健康情報: 便秘と漢方薬

2008年12月18日木曜日

便秘と漢方薬

原因

便秘の定義はさまざまですが、便が毎日出ないだけではなく、便の量が少なく、排便も残便感があってすっきりしない状態、また、便が固すぎる状態も含みます。女性のう2人に1人は悩んでいる、あるいは悩んだことがあるといわれているほど、ポピュラー症状です。特別深刻な疾患ではありませんが、排泄(はいせつ)されるべきものが体内で滞(とどこお)っていことは、体にとって決していいことではありません。また、大腸がんをはじめ、さまざな病気の誘因になるとされていますので、適切な方法で、積極的に改善しましょう。
慢性便秘症は、その原因から2つに分けられます。1つは腸や腸以外の場所に重大な患があり、それによって起きる便秘、器質性便秘(①)です。この際、便秘を引き起こすの疾患には、大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室(けいしつ)症、腸閉塞(へいそく)など、腸疾患以外でも、子宮(しきゅう)筋腫(きんしゅ)卵巣(らんそう)膿腫(のうしゅl)などがあります。もう1つが、腸の運動がなんらかの理由で阻害され、機能正常でなくなって起きる機能性便秘です。
機能性便秘には、次の3種類があります。
1つめが、結腸の運動や緊張の低下によって便の通過時間が長引き、水分が吸収されぎて、硬くなって出にくくなる弛緩(しかん)性便秘(②)です。
2つめの直腸(ちょくちょう)性便秘(③)は、下剤や浣腸(かんちょう)の乱用で、骨盤(こつばん)の筋肉がゆるんでしまい本来、便を排出するために大事な機能を果たしている直腸神経の反射が鈍くなったため起きます。薬に頼りすぎたことで、体がなまけることを覚えてしまった結果です。
3つめの痙攣(けいれん)性便秘(④)とは、自律神経が乱れることによって、直腸の上にあるS状腸が痙攣し、便通を妨げるために起こるものです。通過を妨げられている間に便の水分収されて、便は小石状に硬くなります。ウサギの糞のような便が出るのは、この痙攣性秘の典型的な症状です。また、このタイプの便秘は、過敏(かびん)性腸症候群が原因であること多いようです。
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また、一部に、何かの疾患の治療のために使用している薬の副作用が便秘の原因になていることもあります(薬剤性便秘)。その疑いがある場合は、薬を処方してくれている師に相談してみましょう。

排便の仕組み


物を食べ、それが胃に入ると、大腸はその刺激で自動的に蠕動(ぜんどう)運動、すなわち、内容物を先へ送る運動を始めます。これによって内容物が下の消化管へ向かい、それまで貯められていた便も直腸へ送られます。この動きを胃結腸(いけっちょう)反射といい、1日、2回から3回起きます。一般的には朝食後に起きるので、そのときに排便をする習慣をつけるといいとされています。


便がおりてくると、直腸が押し広げられ、それによって直腸にも蠕動運動が起こります。この刺激が脳に伝達され、脳から排便の指令が下ると、肛門の括約筋(かつやくきん)がゆるみ、排便となります。人間は、括約筋がゆるんだところで、肛門がむずむずするなど、いわゆる便意を感じるのです。便が腸のなかを移動している最中など、この前段階までは本人にもコントロールができませんが、この括約筋がゆるむ段階では多少の我慢をすることが可能です。ただし、ここで我慢を繰り返すと、便秘につながることが多いのです。

さらに排出するためには「いきむ」という行為が必要です。これには腹圧を高めなければなりません。排便は、これらさまざまな部位の働きが巧みに機能することによって、はじめて成り立っているのです。



症状/治療


一般的な便秘の症状は腹痛、お腹の張り、ガスなどです。微熱(びねつ)が出たり、頭痛や吐き気を感じる場合、また、排泄された便に血が混じるような場合は、背景になんらかの病気が隠れている可能性があるので、早めに病院へ行きましょう。

また、1~2日便が出ない程度であれば問題はありませんので、あまり神経質にならないのが賢明です。3日以上出ないような便秘がたびたび繰り返されるようであれば、慢性便秘症の可能性があり、医療機関を訪ねる必要があるでしょう。長期間にわたって繰り返されるかどうかを1つの目安にしてください。

さらに、便秘が突然始まり長引いた場合や、だんだんと重くなっていく場合は、一度病院に行きましょう。最近は市販の便秘薬も多く、なかには数日ぐらいの便秘で、すぐに下剤を使う人がいますが、腸の自然な運動を妨げることになりますので、下剤を安易に使用するのは考えものです。

慢性便秘の治療は、便秘の原因となっている病気があれば、まずその治療が優先されます。便秘の症状に対しては下剤を使用します。病気が背景にない機能性便秘の場合は、治療の基本は、食生活をはじめとした生活全般の改善と排便を習慣づけます。下剤の使用が習慣的になっている場合などは、自力で排便ができるように訓練をしていきます。


排便は日常的な行為なので、自分の力でより快適な排便ができるようにしていくことが先決です。医師の指導を受けながら生活改善を行っても、便秘の症状がよくならない場合、そこで初めて薬の使用することになります。

また、過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)などのように、便秘になる背景に心理的な要因がみられるケースにおいては、心理面からの治療も必要です。



生活上の注意点


排便を快適にするためには、なにより日常生活の見直しが大事です。

まずは食事の内容です。栄養のバランスを考え、摂取する食品が偏(かたよ)らないようにしましょう。なかでも食物繊維(しょくもつせんい)は積極的に摂(と)るようにしたいものです。食物繊維が多く含まれるのは野菜、海藻類、果物、豆類、いも類などです。

さらに、排便を促す牛乳、ヨーグルトなどの乳製品も、毎日の食事や間食に上手に取りいれましょう。水分を多めに摂ることも効果があります。ただし、糖分の多い清涼飲料水などは避け、ミネラルウォーターやお茶などがおすすめです。(茶はタンニンに注意)

そして、適度な運動が腸の働きをよくします。激しい運動を行う必要はありません。歩く時間を増やす、いつもはエスカレーターやエレベーターを使っているところを階段を利用するなど、日常の範囲内で少しずつ運動量を増やしていきましょう。


規則正しい排便習慣を身に着けることも重要です。一日一度、理想的には朝食後ですが、トイレに入って、便を出す努力をしてみてください。この際、うまく出ない日があっても、気にしないことです。この習慣を実行するためにも、朝食は必ず摂るようにしましょう。


