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理気の剤
方名及び主治
六一 神秘湯(シンピトウ) 外台秘要方
○久咳、奔喘、座臥することを得ず、並に喉裏呀声、気絶するものを療す。
文献
紫蘇子湯と神秘湯及びその治験例
漢方の臨床 第二巻 二号………高橋 道史
処方及び薬能
麻黄五 杏仁四 厚朴三 陳皮二・五 甘草 柴胡各二 蘇葉一・五
麻黄=喘咳を治し、汗を発し、風寒を去る。
陳皮=気を順らし、痰を消す。
杏仁=風痰喘嗽を治す。大腸の気閉を治す。
蘇葉=風寒、発表諸気を下す。
解説及び応用
○気管枝喘息の一般の薬方である。
麻杏甘石湯より石膏を去り、半夏厚朴湯より半夏、茯苓、生姜を去り、これを合わせて柴胡、陳皮を加えたものである。呼吸困難を主として痰少なく、気鬱を兼ねたものによい。
一般に腹力弱く、心下もそれほど緊張せず、喀痰少なくして呼吸困難を訴えるものに用いる。
○応用
①気管支喘息、
②肺気腫。
『漢方精撰百八方』
38.〔方名〕神秘湯(しんぴとう)
〔出典〕外台秘要 〔処方〕麻黄5.0 杏仁4.0 厚朴、陳皮各2.5 甘草、柴胡各4.0 蘇葉1.5(本来の神秘湯に厚朴、杏仁を加えた浅田流の処方である)
〔目標〕久咳、奔喘、坐臥するを得ず、並に喉裏呀声、気絶するものを療すとある。 喘息で呼吸困難を主とし、痰は少なく、気鬱を兼ねたもので、一般は腹力弱く、心下もそれほど緊張しないものに適用する。
〔かんどころ〕咳嗽、喘鳴があり、呼吸困難が主で、小青竜湯のような水毒症状がないものに適用される。
〔応用〕
(1)気管支喘息、麻杏甘石湯よりは呼吸困難が強く、痰が切れにくい場合に適用する。小児の喘息に適応症が多いように思われる。
(2)小児の感冒で、咳が出て喘鳴のあるものに適用する。
(3)肺気腫。強度の肺気腫には効果がないように思われる。軽度の肺気腫で、動くと呼吸困難のあるものに適用する。
伊藤清夫
『《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
43.神秘湯(しんぴとう) 外台秘要方
麻黄5.0 杏仁4.0 厚朴3.0 陳皮2.5 甘草2.0 柴胡2.0 蘇葉1.5
〈現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
やや慢性的に経過し,喀痰少なく,喘息発作と共に呼吸困難を訴えるもの。
本方は麻杏甘石湯,半夏厚朴湯合方に柴胡,陳皮を加えたような処方で,麻杏甘石湯,麻黄湯で難治な神経症状や呼吸困難のひどい気管支喘息とか,あるいは以上の麻黄剤の適応する気管支喘息で長期連用の目的で用いられるものである。やや慢性に経過した症状に適し,喘息発作が著しい時期には無効で,この場合は他の適当な処方を考慮すべきである。
〈漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
麻杏甘石湯適応症に似て口渇や熱感がなく,半夏厚朴湯の症状にて,胃部の停滞圧重感が少ないといった両者をミックスした症候群を有し,しかも肝臓や胃腸の機能が悪い傾向のものによい。以上のことから本方は急性よりも慢性に経過するものによく適応する。患部の訴えや症状があたかも麻杏甘石湯合半夏厚朴湯に見受けられるが,それは発作不安や発作時の呼吸困難なども愁訴するので混同しやすく,具体的には著しい口渇や頭汗などがなく,タンの出ないセキと呼吸困難を主訴とし,精神不安,喘鳴,胸腹部の不快感などを伴うことが多い。麻黄湯,麻杏甘石湯,小青竜湯などのマオウ剤不適の体質で,しかも麻黄配合処方が適応するが,前記処方が連用できないものに,本方を連続投与すればよい。
類似症状の鑑別
麻黄湯 丈夫な体質のものの喘鳴,呼吸困難,喀痰がなく咳発作が激しい急性症状に用い,本方は若干体質が弱い慢性症状に応用する。
小青竜湯 たいして体力が低下していないものの,呼吸困難,喘鳴,咳発作,わりあい量の多い喀痰などの症候群がある急性,亜急性に用いる。
麻杏甘石湯 セキの発作が激しく,呼吸困難,喘鳴,発作時に口渇や頭部に発汗を認めるもので,丈夫な体質のものを対象に用いる。
苓甘姜味辛夏仁湯 小青竜湯の症状に全く似ているが体が弱く,貧血,冷え症で発作時に呼吸促迫の傾向があるもの。本方は内臓は弱いが,貧血,冷え症というほど極端に弱くはないものを対象にする。
〈漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○咳嗽,喘鳴,呼吸困難が目標であるが,小青竜湯証のような水毒がないもの。小児の感冒で咳が出て,喘鳴のあるものによい。
〈漢方処方解説〉 矢数 道明先生
