀黍(とうもろこし)
 玉蜀黍(とうもろこし)の毛を一掴み(ひとつかみ)ずつ煎じて、毎日飲む。
毛ばかりでなく、実も芯(しん)も効果有。
毛や実や芯を一緒に刻(きざ)んだもの紅茶茶碗一杯に、水三合(540mL)を入れ、弱火(とろび)で半量に煮詰め、お茶代わりに飲んでも、殊に萎縮腎(いしゅくじん)などに奇効有。

22.ハブ草番茶(はぶそうばんちゃ)
 番茶の中に、茶匙(ちゃさじ)一~二杯のハブ草(はぶそう)の実をよく焙(ほう)じて混ぜ、連用する。

23.枸杞入りハブ茶(くこいりはぶちゃ)
 ハブ草(はぶそう)の葉も実も一緒にし、枸杞(くこ)の葉を混ぜてお茶にして飲むと、浮腫(むくみ)が去る。

24.木通の蔓(あけびのつる)
 木通(あけび)の蔓(つる)を二~三分(約0.75~1.125g)の小口切(こぐちぎり)にして、陰干し(かげぼし)にして、乾き切ってから、二日分として大匙一杯(おおさじいっぱい)を水二合(360mL)で煎じ、煮立って二十分もしたら下して、少し冷めたところを飲むと良く効く。

2009年2月19日木曜日

生薬(しょうやく)と漢方薬(かんぽうやく)の関係

 生薬(しょうやく)とは、薬用に供する目的をもって、植物・動物・鉱物などの自然物の一部を乾燥し、または、これに簡単な加工を施して得た製品を生薬といいます。

 生薬(しょうやく)を原料により分類しますと、1.植物性生薬、2.動物性生薬、3.鉱物性生薬の3つに分類できます。
 このうち、植物性生薬が生薬の大部分を占めています。薬という文字が草冠(くさかんむり)になっていることからも、薬と植物の関係が深いことが容易に想像できます。
 また、薬用植物(やくようしょくぶつ)という言葉があります。これは、もともと生薬(しょうやく)の原料になる植物のことです。また、薬草とは、本来は薬用植物のうち、草本性(そうほんせい)のものをいいます。草本(そうほん)とは、いわゆる柔らかい「草」の事で、堅い「木」の事を木本(もくほん)と言います。竹は普通、草本(そうほん)として扱われます。薬草の意味は本来このような「薬用植物のうち草本性のもの」という意味ですが、一般には植物性生薬のことを指したり、もっと広く生薬全部を意味して使ったりしているようで、言葉の混乱がみられます。
 なお、従来菌類は、植物の一種とされてきていましたが、近年では動物とも植物とも別のグループに分類にする考え方が多くなっています。
 菌類に属する生薬としては、茯苓(ブクリョウ)、猪苓(チョレイ)、冬虫夏草(とうちゅうかそう)などがあげられます。

次に動物性生薬ですが、植物性生薬に比べ使用が少ないようです。仏教の影響で殺生(せっしょう)が禁じられていたことなどが理由としてあげられることもありますが、実際は、植物に比べ個体数が少なく、逃げることから採取(さいしゅ)が困難なことと、保存も難しかった(腐り易い)からだと思われます。
動物性生薬の特徴としては、
 1.作用が強烈で使用量が少なくても効果が期待できるものが多い。
 2.保存に不便なものが多い。
 3.価格の高いものが多い。
 4.日本の漢方薬方での使用は少ない。
 5.味やにおいに注意しなくてはならないものが多い。
があげられます。

3番目に鉱物性生薬(こうぶつせいしょうやく)があります。
 「薬石効無く」という言葉があるように、鉱物性生薬である石薬(せきやく)は通常の植物性の生薬とは別に扱われることがありました。腐ったりせずに永久性があることから、神仙系(しんせんけい)の医学では特に重要視されました。なお、薬石の「石」はいしばりのことで、古代の医療器を意味し、薬石という言葉はいろいろの薬や治療法の意味であるともいいます。
 今日では使用される種類は少ないものの、石膏(せっこう)、滑石(かっせき)、芒硝(ぼうしょう)など、重要な薬物があります。