アドバイス


とくに、背景に他の疾患がない便秘の対処には、日常生活を見直すことが基本です。習慣を見直し、改善したからといって次の日から便秘がすっきり解消するなどということはありませんが、気長に対処していく必要があります。1日1回の積み重ねが大切なのです。ただ、あまり神経質になるのもよくありません。便秘には心理的な側面も影響を及ぼしますので、自分なりの解消法を探りながら、上手に排便ペースをつくっていくようにしましょう。

その際には、むやみに下剤を使わないことが重要です。排便は人間の自然な営みで、もともと下剤を使わなくてもできるようになっているものです。下剤の乱用は、自然に発生する便意も失わせることにもつながります。人間は自分が本来もっている機能を上手に使って生きていくことが健康上もいちばんいいことなのです。とくに排便は日常的なことですので、下剤に手を出す前に、自力で出す癖(くせ)をつけてください。

とくに女性には便意を我慢しないことをおすすめします。我慢しているうち、出すきっかけを失ってしまい、便秘につながることが多々あるからです。

排便習慣を身につけるのは根気のいる作業ですが、気を長くもって挑戦していきましょう。1日や2日出なくても気にしないこともポイントです。


便秘を引き起こす病気


①.ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)

結腸の蠕動運動を支配する神経細胞の欠如で、自然排便ができず、子供のときから便秘が続きます。

②.老人性巨大結腸症(特発性巨大結腸症)

老人に見られる病気で、もともとS状結腸が長くて、便秘を繰り返しているうちに、ますます長くなっ太くなって、そこに便がたまるようになったものです。とても頑固な便秘が続きます。


③.大腸ガン、大腸ポリープ

大腸にガンができたり、ポリープと呼ばれるイボないしはコブのような突起ができるために、便の通過が妨げられます。便に血や粘液がついたり、便の形がいびつになっているときは特に要注意です。便秘は年齢のせいだろうと、あまり気にしていなかったお年寄りが、実は大腸ガンが原因だったという例にしばしばぶつかります。ポリープが大腸を刺激して、便秘と下痢を繰り返していたという場合もあります。

④.大腸憩室(けいしつ)

大腸の壁に袋のようなくぼみのできる病気で、炎症を繰り返しているうちに、その刺激で腸管が狭くなり、便秘になることがあります。


⑤.クローン病

大腸や小腸に潰瘍が多発する原因不明の難病で、腸管が狭くなり、腹痛、腹部膨満、下痢、便秘を起こします。便に血や粘液のまじることもあります。


⑥.腸閉塞(へいそく)(イレウス)

腸が途中でつまってしまう病気で、そこから先に便が通れないので、激しい腹痛や吐きけ、腹部膨満を起こします。


⑦.腸管癒着(ゆちゃく)

腸や腹膜に炎症を起こしたり、盲腸炎(虫垂炎)や婦人病の手術をした後に大腸に癒着が起こると、便の通過が妨げられて、便秘になることがあります。

20代ぐらいの若い女性の腸管癒着の場合、心身症が原因となっていることが少なくありません。精神的な原因があっておなかが痛むのですが、それを盲腸炎や婦人病と間違えられて手術を受けるのです。原因がとり除かれていないのですから、また腹痛を起こしたり、便秘を繰り返したりします。この場合は、心身症の専門医の治療が必要です。


⑧.婦人病

子宮筋腫や卵巣嚢腫(のうしゅ)が大きくなって腸管を圧迫し、便秘をもたらすことがあります。女性の場合には、婦人科の病気を疑ってみることも大切です。


子宮内膜症といって、もともと子宮の内側にあるべき内膜が、子宮の外に出てしまう病気があります。生理のたびに外にあるある膜も出血を起こし、激しい生理痛を起こします。腸管に子宮内膜の飛び火した女性がいましたが、出血を繰り返しているうちに癒着を起こし、便秘をすするようになりました。


⑨バセドウ病(甲状腺機能亢進(こうしん)症)

甲状腺ホルモンは体の代謝を活発にさせる物質ですが、そのホルモンが過剰に生成されるために代謝が活発になりぎて起こる病気です。甲状腺肥大、眼球突出、心悸亢進、脈拍数の増加などの症状が現れます。


⑩粘液水腫(すいしゅ)

甲状腺ホルモンの機能が低下するもので、顔が丸く太り、皮ふや粘膜に硬い浮腫が出て、毛髪が抜けるなどの症状が現れます。

子供の頃から甲状腺機能が衰えると、クレチン病となり、成長がストップして低身長になります。


⑪その他

・膀胱ガン、膵臓ガン、肝臓ガンなど(腸を圧迫して、便秘の原因となります。)

・脳や脊髄の病気やケガ

・薬物中毒

・高熱の出る全身性の疾患

・糖尿病

・痔(痔核、脱肛、裂肛)

・痴呆

・パーキンソン病

・脳血管障害(脳卒中)後遺症

・脊髄損傷



便秘を引き起こす薬

(薬の副作用で起こる便秘;薬剤性便秘)

①.抗生物質

強い殺菌作用があり、有用な腸内細菌まで殺してしまい、下痢や便秘を起こすことがあります。


②.消化性潰瘍治療薬

ブロッカー
ファモチジン(ガスター)、シメチジン(タガメット)等

スクラルファート(アルサルミン)

アルジオキサ(アスコンプ)

テプレノン(セルベックス)

塩酸セトラキサート(ノイエル)
ヨウ化イソプロパミド

③.制酸剤

ボレイ末

ケイ酸アルミニウム

④.鎮咳薬

デキストロメトルファン(メジコン)

ジメモルファン(アストミン)

コデイン

ノスカピン

チペビジン(アスベリン)


⑤.精神・神経系の薬

抗不安薬 オキサゼパム(ハイロング)等

抗うつ薬 塩酸アミトリプチン(トリプタノール)等


⑥.抗コリン作用製剤

a.パ-キンソン病治療剤:

トリヘキシフェニジル(アーテン他)、レボドパ(ドパストン他)

b.抗うつ剤(三環系):

アミトリプチリン(トリプタノール他)、クロミプラミン(アナフラニール)、イミプラミン(トフラニール)

c.抗うつ剤(四環系):マプロチリン(ルジオミール他)

d.失禁治療剤:

プロパンテリン(プロバンサイン)、オキシブチニン(ポラキス)


(抗コリン薬には胃腸薬、鼻炎薬、頻尿、不整脈等に使われるものもあります)


