p.177
処方 大黄1g、川芎2g。
以上を粉末とし、一回に飲む。
目標 主として頭部、顔面におけるはれもの、皮膚炎。便秘の傾向に注目すること。
応用 頭部の湿疹。中耳炎。
華岡青洲.春林軒丸散方, 応鐘散.集成30巻, 1980, p.155-156
諸般の
『薬局製剤 漢方212方の使い方』 第4版
埴岡 博・滝野 行亮 共著
薬業時報社 刊
K11.
出典
応鐘散とは聞きなれない名だが芎黄散の別名である。
古方中興の祖といわれる吉益東洞は万病一毒説を唱え,古方の薬方を運用するにあたって,さかんに大黄剤,水銀剤などの攻撃薬を散剤または丸剤に製して兼用した。有名な東洞十二管丸散がこれである。
十二管というのは
構成
応鐘散は川芎と大黄の二味で構成されていて本来は等量混合物を散として1回1~2gを頓用する。湯(煎薬)としては大黄1g川芎2gを1日量としている。
目標
単方飛用いられることは稀でほとんど大柴胡湯や葛根湯と合方するか,兼用する。
中でも葛根湯と一緒に使うことが最も多く,葛根湯の証である頭痛,肩こりがあれば病名にかかわらず使われる。
眼科疾患,例えば麦粒腫,眼瞼縁炎,涙囊炎,結膜炎,トラホーム,結膜フリクテン,虹彩炎等の初期に炎症,充血があればよく使用する。
また頭部や顔面などの炎症に桂枝の入っている処方を用いる場合,桂枝は一時的に上部の炎症を増加することがあるので,芎黄散を兼用することが多い。
応用
(1) 眼疾患の充血,炎症。
(2) 頭部湿疹,脂漏性湿疹。
(3) 副鼻腔炎,歯痛,肩のこりなどで便秘がちの人。
留意点
◎本方は単方で使用することはほとんどなく,他の処方と合方するが,処方中に組み込むことなく各々の薬方として組み合わせて販売しなければならない。
◎例えば葛根湯と合方したい場合,あくまでも葛根湯は葛根湯として製剤し,応鐘散は応鐘散として製剤し,別包装として販売しなければならない。この場合の煎じる水の分量はやや多い目(600cc位)にする程度で別包のまま同時に煎じればよう。
◎瀉下作用を望む場合は、用法に規定している半量にまで煎じつめるのでなく,ごくあっさりと煎じるべきで,約2割程度の煎じつめ方(500mlを400mlに)でよい。なぜかというと,大黄の成分であるセンノサイドの分解を防ぐためである。
◎川芎が多いと個人差があるが嘔き気を訴えることがある。これもあっさり煎じることによって防げるが,あるいは川芎を減量すべきでもある。
文献
1.大塚敬節ら・漢方診療医典 (昭44) P.214~229
2.浅田宗伯・勿誤薬室方函口訣 (明11) 下巻36丁ウ
3.湯本求真・皇漢医学 (昭2) 3巻P.497~499
K11-①. 応鐘散
出典
楊氏家蔵方に「芎黄円」がある。『治風熱壅盛,頭昏,目赤,大便艱難』とある。
構成
大黄・川芎の2味等量が本来である。川芎が日本と中国とでは原植物が異るので,川芎の多量はやや不安が残る。今後を注目したい。
目標
大黄は加熱しないときは瀉下作用が強力である。煎じ薬である11番の方は瀉下作用はすくなく,代りに消炎作用が強い。
その使いわけが必要で,11-①の末は便秘薬として便秘をすると頭が痛いという人に最適である。
『改訂 一般用漢方処方の手引き』
監修 財団法人 日本公定書協会
編集 日本漢方生薬製剤協会
応鐘散(芎黄散)
(おうしょうさん(きゅうおうさん))
成分・分量
大黄1,川芎2
用法・用量
(1)散:1回に頓用する
(2)湯:上記量を1日量
効能・効果
体力中等度以上のものの次の諸症:便秘,便秘に伴うのぼせ・肩こり
原典 東洞先生家熟方
出典
解説
顔面や頭部の疾患に兼用される処方である。
生薬名 参考文献名 |
大黄 | 川芎 | 用法・用量 |
---|---|---|---|
処方分量集 | - | - | |
診療の実際 | 1 | 2 | |
診療医典 注1 | 1 | 2 | 以上を粉末として1回に服す |
症候別治療 | 1 | 2 | |
処方解説 | - | - | |
後世要方解説 | - | - | |
漢方百話 | - | - | |
応用の実際 | - | - | |
明解処方 | - | - | |
改訂処方集 | - | - | |
漢方医学 | - | - | |
精撰百八方 | 1 | 2 | |
古方要方解説 | - | - | |
成人病の漢方療法 | - | - |
注1 麦粒腫:便秘の傾向あるときは川芎・大黄を加えるか、芎黄散(応鐘散)を兼用する。本病に限らず、すへての眼疾患には芎黄散がよく兼用される。顔面や頭部の上方部にある病毒を下すために必要なのである。ことに桂枝を加味した処方の場合は川芎・大黄を加味するか,あるいは芎黄散を兼用する。
急性・慢性涙囊炎,急性・慢性結膜炎,トラコーマ,結膜フリクテン,白内障,以上葛根湯と加方で用いられる。
参考:晩成堂散方解 南涯吉益先生口述,蠃斎吉益先生口述,木場宏和訳 漢方の臨牀特集号第14巻
東洞先生「大便難く,心身痞し,これを按じて濡にして煩悸する者を治す。また曰く,諸証治し難くして上衝,不大便の者を治すと」
南涯先生「これ血毒ありて上逆する者を治す。その証,頭痛,耳鳴,或は頭痒,或は白屑多く,或は瘡を生じ,或は頭眩,目瞑,或は肩背強り,或は口熱,歯痛,或は血積,不大便の類,諸般上逆の毒なり,もし打撲して瘀血ある者は蕎麦を加えて酒にて服す」。
