健康情報: 温胆湯(うんたんとう) の 効能・効果 と 副作用

2015年2月26日木曜日

温胆湯(うんたんとう) の 効能・効果 と 副作用

臨床応用 漢方處方解説 増補改訂版 矢数道明著 創元社刊
7 温胆湯(うんたんとう)-不眠症・心悸亢進症・気鬱・ノイローゼ・・・・・・・・・・・・三四
  竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)(略説75)・清心温胆湯(せんしんうんたんとう)・千金温胆湯(せんきんうんたんとう)-全て不眠症に用いる

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7 温胆湯(うんたんとう)〔三因方〕
  半夏・茯苓・ 各六・〇 陳皮三・〇 竹筎l二・〇 枳実・甘草・乾生姜各一・〇
  (一般に黄連一・〇 酸棗仁(炒)三・〇~五・〇を加える)

応用〕  弛緩性の体質で、胃下垂や胃アトニー症のある虚証の不眠症に用いる。胃症状の好転とともに、不眠症もよくなるものである。
 本方は主として不眠症に用いるが、またそれに随伴して起こる驚悸症・心悸亢進症・気鬱症・胃障害等に応用される。

目標〕 主治に病後虚煩とあるが、やや虚証体質のものか、または病後の疲れがまだとれないというもの、あるいは胃下垂症などに併発している不眠症などを目標とする。
 脈もやや虚状で、腹部緊張が少なく、心下痞を訴え、胃内停水を認めることが多い。

方解〕  原方は二陳湯で、胃内停水を去り、竹筎は胃の熱を解し、かつ鎮静的に作用する。枳実は心下の痞えを去り、不安を鎮める能がある。本方に黄連と酸棗仁を加えると、神経の亢奮をさらに鎮静させることになる。
 酸棗仁が品不足のため一・〇としたこともあるが、それでも相当の効果を認めることができた。

変方〕  類似方の必表的なものとして、次の三つの処方がある。
 (1) 竹筎温胆湯(万病回春)
 傷寒日数過多、其の熱退かず、夢寐寧(やす)からず、心驚恍惚、煩燥痰多く、不眠の者此方之を主(つかさど)る。
    柴胡 五・〇 桔梗・陳皮・半夏・竹筎・茯苓 各三・〇 香附子・人参・黄連・ 各二・〇 枳実・甘草・生姜(乾) 各一・〇
 (2) 千金温胆湯(千金方)
 大病後、虚煩眠るを得ざるを治す。此れ胆寒(ヒ)ゆるが故なり。
    半夏 五・〇 陳皮 三・〇 甘草・竹筎・ 各二・〇 枳実・生姜(乾) 各一・〇
 浅田方函に、「本と茯苓なし、今三因方に従う。或は麦門冬、人参を加う。或は黄連、酸棗仁を加う」とあるによって、黄連と酸棗仁を加える。
 (3) 清心温胆湯(古今医鑑)
 肝を平かにし、鬱を解き、火を清まし、痰を化し、眩暈を除き、諸癇の疾を治す。
    半夏・茯苓・陳皮・白朮 各三・〇 当帰・芍薬・川芎・麦門・遠志・人参・竹筎 各二・〇 黄連・枳実・香附・菖蒲・甘草 各一・〇


主治
 三因方(さんいんぽう)には、「心胆虚怯(キョキョウ)(心と胆が虚弱となって)事ニ触レテ驚キ易ク、或ハ夢寐不祥(不吉の夢をみる) 或ハ異象ニ惑ヒ、遂ニ心驚胆懾(ショウ)(心は驚き、胆は恐れる)シ、気鬱シテ涎ヲ生ジ、涎ト気ト博(ウ)チ、変ジテ諸証ヲ生ジ、或ハ短気悸乏、或ハ復(マ)タ自汗、四肢浮腫、飲食味ナク、心虚煩悶、坐臥安カラザルヲ治ス」とある。
 勿誤方函口訣には、「此方ハ駆痰ノ剤ナリ。古人淡飲ノコトヲ胆寒ト云フ、温胆ハ淡飲ヲ温散スルナリ。此方ハ露枢流水湯ニ根柢シテ、其ノ力一層優トス。後世の竹筎温胆、清心温胆等ノ祖方ナリ」とある。
 また竹筎温胆湯について、方函口訣に「此方ハ竹葉石膏湯ヨリハ稍実シテ、胸隔ニ鬱熱アリ、咳嗽不眠ノ者ニ用ユ。雑病ニテモ婦人体中鬱熱アリテ、ガイソウ甚シキ者ニ効アリ。不眠ノミニ拘ハルベカラズ。又千金温胆、三因温胆ノ二方ニ比スレバ、其ノ力緊ニシテ、温胆柴胡二方ノ合方トモ称スベキモノナリ。且ツ黄芩ヲ伍セズシテ、黄連ヲ伍スルモノ、龔氏(「万病回春」の著者龔廷賢)格別ノ趣意ナルコトヲ深ク味フベシ」とあって、類方三方の別を示している。

