健康情報: 大黄蟅虫丸(だいおうしゃちゅうがん) の 効能・効果 と 副作用

2013年5月24日金曜日

大黄蟅虫丸(だいおうしゃちゅうがん) の 効能・効果 と 副作用

臨床應用漢方醫學解説』 增補第八版 南江堂刊 湯本求眞著

下瘀血丸大黄蟅虫丸抵当丸三方に関する所説は著者の心血の結晶にして新発見に係るもの鮮からず読者軽々之を看過する勿れ。

大黄蟅蟲丸
 大黄二、〇〇 黄芩一六、〇 甘草二四、〇 桃仁六五、〇 杏仁五六、〇 芍藥三二、〇 地黄八〇、〇 乾漆八、〇 虻蟲一〇七、〇 水蛭一六六、〇 蟅蟲七一、〇

 右爲末蜂蜜を以て爲丸用量一回一、〇乃至五、〇 一日一回乃至三回 用法抵當丸に同じ

適應症 五勞虚極、羸痩、腹滿不能飮食、食傷、憂傷、飮傷、房室傷、饑傷、勞傷、經絡榮衞氣傷、内有乾血肌膚甲錯、兩目黯黒、緩中補虚、

仲師の論文難解なるも余は下の如く解釋すべきものと考う則ち食傷は消化器病憂傷饑傷は神經系及精神病飮傷は水病房室傷は結核性疾患經絡榮衞傷は血行器及血液病(古人血管系を經絡と云ひ血液を身體を養ひ衞るの意より榮衞と稱せり)を意味し是等の疾病にして五勞虚極(共に衰弱の甚しきなり)羸痩腹滿飮食する能はざるものは内即ち消體に乾血(久變敗血)あるの致す處にして爲に肌膚甲錯(鮫肌の如くなるを云ふ)兩目黯黒となるものに本方を用ゆるときは體内の乾血を去て體中を緩め虚羸のものを強壯にすと云ふにありと。

此解釋に著しき誤なきは以下引用せる仲師及先哲の所説を參照すれば明瞭なり。
仲師金匱要略婦人病織に曰く
婦人之病、因虚積冷結氣爲諸經水斷絶、(以上月經閉止の由來を説き以下經閉の因より


和漢薬方意辞典』 中村謙介著 緑書房
大黄蟅虫丸(だいおうしゃちゅうがん) 〔金匱要略〕

【方意】 陳旧性の瘀血による腹微満・面色黄褐色・月経不順・貧血・視力低下等と、燥証による皮膚枯燥・羞明等と、瘀血による精神症状としての頭重・のぼせ・目眩・健忘症等と、虚証による盗汗・るいそう等のあるもの。     《太陰病,虚証から虚実中間》

【自他覚症状の病態分類】

陳旧性瘀血

燥証 瘀血による精神症状 虚証
主証  ◎腹微満
◎面色黄褐色
◎月経不順

◎皮膚枯燥
◎羞明(角膜乾燥)
◎頭重
◎頭痛
◎のぼせ
◎目眩

◎盗汗
◎自汗
◎るいそう
◎疲労倦怠
客証  ○貧血
   腹痛
   帯下
○視力低下
○鼻根部の疼痛
   歯痛

   落屑
   兎糞状便
   便秘
○健忘
   心悸亢進
   精神異常
   全身衰弱


【脈候】 沈緊、濇、沈数、遅緊。

【舌候】 口唇乾燥、やや乾燥した微白苔或いは無苔。

【腹候】 腹力ある程度力あり。下腹部にやや硬い抵抗を触れる。腹満傾向、時に腹直筋の緊張を認める。

【病位・虚寒】瘀血も陰証陽証共に存在する。本方は瘀血が陳旧化し、全体に疲労を帯び、虚証を呈している状態で太陰病に相当する。

【構成生薬】 大黄8.5 黄芩7.0 甘草10.0 桃仁18.0 芍薬13.5 乾地黄34.0乾漆3.5 虻虫8.0 水蛭17.0 蠐螬17.0 蟅虫10.0

【方 解】虻虫・水蛭・蠐螬・蟅虫はすべて動物性駆瘀血薬で、陳旧瘀血を去る。乾漆も陳旧性瘀血に有効である。桃仁・杏仁は消化管の燥証を滋潤し、乾地黄の滋潤 作用も協力する。大黄の瀉下作用、芍薬の抗痙痙攣作用は桃仁・杏仁・乾地黄の滋潤作用と共に便秘に有効である。黄芩は駆瘀血薬と共に、血熱による精神症状 を除去する。 

【方意の幅および応用】
 A 陳旧性瘀血燥証虚証:腹微満・下腹部抵抗・面色黄褐色・皮膚枯燥・るいそう等を目標にする場合。
  貧血、月経閉止による諸症、慢性腹膜炎、歯痛、夜盲症
 B 瘀血による精神症状:頭重・健忘・精神異常を目標にする場合。
  精神神経疾患

