健康情報

2012年3月20日火曜日

人参養栄湯(にんじんようえいとう) の 効能・効果 と 副作用

《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
57.人参養栄湯(にんじんようえいとう) 和剤局方

地黄4.0 当帰4.0 朮4.0 茯苓4.0 桂枝2.5 芍薬2.0 遠志2.0 陳皮2.0 黄耆1.5 人参3.0 甘草1.0 五味子1.0


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
やせて血色悪く,微熱,悪寒,咳嗽がとれずに倦怠感が著しく,食欲不振で精神不安,不眠,盗汗 などもあり,便秘気味のもの。
本方は黄耆建中湯の変方と見なされる処方で,病後で衰弱した場合によく用いられ,特に肺結核に応用されることが多い。即ち小柴胡湯補中益気湯を用いても微熱,悪寒,咳嗽がとれず,更に食欲が減退するものに奏効する。また頑固な咳嗽が続き,衰弱のため麻黄剤は使えないが麦門冬湯半夏厚朴湯,柴胡剤などでも効果がない場合本方を試みるとよい。本方適応症状には便秘の傾傾が認められるが,排泄される便は軟いのが普通である。従って衰弱したものや虚弱な老人の便秘にも応用される。本方と柴胡桂枝干姜湯との鑑別は,柴胡桂枝干姜湯適応症は神経症状が更に強く,胸内苦悶,胸部あるいは腹部に動悸を訴え,下痢の傾向があるから区別出来る。
従って本方服用後頭痛,のぼせを訴えるときは柴胡桂枝干姜湯を,胃痛,腹痛を訴えるときは小建中湯を考慮すべきである。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
本方は呼吸器疾患と消化器疾患が併発し,熱症状と胃腸症状ならびに神経症状などを伴う点で,あたかも柴胡桂枝湯の適応症状に似ているが,まったく異質なもので本方が適応するものは,応用の目標らんに記載のごとく,病勢が進んで体力が消耗し,それがために消耗熱や咳嗽,神経症状などを発現するものが対象になる。とくに本方投与の投象は病巣が進展する結核症に多く,内的再感染の傾向やシューブの疑いがあるなどのもので発熱しているが,一般解熱剤の投与に一考を要し,しかも激しい咳嗽と粘稠な痰を喀出し,消化障害があって食思が振るわず,ネアセ,精神不安など重篤な複合症候あるものによく適応する。

類似症状の鑑別 本方は以上のとおり病勢が発揚性で消耗熱,咳,タン,胃腸症状を目安にする。

柴胡桂枝干姜湯 臨床的にはまったく本方と似ているが,さらに衰弱が著しく内臓機能も全般的に悪く,消化不良性の下痢便,口渇,不眠,胸部の動悸や腹部の動悸が亢進して,本方以上に神経症状が著明な者によい。

十全大補湯 本方症状に似ているが病勢がややおちついて,熱,咳,喀痰などが緩和となり衰弱の徴候が主となるものを目安に用いる。

補中益湯気 病勢が停止し回復の傾向あるものの体力を増強し,自然治癒能力を高度に発揮させる薬方で,衰弱,貧血,疲労倦怠,無気力,食欲不振などを対象に応用する。


後世要方解説〉 矢数 道明先生
○和剤局方「積労虚損,四肢沈滞,骨肉酸疼,吸々として少気,行動喘啜,小腹拘急,腰背強痛,心虚驚悸,咽乾唇燥,飲食味ひ無く陽陰衰弱,悲憂惨戚,多臥少起,久しき者は積年,急なる者は百日,漸く痩削に至る。五臓気竭き,振復すべきこと難きを治す。又肺と大腸と倶に虚し,咳嗽下利,嘔吐,痰涎を治す。」
○医方口訣集「気血虚して心室衰ふる者之を主る」
即ち本方は補病困憊の極で,元気衰え,貧血を来し,津液枯涸して皮膚栄養が衰え,悪液質を呈し,五体の活気が悉く衰えたものを賦活しようとするものである。主治に咳嗽下利とあるが,咳嗽下痢のある場合は注意を要する。