呼吸困難を主訴とし,比袋的痰少く,気鬱の神経症を兼ねた気管支端息,肺気腫,小児喘息等に応用される。一般に腹力弱く,心下もそれほど緊張せず,わずかに胸脇苦満を認め,喀痰は少なく,呼吸困難を訴え,神経症を加味したものを目標とする。
〈勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は外台備急療久欬奔喘坐臥不得臥併喉裏呀声気絶方又名神秘湯とあるが原方にて王碩易簡方揚仁斉直指方東垣医学発明にも同名の方ありて二三味つつの加減あれば此方が尤捷効あり吾門厚朴を加る者は易簡に一名降気湯の意に本づく也。
『重要処方解説(83)』
神秘湯(しんぴとう)・五虎湯(ごことう)
日本東洋医学会会長 室賀 昭三
■神秘湯・出典
外台秘要方
神秘湯(シンピトウ)の出典は『外台秘要方(げだいひようほう)』であるといわれておりますが,それによりますと「久しく気嗽を患い,発する時は奔喘,坐臥することを得ず,並に喉裏呀声,気絶するものを療す」とあります。その意は「あまり痰の多くない咳が続いていて,発する時はぜいぜいいうこともあり,寝ていたりすわっていることができなくなる。喉の裏でぜいぜいいい,呼吸が辛くなるものを治す」ということですが,神秘湯という方名はなく「久嗽坐臥不得方」として掲げられた2方を取捨したもので,方中厚朴(コウボク)がないといわれていますが,厚朴があった方が効果があってよいだろうと思います。
浅田宗伯(あさだそうはく)先生の書かれた『勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ)』には「諸書同名の方があり(いろいろな本に同じ名前の処方が出ている),二,三味ずつ加減あれど(2,3味ずつ削ったり加えたりしたものがあるが),この方が最も捷効あり(この方が一番効果がある)。吾門,厚朴を加うる者は『易簡(えきかん)』に一名降気湯(コウキトウ)の意に本づくなり(浅田宗伯門下では厚朴を加えて使うけれども,『易簡』という本には降気湯という処方があって,それに基づいて浅田門では厚朴を加えて使っているのだ)』といっておられます。
■構成生薬・薬能薬理
神秘湯は,麻黄(マオウ),杏仁(キョウニン),厚朴,陳皮(チンピ),甘草(カンゾウ),柴胡(サイコ),蘇葉(ソヨウ)からできており,神秘湯の構成生薬についてお話ししますと,主薬は麻黄であります。
麻黄は麻黄科のEphedra cinicaあるいはその他同属植物の地上の茎を使うことになっておりますが,一説によると地下の根の方も使うということです。主成分はephedrineやmethylephedrineなどのアルカロイドを含んでおりまして,薬理作用は中枢興奮作用,呼吸中枢,血管運動中枢,大脳皮質および皮下のいろいろな中枢を興奮させる作用があるといわれておりまして,自発運動の亢進,呼吸数の増加,脳波覚醒パターンの持続など,興奮作用を示します。したがって麻黄の入っている薬を飲みますと,眠れなくなる人がありますし,また中枢性の痛覚閾値を上げて鎮痛効果をもたらします。
またアドレナリンに似た交感神経興奮作用もありまして,散瞳,心拍出量増加,血管収縮,血圧上昇,気管支平滑筋の拡張作用があります。ですから麻黄の入っている薬を飲みますと,脈拍数がふえて,動悸が起こってきますので,重い心疾患のある人にこれを使う時は注意を要します。そのほかラットでは血圧降下作用,鎮咳作用がありますので,麻黄の入っている薬は咳の時に用います。また抗アレルギー作用もあるといわれておりますので,喘息のようなアレルギー疾患のものによく使われます。そのほかプロスタグランディン生成阻害作用やBUNの低下作用があるようであります。
味は辛くてわずかに苦く,体の冷えを温める作用があります。喘息様の呼吸困難や咳嗽を止め,利尿作用,発汗作用があるといわれており,むくみを呈している時とか,関節の腫れている場合に,その水分を取るといわれております。それから悪寒のある場合,あるいは発汗の少ない場合,鎮痛作用を応用して身体疼痛,関節痛のあるときなど,いろいろな場合に使われます。
次に陳皮ですが、ミカン科のウンシュウミカンまたはその近縁植物の成熟したものの果皮を乾燥させて使います。精油成分とかフラボン配糖体が含まれています。作用としては中枢抑制作用,抗痙攣作用,抗炎症,抗アレルギー作用があるといわれていますが,漢方では辛苦で温の作用があるといわれています。そして健胃剤であり,気剤であり,湿を逐うもので,気道の中や胃の中の水分を乾かす作用がありますので,いろいろな漢方によく配合されるものであります。
