しかしNHKの報道では、実際には4人に1人は治療が2年以上かかり、半数が再発するとのことです。
更には、医師の能力にも問題があり、不必要に多くの種類や量の抗うつ薬を投与され、薬の副作用で、病気がひどくなったりしている人もいるとも放送していました。
今まで飲んでいた薬を減らすことで、劇的に改善した方も出演していました。
何か症状が出るとそれに対処する薬を使いたくなる気持ちは、わからないでもないですが、放送されていた薬の量は、尋常ではありませんでした。医師や薬剤師は、その薬の量を見て何とも思わないのでしょうか?
番組では、双極性障害であるのに、うつ病の治療が行われ、良くならない例も出ていました。双極性障害の方に安易に抗うつ薬が使われると、逆効果になりかねないようです。
「うつ先進国」のイギリスでは2年前から、国を挙げて抗うつ薬に頼らず、カウンセリングでうつを治す認知行動療法(CBT, Cognitive Behavioral Therapy)(「心理療法」)を治療の柱に据え、効果を上げているとの報道もありました。しかし日本では、まだ保険で認められていないので、全額自費になってしまい、「心理療法」を受けるのは難しいようです。
日本の保険は、検査をしたり、薬を出したりしないとお金がもらえない仕組みです。問診にどれだけ時間を掛けても、例えば3分間しか話しを聞かなくても、1時間話しを聞いても、もらえる報酬は同じです。 ですので、保険の仕組みとして、どうしても検査漬、薬漬になりがちです。
漢方薬は、色々な症状に対して単一の処方(薬方)で対応可能なことがあります。複雑な病態の場合は、複数の処方(薬方)を合方(ごうほう・がっぽう)することもありますが、多くはせいぜい二~三方です。
うつ病に良く用いられる漢方薬には、
香蘇散(こうそさん)、 柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)などのいわゆる順気剤(じゅんきざい)があります。
その他、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)、分心気飲(ぶんしんきいん)などが用いられます。
また、体力が低下している場合など、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を併用することもあります。
症状 | ||||||||||||
便秘がち |
◎
|
○
| ||||||||||
汗をかきやすい |
◎
| |||||||||||
疲れやすい |
○
|
◎
|
◎
|
○
|
○
| |||||||
のぼせやすい |
◎
|
◎
| ||||||||||
めまい |
◎
| |||||||||||
肩が凝る |
△
|
◎
| ||||||||||
耳鳴りがする |
△
|
○
| ||||||||||
のどに何かつかえている感じ |
△
|
◎
| ||||||||||
起床時口中が粘り、苦い |
○
|
○
|
◎
| |||||||||
ささいなことが気になる |
○
|
○
|
○
|
○
|
◎
| ○ | ||||||
イライラする |
◎
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
| |||||
気分が沈む
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
◎
|
◎
|
○
|
○
|
○
|
○
| |
悲しい
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
◎
|
睡眠障害
|
◎
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
| ||||||
夢をよく見る
|
◎
|
○
| ||||||||||
物忘れをする
|
◎
|
○
|
・甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう):理由もなく悲しんだり怒ったりし、むやみにあくび(欠伸)をする。
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):胸脇苦満(きょうきょうくまん(胸や脇の圧迫感・季肋下部の抵抗・圧痛))があり、動悸が激しく、クヨクヨする、気分が沈む等の神経症状が強い。便秘がある。
柴胡加竜骨牡蠣湯については、「柴胡加竜骨牡蠣湯 と うつ(鬱)」もご参照下さい。
http://kenko-hiro.blogspot.com/2010/09/blog-post.html
・柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう):
体質が虚弱で、皮膚枯燥してつやがなく、脈・腹ともに力なく、胸脇苦満はほとんど認めないものに用います。
・桂枝加龍骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう):柴胡加竜骨牡蛎湯とほぼ同様だが、体力は弱く、胸脇苦満や便秘傾向はない。のぼせて汗が出やすく、毛髪が抜けやすい。
桂枝加竜骨牡蛎湯については、「桂枝加竜骨牡蛎湯とうつ(鬱)」もご参照下さい。
http://kenko-hiro.blogspot.com/2010/10/blog-post.html
・加味逍遙散(かみしょうようさん):背中が急にカーッと熱くなり汗が出て、そのあと寒くなる。不定愁訴(ふていしゅうそ)がむやみに多い。加味逍遥散