鑑別
酸棗仁湯 49 (不眠・疲れて眠れない、虚労性)
竹筎温胆湯 常75 (不眠・咳嗽、胸内鬱熱)
黄連解毒湯 15 (不眠・充血、上衝、不安)
○甘草瀉心湯 119 (不眠・心下痞硬、悪心、下痢)
帰脾湯 28 (不眠・心労、貧血)

治例〕 (一) 不眠症と悪夢
  三〇歳の婦人。一〇年前より頑固な不眠症に苦し日%現在もなお生きた屍のようであると嘆いている。顔色は蒼白で、痩せ衰え、弛緩性体質で胃下垂症といわれていた。二年前より頑固な耳鳴りが加わり、不眠と耳鳴りに攻められて生きた心地がないという。
 この患者の不眠の状態をよくきいてみると、眠りかけたと思うと、たちまち恐ろしい悪夢におそわれる。あらゆる恐ろしい場面が次々と展開し、それこそ地獄図絵のような夢が連続し、驚きと恐れで目がさめると、その恐ろしさで眠れなくなるという。あらゆる種類の睡眠薬、持続睡眠療法、電撃療法も効なく、信仰団体にも入ったが、この六年間、一日といえども安眠できる日がなかった。
 脈腹ともに軟弱で、胃内停水を認め、温胆湯加黄連・酸棗仁を与えたところ、数日後に効果があらわれ、一ヵ月後には耳鳴りも軽くなり、全く別人のようになった。服薬数ヵ月、その間に不眠のこともあ改aたが、大体において一〇年来の悩みから解放され、夫とともに渡米し、大学に通っているという便りが来た。
(著者治験、漢方の臨床 二巻一一号)
 (二) 不眠症と鬱病
 四三歳の男子。二~三年前から胃のぐあいがわるくて気分がすぐれず、不眠に悩むことが多かった。一年前転居してから、よくよく神経質になり、気分が引き立たず、憂鬱となり、不安と不眠に苦しむようになった。あらゆる治療をしたが好転せず、神経科で鬱病といわれた。
 一見するとそれほど痩せてはいないし、顔色も悪くはない。心下部痞え、臍傍の動悸が亢ぶっている。これに温胆湯加黄連・酸棗仁(各一・〇)を与えると、一週間目ごろから心に落ちつきが出て、よく眠れるようになった。前後三ヵ月間服用したが、胃症状もすっかりよくなり、体重も増加して常堂たる恰幅となり、不眠と憂鬱の苦しみから解放された。
(著者治験、和漢薬 一三二号)


 (三) 不眠と健忘症
 五一歳の新派の俳優であるが、二年ほど前から胃のぐあいが悪く、全く空腹感というものがなくなってしまった。それは不眠症をまぎらすため、毎朝睡眠薬を酒で飲むくせがついてからのように思うといっている。最近では頭がぼんやりして、舞台でせりふを忘れるようになった。また妙に気おくれがして、名優と相対して舞台に立つと、上気して口が乾いて、おどおどして動悸がする。いままでこんなことは絶対になかったのに、なんとしても押えることができないという。この調子では舞台も勤まらないといって、すっかり悲観していた。
 痩せ型で顔色は普通、心下部に少し抵抗がある。温胆湯加減を与えると、睡眠薬をのまなくてもよく眠れるようになり、胃の症状も大変よくなり、一ヵ月後には不眠症と健忘症と不安感がすっかりとれたといってよろこばれた。
(著者治験、和漢薬 一三二号)



明解漢方処方 西岡 一夫著 ナニワ社刊 
p.133
 ③温胆湯(うんたんとう) (千金)
 半夏 茯苓各四・〇 陳皮 竹筎各二・〇 枳実 生姜各一・五 甘草一・〇 (一六・〇)

  この方は千金方に”大病の後、虚起眠るを得ざるは、これ胆寒きが故なり”とあるように水飲停滞して胆が寒え(古人は停飲により胆が寒えて精神不安を起すと 考えていた)、それが原因で精神不安を起し、物に驚き易くなり不眠の症を訴える場合に用いられる。つまり本方は、その名の通り寒えた胆を温め水飲を排泄さ せる作用があり、同じ虚煩による不眠症でも古方の酸棗仁湯のような貧血性のものでなく停水を目標とする点に特徴がある。浅田流では両者を合方する意味で、 本方に黄連一・〇 酸棗仁四・〇を加えている。不眠症。精神不安。



『図説 東洋医学 <湯液編Ⅰ 薬方解説> 』 
山田光胤/橋本竹二郎著 
株式会社 学習研究社刊

温胆湯(うんたんとう)

  やや虚  
   中間  
  やや実  
   実   

● 出典 千金方

目標 平素,胃腸が弱く,胃アトニーや胃下垂のある人。また,大病後の衰弱のため胃腸の機能が衰えた人。元気が回復せず,心下部に振水音を,臍傍(さいぼう)に動悸亢進を認める。不安や恐怖を生じ,気分は憂鬱(ゆううつ)で不眠,盗汗があり,食欲はなく,吐きけを伴うこともある。

応用 神経症,不眠症,大病後の衰弱による虚煩。

(その他:胃下垂症,胃アトニー)

説明 茯苓飲(ぶくりょういん)から朮(じゅつ)、人参(にんじん)を去り,半夏,甘草,竹筎を加えたもの。半夏,茯苓,枳実,橘皮には,胃内の停水を去る効がある。また竹筎には鎮静作用があって,睡眠を促す効果がある。
 