⑦.筋弛緩薬

ダントロレンナトリウム(ダントリウム)

⑧.免疫抑制剤

タクロリムス(プログラフ)

インターロイキン2の産生を抑制し、強い免疫抑制作用を示します。


⑨.肝疾患治療薬

アミノエチルスルホン酸(タウリン)

⑩.止瀉薬

塩酸ロペラミド(ロペミン)

・腸の働きを調節している神経に働いて、腸の動きを抑える作用を持つ

⑪.抗不整脈薬

塩酸ピルメノール(ピメノール)等

⑫.高カリウム血症治療薬

ポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリエード、カリセラム、カリメート)

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(カリセラム-Na、ケイキサレート)

⑬.抗真菌剤(経口水虫薬)

グリセオフルビン

⑭.イオン交換薬(高脂血症)

コレスチラミン(クエストラン)等


⑮.麻薬

モルヒネ

コデイン(鎮咳薬として使われます)


⑯.抗ガン薬


メトトレキサート

核酸合成に必要な活性葉酸を産生させる転換酵素の働きを阻害することにより、抗腫瘍効果を発揮します。

その他、便秘を起こす可能性のある薬は沢山あります。


便秘による害

①.腹痛、おなら

便秘そのもの(痙攣性便秘は除いて)では、あまり腹痛を伴うことはありません。便秘が続いて腹痛を起こすのは、ほとんどが腸内にたまったガスが原因しているようです。 ガスが生じるルートには、次の二つがあります。一つは、食事やおしゃべりの時に飲み込む空気と、飲食物に含まれる空気など、口から入ってくるもの。もう一つは、腸内細菌の作用で生じるインドール、アンモニア、アミンなどのガスです。いずれの場合も、便秘をして便で出口をふさがれていると、ガスがたまって行きどころがなくなり、腹痛を起こします。

また、便秘をしていると、ウエルシュ菌などの悪玉の腸内細菌が増え、腐敗発酵を起こしてガスの発生が多くなります。この種のガスは、悪臭も強くなります。


②.頭痛、肩凝り

便秘の患者には頭痛、肩凝りを訴える人が多く見られます。また、食欲不振、舌がザラザラする、口がくさい、めまい、不眠、疲れやすい、イライラなどの症状もよく耳にします。便秘とこれらの症状との因果関係ははっきりわかっていませんが、悪玉菌によって生じるアミン類には自律神経に対する毒性があり、そのために自律神経の働きが乱れて、こうした自律神経失調症の症状が発生するのではないかと考えられます。


③.にきび、肌荒れ、しみ、そばかす

自律神経の働きが低下するために、皮膚の血行が悪くなり、にきびや肌荒れの生じることもあります。また、便秘をすると腸内細菌が小腸にまで上昇することがあり、その結果、小腸の栄養を取り込む働きが低下し、肌の健康を妨げているのかもしれません。


④.蕁麻疹(じんましん)、喘息

便秘をしていると、蕁麻疹や喘息などのアレルギー性の病気が起こりやすくなります。 アレルギー性の病気は自律神経の働きと深い関係があり、これも腸内に生じるアミン類が悪さをしているものと考えられています。アレルギーを起こす下手人であるヒスタミンという物質もアミンの一種であり、何かしらの関係がうかがわれます。


⑤.胆石症

胆石症の発作は、便秘をしていると起こりやすいといわれます。確かに胆石症の患者さんには便秘の人が多く、関係があるものと思われますが、その理由についてはわかっていません。


⑥.脳卒中、心筋梗塞

便秘の便を出すのに強くいきむため


⑦.大腸ガン、大腸ポリープ

便の中にはもともと食べ物に含まれていたものだけでなく、消化管の中で新たに生じた有害物が色々混在しています。

中にはガンを誘発する物質もあり、便が長くとどまっていれば、その作用も長時間に及んで、ガンを生じさせることもあります。

便の通過時間の短いアフリカ原住民には大腸ガンがごくまれで、便の通過時間の長い欧米人に多いことからも、その関係が裏付けられています。


⑧.乳ガン

アメリカのカリフォルニア大学で、1481人の婦人を対象に乳ガンの検査をしたところ、乳ガンに移行しやすい異常細胞を持っている人が、1日に1回便通のある人たちの場合には20人に1人だったのに対し、週2回以下の人たちでは4人に1人にものぼるという結果が出ました。なぜ便秘症の人は乳ガンになりやすいのか、その理由についてはわかっていません。




⑨.大腸憩室(けいしつ)

大腸の壁がくぼんで、小さな袋状のものができる病気です。中に便などがたまって、炎症を起こしたりします。便秘のせいで、便やガスの圧力が腸に加わるのが主な原因ではないかと考えられています。大腸憩室のある人が便秘を続けていますと、憩室の出張りの中に便が入り込んで炎症を起こしたり、あるいは破裂したりして、大変なことになります。この大腸憩室の破裂は、細菌の沢山含まれている便が、腸の中からお腹の中(腹腔内)にばらまかれることになるのですから、緊急の開腹手術以外には命を助けることはできません。


⑩.腸捻転(ねんてん)

硬い便とガスで大腸の内部が占拠された状態が続くと、内部の圧力が上がって、タイヤのチューブのように腸がふくらんできます。大腸の固定の悪い場所(直腸のすぐ上に続く部分の大腸・・・・・・S状結腸などの部分)では、腸がねじれて腸捻転を起こしやすく、これを起こせば、緊急手術でなくては助からないということになります。


⑪.脱腸(ヘルニア)

便秘で腸内圧が高まり、これを解消しようとして腹圧をさらにかけ排便行為に及びますと、脱腸(ヘルニア)を誘発あるいは悪化さることがあります。特にお年寄りでは、腹筋が萎縮して弱くなっていますので、脱腸(ヘルニア)を起こし易くなっています。



⑫.腸閉塞(へいそく)(イレウス)

大きな便のかたまりにより、腸管腔が完全にふさがれてしまうと、腸閉塞になります。


⑬.痔

最もポピュラーな痔の病気である痔核(じかく)(イボ痔)は、肛門近くの静脈が欝血(うっけつ)することによって起こります。便秘のために強くいきむと、肛門周辺の欝血が強まり、痔核を起こさせたり、症状を悪化させます。