柴胡はミシマサイコの根を使いまして,saikosaponinが含まれており,いろいろな研究がされています。そのほかステロール,脂肪酸が入っており,中枢抑制作用,平滑筋弛緩作用,抗消化性潰瘍,肝障害の改善作用があるといわれており,慢性肝炎のようなものには小柴胡湯(ショウサイコトウ)のような柴胡剤が頻用されます。そして抗炎症作用,抗アレルギー作用,ステロイド様作用などと,広く研究されており,われわれは1日も柴胡がなくてはいられないわけです。味は苦く微寒,すなわち微かに熱をさますといわれており,少陽病期に使われますので,熱をさます作用があります。主として心下部より季肋部にかけての膨満感を訴え,抵抗,圧痛の認められる症状を治すとか,また悪寒と熱が交互にくるもの(これは少陽病の熱型)あるいは腹痛,心窩部がつかえて硬く緊張しているものを治すといわれています。これらが肝疾患や胃疾患に柴胡を使う根拠になっているわけであります。
厚朴はモクレン科ホオノキの樹皮であり,精油成分がたくさん入っております。作用と成ては筋肉の弛緩作用,抗痙攣作用があるといわれており,神経筋接合部の神経伝達をブロックして,クラーレ様作用が認められるということから,筋肉の緊張や痙攣する場合に厚朴の入っている薬を使います。それから鎮静作用があるといわれます。そのほか,消化性潰瘍を治す力があるとか,抗炎症,抗アレルギー作用が認められるとか,抗菌作用があるといわれており,味は苦辛で,温める作用があります。主として胸部,腹部の腫脹,膨満を治し,また腹痛も治すといわれています。私たちは神経の安定作用があるのではないかと思っております。
杏仁はバラ科のホンアンズおよびアンズまたはその近縁植物の種子で,主要成分としてはアミグダリンが有名で,青酸配糖体があり,脂肪分,ステロイドが入っているといわれています。薬理作用としては卵胞ホルモン活性作用があるという報告があります。味は苦くて,体を温め咳をとめる,肺を潤したり,腸を潤して便通をつけるとか,また胸にたまった水分や痰などを治すとしております。したがって呼吸困難,咳嗽を治す,また息切れ,心窩部が膨満して痞えて痛むもの,胸の痛みを治すといわれています。
蘇葉はシソの葉です。シソ科のシソの葉または近縁植物の葉および枝先を乾燥させて使います。精油成分が多く,よい香りがします。これには鎮静作用,免疫賦活作用,抗菌作用があるといわれ,味は辛く,体を温め,発汗作用があり,気を巡らす作用があります。シソの葉が入っているもので有名なのは香蘇散(コウソサン)でありまして,魚の中毒や魚に当たって蕁麻疹が出た時によく使いますが,シソの葉は魚の毒を消す妙薬であるといわれています。体の発汗によって表面にある病邪を逐ったり,気を巡らしたり,心窩部の痞えを消散する消化賦活作用があるとか,解毒作用があります。
甘草はマメ科植物の根およびストロンで,grycyrrhizinが主成分でありまして,鎮静,鎮痙作用,鎮咳作用があります。またヨーロッパでは胃潰瘍の薬として使われまして,抗消化性潰瘍作用,あるいは胆汁排泄促進作用,肝炎に対する作用,あるいは抗炎症作用,抗アレルギー作用,ステロイドホルモン様作用など非常に多くの薬効が研究されております。これは甘くて,ほかのものと一緒に使うと,薬効を調整するとか,飲みよくなるということが認められており,急性病を治すといわれています。
■現代における用い方
以上のような生薬の組み合わせの神秘湯はどんな時に使うかと申しますと,麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)から石膏(セッコウ)を去って,半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)より半夏(ハンゲ)と茯苓(ブクリョウ)と生姜(ショウキョウ)を去り,2方を合わせて柴胡と陳皮を加えたものであるという説明もあるくらいですので,麻杏甘石湯的な作用があると思いますし,厚朴,陳皮が入っていますから,半夏厚朴湯的な作用もあり,柴胡が入っていますので,小柴胡湯的な感じもあるということで,この薬を使えばよいのではないかと思います。
以前に細野史郎先生のところで,神秘湯を気管支喘息に使って悪化したというご報告がありました。そのほかにもう1人報告がありました。1つは呼吸困難がひどくなって,呼吸が一時停止するくらいひどくなったといわれていますし,もう1つも咳がひどくなって,呼吸困難が加わって病気が悪化したという例も報告され,それ以来神秘湯を使う人が減ったといわれています。
しかし私は神秘湯を大変愛用しておりまして,悪化した例を経験しておりませんし,効くという印象を持っております。鑑別で一番問題になると思うのは,小青竜湯(ショウセイリュウトウ)だろうと思います。小青竜湯も神秘湯も,ともに喘息に使いますが,小青竜湯は「心下水気あり」というのが一番の目標の1つでありまして,痰が多いというのが目標であります。ところが,神秘湯を使うのは呼吸困難が目標でありまして,腹証からいえば胸脇苦満があり,呼吸困難が強く,かぜをひいて咳が出ると喘息が悪化するというものに使って,私の感じでは非常に効果があるという印刷を持っています。ですから,患者hよく見て神秘湯を使えば,そんなに悪化を心配することはないだろうと思っております。