温胆湯
半夏(はんげ)5.0g 枳実(きじつ)2.0g 甘草(かんぞう)2.0g 体操2.0g 乾生姜1.0g 橘皮3.0g 竹筎3.0g 茯苓4.0g 


漢方処方応用の実際』 山田光胤著 南山堂刊
14.温胆湯(うんたんとう)(千金方)
   付.加味温胆湯

 半夏5.0,茯苓4.0,竹筎,陳皮各3.0 枳実,甘草,大棗,乾生姜 各2.0

目標〕 平素,胃腸が弱く,胃アトニーや胃下垂のあ識ような人,あるいは 大熱,大病のあとで,胃腸機能が衰えたような人が,元気が回復せず,気が弱くなって些細なことに驚いたり,なんでもないことに胸さわぎして,息がはずんだり 動悸がしたりし,気分は憂うつで,夜はよく眠れない.また たまたま眠れば,つまらない夢ばかりみていて,起きてから熟睡感,睡眠による満足感が少しもなく,自然に汗がでたり,盗汗,ね汗があったり,頭から汗が出やすかったりする.食欲はなく,嘔きけや乾嘔(からえずき)がおこることもあり,腹証としては,心下部の振水音や,臍傍の動悸亢進 などをみとめる.

説明〕 本方中の 半夏,茯苓,枳実,陳皮は,そ公単れ痰飲 すなわち 胃内その他に停滞した水分を去る効がある.この点からみても和田東郭の説は たしかに1つの見識である(後述).
 本方は 茯苓飲の朮、人参を去って,代りに半夏,甘草,竹筎を加えたものとみることができる.朮がなくて甘草があ識のは,茯苓飲より胃内停水の程度が軽く,半夏があるのは,胸隔中に水飲のあることを暗示している.
 また 竹筎には,鎮静作用があって,睡眠を促す効果がある.

付.加味温胆湯(かみうんたんとう)

 温胆湯に遠志,玄参,人参,地黄,酸棗仁各 2.0 を加える。
 本方は,不眠を治す効果がとくにすぐれている.またこれに,更に黄連 2.0 を加えてよいことがある.
 衆方規矩につぎのような例がのっている.ある人が,主君と口論したため閉門になって,1年以上も家に閉じこもっていたところ,熱感があって苦しく,腹が張って嘔吐し,夜は眠れないというようになった.他の医者は,みな陰虚火動だといって治療したが治らなかった.自分は,気うつにより痰飲を生じた(気がうっ滞したので水分も停滞した)からであると思って,加味温胆湯に黄連を加えて用いたら,病状がよくなった。

参考〕 三因方の主治には,“心胆虚怯(きよきよう)し,事に触れて驚き易し”となっている.和田東郭は,これを「事に触れて驚きやすきは即ち短気(呼吸促迫)の同類にて,心胸畜飲(水飲-水毒)のせいなり.その畜飲を除き去るときは,右の症また必ず癒ゆ.これを以て心胆虚怯と心得るは大なる僻ごととしるべし」と蕉窓方意解で述べている.
 しかし 実際には,平素胃腸が虚弱で胃内停水のある人でも,大病のため衰弱をきたしたような人でも,同じように神経過敏となりやすいものである.したがって 三因方の条文も,東郭の説も,何れも是であり且つ非であるといってよかろう.

応用〕 神経症,不眠症,胃下垂症,胃アトニー症,大病後の衰弱による虚煩 など.
  
鑑別〕 別項にあり.
 
症例〕 昭和37年頃,1人の青年がたずねて来ました.その人は,5,6年前から夜眠れず,各所の大病院にかかって薬をもらいましたが,どんな薬も初め2,3日は効くのですが,その後は絶対に効果がなくなるのだそうであります。それで,いろいろな薬を自分で買い求めてのみました.しかし それらの薬も,同じ量ではだんだん効かなくなり,量を次第に増して,しまいには手足がしびれるほどなのに,睡眠の方はすこしもとれなかったそうです.そのため 夜になるのがつらく,夜中の町を1人でうろうろ歩きまわったり,寝床の上に坐ったりして,ひと晩中すごすことがたびたびであったそうであります.
 この患者に この処方を投与しましたところ,はじめは夜眠れなくても,薬をのんでいると気分が落ちつき,寝床に横になっていられるので,翌日それほどつらくないといっていましたが,次第によく眠れるようになりました(漢方で治る病気の話 第2集 より).
 この症例は,帰脾湯の例としてあげたものである.ところが この患者には,はじめ 加味温胆湯 を投与したのである.すると,この処方をのんだ晩から,全身の苦しさが軽くなって,気分が楽になったと患者は報告した.わたしは,そのまま 加味温胆湯 を続けようかと思ったが,1週間目に診察したさい,発病時の様子をよくたずねてみたところ,精神的な問題があって,いろいろと思いなやんでから眠れなくなったということであった.そこで帰脾湯に変えてみたら,これでもやはり効果があって,前記のような結果を得たのである.
 患者は,痩せて顔色の悪い,腹部で心下部に振水音をみとめるような人であった.