また、便秘をしていて、かたい太い便を無理に抽出しようとすると、肛門のヘリを切って裂肛(れっこう)(切れ痔)の原因にもなります。

裂肛を起こすと、痛みのために排便をがまんするようになり、その結果、ますます便秘がちになるといった、悪循環に陥りがちです。

⑭.高血圧

便秘は高血圧の原因になり、便秘を治しただけで血圧が下がったという話も耳にします。便秘のために悪玉菌が腐敗発酵をしてアミン類を作り出し、それが自律神経の働きを乱しているのではないかと考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。

長寿村のお年寄りの便を調べると、ビフィズス菌などの善玉の腸内細菌が多く、悪玉菌が少ないといいます。動脈硬化を予防し、脳卒中や心筋梗塞を未然に防いで長寿を保つには、善玉菌を増やすことが大切なようです。そのためにも便秘を治し、日頃から便秘を整えておくようにしましょう。


⑮.肥満

便秘は肥満の原因にもなります。

ケガや手術をすると、これ以上からだが壊れないように、組織と組織を結びつけている脂肪が増えます。便秘によって悪玉菌が増え、毒素をたくさん出しているときにも、これと同じように脂肪が増えるのです。つまり、悪玉菌の毒素から体を守ろうと脂肪が増えるわけです。このときの脂肪は固く、つまむと鈍い痛みを感じます。また、悪玉菌の作る物質の中に、脂肪を増やす働きをするものがあるとも言われています。

便秘をすると内臓の機能が低下します。つまり必要な栄養素を吸収しにくくなります。一方、糖や脂肪といったものは比較的吸収されやすいとされています。このため、便秘になると、必要な栄養素が不足し、その不足分を補おうと食べ過ぎてしまい、食べ過ぎると不要な糖や脂肪だけが吸収されてしまい、肥満になるといったことが起こるとも言われています。


⑯.肝障害、腎障害

食べた物の腐敗や異常発酵によってつくられた毒性物質(アンモニア等)を解毒しようとするため、肝臓や腎臓に負担がかかり、障害を起こすことがあります。


受診勧告のポイント


1.突然起こった変化が2週間以上続いた場合

2.嘔吐、差し込むような腹痛がある場合

3.服用している処方薬に起因すると考えられる場合。


4.便に血液が混じっている場合

便に血液が付着している場合は、痔あるいは肛門の亀裂によることが考えられる。しかし、便に血液が混じっている場合、あるいは突然起こった症状が2週間以上続いた場合には、より重篤な疾患が隠されている可能性がある。また、嘔吐や差し込むような腹痛がある場合には、腸閉塞や腸捻転を疑うことも必要となる。

便秘に用いられる薬(下剤)



一般に、下剤とは、口から飲むこと(内服)により排便を促すことを目的とした薬剤をさしていますが、広い意味では、肛門から挿入する坐薬や、肛門から直腸に注入する浣腸剤、あるいは注射薬でも、それが排便を促すための薬であれば、下剤の範疇に入れられているようです。



分類 一般名 商品名











1.塩類下剤 硫酸マグネシウム

人工カルルス塩

酸化マグネシウム

クエン酸マグネシウム マグコロール(P)他
2.糖類下剤 ラクツロース モニラック他

D-ソルビトール D-ソルビトール液
3.膨張性下剤 カルメロースNa(CMC) C.M.C「マルイシ」

(カルボキシメチルセルロース) バルコーゼ
4.浸潤性下剤 DDS+カサンスラノール 強力バルコゾル

DDS+ダンスロン (強力)ソルベン*













1.小腸刺激剤 (加香)ヒマシ油

オリーブ油
2.大腸刺激剤

アントラキノン系誘導体 カスカラサグラダ流エキス カスカラサグラダ流エキス
(植物性製剤) センナエキス アジャストAコーワ他


センノシド
ダイオウ、アロエ
セノコット、プルゼニド他

フェノールフタレイン誘導体

フェノバリン

フェノバリン「各社」、ラキサトール
ジフェノール誘導体 ピコスルファートNa ラキソベロン他
3.直腸刺激剤 ビサコジル(坐) テレミンソフト坐薬他
(坐剤) 炭酸水素Na配合 新レシカルボン坐剤他





その





副交感神経刺激剤 交感神経麻痺剤 臭化ネオスチグミン 塩酸トラゾリン ワゴスチグミン イミダリン
浣腸 グリセリン グリセリン坐薬、-浣腸「各社」

薬用石鹸 薬用石鹸「各社」
電解質配合剤 塩化ナトリウム等配合剤 ニフレック(経口腸管洗浄剤)
ビタミン剤 ビタミンB1 アリナミンF、ノイビタ

パントテン酸Ca パントシン他

上記のほか、整腸剤である乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などの生菌製剤やコール酸などのような利胆薬が便秘に使われることがあります。


便秘に用いられる漢方薬


がっしりしている人、またはかた太りしている人で、肩凝りがしやすく、朝起きると口の中が粘ついていたり苦かったりする、みぞおちのあたりがつかえる傾向がある、胸脇苦満(きょうきょうくまん)(胸や脇の圧迫感)がある、などの自他覚症状がある人の便秘。


体力のある肥満、太鼓腹(たいこばら)タイプで、高血圧気味の人の便秘。


体力があり、腹力強く、へそと右の腰骨を結ぶ線の中間あたりを押すと抵抗・圧痛がある人の便秘。


体力があり、頭重、肩凝り、下腹部に圧痛、月経不順、足が冷える人の便秘。


体力は中等度以上で、口渇、みぞおちが張る、吐き気などがある場合の便秘。


高血圧でのぼせ気味、頭痛やめまい、不眠、鳩尾(みぞおち)の痞(つかえ)があるタイプの便秘。



体力は中程度~やや落ちた人で、多少冷えがちで、尿が近く、口渇や皮膚のカサカサがある人の便秘。




上下の腹部が張り、時に痛むという便秘に用います。外科手術のあとなどに体力が弱っていて、便秘が起きてきた、という場合も有効です。また、ストレスにより、下痢や便秘となる過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)にもよく用いられます。


体力が中等度が、またはやや落ちてきている人、特に婦人の便秘に用います。背中に熱さを急に感じたかと思うとそのあと寒けがする、午後になると顔がほてってくる、肩が凝る、なんとなく気分がいらだつ、食欲がない、根気がない、などの症状を伴う便秘によいものです。


体力が中等度の人からやや落ちた人にまで幅広く使える処方です。便秘、食欲不振以外にこれという症状の場合に用いてよいものです。



老人など体力のない人の便秘に用います。便はウサギのふん状で、皮膚はカサカサして、うるおいがないことが目標です。麻子仁丸と良く似ています。


体力のやや落ちている虚証の便秘に良く、腰から下に力がない、ひざがガクガクして転びやすい、夜しばしば小便に起きる、のどが渇きやすい、などの症状があることが目標です。


