第三節 解毒証体質
(一) 解毒証体質の定義および原因
解毒証体質とは解毒剤、すなわち、四物黄連解毒剤によつて、もつぱら治療に当たる体質を言うのであつて、解毒なる冠詞は四物黄連解毒剤の解毒をそのまま転用したに過ぎないのである。解毒とはつまり毒を解くという意味である。しかし、その毒とはもちろん臓毒を指すのではなく、この場合は解毒剤によつて解くところの毒を言うのである。
それならば、その毒とは何かというと、まず挙げなければならないものは結核性毒である。この結核性毒と解毒体質とは離れることのできない関係があるのであつて、総じて、結核性疾患に犯されやすい者はこの解毒証体質者であると言つてもよいのである。そしてこの解毒証体質者の幼年時の主(つかさど)る柴胡清肝散は、小児の大部分に与える必要のある薬方であつて、これは西洋医家が発表している小児期の肺結核の統計、すなわち、大部分の人間は小児期において肺結核を経過するという報告と期せずして一致しているのである。
また、結核性体質を有する小児は、つねに風邪、気管枝炎、喉頭炎、扁桃炎、咽頭炎、鼻炎等の炎症性疾患に犯されやすいが、これらの疾患は柴胡清肝散によつて治療しているのである。また小児期にこの柴胡清肝散証の著明な者は、青年期に達すると荊芥連翹湯証となり、思春期における肺結核の起こりは、全部この解毒証体質者に見られると言つてもよく、しかも、この体質者は、青年期以降も肥満することなく、多少なりとも結核に対する危険を感ずるものである。
以上の事実を帰納して考えると、解毒証体質の者は結核性毒を有するものと思われるのである。
そのほかこの体質の者は、淋疾、耳鼻、痔、神経衰弱等の疾患に罹りやすく、これらの疾患は小児のいわゆる疳の病と言われる病気を初め、みな肝臓腫大を認めるものである。ゆえに、解毒証体質とは、肝臓の解毒作用を必要とするいろいろな体毒を持つている体質と見なすべきであろう。このようなときは、結核性疾患も、肝臓機能に関係のある場合は解毒剤を用うべく、また淋疾、痔疾、眼疾、神経衰弱、耳鼻疾患、咽喉部疾患等においても同様である。
淋疾を治す竜胆瀉肝湯は、この解毒剤に利尿剤ならびに、さらに肝臓の薬剤を加味したものであり、蓄膿症、中耳炎を治す荊芥連翹湯は同様解毒剤に治風剤をつけ加えたものである。
このように、解毒証体質は、その大部分は父母より遺伝され、年齢に従つて変化消長を来たすものである。すなわち、幼年期はその毒が最も強く、かつ大部分の小児に認められるものであるが、青年期に達すれば大多数は強健となり、そのうちの小数が依然として解毒証体質を持つていて、肺結核、肋膜炎等を病みやすいのである。さらに壮年期以降ともなれば、解毒症体質は少なくなり、結核に対する危険も青年期にくらべて緩和されるのである。これすなわち解毒証体質の消長を示すものである。
さらに言えば、解毒証体質の変化とは、幼年期の解毒証体質は柴胡清肝散が主るものであるが、青年期となるとやや変化を来たして、荊芥連翹湯証となり、もはや柴胡清肝散の治すところではないのである。また、青年期、および、それ以後の解毒証体質には竜胆瀉肝湯を運用するので、このように年齢に従つてその徴候に変化を認めるのである。したがつて、解毒証体質は、さらに三つに分けて、柴胡清肝散証、荊芥連翹湯証、竜胆瀉肝湯証の三解毒証に分類されることになるのである。
(二) 解毒証体質
瘀血証体質の顔色は比較的赤ら顔であり、臓毒証体質の者は白色であることが通例であるということは、すでに前記した通りであるが、この解毒証体質の者の顔色は、三解毒証とも一般に浅黒い皮膚の色を呈している。もつともその中には蒼白色から青黒色に至るまで、色度の深浅はあるが、総じて汚れた曇色の印象を受けるものである。また、骨骼は概してやせ型であり、筋肉型でもある。
つぎに、三解毒証のそれぞれについて、その診法を述べ、三分類の概念を説明したいと思う。
柴胡清肝散証
望診 小児の大部分は肺結核を経過するように、小児のほとんど全部はわれわれの言う柴胡清肝散証を呈するものである。小児の症候不明のうちに経過する者が多いと同様に、柴胡清肝散証を呈する小児もそれほど顕著な症候を呈するわけではない。ただそのわずかの者が著明な徴候を現わしてくるのであつて、そのような者は特に解毒証体質の強い小児である。ただし、その場合は結核性毒を意味するのである。ゆえに、このような小児は虚弱な者で、つねに風邪気味であり、気管枝炎、扁桃炎を発病しやすく、肺門淋巴腺肥大と診断される小児が柴胡清肝散証に相当するのである。また、風邪のあと中耳炎を起こしやすく、アデノイドを起こし易い。
以上のような小児はたいてい青白い顔色か、まはた浅黒い者が多い。そして、体格はもちろんやせ型で、首が細く、胸が狭い。そのほか、顎下頚部淋巴腺腫大を認める者などは柴胡清肝散の投与を必要とするのである。
脈診 小児の脈はあまり重要視することはできないが、原則としては緊脈である。
腹診 柴胡清肝散の行く腹証は、腹診上、肝経に相当して緊張を認める。この肝経の緊張は肝臓の解毒作用の現われとしての一つの現象てあつて、解毒証体質と肝臓機能との関係を証明するものであるまた一般に、腹筋の緊張が強く、腹が軟かでない。また腹診をするとき、くすぐつたがる小児は柴胡清肝散証の強いものと思つてさしつかえなく、腹診時の腹壁の異常過敏性は解毒証体質者に特有であつて、柴胡清肝散証ばかりでなく、荊芥連翹湯証、竜胆瀉肝湯証などにも同様にこの現象を認めるものであう:
柴胡清肝散証のかかり易い病気
柴胡清肝散証の者のかかりやすい病気を挙げれば、結核性疾患-肺門淋巴腺肥大、頚部淋巴腺炎、肋膜炎、腎臓膀胱結核、扁桃炎、咽喉炎、鼻炎、アデノイド、中耳炎、乳様突起炎、神経質等であろう。
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第三章 解毒剤
解毒剤としてわれわれの用いる処方は柴胡清肝散、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯の三つがあるが、これらは何れも四物黄連解毒湯を基本としているから、まず四物黄連解毒湯について、その薬理を知らなければならない。
