健康情報: 小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう) の 効能・効果 と 副作用

2015年1月5日月曜日

小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう) の 効能・効果 と 副作用

明解漢方処方 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.85
小柴胡湯(しょうさいことう) (傷寒論,金匱)

処方内容 柴胡七・〇 半夏五・〇 黄芩 大棗 人参各三・〇 甘草 生姜二・〇(二五・〇)


(中略)
初級メモ
②桔梗三・〇 石膏一〇・〇を加えて炎症性疾患、例えば扁桃腺炎、中耳炎、耳下腺炎、乳房炎、るいれきなどに用いる。



『図説 東洋医学 <湯液編Ⅰ 薬方解説> 』 
山田光胤/橋本竹二郎著 
株式会社 学習研究社刊

小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)

  やや虚  
   中間  
  やや実  
   実   

●保 出典 本朝経験

目標 体力中等度以上の人。咽喉、鼻,耳などの亜急性,慢性の炎症性諸疾患。季肋部に苦満感を訴え,肋骨弓下部に抵抗・圧痛(胸脇苦満(きょうきょうくまん))を認める。微熱があることが多い。食欲不振,悪心(おしん),嘔吐(おうと),口中の不快感,舌の白苔などのほか,口渇(こうかつ)を伴うことがある。

応用 咽頭炎,扁桃(へんとう)炎,扁桃周囲炎,喉頭炎,耳下腺炎,顎下腺炎,頸部リンパ節炎,中耳炎,外耳炎,鼻炎,副鼻腔炎。
(その他:感冒,流感,気管支炎,甲状腺炎)

説明 小柴胡湯に桔梗と石膏を加えた処方である。桔梗は,咽喉部の消炎,鎮痛および袪痰(きょたん),鎮咳(ちんがい)の作用があり,石膏は消炎の効がある。

小柴胡湯)柴胡(さいこ)6.0g 生姜(しょうきょう)4.0g 甘草(かんぞう)2.0g 半夏(はんげ)5.0g 黄芩(おうごん)3.0g 人参(にんじん)3.0g 大棗(たいそう)3.0g
石膏(せっこう)10.0g 桔梗(ききょう)3.0g


『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊
p.237
<註>

小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)
 小柴胡湯に袪痰・排膿薬である桔梗と,解熱・消炎薬である石膏を加えたもの。小柴胡湯の適応があ改aて,のどが腫れて痛む場合,ことに熱がある場合に用いる。
 小柴胡湯は熱証用の方剤であるが,それにさらに石膏という強い寒性薬が加わっているから,寒証の者には用いることはできない。


『健康保険が使える 漢方薬 処方と使い方』
木下繁太朗 新星出版社刊


小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)
本朝経験方(ほんちょうけいけんほう)
 ツ

どんな人につかうか
 小柴胡湯(しようさいことう)に桔梗(ききよう)、石膏(せつこう)を加味したもので、口が苦(にが)い、季肋部(きろくぶ)に苦満(くまん)がある。食欲不振、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、舌に白い舌苔(ぜつたい)がつくなどの症状があって,咽喉、鼻、耳、気管支などに痰や膿を伴う炎症症状が加わったものに用います。

目標となる症状
 ①口苦(こうく)、食欲不振、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、白苔(はくたい)、往来寒熱(おうらいかんねつ)、胸脇苦満などの小柴胡湯(125頁)の症状がある。②上気道、耳鼻、咽喉、気管などの炎症、皮膚、粘膜の炎症が強く、痰や膿を伴う。

 胸脇苦満。

 弦脈(げんみゃく)、細く沈んだ脈

 舌質紅、白苔。


どんな病気に効くか(適応症) 
 咽喉がはれて痛む次の諸症、扁桃炎扁桃周囲炎。耳下腺炎、中耳炎、頚部(けいぶ)リンパ腺炎、蓄膿症、急性化膿性甲状腺炎、風邪で膿痰のでる場合(耳鼻科、咽喉科、呼吸器の疾患に広く応用できる。


この薬の処方
 柴胡(さいこ)7.0g。半夏(はんげ)5.0g。黄芩(おうごん)、大棗(たいそう)、人参(にんじん)各3.0g。、甘草(かんぞう)2.0g。生姜(しようきよう)1.0g 桔梗(ききよう)3.0g。石膏(せつこう)10.0g。