虚弱体質で疲れやすい(特に小児)タイプに使います。食欲不振、胃腸の炎症、ときに下痢、口渇、夜尿などの症状を伴うことがあります。

14.三和散(さんわさん)

飲食するとみずおち(みぞおち、鳩尾)に柵をかけたように痞えて下がらないように思われるものに用いる。大便が秘結(ひけつ)しても、大黄を用いると腹が痛むだけで下がらないもの。
麻子仁丸かなと思われる方ですっきりせず、市販薬、処方薬全て不可という人に使って効く。
身体のどこかの筋が引っ張って痛み、或は屈伸できない者。

15.桂枝加芍薬湯加蜀椒人参
   大塚敬節先生の創案処方で、胃下垂症、胃アトニー症、開腹手術後癒着のため腸蠕動が円滑にゆかぬもの、腸管の狭窄、などのためにおこる便秘に用いる。腹が張ってガスがたまりやすく、腹痛があり、大便はやわらかいのに快通しない、腹は軟弱無力で冷えるといった症状によい。
上記の他、証に合わせて、大承気湯(だいじょうきとう)、小承気湯(しょうじょうきとう)、中建中湯(ちゅうけんちゅうとう)、神効湯(しんこうとう)、半夏瀉心湯はんげしゃしんとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)、六君子湯りっくんしとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、附子理中湯ぶしりちゅうとう)、真武湯しんぶとう)、通導散つうどうさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、大黄附子湯(だいおうぶしとう)、厚朴三物湯(こうぼくさんもつとう)、茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)、旋覆花代赭石湯(せんぷくかたいしゃせきとう)、枳実芍薬散(きじつしゃくやくさん)、蜜煎導(みつせんどう)、厚朴七物湯(こうぼくしちもつとう)などが用いられます。

下剤にあらずして通じを通ずる。古方の妙(みょう)、思議(しぎ)すべからず。」と言われるように、一般的に下剤とされないものでも、便秘が治ることがあります。




【参考】
下剤・温補(おんぽ)剤は表裏の関係であり、便秘していても実証か虚証かによって使い分けなければならないことはいうまでもない。気の鬱滞(うったい)を治す順気(じゅんき)剤である厚朴(こうぼく)、枳実(きじつ)、蘇葉(そよう)と大黄(だいおう)+芒硝(ぼうしょう)を加えたもの、例えば大承気湯(だいじょうきとう)(大黄、芒硝、枳実、厚朴)は最も実証の人に用い、大黄のみを加えたもの、例えば小(しょう)承気湯(大黄、厚朴、枳実)がこれに継ぐ。気の上衝(じょうしょう)を治す順気剤である桂枝(けいし)と大黄+芒硝を加えたもの、例えば桃核(とうかく)承気湯(大黄、芒硝、桂枝、桃仁(とうにん)、甘草(かんぞう))はさらに弱くなり、大黄のみを加えたもの、例えば柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)(柴胡、半夏(はんげ)、茯苓(ぶくりょう)、桂枝、黄芩(おうごん)、大棗(たいそう)、人参、竜骨(りゅうこつ)、牡蛎(ぼれい)、生姜(しょうきょう)、大黄)がこれに継ぐ。順気剤のない大黄+芒硝を加えたもの、例えば調胃(ちょうい)承気湯(大黄、芒硝、甘草)はさらに弱くなり、大黄のみを加えたもの、例えば三黄(さんおう)瀉心(しゃしん)湯(とう)(大黄、黄芩、黄連(おうれん))がこれに継ぐ。ここまでは実証の便秘に用いられる。

次いで、梔子(しし)を加えたもの、例えば黄連解毒湯(梔子、黄?、黄連、黄柏(おうばく))が続く。虚証の便秘となると、さらに虚したときに用いる乾姜(かんきょう)を加えたもの、例えば人参湯(にんじんとう)(人参、白(びゃく)朮(じゅつ)、甘黄、乾姜)を用いる。新陳代謝がさらに衰えると附子(ぶし)を加えたもの、例えば真(しん)武(ぶ)湯(茯苓、芍薬(しゃくやく)、生姜、白朮、附子)を用い、さらに虚になると附子+乾姜を加えたもの、例えば四逆(しぎゃく)湯(甘草、乾姜、附子)を用いて新陳代謝を亢進させる。下痢の場合でも虚実によって同様に使用する。

【下剤、温補剤】

大黄 + 芒硝 + 順気剤(鬱滞)


大黄 + 順気剤(鬱滞)



大黄 + 芒硝 + 順気剤(上衝)


大黄 + 順気剤(上衝)


大黄 + 芒硝


大黄≒センナ≒アロエ


山梔子



車前子


乾姜≒麦芽糖(マルツエキス)≒蜂蜜


附子


乾姜 + 附子



『漢方薬の実際知識』(東洋経済社刊)p293-294より(一部改変)

(アロエは使わない方が良い)




便秘に用いられる民間薬・健康食品

ドクダミ、イチジク、カワラケツメイ、エビスグサ(ハブ茶)、ギシギシ、赤松、枸杞、桑、ハコベ、オオバコ、ウツボグサ、小豆、ゴマ、ノイバラ、ムクゲ、タンポポ、ヤマゴボウ
ジャガイモ、ハチミツ、プルーン、アロエ、サラシア、クルミ、糖アルコール、食物繊維、寒天、コンニャク(グルコマンナン)、海藻、乳酸菌、ビフィズス菌、食物繊維、オリゴ糖、納豆菌
などが、民間薬や健康食品として利用されています。

桃の花
生薬名を白桃花(はくとうか)や桃花(とうか)といい、モモ(桃)の花あるいは蕾(つぼみ)を用います。中国では桃の花の咲き乱れる桃源郷を理想とする道教思想や桃の生命力が強いことから、桃には邪気を払う魔除けの作用があるとされていました。日本でも桃の節句には桃の花を飾り、魔除けにお酒に花びらを浮かべて飲む風習もみられます。
成分としては、フラボノイドのケンフェロール(kaempferol)配糖体やマルチフロリンが含まれ、その他、クマリン、ナリンゲニン等も含まれます。
ケンフェロール配糖体には、瀉下、利尿効果があります。