p.350
3.温胆湯(うんたんとう)
 1) 帰脾湯(きひとう) 内容,目標,効果の上で温胆湯とよく似ている.ただ,この方は “思慮多くして脾をやぶる” もので,精神過多が原因で不眠となり,神経衰弱症状を呈して不安やとりこし苦労が多いものである.
 温胆湯は “虚煩して眠るをえず” とあって,身心の衰弱により,身体が苦しくて眠れないもの,あるいは 神経過敏のため眠れない場合である.
 和田東郭は,蕉窓方意解で,気うつだけのものには帰脾湯でよいが,水飲を兼ねるものは温胆湯であるといっている.また 纂方規範には,気うつがあれば気滞がおこり,また 気が うっ滞すればその結果水飲が生ずる故,帰脾湯だけの場合はむしろ少ない といっている.

 2) 酸棗仁湯(さんそうにんとう) 体力が衰えて,心身が疲れやすく,疲れると反って眠れず眠ろうとすればするほど眠れないようなものである.また 反対に,嗜眠の傾向があって眠りすぎるものにもよい.
 ただ,わたしはこの処方で余り効いたことがない.纂方規範にも,金匱の酸棗仁湯の証は少ないと書いてある.

 3) 朱砂安神丸(しゅしゃあんしんがん) 不眠によく用いられ,手軽に兼用出来るものである.
 考えごとが多く,不安,恐怖,強迫観念 などがあり,驚きやすく,すぐ動悸して眠れないもので,温胆湯証ともよく似ているが,必ずしも衰弱者や虚弱者でなくてもよい.


『伝統医学 Vol.3 No.2(2000.6)』
方剤と生薬の入門購座 8
去痰法と二陳湯・温胆湯・半夏白朮天麻湯 
平馬 直樹 平馬医院

 熱痰証には,清気化痰湯(せいきけたんとう)などが基本方剤ですが,ここではよりなじみ深い温胆湯を取り上げましょう。温胆湯は,『三因極一病症方論』を出典とする方剤で, 理気化痰・清胆和胃の効能があり,その組成は,半 夏・陳皮・茯苓・竹筎・枳実・炙甘草・大棗(たいそう)・生姜か らなります。すなわち二陳湯の発展方剤といえます。 温胆湯の主治証は,胆胃不和・痰熱内擾 (ないじょう)証で,熱痰 が少陽三焦経に阻滞して,清陽の上昇を阻み,熱痰が 上擾して虚煩・不眠・動悸・眩暈などを生じます。少陽胆経に熱がこもり,口苦く,涎を吐し,驚きやすく心神不安となります。胆熱が胃を犯し,食欲不振・悪心が生じます。
 ふつう熱痰証には,貝母・栝楼・胆南星などの薬性が寒涼な清化熱痰薬を用いますが,温胆湯は化痰の基本方剤である二陳湯に竹筎・枳実を加えたものです。二陳湯の強力な化痰の力を借りて,清熱化痰・止嘔除煩の竹筎と行気消痰の枳実を加えて鬱熱を清解しようとする方意です。清熱を強力に行うよりも,少陽経を疏通させて,鬱熱を取り除こうとするものです。熱状が盛んであれば黄連(おうれん)などの清熱薬を加えれば清熱の力が強まります(黄連温胆湯(おうれんうんたんとう) )。
 また胆を温めるという方剤名も,熱痰証に用いるようには思いにくいですね。胆は六腑の1つで「中正之官」と呼ばれ,決断力を司るとされます。決断力と勇気が衰えビクビクしたり,ちょっとしたことにおびえたり驚きやすい状態を胆怯(たんきょう)証といいます。胆怯は,俗にいう「胆(きも)が冷えた」状態なので,不安感や驚きやすいのを治す温胆湯は,きもを温めるという意味で,このように命名されたのでしょう。胆熱を除去することによって胆怯を改善するもので,温熱の作用があるわけではありません。熱に偏った精神不穏に用 いるものです。
  

※酸素仁湯? → 酸棗仁


『衆方規矩解説(49)』
日本漢方医学研究所常務理事 杵渕 彰

不寝門・怔忡門


  本日は、不寝門、怔忡門についてお話しいたします。
 まず不寝門ですが、これは不眠についての処方の解説です。このテキストでは三つの薬方が出されており、その加減方が加えられております。不眠という症状は、漢方医学的にどのように説明されていたのかといいますと、中国隋時代の巣元方という人の『病源候論』に「衛気が夜になっても陽の部分ばかりまわって陰の部分に入らないためである」と書かれております。このような言い方ではわかりにくいのですが、気持が落着かず、頭が冴えているような状態という程度のことでしょうか。現代生理学で、覚醒時と睡眠時の血行動態の違いがわかっておりますが、このような点と共通するところもあり、興味深いものと思われます。
 また、漢方的な不眠の原因としては、五行でいう心熱と胆冷があげられております。五行でいう心とは木・火・土・金・水の火な配当配当究標、笑いとか高揚性を意味し、胆は肝、木に配当され、怒りとか攻撃性、決断力を意味します。胆の冷えとか、胆の虚は、不安感や脅えのような意味になります。ここで出ている温胆湯(ウンタントウ)は、名前の通り冷えている胆を温める薬ということです。心熱は気分の高揚した興奮状態です。胆冷は胆虚と表現されることもありますが、不安、焦燥感の状態と考えられます。
 加藤謙斎という江戸時代の医師に『衆方規矩方解』という、このテキストの『衆方規矩』についての解説や、先人の口訣などを集めた本がありますが、それによると不眠は「これが驚悸、怔忡のもとぞ。これらの類いの惣まくりは帰脾湯(キヒトウ)に安神丸(アンシンガン)を兼用すべし」とあります。このまま受け取るわけにはゆきませんが、不眠という症状が重視されていたことがうかがわれます。
 このテキストに記載されている薬方は、胆虚の時、病気のあとなどで、虚証になっていて不安、焦燥感が強く、不眠の時に使われるものです。ここには述べられておりませんが、心熱の不眠に使われる薬方は三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)とか、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)のような黄連(オウレン)剤が主であります。