四物黄連解毒湯は四物湯と黄連解毒湯の合方である。ゆえにわれわれはさらに本流にさかのぼつて、四物湯について、および黄連解毒湯についてそれぞれの薬理を各別に研究する必要があるのである。
そこで、四物黄連解毒湯であるが、われわれの用いるものは、当帰、川芎、芍薬、地黄、黄連、黄芩、黄柏、山梔子、連翹、柴胡、甘草各二・〇等量で一日量である。
黄連解毒湯。
黄連解毒湯は一言にして言えば三焦実火の瀉火剤である。「傷寒活人書」の傷寒門に、黄連解毒湯についてつぎのように記されている。
「大熱止まず、煩燥、乾嘔、口渇、端満、陽厥極めて深く、蓄熱内に甚しく、及び汗吐下の後、寒涼の諸薬、其熱を退くこと能わざる者を治す」とあり、処方は、黄連二・〇、黄芩、黄柏、梔子各四・〇、柴胡、連翹各二・〇(回春)一日量。
なお、内容の薬味については、
黄連は心に入り、熱に勝つ、中焦の実火、脾胃の湿熱を瀉す。とあり、「万病回春」の諸病主薬の条に、心火を瀉すは須く黄連を主とすべし。とある。
黄芩は、心に入り、熱に勝つ、中焦の実火、脾胃の湿熱を瀉す。とあり、「万病回春」の諸病主薬の条に、肺火を瀉すには須く黄芩を主とすべし。とある。
黄柏は、足少陰腎経に入り、足太陽膀胱引経薬と為る。膀胱の竜火を瀉し、小便結を利し、腎の不足を補う。とあり、「万病回春」の諸病主薬の条に膀胱を瀉すには須く黄柏を主とすべし。とある。
梔子は、苦寒、肺中の火を瀉し、其用四有り、心経の客熱を除く一なり、煩燥を除く二なり、上焦虚熱を去る三なり。風を治す四なり。とあり、
柴胡は、少陽厥陰病之邪熱を平にする(すなわち肝、胆、心包、三焦)ものであり、「万病回春」の諸病主薬の条に、肝火を瀉すには須く柴胡を主とすべし。とある。
連翹は、手の少陰厥陰(心、心包)気分に入りて火を瀉し、兼て手足少陽(三焦、胆)、手陽明(大腸)気分の湿熱を除く。とある。
以上の説明によつて、黄連解毒湯は心、肺、肝、脾、腎、小腸、大腸、胆、胃、膀胱、心包、三焦の瀉火作用、言いかえれば、三焦の実火の瀉火剤であることがわかる。
このように黄連解毒湯は実火のみに応用するので、虚火にはその一味といえども用いることを戒めている書もある。しかし、われわれがこの黄連解毒湯を多用することができるのは、四物湯を合方して四物黄連解毒湯とするからであるが、やはり虚火には用うべきではない。つぎに、黄連解毒湯はどういう病気に応用されるか、それを述べよう。
黄連解毒湯は「傷寒活人書」の火証門に、「三焦の実火、内外皆熱し、煩渇、小便赤、口瘡を生ずるを治す」として芍薬を加え、脾火を瀉して口瘡を治する。とあり、
「回春」の吃逆門に「傷寒伝経の熱証」に、医者誤つて姜桂等熱薬を用い、火邪を助け起こし、痰火相搏ちて欬逆を為す者。黄連解毒湯之を治す。」とあり、
「寿世保元」の便血門に「臓毒下血は必ず糞後に在り。黄連解毒湯加槐花、細辛、甘草、連翹をして、八宝湯と名づく」とあり、
「回春」の癲狂門に「喜笑休まざる者は、心火盛なるなり、黄連解毒湯加半夏、竹瀝汁、竹葉、姜汁少許にして笑即ち止む」とあり、
「回春」の崩漏門に「婦人の血崩を治す。年四十以上、悲哀大に甚しく、則ち心悶え急、肺気挙焦して上焦通ぜず、熱気中に在り、故に血去りて崩れ、面黄飢痩のものは、燥熱の薬を服すべからす、蓋し血熱して流行す、先ず黄連解毒湯を以て、後凉膈散を以つて、四物湯に合わせ調理効あり、稍久しく虚熱に属する者は宜しく血を養いて火を清すべきなり。黄連解毒湯合四物湯之を治す。又温清飲と名づく」とあり、
温清飲条に「婦人経脈往かず、或は豆汁の如く、五色相雑え、面色萎黄、腹刺痛し、寒熱往来、崩漏止まざるものを治す。」とある。
この四物湯合黄連解毒湯がわれわれの言う四物黄連解毒湯であつて、その薬能は一言にして言えば、「血を養いて火を清す」ということになるのである。
四物湯
四物湯は「血を養い、血熱を冷まし、また血燥を潤す」の薬能を持つているが、以上の薬能は四物湯が肝に働いて肝血を和す結果に外ならない。
「和剤局方」の補血門の四物湯条に、
「肝脾腎血虚発熱し、或は寒熱往来、或は日晡発熱、頭目清からず、或は煩燥寝ねず、胸膈脹をなし或は脇痛むものを治す」とあり、四物湯の処方は白芍二・○、川芎三・〇、当帰、熟地黄各五・〇が一日量である。なお、四物湯の
当帰は、心脾に入り、血を生ずとあり、
熟地は、心腎に入りて、血を滋すとあり、
白芍は、肝脾に入りて、陰を歛むとあり、
川芎は、心肝に入りて、血中之気を通じ行らす。
とある。そして、「当帰は君薬と為し、熟地は臣薬と為し、芍薬は佐薬と為し、川芎は使薬と為す」とある。
また「万病回春」の怔忡門に「心中血養無し、故に怔忡を作す、四物安神湯之を治す」とある。
そのほか、調経門に、血虚血熱、経調わざる者に四物湯が用いられるのを見ても、四物湯が養血して、血虚を治すことがわかる。また、四物湯が血熱を治すことは「万病回春」の発熱門に「昼静かに、夜熱する者は、此れ熱血分に在るなり、四物湯加知母、黄柏、黄連、梔子、牡丹皮、柴胡。昼夜俱発熱者此れ熱気血之分に在るなり、四物湯合小柴胡湯に黄連、梔子を加う。」とあるところからも知られるのである。
また、遺精門に、「夢遺精滑、肝腎虚熱に属する者、四物湯加柴胡、山梔、山茱萸、山薬之を治す。」とあつて、四物湯が肝腎を補うことがわかるのである。
そのほか、血虚、血熱を原因と見て、四物湯加減を与えている病気を古書に拠つて列記してみると、
中風門-血虚して左半身不逐、四物湯加釣藤、姜汁、竹瀝、之を治す。
類中風門-血虚眩暈卒倒、加味四物湯之を治す。
嘈囃門-思慮以て血虚を致し、五更時(暁け方)嘈囃、四物湯加香附子、梔子、黄連、貝母。
吐血門-血熱して吐血す。加減四物湯之を治す。
眩暈門-痩人血虚痰火頭眩、加味四物湯之を治す。
小便閉門-年老の人、血虚して小便通ぜざるは、四物湯加黄耆之を治す。
頭痛門-血虚、陰火沖上し、頭痛、加味四物湯之を治す。
鼻病門-鼻赤の者、熱血肺に入り、酒皶鼻となるなり、清血四物湯之を治す。
口舌門-口舌瘡を生じ、糜爛、或は晡熱、内容、脈数無力、此れ血虚有火、四物湯加白朮、茯苓、麦門、五味、牡丹、黄柏、知母。
眼目門-四物竜胆湯血熱を冷ます。
咽喉門-虚火上升して、喉痛む、加味四物湯之を治す。
脚気門-脚気転筋者血熱なり、四物湯加黄芩、紅花。
痿躄門-血虚痿躄、加味四物湯之を治す。