クマリン類は、血液が異常に固まるのをふせいだり、血管を拡張させたりして血流を良くします。最近では抗ガン作用も認められ応用範囲が拡大しています。ですから、血液が停滞しやすい子宮の環境を改善したり、組織の代謝を活発にして、肩こり、めまい、動悸、手足の冷え等の女性の血の道症状の改善に役立つのです。

漢方では利水(りすい)・活血(かっけつ)・通便(つうべん)の効能があり、浮腫(ふしゅ)や脚気(かっけ)、便秘、無月経に用いられます。

『名医別録(めいいべつろく)』には“白桃花は味は苦、性は平で、無毒、大小便を利し、三虫を下し、身を軽くする”と記されています。又、『本草綱目(ほんぞうこうもく)』では“宿水(しゅくすい)痰飲(たんいん)、積滞(せきたい)を利し、狂気(きょうき)を治す”と書かれています。更に同時期の『本草彙(い)言』においては“婦人の血閉血塊、血風癲狂(てんきょう)を破る“とも記されています。

どのような意味かといいますと“白桃花には大便や小便の出を良くする作用があるので、飲食物の停滞がなくなり、お腹がすっきりし、体重が減る。又、月経を規則正しくしたり、閉経時の自律神経の乱れを改善する。尚、白桃花は味が苦いが、無毒で、身体を温め過ぎたり、逆に冷やし過ぎたりさせないので長く利用できる”ということになります。つまり、便秘、むくみ、肥満、月経痛、月経不順、更年期障害等の改善に効果があり、安全性が高いということです。

日本の民間でも便秘薬として用いますが、作用が強いため、妊婦や虚弱者には適しません。

桃の花を服用すると、肌の色が白くなるとも言われています。肌を白くするには外用しても良いそうです。

硫酸マグネシウム(magnesium sulfate)
別名:瀉利塩(しゃりえん)、硫苦(りゅうく)
漢方で大黄とともに利用される下剤に芒硝(ぼうしょう)というものがあります。
朴消(ぼくしょう)や消石(しょうせき)とも呼ばれることがあり、古来から呼び名は混乱しています。
一般に、芒硝には硫酸ナトリウムをあてることが多いのですが、硫酸マグネシウムを芒硝として使用することもあります。
正倉院に保存されている芒硝は、硫酸マグネシウムであることが判明しており、古来の芒硝は硫酸マグネシウムであったと考えられています。

硫酸ナトリウムも硫酸マグネシウムのどちらも塩類下剤の一種とされています。塩類下剤は、腸内での水分吸収を阻止し、腸管内に水分を貯留して、腸管内容量を増加させ腸管を刺激し、蠕動運動を亢進させることで緩下作用をあらわします。塩類下剤は、水には溶けるのですが、腸管内からはほとんど吸収されない塩類であるために、腸管内の濃度は高張性となり、逆に組織から水分を腸管内に吸引します。硫酸マグネシウムは、3.4%が等張なので、これより高張の場合は、この濃度になるまで浸透圧により周囲の組織から水分を吸収します。このように塩類下剤は浸透圧により、効果を発揮しますので、難吸収性のものほど効力が強いことになります。

イオンの吸収度を見ると、次のとおりです。

陽イオン:Mg2+<Ca2+<Na=K


陰イオン:PO3-<SO2-<NO3-<Br<Cl

硫酸マグネシウムと硫酸ナトリウムとを比較すると、陽イオンのマグネシウムがナトリウムより吸収されにくく、陰イオンの硫酸イオンは共通ですので、硫酸マグネシウムの方が硫酸ナトリウムより作用は強いことになります。


◎塩類下剤は水分を吸収して効果を発揮しますので、効果を高めるには、充分な水で服用することが必要です。

塩類下剤は消化管からは余り吸収されないとされていますが、少量は吸収されますので、腎臓に障害のある人には注意が必要です。腎臓障害のある人に硫酸マグネシウムを与えると、高マグネシウム血症(症状としては、筋の麻痺症状、悪心、嘔吐、意識障害など)が起こることがあります。(通常問題となることは、まずありません。)

硫酸ナトリウムは、うっ血性心疾患には禁忌であり、高血圧などでナトリウムの摂取を制限されている人も注意が必要です。


芒硝として硫酸マグネシウムを採用し、硫酸ナトリウムを採用しなかった理由

①.歴史的背景(正倉院の芒硝は、硫酸マグネシウム)

②.マグネシウム塩の方がナトリウム塩より作用が強い

③.高血圧等でナトリウムの摂取の制限を受けていても大丈夫

一般の食生活では、ナトリウムの過剰摂取が問題となっていますが、
マグネシウムは逆に足りないとされています。近年話題となったニガリ(苦汁)の主成分もマグネシウム(塩化マグネシウム)です。


檳榔椰子の種子

ヤシ科(Palmae)のビンロウヤシ(Areca catechu)の成熟種子を乾燥したもので、漢薬名を檳榔子(びんろうじ)といいます。台湾の南部やマレーシア、タイ、フィリピン、インドといった東南アジアの亜熱帯地域に広く見られます。

アレコリン(arecoline)、アレカイジン(arecaidine)、グバコリン(guvacolen)、グバシン(guvacine)などのアルカロイド、ラウリン酸(lauric acid)、ミリスチン酸(myristic acid)などの脂肪酸、タンニンなどが含まれます。アレコリンには強い副交感神経刺激作用および中枢作用があり、腸の蠕動運動を亢進させます。また、精神を高揚させる作用もあります。

漢方では、駆虫・消積・理気・利水・瀉下の効能があり、消化不良や腹痛、寄生虫症、便秘、脚気などに用います。利水作用とは、水分の代謝を良くすることで、脚気で足にむくみがある時や心不全などでむくみがある時にも利用されてきました。

また、のどの乾きの防止や消化の助長、解毒作用などがあるといわれています。その効用は茶と共通するものが多く、茶文化のない地域では茶の代替品として使われてきたとのことです。

愛知大学の松下智教授は「ベトナムなど南方から北上したビンロウの習俗が、中国南部で北方の漢民族からの茶文化と接触した。雲南省南部の山岳地帯では両者がせめぎあっており、漢文化の普及で今では次第に茶に変わりつつある」と説明しています。


