健康情報: WTTCと漢方

2009年4月24日金曜日

WTTCと漢方

W・T・T・Cは、厳密に言えば漢方薬ではなく家伝薬の一種となりますが、藤瘤(とうりゅう)、訶子(かし)、菱実(りょうじつ)、薏苡仁(よくいにん)の4種類の生薬から成立っている、生薬製剤です。
各10~15gを煎剤として用います。

WTTC(ダブリュティーティーシー)という名は、
・藤瘤(Wisteria floribunda)
・訶子(Terminalia chebula)
・菱実(Trapa japonica)
・薏苡仁(Coix lacyma-jobi)
の植物学名(ラテン名)の頭文字をつないだものだそうです。

古くから横須賀市の薬局で、「船越の胃腸薬」と称して用いていたものを、昭和30年頃に、千葉大学の中山恒夫教授がガンに有効だと発表して有名になりました。
昭和34年ですからかなり昔の話ですが、「化学療法に関するパネルディスカッション」において千葉大の中山教授が「漢方療法の経験」と題して、胃の患者168名にWTTCを投与された症例を発表し、延命効果があったとしています。
(日本医師会雑誌、第41巻第12号、945頁、昭和34年)。
内容は、
「漢方薬というのが古くからあって,それが癌にも使われている.私,3年ばかり前に,知っている人から頼まれまして,噴門癌(胃ガン)の患者なんですが, 軽く取れると思ってあけてみましたら,Dissemination(ガンが広範囲に広がっている)のような形で全然取れませんで,Probe(試験切除) をやりました.もちろん3月ぐらいで死ぬだろう……本人にはもちろん言いませんが,『癌をすっかり取ったからお前は再発することはない』と,こう本人には 言ったんですが,家の人には『3月ぐらいで死ぬだろう』と言ったんですが,1年半くらいたってその患者がピンピンして私の所に挨拶に来ました.『先生が 言った通りだ.先生は手術がうまい,再発なんかしない.飯もだんだん食えるようになった』と,こう言うんです.それから私,こういうばかなことはない,と にかく試験切片を採って検鏡してあるんですから,確かに胼胝性潰瘍とか何とかじやない.それからこれは食べ物のせいか環境のせいか,そういう特殊なことが あるのかと思って聞きましたら,『帰ってから近所の者にすすめられて漢方薬を飲んだ.あれを今でも飲んでいる.非常に工合がいい』と,こういうことなんで す」と。                     その患者の飲んだ「漢方薬」は、藤瘤(ふじこぶ)、詞子(かし)、菱の実(ひしのみ)、薏苡仁(よく いにん)を各10gを煎じ薬として服用したというものです。藤瘤、詞子、菱の実、薏苡仁の学名の頭文字が、W、T、T、CでしたのでWTTCという処方に 名前を付けて患者に投与し、すでに転移のあるガン患者168例について調べてみたところ、WTTCを投与したグループはかなり延命効果があることが明らか となりました。私自身もWTTCを用いて、なかなか良い効果があると実感しています。」
とのことです。