消渇門-三消、血虚に属し、津液生ぜざる者は四物湯加減。
崩漏門-血虚熱有りて崩血するものは、四物湯合黄連解毒湯
帯下門-気血虚に属す、加減八物湯之を治す。
小産門-産後腹痛、之を按じて、反て痛まざるは、此れ血虚なり、四物湯加人参、白朮、茯苓。
産後門-悪血尽きず、昼は則ち明了、暮は則ち讝語、寒熱鬼を見る如く、此れ熱血室に入る。四物湯加柴胡。
陰戸腫痛-血熱の然らしむるところなり。四物湯加梔子、柴胡、丹皮、竜胆。
麻疹門-麻疹前後熱有り、潮退かざる等の症、四物湯加減。
下疳門-腫痛、発熱、血虚して熱有るものは、四物湯加山梔、柴胡。
以上で、四物湯ならびに黄連解毒湯の解説は終わつたが、この四物黄連解毒湯は「養血而清火」なる薬理作用のあることがわかつたたから、つぎに本論にもどつて、柴胡清肝散より順次説明することにしよう。
(一)柴胡清肝散
柴胡清肝散は幼児期の解毒症体質を主宰する処方で、小児の病気の大部分はこの処方で治療に当つている。
処方は、当帰、川芎、芍薬、地黄、黄連、黄芩、梔子、連翹、甘草、桔梗、牛蒡子、天花粉、薄荷葉各一・五、柴胡二・〇、大人一日量。本方は四物黄連解毒湯加桔梗、薄荷葉、牛蒡子、天花粉となる。
桔梗は苦辛微温、肺に入りて熱を瀉す、兼ねて手少陰心、足陽明胃経に入り、気血を開提し、寒邪を表散し、頭目、 溢喉、胸膈滞気を清利す。とあり、「薬徴」に「桔梗は濁唾腫膿を主治するなり、旁ら咽喉痛を治す」とある。
牛蒡子は辛平上升、肺を潤し、熱を解し、結を散じ、風を除く、咽膈を利し、斑疹を消す。小便を通じ、十二経を 行らし、諸腫瘡之毒を散じ、凝滞腰膝之気を利す。とある。
天花粉は、津を生じ、火を降し、燥を潤し、痰を滑かにし、渇を解き、肌を生ず。膿を排し、腫を消し、水を行らし、経を通じ、小便利するを止む。とある。
薄荷葉は、辛温、賊風、傷寒、発汗、悪気、心腹脹満、霍乱、宿食消えざるを治し、気を下す。とあり、「明医雑著」の附方火証門の柴胡清肝散条に、「肝胆二経風熱怒火、頚項腫痛、結核消えず、或は寒熱往来、痰を嘔吐するものを治す、又婦人暴怒、肝火内動、経水妄行、胎気安からざる等の症を治す。」とある。
柴胡、黄芩、、各一匁三分、黄連、山梔子九分、当帰一匁三分、川芎七分、丹皮一匁三分、l以上一日三回量。
この柴胡清肝散から丹皮、升麻を除いた全部は我々の言う柴胡清肝散と同一である。
「外科枢要」の瘰癧の項、柴胡清肝散について、
「鬢疽及肝胆三焦風熱、怒火之症、或は項胸痛を作し、或は瘡毒発熱を治す。」
柴胡一匁六分、黄芩、人参、川芎各一匁一分、山梔子一匁六分、連翹、桔梗各九分、甘草六分。とある。
この処方は我々の柴胡清肝散より人参を除いてみな含まれている。前記二処方の解説によつて、一貫堂では我々の言う柴胡清肝散の薬能とし仲、肝胆三焦之風熱を治し、頚項腫痛、結核を消散する。ことがわかる。
鬢疽とは「瘍科鎖言」によると「鬢疽は鬢に生じ、初起熱劇焮痛、或頭眩或煩燥、其色紫黒になる也。甚しきは頚辺も腐り及ぶ、是必死也。軽症は熱も痛も格別なきなり。大抵形は癤に似たれ共、又腫物のように膿をなさざる也。且此症は至つて稀なるもの也。」
とあつて、頚部の悪性腫物なることが知られる。「外科正宗」にはおよび耳病の治療法として柴胡清肝散をあげているが、「外科正宗」の柴胡清肝散は前記二方とやや処方を異にしており、我々の言う柴胡清肝散と非常によく似ている。
柴胡、川芎、芍薬、地黄、柴胡、黄芩、梔子、天花粉、防風、牛蒡子、連翹、甘草以上十二味。
すなわち、同方から防風を去つて桔梗、黄連、黄柏、薄荷葉を加えたものがわれわれの柴胡清肝散である。したがつて、以上三方の合方によつて、我々の柴胡清肝散の全体をうかがい知ることができるのである。すなわち、柴胡清肝散は肝、胆、三焦経の風熱を治すことになるので、この三経絡は、喉頭、頚部、耳前耳後耳中を経絡するので、柴胡清肝散が、これらの部分の病気に応用される理由もはつきりする次第であり、小児期の解毒証体質者は概してこの部分の病気に犯され易く、したがつて、柴胡清肝散が小児期の解毒証体質を主宰することになるのである。
なお、一貫堂では、 この柴胡清肝散服用によつて、小児の解毒証体質を改変し、これらの軽気にかかることから解放されるという光明を見出すことができるのである。
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第三章 解毒剤
第一類 柴胡清肝散
感冒
柴胡清肝散はもちろん純粋の感冒薬ではない。しかし、前に記したように、小児の解毒証体質者は、体質上感冒にかかりやすく、したがつて、この体質者にとつては感冒薬よりも感冒予防薬を論じる方がより必要なことであろう。森道伯先生が、この小児の解毒証体質者に柴胡清肝散を与えた理由は、じつにこの体質者を向上させて、後ちに肺結核を起こす余地を与えないようにと考えられたにほかならないのである。
解毒証体質者は風邪にかかり、扁桃炎を併発し易く、また気管枝炎も容易に起こすのである。ゆえに、このような体質の者には、感冒が治つたあとも、この柴胡清肝散を服用させてこれらの病気を起こさせないように努めなければならない。その意味でわれわれはかなりの成績をあげているのである。
発熱
発熱を起こす病気は、小児の場合は非常に多いが、柴胡清肝散を用いて治る発熱はわれわれの称している疳熱というものである。
この疳熱とは言いかえれば、結核性熱で、西洋医学の腺熱である。解毒証体質者は結核性疾患におかされやすく、小児の大部分は肺結核を経過するから、臨床上小児の発熱をよく見るのである。発熱の高いものは四十度にも達するが、柴胡清肝散の服用によつて数日のうちに平熱に復することが多い。
疳疾
疳疾の定義はいろいろあつて、治療漢も多くの方法があるが、大別すると、その一第類は、神経質の小児で、俗に疳がつよいと言われているものである。
第二類は小児で、生米とか泥、炭などの異食をしたがる者で、やせていて、腹部だけが大きい者、これは俗に脾疳と言われ、また寄生虫も合併し、疳のむしともいわれているものである。
第三類は小児の結核性腹膜炎およびその他の結核を指して疳労と言つているものである。
疳疾というと元来五疳といつて五つに区別されているが、以上の三通りに解決するのが便利であろう。そしてわれわれの言う柴胡清肝散はこの第一類、第三類の疳疾にに対して与えられるのである。