ベトナムでは、ビンロウとキンマは結婚式の儀式に欠かせない品とされてます。これは、キンマのツタがビンロウ樹に巻きつくことから、相愛のシンボルになっているからです。

また以前のベトナムでは、訪ねてきた客のもてなしにビンロウとキンマを出す習慣がありました。ベトナム語には「一片のキンマは話のはじまり」という成語があります。

同じビンロウヤシの成熟果皮は、大腹皮(だいふくひ)と呼ばれ、同じビンロウヤシの種子である檳榔子と効能は似ていますが、檳榔子のほうが行気の効能が強く瀉下に働き殺虫の効能をもち、大腹皮は、止瀉に働きます。また、食薬区分により、檳榔子は健康食品に使えますが、大腹皮は健康食品には使えません。


リコリス(Licorice)

マメ科カンゾウ(Glycyrrhiza glabra)又はその他同属植物の根及びストロンのことで、漢薬名は甘草(かんぞう)です。甘草は漢方生薬として最も繁用されています。ただし、薬としての利用よりも、味噌や醤油、ソースなどの甘味料としての利用の方が多いようです。その甘味成分のグリチルリチンは、砂糖(蔗糖)の100倍ほどの甘を持っています。このグリチルリチンは抗炎症作用や抗アレルギー作用が強いので、医薬品、ドリンク剤としても利用されています。また、1980年代にはエイズ治療にこの薬用ハーブが有効であるという報告もされています。さらに現在ではアメリカの国立ガン研究所では、これに含まれる有効成分が、ガン細胞の成長を阻害するとして研究を進めています。

漢方では、甘草は単独で用いると、急迫症状を緩解させる作用があるとされています。

甘草湯(甘草一味)は、神経の興奮による各種の急迫症状を緩解します。咽喉の痛む時に甘草湯でうがいをしたり、脱肛で痛むものに、甘草湯を染みこませたガーゼ等で温罨法したりします。


その他甘草には、◆解毒の主薬(附子の中毒には、黒豆と甘草をひとつかみずつ煎じて飲みます。) ◆抗炎症(特に咽喉痛や口内炎など) ◆鎮痙作用 ◆咳を鎮め去痰する、などの作用があります。

ただし、甘草単独の作用は、他に強い作用の薬物があれば、おもてにはあらわれ難くなり、一般には、薬性を調和させるための補助薬として、多くの漢方処方に配合されています。例えば、熱薬や寒薬に配合してその熱性や寒性を穏やかにしたり、半夏・細辛と一緒に使用して刺激性を中和したりというようにです。

加えて、その甘味から、味の調整剤として利用され、特に小児薬にはよく使用されます。


プランタゴ・オバタ

1.プランタゴ・オバタ種皮末とは
プランタゴ・オバタ(Plantago ovata)とは、インド等に自生するオオバコ科(Plantaginaceae)の植物のことで、日本に自生するオオバコ(Plantago asiatica)に似ているため、単にオオバコと呼ばれることもあります。
利用する部位は種子の外皮で、それを粉末にして用います。別名をサイリウムハスク、又はイサゴールともいいます。主成分として、食物繊維を約80%以上も含み、さらに細かくみると、ヘミセルロース53%、セルロース3.7%、水溶性食物繊維23%、ペクチン5.8%などで構成されています。
2.プランタゴ・オバタ種皮末の効能
a.満腹感
プランタゴ・オバタは、吸水性が高く、30~50倍にも膨潤するといわれています。このため、食前にプランタゴ・オバタを食べると、適度な満腹感が得られ、自然に無理せず食事の量を減らすことができます。
b.消化・吸収の抑制
プランタゴ・オバタの不溶性食物繊維が、食物の消化・吸収を阻害します。これは、食物繊維が脂肪や炭水化物を抱合するためです。この抱合のため、消化酵素と反応しにくくなり、消化されにくくなります。また、小腸の粘膜と接触する確率も減るため、吸収もされにくくなります。

以上のことにより、同じ量の食事をしても、プランタゴ・オバタによって、吸収されるカロリーは抑制されます。


炭水化物の吸収が抑制されることで、血糖値の上昇も抑制されます。

インスリンは、膵臓で作られるホルモンの一種で、血中の糖分(血糖)を細胞のエネルギーとして効率よく利用するために必要なものです。このインスリンは、血中の糖分の濃度(血糖値)に応じて分泌されます。つまり、血糖値が高いほどインスリンも多く分泌されます。非常に重要なホルモンですが、一方では過剰な糖分を脂肪にして蓄える作用があり、また、食欲増進効果もあるといわれています。プランタゴ・オバタは、食物中の糖分をゆっくり吸収させる効果があるので、血糖値が急激には上昇せず、この結果インスリンの分泌を抑え、余分な脂肪の蓄積を抑え、更に過剰な食欲も抑え込むと言われています。

また、急激に血糖値が上昇すると、それだけ膵臓は酷使され、ひいては成人型の糖尿病になりやすくなりますが、プランタゴ・オバタを用いることにより、血糖値の上昇が抑制され、インスリンの分泌も節約されるため、膵臓も酷使されずにすみ、結果として糖尿病の予防にもなります。

また、血糖値が徐々に上昇すると、「腹持ち」がよくなり、過食を防げます。


c.便秘の改善

かなり古い時代からインドやヨーロッパで、緩下作用があり、便秘を治すということが知られていました。
便秘を改善する理由としては、

1. 便量が増加し直腸を刺激する。


2. 水分を保持して便を柔らかくする。

の2点があげられます。

便秘を改善すると、痔、大腸癌、直腸癌の予防にもなります。

d.血清コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)の低下作用

主として水溶性の食物繊維であるヘミセルロースの作用と考えられています。ヘミセルロースは、吸水性をもち膨潤性を示し、かつ粘性をもった食物繊維です。

このヘミセルロースが、血清コレステロール及び中性脂肪を下げますので、高脂血症、動脈硬化、心臓病、脂肪肝等の成人病を防ぎます。

上記4点の作用により、プランタゴ・オバタはダイエットに効果があります。

3.プランタゴ・オバタを使用する際の注意点
a.吸水性が高く、30~50倍に膨潤しますので、水分の摂取量が少ないと、逆に便秘になる場合もあります。ですから、プランタゴ・オバタを飲む際は出来るだけ、水を多く飲むようにして下さい。 (コップ1~2杯程度は必要です)
余分な水分はプランタゴ・オバタが吸収してしまいますので、「水太り」が気になる人も、気にせず水を飲んで下さい。

b.プランタゴ・オバタは膨潤性の下剤として、医薬品にも使われることがあるように、体質によっては、下痢をする場合もありますので、その場合は量を加減して用いて下さい。また、逆に効きにくい場合もありますので、この場合も量を加減して下さい。

c.効果のb.で書いたとおり、プランタゴ・オバタは栄養素の消化吸収を抑制する働きがあります。これはカロリー源となる炭水化物や脂肪だけでなく、ビタミンやミネラルも同様です。ですから、ビタミンやミネラル不足にならないよう充分補うようにしましょう。


