健康情報

2012年7月28日土曜日

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
防已 黄耆各五・ 朮 生姜 大棗各三・ 甘草一・五 
本方は表が虚して、体表に水毒のあるものを治す方剤である。従って色が白く、肉は軟く、俗に水ぶとりと称する体質の人で、疲れ易く、汗の多い傾向の人に用 いる。脈は多くは浮弱である。また下肢に浮腫が多く或は膝関節の腫痛するものにも用いる。有閑婦人で肥えている人にこの證が屡々みられる。
本方は防已・黄耆・甘草・朮・生姜・大棗からなり、防已と朮は利尿・鎮痛の効があり、黄耆には体表の水を去って皮膚の栄養をよくする効があり、大棗と甘草は矯味薬に兼ねるに滋養の効がある。
本方は以上の目標に従って、肥胖症・関節炎・下腿潰瘍等に用いられる。また卵巣機能不全と診断されて、月経のとどこおりがちのものに用いて、月経を通ずることがある。


『漢方精撰百八方』
48.〔方名〕防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

〔出典〕金匱要略

〔処方〕防已、黄耆各5.0 甘草1.5 朮、生姜、大棗各3.0

〔目標〕証には、水病、身体疼重し、汗出でて悪風し、小便不利のもの、とある。
  水腫があって、身体が重く感じ、重だるく痛み、発汗の傾向があり、悪風し、尿利が減少し、陰証のもの。脉は主に浮弱。  いわゆる水太りで、水毒があって、表が虚している者であるが、防已茯苓湯の場合は、肌表に水毒うっ滞がある者で、本方証では、表にも裏にも水毒があるものである。 〔かんどころ〕水ぶとり状で水腫があり、腰以下が腫れる傾向があり、虚していて疲れやすく、発汗傾向が強く、身体が重だるく、小便不利、減少する者、を目標にする。

〔応用〕目標にあげた様な症状があるもので次のような疾患に応用される。
(1)貧血性疾患で、水ぶとりの感があり、下肢に微腫があり、脚弱の傾向のある者。
(2)リウマチ、或いは関節炎で、発汗しやすく四肢に微腫があり、冷感があり、脉細弱、浮弱の者。  水腫の関節炎には、麻黄3.0 附子(1.0~2.0)を加えて更に効果がある。このような場合、水ぶとり状の体質でなくても、局部の腫脹の状態を目標として適用される。
(3)水ぶとり状の肥胖症で、多汗な者。 〔治験〕三十八才男子。やや肥満型の色白の男子、歯科医で立ち仕事が多く、左膝関節が以前より痛む事があったが、数日前から、やや熱感があり腫脹して来たという。夏は発汗しやすく、汗かきである。起居に疼痛を伴う。防已黄耆湯に麻黄2.0附子1.0を加えて投与。七日間の服薬で、腫脹、疼痛ともに消失。爾後、仕事が多く、過労になると左膝関節に異状あるが、時々、防已黄耆湯加附子を与えているうち、体質的にも改善され、疲れが減り、夏の汗の出方も減り、ゴルフをしても痛むことがなくなった。
伊藤清夫


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
12 解毒剤
解毒剤は、自家中毒がうつ満して起こる各種の疾患に用いられる。また、やせ薬としても繁用される。

4 防已黄蓍湯(ぼういおうぎとう)  (金匱要略)
〔防已(ぼうい)、黄耆(おうぎ)各五、朮(じゅつ)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)各三、甘草(かんぞう)一・五〕
本方は、体表に瘀水があり、表と下焦が虚しているため腎障害がおき、下肢の気・血がめぐらないものに用いられる。したがって、浮腫や関節の腫 痛が起こる。本方は、色白、水ぶとりの虚証体質で、疲れやすく、汗をかきやすく、小便減少または不利となり、足が冷え、下腹部に浮腫をきたし、関節の腫痛 するもの、身体が重いなどを目標とする。
本方は、麻杏薏甘湯(前出、麻黄剤の項参照)の虚証体質者に用いられ、疼痛は軽微である。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、防已黄耆湯を呈するものが多。
一 腎炎、ネフローゼ、陰嚢水腫その他の泌尿器系疾患。
一 関節痛、筋炎その他の運動器系疾患。
一 じん麻疹その他の皮膚疾患。
一 そのほか、感冒、よう、月経不順、肥胖症など。 
《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
69.防已黄耆湯(ぼういおうぎとう) 金匱要略
防已5.0 黄耆5.0 朮3.0 生姜3.0(乾1.0) 大棗3.0 甘草1.5
(金匱要略)
風湿,脉浮,身重,汗出悪風者,本方主之(湿)

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
水ぶとりで皮膚の色が白く,疲れ易くて浮腫または汗をかきやすいもの。
本方は冷え症貧血気味で筋肉がぶよぶよした水ぶとりの人のヤセ薬として繁用される。反対に卒中体質で脂肪ぶとりの人には防風通聖散が適する。本方適応症状の浮腫は下肢または関節部に限られる。
漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
本方は望診上色白の水太り体むで筋肉は軟弱に見受けられ,夏期やあるいは少しの運動時に発汗が多く,または尿量が少なく下肢に浮腫の傾登があるなどを対象に,適応症記載の疾患に応用されている。したがって本方は組織液やリンパ液が皮下組織に異常に多く貯溜している状態の,現代医学的にWassersucht(水症)と呼ばれているものに該当すると考えられる。本方が最も繁用されているのは,料亭の中年主婦や有閑婦人などに多く見かける,水ぶとり肥胖症のヤセ薬として,その評価が高いがその目標は,色白でしまりなく ブクブク 太っている人を目安に投与されているが自他覚的に痩身を認めるためには,少なくとも六~七ヵ月以上の運用を要する。これに関連して最近生活水準が上昇し,食生活も美食に傾いたうてに,家庭の合理化による文化生活は婦人を太らせる結果となり,本方適応者が増加した感があり,生理不順や多汗あるいは夕刻になる不肢がむくむなどを訴えるものに,本方を投与し発汗が減少した,スタイルがよくなったなどと成功成た例が少なくない。以上のことから本方は男女の区別なく応用できるが,主として婦人を対象に推奨すると,特殊性が高揚する。通常女性は男子に比べて便秘症が比較的に多いので,スタイル美の効果を促進するために,本方と防風通聖散の合方を考慮すると,さらに治療効果があがる。
 漢方ヤセ薬として応用されている処方に,本方と防風通聖散大柴胡湯桃核承気湯などがあってそれぞれの,適応条件に合して応用されているので,他のそれと異なり身体が好調となり喜ばれている。
 発汗過多症には本方のほかに,五苓散(咽喉が渇いてむやみに水を欲しがり発汗する)柴胡桂枝干姜湯(衰弱して盗汗や発汗が多く,口が渇いて食欲減退)桂枝加竜骨牡蛎湯(神経衰弱の傾向がある虚弱者で汗が多い)などがあるが,詳細はいずれも各項の解説を参照されたい。


※不肢? 下肢の誤植か?


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
体表に水毒があるため,浮腫や関節の腫痛がおこるものに用いる。肥満の傾向があるが,体質は虚証なのでいわゆる水ぶとりである。色白で,筋肉軟らかく,多汗,尿利減少の傾向があり,痛れやすく,足が冷え,からだが重く,やや口渇がある。しかし必ずしも肥満が目標ではない。脈は多くは浮弱である。
○本方証は中年の婦人に多いが,必ずしもそればかりではなく,男子にも用いる。
○崇蘭館試験方「風湿の初は麻杏薏甘湯知向信r湿を発し,汗を取べし。防已黄耆湯は麻杏薏甘湯と虚実に分ちあり,麻杏薏甘湯は脈浮汗出でず悪寒する者に用い,解肌して癒ゆ。汗出で悪風する者は防已黄耆湯を用うべし」とあって本方と麻杏薏甘湯の区別がわかる。


漢腹証奇覧翼〉 和久田 叔寅先生
○「防已黄耆湯は水気が皮膚にあって腫れたようなもの,またほんとうにはれているものを治するものである。この方は防已が君薬で,黄耆と朮が臣薬であるけれども,黄耆が入っているところに意味がある。この黄耆は正気のめぐりをよくして,浮びあがってくる水気をめぐらして下す効がある。その他に気血の鬱滞を和解するの意味はない。病人の肌膚が肥白で,これをつまんでみるとその肉が軟虚でしまりがなく,ぐさぐさとす識ものは,正気が体表にめぐらず,浮水があふれたものである。浮腫とはいいにくいが表虚の水気とする。この証は男女老若を問わずあるけれども婦人で20才前後に急に肥満して,のぼせが強く,頬に紅がさして月経が少なくなり,気分鬱々とふさぐものにこの証がある。このように肥満するのはようように見えるが,その実は表の虚でよい徴候ではない。医者がもしその月経の不利をみて誤って通経破血の剤を投ずると奏効しないばかりか,反って害を招くことがある。かつて一男子,数年間冷え症にかかり,夏でも衣類を重ね足袋をはくという状態であらゆる温熱の薬剤をのんだが効かないので京帥に来て,名医の診察を請うたがどれも効をみなかった。ところが,一医が熟慮ののち,この方を一か月ほど与えたところ全治してしまった。



※ 和久田 叔寅 は、通常、和久田 叔虎




漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
本方は表が虚して,体表に水毒のあるものを治す方剤である。従って色が白く,は軟く,俗に水ぶとりと称する体質の人で,疲れ易く,汗の多い傾向の人に用 いる。脈は多くは浮弱である。また下肢に浮腫が多く或は膝関節の腫痛するものにも用いる。有閑婦人で肥えている人にこの證が屡々みられる。
本方は防已・黄耆・甘草・朮・生姜・大棗からなり,防已と朮は利尿・鎮痛の効があり,黄耆には体表の水を去って皮膚の栄養をよくする効があり,大棗と甘草は矯味薬に兼ねるに滋養の効がある。
本方は以上の目標に従って,肥胖症・関節炎・下腿潰瘍等に用いられる。また卵巣機能不全と診断されて,月経のとどこおりがちのものに用いて,月経を通ずることがある。



漢方処方解説〉 矢数 道明先生
表が虚し,下焦が虚し,腎の障害により起こる諸症を目標とする。色白で,筋肉が軟かく,水ぶとりの体質で,疲れやすく,汗が多く,小便不利で,下腹に浮腫をきたし,膝関節の腫痛するものなどを目標とする。中年後の有閑婦人で,太って疲れやすく,身体が重いという人に用いることが多い。脈は多くは浮弱である。


漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
運用 1. 感冒などの急性熱病
「風湿,脉浮,身重く,汗出で悪風するものは防已黄耆湯之を主る」(金匱要略湿)風は外邪で表の陽気を虚さしめる。湿は胃の悪む所で,又好んで下を傷り,関節に流れて疼みを起させる。防已黄耆湯の証では風により表の衛気が傷られて脉浮となり,汗出悪風が起り,湿によって身重をなす。この条文の中から身重を除外すると脉浮,汗出,悪風で桂枝湯の証と区別がつかなくなる。金匱要略水気病の所にも「風水,脉浮,身重,汗出で悪風するものは防已黄耆湯之を主る。腹痛するものは芍薬を加ふ」とあって風湿の予りに風水となっているだけで同文である。実際に風邪を引いて表虚だし桂枝湯の証だと思ってさっぱり効かずに反って防已黄耆湯にしたらよく効いたという例がある。蓋し湿気の多い日本では単なる中風でなく風湿となって発病することが多いのではあるまいか。しかし桂枝湯と防已黄耆湯とは症状として単に身重の有無だけの違いではない。両者を比較してみると桂枝湯は表の陽気の虚,衛気の虚で上衝を伴う。故に頭痛等もある。防已黄耆湯は同じく衛気の虚ながら同時に湿があり,むしろ湿が主になっているから病の本は裏の中焦胃と下焦腎に在る。防已,白朮は裏を本態として表に症状が現われる場合に使う薬物である。防已黄耆湯は表熱上衝が軽く,少くとも桂枝湯のように主症にはならない。桂枝湯は中風傷寒ともに太陽病たると陽明、太陰、厥陰たるとを問わず表熱あれば使うが防已黄耆湯はただ風湿若くは風水に使うだけである。