当荘庵家方口解〉 矢数 道明先生
十全大補湯の症に似て,どこやら少し熱あるによし。心虚したる云ふ目的に用ひる也。心虚痰鬱の症にも用ひて効あることあり,虚人によし。


経記筆記〉 津田 玄仙先生
人参養栄湯を諸病に用ゆる目的は,第1毛髪随全,第2顔色無沢,第3忽々喜忘,第4只痰不食,第5心悸不眠,第6周身枯痰,第7爪枯筋涸 以上を人参養栄湯の七症と云ふなり。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は気血両虚を主とすれども十補湯に比すれば遠志,橘皮,五味子ありて脾肺を維持するの力を優なり。三因には肺与大腸倶虚を目的にて下利喘乏に用てあり,万病とも此意味のある処に用ゆべし又傷寒壊病に先輩炙甘草湯と此方を使ひ分てあり熟考すべし 又虚労熱有て咳し下痢する者に用ゆ。


【一般用医薬品承認基準】
人参養栄湯
〔成分・分量〕
人参3、当帰4、芍薬2-4、地黄4、白朮4(蒼朮も可)、茯苓4、桂皮2-2.5、黄耆1.5-2.5、陳皮(橘皮も可)2-2.5、遠志1-2、五味子1-1.5、甘草1-1.5

〔用法・用量〕


〔効能・効果〕
体力虚弱なものの次の諸症:
病後・術後などの体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血


【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位
症 状
皮 膚
発疹・発赤、かゆみ
消化器
胃部不快感
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
偽アルドステロン症、ミオパチー1)
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
肝機能障害
発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
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3.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬
剤師又は登録販売者に相談すること
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
〔成分及び分量に関連する注意として,成分及び分量の項目に続けて以下を記載すること.〕
本剤の服用により,糖尿病の検査値に影響を及ぼすことがある.
〔1日最大配合量がオンジとして1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること.〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくても
よい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人
(6)次の症状のある人。
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むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

2012年2月25日土曜日

人参湯(にんじんとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

人参湯(にんじんとう)
 人参 甘草 朮 乾姜各三・〇

 別名を理中湯と云い、胃腸の機能を整調するの作用がある。
  一般に本方證の患者は、胃腸虚弱にして、血色があく、顔に生気がなく、舌は湿潤して苔なく、尿は稀薄にして、尿量多く、手足は冷え易い。また往々希薄な唾 液が口に溜まり、大便は軟便もしくは下痢の傾向である。また屡々嘔吐・目眩・頭重・胃痛等を訴える。脈は遅弱或は弦細のものが多い。腹診するに、腹部は一 体に膨満して軟弱で、胃内停水を證明する者と、腹壁が菲薄で堅く、腹直筋を板の如くに触れるものとがある。
 本方は人参・白朮・乾姜・甘草の四味 からなり、四味共同して胃の機能を亢め、胃内停水を去り、血行を良くする効がある。従って急性慢性の胃腸カタル、胃アトニー症・胃拡張・悪阻等に用い、時 に畏縮腎で、顔面蒼白・浮腫・小便稀薄で尿量が多く、大便下痢の傾向のものに用い、また小児の自家中毒の予防及び治療に用いて屡々著効を得る。時として貧 血の傾向ある弛緩性出血に、前記の目標を参考にして用いる。
 本方に桂枝を加えて、甘草の量を増して、桂枝人参湯と名付け、人参湯の證の如くにして表證があって発熱するものに用いる。
 また人参湯に附子を加えて、附子理中湯と名付け、人参湯證にして、手足冷・悪寒・脈微弱のものに用いる。


漢方精撰百八方
103.〔人参湯〕(にんじんとう)