乳糖(lactose)

グルコース(ブドウ糖)とガラクト-スが結合した二糖類です。牛乳中には約5%含まれています。
小腸上皮に結合する乳糖分解酵素ラクターゼによりグルコースとガラクトースに分解されると同時に吸収されます。
乳糖は難消化性糖質であり、一部は未消化のまま大腸に到達し、そこで腸内細菌によって発酵を受け、有機酸のあるものは、大腸壁細胞の栄養源となったり、腸内を酸性側に傾かせて、いわゆる善玉菌優位の腸内菌叢(ちょうないきんそう)を作り上げたり、便性改善を行うなど様々な形で寄与しています。また乳糖は、病原菌の基質にはなりにくく、乳酸菌を増やす働きがあるので、整腸作用があり便秘等に効果があります。

更に、カルシウムやマグネシウムの吸収を助けるとも言われています。

乳糖不耐症といわれるのは、牛乳中の糖質(=乳糖)を消化する酵素の少ないひとのことで、白人と比べて東洋民族には多いといわれ、牛乳を飲むと下痢をすることがあります。


結晶セルロース(Microcrystalline Cellulose)

微結晶セルロースともいい、不溶性食物維繊の一種です。ブナやカエデから採取されたパルプを酸で加水分解し、中和、水洗、精製後、乾燥して作ります。
近年、食物繊維摂取量の減少とともに、大腸ガンや大腸憩室疾患が増加していると言われています。食物繊維には、糞便増大作用、腸管通過時間の短縮作用があり、発ガン物質と大腸粘膜との接触が押さえられるため、食物繊維には大腸の発ガン抑制効果があると考えられています。また、食物繊維のこのような作用に伴って大腸内圧も低下するため、大腸憩室の発生も抑制できると言われています。


牻牛兒(げんのしょうこ)
 牻牛兒は、下痢にもよい薬草ですが、便秘(べんぴ)にもまたよく利きます。
一摑みを水五、六合に入れ、三分の二ほどに煎じ、お茶代りに飲用する。

朝顔の種(牽牛子(ケンゴシ))
 朝顔(アサガオ)の種子を四、五粒(子供には二粒位)そのまま飲みます。
昔より白花の方がよく利くと申しますが、別にそれとは限らぬ様です。

無砂糠(むさぬか)
砂の入っていない糠(ぬか)を焙烙(ほうろく)で狐色になるまでいり、一日二合位ずつ食します。
ご飯にかけて食べるのも一法で、二日ほどで大抵よく通じます。

ハブ草
 ハブ草の実を一匙(おほさじ)に一パイほど、三、四合の水で煎じ、お茶代りに常用していますと、身体の具合が大変よくなり、自然通じがある様になります。

人参(セリ科)+苹果(リンゴ)
 毎朝起きぬけの空腹時に、人参(普通のお台所で使う野菜のもの)と苹果(りんご:を卸し、布でしぼった汁を盃半バイほど飲みます。一ヶ月も続けますと、頑固な便秘もケロリの治ります。

大黄+重炭酸ソーダ+炭酸マグネシヤ
 大黄末一匁、重炭酸ソーダ三匁、炭酸マグネシヤ五分ほどを混ぜてよく擂り、就寝前に茶匙に一パイほど、粉薬を用いる様にして水で服みますと、翌日には大抵軟便となって通じます。

小豆(あずき)
 小豆をこく煎じて、その汁を湯呑茶碗に一日二、三バイ、二回ほども飲みますと便通のあるものです。

小豆(あずき)+昆布(こんぶ)
 小豆(あづき)と昆布(こんぶ)を一緒に軟らかく煮て、砂糖を少し入れて甘味をつけ、胃を悪くしない程度に食べます。昆布の嫌いな方は鍋底に敷いて小豆だけを食べても結構です。

水飴+卵
 水飴に卵をまぜて食べますと、効目があるとされてゐます。

センナ(蕃瀉葉)
 アフリカのナイル川流域に産するセンナという小潅木の葉を一摑みほど、二合の水で半量に煎じ、お茶代りに飲みます。ハブ草と同じ様な効果のあるものです。


塩水
 お腹の空いている、朝の起きたてなどに、コップ一杯の塩水(好みで砂黄水でもよろしい)を飲むと、大抗の便秘が治ります。

人工カルルス泉塩
 人工カルルス泉を毎朝最飲に飲む番茶の中へ、親指の爪にのるほど落して飲んだら、頑固な便秘が自然に治り、身体が丈夫になりました。


炒り玄米
 玄米を炒って粉末としておき、茶匙二杯と塩少々を茶呑茶碗に入れ、一日二三回、熱い注を注いで飲むと、便秘によろしい。


蓬湯(よもぎゆ)
 蓬の葉の乾したのを、湯呑茶碗に三分の一ほど入れ、熱湯を注いで、朝の食前に飲むと、苦いけれどよく効きます。これは煎じたのでは駄目です。


蜂蜜(はちみつ)
 蜂蜜茶匙一杯に熱湯を注し、約七八倍に薄めた飲み物は、便秘に特効があります。


卵の油
 二十個分の卵の黄身を鍋にいれて火にかけ、黒飴状に煮つめて、一週間分として服用する。

プルーン
セイヨウスモモ (プラム) を乾燥させたもので、俗に「造血作用がある」、「便秘によい」などといわれている。

コリアンダー
地中海沿岸が原産のセリ科の一年草。
消化器系の働きを調整し、食欲不振に効果があるとされ、ドイツでは便秘を防ぐ医薬品とし て認められている。

難消化性オリゴ糖

乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌・糖化菌・納豆菌






音楽療法

音楽療法の権威で、東京芸術大学教授の桜林仁教授によると、
重度の便秘患者に、食前と就寝前、モーツァルトの『メヌエット』、ショパンの『マズルカ舞曲』等を聴かせたところ、3日目に便通があったといいます。
便秘の原因の一つとして、精神的なもの、神経性のものがあります。
そして、これらの音楽には、ストレスや緊張で弱った神経を鎮める効果があると考えられています。
効果の程はわかりませんが、害は無いと思いますので、試しに聞いてみるのも良いかもしれません。