健康情報: 胃風湯(いふうとう) の 効能・効果 と 副作用

2015年2月12日木曜日

胃風湯(いふうとう) の 効能・効果 と 副作用

臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
p.15 慢性大腸炎・慢性直腸炎・慢性下痢・潰瘍性大腸炎
4 胃風湯(いふうとう) 〔和剤局方〕 当帰・芍薬・川芎・人参・白朮・ 各三・〇 茯苓四・〇 桂枝・粟 各二・〇

応用〕 慢性に経過し、衰弱の状を呈した虚証の下痢で、小腸ばかりでなく、かえって大腸や直腸部に慢性の炎症があるときに用いる。
 本方は主として慢性大腸炎・慢性直張腸炎・潰瘍性大腸炎・冬期脱肛・冬期下血・半夏瀉心湯や真武湯の応ぜぬ慢性下痢症等に応用される。
 
目標〕  日常胃腸の虚弱な人で、寒冷などによって下痢を起こしやすく、慢性に経過して、体力も衰弱に傾き、炎症は大体盛りを過ぎた残存性のもので、小腸ばかりでなく大腸や直腸に及んでいるものを目標とする。
 便は軟便・不消化便・あるいは水様便のことも、あるいはわずかに粘液や血液を混ずることもあってよい。回数は二~三回で、それほど多くはない。脈は浮弦弱で、腹も虚して軟かい。

方解〕  処方の構成をみると、四君子湯より甘草を去り、四物湯より地黄を去ってこれを合わせ、さらに桂枝と粟を加えたものである。
 茯苓・白朮・人参は四君子湯の意で、胃腸の水毒を去り、その機能を強化する。当帰・芍薬・川芎は四物湯の意で出血を止め、貧血を補い、肝機能を強める力がある。桂枝は諸薬を導き、粟は腸管の弛緩したのをひきしめる。

主治
 和剤局方(瀉利門)に、「大人小児、風冷、虚ニ乗ジテ入ツテ腸胃ニ客シ、水穀化セズ、泄瀉注下、腹脇虚満シ、腸鳴リ㽲痛(コウツウ)シ、及ビ腸胃ノ湿毒下ルコト豆汁ノ如ク、或ハ瘀血ヲ下スコト日夜度無キヲ治ス。並ニ宜シク之ヲ服スベシ」とあり、
 勿誤方函口訣には、「此方ハ水穀化セズシテ、稀汁ト血液ト漏下シテ止マズ、顔色青惨荏苒(ジンゼン)(慢性化し)歳月ヲ延バス者ヲ治ス。蓋シ甘草瀉心湯、断痢湯ノ如キハ上焦ニ属シ、此方ハ下焦ノ方ニ属スルナリ」とある。
 また叢桂家方口解(そうけいかほうこうかい)には、「冷瀉ニヨシ。冷湿腸ニ入テ瀉スルニ用フ。腹鳴ニハ木香ヲ加フ。虚人臍下冷痛スルニ木香を加ヘヨキコトアリ。産後ノ瀉ニモヨシ、小児弱ク大便不調ニ用ユルコトアリ。八物湯ニ熟地、甘草ヲ去リタル方ナリ、其ノ意ニテ治ヲ施スベシ」とあり、 牛山方考(ぎゅうざんほうこう)には、「コノ方古今ノ伝ニ膿血ヲ下ス症、或ハ瘀血ヲ下スニ妙剤ナリ。冬月ノ脱肛下血ニ木香・炮姜(乾姜を炮る)ヲ加エテ奇効アリ。冬村厳寒ノ時必ズ腹絞痛シ、排スルコト一両行、或ハ結シ或ハ瀉スル者、和俗ニ霜腹気(シモラハケ)(霜が降ると腹痛下痢を訴える)トイフ。木香、炮姜、砂仁、良姜ヲ加エテ奇効アリ。腸癰ノ類、膿血ヲ下スモノ、連翹、金銀花、酒芩(黄芩ヲ酒ニ浸ス)ヲ加エテ其効神ノ如シ」とある。