〔出典〕傷寒論

104.(附方)〔附子理中湯〕(ぶしりちゅうとう)(直指方)

〔処方〕人参、甘草、朮、乾姜 各3.0

〔目標〕
 からだが虚弱で、血色の悪い、生気にとぼしい人。多くは痩せた人である。腹痛、胃痛、時に胸痛、めまい、頭重感などを訴え、下痢や嘔吐することがある。
 手足が冷え、舌が湿って苔はなく、尿は水のように薄く量も回数も多い。また、往々うすいツバが口の中にたまる。
 脈は緊張が弱く、あるいは沈遅、あるいは弦である。腹部は軟弱無力で、心下部に振水音をみとめるか、あるいは反対に、痩せているので腹部の肉付きが少なく、しかも、腹壁が板のように固く張っている。
 からだや手足の冷えが甚だしく、四肢が痛んだり、尿がことに近くて、脈が沈遅のものは、附子理中湯がよい。

〔かんどころ〕
全体から受ける印象に生気がない。尿が水様透明で量が多い。口の中にうすいツバがたまる。腹証。これらは、本方を用いる目標として、重要な順にあげたものである。

〔応用〕
胃下垂症、胃アトニー症、胃カタル、小児自家中毒症、妊娠悪阻、肋間神経痛、急性吐瀉病、神経症等

〔治験〕
77才 男子 2年ばかり前、脈が結代したので、ある病院にかかった。そのとき、血圧が170程あり、脳軟化症のけがあるといわれたという。それ以来、味覚がなくなり、足に力がなくて歩きにくくなった。
 最近よだれが出て困る。大便が秘結するので漢方薬店でハブ草に大黄を加えたものをすすめられたが、それをのむと、便通の前にひどく腹が痛むという。
 患者はやせて顔色が悪い。手が冷たく、夜寝てから3回ぐらい小便にゆくという。脈は沈小で弱、舌は白く湿っているが、苔はない。血圧は126/70  腹部は、腹壁薄く、ぺしゃんこで、しかも板のように固く、両側の腹直筋が上の方で変急していて、心下部には振水音がある。  たずねると、よだれは薄いものだと答えたので、附子理中湯を与えた。すると、1週間後には、よだれが殆ど止まり、心下部の振水音が聞こえなくなった。しかし、その他の症状があるので、まだ治療をつづけている。  

附子理中湯 人参、肝臓、朮、乾姜 各3.0 附子1.0
山田光胤



漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
8 裏証(りしょう)Ⅱ
 
 虚弱体質者で、裏に寒があり、新陳代謝機能の衰退して起こる各種の疾患に用いられるもので、附子(ぶし)、乾姜(かんきょう)、人参によって、陰証体質者を温補し、活力を与えるものである。
 
 各薬方の説明
 
 1 人参湯(にんじんとう)  (傷寒論、金匱要略)
 〔人参(にんじん)、朮(じゅつ)、甘草(かんぞう)、乾姜(かんきょう)各三〕
  本方は、理中湯(りちゅうとう)とも呼ばれ、太陰病で胃部の虚寒と胃内停水のあるものを治す。貧血性で疲れやすく、冷え症、頭痛、めまい、嘔 吐、喀血、心下痞、胃痛、腹痛、身体疼痛、浮腫、下痢(水様便または水様性泥状便)、食欲不振(または食べるとながく胃にもたれる)、尿は希薄で量が多い などを目標とする。本方の服用によって、浮腫が現われてくることがあるが、つづけて服用すれば消失する。五苓散(ごれいさん)を服用すれば、はやく治る。 本方を慢性病に使用するときは丸薬を用いる。
 〔応用〕
 つぎに示すような疾患に、人参湯證を呈するものが多い。
 一 胃酸過多症、胃アトニー症、胃下垂症、胃カタル、胃拡張症、胃潰瘍、大腸炎その他の胃腸系疾患。
 一 萎縮腎その他の泌尿器系疾患。
 一 心臓弁膜症、狭心症その他の循環器系疾患。
 一 肋間神経痛その他の神経系疾患。
 一 肺結核、気管支喘息、感冒その他の呼吸器系疾患。
 一 吐血、喀血、腸出血、痔出血、子宮出血などの各種出血。
 一 そのほか、悪阻、肋膜炎、糖尿病など。
 