俗に疳がつよいといわれる小児の神経質は、青春期に達するといわゆる神経衰弱症となるので、これも解毒証体質者に特有である。ゆえに小児期の神経質には柴胡清肝散を用い、青年期の神経衰弱擦には荊芥連翹湯を用いる理由もわかるのである。
なお、第二類の脾疳は消食、殺虫剤を与えるべきである。また第三類のうち、柴胡清肝散を用いて効を収めるのは、腹膜炎の初期だけであつて、蜘蛛のような腹状を呈する者には施すすべがない。
麻疹
麻疹の初期は感冒と区別が困難の場合もあるが、升麻葛根湯を与えておけば、麻疹は遺憾なく発疹して、内攻の心配はない。そして発疹後は、われわれは柴胡清肝散で解毒するのである。なお、麻疹と結核とは密接な関係のあることは、西洋医学においても証明されるところであって、したがつて、麻疹経過中、柴胡清肝散によつて解毒処置を施しておくところに、森先生が結核に対して深い注意を払つておられたことを知るのである。この方法によれば麻疹の治療としてはまず完全であると言えよう。また、麻疹の内攻による肺炎にも柴胡清肝散を用いることがあり、水痘にも発疹後は柴胡清肝散を用いてよい。麻疹内攻には二仙湯が神効を奏す。
瘰癧
柴胡清肝散は瘰癧門の処方であるから、瘰癧に用いて効あることはもちろんである。殊に小児瘰癧は大人のそれのように頑症ではないから、あえてレントゲン療法の必要はなく、かえつてそれは有害とも思われ、そのような場合はまず柴胡清肝散を用いて体質改善をはかることが大切である。
耳病
柴胡清肝散は中耳炎を治す処方であるが、中耳炎を病み易い小児に常用させると中耳炎を起こさないという報告も数多く出ている。
淋証
赤白淋すなわち結核性腎臓炎ならびに膀胱炎は、解毒証体質者に多く来るもので、特に肋膜炎、肺尖カタル経過中に起こることが多い。そして、柴胡清肝散加阿膠によつて軽快するもの、またまれには全快する小児も多数ある。
また青年期に至つてもこの病気を病む者は依然柴胡清肝証を呈する者が多く、したがつて、上記の処方をこの時期にも用いることとなるのである。
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口舌潰瘍
患者は大〇勝〇、一五才、男子。
舌下面に指頭大の潰瘍があり、糜爛、陥没し、周囲は紫色に腫張、一見して癌の潰瘍面を思わせる。患者は半年近く洋医の治療を受けていたが、治効無しとして来院した。
診ると、脈は緊、肝実で、腹は硬満して感る。舌は灰白苔を帯び、口中粘り、口臭甚だしく、食欲はあるが、食事をとることが非常に困難だという。これに解毒証体質と見て柴胡清肝散を与え、服薬三ヵ月にて潰瘍はほとんど快癒した。
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腺病性体質(虚弱性体質)
患者は大〇剛、五才、男子。
和昭三十六年二月五日初診。
患者は満五年にて言語障害、発語不能となり、自力では歩行できず、わぐかに他力によつて歩行しうるという状態である。
体格、栄養ともに不良で、顔面は蒼白、皮膚は非薄で、一見小建中湯証を思わせる。
診ると、頸部および顎下に無数の鳩卵大から大豆大の淋巴腺腫を認め、脊柱はくの字に彎曲し、臀部は左側に突出し、一見その奇形は人目を引くほどである。
腹診すると、腹部は膨満し、肝臓、脾臟の腫れも大きく、塊状に触れる。
そこで、これは柴胡清肝散証に虚の加わったものと考えて、薬方は、柴胡清肝散と補中益気湯の合方を考えた。
服薬五ヵ月にて頚部淋巴腺の腫脹、腹部の膨隆腫塊はともに漸減し、同時に一方、食欲増進、体格、栄養ともに良好となり、肥満してきた。以来二年長、一日の服薬を怠らずつづけたため、昨今は言路も明瞭となり、脊柱の弯曲、臀部の突出も正常の状態となり、本年四月より幼稚園に入ることができた。
これは解毒証体質に対する柴胡清肝散の顕著なる治効を認めた特記すべき例であつた。
精神異常(精薄児)
患者は小〇〇子、七才、女。
生後四ヵ月にて肺炎にかかり、昨年四物、精薄児として学園に入園、二ヵ月後に性格異常児として精神病院に入院した。しかし、鎮静剤の多用により病状ますます悪化せりとて来院した。
大、小便はたれ流し、よだれもたれ放題、目はおぼろにかすみ、親を見ても笑う勇気させなく、この世の人とも思われない状態で、新薬の恐ろしさを知つたと言う。
昭和三七年二月一四日、初診。
体格、発育、栄養ともに不良。気持落ちつかず、不眠、食欲不振に悩み、下痢は一日二、三回。
診察する間も両手を振り、両足を動かし、首を振り、瞬時も落ちつかず、身をもがき、唾を吐きかけて診察も困難を感ずるほどである。心下痞硬し、腹は硬満している。解毒証体質として、柴胡清肝散を与えた。服薬一ヵ月にして精神状態は平静となり、別人のようになつ来たという。その母親の書信に依ると、
「近ごろは女の子らしいやさしう態度になつて来たのをまず嬉しく思います。逢う人々からも、顔つきが以前にくらべてずつとやさしくなり、一段と美しくなつたと、よく言われます。親の欲目か、普通の子供よりもかわいい顔、そして利口そうな目なざしなので、なんとしても、あきらめきれない思いです。性格異状児と言われ、精神病院に入れられたのが、今となつては不思議なぐらいに落ちついて参りました」云々とあり、その治効ぶりがよくうかがわれた。これはまさに柴胡清肝散の正証と思われた。
先天性心臓弁膜症
患者は横〇順、二才、男子。
高度のの心臓弁膜症にて、啼泣するとほとんど呼吸が止まり、失神状態となる。小児科病院に長らく入院加療していたが、病状増悪、たえず失神症状をくり返すので、その苦悶の状視るに忍びず来院したという。聞くところによると、病院ではただ強心剤の注射をするだけで、手の施しようもなく、ただこれを見守るのみであつたという。
診ると、顔面は高度のチアノーゼの呈しており、浮腫があり、眼球は突出し、泣かんとするも声がかすれて出ない。腹部全体に硬満し、高度の肝脾の腫大を認めた。
本患部に対し、対証の剤を用いず、解毒証体質として直接柴胡清肝散を与えた。