この薬の使い方 
前記処方を一日分として煎じてのむ。
ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏(しようさいことうかききようせつこう)エキス顆粒(かりゆう)、成人一日7.5gを2~3回に分けて食前又は食間にのむ。

使い方のポイント 
実用的には小柴胡湯のエキス剤と、桔梗石膏(ききようせつこう)のエキス剤を既用しても良い。
咽喉頭部の痛み、腫張(しゆちよう)、発赤が強く激しい時には、桔梗湯(57頁)を用いる。


処方の解説
 小柴胡湯しょうさいことう)(125頁)に桔梗石膏(56頁)を加えたもの。桔梗(ききよう)は主に膿が混じた喀痰や化膿性の腫(は)れものを治し、咽喉の痛みを治します。鎮痛、鎮静、解熱、鎮咳、去痰(きょたん)作用があり、血糖をさげ、末梢血管を拡張し、抗潰瘍(こうかいよう)作用がある。石膏(せつこう)は天然の含水硫酸(がんすいりゆうさん)カルシウム(CaSO4・2H2O)で、激しい口渇(こうかつ)、うわごと、全身の熱感で苦しみもだえるものを治し、利尿、止渇(しかつ)作用があります。


和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう) [本朝経験]

【方意】 小柴胡湯証の胸脇の熱証による胸脇苦満・心下痞硬・口苦・口渇等と、咽喉の熱証による咽喉化膿・疼痛等のあるもの。

《少陽病.虚実中間からやや実証》

【自他覚症状の病態分類】

胸脇の熱証 咽喉の熱証




主証 ◎胸脇苦満
◎心下痞鞕

◎口苦 ◎口渇

◎咽喉化膿



客証 ○往来寒熱
 側頚部の緊張・
     疼痛・熱感
 微熱 心煩


 疼痛
 発赤
 腫脹




【脈候】 

【舌候】 乾燥した白苔・微黄苔。

【腹候】 腹力中等度。胸脇苦満および心下痞硬があり、時に腹直筋の緊張がみられる。

【病位・虚実】 小柴胡湯の胸脇の熱証が中心的病態であるため少陽病、脈力および腹力より虚実中間からやや実証である。

【構成生薬】 柴胡8.0 半夏6.0 黄芩3.0 大棗3.0 人参3.0 甘草2.0 生姜1.0 桔梗3.0 石膏10.0

【方解】石膏は寒薬であり熱証を冷まして、止渇紙:解熱・消炎・鎮痛作用を持つ。温性の桔梗は排膿・消炎・鎮痛作用を有し、石膏を助けて化膿傾向を帯びた熱証に対応する。


【方意の幅および応用】
 A 胸脇の熱証咽喉の熱証:胸脇苦満・咽喉化膿等を目標にする。
   咽頭炎、扁桃炎、扁桃周囲炎、耳下腺炎、頚部リンパ腺炎、慢性副鼻腔炎、
   アトピー性皮膚炎、急性上気道炎で膿痰の出るもの

【参考】 *小柴胡湯加石膏湯、脳疽(項部の癰疸)、鬂疽、焮熱赤腫する者を治す。若し大便硬く、焮痛甚だしき者は、大柴胡湯之を主る。
『雑病翼方』
*小柴胡湯加桔梗石膏湯、麻疹発して後、胸脇苦満、嘔吐、煩渇し、飲食進まざるを主とす。
 世医又、石膏を恐れる者あり。顧氏曰く、石膏は辛味、色白く、表に達し、淡にして、竅を利す。煆用(火を通し結晶水を除くこと)すれば即ち純なり。痧症(発疹性の疾患)の要は清涼解毒、用いて以って君と為すと、是なり。
『マシン心得続録』
*頭瘟(頭部の丹毒)、小柴胡加桔梗石膏。
『方読便覧』
*耳聾、小柴胡加桔石、毒を解し、核を散ず。
『方聞便覧』
*聤耳(中耳炎)初起、柴胡加石膏湯。
『方読便覧』
*桔梗湯は局所の炎症のみで全身症状を欠くものに用いる。本方は局所のみならず全身の小柴胡湯証を呈している。


