健康情報: 小青竜湯(しょうせいりゅうとう) の 効能・効果 と 副作用

2011年9月20日火曜日

小青竜湯(しょうせいりゅうとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
 本方は表に邪があり心下 に水毒のあるものに用いる。従って感冒によって持病的に起る喘息性の咳嗽に用いてよく奏効する。その目標は喘鳴・息切れを伴う咳嗽で、泡沫水様の痰を喀出 する。熱はあっても無くてもよい。心下部はしばしば抵抗を増す。腹部は比較的軟らかい。尿量は減少する者が多い。
 本方はまた急性の浮腫に用いら れる。心下部痞塞感・喘咳を伴う場合は殊に適当である。従って本方の応用は喘息性気管支炎・気管支喘息・百日咳・肺炎・湿性胸膜炎・ネフローゼ・急性腎 炎・関節炎・結膜炎等である。即ち水分の停滞を来すような一種の素地があって、それが感冒などによって誘発されて或は喘咳となり、或は浮腫となり、或は胸 膜炎・肺炎・関節炎等となる者を治するのである。
 薬能についていえば、桂枝・麻黄・細辛・乾姜は血行を盛んにし、欝血を去るから、喘咳・浮腫を治する。芍薬は水毒の停滞を動かし、半夏はそれを小便に利する。五味子は咳嗽を治する。
 本方の症で病状が激しく、煩躁を現わす場合には石膏を加えて用いる。


『漢方精撰百八方』
40.〔方名〕小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
〔出典〕傷寒論、金匱要略

〔処方〕麻黄、芍薬、乾姜、甘草、桂枝、細辛各2.5 五味子3.0 半夏5.0

〔目標〕証には、咳、喘、上衝し、頭痛、発熱、悪風し、或いは乾嘔する者を治すとある。
 水毒があり、眩暈、尿利減少、胃内停水浮腫等の水毒症状を有する者が、外邪により即発されて、咳、喘を発し、上衝、頭痛、悪風、嘔気等の症状を表すものを目標とする。
脈は浮数、細数で緊ではない。時には下痢し、裏急後重を伴う者もある。 〔かんどころ〕水毒症状をもっていたものが咳、喘を発した場合に適用される。咳が主で、喘は従であり、痰も鼻汁も水溶性で量が多いのが特徴である。ぜいぜいいう喘鳴がある、うすい痰が多い、水洟がよく出るといった症状がある。水毒症状は、胃内停水(胃部振水音)、軽度浮腫、尿利減少、眩暈等にあらわれている。

〔応用〕
(1)感冒、気管支炎等で、熱候があり、咳、喘があり、尿不利、乾嘔、眩暈等があり、脈が数なるもの。 (2)気管支喘息。湿性の喘息に効あり。即ち喘鳴があり、ぜいぜい言い、痰は比較的うすく量が多い。心下部振水音等の水毒症状を見出だす。咳喘強く、逆上が甚だしく、脈に力のあるものは石膏5.0~7.0を加味すると効果がある。
(3)百日咳、肺炎、これも喘鳴があるものに効がある。咳逆するものには石膏を加える。
(4)ネフローゼ、腎炎。
(5)アレルギー性鼻炎。鼻がつまり、水洟が出やすい、それにほかの水毒症状が伴っているアレルギー性と称せられる鼻炎によい。
(6)浮腫性の関節炎  本方は苓甘姜味辛夏仁湯去加方である。麻黄があり、小青竜湯という名があるため、強い薬方のような感があるが、大青竜湯と違いその作用は強くない。水毒症状があって、咳、喘があるものに広く用いられる。気管支喘息の場合は熱候がなくてもよい。同じく喘息によく用いられる麻杏甘石湯との違いは、本方は水毒症状が著明で、渇も少なく、発汗傾向もない。麻杏甘石は、発汗があり、渇があり、喘鳴も本方のように湿性でなく、分泌量が少ないように思う。
伊藤清夫