■温胆湯
 最初は温胆湯(うんたんとう)です。テキストを読みますと「心虚胆怯れ、事に触れて驚き易く、夜不祥の異像を夢みて心驚くことを致し、気鬱して痰涎を生じ、或いは短気、悸乏、自汗、飲食味なく、或いは傷寒一切の病後虚煩して眠臥することを得ざるを治す」とあります。
 薬味は「守(半夏(ハンゲ))、陳(陳皮(チンピ))、苓(茯苓(ブクリョウ)、実(枳実(キジツ))各二匁、茹(竹筎(チクジョ))一匁、甘(甘草(カンゾウ)五分。右、姜(生姜(ショウキョウ))、棗(大棗(タイソウ))を入れて煎じ服す」と八味からなっております。後世方の場合、生姜と大棗は数えずに、これを六味温胆湯(ロクミウンタントウ)ということもあります。
 この薬方は中国の南宋、十二世紀後半に陳言が著わした『三因極一病証方論』という本で、通称『三因方』の虚煩門に収載されている薬方です。同名異方が『肝胆経』虚実寒熱の証治のところに、虚労で起きるめまいや、歩行困難に使う薬方として出ております。このテキストにあるものと同じ温胆湯の方は、原典では「大病ののち虚煩眠るを得ざるを治す。胆寒ゆるが故なり。この薬これを主る。また驚悸を治功」となっております。この温胆湯は現在でも使われている薬方ですが、あとに出てくる加減方や加味温胆湯(カミウンタントウ)とともに使用目標が共通しているところも多いので、あとで一括してお話しいたします。
  テキストで次にある「一方」というのは、「胆の虚、痰熱し、驚悸して眠らざるを治す。前の方に、茯苓を去りて生姜を加う」とあります。これは唐の時代の孫思邈の『千金要方』に記載されているものです。書かれた時代としては、前の『三因方』よりもさらに前になりますが、茯苓の入っている三因方温胆湯の方が多く使われてきておりますので、このテキストではこちらの『千金要方』の温胆湯をあとにしているのだと思います。
 テキストではもう一つ「一方」として「痰火ありて驚惕し、眠らざるを治す。驚悸の症痰火に属して気虚を兼ねる者、宜しく痰火を清しうして以て虚を補うべし」とあり、薬味は「参(人参(ニンジン)、伽(白朮(ビャクジュツ))、神(茯神(ブクシン))、沂(当帰(トウキ))、[生也](生地黄(ショウジオウ))、酸(酸棗仁(サンソウニン))炒る、門(麦門冬(バクモンドウ)、守(半夏)、実(枳実)、連(黄連)、茹(竹筎(チクジョ))、丹(山梔子)各等分、辰(辰砂(シンシャ)五分別、甘(甘草)二分。右生姜一片、大棗一ヶ、梅(烏梅(ウバイ))一ヶ、瀝(竹瀝(チクレキ))を入れて煎じ、辰砂の末を調えて服す」というものが記載されております。これは『万病回春』の驚悸門の温胆湯で、このテキストにある条文の前半が記載されております。この方も現在しばしば使われておりますが、辰砂、烏梅、竹瀝を去り、生地黄の代わりに乾地黄(カンジオウ)を使用しております。

■加味温胆湯
 次に加味温胆湯(カミウンタントウ)として「病後虚煩して睡臥することを得ず。及び心胆虚怯し、事に触れて驚き易く、短気悸乏するを治す。守(半夏(ハンゲ)三匁半、陳(陳皮(チンピ)二匁二分、茹(竹筎(チクジョ))、実(枳実(キジツ))各一匁半、苓(茯苓(ブクリョウ))、甘(甘草(カンゾウ))各一匁一分、遠(遠志(オンジ))[玄彡](玄参(ゲンジン)、参(人参(ニンジン))、芐(地黄(ジオウ)、酸(酸棗仁(サンソウニン))炒る、各一匁。右姜(生姜(ショウキョウ))、棗(大棗(タイソウ))を入れて煎じ服す」と述べられております。
 これは『万病回春』の虚煩門の加味温胆湯と条文が一致しており、薬味も玄参と五味子が入れ替わっているだけで一致しております。ただし、このテキストでは生薬名が略字となっておりまして、玄参[玄彡]と五味子(玄)とは間違いやすい字になっておりますので、『万病回春』の加味温胆湯とまったく同じものと考えてもよいかもしれません。