【症例】 急性中赤炎
 4歳、男児、体重14kg、以前にも中耳炎をやったことがあり、その時痛い思いをしたから漢方薬をくれという。3日前からカゼを引き近くの医院で薬をもらっているがあまり良くならず咳込みが甚しい。小児喘息といわれている。今日の昼頃から耳が痛みはじめ、歯ぐきまで痛くなってきた。熱は39.4℃であり、顔色は平素は悪いが今は真紅であり手足も熱い。食欲は少ないが、今日は更に低下している。口臭も強い。
 小柴胡湯エキス(内田)0.5g、桔梗石膏(剤盛堂)0.4gを1回分とし、この日に2回服用したところ、翌朝は熱は37.3℃となり、耳痛や歯痛はなくなり、同方を続服して2日目には平熱となった。
大村光明 『漢方の臨床』 23・5・34

カゼと中耳炎とを繰り返す幼児
 6歳の男児。生来カゼをよく引き、その都度、中耳炎を繰り返す。
 中等度の体格、顔色は良い、汗っかき、便通1日1行、食欲ふつう、嗜好食品(生野菜、果物、肉、魚)。舌は淡白色を呈し、腹部は中等度の硬さを呈している。
 小柴胡湯加桔梗石膏を投与し経過を観察した。約1ヵ月服用し終わったころにはカゼを引かなくなり、以来約1年間服用し続けているが、その間1回も中耳炎を起こしていない。
緒方玄芳 『漢方の臨床』 25・10・15


【類方】頓嗽湯〔新妻方〕
    〔方意〕上焦の熱証による激しい難治な咳嗽のあるもの。  《少陽病.虚実中間》
    〔構成生薬〕柴胡5.0 石膏5.0 桔梗2.5 黄芩2.5 桑白皮2.5 梔子1.0 甘草1.0
    〔方解〕柴胡は胸脇の熱証を去る。桔梗は痰を除き、咳を治す。桑白皮を消炎・利尿・鎮咳作用がある。黄芩・梔子は上焦の熱証を去り、石膏は大寒薬で強力な消炎作用がある。甘草は諸薬を調和し、急迫を治す。以上より本方を上焦の熱証による激しい咳嗽に用いる。
    〔参考〕*胃腸の虚弱な小児の慢性咳嗽に用いる。大人の場合には蘇子降気湯・喘四君子湯を用いることが多い。
    〔応用〕 百日咳、犬吠様の痙攣性咳嗽、慢性気管支炎


『古典に生きるエキス漢方方剤学』 小山 誠次著 メディカルユーコン刊
p.570
小柴胡湯加桔梗石膏

出典 『傷寒論』、『金匱要略』、『一本堂医事説約』、華岡青洲経験方


主効 和解少陽、消炎、気道・上部消化管。
    扁桃・咽喉頭部と上部消化管の清熱剤。

組成 柴胡7 黄芩3 人参3 半夏5 甘草2 生姜1 大棗3 桔梗3 石膏10

    小柴胡湯  柴胡 黄芩 人参 甘草 生姜 大棗
    桔梗石膏  桔梗 石膏


解説
 本方は小柴胡湯(558頁)に桔梗石膏(145頁)を加味したものであるが、小柴胡湯加石膏に桔梗湯(140頁)あるいは排膿湯を合方成たものとも、柴胡桔梗湯に石膏散を合方したものとも、また小柴胡加石膏に柴胡桔梗湯を合方ちたものとも解される。
 しかし乍ら、桔梗石膏の論考❽で述べたように、本方は元々小柴胡湯合石膏桔梗湯とでも称すべき、小柴胡湯に石膏・桔梗・甘草という一方を合方した処方である。
 【小柴胡湯】…少陽病傷寒または中風の代表薬で、消炎・解熱・止嘔・健胃・鎮咳・袪痰・鎮静・肝庇護などの多方面に亘る効能を発揮する薬である。
 【桔梗石膏】…気道炎症そのものを消炎・解熱・鎮痛・鎮咳・袪痰して、止渇・除煩する薬である。
 それ故、本方は小柴胡湯の加味方として少陽病傷寒または中風にあって、気道炎症を消炎解熱し、鎮痛・鎮咳・袪痰して口渇を軽減する薬である。尚、一般感冒薬や抗生剤等によって急性胃粘膜糜爛を来たしたとき、小柴胡湯に石膏を加味することにより、呼吸器系のみならず、消化器系にも消炎効果を齎す。このとき多くは舌が厚~薄白苔を呈している。
 総じて気道炎症が盛んなとき、消炎解熱し、一方で鎮咳・袪痰すると共に炎症による疼痛を軽減し、口渇を鎮めると共に、上部消化管の急性炎症も抑制して食欲を回復する薬である。