運用 2. 浮腫
前記の風水によって全身浮腫にも使うことが出来る。風だから発熱を伴う場合である。之を表水と見れば熱発を伴わない時にも使える。その時には汗出悪風はないが,脉浮弱身重を目標にする。身重は浮腫によって身が重く感ずるのだと思えばよい。(身重を麻痺,リウマチ等に転用することが出来るが,本方を使った経験は私には未だない。)腰以下の浮腫に使う。「風水,脉浮を表に在りとなす。其人或は頭汗出で表に他病なく,病者たた下重し,腰より以上は和すとなし,腰以下当に腫れて陰に及び以て屈伸し難かるべし」(金匱要略水気病)がそれで下重即ち下身半が浮腫のために重く感じ,腰から以下,陰部に及ぶ浮腫に使うことがある。この内,陰部だけの浮刺ゆ又は炎症を伴う疾患であっても宜い。又屈伸し難しを麻痺や攣縮に転用してもいいわけだが未だ経験はない。風水だから脉は浮で,腰以下の浮腫でも脉の浮が目標になる。前に本方は下焦の変化だと述べたがこの条文でそれが確かめられたわけである。頭汗は表証だが或はというから必発ではなく,頭汗がある時もある。頭汗があっても差支えないと考えて使うべきだ。反対に頭汗脉浮,他に表証及び下半身の浮腫なき場合にも使うことが出来るだろうし,頭汗を頭部湿疹などに転用し得るであろう。
宇津木昆台先生曰く「さて其病者ただ下部に水気ありて重く,腰以上はよく和して病患なく,腰より以下腫て陰茎陰嚢に及び,足脛腰膝のびちぢみあしくなる者なり。この下重は泄利下重のいきづむ者とは異にして,上に変化なく下に腫ありて重く第一に腰の屈伸のなり難き者なり。これ表水の者なれども,一変して下部の腫るに至る証なり。然らば証を転じたるかと云にただ病状のみ転じて本方の証は少しも変ぜず(中略)この条は表にあるべき所の風水脉浮の者なれども表に病患なく,気上に逆して頭汗の出ることあれば下部の気も皆上づりになりて反て下の気の不順なる所へ水気たまりて下重く腰以下陰部までも腫れて屈伸の難き者なり。上表に和せざる処あれども病者も覚えず医者も急度目当とする処見えず。故に或は頭汗出の一証にて上逆して其上逆の為につり上られて下重をなすことを知らしめたるなり。たとひ頭汗無とも上逆の為に下に水気たまりて腫をなすと云ことを示したるなり(中略)太陽下篇の火逆の凡例の四ヶ条目にある。脉浮宣以汗解,用火灸之,邪無従出,因火而盛,病従腰以下必重而痺,名火逆也とある証と同く火に因て盛なる邪なれば,上逆の甚しきことを知るべし。然れども病は腰以下の重而痺するなれば証と病との上下の差別これにて併せ考て知るべし」(古訓医伝)証と病の上下とは病が下にあるのに症状は上に現われる。或は病が上に在るのに症状は下に現れるということで,この場合は後者を指している。つまり本質と現象とが反対部位にあることを云ったもので,漢方にはかかることが頗る多い。

※宣は宜の間違い

運用 3. 化膿症
尾台榕堂先生曰く「風毒腫,附骨疽,穿踝疽稠膿已に歇み稀膿止まず,或は痛み,或は痛まず,身体痩削し,或は浮腫を見すものを治す」(類聚方広義)風毒腫は癰,筋炎又はそれに類するもの,附骨疽は骨髄骨膜炎,結核性足関節炎,脊髄癆性潰瘍等を指すものであろう。

運用 4. 肥満症,月経不順
和久田叔寅先生曰く,「病人肌膚肥白にして之を捫するに其肉軟虚にしてしまりなく,ぐさぐさとするもの是正気表に旺せずして浮水泛濫するものなり。腫に非といえども以て表虚の水気とすべし。此証男女老少を問はずといへども多くは室女許嫁の年歯より以上廿才の前後までに卒に肥満をなして衝逆つよく両瞼紅にして経水短少,心気鬱して開かざるもの此証あり。是其の肥満を成すもの成長の時に当りて可なるに似たりといへども其実は表虚に属して以て佳候とすべからず。医若し其経行不利なるを見て誤て通経破血の剤を投ぜば徒に効果奏せざるのみならず反って禍を啓くことあらん」(腹証奇覧翼)前に防已黄耆湯証の本態は腎に在ることを述べたが,この条もそれに関連し,しかも実に巧みに運用しているので敬服の外はない。

運用 5. 冷え症
和久田叔寅先生曰く「一男子痼冷を患ること年あり。夏月衣を重ね足袋を着く。遍く温熱の剤を服して寸効なし(中略)一医生あり,深考て以此方を与ること一月許りにして宿痾全癒ゆと」(同右)防已黄耆湯が表と下焦の陽気を補い,衝気を実せしめて三焦の気を順らすというのが狙いである。
※衝気 衛気の間違い



勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は温湿表虚の者を治す。故に自汗久しく止まず,皮表常に湿気ある者に用いて効あり。蓋し此方と麻黄杏仁甘草湯と虚実の別あり。彼湯は脈浮昔出でず悪風の者に用いて汗を発す。此方は脈浮にして,汗出で悪風の者に用いて解肌して愈ゆ。即ち傷寒中風に麻黄桂枝の分あるが如し。身重は湿邪なり,脈浮汗出では表虚する故なり。(中略)服後虫の行くが如く,腰以下水の如く云々は,皆湿気下行の徴と知るべし。



漢方の臨床〉 第2巻第10号 大塚 敬節先生

防已黄耆湯証は男子より婦人に多く,ことにいわゆる有閑マダムに多く見られる。水ぶとりの婦人にこの証がある。もっと痩せたいとの希望を持っている人が多い。この種の人はからだが重くて,起居動作がものうく,掃除や炊事をまめまめしくすることを好まないというよりは,それをするのが大儀である。外出しても自動車を利用し,からだを動かさないでますます肥満してくる。食事の量は少く,1回ぐらい食事をしなくても平気である。湯茶を好む人が多い。大便はたいてい毎日あるが,月経の量は少ない人がある。また不順を訴える。多汗症で夏は流れる如くである。この種の婦人で50才を越すと,膝関節の痛みを訴えるものがかなりある。また夕方,靴や足袋が窮屈になるほと足に浮腫がくる。腹診しても腹部は一体に膨張しているが抵抗や圧痛はなく軟弱である。



【一般用漢方製剤承認基準】
防已黄耆湯
〔成分・分量〕 防已4-5、黄耆5、白朮3(蒼朮も可)、生姜1-1.5(ヒネショウガを使用する場合3)、大棗3-4、甘草1.5-2

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症: 肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)



【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕



 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(5)次の症状のある人。
     むくみ
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
     高血圧、心臓病、腎臓病
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること


関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ
消化器 食欲不振、胃部不快感



症状の名称 症状
間質性肺炎 階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
偽アルドステロン症、ミオパチー1) 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
肝機能障害 発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1
g以上)含有する製剤に記載すること。〕


3. 1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
4. 長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕

〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注
意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕

保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくて
もよい。〕


【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】

注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(5)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

製品名 ▼ 規格 単位 薬価 製造会社 販売会社
JPS防已黄耆湯エキス顆粒〔調剤用〕  1g 8.1 JPS  JPS 
本草防已黄耆湯エキス顆粒-M  1g 6.2 本草製薬  久光製薬 
太虎堂の防已黄耆湯エキス顆粒  1g 6.5 太虎精堂製薬  太虎精堂製薬 
マツウラ防已黄耆湯エキス顆粒  1g 7 松浦薬業  松浦薬業 
テイコク防已黄耆湯エキス顆粒  1g 6.2 帝國漢方  テイコクメディックス 
ツムラ防已黄耆湯エキス顆粒(医療用)  1g 10.5 ツムラ  ツムラ 
ジュンコウ防已黄耆湯FCエキス細粒医療用  1g 11.3 康和薬通  大杉製薬 
コタロー防已黄耆湯エキス細粒  1g 7.2 小太郎漢方製薬  小太郎漢方製薬 
クラシエ防已黄耆湯エキス錠  1錠 4.2 大峰堂  クラシエ 
クラシエ防已黄耆湯エキス細粒  1g 7.9 大峰堂  クラシエ 
オースギ防已黄耆湯エキスG  1g 6.5 大杉製薬  大杉製薬

2012年6月27日水曜日

桃核承気湯(とうかくじょうきとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
桃仁五・ 桂枝四・ 芒硝二・ 大黄三・ 甘草一・五

本方は調胃承気湯に桂枝・桃仁を加味した方剤で、調胃承気湯證に似て、所謂血證を帯びるものに用いられる。即ち比較的新鮮な瘀血で症状がはげしく大便秘結 の気味で、下腹部に急結の状があり、下血・吐血・衂血等のあるものに応用する。下腹部に於ける急結とは、この部に索状物を証明し、指頭を以て、これを擦過 状に軽く触れる時に、疼痛を訴えることを云う。しかして急結状を証明する際には、吐血・下血等の症状がなくても本方を用いてよい。
本方は調胃承気湯に桂枝・桃仁を加えた方剤で、桂枝・桃仁は局所の瘀血を去り、血行の障害を疎通する効がある。大黄・芒硝は瀉下の効と共に堅塊を解くの効があり、甘草は諸薬を調和する。
本方は月経時に精神異常を呈し興奮する者、月経困難、胎盤残溜して下血の止まない場合、胎児が母体内で死んで娩出しない場合、産後発狂状となるもの、月経不順より来る諸患、歯痛・歯肉出血・眼疾・痔核・前立腺炎・尿道狭窄・骨盤腹膜炎・会陰部の打撲等に用いられる。


『漢方精撰百八方』
15.[方名] 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

[出典] 傷寒論

[処方] 桃仁4.0 桂枝4.0 大黄1.0 芒硝3.0 甘草

[目標] 太陽病が全治しないままに陽明病に移行して、膀胱つまり骨盤臓器に炎症性疾患を生じ、子宮出血や膀胱出血を起こすが、その場合本方を用いて瘀血を除いてやれば癒おる。しかし発熱発汗など表証のある間は本方をやってはいけない。まず桂枝湯類で表証を治した後本方を用いるようにすべきである。表証がなくなった後で少腹急結の腹証のあるものには本方で攻めるようにするのである。本方はまた瘀血のため神経症状を起こして発狂状態になったものに用いてのぼせを下げて治す効がある。

[かんどころ] 本方の腹証は下腹部特にその左側に圧痛のあるもので、そんな場合には一般に用いて差し支えない。本方の腹証を探る場合、下腹部の該当部に軽く擦過するように触診してみると反応性に疼痛を訴えるか、または下肢を屈曲するから、比較的容易にわかる。

[応用] 本方の応用は非常に広汎で、枚挙にいとまがないが、一応適応症を上げてみると左の如くである。下肢神経痛。座骨神経痛を含めて膝関節足関節の神経痛などに腹証に応じて本方を投与すると、鎮痛剤を用いずして治する場合が多い。五十才女。下肢関節リウマチで歩行も不可能のものが本方を半年服用して普通に歩けるようになった。現代医学では脚気はビタミンB1の不足によると認められ、ビタミン剤を与えるが、本方を投与するだけでビタミン剤を一切用いずに脚気がなおる例は多数にあるところを見ると、脚気の本態はビタミン欠乏食のためではなく瘀血を原因とするビタミン利用能力の低下による症状ではないかと思われる。高血圧。本方で下る高血圧がかなり多い。結果的に見て高血圧には瘀血に原因するものが多いと言うことになる。その理由から本方によって脳溢血を予防することも可能である筈であるが、実験的にそれを強調する段階にない。低血圧症も本方によって正常値に恢復する例が多い。腰痛。本方の証のある人の腰痛は比較的簡単に治る。胃弱、胃下垂なども本方で良くなる場合が多い。ノイローゼ、躁鬱病等も本方で鎮静される場合が多い。其の他慢性腎炎、眼底出血、月経不順、顔面皮膚炎、耳鳴、蕁麻疹、顔面浮腫等。
相見三郎著


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊

3 駆瘀血剤
駆瘀血剤は、種々の瘀血症状を呈する人に使われる。瘀血症状は、実証では便秘とともに現われる場合が多く、瘀血の確認はかんたんで、小腹急結 によっても知ることができるが、虚証ではかなり困難な場合がある。駆瘀血剤は体質改善薬としても用いられるが、服用期間はかなり長くなる傾向がある。
駆瘀血剤の適応疾患は、月経異常、血の道、産前産後の諸病その他の婦人科系疾患、皮下出血、血栓症、動脈硬化症などがある。駆瘀血剤の中で、 抵当湯(ていとうとう)・抵当丸は陳旧性の瘀血に用いられる。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は瘀血の証と水毒の証をかねそなえたものであり、加味逍遙散はさらに柴胡剤、順気剤の証をかねそなえたものである。 
2 桃核承気湯(とうかくじょうきとう) (傷寒論)
〔桃仁(とうにん)五、桂枝(けいし)四、大黄(だいおう)三、芒硝(ぼうしょう)二、甘草(かんぞう)一・五〕
駆瘀血剤の中で、大黄牡丹皮湯についで実証に用いられる。したがって、瘀血の腹証である小腹急結は著明である。本方は、気の上衝が強く、頭 痛、めまい、不眠、上逆、精神不安、便秘、諸出血(下血、吐血、衂血「じっけつ、鼻血」、月経障害)などがあるものを目標とする。また瘀血のため全身灼熱 感、麻痺感があるが、瘀血が強くなると譫語(せんご、うわごと)をいったり、狂状を呈したりする。本方は、下剤である調胃承気湯(ちょういじょうきとう、 後出、承気湯類の項参照)に、気の上衝を治す桂枝と瘀血を治す桃仁を加えたものとしても考えることができる。したがって、のぼせて神経症状をひき起こした ものに使われる。
〔応用〕
駆瘀血であるために、大黄牡丹皮湯のところで示したような疾患に、桃核承気湯證を呈するものが多い。
その他
一 ヒステリー、ノイローゼ、神経衰弱、発狂、てんかんその他の精神、神経系疾患。
一 結膜炎、網膜炎、角膜炎、トラコーマ、麦粒腫、眼底出血その他の眼科疾患。
一 そのほか、鼻炎、蓄膿症、耳疾患、歯痛、歯槽膿漏、肺結核など。