『明解漢方処方』 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.89
神秘湯(しんぴとう) (外台秘要方)
処方内容 麻黄五・〇 杏仁四・〇 陳皮二・五 柴胡二・〇 蘇葉一・五(一五・〇)
通常浅田流処方に従って更に厚朴三・〇 甘草二・〇を加える。
必須目標 ①呼吸困難 ②咳嗽 ③胃腸は丈夫
確認目標 ①喀痰は少ない ②喘息発作恐怖症。
初級メモ ①比較的病歴の古い喘息に用いる。同名異方が多いので治験例(ことにに古人の)を読まれるときは、内容薬味に注意する必要がある。
②後世方特有の投網式な内容で、陽証の麻黄、杏仁(麻杏甘石湯の主薬)に陰証の厚朴、蘇葉(半夏厚朴湯の主薬)と体質改善の意味の柴胡と胃腸薬陳皮を加え、広範囲の学管支喘息に効果のあるように計っていて,浅田流では、本方を長服すれば喘息は根治するという。
③ただし証を誤ると、逆に窒息寸前の呼吸困難を起すとの発表もある。そしてその原因は古方には絶対見当らない柴胡と麻黄の組合せによるのではないかという。確かにこの組合は配合禁忌の疑いがあると思われる。
適応証 気管支喘息。肺気腫。悪阻。
文献 「喘息を語る」 馬場 他 (漢方の臨床3、1、32。3、3、24。3、5、3)
【副作用】
重大な副作用と初期症状
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
2) ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
[理由]
厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。
[処置方法] 原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等 により電解質 バランスの適正化を行う。
3)本剤にはセッコウが含まれているため、口中不快感、食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢 等の消化器症状があらわれるおそれがある。
その他の副作用
自律神経系 | 不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮等 |
消化器 | 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等 |
泌尿器 | 排尿障害等 |
自律神経系
[理由]
本剤には麻黄(マオウ)が含まれているため、不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興 奮等の自律神経系症状があらわれるおそれがある為。
[処置方法] 原則的には投与中止にて改善するが、病態に応じて適切な処置を行う。
消化器
[理由]
本剤には麻黄(マオウ)が含まれているため、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等の消化器症状 があらわれるおそれがあり
[処置方法]
原則的には投与中止により改善するが、病態に応じて適切な処置を行う。
泌尿器
[理由]
本剤には麻黄(マオウ)が含まれているため、排尿障害等の泌尿器症状があらわれるおそれがある為。
[処置方法] 直ちに投与を中止し、適切な処置を行う。
『漢方医学』 Vol.29 No.2 2005
漢方重要処方マニュアル 基礎と実践の手引き
稲木 一元著 ( (財) 日本漢方医学研究所/青山稲木クリニック )
【付記】 神秘湯で喘息の悪化する例があるとする説について これは,細野史郎の 「大人の喘息に神秘湯を一日分与え, まさに窒息死にまで追いやらんとしたことがありました」 という発言,およびこれを追認する武藤の説 に始まるが, 細野の発言は説明不充分であり,武藤の論も解釈の分かれる 内容である.大塚敬節は 「神秘湯のせいじゃないでしょう」 と言い,矢数道明も 「私は相当数神秘湯を用いたが,まだひどい悪化例はない」 という.生薬アレルギーなども考えられるので細野の説を否定はできないが,頻度はかなり低いと思われる。
※細野史郎,大塚敬節,矢数道明,他:座談会・喘息を語 る.漢方の臨床,6 (5) :36~44,1959
※武藤敏文:神秘湯異変.漢方の臨床,7 (8) :16~17, 1960