鑑別
 ○半夏瀉心湯 119 (下痢・心下痞硬、嘔吐)
 ○断痢湯 常74 (下痢・心下水飲あり、陰位) 
 ○真武湯 75 (下痢・水様便、心下悸、腹痛、小便不利)
 ○桃花湯 103 (下痢・膿血下痢、虚弱さらに甚だしきもの)
 ○桂枝人参湯 35 (下痢・表に熱あり、心下痞)
 ○人参湯(理中湯) 111 (下痢・心下痞、胃症状強し)
 ○参苓白朮散 76 (下痢・胃腸虚弱、食不振、醗酵)

参考
 細野史郎氏が「漢方の臨床」三巻二号に、「胃風湯について」と題して本方の応用について詳説してから、諸家が慢性下痢症に本方を用いるようになった。

治例
 (一) 慢性胃腸炎
 七三歳の老婦人。五年ほど前から下痢しやすくなり、一日二~三回あり、ひどいときは七~八回から十数回にも及ぶ。栄養は甚だしく衰え、顔色蒼白で皮膚に全く艶がない。舌は白苔湿潤し、脈は浮にして弦、弱くて遅い。腹部軟弱、心下部にわずかに抵抗を触れ、全く食味がない。生姜瀉心湯に茯苓、白朮を加えて与えたが好転せず、餅を食べると気持がよいので、これを過食し、そのため悪化した。夕方便意をしきりに催し、下腹部に名伏しがたい底苦しさを訴え、粘液便と軽い裏急後重をともなう。左下腹部S字状結腸にあたって索状物があり、圧痛を訴える。白頭翁加甘草阿膠湯、あるいは真武湯を用いたいと思ったが、胃風湯に木香を加えて与えた。一週間の服用によって、すばらしい著効を現わし、見違えるほど元気となり、顔色は生気に満ち、数週間の続服により数年来の頑固な下痢がすっかり治った。
(細野史郎氏、漢方の臨床 三巻二号)


 (二) 慢性腸炎
 二〇歳の婦人。三年前食餌中毒を病んでから、下痢しやすくなり、いろいろの治療もうけたがよくならなかった。痩せて元気がなく、顔色はそれほど悪くはない。胃下垂もあり、食事をすると軽い腹痛が起こって下痢をする。腰が張って痛んだりする。足も冷える。脈は細くて軟弱の方であった。舌苔はなく、腹は虚軟であるが、左の臍傍やS字状部に抵抗圧痛がある。
 胃風湯を与えると、身体が温まり、食欲が出て、食べても下痢せず、体重も増加して前後六ヵ月間服用し、体重が四キロほど増加、すっかり元気になって結婚した。

 (著者治験)
 (三) 直腸潰瘍
 六二歳の婦人。二年前より下痢し、種々手当をうけたが効がない。下痢するときは、しぼるような腹痛があり、一回の排便量は少なく、粘血便である。多いときは一日一〇回を越える。医師は直腸の潰瘍で、癌になるおそれがあると診断したという。腹診すると、左腸骨窩に索状物を触れ、圧痛がある。これに胃風湯を用いたが、日増しに下痢が減少し、腹痛も軽快し、半年後に正常便が出るようになった。
(大塚敬節氏、漢方治療の実際)


和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
胃風湯(いふうとう) [和剤局方]

【方意】 脾胃の虚証脾胃の気滞による慢性下痢・腹満・腹痛・腹鳴・胃腸虚弱と、血虚による顔色不良等のあるもの。時に虚証・寒証を伴う。
《太陰病.虚証から虚実中間》
【自他覚症状の病態分類】

脾胃の虚証
脾胃の気滞
血虚 虚証・寒証
主証
◎慢性下痢
 (軟便・不消化便・水様便・粘血便・ピチピチ便)



◎顔色不良









客証 ○腹満
○腹痛
○腹鳴
 胃腸虚弱
 食欲不振
  
 下血        貧血 疲労倦怠
 筋力低下
 寒冷により悪化

  