適応
 感冒、インフルエンザ、口峡炎、扁桃炎、扁桃周囲炎、耳下腺炎、頸部リンパ節炎、蓄膿症、舌炎、口内炎、歯齦炎、急性胃炎など。

論考
 ❶従来、小柴胡湯加桔梗石膏は本朝経験方であって出典は不詳であるとされて来た。桔梗石膏ですら、『蕉窓方意解』巻之下・駆風解毒湯に、「余、本方に於いて石膏大・桔梗中を加え、纏喉風甚だしく咽喉腫痛、水薬涓滴も下らず、言語すること能わず、死に垂んとするものを治す。甚だ妙。……」の用法や『療治経験筆記』巻之下・香川先生解毒剤に、「唯、癬瘡には桔梗石膏を加う」用法や喉の糜爛に大解毒剤去忍冬加桔梗石膏を処方する用法がある位しか追及されなかった。しかし乍ら、著者は桔梗石膏の出典が『一本堂医事説約』であると既に指摘している。
 ❷本方に関する所では、先ず『衆方規矩』巻之上・傷寒門・小柴胡湯に、「傷寒四・五日して寒熱往来あり。胸みち、脇痛み、心(むね)いきれ、嘔吐、頭いたみ、耳きこえず、大便結するを治す。これ、邪気の半表半裏にあるなり」とあって、加減法には「心の中あき満つるには枳殻・桔梗を加う」とある。
 一方、『重訂古今方彙』傷寒・小柴胡湯には、 「傷寒三・四日、脈息弦急にして数、病、少陽経に伝わる也。其の症、頭疼・発熱・脇痛・耳聾・嘔吐・口苦・寒熱往来、此れ、半表半裏にて和解するに宜し」とあって、加減法として「○心中飽満するには桔梗・枳殻を加う。……○渇するには知母・石膏」とある位である。
 ❸『古方節義』巻之中・小柴胡湯には、小柴胡湯の論考⑲の後段に、「又、傷寒・時疫の類、熱凉(さ)めず、咽渇口燥、汗有り、脉長洪にして数なるもの、必ず石膏を加えて用ゆべし。或いは白虎湯を合して柴白湯と云う。然れども只石膏一味を加えて用ゆれば穏にして用い易し。石膏を用ゆる症は発散しても、解熱の剤を用いても、自若として其の熱凉めず、咽渇き、口燥き、舌黄白胎にして大便難く、其の脉洪実にして数、其の上に汗のある症には的方と思うべし。若し熱甚だしく無汗にして脉細緊にしてドカドカと至って急なる者には用い難し。此の証、初め発散が足らぬか、又は下した地、大いに疲れたる人にあるもの也。能く能く察して誤るべからず。尤も石膏は小剤にしては効なしと云う」と記載され、ここに気道炎症が加われば、正に本方の適応である。
 ❹しかし乍ら、本方の出典という面からみれば、桔梗石膏の出典は『一本堂医事説約』と言明したので、必然的に本方の処方例はそれ以後になるはずである。
 浅田宗伯著『先哲医話』巻上・和田東郭には、和田東郭が咽喉腫塞の者に駆風解毒湯加桔梗石膏を冷服させたという治験記載の後、小字双行にて「抽軒曰く、此の証、小柴胡加桔梗石膏亦奇中す。青洲翁曾て之を用う」とあって、既に前著で指摘した。
 即ち、華岡青洲が初めて小柴胡湯加桔梗石膏を処方したとの言明である。実際、『瘍科方筌』には、小柴胡湯加石膏や葛根湯加桔梗石膏が登載されているので、この記載の信頼性は非常に高く、採用しうると考える。
 ❺『橘窓書影』巻之二には、「余、此の病(麻疹)を療するその始め、鋭意に発散・清熱を主とす。葛根加升麻牛蒡子、或いは葛根湯加桔梗石膏にて治する者、若干人。邪気、表裏の間に散漫し、嘔・渇・煩悶・咽痛にて治する者、若干人。……若し熱毒熾盛・疹色赤黯(せきあん)して徧身熱く脇れ、喘脹気急、欬嗽して嘔・渇し、大小便秘濇する者、大柴胡湯加桔梗石膏にて下すべし。……」とあって、麻疹に於ける小柴胡湯加桔梗石膏の適応時期を示している。尚、本記事は浅田宗伯著『橘黄年譜抄』に既述されている。同書は元々『橘黄年譜』三巻からの抄本である。
 ❻『方彙続貂』感冒 附 傷風 瘟疫 発斑 頭瘟 頭風には、「小柴胡湯加桔石湯 春林軒 時毒頭風を治す。 小柴胡方内に桔梗・石膏を加う」とあり、先の『先哲医話』に云う咽喉腫塞の適応から離れて、疫毒による頭風に適応すると記載されている。
 ❼本方の出典としてではないが、『皇漢医学』第弐巻・小柴胡湯に関する師論註釈の中で本方は触れられていて、「小柴胡湯加桔梗石膏湯方 小柴胡石膏湯、小柴胡加桔梗湯を合方す。煎法用法同前。(主治)小柴胡加石膏湯、小柴胡湯加桔梗湯の二証相合する者を治す」とある。尚、煎法用法同前とは小柴胡湯と煎法及び用法が同じと感うことを意味する。ここでは本方名は小柴胡加桔梗石膏湯として、単に小柴胡湯加桔梗石膏という表現より一つの処方としての独立性の意味合いが強い。但し、本方が小柴胡湯加石膏湯と小柴胡加桔梗湯との合方との見解なので、湯本求真は華岡青洲のこの創意工夫を知らなかったことになる。抑々、求真は桔梗石膏としての加味方や『一本堂医事説約』の「一方 石膏・桔梗・甘草』を知らなかったのであろう。