《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会

53.桃核承気湯(とうかくじょうきとう) 傷寒論

桃仁5.0 桂枝4.0 芒硝2.0 大黄3.0 甘草1.5

(傷寒論)
太陽病不解,熱結膀胱,其人如狂血自下,下者愈,其外不解者,尚未可攻,当先解其外,外解巳,但少腹急結者,乃可攻之,宜桃核承気湯

(金匱要略)
産後七八日,無太陽証,少腹堅痛,此悪露不尽,不大便,煩躁発熱,切脉微実,再倍発熱,日晡時煩躁者不食,食則讝語,至夜即愈,宜大承気湯主之,熱在裏,結在膀胱也亦宜本方 (産後)


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
口唇部や歯ぐきが紫色あるいは暗赤色で,頭痛またはのぼせる傾向があり,下行結腸部に圧痛や宿便を認め,下肢や腰が冷えて尿量減少する。
本方は大黄牡丹皮湯,桂枝茯苓丸などと共に所謂駆瘀血剤の代表的処方であるが,本方とこの両者との鑑別は夫々の処方の項を参照のこと。しかしこの三者を合方して使用することも多い。本方を連用すれば所謂古血のある婦人の不妊症を治すこともある。本方が奏効すれば一時出血したりあるいは血塊を下すこともある。本方は通常虚弱体質には投与してはならない。本方を服用後下痢の甚だしい場合は桂枝茯苓丸あるいは当帰芍薬散に転方すべきである。また腹痛をおこした時は柴胡桂枝湯,平胃散などで治療すればよい。本方適応症状に浮腫を伴なうこともあるが,この浮腫は下半身および四肢に局限されており,もし本方を服用後も浮腫がとれず,あるいは逆に全身に浮腫を生ずる場合は五苓散を考慮すべきである。排尿痛,血尿を伴なった下半身の浮腫には猪苓湯が適する。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
頭痛やのぼせの傾向があって下腹部や足が冷えて便秘し,左下腹部に抵抗圧痛や宿便を認め尿量が減少するもの。
本方は瘀血又は古血を除き,瘀血に起因する諸種の症候群を緩解させる代表的処方として,広く知られた薬方である。瘀血とは血液中に疲労物質や老廃物質があり,酸性に傾いた非生理的血液で,しかもこれがためにもろもろの病的症状を伴うものもふくめて総括的に考えられており,視診上ヒフや可視粘膜が暗赤(紫)色を呈し,末梢血管があたかもウツ血状に見受けられ,自覚的には熱感,頭痛,のぼせの傾向があり,神経症状の伴うものがそれである。これらは常習便秘や門脈ウツ血,肝臓解毒機構の障害に起因するアチドーヂスまたは内分秘失調,更年期障害などの機能的病変と,神経症状などを含めた広範な不健康状態と考えられる。本方が適応するものは顔色栄養とも良好で丈夫な体質の者で,虚弱者,衰弱者には投与しない。通常一般に中年以降の年代層に多く見受けられるが,後天的な病変であるにしても,その多くはこれらの症候群を発現しやすい体質素因を本方による治療とともに,連用によって体質改善がなされる。


※内分秘失調は内分泌失調の誤植?

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○中等度以上に体力が充実し,体質のしっかりした人が瘀血による症状を呈し,便秘,上衝するもの。
○瘀血による症状が一般に激しく,精神錯乱をはじめとする種々な精神症状を呈するもの。
○瘀血による症状の主なものは,諸種の出血傾向,月経不順,月経困難,不妊症,口乾,手足の煩熱や原因不明の発熱,のぼせ,皮下静脈の怒張(青すじ),皮膚や粘膜の柴斑,出血斑,皮膚甲錯(肌あれ),頬や口唇,舌の辺縁などが暗紫色になるなどの症状である。
○瘀血があると,自覚的には下腹が固く張ったり,下腹部に腫塊をふれ,それを圧迫すると疼痛を訴えるような腹証がある。桃核承気湯の腹証は瘀血の腹証の一つで小腹急結という。
○小腹急結は特徴のある腹証で,左下腹部,腸骨窩に索状物を触れ,この部分に擦過性に圧迫すると,激しい圧痛を訴え,患者は思わず脚をちぢめる。ただこれは赤痢などにみられるS字状部の索状物とは異なるものである。



※柴斑? 紫斑の誤植。

漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○この処方の応ずる頭痛はほとど毎日痛みを訴える。時々発作性にくる呉茱萸湯証の頭痛とはちがう。しかし日によって頭痛のはげしい時と軽い時とがある。肩や頸がこると訴えるものが多い。
○類聚方広義に「経水不調,上衝甚しく,眼中厚膜を生じ,或は赤脈怒起,瞼胞赤爛,或いは齲歯疼痛,小腹急結の者を治す。また打撲損傷眼を治す。」そこでこの方は結膜,角膜の諸疾患で充血,疼痛が甚しく,大便が秘結し,小腹急結の状あるものに効があるばかりでなく,虹彩炎,毛様体炎,鞏膜炎などにも応用せられる。また月経閉止期の婦人の眼疾にこの方の適応症がある。
○この方は会陰部を強く打撲したため,尿道が腫張し,また尿道内に出血して血塊が尿道を塞ぎ,そのために尿閉を起したものに用いて著効がある。

※ほとど? ほとんどの誤植か?
※鞏膜炎(きょうまくえん) 鞏膜(強膜)の炎症。
強膜前面に充血・疼痛・膨隆などを起こす。
結核・リューマチ・膠原(こうげん)病などが原因。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
本方は調胃承気湯に桂枝,桃仁を加味した方剤で,調胃承気湯証に似て所謂血証を帯びるものに用いられる。即ち比較的新鮮な瘀血で症状がはげしく大便秘結の気味で,下腹部に急結の状があり,下血,吐血,衂血等のあるものに応用する。下腹部に於ける急結とは,この部に索状物を証明し,指頭を以て,これを擦過状に軽く触れる時に,疼痛を訴えることを云う。しかして急結状を証明する際には,吐血,下血等の症状がなくても本方を用いてよい。本方は調胃承気湯に桂枝,桃仁を加えた方剤で,桂枝,桃仁は局所の瘀血を去り,血行の障害を疎通する効がある。大黄,芒硝は瀉下の効と共に堅塊を解くの効があり,甘草は諸薬を調和する。本方は月経時に精神異常を呈し興奮する者,月経困難,胎盤残溜して下血の止まない場合,胎児が母体内で死んで娩出しない場合,産後発狂状となるもの,月経不順より来る諸患,歯痛,歯肉出血,眼疾,痔核,前立腺炎,尿道狭窄,骨盤腹膜炎,会陰部の打撲等に用いられる。


漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
(構成) 桃仁は実証の循環障害を治し,大黄,芒硝は之を助けて瀉下する。桂枝,甘草は気の上衝を治す。故に上部に於て気上衝による神経症状があり,下部及び体表に於て鬱血性の循環障害症状が見られる。上衝がつよいので下剤を以て誘導する働きを兼ねている。
運用 1. 実証鬱血性の体質で神経症状を呈する。頭部がのぼせて足が冷える。実証だから体格がよく筋肉も引しまり,脉も緊張がよくて稍浮んでいることも稍沈んでいることもある。但し稀ではあるが,一見虚証らしく見えて局所的な実のために本方の証を呈することがある。この場合でも脉は緊張しており,他の所見が本方に適合するから使ってよいのだ。望診上鬱血性であるのが本方の特徴で,顔色は赤黒い色調を帯び,殊に口唇や歯齦,時には舌までもチアノーゼ様に暗赤色乃至暗紫色を呈しており,皮膚もその傾向があって,部分的に細い静脈が鬱血して黒ずんだり,暗赤色に見えたりするし,同様の色を帯びたしみや斑紋が見られることも稀ではない,時には爪の色までその色調が見られることがある。
こうした鬱血は下腹部骨盤内に於て特に顕著で病の本はここに在ると思わ罪るけれども,時には患者の自覚症としては現われずに,頭痛,肩凝り,などの神経症状を主訴としてやって来ることが多い。その際も顔面皮膚には大なり小なり上記の所見が認められ,腹診すると腹壁の緊張は普通又は普通以上によく下腹部に於て少腹急結と称する次の所見がある。自覚的につれる感じ,それは痛みを伴うことがある。他覚的に抵抗と圧痛が認められる。その部位は左下腹に多いが,時には中央,右下腹にも認められることがある。その抵抗は境界があまり明瞭でなく,著しく硬いことはない。恐らくは静脈の鬱血怒張によるものであろう。総裂骨窩動静脈(殊に左側)及びそれに沿い抵抗があり圧痛を認めるのが普通である。この場合必ずしも搏動が亢進しているとは限らない。若し著しく亢進しているときは之に対応して上部に於ける神経症状が著明に発揚性を呈する。頭部顔面がのぼせて,足が冷えるのもこの現れで,下が鬱血のため冷えて,頭部では反って血が上りほてる感じを起すのだ。
恐らくは脳圧がたかまっていると思われる。但し顔面皮膚には鬱血が見られる。そのために頭痛,眩暈,耳鳴,肩凝り,のぼせ感等が強くなり,甚しいときは発狂性にさえなる。この狂状ということは特殊な場合だが桃核承気湯の一つの特徴でヒステリック,狂躁性,話の辻褄が合わないとか,度外ずれな振舞とかにヒントを得て本方を使うことがある。傷寒論 太陽病中篇に「太陽病解せ功;,熱膀胱に結び,その人狂の如く,血自ら下る。下る者は愈ゆ。その外解せざるものは尚未だ攻むべからず。当に先ずその外を解すべし。外解し已り,ただ少腹急結するものは乃ち之を攻むべし。」というのが之で太陽病即ち表熱の状態があってその熱が膀胱経という経絡(一種の刺戟伝導系)に及んで狂状を呈する。腰髄支配に関する部位で膀胱にも関連するが,同時に下腹部にも症状が現われ少腹急結となる。外証(表熱)があるものは禁忌だし,下血するものは自然治癒に赴くから服薬に及ばないとの意である。上の文中攻めるとは下すこと。少腹急結は前述の所見をいう。(後略)

運用 2. 実証の下部循環障害
運用1とほぼ軌を同じくするが,特に下腹部,骨盤内器組織,腰臀部,下肢等に鬱血を主とする循環障害が見られる場合で,月経不順,月経困難,子宮内膜炎,メトロパチー,附属器炎,流産癖等の婦人科疾患で下腹部疼痛,索引感,或は腫痛,或は子宮出血等のあるもの,痔,静脈瘤,打撲,急性大腸炎,虫垂炎,膀胱結石,淋等で出血或は腰腹痛を伴うもの,肛囲炎,癰や皮下膿瘍で皮膚又は肉芽の暗赤色のものなどにひろく使われる。この場合脉は概ね沈緊,腹証は運用1に準ずる。(後略)

運用 3. 実証の皮膚鬱血
皮膚病,じん麻疹,凍瘡等で暗赤色を呈し,下が冷えて上がのぼせるというものに使う。便秘勝ちである上,少腹に急結とか下部鬱血とかがあれば確診が下せる。

運用 4. 実証ののぼせ
のぼせる感じはあっても顔面は紅潮せず,頬がほてることもない。矢張り顔面皮膚には鬱血が見られる。そういう状態で足が冷え便秘するものとして歯痛,脳溢血,高血圧症,動脈硬化症,肺結核で喀血するものに使う。顔面紅潮するのは,瀉心湯や桂麻各半湯などでありそれらは足が冷えない。

運用 5. 実証の鬱血症状に伴う浮腫
例えば月経時の浮腫とか,月経不順に伴う浮腫とか或は男子でも鬱血があって浮腫するものを血分腫といい本方を使う。運用3に挙げたじん麻疹も限局性浮腫である。



漢方処方解説〉 矢数 道明先生
実熱の瘀血証で,少腹に急結があり,上逆の甚だしいものを目標とする。いわゆる駆瘀血剤を代表する処方である。血滞による瘀血症状としては,頭痛,眩暈,耳鳴り,不眠,動悸,腹痛,上逆,精神不安,甚だしきときは讝語,狂状となり,全身灼熱感,腰脚寒冷感,シビレ感等の血管運動神経症状を発し,他覚的に下腹部,ことに左下腹部腸骨窩下行結腸に相当する部位又はその附近に索状の抵抗物を触れ,指頭をもって擦過状に軽く触れると甚だしい圧痛が現われる。便秘することが多く,小便頻数,脈は緊で力があり,浮のことも沈のこともある。



勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此の方の傷寒蓄血,少腹急結を治するは勿論にして,諸血証に運用すべし。譬ば吐血,衂血止まざるが如き,此の方を用ざれば効なし。また走馬疳(頬部壊疽,水癌),断疽,出血止まざる者,此方に非ざれば治すること能はず,癰疽及び痘瘡、紫黒色にして内陥せんと欲する者,此方にて快下すれば験あり,その他荊芥を加へて痙病及び発狂を治し,附子を加えて血瀝腰痛,及び月信痛(月経痛)を治するが如き、其の効挙げて数えがたし。


【一般用漢方製剤承認基準】
桃核承気湯
〔成分・分量〕
桃仁5、桂皮4、大黄3、芒硝2、甘草1.5

〔用法・用量〕


〔効能・効果〕
体力中等度以上で、のぼせて便秘しがちなものの次の諸症: 月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症




【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


2.本剤を服用している間は、次の医薬品を服用しないこと
他の瀉下薬(下剤)



3.授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
相談


 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(5)高齢者。
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(7)次の症状のある人。
     むくみ
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(8)次の診断を受けた人。
     高血圧、心臓病、腎臓病
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ
消化器 はげしい腹痛を伴う下痢、腹痛


まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称 症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕


3.服用後、次の症状があらわれることがあるので、このような症状の持続又は増強が見られた場合には、服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
下痢

4.1ヵ月位(便秘に服用する場合には5~6日間)服用しても症状がよくならない場合は服
用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

5.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
6.本剤の服用により、予期しない出血があらわれた場合には、服用を中止し、医師、薬剤師
又は登録販売者に相談すること

〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注
意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕

保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくて
もよい。〕


【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】

注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
3.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。

(4)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(5)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(7)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(8)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
3´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔3.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には3´.を記載すること。〕
4.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
5.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕







製品名 ▼ 規格 単位 薬価 製造会社 販売会社
JPS桃核承気湯エキス顆粒〔調剤用〕  1g 6.7 JPS  JPS 
本草桃核承気湯エキス顆粒-M  1g 5.8 本草製薬  本草製薬 
テイコク桃核承気湯エキス顆粒  1g 5.8 帝國漢方  テイコクメディックス 
ツムラ桃核承気湯エキス顆粒(医療用)  1g 9.1 ツムラ  ツムラ 
ジュンコウ桃核承気湯FCエキス細粒医療用  1g 10.4 康和薬通  大杉製薬 
コタロー桃核承気湯エキス細粒  1g 8.5 小太郎漢方製薬  小太郎漢方製薬 
クラシエ桃核承気湯エキス錠  1錠 3.2 大峰堂  クラシエ 
クラシエ桃核承気湯エキス細粒  1g 9.3 クラシエ  クラシエ 
オースギ桃核承気湯エキスG  1g 10.3 大杉製薬  大杉製薬 

2012年6月22日金曜日

四君子湯(しくんしとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
四君子湯(しくんしとう)
本方は胃腸機能の甚し く衰えた虚證のものに用いる。食欲不振・嘔吐・腹鳴下痢し、脈は洪大にして無力、或は細小にして頻数、腹力は一体に乏しく、心下に力がない。痿白の兆が あって、言語力がなく、四肢倦怠するものを目標とする。本方中の人参は諸臓器の機能を盛んにし、朮は茯苓と共に胃内の停内を去り、かつ胃の機能を助け、甘 草は諸薬を調和し、また胃の活動を盛んにする。
以上の目標に従って胃腸虚弱症・慢性腹膜炎・嘔吐・下痢・食欲不振・諸出血・遺尿・半身不随等に応用される。また種々の加減方として広く使用される。


『漢方精撰百八方』

101.〔四君子湯〕(しくんしとう) 〔出典〕和剤局方

    〔処方〕人参、朮、茯苓 各4.0 甘草、生姜 各2.0 大棗3.0

    〔目標〕胃腸の消化機能がひどく衰え、その結果いろいろな症状を呈するものである。
  食欲がなく、少しものを食べるとすぐ胃が張って苦しくなり、顔色が蒼く、痩せて体重が少しも増えず、手足がだるく、疲れ易く、精気に乏しく、言語に力がない。
  また、ときには悪心、嘔吐、下痢、腹鳴などがあり、脈は小さく、あるいは細くて弱いか、大きくて力がない。腹部は、軟弱無力で心下部に振水音をみとめるか、あるいは、腹筋が少なく、腹壁が薄くて力がない。

    〔かんどころ〕痩せて顔色が悪く、胃腸の消化機能が衰えているもの。腹部の緊張が弱く、振水音がある。食後、手足がだるく、ねむくなる。

    〔応用〕胃腸虚弱症、胃潰瘍、慢性胃炎、萎縮性胃炎、胃アトニー症、胃下垂症、痔核、脱肛など

   〔治験〕現在59才の婦人、昭和35年秋から1年半、父が治療したが、余り神経質で手に負えず、神経科をやった私にまかされた。  既往に、肺結核、腎盂炎、チフス、猩紅熱などにかかったことがあり、昭和30年頃月経が閉止した。その頃からひどく痩せ、胸がつまったり、悪寒したりのぼせたりし、灸をしたら肩が凝り、夜眠れず、時々胃が張り、口がにがく、舌が白く、からだがだるいという。  既に、父が用いた処方は、補中益気湯、桂枝湯の加味方種々、安中散などであった。しかし、処方を変えるたびに、かえって訴えが増えてどうにもならないという。  私の初診は37年5月末で、その時の訴えは、疲れ易く、夜眠れない。疲れると下痢をし、腹が張る。気持ちの悪い汗が出るともいう。  患者は痩せて、骨と皮のような婦人。しかも、わずかについている筋肉が、軟弱で緊張が弱い。脈は浮細遅、顔色はわるく、眼結膜も蒼白で、貧血状である。腹部はぺしゃんこに凹み、両側の腹直筋だけがつっぱてちて、臍の上に動悸が亢進し、みぞおちに振水音がはっきりと聞こえる。私は、この患者に、四君子湯加附子(1.0)を与えた。はじめは心配したが、「こんどの薬はなんともありません」といわれて安心し、ずっとその処方を用い、次第に元気になって、食事もおいしいというようになった。
山田光胤


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
 7 裏証(りしょう)Ⅰ
虚弱な体質者で、消化機能が衰え、心下部の痞えを訴えるも の、また消化機能の衰退によって起こる各種の疾患に用いられる。建中湯類、裏証Ⅰ、 裏証Ⅱは、いずれも裏虚の場合に用いられるが、建中湯類は、特に中焦が虚したもの、裏証Ⅰは、特に消化機能が衰えたもの、裏証Ⅱは、新陳代謝機能が衰えた ものに用いられる。
裏証Ⅰの中で、柴胡桂枝湯加牡蠣茴香(さいこけいしとうかぼれいういきょう)・安中散(あんちゅうさん)は気の動揺があり、神経質の傾向を呈する。半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は、水の上逆による頭痛、嘔吐に用いる。

3 四君子湯(しくんしとう)  (和剤局方)
〔人参(にんじん)、朮(じゅつ)、茯苓(ぶくりょう)各四、甘草(かんぞう)一・五〕
本 方は、一般には、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)各一・五を加えて用いられているもので、胃部の虚弱(胃腸の消化機能の低下)と貧 血に用いられる。したがって、悪心、嘔吐、顔面蒼白(貧血)、食欲不振、胃内停水、腹鳴、下痢、四肢倦怠感などを目標とする。また、本方證には、下部出血 を伴うことがある。本方は、いちおう陽証体質に属する薬方であるが、本方の茯苓を乾姜にかえれば、陰証の人参湯(後出、裏証Ⅱの項参照)となるもので、 もっとも陰証に近い薬方である。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、四君子湯證を呈するものが多い。
一 胃腸虚弱、胃下垂症、胃アトニー症、胃カタルその他の胃腸系疾患。
一 遺尿、夜尿症その他の泌尿器系疾患。
一 そのほか、半身不髄、痔疾、脱肛、虚証の出血など。




一般用漢方処方の手引き』 厚生省薬務局 監修 薬業事報社
〔成分及び分量〕 人参4.0, 朮4.0, 茯苓4.0, 甘草1~2, 生姜3~4, 大棗1~2
用法及び用量〕 

効能又は効果〕 やせて顔色が悪くて,食欲がなく,つかれやすいものの次の諸症:胃腸虚弱,慢性胃炎,胃のもたれ,嘔吐,下痢

効能又は効果〕 和剤局方
古方の人参湯の類似方,人参湯より乾姜を去り茯苓を加えた処方である。一般的には生姜,大棗を加えて用いることが多い。胃腸虚弱で貧血の傾向があって元気の衰えたものに用いる基本の処方である。ただし胃腸虚弱の傾向があっても,顔色が赤かったり,また本方を服用して上衝の気味のあるものは服薬を中止する方がよい。

生薬名
参考文献名
人参 白朮 茯苓 甘草 生姜 乾生姜 大棗
処方分量集 4 4 4 1 1 1
診療の実際 4 4 4 1.5 1.5 1.5
診療医典     注1 4 4 4 1.5 1.5 1.5
症候別治療 4 4 4 1.5 1.5 1.5
処方解説     注2 4 4 4 1.5 0.5~1 1
後世要方解説  注3 4 4 4 1 1 1
漢方百話 4 4 4 1
応用の実際 4 4 4 1.5 1.5 1.5
明解処方 4 4 4 1.5 1.5 1.5
漢方処方集 3 3 4 1.5 1.5 1.5
漢方医学 4 4 4 1.5 1.5 1.5
精撰百八方   注4 4 4 4 2 2

成人病の漢方療法 4 4 4 2 2 2


 注1  胃腸示腸機能のはなはだしく衰えた虚証のものに用いる。食欲不振,嘔吐,腹鳴下痢し,脈は洪大にして無力,あるいは細小にして頻数,腹力は一体に乏しく,心下に力がない。顔色痿白の兆があって,言語に力がなく,四肢倦怠するものを目標とする。


 注2  元気の衰えたもの,胃腸の虚弱と貧血を目標とし,種々の疾患に用いる。脈は軟弱,腹証も弛緩性,アトニー性で軟弱である。胃内停水を認め,食欲不振,全体に元気の衰えたものを目標とする。古人は貧血気味で顔色蒼白,言語に力がなく,手足倦怠で,脈に力がないという五つの症があれば,四君子湯の目標がそろっているとした。


 注3   本方は諸病,極度の全身衰弱をきたした場合,とくに胃腸虚弱によって食欲が全く衰え,あるいは嘔吐して食が入らず脈・腹ともに虚弱のものに用いるのである。気虚とは元気の虚弱の意であり,また胃気の衰弱無力を意味するものである。

 注4   痩せて顔色がわるく,胃腸の消化機能が衰えているもの。腹部の緊張が弱く,振水音がある。食後,手足がたるく,ねむくなる。


【一般用漢方製剤承認基準】
 参苓白朮散
〔成分・分量〕
人参1.5-3、山薬1.2-4、白朮1.5-4、茯苓1.5-4、薏苡仁0.8-8、扁豆1-4、蓮肉0.8-4、桔梗0.8-2.5、縮砂0.8-2、甘草0.8-2

〔用法・用量〕
(1)散:1回1.5-2g 1日3回
(2)湯

〔効能・効果〕
体力虚弱で、胃腸が弱く、痩せて顔色が悪く、食欲がなく下痢が続く傾向があるものの次の諸症:
食欲不振、慢性下痢、病後の体力低下、疲労倦怠、消化不良、慢性胃腸炎


【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位症状
皮膚発疹・発赤、かゆみ


まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。


症状の名称症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。


〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


3.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬
剤師又は登録販売者に相談すること

4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕

(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にの
み服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕


保管及び取扱い上の注意
(1) 直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕


【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕


製品名 ▼ 規格 単位 薬価 製造会社 販売会社
ツムラ四君子湯エキス顆粒(医療用)  1g 19.8 ツムラ  ツムラ 
オースギ四君子湯エキス錠  1錠 7.9 大杉製薬  大杉製薬 
〔東洋〕四君子湯エキス細粒  1g 22.3 東洋薬行  東洋薬行 

2012年6月19日火曜日

参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)
本方 は脾胃即ち消化器系に作用するもので、四君子湯を原方とし、脾胃の虚を補い、湿を除き、留滞をめぐらし、気を調整する作用がある。平素胃腸虚弱にして食が 進まず、泄瀉し易いもの、また熱がなくて疲労し易く食欲不振のもの、及び大病後に疲労が甚しく食欲欠損の者等に用いられる。結核症に滋陰降下湯や黄連解毒湯等の苦寒の剤を用いて泄瀉を起した時は、速やかに此方を以て脾胃を補い泄瀉を治する。また貧血衰弱した婦人の白帯下・崩漏・下血等にも妙効あることがある。馬場辰二氏は腸内発酵性消化不良症に特効があると発表されている。
方中、人参・白朮・茯苓・甘草は四君子湯で脾胃の虚熱を補い、山薬・薏苡仁・扁豆・蓮肉等は皆脾を補い湿を除く、砂仁は胃を開き、桔梗は肺を和し、泄瀉を止める。
以上の目標に従って本方は慢性胃腸カタル・大病後の食欲不振・下痢・腸結核の一症・白帯下・下血・腸内発酵性消化不良等に応用される。

臨床応用 漢方處方解説』 矢數 道明著 創元社刊
『臨床応用 漢方処方解説』 矢数 道明著 創元社刊
76 参苓白朮散(じんしょうびゃくじゅつさん) 〔和剤局方〕
人参・山薬 各三・〇 白朮・茯苓 各四・〇 薏苡仁 五・〇 扁豆・蓮肉・桔梗・砂仁 各二・〇 甘草 一・五

右末となし、毎服二・〇、大棗の煎汁、または温湯、または玄米の重湯にて服用する。煎用してもよいが、末として用いる方が効果的である。著者は微温湯に食塩をわずかの量溶かし、塩湯で服用させることがある。

応用〕平常胃腸衰弱にして食進まず、泄瀉(水様性下痢)しやすいものに用いる。
本方は主として慢性胃腸炎・慢性下痢症・小児醗酵性消化不良症・泄瀉・腸結核等に用い、また大病後の食欲不振・白帯下・崩漏などに応用される。また苦寒の剤を用いて下痢し、食欲衰えるときは、速やかに服薬を中止して参苓白朮散を与えるとよい。

目標〕腸胃虚弱で、少しのことにも下痢しやすく、食欲なく、脈腹ともに軟弱で、貧血し、疲れやすく、冷え症である。水瀉性下痢のものが多く、一日二~三回ほど下痢し、食事が胃に入るとすぐ下痢するというものもある。すこしく腹満、腹鳴りがあり、ガスがたまるが、腹痛はほとんどともなわない。