【脈候】 浮弦弱。

【舌候】 乾湿中等度の微白苔がある。

【腹候】 腹力軟弱。時に下腹部に抵抗と圧痛を認める。

【病位・虚実】 脾胃の虚証・血虚・寒証は沈滞下行し、寒冷傾向があり陰証に属す。なお顕著な虚寒に至らず太陰病である。虚証を中心に、時に虚実中間に用いて効果がある。

【構成生薬】 茯苓4.0 当帰3.0 川芎3.0 芍薬3.0 人参3.0 白朮3.0 桂枝2.0 粟2.0

【方解】 白朮・茯苓には利水作用があり、人参には滋養・強壮・滋潤作用がある。人参・白朮・茯苓の組合せは四君子湯去方であり、水毒傾向を伴う脾胃の虚証による慢性下痢・胃腸虚弱・食欲不振等に有効に働く。芍薬は筋肉の異常緊張を主り、これも下痢・軟便・腹痛に有効である。桂枝は元来表証・気の上衝に対応するが、芳香性健胃作用もあり、人参・白朮・茯苓に協力する。粟の滋養作用は人参と共に脾胃の虚証・全身の虚証に対応する。当帰・川芎は温性の補血薬で、血虚による顔色不良・貧血等を治し、更に桂枝の温性とあいまって寒証に効果を発揮している。脾胃の補血薬で、血虚による顔色不良・貧血等を治し、更に桂枝の温性とあいまって寒証に効果を発揮している。脾胃の気滞は脾胃の虚証より二次的に派生したものである。

【方意の幅および応用】
 A 脾胃の虚証脾胃の気滞:慢性下痢・腹満・腹痛・腹鳴・胃腸虚弱等を目標にする場合。
   慢性大腸炎、潰瘍性大腸炎、直腸潰瘍。
 B 血虚:顔色不良・下血等を目標にする場合。
   冬期下血、冬期脱肛

【参考】 *風冷、虚に乗じて腸胃に客し、水穀化せず、泄瀉注下し、腹脇虚満、腸鳴り、疼痛し、及び腸胃の湿毒下ること豆汁の如く、或は瘀血を下す者を治す。
『和剤局方』

* 此の方は『素問』の所謂胃風には非ず。一種腸胃の不和より、泄瀉(単なり下痢症)に非ず、滞下(細菌感染性下痢)に非ず。水穀化せずして稀汁と血液と漏下して止まず、顔色青惨、荏苒歳月を延ぶる者を治す。蓋し甘草瀉心湯、断痢湯の如きは上焦に属し、此の方は下焦の方に属するなり。
『勿誤薬室方函口訣』

*此の方は四君子湯より甘草を去り、四物湯より地黄を去り、更に桂枝と粟を加えたもので、慢性虚証の大腸炎に用いられる。細野史郎氏は『漢方の臨床』に本方の運用を詳述し、下痢久しく続いて、体力稍衰弱の傾向あり、炎症も僅かにして、小腸よりむしろ下焦の大腸、直腸に邪のある場合に応用されるとしている。貧血気味、冷え症で脈浮弦弱、腹も虚弱のものによい。
『漢方後世要方解説』

*本方意の下痢は頻回ではなく、日に2、3回程度である。

*本方意には当帰芍薬散・桂枝加芍薬湯・八珍湯の方意が含まれている。

*甘草瀉心湯・断痢湯は上焦の異常による下痢、胃苓湯は中焦の異常による下痢、胃風湯は下焦の異常による下痢に用いる。潰瘍性大腸炎に特に良いとされる。粘血便でガスが一諸に出るためピチピチと音をたてる(大塚敬節)。


【症例】 不妊症
 不妊症の患者が当帰芍薬散、温経湯、加味逍遙散などを飲んでいるうちに妊娠することがよくある。
 患者は33歳の婦人で、結婚して9年たっても子宝に恵まれないという。婦人科ではどこも悪いところはないといわれたが冷え症であるという。月経は順調で、大便は1日1行。腹診するに、臍上で動悸がやや亢進している。当帰芍薬散を用いる。飲みはじめて5ヵ月後目に妊娠した。つわりもなく胎児は無事に発育中である。
 妊娠中から産後にかけて、胃風湯を飲み続けた患者がある。この患者は慢性の下痢があり、妊娠してよく流産を繰り返し、出産までもたないというので、胃風湯をずっと飲み続けることにした。胃風湯は当帰、芍薬、川芎、白朮、茯苓、人参、桂枝、粟からできているから、当帰芍薬散の代わりに、人参、桂枝、粟が入ったものである。
大塚敬節 『漢方の珠玉』269