 以上、四つの薬方をあげて「按ずるに病後に虚煩して眠らざる者に前の方を選んで数奇を得る」と書かれております。
 以上の薬方は『三因方』『千金方』『万病回春』の温胆湯と、やはり『万病回春』の加味温胆湯の四薬方です。これらの薬方の中で、三方以上に共通している生薬は半夏、陳皮、茯苓、枳実、竹茹、甘草、生姜、大棗の八味と多く、一つの薬方群といえましょう。この一群の薬方のもととなっているのは「虚煩眠るを得ざるを主る方」という小品流水湯(ショウヒンリュウスイトウ)であるといわれております。これは半夏、粳米(コウベイ)、茯苓の三味からなるもので、さらにこれは『黄帝内経霊枢』の半夏湯(ハンゲトウ)から出たものといわれております。また別の見方をいたしますと、これは二陳湯(ニチントウ)が原方と考えることもできましょう。また頻用処方である竹茹温胆湯(チクジョウンタントウ)もここには出てきておりませんが、このグループに入れられる薬方であります。
 これらの薬方の使い方ですが、先ほどお話ししたように、虚証で神経過敏になっている不眠に用いられておりますが、テキストにあるように、病後とか、家族の看病疲れとか、過労などで虚証となった人や元来胃腸の虚弱な人の入眠障害、就眠障害に効果があり、しばしば動悸を伴い、息切れや寝汗を伴うこともあります。顔色は悪く、腹証を見ても胃内停水があり、臍傍の悸が触れることが多いようです。
 不眠以外にも神経症領域に使われておりますが、香月牛山は『回春』の温胆湯を加減温胆湯(カゲンウンタントウ)と呼んで「この方は痰を治するのみならず、狂癲癇を治するの妙剤なり」と述べております。また、浅井貞庵は、『三因方』の温胆湯について「その容態にては上逆、めまい少しも動かせず、立つこともできん」ような状態に用いると書いております。これら四薬方の中で、現在も多く使われておりますのは『三因方』と『回春』の温胆湯です。この二つの鑑別はなかなか困難でありますが、『三因方』の温胆湯に比べれば『回春』の温胆湯の方が黄連(オウレン)、山梔子(サンシシ)が入っている分やや煩燥の度合いが強く、不眠を苦痛に感じ、じっと横になっていられない人の方が多いようです。
 目黒道琢の『餐英館療治雑話』に「温胆湯の訣」という記事がありますが、その中で「不眠には帰脾湯(キヒトウ)、温胆湯、抑肝散(ヨクカンサン)のそれぞれの場合があるのでよく鑑別しなければならない」と述べております。このうち温胆湯のゆくものは「痰の気味があり、そのため息切れや驚悸、怔忡などの症状があれば温胆湯の効かないはずはない」と言い切っております。しかし、「急に効果を見ることはむずかしいので、転方せずに治療すべきだ」といっております。
 不眠は、現代医学的には、原因別に環境性、身体性、精神病性、脳器質疾患性、神経症性、神経質性、老人性、薬物禁断性、本態性というように分類されていますが、温胆湯類はこの分類の中の神経質性、神経症性の不眠と、精神病性の不眠の一部に効果があると思います。また、このような神経質性不眠の方は不眠を主訴として受診される方が多いので、このテキストでは温胆湯類のみをとり上げているのでしょう。
 そのほかに不眠に用いられる薬方は、先にお話しした心熱の場合のような興奮のために眠れないものには黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)などの黄連剤、この興奮とは違ったイライラ感での不眠には抑肝散など、抑うつ気分に伴うものは大柴胡湯(ダイサイコトウ)柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)帰脾湯などがしばしば使われます。心下痞硬を伴う時は甘草瀉心湯(カンゾウシャシントウ)がよく効きます。また『金匱要略』の酸棗仁湯(サンソウニントウ)は有名であり、とても素晴らしい効果を見ることがありますが、対象となる患者は温胆湯のものと近く、ターゲットはより狭いものと私は考えております。したがって温胆湯の方が使いよいように思っております。
 しかし、浅田宗伯は酸棗仁湯と温胆湯との鑑別について次のように述べております。すなわち「もし心下肝胆の部分にあたりて停飲あり、これが為に動悸して眠りを得ざるは温胆湯の症なり。もし胃中虚し、客気膈を動かして眠るを得ざる者は甘草瀉心湯の症なり。もし血気、虚燥、心火亢ぶりて眠りを得ざるものは酸棗仁湯の主なり」といいますが、実際には温胆湯と酸棗仁湯との鑑別はむずかしいように思います。
 また、『三因方』の温胆湯の加味方では、このテキストの不寐門の最後に「妊娠、心驚き、煩悶して眠らず。温胆湯に人参、麦門冬、柴胡を加えて安し」とあります。妊娠中は精神安定剤や睡眠誘導剤は催奇形性の問題があって使いにくいものですから、この加味方を試みる機会もあるかと思います。ここに出ておりませんが、浅田宗伯の『方函口訣』には加味方として麦門冬、人参の加味と、黄連、酸棗仁の加味の方法が出ております。黄連、酸棗仁の加味方ですと『回春』の温胆湯に近づきます。この加味方がよく使われておりまして、大塚敬節先生や矢数道明先生などの治験報告もこの加味方が多いようです。
 また、亀井南冥は石膏を加えて釣藤散(チョウトウサン)に近い使い方をしていたようですが、石膏を加えると『回春』にある高枕無憂散(コウチンムユウサン)に近い方意になるのではないかと思います。
 『三因方』の温胆湯と加味温胆湯の治験報告はたくさんありますが、このテキストに症例が一つ出ておりますので読んでみます。「一人主君と口論を為して戸を閉じること一年余り、心熱煩満し、痰火心を攻め、腹張り、嘔逆し、夜寝ること能わず。他医皆言う。陰虚火動なりと。而れども治応ぜず。予謂えらく、気欝、痰を生じて然りと、加味温胆湯に黄連を加えて安し」というものです。この症例は、気欝から水毒を生じて不眠となったというものに、煩満があるので黄連を加えたものと思われます。
 温胆湯の治験報告に不眠というのが多いのは当然ですが、大塚敬節先生の治験に少し変わったものがありますのでご紹介いたします。「四八歳の婦人で、半年前に腹石の手術を行ない、その後ひどく冷えるようになり、頻尿のため不眠となった。また三叉神経痛があり、以前から眼瞼の痙攣も伴う」という症状で、便秘がちの人です。この患者に温胆湯加酸棗仁、蘇葉、大黄を二週間投与したところ、不眠も神経痛もなくなったというものです。
 腹証などの所見が記載されていないのが残念ですが、興味深い症例と思います。なお、ここでの温胆湯は『三因方』の温胆湯であろうと思います。