方解〕脾胃すなわち消化器系に作用するもので、構成薬物は脾胃の虚を補い、湿を除き、停滞を行らし、気を調えるものである。
人参・扁豆・甘草は味甘く脾を補い、白朮・茯苓・山薬・蓮肉・薏苡仁は脾を補い、かつ湿を燥かす。砂仁は陳皮とともに味は辛く芳香で、湿を燥かし、滞を行らし、胃を開く。桔梗は上下の気を通ずるものである。

主治
   和剤局方(一切気門)に、「脾胃虚弱、飲食進マズ、多困少力、中満痞噎、心忪(心動悸・胸さわぎ)、気喘、嘔吐、泄瀉、及ビ傷寒咳嗽ヲ治ス。此薬中和ニシテ熱セズ、久シク服スレバ気ヲ養イ、神ヲ育シ、脾ヲ醒マシメ、色ヲ悦バシメ、正ヲ順ラシ、邪ヲ辟ク」とある。
勿誤方函口訣には、「此方ハ脾胃ノ弱キ人、食事進マズ、泄瀉シ易キモノヲ治ス。故ニ半井家(室町時代よりの宮廷医)ニテハ平素脾胃ノ至ツテ虚弱ナル人、動モスレバ腹ノ下ルト云フモノニ常用スト云フ」とあり、
漢陰臆乗には、「婦人ノ白帯下、崩漏(子宮出血)ノ者ニ用ヒテ奇効アリ」とある。
医方口訣集には、「予常ニ之ヲ用フル口訣三ツアリ。脾胃虚弱ノ人、別ニ発熱悪寒ノ候ナク、 但ダ労倦不食ノ証ヲ見ハスモノ、之ヲ与フ其ノ一ナリ。大病ノ後脾胃ヲ保養セント欲スルノ時、之ヲ与フ其ノ二ナリ。脾胃虚シテ常ニ瀉シテ易キ者ニ之ヲ投ズ、其ノ三ナリ。半井家日用ノ薬ナリ」とある。

鑑別
真武湯75(下痢・虚寒・目眩、心悸) ○人参湯111(下痢・虚寒、小便自利、口唾) ○桂枝人参湯35(下痢・表証、熱あり、頭痛、脈株弱)


 〔参考
馬場辰二氏、参苓白朮散の奇跡(漢方 二巻二号)
矢数道明、参苓白朮散の治験(漢方 二巻九号)

治例
(一) 腸内醗酵性消化不良
大正一二年ごろのこと、某公爵の長男、当時九歳の頑固な下痢症につき治療を委託された。
虚弱な体質で、腹部軟弱、一日数回の下痢がなかなか止まらない。食欲はあり、熱もない。小児専門の大家の方も招いて立ち合ってもらったが、快方に向かわない。
検便してみると、淡黄色下痢便の中に多数の泡沫を認め、粘液も少しあって、酸臭を放っている。球菌や桿菌もあり、腸内醗酵性消化不良症という病名をつけた。
そのうち木村博昭先生が紹介されて往診し、煎薬をくれた。粥をどんどん食べてよいという。服薬後一日にして検便してみると、不消化性のものも細菌もきれいにとれていた。二日の後には下痢も止まって普通色の有形便が出た。
   また同家の五歳の三男が、同じような下痢を起こし、検便も同じであったが、この木村先生の薬を二日のんだら治ってしまった。その木村先生のくれた漢方薬をよく調べたら、これが参苓白朮散であることがわかったのであった。自分は先人の経験の中に、「腸内醗酵性消化不良症に用いて、その効神のごとし」という一項を加えたいと思う。
(馬場辰二氏、漢方 二巻二号)

(二) 醗酵性下痢
二五歳の婦人。体重はやっと四〇キロ以下(一〇貫ぐらい)しかない。痩せて顔色は蒼白で、冷え症、弛緩性体質で、子供のときから下痢がちであった。夏より冬の方が下痢しやすい。
今年は四月から下痢が始まり、毎日二~三回泄瀉様で、二ヵ月の間に四キロ(一貫目)も痩せてしまった。病院で詳しく診てもらったが、醗酵性の下痢といわれた。
   脈も腹も軟弱で、胃内停水があり、腹鳴と心悸亢進がある。参苓白朮散末を一日五グラム、二回に分けて服用させたところ、体が温まって、元気が出て、気分がよく、食欲が進み、下痢が止まった。四〇日間服用してほとんどよくなり、体重も増加した。
(著者治験、漢方 二巻九号)

(三) 胃下垂症
二一歳の女子。一見して痩せさらばえて骨隆く、顔色蒼白貧血性で、正視功識さえ気の毒なほど羸痩し、疲労して無気力の様子である。訴えは本人よりも附添いの母親からきき出すほど、応答もおぼつかない衰弱ぶりであった。
症状がひどくなったのは二年ほど前からであるが、五年前に虫垂炎の手術をうけ、それから内臓下垂が始まった。レントゲンで診てもらうと、胃は骨盤まで下がっているといわれたという。
現在の主訴は、お腹にある内臓が全部一緒に下の方へ落ちてしまうような感じ、少し長く立っていると気持がわるくなり、下腹が痛んできて立っていられなくなる。全身の倦怠感がひどく、何も仕事ができない。食欲が全くなく、噯気が出る。足冷・心動悸・背の凝り・腰の痛みなどを訴える。年ごろなのに見合いもできないでかわいそうだと母親は悲しんでいる。
生理は毎月遅れがちで、終わったあと必ず下痢を起こすのが習慣である。脈は軟弱で、腹は弛緩して軟弱陥没し、胃内停水が著明に認められる。初め柴芍六君子湯を与えてみた。すると久しぶりで食欲が出て少し太ってきた。しかし月経後の下痢で再び痩せてしまったという。
そこで参苓白朮散末二グラムずつを二回服用させたところ、食欲が非常に良好となり、日に日に体力が回復し、今度は生理後の下痢が起こらず、四〇日後には顔色紅潮し、皮膚の色つやがよくなり、体力は充実してきた。
参苓白朮散を服用し始めて五ヵ月後には、腹部はほどよく充実し、胃下垂、内臓下垂が治ったとみえ、立っていてもなんともなく、太って別人のようになり、娘らしくなった。これなら見合いもできるし、結婚してもさしつかえないと大いに感謝された。
(著者治験、和漢薬 一三一号)

(四) 慢性胃腸炎
五六歳の婦人。よくよく痩せて、蒼白の顔貌は全く元気なく、白髪が多くて六〇歳以上に見える。四年ほど前から胃腸が弱くなり、一昨年はしばしば吐いたが今は嘔吐はなく、嚥下困難がある。約一年ほど前から下痢水様便で一日三回ぐらい、腹鳴りがある。冷え症で夏の土用中でもカイロを腰に当てている。全身倦怠感がひどく、この一年の間に八キロ(二貫目)も痩せ、もう身も心も細るばかりであるという。
脈も腹も軟弱で、胃内停水があり、心下部水分の左側あたりに硬結を触れ、圧痛がある。何か悪性腫瘍でもあるような感じがする。真武湯にしようかと思ったが、先に使いなれた参苓白朮散にしてみようと、二グラムずつ三回、微温湯に食塩を少量入れて、これでのむようにさせた。
心配していたところ、一〇日分服用後、とても元気になって来院した。この薬を三日分のんだところ、身体が温まってとても元気づき、食事もおいしく、あの不快な嚥下困難がきれいに治り、下痢がみごとに止まって腹鳴りも倦怠も忘れたようである。それよりも驚いたことは、秋になって涼しくなったのに、足袋をはくのを忘れることがあり、カイロもやめることができたという。
四年間も下痢していたのを、一〇日分の服薬ですっかり治ったということは、私が参苓白朮散を用いた数十例のうち、最も顕著な卓効例である。本方を二ヵ月ほどのんですっかりよくなり、悪性腫瘍の心配もなくなった。以来八年になるが、元気で家事の手伝いをしている。
(著者治験)


明解漢方処方 (1966年)』 西岡 一夫著 ナニワ社刊
35 参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん) (和剤局方)

 茯苓 白朮各四・〇 人参 山薬 扁豆 蓮肉各三・〇 薏苡仁八・〇 桔梗二・五 縮砂二・〇 甘草一・五(三四・〇) 以上を細末とし、一日二・五宛一日三回服用する。
 四君子湯の類方で、胃腸弱く食慾不振で嘔吐下痢の症あるものに用いるが,表症(発熱、悪感)のないことが大切である。即ち四君子湯と殆んど目標は変らない。ただ貧血冷え症の婦人の帯下、下血に用いられる点が僅かに違うだけである。が、これとても四君子湯でもよいかも知れない。慢性胃腸病。大病後の食慾不振。婦人帯下、崩漏。
文献 「参苓白朮散の運用につ感て」 馬場辰二(漢方の臨床2、1、50)





一般用漢方処方の手引き』 厚生省薬務局 監修 薬業事報社
参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)
〔成分及び分量〕 人参3.0,山薬1.5~3,朮3~4,茯苓3~4、薏苡仁5~8,扁豆2~4,蓮肉2~4,桔梗2~2.5,縮砂2.0,甘草1.5

用法及び用量〕 (1)散:1回1.5~2g,1日3回 (2)湯

参考文献名
生薬名 人参 山薬 薯蕷 白朮 茯苓 薏苡仁 扁豆 白扁豆 蓮肉 桔梗 縮砂 砂仁 甘草 用法・用量
処方分量集

1.5 1.2 1.5 1.5 0.8 1 0.8 0.8 0.8 0.8 *1
診療の実際 注1
3 3 4 4 8 3 3 2.5 2 1.5 *2
診療医典 注2
3 3 4 4 8 3 3 2.5 2 1.5 *3
症候別治療

3 1.5 3 3 5 4 4 2 2 1.5
処方解説 注3
3 3 4 4 5 2 2 2 2 1.5 *4
後世要方解説

3 3 4 4 5 2 2 2 2 1.5 *5
漢方百話(続)

3 3 4 4 5 2 2 2 2 1.5 *6
漢方百話(続々)

1.5 1.2 1.5 1.5 0.8 1 0.8 0.8 0.8 0.8 *7
応用の実際 注4
3 1.5 3 3 5 4 4 2 2 1.5
明解処方

3 3 4 4 8 3 3 2.5 2 1.5 *10
漢方処方集

2 2 2 2 1 1 1 1 1 2 *8
漢方処方集便法

3 4 3 4 6 2 4 2 2 2 *9


*1 末として毎服2.0gを温湯または玄米の重湯にて服す。1日3回。
*2 以上細末とし1日3回2.5gずつ服用。
*3 以上細末とし1日3回2gずつ服用。
*4 末とし毎服2.0大棗の煎汁または温湯,または玄米の重湯にて服する。煎用してもよい。
*5 末とし毎服1.5~2.0,1日3服,棗湯または温湯で服す。あるいは粳米飲(玄米の重湯)で服してもよい。あるいは煎用するのもよい。なお略解説での項では、末となし毎服2.0~3.0棗湯または温湯,または玄米の重湯にて服す。やむを得ざれば煎用す。
*6 末を2g宛2回,空服時に微温湯にほんの少し食塩を入れて飲ませる。
*7 左末とし毎服2.0を温湯または玄米の重湯にて服す。1日3回。
*8 左の割合で混合散剤とし1回2.0~3.0を棗湯で服用。
*9 常煎法。
*10 以上を細末とし,1日2.5宛1日3回服用する。

効能又は効果〕 やせて顔色が悪く,食欲がなく下痢が続く傾向のあるものの次の諸症:食欲不振,慢性下痢,病後の体力低下,疲労倦怠

解説〕  和剤局方
四君子湯の去加方である。四君子湯と用法は変わらず,胃腸が弱く食欲不振で嘔吐下痢の症状があるものに用いるが,発熱,悪寒のないことが大切である。散は温湯,または玄米の重湯,または大棗の煎汁で服用する。

 注1  平素胃腸虚弱にして食が進まず,泄瀉しやすいもの。また熱がなくて疲労しやすく食欲不振のもの,および大病後に疲労がはなはだしく食欲欠損のもの等に用いられる。

 注2  平素胃腸虚弱にして食が進まず,泄瀉しやすいもの。また熱がなくて疲労しやすく食欲不振のもの,および大病後に疲労がはなはだしく食欲欠損のもの等に用いられる。

  注3  腸胃虚弱で,少しのことにも下痢しやすく,食欲なく,脈腹ともに軟弱で,貧血し,疲れやすく,冷え症である。水瀉性下痢のものが多く,一日2~3回ほど下痢し,食事が胃に入るとすぐ下痢するというものもある。すこしく腹満,腹鳴りがあり,ガスがたまるが,腹痛はほとんどともなわない。

勿誤方函口訣には,「此方ハ脾胃ノ弱キ人,食事進マズ,泄瀉シ易キモノヲ治ス。故ニ半井家(室町時代よりの宮廷医)ニテハ平素脾胃ノ至ツテ虚弱ナル人,動モスレバ腹ノ下ルト云フモノニ常用スト云フ」とあり,医方口訣集には,「予常ニ之ヲ用フル口訣三ツアリ。脾胃虚弱ノ人,別ニ発熱悪寒ノ候ナク, 但ダ労倦不食ノ証ヲ見ハスモノ,之ヲ与フ其ノ一ナリ。大病ノ後脾胃ヲ保養セント欲スルノ時,之ヲ与フ其ノ二ナリ。脾胃虚シテ常ニ瀉シテ易キ者ニ之ヲ投ズ,其ノ三ナリ。半井家日用ノ薬ナリ」とある。

  注4  体質も胃腸も虚弱で食欲がなくて下痢するもの,寝ているほどではないが身体がだるく1日に2~3回下痢するもの,慢性の下痢で真武湯を用いても効のないときなど。



※*6の空服時は、空腹時の誤植?