服薬十日にて呼吸困難は軽減し、失神の発作も遠ざかり、顔面の株腫、チアノーゼも減少し、意外の顕著な治効に一驚したほどであつた。この患者の両親はともに大学出のインテリで、漢方に対してはむしろ不信の念を抱いたのであつたが、祖父なる人の懇望に応えて投薬、著効を奏したので、その両親を初めて態度を改めたという次第であつた。その後この子供は心弁膜症そのものは治らないにせよ、その症状はほとんど消失し、スクスクと発育生長し、現在は、一見普通の小児と何ら変わるところのないほど元気で遊びまわつてい音¥
この例め、一貫堂医学流に体質的に診て方剤を短刀直入に用いて治効を収めえた例で、そこに限りなき妙味を味わつたものである。
『漢方一貫堂の世界 -日本後世派の潮流』 松本克彦著 自然社刊
p.175
柴胡清肝散と竜胆瀉肝湯
柴胡清肝散
この方は小児期における体質改善薬として小柴胡湯に通じるともいえるが、結核全盛時代の一貫堂で頻用されていたとして有名な処方である。しかし同名の処方が多く、原典となるとなかなか分かりにくい。
しかし矢数格先生が掲けでおられるこの方名の原典として、一番古いものは王綸(一四八八-一五〇五?・明)の『明医雑著』である。即ちその附方、火証門の柴胡清肝散条には、
「肝胆二経の風熱怒火、頸項腫痛、結核消えず、或は寒熱往来、痰を嘔吐するものを治す。また婦人暴怒して、肝火内動し、経水妄行、胎気安からざる等の症を治す」
という条文で、
「柴胡、黄芩各一匁三分。黄連、山梔子九分。当帰一匁三分。川芎七分。丹皮一匁三分」
とあるとのことで七味からなり、これがそもそもの原型かと思われる。
この王綸という人は、明代でも比較初期の人であるが、『中国医学史略』の彼の著書『本草集要』についての解説があり、「本草及び東垣、丹渓の諸書にとり、参互考訂してその繁蕪(雑)を刪(けず)り、その要略を節して成す」とあるように、やはり李朱学派の影響を強く受けた人と思われる。
しかし『古今方彙』にはこの処方は見当らず、その瘰癧門には、別の同名処方が載っている。
即ち、
「柴胡清肝散(外科枢要)
鬢疽(びんそ)および肝、胆、三焦の風熱、怒火の症、或いは項胸痛をなし、或は瘡毒発熱するを治す。柴胡二銭半。黄芩、人参、川芎各一銭半。山梔子一銭半。連翹、桔梗各八分。甘草三分。水煎」
で八味からなっている。
この『外科枢要』は、薛己または薛立斎(一五〇六~一五六六・明)の著作で『万病回春』よりやや古く、『明医雑著』よりやや新しい。ところでこの薛己という人は、『外科枢要』以外にも薛氏一六種といわれるように、多くの著書と共に先人の著作についての解説書も多く、この中には先に述べた王綸の『明医雑著』も含まれている。即ち当然この柴胡清肝散という方名は、王綸から引きついだと思われ、これをその条文に基づいて、火証門から瘰癧門に移したと思われるが、この際内容に工夫を加えて八味とし、これがそのまま『古今方彙』に引き継がれたようである。
ところが道伯が清熱剤の範として取り上げたのは、これらいずれでもなく、矢数格先生が指摘しておられる通り、さらに後になる明末の陳実功(一五五五~一六三三)が著した『外科正宗』鬂(鬢)疽門に挙げられている柴胡清肝湯のようである。
鬢疽がどのような疾患に当るのかはよく分からないが、鬢というのは耳際の髪のことで、本文に、
「男子これを患うこと五日、項高く根、銭の大いさの如く、形色紅活なるは、これ肝経の湿熱患(わずら)いを為す。
麻子(大)の大艾を用い、炙すること七壮、梔子清肝湯二服をもって騰勢は佇止(ちょし)(たち止まる)す。蟾酥(せんそ)膏をもって灸上に貼り、更に柴胡清肝湯をもって白芷、黄耆、天花粉を加えて数服、膿潰(つい)え、腫消えて、半夏にして収斂す」とあり、後頸部の腫れ物で、結核性のものも多かったと思われるが、この後に、
「柴胡清肝湯
鬢疽の初期、未だ(膿)成らざるもの、陰陽表裏を論ずることなく、ともにこれを服すべし。
川芎、当帰、白芷、生地黄、柴胡、黄芩、山梔子、防風、天花粉、牛蒡子、連翹、甘草節各一銭。
水二鐘(升)八分にて煎じ食を遠ざけて服す」
と一二味の処方が掲げられている。ただ前二方が柴胡清肝散であったのに対し、ここでは柴胡清肝湯と改められているのである。
またこの書では耳病門も、
「……実火の耳根、耳竅ともに腫れ、甚しきときは寒熱交(こもごも)おこりて疼痛時になし。柴胡清肝湯、宜しくこれを治す」
とその応用が広げられているが、やはり方名は湯となっており、この処方が、一貫堂の加減方に一番近い。即ち一貫堂の加減方を柴胡清肝散と呼ぶべきか柴胡清肝湯と呼ぶべきかという問題で、その源流に従えば散と呼ぶのがよく、直接の原方をとれば湯というのが適当ということになる。
それはともかく、一貫堂はこの処方から、まず辛温解表の防風を去り、これに黄連、黄柏を加えて黄連解毒湯とし、さらに薄荷と桔梗を加えて、一連の清熱解毒剤の一つとしての形を整えたのであろう。最終的には、
黄連解毒湯……………清熱解毒
四物湯…………………柔肝養血
柴胡、薄荷、連翹………辛涼解表
天花粉、牛蒡子、桔梗…消腫排膿
甘草……………………諸薬調和
という構成で、荊芥連翹湯に比して解表薬は半減し、解表剤としての性格は薄くなる一方、天花粉、牛蒡子を加えることによって袪痰の作用が強められている。またこの両者の帰経はともに肺、脾で、これらが柴胡、連翹の心・胆に対する形となっており、中島先生の「中(うち)に和す」とは、結局は心・肺・胆・胃の調和に結びつくようである。
ただ中島先生は「子供には小柴胡湯か柴胡清肝散が飲みやすくて宜しい」といわれながらも、使っておられるのを見たことがない。私が通った時期には小児患者が少なかったこともあろうが、一般に中島先生は小児に対しては瀉法を避けられ、補法和法を主に考えられる傾向があり、このことを思い合わせるとこの証の小児に対しては、前に紹介した四補湯や表裏和解の桂枝湯と袪痰の二陳湯との組み合せである分心気飲或は小柴胡湯にも比すべき参蘇飲等を適宜組み合せて使っておられたような気がする。