『漢方後世要方解説』 矢数道明著 医道の日本社刊

p.35
第三 発表の剤(四方)
一八 胃風湯…………慢性腸炎、陳旧下痢症、脱肛

補養の剤
方名及び主治 一八 胃風湯(イフウトウ) 局方 瀉痢門
○ 風冷、虚に乗じて腸骨に客し、水穀化せず、泄瀉注下し、腹脇虚満、腸鳴り、疼痛し、及び腸胃の湿毒下ること豆汁の如く、或は瘀血を下す者を治す。
文献
①胃風湯について
「漢方の臨床」 第三巻 二号……細野史郎
②胃風湯治験例
「漢方の臨床」 第一五巻 二号……矢数道明

処方及び薬能当帰 川芎 芍薬 人参 白朮各三 茯苓四 桂枝 粟各二

 白朮、茯苓、人参は四君子湯の意で胃腸の水毒を去り、その機能を強化する。
 当帰、芍薬、川芎は四物湯の意で、貧血を補い、肝臓機能を亢進させる。
 桂枝は諸薬をよく導き、粟は腸管の弛緩をひきしめる。
 
解説及び応用○此方は四君子湯より甘草を去り、四物湯より地黄を去り、更に桂枝と粟を加えたもので、慢性虚証の大腸炎に用いられる。細野史郎氏は「漢方の臨床」に本方の運用を詳述し、下痢久しく続いて、体力稍衰弱の傾向あり、炎症も僅かにして、小腸よりむしろ下焦の大腸、直腸に邪のある場合に応用されるとしている。貧血気味、冷え症で脈浮弦弱、腹も虚軟のものによい。


応用
 ① 慢性腸炎 ② 衰弱者の陳久下痢。
 ③ 半夏瀉心湯、真武湯等の応ぜぬ慢性下痢症。
 ④ 産後、老人虚証の下痢
 ⑤ 冷えると下痢するもの。、⑥ ベーチェット病
 ⑦ 冬期の脱肛、下血。 ⑧ 潰瘍性大腸炎



『薬局製剤 漢方212方の使い方』 第4版
埴岡 博・滝野 行亮 共著
薬業時報社 刊


K2. 胃風湯(いふうとう)

出典
 和剤局方の巻6・治瀉痢に出ている。
 『大人や小児,風冷が虚に乗じて腸胃に入ってしまって消化機能が弱り、不消化便を瀉下し、腹や脇腹が張って,腸がゴロゴロと腹鳴して,時々キュッと痛くなり,昼夜何回も下利し,便は豆汁のようで,血を混じることもある。」と記載されている。

構成
 当帰芍薬散から沢瀉を去り,人参・桂枝と粟を加えたものである。当帰芍薬散に四君子湯と苓桂朮甘湯とを合方して粟を加え,沢瀉・甘草を去ったものとも解することができる。

目標
 もともと虚弱な人が風を引いたり,神経を使ったりして,消化機能が衰え,胃腸機能が失調して完穀下痢をするのを治すのが文献通りの目的だが,長い間下痢が続いて貧血し,立ちくらみを起したり,動悸があったりするのにもよい。
 急性の下痢よりも,むしろ原因がわからない慢性下痢に使う場合が多く,理由もなく下痢を起こしたり,便秘をしたりする過敏性大腸炎などに使われる。
 細野史郎氏は目標として次のようにまとめられている。『胃風湯は健常人に突発した胃腸炎などに用いられるものではなく,下痢も久しくつづいて,体力の稍衰弱に傾きかけたものに適応性があり,更にその炎症の様子も,その最盛期を過ぎて,力弱く残存性のもので,しかも,小腸のみでなく,腸管の下部,即ち大腸,直腸にも及んでいると思える場合に用いられ,また一見,ただ腸管下部にのみ限定された弱い残存性疾患と思えるものに応用する機貯が少なくない』

応用
(1) 急・慢性下痢。冷えによる下痢。
(2) 過敏性大腸炎。
(3) 海洋性大腸炎,クローン病。ベーチェット病。下血を伴う難治性下痢。
(柴田良治処方集)
(4)妊娠中の下痢,産後の下痢。(福井楓亭・方読弁解)

留意点
◎胃腸の特に弱い人は川芎がかたえるので抜いても良いという。(柴田)
◎痛むときには甘草を入れてもいいという。(柴田)