 生薬を分類する方法として、産地による分類もあります。
通常、日本で使われている生薬は和漢薬(わかんやく)と呼ばれていますが、これは和薬(わやく)と漢薬(かんやく)を合わせた呼び方です。
 このうち、和薬(わやく)とは日本で古くから使われていた生薬のことで、ゲンノショウコやセンブリなどがあげられます。
 一方、漢薬(かんやく)とは、中国で古くから使われていた生薬のことです。この「漢」の文字は『漢字』の「漢」と同じで、いわゆる中国を指します。
  現代の中国では、中草薬(ちゅうそうやく)、草薬(そうやく)と呼ばれています。
 この和漢薬は更に使用方法によって漢方薬(かんぽうやく)と民間薬(みんかんやく)、及びこれを製剤化した売薬に分けられます。

 漢方薬とは、漢方医学の理論の上にたって使われる生薬の配合剤で、證(しょう)に隨(したが)って使用されるもので、多くは複合剤(ふくごうざい)で、単味(たんみ;一味(いちみ))で用いることは少なく、生薬の組み合わせはすでに薬方(やくほう)として決まっています。
 また、民間薬(みんかんやく)は、病名又は一つの症状に対して、局所的効果を期待して、経験的に使用されるもののことで、一般には単味(たんみ)、すなわち一種類の生薬(しょうやく)で用いられ、他の生薬(しょうやく)と組み合わせて使用される場合でも、薬味、組み込まれる生薬の数は、せいぜい二~三種であり、しかも組み合わせる相手の生薬(しょうやく)は決まっていません。
 なお、黄柏(おうばく)や決明子(けつめいし)等のように漢方薬(かんぽうやく)の薬味としても、民間薬(みんかんやく)としても用いられる生薬(しょうやく)があります。また、甘草(かんぞう)などは漢方薬としても、民間薬(みんかんやく)としても、西洋生薬(せいようしょうやく)としても用いられています。
 更に時代とともに、民間薬(みんかんやく)や、西洋生薬(せいようしょうやく)が漢方薬の中に取り入れられていっています。例えば、伯州散(はくしゅうさん)という処方は日本古来の処方、いわゆる和方(わほう)で、漢方に取り入れられ、吉益東洞(よしますとうどう)が愛用したことでもしられています。
 また、サフランやセンナはそれぞれ、蕃紅花(バンコウカ)、蕃瀉葉(バンシャヨウ)と呼ばれ、本草書(ほんぞうしょ)に収載されています。


 生薬製剤(しょうやくせいざい)とは、広義では、生薬(しょうやく)を配合した製剤と考えられますが、通常は東洋医学的基盤にたたず、生薬の個々の薬効を主に考え配合したものを指します。
複合剤(ふくごうざい)なので、一見漢方処方のように見えますが、證(しょう;証)の概念はなく、風邪(かぜ)や腹痛(ふくつう)などといった病名や症状に対して使用されます。
 生薬製剤(しょうやくせいざい)のうち、江戸時代に和漢薬(わかんやく)や民間薬(みんかんやく)のうちで著効(ちょこう)のあるものを参考にして、つくられたものが、家庭薬(かていやく)・売薬(ばいやく)・家伝薬(かでんやく)と呼ばれるものです。反魂丹(はんこんたん、はんごんたん)、実母散(じつぼさん)などが知られています。多くは複合剤ですが、使用方法は民間薬的で、病名や症状名に対して使用されます。
 また、中国で製造されております、中成薬(ちゅうせいやく)も、生薬製剤の一種で、病名や症状名に対して使用されることが多く、中国版家伝薬とでもいうべきものです。伝統的な漢方処方に基づき、服用しやすい様に丸剤やカプセル剤などにしたものもあります。牛黄清心丸(ゴオウセイシンガン)、健歩丸(ケンポガン)などが良く知られています。
 なお、「成薬(せいやく)」とは、生薬を原料として加工した製剤の総称です。