胃に限らず他の臓器の者についても追試されています。


『漢方症例選集』(緒方玄芳著)にも記載されていますので、抜粋してみます。

治験例1
患者は59歳の女性。 初診は昭和47年8月28日。
現病歴=昭和47年6月、健康診断で右卵巣の異常を指摘されて、同年8月3日、某病院で手術をうけ、右卵巣に原発したもので、既に腹腔内転移が肉眼ではっきり認められる状態であった。 従って、すでに放射線治療の適応ではなかった。主治医が家族に「手遅れの状態であるから、あとは漢方でも飲んでみたらどうか」といった主旨のことを話したそうだ。
現症=体格は小柄で、筋肉は締っていて、顔色よく、生来著患を知らぬ。舌は淡紅色。脈は沈で細、小。腹部は臍から下方に正中線皮切痕がみられ、中等度の左右胸脇苦満がある。
 そこで、WTTCを投与したところ、段々元気になって、年末にはすっかり健康を取戻し、現職に復帰し、8月以後、患者は来院しなくなった。
その後、昭和48年12月初め、突然来院して右鼡径部に不調を訴えた。それから後は、またWTTCを 飲み続けた。昭和49年8月、直腸の疑いで初回の手術をうけた病院で手術をうけた。執刀医の説明によれば、前回の手術のときの病巣はきれいになっていて、 異常を認めなかった。しかし、直腸にできていたのでこれを切除して、人工肛門を増設したという。そして後三ヶ月位はもつでしょうとのことだった。
昭和49年12月2日、患者は来院して、「多量の帯下が流出し、また左下腹部におできが生じた」と訴えた。みると腹部は腹水のため高度に膨隆し、左鼡径部に拇指頭大に腫れた瘤を認める。
 托裏消毒飲を与えたところ、数日後に自潰し、開口したが、水様のものが少々流出し、肉芽の腐ったようなものが出口をふさいでいるので、千金内托散を与え たところ、約三週間できれいになった。しかし、一方、腹水は依然たまっていて、一般状態はよくならない。
ただ末期にみられる疼痛は全くといってよいほど訴えない。そんな状態がつづく内、昭和50年2月初め、死亡した旨、知らせをうけた。

治験例2
患者は40歳の男性。 初診は昭和50年5月12日。
 最初、肺ないしその附近にあって、コバルト照射で数年間はなんとか抑えていたが、昭和49年ころから腹部臓器にすすみ、最近遂に末期症状をきたした。
 そこで患者の妻に後刻薬を取りにくるようにいった。彼女が薬を取りに来たとき、「末期で腹水が一杯たまっています。」というと、彼女は「よくわかっています。病院の先生にそのことを聞きました」「漢方で も治すことはできません」「そのこともよく知っています。今の苦しみが少しでも楽になれば、と思いお願いするのです。病院の先生はあと一ヶ月の命だとおっ しゃっています」「そこまでの承知の上での話なら薬を出しましょう。今よりは楽になり、延命効果も上がると思います」といってWTTCを30日分渡した。それを飲み終えて、次回、請薬にきた彼の妻は「腹部の膨満がとれ、小便が多量に出て、
食欲が出て、浣腸なしで便通がある。顔面浮腫が消えた。」と報告してくれた。
 その後もひきつづき服用したが、9月10日の時点では顔に浮腫があわわれ、衰弱が増してきて、一ヵ月後には遂に死亡した。

治験例3
患者は70歳の男性。 初診は昭和50年5月28日。
現病歴=昭和49年7月10日、直腸で某病院で切除術と人工肛門増設術とをうけた。昭和50年1月腹水がたまって、微熱が続くようになった(主治医は今年6月までもてばよい方でしょう、といった由)。
 を投与したところ、まず、熱がでなくなり、浮腫と腹水が現象し、食欲が増進した。つづけて投与し、10月18日、請薬に来院した時は浮腫、腹水とも消失し、体重が2kg増え、調子がよいといっていた。
 後日,新聞紙上で彼の死亡報道を読み、以外に思った。数日後、遺族の話をきいたところ、次のような経過を聞いた。
 「死亡の数日前、勤務先で尻持ちをついて、腎部を強打し、その直後入院したが、腹水が急に大量にたまってきて、遂に死亡した。
その間、余り苦しむことがなかった。」と。

長倉製薬株式会社(大阪)が、W.T.T.C.という名称で商品化しています。
(粒状の医薬品です)


土方康世氏(茨木市・東洋堂土方医院)は、WTTCに霊芝・梅寄生(ラテン名の頭文字GE)を加方したものを、WTTC-GEと称して、癌(がん)の他、単純ヘルペス感染症(口唇ヘルペス、ヘルペス性口内炎、性器ヘルペス等)や、慢性肝炎、アトピー性皮膚炎に応用されています。

アトピー性皮膚炎に対する効果は、下記のサイトで概容を見ることができます。
http://nels.nii.ac.jp/els/110002536680.pdf?id=ART0002814846&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1240553272&cp=


癌(ガン)に応用される漢方薬などについては、下記のサイトもご参考下さい。
http://kenko-hiro.blogspot.com/2008/11/blog-post_28.html