 2 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)  (傷寒論)
 〔人参湯に桂枝四を加えたもの〕
 人参湯證で、表証があり、裏が虚し(特に胃部)表熱裏寒を呈するもの、特に動悸、気の上衝、急迫の状などが激しいものに用いられる。発熱、発汗、頭痛、心下痞、心下痛、心下悸、四肢倦怠、足の冷え、水様性下痢などを目標とする。
 〔応用〕
 人参湯のところで示したような疾患に、桂枝人参湯證を呈するものが多い。
 その他
 一 偏頭痛、常習性頭痛など。
 
 3 附子理中湯(ぶしりちゅうとう)
 〔人参湯に附子○・五を加えたもの〕
 本方は、人参湯の加味方で、人参湯證で悪寒や四肢の厥冷を訴えるものである。四肢の疼痛、排尿頻数、精神不安(不眠、神経過敏)などがはなはだしくなることを目標とする。
 〔応用〕
 人参湯のところで示したような疾患に、附子理中湯證を呈するものが多い。
 その他
 一 ノイローゼ、神経衰弱その他の精神、神経系疾患。
 



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会 
56.人参湯(にんじんとう) 傷寒論
 人参3.0 甘草3.0 朮3.0 乾姜2~3.0

(傷寒論)
○霍乱,頭痛,発熱,身疼痛,熱多欲飲水者,五苓散主之,寒多不用水者,本方主之(霍乱)
○大病差後,喜唾久不了々,胸上有寒,当以丸薬温之,宜本方 (差後)

(金匱要略)
○胸痺,心中痞気,気結在胸,胸満,脇下逆搶心,本方主之 (胸痺)


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
貧血冷え症で胃部の重圧感や,時に胃痛を自覚し,あるいは頭重,めまい,悪心,嘔吐などを伴い,軟便または下痢の傾向のあるもの。
 アトニー性体質や内臓下垂の虚弱な体質に多く見られる胃腸の緊張感や蠕動運動が弱く,それがために応用の目標欄記載の症状を現わす消化器疾患に用いる。すなわち栄養や容ぼうとも不良で,自覚的には四肢の末端や腰部に冷感を覚え,たえず心窩部が重苦しくあるいは膨満感やつかえる感じがあって,軟便か下痢気味で平素から食事量が少ないと訴えるいわゆる胃のアトニー症に好適の処方である。通常こうした胃腸症状のあるものには,大柴胡湯,小柴胡湯,半夏瀉心湯証に見られる舌苔を認めるが,本方にはほとんどと言ってよいくらい舌苔は見当らない。また患者は胃部のひどいつかえを訴えるが,触診上心窩部は 軟弱なものが多く,胃部拍水音を証明する。本方証の心下痞巧は,人参,干姜が対象になる自覚症状と考え現れる。人参湯に最も類似する六君子湯は症候群が全く似ているが,具体的には本方よりさらに胃部の重圧感が著明で,他覚的にも心窩部の抵抗を認めるものを対象にする。茯苓飲は人参湯や六君子湯が適応するような症候群があって,これら二方が適する体質よりやや丈夫で,胃部がつかえて著明な膨満感あることが目安となる。平胃散は茯苓飲の症状に似て,さらに丈夫な体質が応用の目標となる。以上の四処方はいずれも胃腸病を対象にするが,体格や体質,内臓緊張力の程度の差によって選別投与し,これら条件の,そろったものからあえて序列をつけるなれば,平胃酸,茯苓飲,六君子湯,人参湯と言った順位になると考えられる。