 漢方薬(かんぽうやく)と他の民間薬(みんかんやく)、生薬製剤(しょうやくせいざい)との違いを再度確認致しますと、その使い方、則ち證(しょう)の把握にあり、風邪に葛根湯(かっこんとう)、肝炎に小柴胡湯(しょうさいことう)、痔には乙字湯(おつじとう)では、漢方とは呼べず、単なる生薬製剤(しょうやくせいざい)となってしまいます。

 西洋生薬(せいようしょうやく)とは、西洋で古くから使われていた生薬のことで、センナ、アロエなどがあり、また近年日本でもハーブが注目されています。
 その他、インドネシアのジャムウや、インドのヴェーダ医学、アラブのユナーニ医学など、その地域に根ざした伝統医学があり、それぞれ特有の生薬が使われています。

2009年2月16日月曜日

ドリンク剤の違い(医薬品・医薬部外品・清涼飲料水)

「リポビタンDとオロナミンCの法律的な違いは?」と聞かれて、即答できる方は少ないと思います。
どちらも、ドラッグストアやコンビニなどのストッカーに並べられて、特に大きな違いがあるようには思えません。
しかし、実はリポビタンDとオロナミンCには大きな違いがあります。
リポビタンDは薬事法で規定される医薬部外品で、オロナミンCは、食品衛生法で規定される清涼飲料水だからです。
更にややこしいことに、リポビタンDはもともと医薬品だったのですが、規制緩和の流れで、99年より、医薬部外品に移行しました。同じリポビタンと名が付くものの、リポビタンD PROやリポビタンDIIαは医薬品ですので、ますます混乱します。

簡単にまとめると、
清涼飲料水:食品の一種です。食品に配合できるものしか、配合できません(専ら『医』成分不可)。
また、効能・効果や用法・用量も表現できません。
ただし、栄養機能食品として適合すれば、ビタミン、ミネラル類についての効果の表現可能です。

医薬部外品:1999年の4月より、従来医薬品であったもののうち、成分や効能・効果が適合するものが部外品へと移行し、
これにより、コンビニやスーパー等での販売が自由になりました。
効能・効果や用法・用量は医薬品と同じです。
動物性の生薬は使用できないなど、配合できる成分・量に医薬品より制限があります。
新規に承認・許可を得るには時間と費用がかかります。

医 薬 品:販売業の許可のある所(薬局・薬店)でないと、販売できません。
また、医薬品として前例のない成分(コブラ、サソリ等)は、原則として配合できません。
新規に承認・許可を得るには時間と費用がかかります。

簡単にまとめたものが次の表です。

主に関係する法律

表示

効能・効果

用法・用量

工場の許可

製造品目毎の承認

販売の許可

自動販売機

清涼飲料水 食品衛生法 清涼飲料水の文字

×

×


(食品衛生法)

不要

不要

医薬部外品 薬事法 医薬部外品の文字


(薬事法)

不要

医薬品 薬事法 医薬品の文字


(薬事法)


(薬局・薬店のみ)

×

いわゆる強壮剤として用いられる、医薬品と医薬部外品のドリンクの効能・効果は基本的に同じものです。これは、先に書きましたとおり、以前は医薬品であったものの一部が、医薬部外品に移行した際、効能・効果はそのまま医薬品のものを用いたからです。医薬部外品となっていますが、販売されるまでの扱いは基本的に医薬品とほぼ同じで、医薬品と医薬部外品の両方を作っている所が多いようです。

 

ビタミン類

朝鮮人参

ローヤルゼリー

ニンニク

ムイラプアマ注2

海狗腎

マムシ

海馬

コブラ

サソリ

清涼飲料水

×

×

医薬部外品

×

×

×

×

×

医薬品

×注1

×注1

注1 コブラやサソリは、毒性試験や臨床データ等を取れば可能かもしれませんが、前例がないので、現時点では医薬品や医薬部外品に配合できません。
注2 ムイラプアマの根は『医』、茎葉は『食』に該当します。単にムイラプアマと表示すると、『医』とみなされ、清涼飲料水には配合できません。

 

上記の表のように、医薬品・医薬部外品・清涼飲料水の、いずれにも使える成分があり、清涼飲料水と医薬品・医薬部外品との違いはますますややこしくなります。

例えば、ビタミン類と朝鮮人参(高麗人参)、ローヤルゼリー、マムシ、海馬(カイバ(タツノオトシゴ))を配合したドリンクは、清涼飲料水でも、医薬品でも製造可能です。(医薬品は、承認・許可を取れたことが前提) では、どのように違ってくるのでしょうか?