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
5 麻黄剤(まおうざい)
 麻黄を主剤としたもので、水の変調をただすものである。したがって、麻黄剤は、瘀水(おすい)による症状(前出、気血水の項参照)を呈する人に使われる。なお麻黄剤は、食欲不振などの胃腸障害を訴えるものには用いないほうがよい。
  麻黄剤の中で、麻黄湯葛根湯は、水の変調が表に限定される。これらに白朮(びゃくじゅつ)を加えたものは、表の瘀水がやや慢性化して、表よ り裏位におよぼうとする状態である。麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)・麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)は、瘀水がさらに裏位におよび、筋肉に作用 する。大青竜湯(だいせいりゅうとう)・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)・越婢湯(えっぴとう)は、瘀水が裏位の関節にまでおよんでいる。
6 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)  (傷寒論、金匱要略)
 〔麻黄(まおう)、芍薬(しゃくやく)、乾姜(かんきょう)、甘草(かんぞう)、桂枝(けいし)、細辛(さいしん)、五味子(ごみし)各三、半夏(はんげ)六〕
  表に邪、心下や胸中に水毒があり、この瘀水が上方または表に動揺することによって起こる種々の疾患に用いられ、発汗によって表邪を解するもの である。呼吸促拍、呼吸困難、咳嗽、喘鳴、鼻水、喀痰(痰はうすく、量が多い)、乾嘔、浮腫(上半身が多い)、尿利減少などを目標とする。苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)(後出、駆水剤の項参照)は、本方の裏の薬方に相当する。
 〔応用〕
 つぎに示すような疾患に、小青竜湯證を呈するものが多い。
 一 感冒、気管支炎、気管支喘息、百日咳、肺炎、肺気腫その他の呼吸器系疾患。
 一 ネフローゼその他の泌尿器系疾患。
 一 結膜炎、涙嚢炎その他の眼科疾患。
 一 鼻炎、蓄膿症その他の鼻疾患。
 一 そのほか、肋間神経痛、胃酸過多症、関節炎、湿疹など。



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
39.小青竜湯(しょうせいりゅうとう) 傷寒論

麻黄3.0 芍薬3.0 乾姜3.0 甘草3.0 桂枝3.0 細辛3.0 五味子3.0 半夏6.0

(傷寒論)
○傷寒表不解,心下有水気,乾嘔発熱而欬或渇,或利,或噎,或小便不利,少腹満,或喘者本方主之(太陽中)
○傷寒心下有水気,欬而微喘,発熱不渇「服湯巳渇者,此寒去欲解也」本方主之(太陽中)

(金匱要略)
○病溢飲者,当発其汗,本方主之(痰飲)
○夫心下有留飲,其人背寒冷,如手大(宜本方)(痰飲)
○欬逆倚息,不得臥,本方主之(痰飲)
○婦人吐涎沫,医反下之,心下即痞,当先治其吐涎沫,本方主之(婦人雑病)


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社

 急性発熱症状後尿量減少し,胸内苦悶,胃部に水分停滞感があり,喘鳴を伴なう泡のような稀薄な喀痰の多い咳嗽があるもの。あるいは鼻汁の多い鼻炎や流涙の多い眼病の如く分泌液過多のもの。慢性期には熱の有無には関係なく応用できる。本方は急性発熱症状後の亜急性症状に応用される場合が多く,通常自然発汗(盗汗)がある場合には用いてはならないが,強い咳の発作時に発汗するような場合,短期間用いてようことがある。本方適応症は通常口渇の訴えは少なく従って口渇の著しい咳嗽,気管支喘息には本方より麻杏甘石湯を,また下からこみ上げてくるような劇しい咳で喀痰は少量でねばく喀出困難な場合は、麦門冬湯がよい。腎炎,ネフローゼ,関節炎,眼科疾患に応用する場合,越婢加朮湯五苓散も用いるが,その鑑別は越婢加朮湯の項を参照すること。本方を服用後,食欲不振,頭痛,不眠など訴える場合は小柴胡湯あるいは柴胡桂枝湯で治療すればよい。また浮腫を生じた場合は五苓散に転方すること。なお本方は衰弱の甚だしい患者には投与してはならない。虚弱体質に長期にわたって服用させる必要のある場合には小柴胡湯と合方することが望ましい。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○平素から心下に停水のある人が,感冒やそのほかの熱病にかかって,その刺激で咳嗽,喘鳴,乾嘔を発するものである。このときあるいは口渇があり,あるいは尿利が減少し,ときには下痢を伴うことがある。またこのときは熱のあることもないこともある。
○呼吸促進(息切れ)や呼吸困難に苦しみ,甚だしいときは横になってねられず,坐ったまま物によりかかってあえぎ苦しむ。このさい,あるいは咳が出たり,水のような薄い痰が多量に出たり,涎沫を吐いたりする。
○急性の浮腫を上半身に生じて,食欲不振,悪心,嘔吐などの胃腸障害のないもの。
○小青竜湯の腹証は一定のものがなく,心下部に振水音のあるものもないものもある。また心下部が少し膨満して,しかも軟らかいものがある。これは小児に多い。
○浮腫と咳嗽の強いものには,小青竜湯に石膏を加えて用いるとよい。越婢湯よりも効果があるという。(餐英館療治雑話)