漢方診療30年〉 大塚 敬節先生
○人参湯は1名を理中湯という。その脈は沈弱または沈遅のものが多いが沈弦,浮大のこともある。しかしいずれの場合も底力がないのを特徴とする。その腹は軟弱無力で振水音を証明する場合と腹壁が板のように硬い場合とある。
○人参湯の証には食欲の不振または食べるといつまでも胸にもたれる傾向がある。胃痛や嘔吐のあることもある。冷え症で,尿量が多い。下痢をすることもあるが,下痢をしないこともある。口にうすい水が上ってきたり,のみこめないようなうすいつばが口にたまることもある。これらの症状は古人の言にしたがえば,裏に寒があるためであるから人参湯で,この裏寒を温めてやるとよくなる。
○人参湯を数回のんでいるうちに浮腫の現われることがある。これはよい徴候であるが,この浮腫を早く去ろうと思えば五苓散を与えるとよい。2~3日の服用でよくなる。
○人参湯に附子を加えたものを附子理中湯という。人参湯証で裏寒の甚しいものに用いる。
桂枝人参湯は人参湯の証に似ていて,動悸がしたり,体表に熱のあったりするものに用いる。

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○元来が虚弱体質の人あるいは衰弱により,体力が低下した人の腹痛,あるいは胸痛に用いる。血色が悪く,生気が乏しく,疲れやすく,多くは痩せた人である。腹痛は主に上腹部,胃部におこり,時として下痢,嘔吐,下血などのあることもある。特徴として,手足が冷え,舌が湿って苔がなく,尿が無色透明で水のように薄く,量も回数も多い。また往々うすい唾液が口の中に溜ることがある。脈は緊張が弱く,沈遅(沈んでいて拍動数が少くて遅い)あるいは沈弦(弓のつるを張ったように細くて異様に緊張している)である。腹部は軟弱無力で心下部に振水音をみとめるものと,痩せた肉づきの少ない薄い腹壁が,反って板のように固くなっている場合とがある。