まず、成分の配合量については、医薬品は表示の義務がありますが、清涼飲料水については書く必要はありません。原材料名の表示だけです。極端な話、100Lの中に一滴だけ入れたようなものでも、配合成分として書くことは可能です。医薬品の場合は、基本的に前例の範囲内で配合することになりますので、極端に少ない量は配合することができません。

ただ、この「医薬品は前例の範囲内」ということは、上限も決まってしまいます。前例を越えて配合しようとす場合、なぜ前例を越えなければならないのかという根拠が必要となり、臨床データ等が必要となり、開発に多額の費用と時間が必要となりますので、実際には無理です。これに対し、清涼飲料水の場合は、特に基準は設けられていませんので、医薬品よりも多く配合することも可能です。(ドリンクとしては溶解度の問題がありますので、ある程度の制限はでてきますが……)

なお、清涼飲料水を栄養機能食品とした場合は、ビタミン等には当然ながら栄養機能食品としての上限・下限がありますので、栄養機能表示したビタミンについては、それに従う必要はあります。

また同じ原料が仮に同じ量配合されていたとしても、全く同じとは限りません。医薬品として用いる原料には、成分の含量などの厳しい規格基準がありますが、清涼飲料水に用いられるものは、食品として安全か否かが重要なので、成分の規格が無い、あるいは劣るものが使われていることがあります。生薬(しょうやく)は、産地や採取時期などによって成分が異なりますので、効能にも違いが出ます。それを均一にする為のものが医薬品としての規格です。ただ、医薬品としての規格が生薬(しょうやく)としての良否とは直結しない場合もありますので、必ずしも清涼飲料水に用いられている原料が、悪いと決めつけることはできません。とはいえ、医薬品に使われる原料の方が管理がて厳しいことが多いので、安心感があります。

簡単にまとめますと、医薬品・医薬部外品は管理が厳しいので、一定の水準以上である安心感がありますが、清涼飲料水になると、ピンからキリまであり、いいものもあるかもしれないが、ほとんど成分が含まれていないようなものがある可能性もあり、判断が難しいといえます。

2009年2月13日金曜日

ヒハツ(蓽撥)エキスについて

ヒハツ(蓽撥)エキスは、ヒハツ(和名:ナガコショウ Piper longum)の果穂を熱水抽出したエキスです。
ヒハツ(蓽撥)は東南アジアに自生するコショウ科のつる性常緑本木です。胡椒の仲間で、インドナガコショウやロングペパーとも呼ばれます。長さは2mになり、果穂は多肉質で、3~9cmの太い円筒状になり、9~10月頃、収穫します。
辛味とともに甘味もあり、紀元前からカレーなどの香辛料として利用されてきました。
ヒハツ(蓽撥)の近縁種であるヒハツモドキは、沖縄や八重山諸島では「フィファチ」と呼ばれる香辛料として、豚肉の臭み消し、沖縄そば、みそ汁の味付けなど、琉球料理に使用されています。
ヒハツはピペリン等を含み、血管を拡張し、血流量を増加させて、体の表面温度を高くするため、発汗作用があり、新陳代謝を促進させる働きがあります。インドでは昔から体の冷えを改善する目的で使用されています。また、健胃・整腸作用や強精作用もあると言われています。

類似の原料に黒コショウもあります。
黒コショウから、ピペリンを主成分として抽出したものが、上市されています。
ビタミンやミネラルなど、他の成分の吸収を良くすると言われています。
たとえばある研究で、毎日5mgのピペリン製品(商標バイオペリン:サビンサ社製)をβ-カロチンやセレン、ビタミンB6などのいくつかのサプリメントと一緒に被験者に与えたところ、二週間後には、β-カロチンだけを摂取していた人と比べると、バイオペリンを併用した方は、血中のβ-カロチンの値は60%も上昇しました。また、ピペリンを摂取して一時間以内に血中のセレンとビタミンB6量が増加しました。血中の栄養素の量も増加しましたが、正常な範囲でした。また、副作用はまったく見られませんでした。このように他の成分の吸収を良くするので、多くのサプリメントに補助的に使用されています。