 ❽石原明先生は『漢方大医典』乳腺炎で、「前方(葛根湯または葛根湯加石膏)で熱が下ったら小柴胡湯に桔梗3・石膏5を加えて用いる。軽いものならこれで治る」と記載される。
 また長浜善夫先生は同書・副鼻腔炎(蓄膿症)で、「中肉の人、やや虚弱者などには、この処方(小柴胡湯)が向く、やはり桔梗3.0・石膏5.0などを加味してもよい」とあり、急性扁桃炎では、「発病後二、三日経って熱がなおり、咽頭痛も続いて、食欲もなく、嘔き気を伴うような場合は、この方(小柴胡湯)に桔梗2.0石膏3.0を加えて用いるとよい」とある。
 一方、同じく長浜先生は同書・中耳炎で、「発病後数日たって、なお熱があるような時期に(小柴胡湯を)用いるとよい。また一般に再発を繰り返すような慢性化したものに用いてよく効くことがある。膿の出るものには桔梗2.0を加える」とあり、咽喉炎には、「二、三日経って治らぬものに(小柴胡湯を)試みるとよい。局所的熱感があれば石膏3.0を加える」とも、扁桃肥大とアデノイドには、「アデノイドを伴うもの、頸部のリンパ腺も腫れているようなものにはこの方(小柴胡湯)がよい。石膏2.0を加えて用いる」ともあって、ここでは『皇漢医学』に云う小柴胡湯加桔梗、小柴胡湯加石膏の例が示されている。
 ❾矢数道当先生は『漢方の臨牀』第15巻第10号・温知堂経験録(38)・腺病性体質が小柴胡湯加桔梗石膏でで、「十三才の男子、……。栄養状態も悪く、顔色は蒼白であった。この児は生来の虚弱者で、幼児期には外耳炎で困ったことがあり、腸が弱く、すぐ下利し易い。また風邪をひき易く、かぜをひくと扁桃腺がはれて熱を出す。毎年春秋の気候の変り目には必ず高熱を出しては休養している。一ころ腎炎も起こしたこともあり、鼻がつまり、扁桃腺がはれている。腹証にも胸脇苦満の状が認められた。依て小柴胡湯加桔梗石膏を与え、一年位はのむ必要のある旨を告げておいた。ところが服薬後まもなく風邪をひかなくなり、季節の変り目にも熱を出さず、食慾が進み、肥ってきて、発育がとみによくなり、一年後には全く見違えるように健康児となり、……」という症例を報告されている。
 ❿『漢方診療医典』甲状腺腺腫(附 甲状腺炎)には、「甲状腺炎は比較的まれな病気であるが、急性甲状腺炎で、甲状腺が赤く腫れて痛み、熱のあるものに本方(小柴胡湯加桔梗石膏)を用いて2、3日で全治したことがある」とあり、麻疹には、「発疹後には、一般に小柴胡湯を用い、順調なものはこれで治る。また微熱が続き、肺結核の続発が考えられるような場合にも、この方を用いる。頸部リンパ腺腫脹、気管支炎、中耳炎などが併発した場合は、小柴胡湯加桔梗石膏として用いる。小柴胡湯で効のない場合は柴胡清肝散で奏効することがある」と解説される。更には流行性耳下腺炎では、「2、3日たって、耳下腺が腫れて発熱し、舌に白苔ができ、食欲があまりないものに用いる」とあって、急性・慢性中耳炎では小柴胡湯で、「発病後数日を経過して、悪寒、発熱があり、口苦く、舌に白苔があり、耳痛、難聴、膿汁の出るものに用いる。熱が強くて煩悶・口渇を訴えるものには桔梗3.0g・石膏5.0gを加える」とあり、急性乳様突起炎では、「2、3日経過して、舌白苔、祝王、悪寒、胸脇苦満、食欲不振などのあるものに用いる」と夫々の本方の用法が記載されてい音¥
 その他、副鼻腔炎(上顎洞炎)、急性扁桃炎(アンギナ)、腺様増殖症(扁桃肥大症)(アデノイド)には孰れも小柴胡湯を用いて、加桔梗石膏の用例が呈示されている。
 ⑪緒方玄芳先生は『漢方の臨牀』第25巻第10号・漢方診療おぼえ書(41) で、かぜと中耳炎とを繰返す幼児に小柴胡湯加桔梗石膏と題した6才男子の症例を報告されている。「中等度の体格、顔色は良い、汗っかき、……舌は淡白色を呈し、腹部は中等度の硬さを呈している。……約1ヵ年間服用を続けているが、その間一回も中耳炎を起こしていない」とのことである。
 ⑫ 山本巌先生は、『東医雑録』(3)・小柴胡湯を語るで、本方の適応例として、「化膿性炎症 胃が弱く、食欲がなくなる、口が苦いなどがあれば、小柴胡湯加桔梗石膏を用いる。慢性扁桃炎、蓄膿症、慢性中耳炎などの、抗生物質があまり効果のない場合にも、小柴胡湯加桔梗石膏、……を用いる。抗生物質よりはるかによく効く」や、「化膿性炎症には 桔梗・石膏・薏苡仁・連翹・金銀花などを加える。いずれも化膿性炎症に有効で、石膏は濃厚な膿のとき、薏苡仁は薄い膿の量が多いとき、桔梗は排膿、袪痰の作用があるため配合する」と説明されている。
 ⑬著者は本方エキス製剤を常用していない。勿論、小柴胡湯と桔梗石膏のエキス製剤は常用している。必要に応じて自由は配合分量で処方した方が使い易いからである。尚、桔梗石膏の他薬の加味方としての処方例は、桔梗石膏の論考⑱で述べた通りである。