『薬局製剤 漢方212方の使い方』 第4版
埴岡 博・滝野 行亮 共著
薬業時報社 刊


K8. 温胆湯(うんたんとう)

出典
 唐時代(618~907)の千金方巻12に出ている温胆湯には茯苓が入っていない。茯苓の組みこまれた温胆湯は次の宋時代(960~1279)の三因方に出てくる。

構成
 温胆湯の処方構成は,半夏,陳皮,生姜,茯苓,甘草が水毒を駆逐する基本処方の二陳湯で,それに清胃・順気の竹茹と,破気の枳実を加えたとみられる。

目標
 千金方は『大病のあとのノイローゼや不眠は胆寒のために起るものであるから温胆湯で温めればよい」といっている。胆寒は淡飲(水毒)のために起るので,水毒を温散させればよいというのである。
 水滞が起るに従って気滞も起るのが当然で,気水の症状である心悸亢進,気うつ,驚悸などが現われてくる。
 本方は,その原因である水滞を処理すると同時に現象である気滞を強力な破気剤で除去しようとする方意で,とくにこの順気・破気を目的とする竹茹と枳実の薬能に注目しなければならない。
 竹茹はハチクの幹茎の外皮を去った後の皮で,中空に面した方の白い部分は用いない。気味は甘微寒というが,なめてみるとやや苦い程度で,そんなに強い薬効があるようにみえないが生理活性を調べると興味ある反応を示すそうで今後が期待できる。同植物の同じ部分を炙って採取した竹瀝は脳卒中などの後遺症である中風の口噤反張を順気して緩める作用があり竹茹もそれほどではないが順気・鎮静の効があると考えられる。
 枳実も破気の要薬で,結実を破るとか,破堅とかのことばで薬能が現わされているが,気滞を解除するに他ならない。
 ミカン属に共通して存在する成分としてシネフリンが最近注目されているが,青皮が最も強力で枳実がそれに次いでいる。この成分の生理活性破堅とか破気とかの薬能とどう結びつくかはまだ不明ではあるが,竹茹,枳実の二味の増加によって二陳湯には考えられない不眠や興奮の鎮静などの効能が出てきていることは注目に値する。
 いうまでもぬ二陳湯は胃弱の人に適した処方だから温胆湯も胃腸虚弱者に安心して使用できる。

応用
(1) 不眠症,虚弱な人の不眠,病後の不眠。
(2) 心悸亢進症,気うつ症,胃障健。

留意点
◎竹茹と枳実が主成分なのでとくに撰品に注意する。竹茹は往々にして竹細工の副産物である竹屑が入荷する。これは異物の混入がはげしいので避けねばならない。中国産の整然とした美しい品ほどでなくとも,特別に薬用に調製されたものを撰ぶべきだ。
◎枳実はミカン属の未熟摘果品(まびき)が薬用に調整されるから,往々にして落果(みおち)が混入される。また乾燥中に腐敗したものもある。これらは異臭異味があるため避ける。芳香のあるものを撰びたい。
◎興奮のはげしい場合,黄連,酸棗仁を加味することが多い。別包で投与するか,あるいは竹茹温胆湯(K132)をえらぶ。

文献
1.千金要方(台湾・國立中國医薬研究所版)P.217
2.大塚敬節ら・漢方診療医典(昭44)p.217
3.浅田宗伯・勿誤薬室方函口訣(明11)上巻72丁オ
4.下津寿泉・校正衆方規矩(寛保2)下巻4丁ウ
5.三川潮・生薬の分解酵素阻害作用・ファルマシアVol.17,No.5 (1981)