【一般用漢方製剤承認基準】
 参苓白朮散
〔成分・分量〕
人参1.5-3、山薬1.2-4、白朮1.5-4、茯苓1.5-4、薏苡仁0.8-8、扁豆1-4、蓮肉0.8-4、桔梗0.8-2.5、縮砂0.8-2、甘草0.8-2

〔用法・用量〕
(1)散:1回1.5-2g 1日3回
(2)湯

〔効能・効果〕
体力虚弱で、胃腸が弱く、痩せて顔色が悪く、食欲がなく下痢が続く傾向があるものの次の諸症:
食欲不振、慢性下痢、病後の体力低下、疲労倦怠、消化不良、慢性胃腸炎


【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。


〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


3.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬
剤師又は登録販売者に相談すること

4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕

(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にの
み服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕


保管及び取扱い上の注意
(1) 直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕


【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

2012年6月11日月曜日

甘草湯(かんぞうとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

甘草湯
本方は甘草一味からなる方剤で、すべての急迫症状を緩和する目的で用いられる。即ち炎症・腫脹等の症状が軽くて、咽痛の甚しいもの、咳嗽の頻発するもの等に応用して意外の効を奏することがある。例えば急性咽喉カタル・胃痙攣・反射性咳嗽等に用いる。
また、痔核・脱肛等で疼痛の甚しい場合に、本方の煎汁を以て温湿布を施す時は、鎮痛の効がある。


漢方精撰百八方』  
97.〔甘草湯〕(かんぞうとう)

〔出典〕傷寒論

〔処方〕甘草3.0

〔目標〕種々な急迫症状(急に起こる非常に激しい症状)に用いる。

〔かんどころ〕激しい、急迫的な症状に、何によらず応用してみる。

〔応用〕急迫性の咳、激しい咽喉痛や口内炎の痛み、発作性の腹痛などに、内服したり、或いは含嗽料として用いる。  激しい痔痛、打撲痛などに、外用(湿布)する。

〔治験〕私は身体が過労になったりすると、口の中にアフター性口内炎が出来て、食物をとるのに痛くて困る。ひどくなると、話をするのもつらいことがある。こういうとき、甘草湯でうがいをすると、口中がさっぱりして、一時、痛みが楽になる。そして、2,3日これを続けると、次第に治ってゆく。  

「外用の例」2,3年前、35才ぐらいの男の人が来院した。
  痔がひどく痛む。だいぶ前から痔瘻があって、肛門のまわりに1,2カ所、膿の出るところがある。昨日あたりから、膿の出が止まって、中にたまっているらしい。これから、社内野球に行くんだから、ちょっと切って下さいというのである。
   私は、「切るのは簡単だが、切ったら野球になど行けない。私にまかせるなら、切らずに痛みをとってあげる」といったところ、患者がお願いしますという。
そこで、やや多量甘草湯を作り、洗面器に入れて、電気コンロで温めながら、布にひたして、患部を温湿布した。10分ばかりの間、何度か湿布をとりかえると、患部の瘻孔が開いて、少し膿が出たらしく、湿布に黄色い膿が僅かに付着した。すると、痛みがいっぺんに楽になったという。
山田光胤



漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
6 甘草湯(かんぞうとう)  (傷寒論、金匱要略)
〔甘草(かんぞう)八〕
本方は、裏証Ⅱとは薬効的には関係ないが、つぎにのべる薬方の基本としてここにかかげたものである。
本方は、神経の興奮による各種の急迫症状を緩解するために用いられる。したがって、炎症(発赤、腫張)はそれほど強くはないのに、痛みが激しいものに用いられる。また、鎮痛の目的で外用される。
外用:咽喉痛の際のうがいや痔の際に使う。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、甘草湯證を呈するものが多い。
一 胃痙攣、腹痛その他の胃腸系疾患。
一 尿閉、排尿痛その他の泌尿器系疾患。
一 そのほか、急性咽喉炎、咽喉痛、アフター性口内炎、咳嗽、痔核、脱肛、肛門周囲炎、食中毒、薬物中毒、外傷、歯痛、瘭疽など。



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
12.甘草湯(かんぞうとう) 傷寒論
 甘草8.0 水300ccで煮て200ccとし,100ccずつ服用または外用として温罨法とする。

(傷寒論)
「少陰病,二三日,咽痛者,可与甘草湯,不差与桔梗湯」(少陰)

漢方研究〉 1969年10月号
〔目標〕消化管の急迫性,またはケイレン性の激痛に主として用いる。(内服。炎症や腫れが強くないのが特徴)皮膚または粘膜の腫れまたは痛みに外用する。(患部を濃い液で湿湿布する)

〔応用〕
内服
①口腔内の痛み・・・・・・口内炎,歯痛など。
②咽喉,食道の痛み・・・・・・「傷寒論」に少陰病二,三日咽痛の者に用いると述べている。
③声がれ・・・・・・経験的に用いてよく効いている。
④胃痛,腹痛,胃けいれん・・・・・・腹筋などが緊張して板状となったもの。
⑤胃潰瘍,十二指腸潰瘍・・・・・・とくに疼痛緩解によく,鎮痛剤無効のものによい。
⑥排便痛,排尿痛・・・・・・「薬徴」と裏急,攣急,下利を兼治する。
⑦嘔吐・・・・・・「薬徴」には吐逆,衝逆にようとあり「類聚方広義」にも悪心,吐逆するものに用いてよい場合があると記している。
⑧せき・・・・・・反射性またはケイレン性のせきに用いる。
⑨食中毒・・・・・・牛肉,馬肉,キノコ類の中毒。
⑩薬物中毒・・・・・・四塩化エチレン,硫酸ストリキニーネ,破傷風毒素,ジフテリア毒素,アルコールなどの中毒を抑制する。
⑪副作用予防・・・・・・パス,ストマイ,スルファチゾールなどの副作用防止に新薬と併用する。
⑫肝機能障害・・・・・・脂質代謝作用があり,利胆効果が期待される。
⑬食品添加物の解毒・・・・・・上記⑩⑪と同じく利用できる。
⑭アレルギー疾患・・・・・・アレルギー性の湿疹,じんま疹,皮ふ瘙痒症,その他に用いられる。

外用・・・・・・主として温湿布に用いる。
①痒核,脱肛など肛門部の激しい痛み。
②陰部の腫痛,瘙痒。
③打撲,刺し傷,虫さされなどの痛み。
④眼部の腫痛。

<加味用>・・・・・・エキス剤の場合,甘草湯とはいうものの,一味の構成なので,これを加味剤として応用できる。

〔鑑別〕
芍薬甘草湯・・・・・・筋の拘攣,拘急,攣急に同じく用いるが,芍薬と合わせることにより,手,足,腰などの痛みに比較的よく使われる。甘草湯は消化管の粘膜,または平滑筋,あるいは皮膚,粘膜に直接効くことが多く,芍薬甘草湯は深部の平滑筋,横紋筋にも効くものと考えられる。

安中散料・・・・・・同じく胃痛,腹痛に使われるが,安中散料はシクシクと持続的に痛むのに対し甘草湯は急迫性またはけいれん性の激しい痛みに用いる。

桔梗石膏・・・・・・これは炎症,化膿が比較的強いが,甘草湯は炎症,発赤,化膿があまりなく,せきなどを伴う咽痛に用いることが多い。

〔適応症〕アレルギー疾患,薬物中毒,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,急性咽喉炎,口内炎,歯痛,嗄声,けいれん性咳嗽,胃痛,胃けいれん,排尿痛,痔核,脱肛,陰部瘙痒症,湿疹,じんま疹,かぶれ,薬物過敏症,食中毒

〔参考〕甘草の成分については,グリチルリチン,リクイリチン,ビオチン,ショ糖,ブドウ糖などが含まれている。薬理作用については胃,腸管運動の緊張緩和作用,鎮痛,鎮痙作用,抗潰瘍作用,胃液分泌抑制作用,解毒作用,皮膚アレルギー抑制作用,脂質代謝作用,副腎皮質ホルモン増強作用および解離作用などが報告されている。(本誌1963年10月号,66年7月号,67年7月号,68年3月号,69年3月号,10月号など甘草の記事ご参照)


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生

本方は甘草一味からなる方剤で,すべての急迫症状を緩和する目的で用いられる。即ち炎症,腫脹等の症状が軽くて,咽痛の甚しいもの,咳嗽の頻発するもの等に応用して意外の効を奏することがある。例えば急性咽喉カタル,胃痙攣,反射性咳嗽等に用いる。また痔核,脱肛等で疼痛の甚しい場合に,本方の煎汁を以て温湿布を施す時は,鎮痛の効がある。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○種々な急迫症状(急におこる非常に激しい症状)
○瘭疽,諸種の腫痛や化膿瘡などで,痛みの甚だしいものの愚部に濯ぐとよい(薬湯で湿布したり,その中へ指などをつける。)
○燈下医談には,こういうときは,甘草を濃く煎じて用いたほうがよいように書いてある。
○古家方則には,胃中不和及諸急迫して激しく痛むものによいとある。胃中不和の激痛とは胃痙攣のことであろう。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
すべての気逆(神経の興奮)による急迫症状を緩和するに用いられ,胃痙攣にしばしば使われる。また炎症や腫脹等の症状は軽くて咽痛の激しいもの,痙攣性に咳嗽の頻発するものなどに内服する。また痔核,脱肛などで急迫し,疼痛の甚だしい場合や,また陰部の腫痛あるいは瘙痒の甚だしいものなどに,外用温湿布として用いる。病名として列挙すると,急性咽喉炎,胃痙攣,痙攣性咳嗽,歯痛,窒息,尿閉,排尿痛,嗄声,薬物その他,牛肉,馬肉,菌類等の中毒等に内用し,刺痛(とげをさしたときの痛みに粉にしてつける)痔核,脱肛の疼痛(温湿布),潰瘍痛等に外用する。
(目標)急迫を緩解するもので,直接滑平筋,皮膚粘膜等に接触することによる奏効することが多い。炎症性症状は軽く,発赤腫張等が少なく,急迫的疼痛,痙攣性疼痛激しいものほどよく効く,胃痙攣のときは,腹筋緊張して板のごとく,鎮痛剤の注射などうけつけないというひどい痛みほどよい。それゆえ,咽喉,食道,胃,腸,肛門,皮膚,粘膜等の急迫性疼痛によく奏効する。


類聚方広義〉 尾台 榕堂先生
凡そ紫円,備急円,梅肉丸,白散等を用い,未だ快吐下を得ず,悪心,腹痛,苦楚悶乱する者,甘草湯を用ふれば則ち吐瀉倶に快く,腹痛頓に安し。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方も亦其の応用広し。第1咽痛を治し,又諸薬吐して納まらざる者を治し,又毒薬を解し,又蒸し
 薬にして脱肛痛楚を治し,末にして貼すれば毒螫竹木刺等を治す。


【一般用漢方製剤承認基準】

甘草湯
〔成分・分量〕
甘草2-8
〔用法・用量〕
(1)散:1回0.5g 1日2回
(2)湯:少しずつゆっくり飲む。
(3)外用:煎液で患部を温湿布する。
〔効能・効果〕
激しいせき、咽喉痛、口内炎、しわがれ声外用:痔・脱肛の痛み
《備考》
注)体力に関わらず、使用できる。【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】

(内服)
【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.短期間の服用にとどめ、連用しないこと
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


 相談すること 
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称 症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。

〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕


3.5~6回服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、 薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
体力に関わらず、使用できる。


〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕

保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕

【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
体力に関わらず、使用できる。



(外用)
【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
長期連用しないこと
〔グリチルチリン酸等を1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上 )含有する坐剤(軟カプセル剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕

 相談すること 
1.次の人は使用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
〔坐剤(軟カプセル剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕
(3)高齢者。
〔グリチルチリン酸等を1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する坐剤(軟カプセル剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕
(4)薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人。
(5)次の症状のある人。
むくみ
〔グリチルチリン酸等を1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する坐剤(軟カプセル剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔グリチルチリン酸等を1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は
甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する坐剤(軟カプセル剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕
(7)湿潤・ただれ・やけど・外傷のひどい人。
(8)傷口が化膿している人。
(9)患部が広範囲の人。
2.使用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに使用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ、はれ

まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称 症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。

〔グリチルチリン酸等を1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は甘草と
して1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する坐剤(軟カプセル
剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕

3.10日間位使用しても症状がよくならない場合は使用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
体力に関わらず、使用できる。
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に使用させる場合には、保護者の指導監督のもとに使用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)外用にのみ使用すること。
(3)目に入らないよう注意すること。
(3)´目に入らないよう注意すること。万一、目に入った場合には、すぐに水又はぬるま湯で洗うこと。なお、症状が重い場合には、眼科医の診療を受けること。
〔エアゾール剤の場合に記載すること。〕
(4)本剤が軟らかい場合には、しばらく冷やした後に使用すること。また、硬すぎる場合には軟らかくなった後に使用すること。
〔坐剤(軟カプセル剤を除く)の場合に記載すること。〕
(5)肛門にのみ使用すること。
〔坐剤の場合に記載すること。〕
(6)肛門部にのみ使用すること。
〔液剤、軟膏剤又はエアゾール剤の場合に記載すること。〕
(7)使用前によく振とうすること。
〔必要な場合に記載すること。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる.)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1. 使用に際しては、説明文書をよく読むこと
2.次の人は使用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
〔坐剤(軟カプセル剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕
(3)高齢者。
〔グリチルチリン酸等を1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する坐剤(軟カプセル剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕
(4)薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人。
(5)次の症状のある人。
むくみ
104
〔グリチルチリン酸等を1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する坐剤(軟カプセル剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔グリチルチリン酸等を1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する坐剤(軟カプセル剤を含む)又は注入の用法をもつ軟膏剤の場合に記載すること。〕
(7)湿潤・ただれ・やけど・外傷のひどい人。
(8)傷口が化膿している人。
(9)患部が広範囲の人。
2´服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´を記載すること。〕
3.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
4.火気に近づけないこと
〔引火性液剤又はエアゾール剤の場合に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
体力に関わらず、使用できる。


医療用漢方 甘草湯
効能 激しい咳、咽喉痛の緩解。
用法 通常、成人1日6.0gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
副作用
【重い副作用】 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
クラシエ甘草湯エキス細粒



※甘草湯の別名:忘憂湯(ぼうゆうとう)
原南陽(はらなんよう)による命名。
甘草湯の効き目に即効性があり、「憂いを忘れる」という意味。
諸急痛スル者ヲ治ス。眼胞熱腫、前陰腫痛、或ハ痒ヲ為ス、又湯火傷モマタ洗フベシ。
独勝散(どくしょうさん)とも。



※ 燈下医談(とうかいだん;灯下医談)
華岡青洲(はなおかせいしゅう) 1760-1835


※滑平筋? 平滑筋の誤植か?