http://kenko-hiro.blogspot.com/2010/10/blog-post_25.html
・香蘇散(こうそさん):平素から胃腸が弱く、気分が沈み、ささいなことが気になる。
http://kenko-hiro.blogspot.com/2010/09/blog-post_18.html
・ 女神散(にょしんさん): のぼせとめまいがあり、不安、動悸、不眠、頭重などの訴えのある人に使われる処方です。神経症状は一定で、余り変化せず、一つ二つの訴えをいつまでも頑固に固執する傾向があります。別名を安栄湯(あんえいとう)ともいいます。
・酸棗仁湯(さんそうにんとう):
虚弱体質で、身心の疲労、不眠を伴う鬱(うつ)に用いられます。
・加味帰脾湯(かみきひとう):疲労倦怠・食欲不振・動悸・貧血・不眠・感情不安定などの精神症状の顕著な場合に用いられます。心身共に衰微している状態です。
・四逆散(しぎゃくさん):
胸脇苦満・口苦・口粘・肩背強急・心下痞鞕・手足厥冷・掌蹠自汗・疲労倦怠・神経過敏:抑鬱気分などのあるものに用いる。
・抑肝散加芍薬(よくかんさんかしゃくやく)・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
感情不安定・興奮・多怒・寝つきが悪い・心悸亢進・腹直筋緊張・四肢痙攣などのあるものに抑肝散加芍薬を用います。
もし、腹力低下し、腹部大動脈の拍動の亢進のある場合には抑肝散加陳皮半夏を使用する。
・三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう):
体力が中程度またはそれ以上で、不安感、焦燥感とともに感情の動揺が激しくて、便秘気味の人に合う処方です。
・黄連解毒湯(おうれんげどくとう):
三黄瀉心湯とほぼ同じ症状で、便秘がない人はこちら。
・半夏瀉心湯
心窩部のもたれ、悪心、嘔吐、食欲不振、ときに心窩部の振水音、腹鳴下痢などの胃腸症状とともに、不眠、落着かないなどの精神神経症状を訴えるものに用います。
・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
下腹部の急迫性の圧痛があるものに用います。多くは月経異常と便秘を伴います。
月経時に気が荒くなって、イライラしたり、怒ったりするもの、あるいは狂ったように乱暴するもので、特殊に腹証(小腹急結(しょうふくきゅうけつ))があるものに用いる。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):
のぼせ、肩こり、めまい、足の冷えなどを伴う鬱(うつ)に効果があります。左の下腹部に充実した抵抗と圧痛があることも処方の目安の一つです。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):
貧血・顔色蒼白・手足冷・寒がり・小腹硬満・月経異常・腹痛・上腹部振水音・浮腫傾向・尿不利・無気力・疲労倦怠・前屈姿勢などのあるものに用います。
しばしば、頭冒・目眩・耳鳴・亡背強急・心悸亢進・不眠・不定愁訴・感情不安定などを伴います。
・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう): 体力がなく体質も弱い虚証タイプで、不眠感や不眠、動悸、抑欝感などがある場合に効果を発揮します。咽喉(ノド)に何かが痞えて(つかえて)いるような異物感があることが重要な目安になります。
・正心湯(しょうしんとう):極度の精神疲労により、意識が呆然として、とりとめのないことを口走るというものに用いられます。
・大承気湯(だいじょうきとう):
強い便秘・腹堅満・食欲不振・微熱・熱臭のある自汗・燥屎・口渇・心煩などのあるものに用いられます。肥満して腹力あり、便秘するものの抑鬱気分の顕著な場合、躁状態が激しく狂暴な傾向のあるある場合にも使われます。
・竜骨湯(りゅうこつとう)
他の漢方薬方が無効の際に、ときに著効がある場合があります。
抑鬱気分・易驚・悲傷・健忘・不眠・独語・痴狂などのあるものに用いる。
普段から驚き易く精神不安定で、希望を失い、がっかりしてよく物忘れをし、悲感的で哀愁にたえず、性欲がなくなり,時に独語を発したり精神薄弱や狂人のような者に用いる。
・反鼻交感丹(はんぴこうかんたん):
極度のうつ状態などで、呆然自失の態のものに用いて、著効のある場合があります。
呆然自失・放心・失心・抑鬱気分・健忘などのあるものに用いられます。
気虚が顕著で、うつ状態で気の抜けたようなもの。
・十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
疲労倦怠・気力減退・自汗・盗汗、貧血、顔色不良、羸痩(るいそう)、全身衰弱、皮膚枯燥、口乾などのあるものに用います。
・清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
うつ傾向、泌尿生殖器系症状、胃腸虚弱を目標として用います。
・茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)
急・慢性肝炎、胆石症、蕁麻疹、皮膚掻痒症などで、不眠、興奮を呈する者に用います。
・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
不安感があって、動悸、めまい、ふらつきのある方(水毒)。
不安神経症タイプで、不安感が強いと血圧が変動しやすく、動悸、めまいを訴える方に使われます。
立ちくらみにも良く使われます。