文献
1.大平恵民和剤局方(香港・商務印書歯版)P.1124
2.浅田宗伯・勿誤薬室方函口訣(明11)上2オ
3.福井楓亭・方読弁解・下部中・妊娠
4.柴田良治・黙堂柴田良治処方集・P.7
5.大塚敬節・症候による漢方治療の実際・P.320
6.細野史郎・胃風湯について・漢方の臨床Vol.3,No.2,P.3

K2胃風湯
〔成分・分量〕
 当帰    3.0
 芍薬    3.0
 川芎    3.0
 人参    3.0
 白朮    3.0
 茯苓    3.0
 桂皮    3.0
 粟      3.0  
  以上8味 23.0

〔効・効果〕
顔色悪くて食欲なく,つかれ易いものの次の諸症:
急・慢性胃腸炎,冷えによる下痢

〔ひとこと〕
●胃風湯去粟加沢瀉甘草は分量に差はあるが当帰芍薬散合苓桂朮甘湯合四君子湯である。
過敏症性腸症候群に有効であると水野修一氏によって紹介された。常用漢方方剤図解(許鴻源・台湾)の中の人参当芍散であると記載されているが、実は恩師長倉音蔵先生の創製である。(週刊朝日増刊・1990年4月)(水野修一・がんは生薬で治療できるP.196角川書店1997年9月)


『改訂 一般用漢方処方の手引き』 
監修 財団法人 日本公定書協会
編集 日本漢方生薬製剤協会

胃風湯
(いふうとう)

成分・分量
 当帰2.5~3,芍薬3,川芎2.5~3,人参3,白朮3,茯苓3~4,桂皮2~3,粟2~4

用法・用量
 湯

効能・効果
 体力中等度以下で,顔色悪くて食欲なく,疲れやすいものの次の諸症:急・慢性胃腸炎,冷えによる下痢


原典 太平恵民和剤局方

出典

解説
 胃腸が虚弱で寒冷にあえばすぐ下痢するようなものの,慢性に経過する下痢で疲れて衰弱しているものに用いる。便は不消化便,水様便,粘液便,わずかに血液を混ずる便などである。
 しばしば甘草を加える(その場合,四君子湯の方意が加わる)。


参考文献名
生薬名

当帰芍薬川芎人参白朮茯苓桂枝
処方分量集
33333422
診療医典注133333422
症候別治療
33333422
処方解説注233333422
後世要方解説
33333422
応用の実際注32.532.533333
改訂処方集
3333333若干
診かた治しかた
33333334


.注1 日常胃腸の弱い人が,寒冷にあえば下痢を起こしやすく,便は軟便,不消化便,あるいは水様便,ときにはわずかに粘液や血液を混ずることがあってもよい。

注2 日常胃腸の虚弱な人で,寒冷などによって下訳を起こしやすく,慢性に経過して,体力も衰弱に傾き,炎症は大体盛りを過ぎた残存性のもので,小腸ばかりでなく大腸や直腸に及んでいるものを目標とする。
 和剤局方(瀉l痢門)に「大人小児,風冷,虚ニ乗ジテ入ッテ腸胃に客シ,水穀化セズ,泄瀉注下,腹脇虚満シ,腸鳴リ㽲痛シ,及ビ腸胃ノ湿毒下ルコト豆汁ノ如ク,或ハ瘀血ヲ下スコト日夜度無キヲ治ス。依ニ宜シク之ヲ服スベシ」とあり。
 勿誤方函口訣ニハ「此方ハ水穀化セズシテ,稀汁ト血液ト漏下シテ止マズ。顔色青惨荏苒(慢性化し)歳月ヲ延バス者ヲ治ス。」とある。

注3 胃腸の虚弱な人が,腹を冷やしたり,いわゆる感冒性下痢などで下痢するものである。このとき腹鳴りがあり,腹が痛むこともあり痛まないこともある。大便は水様便で米のとぎ汁のようなこともあり、血液を混じていることもあって,渋り腹のことが多い。