コショウを摂取すると、新陳代謝(しんちんたいしゃ)が良くなることが知られています。
血行が良くなり、 エネルギー代謝が促進され、脂肪燃焼も促進され、
その結果、ダイエット効果が発揮されます。
食べてすぐ代謝が良くなるのは、辛さによる交感神経の働きで、
その後、代謝が良いのはホルモン(カテコールアミン)の働きによるものと考えられています。

ヒハツ(蓽撥)にも黒コショウにも、ピペリンが含まれていますので、同様な効果が期待できます。

ただ、このピペリンには薬物代謝酵素であるシトクロムP450(CYP3A4)の阻害活性があることが知られています。
ある種の高血圧の薬(カルシウム拮抗薬)を服用する時に、グレープフルーツジュースを同時に飲むと、薬の効果が強くなる(血圧が下がり過ぎる)副作用があることが知られていますが、これはグレープフルーツに含まれるフラボノイドが、薬を分解する酵素であるシトクロムP450(CYP3A4)の働きを邪魔するからだと言われています。
ピペリンも同様にシトクロムP450(CYP3A4)を邪魔しますので、同じような副作用が起こる可能性があります。
カルシウム拮抗剤に限らず、シトクロムP450(CYP3A4)で分解される薬物は、ピペリンによって分解が抑制され、全て効果が増強される可能性がありますので、医薬品の副作用が起こり易くなるかもしれません。
また逆に、チトクロームp450(CYP3A4)で代謝されて効力を発揮するような医薬品(例:テルフェナジン (Terfenadine))などは、効果が弱くなってしまうかもしれません。

相互作用 想定される機序
プロプラノロール 血中プロプラノロール濃度の上昇 CYP 阻害
テオフィリン 血中テオフィリン濃度の上昇 CYP 阻害
この他、
Dipiperamide A, B, and C: bisalkaloids from the white pepper Piper nigrum inhibiting CYP3A4 activity   Tetrahedron  58巻1667-1671頁  2002/03
によりますと、
CYP3A4の阻害活性がピペリンよりも100倍強い活性を示す物質であるDipiperamide という成分がコショウから発見されているそとですので、上記の作用は、益々強くなりそうです。

【参考】薬物代謝にはいくつかの酵素が関与していますが、その中で特に重要な役割を果たしているものがシトクロムP450(CYP)と呼ばれる酵素です。CYP にはCYP1A2, CYP2C9,CYP2C19,CYP2D6, CYP3A4 など多くの分子種が存在します。CYP3A4 はその中でも多数の医薬品の代謝に関与することから、薬物相互作用を考える際に重要な分子種です。CYP は主に肝臓に存在していますが、小腸上皮細胞においても発現しており経口投与後の薬物の代謝に関与します。

冷え症に利用される健康食品・サプリメントの原料としては、ヒハツ(蓽撥)の他、糖転移ヘスペリジン、ショウガ、唐辛子(トウガラシ)、朝鮮人参(高麗人参)、ギャバ(γ-アミノ酪酸)、反鼻(はんぴ、まむし)などがあります。

冷え症は、西洋医学では余り重視されませんが、漢方では証を決める際の重要な項目の一つとなります。
冷え症に応用される漢方薬方は色々とありますが、代表的なものとして、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)、人参湯(にんじんとう)、真武湯(しんぶとう)、四逆湯(しぎゃくとう)などがあります。
真武湯(しんぶとう)や四逆湯(しぎゃくとう)には、附子(ぶし)が含まれています。附子は、一時保険金詐偽で有名になったトリカブトの塊根です。矢毒(やどく)にも使われていたように、毒性もあります。温める力は強いですが、体質的に合わない人(暑がりのような人)が飲むと、しびれたり、最悪の場合は死につながる可能性もありますので、注意して下さい。
毒を薬として使うのは、漢方の醍醐味です。
(最近の附子は、減毒されていますので、通常の服用量であれば、中毒を起こしたりすることはまず無いと言われています。間違って山菜として食べて食中毒を起こす事件がたまにあります。)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)は、冷え症の中でも、特に「しもやけ」に良く使われます。「四逆」という字がありますが、四逆湯とは直接の関係はなく、附子も含まれていません。