ところで、私は不肖の第子ということになるのだろうが、近年この処方を愛用している。というのは我々の所に漢方の勉強に来ておられたある先生のお嬢さんが顔に湿疹ができ、年頃のこととて困っておられ、あれこれエキス剤を試みたがどうしても治らないといわれるので、ふと思いついてこの方に十味敗毒湯を合せてすすめてみたところ、間もなくすっかりきれいになった。これに味を占めて、以後多くのアトピー性皮膚炎に十味敗毒湯や消風散と合せて試みてみたが誠に効果的で、瞑眩といわれる一時的に悪化する現象も少ないようである。さらにまた、最近青少年によく見られる慢性の鼻炎にも、苓桂朮甘湯、葛根湯あるいは辛夷清肺湯を合せて用いると、よい結果が得られることが多い。鼻には荊芥連翹湯というのが常法であろうが、小児のアレルギー体質や、試験勉強で頭に血がのぼって鼻がつまるといった背景がある場合は、この方が適応することも多くまた両者を合方して用いてもよい。いずれも最近エキス剤で出ているので一度試みてみられたい。
昔結核体質といわれた子供達は、現今では形を変え、さまざまなアレルギー性疾患に悩まされているようで、これに対して小柴胡湯でももちろんよいのであるか、炎症反応が強い場合には本方が再び活用されよう。要は両者の長所、特色を考えて使い分けることが肝要である。
『臨床応用 漢方處方解説』 矢数道明著 創元社刊
p.194 小児腺病体質・肺門結核・扁桃炎
47 柴胡清肝湯(さいこせいかんとう) 〔一貫堂方〕
柴胡二・〇 当帰・芍薬・川芎・地黄・黄連・黄芩・黄柏・山梔・連翹・桔梗・牛蒡子・天花粉・薄荷葉・甘草 各一・五
右は一貫堂の経験方で、森道伯翁の蔵方である。外科枢要の瘰癧門の処方は、
柴胡四・〇 黄芩・人参・川芎・梔子 各三・〇 連翹・桔梗・ 各二・〇 甘草一・〇
である。
〔応用〕 小児腺病性体質の改善薬として、外科枢要の処方に加味し、森道伯翁が頻用したものである。
本方と主として小児腺病体質の改善薬として用いられ、肺門淋巴腺腫・頸部淋巴腺腫・福性扁桃炎・咽喉炎・アデノイド・皮膚病・微熱・麻疹後の不調和・いわゆる疳症・肋膜炎・神経質・神経症等に応用される。
〔目標〕 外科枢要の主治にあるように、肝・胆・三焦経の風熱を治すといって、この三経絡は咽喉・頸部・耳前・耳後・耳中を経絡するもので、これらの経絡に生じた風熱、すなわち炎症を治すものである。
一般に痩せ型、または筋肉型で、皮膚の色は浅黒く、あるいは青白いものもあるか台、汚(きた)なくくすんでいるものが多い。腹診上では両腹筋の緊張があり、肝経に沿って過敏帯を認め、腹診すると、くすぐったいといって笑い、腹診のできないものが多い。
〔方解〕 四物湯と黄連解毒湯の合方に、桔梗・薄荷・牛蒡子・天花粉(瓜呂根を用いてもよい)を加えたものである。温清飲は古きなった熱をさまし、血を潤し、肝臓の働きをよくするものである。桔梗は頭目・咽喉・胸膈の滞熱を清くし、牛蒡子は肺を潤し、熱を解し、咽喉を利し、皮膚発疹の毒を解す。天花粉は津赤を生じ火を降し、燥を潤し、腫れを消し、膿を排すというものである。
〔加減〕 明医雑著附方、火証門の柴胡清肝散は肝胆二経、風熱怒火、頭項腫痛、結核消せず、あるいは寒熱往来、痰を嘔吐するを治す。また婦人暴怒、肝火内に動き、経水妄行し、胎気安からざるを治す。
柴胡五・〇 黄芩・牡丹皮・当帰各三・〇 黄連・川芎・山梔・升麻各二・〇 甘草一・〇
「此方ハ口舌唇ノ病ニ効アリ。柴胡、黄芩ハ肝胆ノネライトシ、升麻、黄芩ハ陽明胃経ノ熱ヲサマシ、地黄、当帰、牡丹皮ハ牙齦ヨリ唇吻(シンブツ)(くちびる)ノ間ノ血熱ヲ清解シ、瘀血を清散ス。清熱和血ノ剤ニシテ、上部ニ尤モ効アルモノト知ルベシ」と勿誤方函口訣にある。
〔主治〕
外科枢要(瘰癧門)には、「鬂(ビン)(鬢)疽(ソ)及ビ肝胆三焦、風熱怒火ノ症、或ハ項胸痛ミヲ作シ、或ハ瘡毒発熱スルヲ治ス」とあり、
漢方後世要方解説には、「此方ハ主治ノ如ク、頸部淋巴腺ヲ治スノガ本旨デアルガ、小児ノ腺病体質ニ発スル瘰癧、肺門淋巴腺腫、扁桃腺肥大等、上焦ニ於ケル炎症充血ヲ清熱、和血、解毒サセル能ガアル。腺病体質ハ多ク父母ノ遺毒ヲウケ、肝臓ノ鬱血ヲ来シ食物ニ好キ嫌イガアツテ、神経質デ発育ガ障害サレル。本方ヲ続服シテ体質改善ヲ図ル」とある。
〔鑑別〕
○小柴胡湯 69 (小児腺病体質・胸脇苦満、本方は腹直筋緊張)
○小建中湯 68 (小児腺病体質・虚証、腹筋薄く緊張)
〔参考〕
矢数格著「漢方一貫堂医学」に詳述されている。
〔治例〕
(一) 口内潰瘍
一五歳の男児。舌の下面に指頭大の潰瘍があって、糜爛し陥没し、周囲は紫色に腫張している。いかにも瘡の潰瘍面のように見える。半年近くも専門の治療をうけているが治らない。脈は緊で、腹部は充実し、肝臓部が堅く触れ、口中粘り、口臭がひどい。食欲はあるが、潰瘍のため摂取困難である。体質的に柴胡清肝散を与えたところ、三ヵ月でほとんど治った。
(矢数格、漢方一貫堂医学)
(二) 精薄児
七才の女児。精薄児として学園に入り、二ヵ月後に性格異常児として精神病院に入院させられた。鎮静剤の多用によりかえって病状が悪化し、大小便はたれ流し、よだれは流れるにまかせ、眼光呆然として、この世の人とも思われぬ状態であった。
体格栄養とも不良で、気分落ちつかず、不眠と食欲不振、下痢二~三回、診察しようとすると手足を振り動かし、首を振り、身をもがき、唾を吐いて診ることができない。辛うじて腹を診ると硬い。
体質的に柴胡清肝散を与えたところ、一ヵ月後より効果顕著で、その後母親の手紙によると普通の児よりも可愛くなり、利口そうになって、服薬前のことを思うと夢のようであるといつ言てきた。
(矢数格、漢方一貫堂医学)
『明解漢方処方』 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.74
柴胡清肝散(さいこせいかんさん)(湯) 一貫堂家方
処方内容 柴胡二・〇 当帰 芍薬 川芎 地黄 黄連 黄芩 黄柏 梔子 連翹 桔梗 牛蒡子 括呂根 薄荷 甘草各一・五(二三・〇)
必須目標 ①るいれき ②腺病体質 ③発育遅い。
確認目標 ①食物に好嫌多い ②気ままな性格。
初級メモ ①薛立斎の原方を森道伯氏(矢数道明氏の師)が改良された処方で、温清飲を起点とする一連の体質改善剤の一つである。
②矢数道明氏清「頸部淋巴腺を治すのが本旨であるが、小児腺病体質に発するルイレキ、肺門淋巴腺腫、扁桃腺肥大等の上焦に於ける炎症充血を清熱、和血、解毒せしめる能がある」と述べておられる。ここに“上焦に於ける”と限ってあるのは、もし下焦なれば竜胆瀉肝湯を暗示しているのである。