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は表に邪があり,心下 に水毒のあるものに用いる。従って感冒によって持病的に起る喘息性の咳嗽に用いてよく奏効する。その目標は喘鳴,息切れを伴う咳嗽で,泡沫水様の痰を喀出する。熱はあっても無くてもよい。心下部は屢々抵抗を増す。腹部は比較的軟い。尿量は減少する者が多い。本方はまた急性の浮腫に用いら れる。心下部痞塞感,喘咳を伴う場合は殊に適当である。従って本方の応用は喘息性気管支炎,気管支喘息,百日咳,肺炎,湿性胸膜炎,ネフローゼ,急性腎炎,関節炎,結膜炎等である。即ち水分の停滞を来すような一種の素地があって,それが感冒などによって誘発されて或は喘咳となり,或は浮腫となり,或は胸膜炎,肺炎,関節炎等となる者を治するのである。薬能についていえば,桂枝,麻黄,細辛,乾姜は血行を盛んにし,鬱血を去るから,喘咳,浮腫を治する。芍薬は水毒の停滞を動かし,半夏はそれを小便に利する。五味子は咳嗽を治する。本方の症で病状が激しく,煩躁を現わす場合には石膏を加えて用いる。


漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
 構成 桂枝湯を基本としたもので,桂草類志衣黄があるから表証があり,乾姜や細辛の温薬があるから上又は中部に寒があり,五味子,半夏があるから水と気の上衝がある。麻黄,細辛,乾姜,半遊は心下或は胸中に停水がある。従って,小青竜湯の証というものは裏水(心下又は胸中)があってそれが上衝して表に及ぶが,若くは表熱によって水気上衝を起すかである。
 白用 1. 発熱症状があって喘咳を伴うもの。
 太陽病中篇に「傷寒,表解せず,心下に水気有り,乾嘔発熱し,而して欬し,或は渇し,或は利し,或は噎し,或は小便不利少腹満し,或は喘するもの。」というのを分析すると,表解せず,だから発熱悪寒,或は悪風頭痛脉浮数などがある。この表熱によって裏気の上衝を起し,素質的に在る心下の水気を上衝させ,或は表に浮泛させる。乾嘔は気の上衝により,欬喘は水と気の上衝により,渇は心下に水が停滞して口咽への分布が不順であるのと熱によって乾くのとを兼ねており,利は心下の水が下って下利になったと解釈され,小便不利,少腹満は水が心下に偏在して小便になって出て行きにくいのと,且つ小便は気が下るにつれて出るものだから,その気が下らずに反って上衝している今の場合にはなお更小便は減って来る。小便が不利するから下腹部が膨満感を起すようになる。この条文は小青竜湯使用の第一眼目でもあり,実際にこの条文に従って応用して行くことが一番多い。なおこの条文の要点を挙げたのが「傷寒,心下に心水有り,欬して微喘,発熱し,渇せず。湯を服し巳りて渇する者はこれ寒去りて解せんと欲するなり。」(太陽病中篇)で,小青竜湯証には裏に寒があるが細辛乾姜のような温薬で温めてその寒を除くと寒は去り熱を帯びて来て熱のために渇を生ずるようになる。寒去り解せんと欲すとはそれを云ったものだ。以上の適応症状の内で表熱症状と,喘咳に使うことが最も多い。咳はしめった咳で,ぜいぜい,ぜこぜこ,ひゅうひゅうの如き喘鳴を伴うのが普通で,決して空咳のことはない。また事実気管支喘息のような呼吸困難,喘鳴,咳嗽のあるときにも使う。痰は唾のように薄くて量が多い傾向がある。非常に濃い痰や或は膿性の痰には本方は向かない。発熱症状と喘咳のあるものとして急性気管支炎,急性肺炎,感冒兼気管支喘息,百日咳,湿性肋膜炎,肺結核(滅多に使わないが)などに応用する。(中略)