※齎す:もたらす
※舌黄白胎 → 舌黄白苔の間違い?
※『漢方の臨床』:『漢方の臨床』
※孰れも:いずれも


副作用
重大な副作用と初期症状
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。

2) ミオパチー: 低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。

[理由]
 厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。

 [処置方法]  原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。
低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等 により電解質 バランスの適正化を行う。

3) 肝機能障害、黄疸: AST(GOT) 、ALT(GPT) 、Al-P、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。

 [理由] 本剤によると思われる肝機能障害、黄疸の企業報告が集積されたため。
(平成14年7月10日付事務連絡「医薬 品の使用上の注意の改訂について」に基づく改訂)

[処置方法] 原則的には投与中止により改善するが、病態に応じて適切な処置を行う。


その他の副作用

頻度不明
 過敏症注1 発疹、蕁麻疹等
消化器 食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢等
注1)このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。

過敏症
[理由] 本剤には人参(ニンジン)が含まれているため、発疹、蕁麻疹等の過敏症状があらわれるおそれがある。


[処置方法] 原則的には投与中止にて改善するが、必要に応じて抗ヒスタミン剤・ステロイド剤投与等 の適切な処置を行うこと。

消化器
[理由] 本剤には石膏(セッコウ)が含まれているため、食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢等の消化器症 状があらわれるおそれがある。また、本剤によると思われる消化器症状が文献・学会で報告されている。

[処置方法] 原則的には投与中止により改善するが、病態に応じて適切な処置を行う。

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