中級メモ ①同名異方に銭田流の柴胡清肝散(柴胡 黄芩各四・〇 地黄三・〇 黄連 山梔子 升麻 甘草 川芎各二・〇 当帰 牡丹皮各三・〇(二七・〇)がある、薬味に共通したものが多く混同し易いが、これは口内炎の治療に用いる薬方である。
適応証 肺門淋巴腺炎。扁桃腺肥大。るいれき。アドノイド。上部湿疹。
文献 「漢方一貫堂医学」矢数格(医道の日本社) 柴胡清肝散、竜胆瀉肝湯、防風通聖散など一貫堂家方について詳細に解説されている。
『《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
29.柴胡清肝湯(さいこせいかんとう) 寿世保元,一貫堂
当帰1.5 芍薬1.5 川芎1.5 地黄1.5 連翹1.5 桔梗1.5 牛蒡子1.5 括呂根1.5 薄荷1.5 甘草1.5 黄連1.5 黄芩1.5 黄柏1.5 梔子1.5 柴胡2.0
〈現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
虚弱体質,腺病体質,貧血性など抵抗力の減弱したものに伴う諸症に応用する。
本方は小児の腺病体質や結核にかかりやすい虚弱な体質の改善薬として有名なもので,体質はヤセ型,顔色は青白いか浅黒いものが多い。このような体質者は,カゼ引きやすく常にかぜ気味で,気管支炎,扁桃腺炎,中耳炎などを起こしやすく風門淋巴腺肥大や無力性体質のものなどを対象に,本方を応用する機会が多い。また虚弱な小児の湿疹で分泌物が多く,痒みの著しいものに効果がある。本方適応症と柴胡桂枝干姜湯とは,虚弱な体質とそれに伴う諸症で類似するが,本方には口乾や軟便下痢,胸腹部の動悸がない点で区別すればよい。
〈漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○浅田宗伯の口訣では「この処方は口舌,唇の病,歯,歯齦の炎症によい清熱和剤の剤で,身体上部に最も効のあるものだ。」とう。百々漢陰の口訣では頸部リンパ腺炎で,発熱,頭痛し,なかなか化膿しないものによく,また肝火の頭痛ことに片頭痛に効く,こういう頭痛は上逆強く,歯齦や耳の方へ痛みが連なるものでこの方や梔子清肝湯がよい。
〈漢方処方解説〉 矢数道明先生
小児腺病体質の改善薬として,外科枢要の処方に加味し,森道伯翁が頻用したものである。外科枢要の主治にあるように肝,胆,三焦経の風熱を治すといって,この三経絡の咽喉,頸部,耳前,耳後,耳中を経絡するもので,これらの経絡に生じた風熱,すなわち炎症を治すものである。一般に痩せ型,または筋肉質で,皮膚の色は浅黒く,あるいは青白いのもあるが,汚なくくすんでいるものが多い。腹診上では両腹直筋の緊張があり,肝経に沿って過敏帯を認め,腹診すると,くすぐったいといって笑い,腹診のできないものが多い。
『漢方後世要方解説』 矢数道明著 医道の日本社刊
p.38 瀉火の剤 腺病体質改善、肺門淋巴結核、扁桃肥大症、瘰癧
方名及び主治 | 二四 柴胡清肝湯(サイコセイカントウ) 一貫堂経験方 ○ 鬂疽(ビンソ)及び肝胆三焦、風熱怒火の症、或は項胸痛みを作し、或は瘡毒発熱するを治す。(外科枢要、瘰癧門) 〔原方〕柴胡四 黄芩 人参 川芎 梔子各三 連翹 桔梗各二 甘草一 |
処方及び薬能 | 柴胡二 当帰 芍薬 川芎 地黄 黄連 黄芩 黄柏 梔子 連翹 桔梗 牛蒡 花粉 メンタ 甘草各一・五 黄連解毒湯=三焦の実火を瀉す。 四物湯=血熱を凉まし、血燥を潤す。 桔梗=膿を去り咽喉腫痛を治す。 牛蒡=結を散じ、咽喉を利し、腫瘡の毒を散ず。 天花=膿を排し腫を消す。 メンタ=気を下す。 |
解説及び応用 | ○
此方は主治の如く頸部淋巴腺炎を治すのが本旨であるが、小児腺病体質に発する瘰癧、肺門淋巴腺腫、扁桃腺肥大等上焦に於ける炎症充血を清熱、和血、解毒せしめる能がある。腺病体質は多く父母の遺毒を受け、肝臓欝血して、食物に好嫌あり、神経質にして発育が障碍される。 本方を続服して体質改造を図るときは諸淋巴腺の疾患を治し、結核の予防治療に効がある ○応用 ① 小児腺病体質改造、② 肺門淋巴腺炎、③ 扁桃腺肥大、④ アデノイド、⑤ 瘰癧、⑥ 麻疹後解毒、⑦ 皮膚病。 |
※処方及び薬能の花粉は、天花粉の誤りと思われる。
『和漢薬方意辞典』 中村謙介著 緑書房
柴胡清肝湯(さいこせいかんとう) [一貫堂]
【方意】 上焦の熱証・燥証による上腹部知覚過敏・皮膚浅幸色等と、上焦の熱証による精神症状としての感情不安定・易驚・多怒等のあるもの。
《少陽病.虚実中間証》
【自他覚症状の病態分類】
上焦の熱証・燥証 | 上焦の熱証による精神症状 | |||
主証 | ◎上腹部知覚過敏 | ◎感情不安定 ◎易驚 ◎多怒 | ||
客証 | ○皮膚浅黒色 皮膚枯燥 化膿傾向 ○胸脇苦満 ○心下痞硬 ○口苦 口粘 口燥 口内潰瘍 食欲不振 | 神経過敏 不眠 我儘 筋緊張亢進 ○顔面蒼白 瘦身 |
【脈候】 弦やや弱。
【舌候】 乾湿中間で微白苔。
【腹候】 腹力やや軟。腹直筋の異常筋張があり、時に胸脇苦満や心下痞硬を伴う。
【病位・虚実】 上焦の熱証が中心的病態であり少陽病となる。脈力および腹力より虚実中間である。
【構成生薬】 柴胡2.0 当帰1.5 芍薬1.5 川芎1.5 地黄1.5 連翹1.5 桔梗1.5 牛房子1.5
栝呂根1.5 薄荷1.5 甘草1.5 黄連1.5 黄芩1.5 梔子1.5 黄柏1.5
【方解】 黄連・黄芩・黄柏・梔子は黄連解毒湯であって、心下の熱証と、これより派用する精神症状を主る。柴胡は胸脇の熱証と、これより派生する精神症状に対応し、薄荷の清涼・発散・解毒作用も気の鬱滞に有効である。柴胡・薄荷の組合せは黄連解毒湯と共に上焦の熱証に対応し,解毒作用を増強する。桔梗・連翹・牛房子には排膿・解毒・解熱作用があり、栝呂根の清熱・滋潤・排膿作用もこれに協力する。当帰・芍薬・川芎・地黄の四物湯は血虚・皮膚枯燥を主り、皮膚浅黒色に有効であるが、本方意には血虚はほとんどみられず上焦の熱証が中心をな成ている。甘草は諸薬の作用を調和し補強する。本方は温清飲加味方であり熱証と共に燥証も存在する。
【方意の幅および応用】
A 上焦の熱証・燥証:上腹部知覚過敏・皮膚浅黒色・上焦の化膿傾向を目標にする場合。