※苦楚(くそ) 苦痛。辛苦。
※紋欄(もんらん) もだえ苦しんで、正常な精神状態でなくなること。
※痛楚(つうそ) ひどく痛み苦しむこと。苦痛がひどいこと。また、そのさま。
※毒螫 毒虫等が人や動物を刺すこと

2012年6月10日日曜日

葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい) 効能・効果 と 副作用 別名:葛根湯加辛夷川芎(かっこんとうかしんいせんきゅう)


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊

4 表証
表裏・内外・上中下の項でのべたように、表の部位に表われる症状を表証という。表証では発熱、悪寒、発汗、無汗、頭痛、身疼痛、項背強痛など の症状を呈する。実証では自然には汗が出ないが、虚証では自然に汗が出ている。したがって、実証には葛根湯(かっこんとう)麻黄湯(まおうとう)などの 発汗剤を、虚証には桂枝湯(けいしとう)などの止汗剤・解肌剤を用いて、表の変調をととのえる。

2 葛根湯(かっこんとう)  (傷寒論、金匱要略)
〔葛根(かっこん)八、麻黄(まおう)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)各四、桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)各三、甘草(かんぞう)二〕
本方は、つぎにのべる桂枝湯に葛根、麻黄を加えたもの、また、麻黄湯の杏仁(きょうにん)を去り、葛根、生姜、大棗を加えたものとして考えら れる。本方は、麻黄湯についで実証の薬方であり、太陽病のときに用いられる。本方證では汗が出ることなく、悪寒、発熱、脈浮、項背拘急、痙攣または痙攣性 麻痺などを目標とする。発熱は、全身の発熱ばかりでなく、局所の新しい炎症による充実症状で熱感をともなうものも発熱とすることがある。また、皮膚疾患で 分泌が少なかったり、痂皮を形成するもの、乳汁分泌の少ないものなどは、無汗の症状とされる。本方は特に上半身の疾患に用いられる場合が多いが、裏急後重 (りきゅうこうじゅう、ひんぱんに便意を催し、排便はまれで肛門部の急迫様疼痛に苦しむ状態)の激しい下痢や、食あたりの下痢などのときにも本方證を認め ることがある。本方の応用範囲は広く、種々の疾患の初期に繁用される。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、葛根湯證を呈するものが多い。
一 感冒、気管支炎、気管支喘息その他の呼吸器系疾患。
一 赤痢、チフス、麻疹、痘瘡、猩紅熱その他の急性熱性伝染病。
一 急性大腸炎、腸カタル、腸結核、食あたりその他の胃腸系疾患。
一 五十肩、リウマチその他の運動器系疾患。
一 皮膚炎、湿疹、じん麻疹その他の皮膚疾患。
一 よう、瘭疽などの疾患。
一 蓄膿症、鼻炎、中耳炎、結膜炎、角膜炎その他の眼科、耳鼻科疾患。
一 そのほか、リンパ腺炎、リンパ管炎、小児麻痺、神経痛、高血圧症、丹毒、歯齦腫痛など。
葛根湯の加減方
(1) 葛根湯加辛夷川芎(かっこんとうかしんいせんきゅう) 葛根湯加川芎辛夷
葛根湯に辛夷、川芎各三を加えたもの〕
(2) 葛根湯加桔梗薏苡仁(かっこんとうかききょうよくいにん)
葛根湯に桔梗二、薏苡仁八を加えたもの〕
(3) 葛根湯加川芎大黄(かっこんとうかせんきゅうだいおう)
葛根湯に川芎三、大黄一を加えたもの〕
(4)葛根湯加桔梗石膏(かっこんとうかききょうせっこう)
葛根湯に桔梗二、石膏一○を加えたもの〕
以上四つの加減法は、葛根湯證で頸から上の充血、化膿症を治すもので、蓄膿症、中身炎、咽喉疼痛、眼病一般その他に用いられる。
その中で、辛夷川芎や桔梗薏苡仁の加減は鼻疾患に多く用いられ、桔梗薏苡仁のほうは、特に化膿の激しく、膿汁の多いものに用いられる。川芎大 黄の加減は、炎症が激しく、膿も多く、痛みも強いものである。桔梗石膏の加減は、鼻炎の初期のように炎症によって患部に熱感のあるもので、化膿はそれほど 進んでいない。
(5) 葛根加半夏湯(かっこんかはんげとう)
葛根湯に半夏四を加えたもの〕
葛根湯證に嘔吐をかねたものである。
(6) 葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)
葛根湯に朮三、附子一を加えたもの〕
葛根湯證で、痛みが激しく、陰証をかねたものに用いられる。したがって、腹痛を伴うことがある。本方は、附子と麻黄、葛根、桂枝などの組み合 わさった薬方であるため、表を温め表の新陳代謝機能を高めるが、本方證には身体の枯燥の状は認められない。特に神経系疾患、皮膚化膿性疾患に、本方證のも のが多い。 
5 麻黄剤(まおうざい)
麻黄を主剤としたもので、水の変調をただすものである。したがって、麻黄剤は、瘀水(おすい)による症状(前出、気血水の項参照)を呈する人に使われる。なお麻黄剤は、食欲不振などの胃腸障害を訴えるものには用いないほうがよい。
麻黄剤の中で、麻黄湯葛根湯は、水の変調が表に限定される。これらに白朮(びゃくじゅつ)を加えたものは、表の瘀水がやや慢性化して、表よ り裏位におよぼうとする状態である。麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)・麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)は、瘀水がさらに裏位におよび、筋肉に作用 する。大青竜湯(だいせいりゅうとう)小青竜湯(しょうせいりゅうとう)・越婢湯(えっぴとう)は、瘀水が裏位の関節にまでおよんでいる。 
2 葛根湯(前出、表証の項参照) 


《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集 中日漢方研究会
10.葛根湯加辛夷川芎(かっこんとうかしんいせんきゅう) 本朝経験
葛根8.0 麻黄4.0 生姜4.0(乾1.0) 大棗4.0
桂枝3.0 芍薬3.0 甘草2.0 辛夷3.0 川芎3.0
現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
頭痛,頭重感があって肩こり,鼻閉 鼻汁,膿汁などの症状があるもの。
葛根湯辛夷と川芎を加えたもので,急性や慢性の鼻疾患にはきわめて応用頻度の高い処方である。特に蓄膿症の内服薬として著効があるが,疾患の性格からかなり長期にわたり,連続服用させる必要がある。鼻疾患の治療にわたり,連続服用させる必要がある。鼻疾患の治療について本方を中心に,その応用ポイントを列期すれば次のとおりになる。
<蓄膿症> 発熱,頭痛,全身倦怠感,鼻汁などの症候が発現する急性症には,本方より葛根湯の適する場合が多い。急性症状で鼻汁が粘稠あるいは膿性のものには,葛根湯に桔梗,石膏を加えるとよい。この症状で鼻閉,頭痛頭部圧迫感が著しいものに本方葛根湯加辛夷川芎がよく適応する。副鼻腔内の炎症が慢性に経過する,いわゆる慢性ちくのう症で,記憶力,思考力,臭覚欠如,膿汁などには本方を連用させるとよい。なお数ヵ年を経過した蓄膿症で,膿性粘液の分泌が多く,サルファ剤やペニシリンなどが対象になるものには本方と,伯州散の兼用法が偉効を奏する。亜急性で前記症状があるものには,伯州散よりも桔梗石膏を加味するほうがよい。
<慢性鼻炎>  鼻汁,鼻閉を主症状とするこの疾患は,アレルギー性鼻炎と区別することが大切である。鼻の左右が交互につまり 粘液性の鼻閉,頭痛などには本方が適し,鼻腔内の瘙痒感,クシャミ,水様性前量の鼻汁や流涙を訴えるアレルギー性のものは鼻腔内の浮腫,多量の分泌物などがあるから,本方よりも小柴胡湯小青竜湯を応用することが多い。



【由来】

葛根湯加川芎辛夷=葛根湯+川芎+辛夷 計9味

・『傷寒論』や『金匱要略』に載る加味方ではない。
・後の中国の考案でもない。
・日本独自の処方。
・本朝経験方=日本でいつの間にかできて広まった薬方
『本朝経験方』という書もあるが、この書を出典とする意味ではない。
本朝とは、中国(支那)に対する日本の雅称。

・辛夷:鼻づまり等への効果:『名医別録』(3~5世紀頃)

・『雷公薬対』:辛夷+川芎:効果が高まる
・『雷公薬対』:麻黄+辛夷:×
葛根湯には麻黄が含まれる。
辛夷と川芎を配合した薬方は多くあるが、葛根湯には辛夷を加味しなかった。


・『楊氏家蔵方』(1178年):芎黄散(きゅうおうさん) = 川芎+大黄応鐘散(おうしょうさん)
頭部の熱症状に効く
応鐘散は、吉益東洞の家方


・汪昂『本草備要』(1694)
「麻黄:辛夷・石膏を悪む。」



・ 江戸中期以前の諸文献には葛根湯に川芎を加味した記述は見当たらない。

・尾台榕堂 『類聚方広義』(1855年刊)
応鐘散(大黄、川芎)の兼用と「或は本方中に川芎、大黄、反鼻等を撰び加う。」
葛根湯を蓄膿症に応用

・浅田宗伯『勿誤薬室方函口訣』(1878年)
「川芎、大黄を加えて 脳漏及び眼耳痛を治し云々」……葛根湯加川芎大黄を蓄膿症などに応用
『橘窓書影』(1886年刊)には葛根湯加川芎大黄の治験が2例。



・西岡一夫『明解漢方処方』((1966年)
葛根湯の加減方の項に、「蓄膿症(辛夷、川芎各3.0を加え る。古方家は辛夷より桔梗2.0、石膏2.0または桔梗2.0、薏苡仁8.0の方が良いとも言う)」

・山田光胤『漢方処方応用の実際』(1967年)
「鼻疾患に川芎辛夷を加える。ただ辛夷を加える出典ははっきりしない。」

・ 『日本医学』および『漢方と漢薬』には、(昭和初期~戦中)
 葛根湯加川芎大黄につ いては治験例や論述が数多く記されているものの、
 これに辛夷をさらに加えた記述は見当らない。

・大塚敬節『漢 診療三十年』(1959年)(昭和34年)が葛根湯に辛夷を加味する初出か?
 葛根湯加辛夷撲漱各3.0

・『漢方の臨床』11巻6号(1964年)(昭和39年)「葛根湯を語る」
山田光胤
「二十歳 位の男性の蓄膿症ですが,、はじめ葛根湯加辛夷,、川芎をやりましたら少しよくはなったが、あまりよくないというので腹を診ますと、腹直筋が両方張っているので、四逆散加辛夷、川芎にして三ケ月くらい続けてみよと言ってやりましたらまた元に戻ってしまって、鼻が詰まってきたというので、今度は葛根湯加辛夷、川芎、桔梗、石膏、大黄にして一週間やりましたら、鼻が通ってきたと言っています。」

・『漢方と民間薬百科』
辛夷の項
「モク レン科のコブシのつぼみで、頭痛を治し、高血圧症にも効がある。主として、副鼻腔炎(蓄膿症)、肥厚性鼻炎などに用いられる。葛根湯加辛夷、川芎は、しばしばこれらの鼻疾患に用いられる」

・『大塚敬節著作集』第三巻
「蓄膿症も手術をしない前なら 葛根湯加川芎辛夷がよく効く。ひどく胃腸の弱い人、衰弱している人には用いられない。食欲がなくなり、疲れがくる。」