蠃斎先生「家方は蕎麦粉少しばかり加う。血滞をもって目的となす。凡そ血気逆して上に迫って疼痛,諸腫物に血毒結滞し,或は心下痞す。世にいうところの積気の者および打撲にはみなこの散を用う。その活用広遠なり。凡そ血滞の証をもって(活用の)準治となすべし」。
『勿誤薬室方函口訣解説(21)』 日本東洋医学会理事 矢数 圭堂
芎黄円料 芎帰湯 芎帰膠艾湯 杏人(仁)五味子湯 杏酪湯 強神湯
芎黄円料
本日は、
この方は、『楊氏家蔵方』に書いてある主治を目標に使えばよろしいのですが、それに風熱が盛んになって、肩から背にかけてこわばる場合には葛根湯を合して使い、心下支飲があって頭昏目赤するものは苓桂朮甘湯を合して使えばさらに効果があるといっております。心下支飲とは胸部または心下部に水毒が停滞しているために、咳とか呼吸困難を起こすことです。これは水毒の体質があって、心下部に停滞しており、そういうもので頭がくらみ、めまいのような状態があるとか、目が赤くなるようなものは、苓桂朮甘湯と合方して使うとさらに効果があるということであります。
次に、「頭瘡耳鳴等に兼用すべし」とありますが、頭瘡(頭部の湿疹)、あるいは耳鳴がある場合には、ほかの処方と兼用して芎黄円料を使うとよろしいということであります。
大黄は瀉下作用があり、消炎作用があり、実証の便秘に使います。川芎は補血作用、強壮作用、駆瘀血作用があります。したがって、便秘があり、瘀血があって、いろいろな症状が出てくるものに芎黄円料を使うわけで、葛根湯や、苓桂朮甘湯と合方して使うとよろしいということであります。
宋の 『
「
『校正方輿輗 丸散方別輯』 有持桂里
芎黄散は広く応用できる. そのうち,もっとも効果があるのは,頭痛, 赤眼痛,あ るいは打撲,あるいは頭頸部顔面の毒,上部の結毒に用いる.瘰癧(頚部リ ンパ節炎)などにも用いる。
『春林軒丸散方』 華岡青洲
諸般の
『勿誤薬室方函口訣』 浅田宗伯
芎黄円は楊氏家蔵方の主治に従うのがよい.ただし,風熱壅盛して肩背強急する者は葛根根湯に合 し,心下支飲があっ て頭昏目赤する者は苓桂朮甘湯に合方すると特別に効果がある.また頭瘡, 耳鳴などのあるときに兼用として用いる。
『漢方処方・方意集』 仁池米敦著 たにぐち書店刊
p.31
[薬局製剤] 川芎2 大黄1 以上の生薬をそれぞれ末とし、散剤の製法により製し、1包とする。
«楊氏家蔵方»川芎2 大黄1 細末にし一回1~3gを湯にて頓服する。
【方意】瘀血と風邪と湿邪と熱を除き、肝胆と腸胃を調えて、血と水の行りを良くし大便を出し上逆した気を降ろし、
【適応】風熱が
[合方] ①風熱が
②心下に
[原文訳]«楊氏家蔵方・積熱方»
○風熱が
«勿誤薬室方函口訣»
○此の方は、楊氏家蔵方の主治を至的とす。但だ風熱が
応鐘散料 応鐘散(三一頁)・芎黄円料・芎黄散(八九頁)と同じ。
[薬局製剤] 川芎2 大黄1 以上の切断又は破砕した生薬を取り、1包として製する。
«楊氏家蔵方»川芎2 大黄(加減する)1 煎じて服用する。
p.89
«楊氏家蔵方»川芎2 大黄(加減する)2
«吉益東洞»川芎2 大黄1 細末にし一回1~3gを頓服する。
【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.本剤を服用している間は、次の医薬品を服用しないこと
他の瀉下薬(下剤)
3.授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸が弱く下痢しやすい人。
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位 | 症状 |
消化器 | 吐き気 ・嘔吐、食欲不振、胃部不快 感、はげしい腹痛を伴う下痢、腹痛 |
3.服用後、次の症状があらわれることがあるので、このような症状の持続又は増強が見られた場合には、服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
下痢
4.1週間位(便秘に頓服用として用いる場合には5~6回)服用しても症状がよくならない 場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1) 小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注
意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
3.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(5)のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人。
3´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔3.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には3´.を記載すること。〕
4.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
5.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。