○先哲の口訣
(医療手引草) 中焦虚弱(中焦の気,すなわち消化力が弱く)で呑酸するものは理中湯加呉茱萸がよい。
(方読弁解) 涎沫(よだれつば)をしきりに吐くのは,脾気(胃の消化力)が弱くて,これを収納できないからである。これには六君子湯加益智がよいが,虚寒(衰弱して新陳代謝が衰え,体が冷えているもの)の甚だしいものは理中湯がよい。
(医療手引草) 下痢して顔色が蒼黒く,たびたび冷薬を用いてよきいに下痢するものは理中湯を陽いる。
(老医口訣) ひどく空腹を感じて食物を食べたいと思うが,多くを食べることができないものは,俗にチカガツエといい,人参湯が効く。もし飢えて食物を貪り,多食して止まぬものは甘麦大棗湯がよい。
(方輿輗) 黄胖で下血止まぬもの(黄胖は貧血して動悸,息切れする病気)
(医療手引草) 胃弱で消化がわるく気逆上して吐血,衂血するものは理中湯加木香がよい。
(先哲医話) 荻野台州「酒のみの吐血は,胃中の畜血(うっ血)で三黄瀉心湯がよいが,もしそれでも止血しないのは脾血なので,理中湯がよい」「子宮出血の軽いものは当帰煎がよい。重みものは理中湯,最も激しいものは附子を兼ねて牛肉を食べると一層よい」
(古家方則) 大便通のたびに脱肛したり,歩行すると脱肛ものは人参湯を煉薬にして連用するとよい。又消化力が弱くて便秘するものには,下剤を用いるより,人参湯がよいとも書いてある。また白帯下で色がうすく,水のように漏れ下るものによい。
(医療手引草) 咳嗽で熱い湯をのむとしばらく止むようなものは冷嗽で理中湯加五味子がよい。また口腔の瘡で冷薬をのんで癒らないものは,中焦の気(胃の消化力)足らず,理中湯を用いるとよい。甚しいものは附子か桂枝を加えてすすってのむとよい。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 別名を理中湯と云い,胃腸の機能を整調するの作用がある。一般に本方證の患者は胃腸虚弱にして,血色が悪く,顔に生気がなく,活は湿潤して苔なく,尿は稀薄にして尿量多く,手足協冷え易い,また往々稀薄な唾液が口に溜り,大便は軟便もしくは下痢の傾向である。また屢々嘔吐,目眩,頭重,胃痛等を訴える。脈は遅弱或は弦細のものが多い。腹診するに,腹部は一体に膨満して軟弱で胃内停水を証明する者と,腹壁が菲薄で堅く,腹直筋を板の如くに触れるものとがある。本方は人参,白朮,乾姜,甘草の四味からなり,四味共同して胃の機能を亢め,胃内停水を去り,血行をよくする効がある。従って急性慢性の胃腸カタル,胃アトニー症,胃拡張,悪阻等に用い,時に萎縮腎で顔面蒼白,浮腫,小便稀薄で尿量が多く,大便下痢の傾向のものに用い,また小児の自家中毒の予防及び治療に用いて屢々著効を得る。時として貧血の傾向ある弛緩出血に前記の目標を参考にして用いる。本方に桂枝を加えて,甘草の量を増して,桂枝人参湯と名ずけ,人参湯の証の如くにして表証があって発熱するものに用いる。また人参湯に附子を加えて,附子理中湯と名付け,人参湯証にして手足冷,悪寒,脈微弱のものに用いる。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 体質は虚証で筋肉は弛緩し,貧血性で疲れやすい。おもな訴えは,疲労しやすく,胃腸の症状,胸痛のどれかがある。胃腸症状は心下痞え,下痢,胃痛,嘔吐のこともある。下痢は水様便または泥状便で,腹痛はない。唾液分泌過多を訴えるものもある。あるいは身体疼痛,浮腫,頭重,眩暈,不眠,小便自利,腹部冷感,喀血,吐血,腸出血,のうちいずれかを伴うものである。脈は軟弱で遅く,腹証は腹壁一体に膨満するもの,あるいは軟弱のものもある。または薄く緊張するもの,腹直筋が板のように触れるものもあり,胃内停水を証明することが多い。



漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
 運用 1. 胃腸のアトニー症状
 虚証の体質で貧血性,冷え性,疲労しやすく,胃症状としては食欲不振,胃部が痞える感じ或は重苦しい感じ,時には鈍痛,腸症状として水様便又はそれに近い泥状便の下痢を起し易い。脉は沈んで弱いことが多く,腹部も腹壁が軟かく,胃部も軟かいのが普通だが自覚的に痞える感じが強い時には胃部が薄く比較的強く緊張していることがある。しかし押すと深部には力がない。胃部を押すと気持がよいという者もあり,極端な例では胃部を押すと他部に於ける症状が軽快することすらある。しばしば拍水音を認め,患者は腹が冷えると訴えるものがある。足が冷え,小便が近くて量が多い。なお疲労性を伴い,頭重感を訴えるものがある。胃アトニ,胃下垂,胃腸カタル,急性慢性腸カタル,胃腸性神経衰弱,肺結核,などで右の所見があるときに頻用する。発熱を伴うときには症状が劇しく,「霍乱,頭痛,発熱,身疼痛,熱多く,水を飲まんと欲するものは五苓散之を主る。寒多きは水を用ひず,理中丸之を主る。」(傷寒論霍乱病)とて吐瀉頭痛身疼痛を起すに至る。胃腸アトニー症状に対して本方と類証鑑別すべきは
 桂枝加芍薬湯,小建中湯は胃腸アトニー状態だが,寒や停水はない。真武湯も虚寒停水症状があるが動揺性で人参湯は停滞性である。虚は同等,停水は真武湯に著しく,寒は人参湯に著しい。例えば真武湯は小便不利し,人参湯は自利する。甘草瀉心湯は下利,心下痞硬のときは症状としては共通するが,甘草瀉心湯は腹鳴があり,脉も人参湯ほど弱くなく下利も泥状便。