【参考】*虚の極、るいそうし、腹満して飲食すること能わず、内に乾血有り、肌膚甲錯して、両目黯黒なるを主る。  『金匱要略』


結核性腹膜炎の随証治療
  結核性腹膜炎では液性滲出物は僅少にして、腹水の病型を呈するものは比較的劣数である。患者は漸次腹囲の増加と腹部の膨満感を訴え、自発痛はあるいは僅微 であるか、または時として全くない。腹部の膨満愈々加わるに従って、軽度の胸内苦悶、呼吸困難が現れ、且つ胃部停滞感および食欲不振が起こって来る。便通 は不整で、或は下痢し、或いは便秘する。女子では月経閉止を伴うことが多い。全腹壁はあたかも硬化せる観があって、これに触れるも柔軟ではない。
 熱発は不定で、或いは高度の日晡所潮熱を呈する。貧血、るいそう、衰弱等漸次加わり、時に盗汗に悩まされる。経過は緩慢にして、数月より年余にわたる。
 腹満および腹囲の増加現れ、胸内狭窄感および呼吸困難があり、且つ食欲減退し、便秘し、発熱ありて、脈浮にして数なる等の者には、まず厚朴七物湯を投ずべきである。便秘せず、反って下痢の傾向ある者にも、なお腹満および発熱等あらばこの方にて差支えない。
 初期にして、腹満も、発熱を著しからず、腹壁緊張し、時々腹痛、尿利減少、下痢の傾向があり、脈沈なるもやや力ある者には四逆散を投ずる。
 肋膜炎を併発し、胸満胸痛があり、或いは微喘、嘔吐、食欲減退、少しく発熱し、脈数なる者には小柴胡湯小陥胸湯、熱発劇しき者には小柴胡湯白虎湯を投ずる。
 前証にして更に嘔吐劇しく、心下硬満し、尿利減少し、便秘し、脈数にして且つ緊なる者には大柴胡湯或いは大柴胡湯加石膏を投ずる。
 発熱著しからずして、胸部圧迫感、食欲減退、疲労しやすく、且つ少しく腹満ありて腹筋拘牽し、時々腹痛を発する者には小柴胡湯合枳実芍薬散を投ずる。
 腹満あるも、按圧すれば柔軟にして固からず、患者疲労倦怠を覚え、食欲振わず、時々盗汗に苦しむ者には梔子厚朴湯を投ずる。
 腹満著しからざるも、患者頻りに胸腹の満悶を訴え、食欲全く欠損し、熱候なくして脈弦遅の者には厚朴生姜半夏甘草人参湯を投ずる。
 身体衰弱して力なく、時々盗汗があり、皮膚枯燥し、貧血羸疲漸やく加わり、腹筋拘攣して腹微満し、下腹部に不齋藤形の硬固物を触るる等の者には、小柴胡湯合枳実芍薬散に大黄蟅虫丸を兼用し、或いは四逆散に大黄蟅虫丸を兼用する。
奥田謙蔵『漢方と漢薬』2・6・7



【症例】眼精疲労・慢性円板状紅斑性狼瘡の疑い
 大黄蟅虫丸はあまり使う機会はないが、効くときは本当によく効く。狙いは虚労で、乾血性のもの。虚労は困して苦しむ所なしというものが多く、自覚的には取りとめのないような訴えが多いのに、他覚的にはそれほどでもない。
 1例はごく最近弱視を半訴にしてきた青年で、某医大の眼科で眼精疲労、視力0.3の診断を受けてきたが、『金匱要略』の本方の条文中にある「両目暗幸」を応用して、本方1日量3.0を約1ヵ月使つたところ、視力は1.0となり、自覚症状も消失した。
 もう一人は数年前に扱った50何歳かの婦人で、某病院皮膚科で治療を受けていたが軽快しなかった。病名は福性円板状紅斑性狼瘡のような皮膚病だった。鬱血性、乾性なので「内に乾血あり、肌膚甲錯」という条文を応用して本方を使ったら、幸い適中して約1ヶ月で治ってしまった。
龍野一雄『漢方の臨床』12・10・44




『金匱要略解説(22)』 
血痺虚労病③-酸棗湯・大黄蟅虫丸・炙甘草湯・獺肝散

日中東洋医学会名誉会員 寺師 睦宗
■大黄蟅虫丸
 「五労、虚極して羸痩、腹満し、飲食するあたわざるは、食傷、憂傷、飲傷、房室傷、飢傷、労傷のためなり。経絡栄衛の気傷(やぶ)れ、内に乾血有りて、肌膚甲錯し、両目暗黒す。中を暖め、虚を補うには、大黄蟅虫丸(ダイオウショチュウガン)これを主る。