2009年2月9日月曜日

医師の8割が漢方薬を処方(薬事日報記事より)

日本漢方生薬製剤協会(日漢協)調べ
2008年8月5日~9月12日にかけて
全国の医師を対象にインターネットを介して実施
回答:684人
病院の勤務医が70%以上

漢方薬を処方している医師83.5%
以前使用したが、後に中止した医師を含めると98.1%
ほとんどの医師が漢方薬の処方経験を持っている。

処方患者の20.2%は漢方単独処方

処方する診断基準
 1.西洋医学の診断…………………………………47.8%
   西洋医学の診断を基本に漢方も考慮……36.1%

漢方処方の基本的立場
   一部の疾患で漢方薬を第一選択…………52.7%
      (特に産婦人科と外科で漢方薬を第一選択)
   あくまでも西洋薬の補完……………………44.5%
      → 西洋薬で効果がなかった症例で漢方薬が有効……56.4%
      → 患者の希望…………………………44.3%

漢方薬を処方する疾患上位5項目
 1.急性上気道炎……46.8%
 2.便秘……37.3%
 3.こむらがえり……36.4%
 4.不定愁訴・更年期障害……35.6%
 5.疲労・倦怠感……25.4%

漢方薬を処方しない理由
 1.漢方薬の使い方が難しい……44.2%
 ・ エビデンスが充分でない……39.6%
 ・ 治療効果が不充分……32.7%

今後の課題
 ・エビデンスの集積……62.4%
 ・剤形の工夫・開発……15.1%
         錠剤……74.5%
         カプセル……56.6%
         (より患者が服用しやすい剤形を求めている)
 ・漢方の現代医学的解釈……14.3%
        漢方薬の使い方が難しい為

漢方薬に今後期待する役割
  西洋薬の補助・補完……16.8%
  西洋医学で解決できない疾患……16.6%
  疾患によっては期待できる……70.5%
 

特に期待する疾患
  不定愁訴・更年期障害・月経困難症……13.2%
  心身症・うつ病・精神疾患……………………9.4%
  認知症及び周辺症状…………………………7.2%
  (西洋医学では解決が難しいとされる疾患)
以上『薬事日報』 第10642号 (2009(平成21)年2月6日)より、抜粋・改変

(コメント)
漢方が異端児扱いされていた頃を思うと、隔世の感があります。
やはり、保険に収載されたのが大きいと思われます。
ただ、気になるのは、漢方薬を漢方薬として使うのではなく、
西洋医学的診断に従って使っている所です。
西洋医学的な診断に従うということは、もはや漢方ではなく、単なる生薬製剤となってしまいます。
病名を薬方(漢方処方)選定の手掛りにするのは
一つの方法だとは思いますが、
単に西洋医学的な病名だけで使うことは副作用の問題などもあり、
何らかの対策が必要と思われます。
ただ、こむらがえりに芍薬甘草湯など、
単に病名を頼りに、漢方薬を使っても
けっこう効くことが多いというのも事実です。


剤形の工夫・開発で、錠剤やカプセル剤を希望している旨がありますが、
エキス剤は吸湿性が高いので、錠剤やカプセル剤にしようとすると
賦形剤(ふけいざい)が大量に必要となり、
錠数やカプセル数が非常に多くなり、結局は飲みづらくなる可能性があります。

もともと散剤として使われるものや、丸薬として使われるものであれば、
粉末生薬を錠剤やカプセル剤にするのも一方法かと思われます。

エキス顆粒剤が飲みにくい時は、お湯に溶いて飲むのも一つの方法です。
この方が、煎じ薬に近いと思われます。
ただ、メーカーにより、お湯への溶け易さが異なりますので注意が必要です。
よくかき混ぜないと、デンプンなどの賦形剤が、底に残ります。