『衆方規矩解説(17)』
 日本漢方医学研究所理事 矢数圭堂
泄瀉門

■胃腸湯
 「風冷虚をうかがい、腸胃にとどまり、水穀こなさずそのまま瀉(くだ)し、腸なり腹いたみ、及び腸胃に湿毒をたくわえ下すものは豆の汁の如く、或いは瘀血を下すを治す。また曰く風瀉は下すに血をおび、脈浮絃なり。参(人参(ニンジン))、伽(白朮(ビャクジュツ))、苓(茯苓(ブクリョウ))、芹(当帰(トウキ))、芍(芍薬(シャクヤク))、芎(川芎(センキュウ))、桂(肉桂(ニクケイ))、右、粟(アワ)を入れ水にて煎じ服す。腹痛むには木(木香(モツコウ))を加う。
 按ずるに古今の伝にいうところの膿血を下すに専らこの湯を用ゆるなり。腹痛に煤いろの血を瀉す。痢病のいきみたちあとに残るようにして、気味のわるきには伽(白朮)半ばを減して木(木香)、梹(檳榔(ビンロウ))を加えて数多(あまた)の効を得たり。もし清血を下すときは小柴胡湯(ショウサイコトウ)よし。老人暁ごとに瀉すること二、三度、腹すこし痛み、脈緩なるに星(砂仁(シャジン)を加う。小児、豆の汁の如くなるを下し、腹痛み、身熱す。肉(肉桂)を去り柴(柴胡)、汵(黄芩(オウゴン))を加う。産後風に当り泄瀉を致して腹痛にはこの湯に宜し。ある人語て云く、冬月の脱肛、下血には木(木香)を加うと。これ妙術なり、理尤も然るべし」。
 胃風湯というのは、冷えがあって、飲食物がこなれないで下る場合とか、瘀血のようなものが下る時に使うということですが、最近は潰瘍性大腸炎などで粘血便を出す場合に使っております。



『勿誤薬室方函口訣解説(5)』
北里研究所附属東洋医学総合研究所部長 大塚恭男

胃風湯
 次は胃風湯(イフウトウ)です。これは現在も使われるものです。「局方』は和剤局方のことで、宋代の書物です。本文は「風冷虚に乗じ、入りて腸胃に客たり、水穀化せず、泄瀉注下および湿毒豆汁の如きを下す。あるいは瘀血を下すというものを治す」とあります。内容は、人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)、川芎(センキュウ)、桂枝(ケイシ)、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、白朮(ビャクジュツ)、粟米(ゾクベイ)の八味です。
 「此の方は素問の所謂胃風には非ず」とありますが、『素問』の胃風とはどういうものかと申しますと、『素問』の風論篇四十二に出ておりまして、「胃風の状、頸に汗を置く、悪風、食欲下らず、隔塞して通ぜず。腹攣満、失/。寒を食すれば乃ち泄す」とあります。「頸に汗があり寒気がし、食べたり飲んだりしたものは下らず、隔が閉じて下へ行かない、腹が張って、表面は寒いが中は熱していて衣をはねのけてしまう。冷たいものを食べればすぐ下痢をしてしまい、おなかがふくれてしまったもの」を胃風というとあり、非常に強い通過障害があって、かなり重篤な消化器症状のような感じです。しかし、ここにいう胃風湯は、「腸胃の不和から起こった下痢を主とする一種の消化器症状で、下痢に粘液や血液が混じってくることもある。顔色が青くなり年月を経てもなかなか治らないものを治す。甘草瀉心湯(カンゾウシャシントウ)、断利湯(ダンリトウ)のようなものは上焦、つまり消化管の上の方の症状に属し、この方は下焦の方に属する」といっております。胃風湯はガスを伴うような下痢、飛び散るような下痢というようなことがいわれてますが、非常に治りにくい下痢、時に粘血を伴うような下痢によく使われます。


『一般用漢方製剤の添付文書等に記載する使用上の注意』

【添付文書等に記載すべき事項】

 してはいけないこと 
  (守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)

 次の人は服用しないこと
  生後3ヵ月未満の乳児。
   〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕



 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱い人。
(4)高齢者。
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ
消化器 吐き気・嘔吐、食欲不振、胃部不快感



3.1ヵ月位(急性胃腸炎に服用する場合には5~6回、冷えによる下痢に服用する場合には1週間位)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、 薬剤師又は登録販売者に相談すること



 〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕


(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。  〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕

(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
  〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
  〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
  〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕


保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
   〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

(2)小児の手の届かない所に保管すること。

(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
  〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕




【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】


注意
1.次の人は服用しないこと
  生後3ヵ月未満の乳児。
  〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
  (1)医師の治療を受けている人。
  (2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。  〔大黄を含有する製剤に記載すること〕

(4)高齢者。

(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。

2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
  〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕

3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと

4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