 運用 2. 熱や発熱症状がなくても水気上衝に使う。喘咳その他が表熱によるものではなく,自発性に水気上衝を起したと解釈される場合で,「欬逆倚息,臥すことを得ざるもの」(金匱要略痰飲)もその一つである。倚息は寄かかって坐る意味だから普通に横臥が出来ず呼吸が苦しいので坐っていることである。気管支喘息,肺気腫などに応用される。「婦人涎沫を吐す。医反って之を下し,心下即ち痞す。先ずその涎沫を吐すを治すべし」(金匱要略婦人雑病)も水気上衝の例だが,この条の意味は涎沫は唾又は胃液が口き出て来るもので胃が冷え水が停滞しているときに起る容態と考えられる。胃が冷えているのは温め補力すべきなのに反対に下すと胃は益々虚冷に陥り,そのために心下部が気痞を起し痞える感じを現わす。この時は先ず小青竜湯の乾姜で胃冷を温め,水気上衝の涎沫を治しておき,涎沫が止み胃冷が回復した所で瀉心湯で心下の痞えを治すのが順序であるとの意である。婦人でなくとも唾の多い人,よだれ,酸い胃液が口に出るものなどに本文を使い得るのであって之を応用して唾液分泌過多症,蛔虫による唾液過多,胃酸過多症による生唾の多いものなどを小青竜湯で治すことが出来る。(中略)
 水気上衝が口からでなく眼から出ると解釈されるのは小青竜湯を流涙に使う場合である。即ち急性慢性の結膜炎,涙嚢炎,虹彩炎,その他の炎症性訓患で,充血と流涙の多いときに本方を用いる。充血を気上衝と見るのだから,鬱とうしい感じが強い場合であって疼痛を伴うことが多く,自覚症が少いときは本方は向かない。涙は水が上に昇って来たと見るべきだから涙の少いもの,眼やにが多いものなどにも矢張り向かない。鑑別を要するのは葛根湯:肩が張り涙は少く或は全然無くてただ充血だけする。苓桂朮甘湯:充血流涙は共通するが,苓桂朮甘湯は虚証で顔色貧血性,眩しい感じが強く,動悸を訴えるものが多い。従って腺病質性フリクテン性結膜炎などに使う。
桃核承気湯:充血,鬱血が主で,便秘し,足が冷えてのぼせる。流涙は殆どない。
瀉心湯:充血が主で便秘し,のぼせるが足は冷えず鬱血症状もない。流涙は殆どない。

 運用 3. 水気が体表に溢れ,浮腫,疼重,分泌などを生したときに使う。心下の水気が上に昇らずに体表にあふれて行く場合で,金匱要略痰飲病に「病,溢飲の者は当にその汗を発すべし。」というのがそれである。溢飲とは同書に「飲水流行四肢に帰し,当に汗出づべくして汗出でず身体疼重す。これを溢飲といふ。」と定義しているのを参照する。これにより腎臓炎,ネフローゼその他の浮腫に小青竜湯を使うが,発熱有無には関しない。但し脉が浮弱であることを要する。発熱があれば脉は浮弱数になり無熱なら浮弱だけである。
類方の鑑別 大青竜湯:病勢が強くて煩躁し脉も浮緊である。
越婢加朮湯:脉沈
苓甘姜味辛夏仁湯:表熱症状はなく脉沈
五苓散:発熱,浮腫は共通するが五苓散では煩渇,尿利減少がある。本方にそれがあっても極く軽い。

 運用 4. その他心下に水気有りを留飲として留飲症状に使うことがあるそれは金匱要略痰飲病に「それ心下に留飲有れば其人背寒冷すること手大の如し」背中で手掌大の部分に冷感を訴えるのが目標になる。胃病ばかりでなく各種の病にも之は応用出来る。背中が冷えるというものに附子湯も白虎加人参湯もあるが,それらは範囲が広く,且つ部位が不定だが,小青竜湯では概して第6~第10胸椎の高さの間で限局性にそれを感じる。
 「留飲の者は脇下痛み,缺盆に引き,咳嗽するときは則ち轍ち已む。」季肋部,季肋下部,側胸部等が痛み,それがぼんのくぼに放散し,欬をすると痛みが止まるというのだが,一書には已むを転じ甚しとなっている。そういう場合も有り得ると思う。浅田宗伯先生の方函口訣に「胸痛頭疼悪寒汗出るに発汗剤を与ること禁法なれども欬して汗ある症に矢張り小青竜湯にておし通す症あり。(中略)一老医の伝に此場合の汗は必臭気甚しを一徴とすべし。」というのもこの場合の応用と見てよいであろう。肋間神経痛,肋膜炎,その他胸痛,胸下痛があり,咳を伴う疾患に応用することがある。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此の方は表解せずして,心下水気ありて咳喘する者を治す。又溢飲の咳嗽にも用ゆ。其人咳嗽喘急寒暑に至れば必ず発し,痰沫を吐て臥すること能はず,喉中しはめくなどは心下に水飲あればなり。此方に宜し。若し上気煩躁あれば石膏を加ふべし。