K2胃風湯
〔成分・分量〕
 半夏    4.0
 生姜(干)  1.0
 陳皮    2.0
 枳実    1.5
 茯苓    4.0
 竹茹    2.0
 甘草     1.0  
  以上7味 15.5

〔効・効果〕
胃腸衰弱者の不眠・神経症

〔ひとこと〕
●病後の不眠には麦門冬・人参の加味がよいと浅田門では言っている。これは生脉散(弁惑論-人参・麦門冬・五味子)を合方したことになる。別包ですすめる。


『改訂 一般用漢方処方の手引き』 
監修 財団法人 日本公定書協会
編集 日本漢方生薬製剤協会

温胆湯
(うんたんとう)

成分・分量
 半夏4~6,茯苓4~6,生姜1~2(ヒネショウガを使用する場合3),陳皮2~3,竹茹2~3,
 枳実1~2,甘草1~2,黄連1,酸棗仁1~3,大棗2(黄連以降のない場合も可) 

用法・用量
 湯

効能・効果
 体力中等度以下で,胃腸が虚弱なものの次の諸症:不眠症,神経症

原典 備急千金要方

出典 三因極一病証方論

解説
 本方は茯苓飲(茯苓,朮,人参,生姜,橘皮,枳実)の朮,人参を去って代わりに半夏,甘草,竹茹を加えたものと見ることができる。
 朮がなくて甘草があるのは,茯苓飲より胃内停水の程度が軽く,半夏があるのは胸隔中に水飲があることを暗示。古人は水飲停滞して胆が寒え,精神不安を起こすと考えていた。
 虚煩による不眠症でも酸棗仁湯のような貧血性のものではなく停水を目標とする。また二陳湯の変方とも考えられる。


生薬名
参考文献名
半夏 茯苓 生姜 乾生姜 陳皮 竹茹 枳実 甘草 黄連 酸棗仁 大棗 乾姜 枳殻
処方分量集 6 6 - 1 2.5 2 1 1 1 1~2 - - -
診療の実際 6 6 3 - 2.5 2 1.5 1 - - 1 - -
診療医典    注1 6 6 3 - 2.5 2 1.5 1 - - - - -
症候別治療  注2 4 4 3 - 2 2 1.5 1 - - - - -
処方解説    注3 6 6 - 1 3 2 1 1 1 1~3 - - -
後世要方解説 - - - - - - - - - - - - -
漢方百話    注4 6 6 - 1 3 2 - 1 1 1 - - 1
応用の実際  注5 5 4 - 2 3 3 2 2 - - 2 - -
明解処方    注6 4 4 1.5 - 2 2 1.5 1 - - - - -
漢方大医典  注7 6 6 3 - 2.5 2 1.5 1 1 3 - - -
近代漢方薬  注8 6 6 - 1 3 2 1 1 1 1~3 - - -
診療三十年  注9 6 6 3 - 2.5 2 1.5 1 - - - - -
臨床医の漢方 注10 6 6 - - 2.5 2 1.5 1 - - - - -

注1 弛緩性体質で胃下垂やアトニー症のあるものの不眠症・驚悸症,心悸亢進症,気鬱症。
注2 大病後疲れて眠れないもの,驚悸症,気鬱。
注3 弛緩性体質で胃下垂症や胃アトニー症のある虚証の不眠症,驚悸症,心悸亢進症,気鬱症。
注4 胃障害による不眠症。
注5 胃腸虚弱,胃アトニー,胃下垂,大熱・大病後の胃腸の機能の衰えた人の元気回復,驚悸症,胸さわぎ,動悸,憂鬱,不眠症,食欲不振,嘔き気,乾嘔。
注6 虚煩による不眠症,精神不安。
注7 病後,胃の機能が衰え,みぞおちで振水音を認めるものの不眠症。
注8 胃の虚弱者の不眠症,心悸亢進症,驚悸症,気鬱症。
注9 胃障害のあるものの不眠症。
注10 不眠症,気鬱。

参考:処方解説では,三因方を出典とし,9生薬からなる薬方を温胆湯としている。処方分量集,漢方百話,漢方大医典では温胆湯加味方として取り扱っている。また,明解漢方処方は,出典を千金方とし黄連,酸棗仁,大棗を削除している。


『一般用漢方製剤の添付文書等に記載する使用上の注意』

【添付文書等に記載すべき事項】

 してはいけないこと 
  (守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)

 次の人は服用しないこと
  生後3ヵ月未満の乳児。
   〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

 相談すること 
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。

(4)高齢者。
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
   含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(6)次の症状のある人。
  むくみ
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
  高血圧、心臓病、腎臓病
    〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ


まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称 症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕

3.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕

(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
   〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕

(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕

  1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
  〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕

  2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
  〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕

  3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
  〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕


保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
  〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
  〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
 

【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
  生後3ヵ月未満の乳児。
  〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
 (1)医師の治療を受けている人。
 (2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
 (3)胃腸の弱い人。
 (4)高齢者。
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
 (5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
 (6)次の症状のある人。
  むくみ
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
 (7)次の診断を受けた人。
   高血圧、心臓病、腎臓病
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
  〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
  〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