健康情報: ヒハツ(蓽撥)エキスについて

2009年2月13日金曜日

ヒハツ(蓽撥)エキスについて

ヒハツ(蓽撥)エキスは、ヒハツ(和名:ナガコショウ Piper longum)の果穂を熱水抽出したエキスです。
ヒハツ(蓽撥)は東南アジアに自生するコショウ科のつる性常緑本木です。胡椒の仲間で、インドナガコショウやロングペパーとも呼ばれます。長さは2mになり、果穂は多肉質で、3~9cmの太い円筒状になり、9~10月頃、収穫します。
辛味とともに甘味もあり、紀元前からカレーなどの香辛料として利用されてきました。
ヒハツ(蓽撥)の近縁種であるヒハツモドキは、沖縄や八重山諸島では「フィファチ」と呼ばれる香辛料として、豚肉の臭み消し、沖縄そば、みそ汁の味付けなど、琉球料理に使用されています。
ヒハツはピペリン等を含み、血管を拡張し、血流量を増加させて、体の表面温度を高くするため、発汗作用があり、新陳代謝を促進させる働きがあります。インドでは昔から体の冷えを改善する目的で使用されています。また、健胃・整腸作用や強精作用もあると言われています。

類似の原料に黒コショウもあります。
黒コショウから、ピペリンを主成分として抽出したものが、上市されています。
ビタミンやミネラルなど、他の成分の吸収を良くすると言われています。
たとえばある研究で、毎日5mgのピペリン製品(商標バイオペリン:サビンサ社製)をβ-カロチンやセレン、ビタミンB6などのいくつかのサプリメントと一緒に被験者に与えたところ、二週間後には、β-カロチンだけを摂取していた人と比べると、バイオペリンを併用した方は、血中のβ-カロチンの値は60%も上昇しました。また、ピペリンを摂取して一時間以内に血中のセレンとビタミンB6量が増加しました。血中の栄養素の量も増加しましたが、正常な範囲でした。また、副作用はまったく見られませんでした。このように他の成分の吸収を良くするので、多くのサプリメントに補助的に使用されています。

コショウを摂取すると、新陳代謝(しんちんたいしゃ)が良くなることが知られています。
血行が良くなり、 エネルギー代謝が促進され、脂肪燃焼も促進され、
その結果、ダイエット効果が発揮されます。
食べてすぐ代謝が良くなるのは、辛さによる交感神経の働きで、
その後、代謝が良いのはホルモン(カテコールアミン)の働きによるものと考えられています。

ヒハツ(蓽撥)にも黒コショウにも、ピペリンが含まれていますので、同様な効果が期待できます。

ただ、このピペリンには薬物代謝酵素であるシトクロムP450(CYP3A4)の阻害活性があることが知られています。
ある種の高血圧の薬(カルシウム拮抗薬)を服用する時に、グレープフルーツジュースを同時に飲むと、薬の効果が強くなる(血圧が下がり過ぎる)副作用があることが知られていますが、これはグレープフルーツに含まれるフラボノイドが、薬を分解する酵素であるシトクロムP450(CYP3A4)の働きを邪魔するからだと言われています。
ピペリンも同様にシトクロムP450(CYP3A4)を邪魔しますので、同じような副作用が起こる可能性があります。
カルシウム拮抗剤に限らず、シトクロムP450(CYP3A4)で分解される薬物は、ピペリンによって分解が抑制され、全て効果が増強される可能性がありますので、医薬品の副作用が起こり易くなるかもしれません。
また逆に、チトクロームp450(CYP3A4)で代謝されて効力を発揮するような医薬品(例:テルフェナジン (Terfenadine))などは、効果が弱くなってしまうかもしれません。

相互作用 想定される機序
プロプラノロール 血中プロプラノロール濃度の上昇 CYP 阻害
テオフィリン 血中テオフィリン濃度の上昇 CYP 阻害
この他、
Dipiperamide A, B, and C: bisalkaloids from the white pepper Piper nigrum inhibiting CYP3A4 activity   Tetrahedron  58巻1667-1671頁  2002/03
によりますと、
CYP3A4の阻害活性がピペリンよりも100倍強い活性を示す物質であるDipiperamide という成分がコショウから発見されているそとですので、上記の作用は、益々強くなりそうです。

【参考】薬物代謝にはいくつかの酵素が関与していますが、その中で特に重要な役割を果たしているものがシトクロムP450(CYP)と呼ばれる酵素です。CYP にはCYP1A2, CYP2C9,CYP2C19,CYP2D6, CYP3A4 など多くの分子種が存在します。CYP3A4 はその中でも多数の医薬品の代謝に関与することから、薬物相互作用を考える際に重要な分子種です。CYP は主に肝臓に存在していますが、小腸上皮細胞においても発現しており経口投与後の薬物の代謝に関与します。

冷え症に利用される健康食品・サプリメントの原料としては、ヒハツ(蓽撥)の他、糖転移ヘスペリジン、ショウガ、唐辛子(トウガラシ)、朝鮮人参(高麗人参)、ギャバ(γ-アミノ酪酸)、反鼻(はんぴ、まむし)などがあります。

冷え症は、西洋医学では余り重視されませんが、漢方では証を決める際の重要な項目の一つとなります。
冷え症に応用される漢方薬方は色々とありますが、代表的なものとして、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)、人参湯(にんじんとう)、真武湯(しんぶとう)、四逆湯(しぎゃくとう)などがあります。
真武湯(しんぶとう)や四逆湯(しぎゃくとう)には、附子(ぶし)が含まれています。附子は、一時保険金詐偽で有名になったトリカブトの塊根です。矢毒(やどく)にも使われていたように、毒性もあります。温める力は強いですが、体質的に合わない人(暑がりのような人)が飲むと、しびれたり、最悪の場合は死につながる可能性もありますので、注意して下さい。
毒を薬として使うのは、漢方の醍醐味です。
(最近の附子は、減毒されていますので、通常の服用量であれば、中毒を起こしたりすることはまず無いと言われています。間違って山菜として食べて食中毒を起こす事件がたまにあります。)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)は、冷え症の中でも、特に「しもやけ」に良く使われます。「四逆」という字がありますが、四逆湯とは直接の関係はなく、附子も含まれていません。

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