漢方の臨床〉 第8巻 第11号・第12号
          第9巻 第1号・第6号

小青竜湯について     竜野 一雄先生

 1.処方の構成
 麻黄(節を去る),芍薬,細辛,乾薑,甘草(炙),桂枝(皮を去る) 各3両(3.0),五味子半升(3.0),半夏(傷寒論は洗ふ,金匱要略は湯洗) 半升(5.0)
 右八味水一斗(400)を以て先づ麻黄を煮て二升(80)を減じ,上沫を去り諸薬を内れ,煮て三升(120)を取り,滓を去り,一升(40)を温服す。
 一両は1.3グラムに相当するが実際には面倒をはぶいて1.0ぐらむに換算して使って充分に効果がある。水一升は20c.c.だが,実際的には少なすぎるので倍量の40c.c.使うことにした。一升20c.c.の枡を作って計算すると五味子一升は6.0になるので半升を3.0とした。浅田流その他では2,3粒しか用いないが,それは味のわるさを考慮したからであろうが,薬効上からは味のわるさをいとわず多量に用いるべきである。半夏半升は10.0に該当するから,半升を5.0とした。
 麻黄の節を去るのは節間はエフェドリンを多く含み,節の部分はエフェドリンに対して拮抗作用があるから,エフェドリンの作用を滅殺せぬために節を去るとも解釈できるが,果してエフェドリンだけが麻黄の主作用であるかどうかはまだ断言できない。麻黄だけ先に煮て上沫を去るのは,本草書には煩を起さぬためだと説明されているが,水に溶けやすく,軽くて上に浮ぶ,何らかの副作用を呈する微量成分があるためかも知れない。しかしその成分や作用についてはまだ全然追及されていない。中国薬物の加工や煮法にはしばしば料理の仕方と共通した方法があるので,麻黄の場合もごく単純に考えると湯がいてアクを除くに類している。しかし実際には必ずしも目に見えるほどの上沫があるとは限らない。或は麻黄の新旧により,新しいものは沫が出るが旧いのになると沫は出ないとの説もある。
 甘草を炙るのは,成分的には皮の部分の有害成分を加熱分解して無害にするためのようだが,同時に甘味を増すためでもある。
 桂枝の皮を去るのは,表皮を除去して桂皮油を多く含んだコルク層の部分を露出して浸出を容易にするためであろう。
 半夏を洗うとか湯洗するとかの意味はよくわからないが,水に溶けやすい何かの刺戟成分を除去するためであろう。
 小青竜湯の内容をみると,桂枝湯麻黄湯の合方に加減したような構成になっているが,麻黄が最初に主薬として挙げられ,あたかも麻黄湯の系統であるかのごとき印象を受け,便宜上でも習慣的にも例えば喜多村直寛先生の傷寒雑病類方などのように麻黄湯の類方として分類されているが,実は桂枝湯の系列に入るべきものであろう。それにしてもなぜ桂枝をずっと後の方に挙げたかという点については私には全くわからない。
 
  



【参考】
※餐英館療治雑話(さんえいかんりょうじざつわ):目黒道琢著。
傷寒論、金匱要略の処方、また、唐宋以下本朝経験方および丸散処方、諸病の区別、口訣、経験、諸薬の試功を載せ、今日でも運用価値の高いもの。古方、後世方いずれに偏することなく採用しており、きわめて臨床的で現代漢方にも大きく貢献している。


※浮泛(ふはん) (名)スル 〔「浮」「泛」ともに浮かぶ意〕うわついていること。

※倚息(いそく):ものに寄りかかって息をする。呼吸困難。


(効能・効果)
【ツムラ・他】
  • 次の疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙//気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒
  • 気管支炎

【コタロー】
  • 次の疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙//気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒
  • 発熱症状後、尿量減少し、胸内苦悶、胃部に水分停滞感があり、喘鳴を伴う喀痰の多い咳嗽があるもの、あるいは鼻汁の多い鼻炎や、流涙の多い眼病の如く、分泌液過多のもの//気管支炎

【三和】
  • 次の疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙//気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒
  • 咳とともに稀薄の喀痰がでて、呼吸困難、喘鳴あるいは水鼻などを伴うものの次の諸症//気管支炎
【一般用漢方製剤承認基準】
〔効能・効果〕
体力中等度又はやや虚弱で、うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出るものの次の諸症:
気管支炎、気管支ぜんそく、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症



【重い副作用】
  • 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
  • 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
  • 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が褐色。

【その他】
  • 胃の不快感、食欲不振、吐き気、吐く、腹痛、下痢
  • 動悸、不眠、発汗過多、尿が出にくい、イライラ感
  • 発疹、発赤、かゆみ


参考
小児の投与目安量
未熟児 新生児 3ヶ月 6ヶ月 1歳  3歳 7歳半 12歳 成人
1/10    1/8   1/5   1/5   1/4  1/3  1/2   2/3   1