剤形の工夫という点では、揮発成分の保持があります。
『六陳八陳』という言葉がありますように、蘇葉や薄荷のような精油を含む生薬は、
新しいものが良いとされています。
これらの生薬は、煎じますと、揮発性の成分がとんで無くなってしまいます。
これを改善する工夫が欲しい所です。

山本先生によりますと、高血圧に釣藤散(ちょうとうさん)を使う場合は、
エキス剤は余り効果が期待できず、
釣藤鈎(ちょうとうこう)の粉末を加えた方が良く効くそうです。

2009年2月6日金曜日

透析患者の便秘の原因と漢方薬

透析患者の便秘の原因 としては、まず、水分制限があげられます。更に、K(カリウム)・P(リン)の制限のため、食物繊維の摂取量が減少しやすく、この水分制限と食物繊維不足から硬便(こうべん:かたい便)になりやすく、便秘しやすくなります。また、食事制限と透析による除去のためビタミンB類も欠乏しやすく、そのため腸管蠕動運動(ちょうかんぜんどううんどう)が低下しやすいと考えられます。更に、運動不足や筋肉の疲弊(ひへい)により、腸管平滑筋(ちょうかんへいかつきん)の脆弱化(ぜいじゃくか)をきたしやすいと考え現れます。これら3つの点から、透析患者は、便秘を起こし易いと考えられます。

慢性機能性便秘は、弛緩性、痙攣性共に漢方治療の適応です。
特に通常の便秘薬で腹痛、下痢をきたす例に試みるとよいと考えられます。
漢方治療では証(体質・症状)にあった処方選択が重要となります。
(便秘に良く使われる漢方薬)
1.大承気湯(だいじょうきとう)
2.調胃承気湯(ちょういじょうきとう)
3.大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
4.麻子仁丸(ましにんがん)
5.潤腸湯(じゅんちょうとう)
6.桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)

(腹部膨満感・腹痛に良く用いられる漢方薬)
1.桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
2.桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)
3.大建中湯(だいけんちゅうとう)
大承気湯調胃承気湯大黄甘草湯麻子仁丸潤腸湯桂枝加芍薬大黄湯は、大黄を含んでいますので、合わない場合には、下痢や腹痛を起こす場合があります。
麻子仁丸潤腸湯は、兎糞便(とふんべん)と呼ばれるウサギのフンのようにコロコロとした便に良く使われます。麻子仁丸潤腸湯は類似した薬方(漢方処方)ですが、潤腸湯の方が、麻子仁丸より更に便を潤す力が強いと言われています。すなわち、麻子仁丸に似て、さらに体液の欠乏がはなはだしく、皮膚に湿りがないものに潤腸湯を用います。 両薬方とも老人性の便秘に良く使われます。
大建中湯は、冷えにより腹痛が増す場合に用いられます。
開腹術後の通過障害や過敏性腸症候群に伴う腹痛、腹部膨満感に用いられます。
薬味は、人参(にんじん)、山椒(さんしょう)、乾姜(かんきょう)、(膠飴(こうい))と、たいした(?)ものは入っていないのですが、腸管の蠕動(ぜんどう)が外部から見えるような症状に良く効きます。腸の蠕動運動を整えることから、開腹手術後の腸閉塞(イレウス)の予防効果を期待して用いられるようになったようです。
桂枝加芍薬大黄湯は、桂枝加芍薬湯に大黄を加えたもので、傷寒論では桂枝加大黄湯(けいしかだいおうとう)となっています。ただ、この桂枝加大黄湯ですと、桂枝湯に大黄を加えたものと思われかねませんので、一般的には桂枝加芍薬大黄湯と呼ばれています。
この桂枝加芍薬大黄湯は、桂枝加芍薬湯証で裏急後重の下痢、桂枝加芍薬湯では通じない頑固な便秘に用います。
桂枝加芍薬湯桂枝加芍薬大黄湯は、過敏性腸症候群に伴う腹痛、しぶりばらにも良く用いられます。
なお、桂枝加芍薬湯に膠飴(こうい)を加えると小建中湯(しょうけんちゅうとう)になります。