急慢性副鼻腔炎、扁桃炎、扁桃周囲炎、咽喉炎、口内炎
【腹候】 腹力やや軟。腹直筋の異常筋張があり、時に胸脇苦満や心下痞硬を伴う。
【病位・虚実】 上焦の熱証が中心的病態であり少陽病となる。脈力および腹力より虚実中間である。
【構成生薬】 柴胡2.0 当帰1.5 芍薬1.5 川芎1.5 地黄1.5 連翹1.5 桔梗1.5 牛房子1.5
栝呂根1.5 薄荷1.5 甘草1.5 黄連1.5 黄芩1.5 梔子1.5 黄柏1.5
【方解】 黄連・黄芩・黄柏・梔子は黄連解毒湯であって、心下の熱証と、これより派用する精神症状を主る。柴胡は胸脇の熱証と、これより派生する精神症状に対応し、薄荷の清涼・発散・解毒作用も気の鬱滞に有効である。柴胡・薄荷の組合せは黄連解毒湯と共に上焦の熱証に対応し,解毒作用を増強する。桔梗・連翹・牛房子には排膿・解毒・解熱作用があり、栝呂根の清熱・滋潤・排膿作用もこれに協力する。当帰・芍薬・川芎・地黄の四物湯は血虚・皮膚枯燥を主り、皮膚浅黒色に有効であるが、本方意には血虚はほとんどみられず上焦の熱証が中心をな成ている。甘草は諸薬の作用を調和し補強する。本方は温清飲加味方であり熱証と共に燥証も存在する。
【方意の幅および応用】
A 上焦の熱証・燥証:上腹部知覚過敏・皮膚浅黒色・上焦の化膿傾向を目標にする場合。
急慢性副鼻腔炎、扁桃炎、扁桃周囲炎、咽喉炎、口内炎
肺門リンパ腺炎、頚部リンパ腺腫
湿疹等の皮膚疾患、胸腺リンパ体質児の体質改善
B 上焦の熱証による精神症状:感情不安定・易驚・多怒を目標にする場合。
癇性、神経質、ノイローゼ、不安神経症、ヒステリー、精神薄弱児
るいそう(主に小児の発育障害)、食物の好き嫌いが激しい
【参考】 * 此の方は頚部淋巴腺炎を治すのが本旨であるが、小児腺病体質に発する瘰癧、肺門淋巴腺腫、扁桃腺肥大等、上焦に於ける炎症充血を清熱・和血・解毒せしめる能がある。腺病体質は多く父母の遺毒を受け、肝臓鬱血して食物に好嫌あり、神経質にして発育が障碍される。本方を続服して体質改善を図るときは、諸淋巴腺の疾患を治し、結核の予防治療に効がある。
『漢方後世要方解説』
*この一貫堂の柴胡清肝湯は、森道伯翁が荊芥連翹湯と共に温清飲を基本として考案したもので、小児の腺病質を改善する。一般に痩せて蒼白く神経質で、両腹直筋が緊張し、肝経にそって過敏でくすぐったがって腹診をさせない者が多い。主に咽喉・頚部・耳部の炎症に用いる。
*『寿世保元』の柴胡清肝散には、肝経の怒火、風熱脾に伝え、唇腫裂し、或いは繭唇(けんしん)(唇が腫痛するもの)の治すとある。これを加減したものが本方である。
【参考】 * 此の方は頚部淋巴腺炎を治すのが本旨であるが、小児腺病体質に発する瘰癧、肺門淋巴腺腫、扁桃腺肥大等、上焦に於ける炎症充血を清熱・和血・解毒せしめる能がある。腺病体質は多く父母の遺毒を受け、肝臓鬱血して食物に好嫌あり、神経質にして発育が障碍される。本方を続服して体質改善を図るときは、諸淋巴腺の疾患を治し、結核の予防治療に効がある。
『漢方後世要方解説』
*この一貫堂の柴胡清肝湯は、森道伯翁が荊芥連翹湯と共に温清飲を基本として考案したもので、小児の腺病質を改善する。一般に痩せて蒼白く神経質で、両腹直筋が緊張し、肝経にそって過敏でくすぐったがって腹診をさせない者が多い。主に咽喉・頚部・耳部の炎症に用いる。
*『寿世保元』の柴胡清肝散には、肝経の怒火、風熱脾に伝え、唇腫裂し、或いは繭唇(けんしん)(唇が腫痛するもの)の治すとある。これを加減したものが本方である。
*肝の異常は癇性に代表される神経症状を現すが、同時に解毒機能の低下、筋腱の過緊張、更に肝経にそった臓器の異常等を引き起こすと考えられている。
*本方は上焦を熱証を治し、竜胆瀉肝湯は下焦の熱証が主となる。
*本方証の子供は成長すると荊芥連翹湯証を呈することが少なくないとされる。
【症例】 虚弱児
2年6ヵ月の男児。生来神経質にて怒りっぽい。寄生虫症を疑って検便等をしたが異常はない。約半年前より、不機嫌、食思不振となった。菓子類等を好むも主食はほとんど摂取しない。
*本方証の子供は成長すると荊芥連翹湯証を呈することが少なくないとされる。
【症例】 虚弱児
2年6ヵ月の男児。生来神経質にて怒りっぽい。寄生虫症を疑って検便等をしたが異常はない。約半年前より、不機嫌、食思不振となった。菓子類等を好むも主食はほとんど摂取しない。
体格は筋肉型、顔色は黄褐色を帯びた黒色の方である。脈は緊。胸脇苦満はわずかで、腹壁の緊張は比較的著明に認められた。而して触診に際しては触れられる事を嫌い拒否する程である。
柴胡清肝散エキス1日1.3gを1週間連用した。はじめは服薬を嫌い家人を困らせたが、4日目頃より次第に服薬するようになり、それに従って機嫌も良くなり、食思も次第に改善されてきた。更に服薬しているうちに神経質も大分改善されてきた。
細川喜代治 『漢方の臨床』 13・2・18 ※牛房子は牛蒡子の誤殖と思われる
副作用
1) 重大な副作用と初期症状
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
2) ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
[理由]
厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。
[処置方法] 原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等 により電解質 バランスの適正化を行う。
2) その他の副作用
消化器:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等
[理由] 本剤には山梔子(サンシシ)・地黄(ジオウ)・川芎(センキュウ)・当帰(トウキ)が含まれているため、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等の消化器症状があらわれるおそれがあるため。
また、本剤によると思われる消化器症状が文献・学会で報告されている
[処置方法] 原則的には投与中止により改善するが、病態に応じて適切な処置を行う。