・『日本医事新報』(1969年)
矢数道明が読者の肥厚性鼻炎の漢方治療の質問に答え、
第一の方剤 として葛根湯加辛夷川芎をあげ、その適応病態について詳説している
(『漢方治療百話』第三集(1971年刊)に収録)。


 【一般用漢方製剤承認基準】

30.葛根湯加川芎辛夷
〔成分・分量〕
葛根4-8、麻黄3-4、大棗3-4、桂皮2-3、芍薬2-3、甘草2、生姜1-1.5、川芎2-3、辛夷2-3
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
比較的体力があるものの次の諸症:
鼻づまり、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎



【添付文書等に記載すべき事項】

 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)

次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

 相談すること 
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸の弱い人。
(5)発汗傾向の著しい人。
(6)高齢者。
〔マオウ又は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換
算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(8)次の症状のある人。
むくみ1)、排尿困難2)
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。2)は、マオウを含有する製剤に記載すること。〕
(9)次の診断を受けた人。
高血圧1)2)、心臓病1)2)、腎臓病1)2)、甲状腺機能障害2)
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。2)は、マオウを含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ
消化器 吐き気、食欲不振、胃部不快感


まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称 症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕

3.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬
剤師又は登録販売者に相談すること

4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕



〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕

(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕

(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕

1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕

2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕

3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕


保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
 

【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸の弱い人。
(5)発汗傾向の著しい人。
(6)高齢者。
〔マオウ又は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(8)次の症状のある人。
むくみ1)、排尿困難2)

〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。2)は、マオウを含有する製剤に記載すること。〕
(9)次の診断を受けた人。
高血圧1)2)、心臓病1)2)、腎臓病1)2)、甲状腺機能障害2)
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。2)は、マオウを含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

2012年6月7日木曜日

麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう;まきょうよっかんとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
 麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)
麻黄四・ 杏仁三・ 薏苡仁一○・ 甘草二・
此方は能くリウマチ性の疼痛を治する効があるのて、筋肉リウマチ・関節リウマチに応用される。発熱して諸筋肉痛、または関節痛を訴える者に宜しい。急激の 症よりはやや緩症によく応ずる。本方中の麻黄と杏仁は血行を盛んにしてリウマチ性の病毒を駆逐する。薏苡仁も停滞を疎通する効があるので、麻黄・杏仁と協 力して筋肉や関節に病毒を駆逐する。甘草は諸薬を調和すると共に疼痛を緩和する効がある。
本方の応用は筋肉リウマチ・関節リウマチであるが、その他疣贅・手掌角化症などにも用いられる。これは薏苡仁に疣を消し、皮膚の栄養を良くする効があるからである。



漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
5 麻黄剤(まおうざい)
麻黄を主剤としたもので、水の変調をただすものである。したがって、麻黄剤は、瘀水(おすい)による症状(前出、気血水の項参照)を呈する人に使われる。なお麻黄剤は、食欲不振などの胃腸障害を訴えるものには用いないほうがよい。
麻黄剤の中で、麻黄湯葛根湯は、水の変調が表に限定される。これらに白朮(びゃくじゅつ)を加えたものは、表の瘀水がやや慢性化して、表よ り裏位におよぼうとする状態である。麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)・麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)は、瘀水がさらに裏位におよび、筋肉に作用 する。大青竜湯(だいせいりゅうとう)小青竜湯(しょうせいりゅうとう)・越婢湯(えっぴとう)は、瘀水が裏位の関節にまでおよんでいる。 

4 麻杏薏甘湯(まきょうよっかんとう)  (金匱要略)
〔麻黄(まおう)四、杏仁(きょうにん)三、甘草(かんぞう)二、薏苡仁(よくいにん)一○〕
瘀水が少し深いところの筋肉の部位にあり、その瘀水にじゃまされて表位に血がめぐらず、皮膚が血燥状態(皮膚筋肉の栄養悪く、湿潤光沢や弾力 を失う)となっている。本方は、汗後冷えて疼痛を起こしたものや、諸筋肉痛または諸関節痛に用いられる。夕方になると痛みが激しくなることを目標とするこ ともある。
〔応用〕
一 筋肉リウマチ、関節リウマチその他の運動器系疾患。
一 イボ、手掌角化症、鮫肌、湿疹、水虫その他の皮膚疾患。
一 気管支台喘息、肺壊疽その他の呼吸器系疾患。
一 そのほか、神経痛、凍傷など。 




《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集 中日漢方研究会
75.麻杏薏甘湯(まきょうよっかんとう) 金匱要略
麻黄4.0 杏心g3.0 薏苡仁10.0 甘草2.0
(金匱要略)
○病者一身尽疼,発熱,日晡所劇者名風湿,此病傷於汗出当風,或久傷取冷所致也,可与本方。

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
亜急性または慢性に関節,筋肉が痛むもの。
本方は夏期でも日没その他の原因で,身体が冷えると痛むようなリュウマチに卓効があるか台,通常急性症状には適せず,急性には葛根湯麻黄湯越婢加朮湯などを考慮すべきである。患部に麻痺感があり,四肢の屈伸がl不自由な場合は本方より桂枝加朮附湯が適当である。また色白の水太りの人で,関節が少しはれて痛みも軽微な時には防已黄耆湯がよい。本方はまた乾燥のいぼ,水虫に奏効することがあるから試みるべきである。本方を服用後浮腫を生ずる場合は五苓散で治療するとよい。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
本方は神経痛,リウマチ疾患一般に賞用されている処方で,急性症状よりむしろ亜急性,慢性に経過するものを目安に用いる。通常この疾患に罹患するものは,体質的な冷え症に多いが,本方が適応するものは体質的冷え症ではなく,湿度が高くなったり,気温の低下や水にぬれるなど外的条件によって,体が冷えると痛むというものによく,またフケ症の神経痛やリユウマチに応用して奇効がある。本方は一見丈夫な体を目安にするが,色白水ぶとり体質で発汗過多や軽度の浮腫など,水分代謝障害の傾向あるものには,本方と防已黄耆湯を合方投与するとさらに効果的である。また本方適応証で痛みが激しいものには芍薬甘草湯の合方を考慮するとよい。最近家庭の婦人層には指掌角化症が多くなり,中性洗剤がウンヌンされているが,その原因はともかく通常本方が一般的に応用されている。また本方のほか患部の炎症や角化の状態によって温清飲加味逍遙散柴胡清肝湯桂枝茯苓丸加ヨクイニンなどが用いられる。なかでも温清飲は患部が乾燥して充血,炎症,瘙痒性疼痛があり,しかも視診上顔色がさえず貧血の傾向があって,どうしても癒えないと訴えるものに著効がある。(後略)


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○発熱して(体温上昇と熱感)特に夕方熱が上がり,諸関節や各処の筋肉が腫れて痛むもの,この腫張は強いものではなく,痛みも割合に緩和である。
○本方の証は汗がでたあと風に当り,長い間からだを冷やしたためにおこることが多い。これを風湿という。
○類聚方広義には,風湿により関節が腫れて激痛のあるものは朮3.0附子0.5を加えるとよいとある。
○福井楓亭は「この症は湿気が皮膚にあって,関節には変化なく,熱が出て,からだの痛むものに用いる。この方を用いて強く発汗して病状が軽くなっても,処方はすぐ変えず,この方をつづけて用いる。もしこの方で発汗してのちも病気が治らず,関節が痛むようになれば海藻独活湯を用い,熱のある場合は当帰粘痛湯を用いるがよい。」といっている。



漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 

漢方処方解説〉 矢数 道明先生
  冷えが原因で発熱し,諸筋肉痛,または諸関節痛を訴えるものか目標で,急激の症より,やや緩症によく応ずる。皮膚は汗が出,あるいは浮腫があり,また枯燥して艶のないことが多い。頭のふけが多いというのも本方運用の目標の一つになる。



漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
構成 麻黄湯の桂枝の代わりに薏苡仁が加わったものと見るべきである。薏苡仁は表の血虚による疼痛や肌膚甲錯を治す。
   運用 1. リウマチ性の疼痛
「病者一身尽く痛み,発熱日晡所に劇しきものを風湿と名く。此病,汗出で風に当るに傷れ,或は久しく冷を取るに傷れ致す所なり。麻黄杏仁薏苡仁甘草湯を与うべし」(金匱要略湿病)この条文はよく本文の方意の核心をついて表現している。風湿とは風と湿とが一緒になったもので,風により発熱し,湿により身疼する。日晡所に劇しいとは日暮方になると疼みが増悪することで之は血の変化があることを示しており,本方に薏苡仁や杏仁の如き血に行く薬があることに対応する。汗が出れば表の腠理が開き,そこから風邪が入って来る。発汗剤を用いぬのに汗が出るのは身に水分が多いことを示し之が湿に該当する。汗が出るのは表気が漏れて表虚の状態になっていることだ。そこへ風邪が入り,熱を起すと表の虚熱になり,血は水分を失い熱を帯びて益々燥く,血燥により肌膚甲錯も起るのであって之は薏苡仁の治する所である。久しく冷を取るとは涼しい所に長居をしたり,長時間扇風機に吹かれていたり,冷水中で泳いだりなどすることで,そのために表の陽気が衰え表虚の状態になっている。それ故桂枝を加えて(麻黄加朮湯など)発表することが出来ぬ。麻黄石膏は裏水を取る薬である。之を要するに血虚燥があり,裏には湿水があるというのが本方の状態で,そのために身疼を起すものに用いる。急性亜急性の筋肉リウマチ、関節リウマチ,神経痛などでは皮膚乾燥に傾き,夕方疼痛増悪するときに適する。

運用 2. いぼ
薏苡仁はいぼとりの薬として知られているが,漢方的に見れば薏苡仁の適応証になるいぼは,血燥し且つ虚して表へ張出して来た肉である。故にあまり軟いものよりはやや堅めの方に有効であり,乾燥性のものによい。桂枝茯苓丸加薏や当帰芍薬散加薏の如きは裏の血証が必在する。いぼは漢方的には肉=血の変化であると見ているのだ。

運用 3. 水虫
水虫で乾燥性のものに使う。患部は赤くてもより落屑性でもよし,とにかく 乾燥しているのを血燥と見て本方を使う。一部がじくじくしていることが多く,それは湿と見るのである。之と同じ状態の湿疹にも使える。

運用 4. その他
妊娠腎「妊婦,浮腫,喘咳息迫,或は身体麻痺,或は疼痛する者を治す」(類聚方広義)
肺壊疽,肺膿瘍「肺癰初起,悪寒息迫,咳嗽止まず,面目浮腫,濁唾臭痰,胸痛するものを治す(同右)
此等の使い方は要するに処方中の麻黄を主にするか,杏仁を主にするか,薏苡仁を主にするか,或は此等を組み合わせたものを主にするかなどして応用をひろめて行くのだ。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は風湿の流注して,痛み解せざる解せざる者を治す。蓋し此症風湿皮膚に有て,未だ関節に至らず,故に発熱身疼痛するのみ,此方にて強く発汗すべし,若しその証一等重き者は,明医指掌の薏苡仁湯とす。若し発汗後,病瘥えず,関節に聚って痛み,熱甚しき者は当帰粘痛湯に宜し,又一男子固身疣子数百を生じ走痛する者此方を与えて即治す空:


古方薬嚢〉 荒木 性次先生
永く冷える処に居たり,冷える仕事をしたり,また薄着して汗をうんとかくほど仕事を永くしたりりたため,身体中が疼痛し,特に午後か4時頃になると疼痛も一段強きを加え,熱も出てくるという者,冷えから起こるというのが本方の行く根本たり。



【一般用漢方製剤承認基準】
麻杏薏甘湯
〔成分・分量〕
麻黄4、杏仁3、薏苡仁10、甘草2
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度なものの次の諸症:
関節痛、神経痛、筋肉痛、いぼ、手足のあれ(手足の湿疹・皮膚炎)


【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)

 次の人は服用しないこと 

生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1. 次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。

(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。

(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。

(4)胃腸の弱い人。

(5)発汗傾向の著しい人。

(6)高齢者。
〔マオウ又は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算
して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

(7)次の症状のある人。
むくみ1)、排尿困難2)
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して
1g以上)含有する製剤に記載すること。2)は、マオウを含有する製剤に記載するこ
と。〕

(8)次の診断を受けた人。
高血圧1)2)、心臓病1)2)、腎臓病1)2)、甲状腺機能障害2)
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して
1g以上)含有する製剤に記載すること。2)は、マオウを含有する製剤に記載するこ
と。〕

2. 服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位 症状
消化器 吐き気・嘔吐、食欲不振、胃部不快感

まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称 症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。

〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕

3. 1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

4. 長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕

(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕

(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕

1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕

2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕

3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。

〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕


保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕

【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1. 次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

2. 次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸の弱い人。
(5)発汗傾向の著しい人。
(6)高齢者。
〔マオウ又は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

(7)次の症状のある人。
むくみ1)、排尿困難2)

〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。2)は、マオウを含有する製剤に記載すること。〕

(8)次の診断を受けた人。
高血圧1)2)、心臓病1)2)、腎臓病1)2)、甲状腺機能障害2)
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。2)は、マオウを含有する製剤に記載すること。〕

2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕

3. 服用に際しては、説明文書をよく読むこと

4. 直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕


※福井楓亭(ふくい ふうてい)
一七二五年(享保十年)~一七九二(寛政四年)
折衷派
福井榕亭の父
『方読弁解』、『集験良方』、『瀕湖脈解』、『病因考』、『証治弁義』、『集験良方考按』

疝気八味方、痿症方