 運用 2. 虚寒性の胸痛
 虚寒性は無熱であるが発熱しても熱感が伴わず手足も冷え症で貧血に傾き,脉も弱いことで判定する。こういう状態に於て前胸部側胸部を問わず任意の場所が痛むもの,但し咳などは殆ど伴わないときに使う。「胸痺,心中痞す,留気結ばれて胸に在り,胸満し,脇下より心に逆槍す」(金匱要略胸痺)痺は知覚麻痺,疼痛を意味する。心中が痞える感じは留気結ぼれて胸に在るためだと説明されている。病理的には水が寒によって凝結し,停滞すると解釈すると水分の代謝障害と局所的貧血があって起る知覚障害と推定される。そよために胸痛や知覚障害が起るのであろう。脇下より心下に逆槍すとは右側の肋骨弓下部から左上方に狙って槍で刺されるような劇痛との意だが,必ずしも左右を問わなくてもよい。これにより肋間神経痛,肋膜炎による側胸痛などに本方を使う機会がある。また逆槍が肩まで突抜けると考えれば肩胛上膊部の麻痺,疼痛になるから,40肩,50腕,及び各種の病に際しての同部疼痛麻痺にも使い得るものである。事実,荒木性次氏も私も使った経験があり,幕末の岑少翁先生は腕をひっきりなしに風車のように速く振廻す奇病に際し心下部を押えるとその不随意運動が止るのによって本方を使ったが,肩胛関節に関する所より見ればその方からの説明も下し得られよう。

 運用 3. 唾の多いもの
 「大病差後喜唾 久しく 了々たらざるは,胸上に寒あり,当に丸薬を以て之を温むべし」
 (傷寒論差後労復篇)
 胸中の寒や胃中冷のときにはしばしば涎沫や唾液分泌過多を伴うもので,人参湯の場合は乾姜がそれに与って奏功する。甘草乾姜湯に涎沫があることを思うべきだ。臨床的には唾液分泌過多症,小児のよだれ多きもの。悪阻で生唾が多く出るもの。大人でも唾が口にたまり,話すときに泡を飛ばすというような人。蛔虫で唾が多いことも度々ある。なぜ人参湯にせずに理中丸を用いるかは検討を要する問題だが,恐らくは胸痺の如く急を要しないから湯液にして吸収の迅速なることを期待する必要がないばかりか,人参の苦味,乾姜の辛味などが胸になずんで呑みにくいから丸薬として用いる方が一層適切である。丸薬を以て温むべしとは,煎剤よりも丸薬が除々に溶解して乾姜が直接に胃腸粘膜を刺戟した方が局所の温熱刺戟としては目的にかなうであろう。殊に吸収が除々であるから,急速に吸収されて他部に影響を与えることの望ましくない大病差後の状態に於ては益々丸薬の合理性が肯かれる。霍乱に丸薬を使うのは急性症という点で,この考え方と矛盾するが,下痢嘔吐の劇症でしかも虚寒だから湯液を用いて反応が強く症状が劇化するおそれがあったり,嘔吐で湯薬を飲んでも吐いてしまうおそれがあるので殊更に丸薬を用いたと解釈しておこう。私は戦前と現在は虚労や虚寒証の慢性病には好んで丸薬を使用して所期の効を得ている。

 運用 4. 虚寒性の出血
 恐らくは乾姜が主で,人参にもそ英作用があると思うが,私は虚寒証の喀血,吐血,腸出血等に人参湯を用いて奏効した経験を持っている。その際,喀血,吐血の柏葉湯や下血の桃花湯は虚寒証は共通するが,停水症状がないので人参湯と区別する。