大黄蟅虫の方。
 大黄(ダイオウ)(十分、蒸す)、黄芩(オウゴン)(二両)、甘草(三両)、桃仁(トウニン)(一升)、杏仁(キョウニン)(一升)、芍薬(シャクヤク)(四両)、乾地黄(カンジオウ)(十両)、乾漆(カンシツ)(一両)、虻虫(ボウチュウ)(一升)、水蛭(スイテツ)(百枚)、蠐螬(セイソウ)(一升)、蟅虫(シャチュウ)(半升)。
 右十二味、これを末とし、煉蜜(レンミツ)にて和し、小豆(ショウズ)大に丸じ、酒にて五丸を飲服す。日に三服す」。
 いろいろ出てきましたが、注を加えます。『医宗金鑑(いそうきんかん)』は最後の「緩中補虚」の四文字は、前にある「飲食するあたわざる」の下にあるべきであって、これは写し間違い、伝写の誤りだといっています。
 「五労」は『金匱要略(きんきようりゃく)』の第一巻の臓腑経絡篇に「五労、六極、七傷」というのが出てきました。この「五労」というのは志労、思労、心労、憂労、疲労の五つを指すものと思います。
 「極」は甚だしく虚に陥った状態のことです。
 「乾血」は瘀血のことです。「肌膚甲錯」は皮膚が光沢を失ってガサガサしていること、「暗黒」は暗いことです。
 「乾漆」は生のウルシを乾燥した乾いた漆で、これは血をめぐらし瘀血を破る効果があります。「虻虫」はアブです。アブは頭と足と羽を取り去って、弱い火で炒って用います。これも瘀血をとります。「水蛭」は俗にいうヒルです。このヒルも瘀血をとます。「蠐螬」はジムシです。これも瘀血をとります。「蟅虫」はゴギブリの雌です。これも結積やおなかの中の癥瘕をとります。「乾漆」、「虻虫」、「水蛭」、「蠐螬」、「蟅虫」は、みな瘀血をとる虫類と漆で、これらによって瘀血をとるということです。
 条文を解釈してみます。
 五労のため病人が非常に疲れ、 痩せ衰え、せれていて腹が膨満して、飲食ができない。こ罪は暴食、過度の心配、暴飲、房室過度、過度の空腹、過度の労働などが原因である。そして経絡と栄気(血の働き)、衛気(気の働き)がいずれも傷つけられ、このために瘀血が体内に停留し、皮膚がサメ肌のようにガサガサになり、眼の周りが黒ずむ。このような病人はおなかの中の急迫を緩め、虚を補うことが必要で、これは大黄蟅虫丸で主治するということです。
 大黄蟅虫丸について、先哲の論証を述べてみましょう。
 吉益東洞の息子の吉益南涯(よしますなんがい)が書いた『続建殊録(ぞくけんしゅろく)』の中に、「一婦人、年二十余歳、去年の春より穀肉の類を一口も食することができない。もし御飯を食べるとすぐに下腹が痛み、あるいは胸が痛む。そしてこれを吐き、止むと飲み物を好む。その飲みものは熱いものあるいは冷たいものを好む。もし飲みものが過ぎれば、必ずあなかが痛んで水を吐く。腰から以下が非常に痩せているが、胸は普通の人のようだ。歩くことは常人と変わらない。おなかをみてみると臍の脇、下腹が硬く石のようにだ。便秘しており、そこで下剤を用いると水のように下る。経月は少ない。そしてこの婦人はおなかが膨満して苦しいというが、按じてみても腹満していない。そこで最初に茯苓沢瀉湯(ぶくりょうたくしゃとう)を与え、硝黄湯(ショウオウトウ)を兼用した。これを服すると五、六十日して喉が少し乾いてきてお菓子類を食べた。腹痛はやはり変わらず、少し咳があり、血を吐く。そこで当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)と大黄蟅虫丸を与えたところ、症状が次第にひいて治ったh」とあります。
 もう一つは『腹証奇覧(ふくしょうきらん)』という本にあります。
 「この大黄蟅虫丸は小建中湯(ショウケンチュウトウ)の証に似て、非常に痩せていて、皮膚が乾いて、腹満して突っ張る。これを按じて巧くて痛むものは乾血で、大黄蟅虫丸の証なり」といっています。



※このヒルも瘀血をとます。→このヒルも瘀血をとります。の誤植?


副作用
使用上の注意
●大黄
・食欲不振、腹痛、下痢等に留意。
・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
・授乳中の婦人には慎重に投与[乳児の下痢を起こすことがある]。
・併用する場合は、含有生薬の重複に注意。

●桃仁
・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。

●乾漆、虻虫、水蛭、蠐螬、蟅虫
・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。

●地黄
・食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等に留意。

※蟅虫の「蟅」は本来は「庶」が上で「虫」が下

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