 運用 5. その他
 浮腫に使う,蓋し停水症状に著眼したもので,他の多くの浮腫が小便不利なのに対して人参湯が自利の点が特長的である。貧血性で萎縮腎などの如く夜間や冷えると余計に悪化するときに用いる。
 心悸亢進に使う。虚寒証の体質で苓桂朮甘湯の如く頭部にまで迫らず,心下痞して小便自利するものによい。
例えば心臓弁膜症,胃腸性神経衰弱症などの神経性心悸亢進など。方後の加減方をみると臍上動悸や悸があるのに着眼したのである。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此の方は胸痺(狭生症様疾患)の虚証を治する方なれども,理中丸を湯と為すの意にて,中寒,霍乱すべて太陰吐利の症に用ひて宜し。厥冷の者には局方に従て附子を加ふべし。朮附と伍するときは附子湯,真武湯の意にて内湿を駆るの効あり。四逆湯とは其の意稍や異なり,四逆湯は即ち下痢清穀を以て第一の目的とす。此方は吐利を目的とするなり。


漢方と漢薬〉 第5巻 第2号 
人参湯について  大塚 敬節先生

 人参湯に関する古人の論説,治験
 人参湯は古来広く応用された薬方であるから,古人のこれに関する論説は頗る多い。左の引用は我邦徳川時代の諸家の説を主としたものであるが,難波抱節の類聚方集成に千金方以下痘証宝筏に至る支那人の論議が15条列記してある英でその中12条を併せて採録する。

1.古方節議に曰く
 理中丸及湯 按ずるに此方夏月外風冷に感じ内冷物に傷られ停滞して化せず,嘔逆泄瀉脉沈細或は伏する者は太陰に属して是れ霍乱の症也。裏寒する故食滞りて化せず。故に乾姜を用ひて内を温め邪を散ず。参朮甘草湯を扶けて気を益す。甘辛を滞らず燥からざるなり。此方本外寒邪に感じ内冷物に傷られ,霍乱をなす者の為に設けり。后世活して温補の総司とする也。此方内外の邪を理する方にて,理の字と補の字とちがいあり。理中湯もとより温補の剤なれども,仲景霍乱に用ひられたは外風寒の邪,内冷食の邪,内外の邪を理するために建立したる方也。理は治と同く内外の邪を治むる合点にて指出て補中の意にてはなし。然れども薬は至極の補薬也。后人附子を加えて附子理中湯と名つく。手足厥冷する者の主方とす。手足厥冷は四逆湯甚だ勝れり。急に温むる時,前にも云通り白朮の緩き物反て邪魔になることあり。されども附子理中湯補の重剤と云ふものにて,立方の本意は格別の法と心得べし。扨又霍乱と云ふものは風寒暑湿飲食生冷の邪,交雑りて一時に吐瀉霍乱をなす。表に甚しき時は発熱悪寒し,裏に甚しき時は吐瀉して腹中大に痛む。或は転筋厥冷して冷汗出づ。暑甚しき時は大に渇して引飲して己まず,病因同じからず。故に治方も亦各々異なり。惟其因を詳にすべし。一概に誤り混ずべからず。熱多く水を飲んと欲する者は飲熱也。五苓散を以て其命熱両解すべし。若し水を飲むことを欲せざる者は是れ中寒する也。理中湯を以て其中を温むべし。

2.衆方規矩大成に曰く
 理中湯 寒気五蔵に中りて口くひつめ音いです,手足こはりすくむを治す。兼て胃脘に痰を停め冷気刺すが如く痛み,及び臓毒下冷く泄痢腹はり大便或は黄或は白く或は黒或は清穀あるを治す。

3.医療手引草に曰く
 直中太陰の症,胸膈満,手足冷,臍上痛み,清穀下痢して渇せず,是れ内冷物に傷られ,此症を致す,理中湯によろし。○傷寒誤て之を下し,始て結胸の症を覚ゆ。急に理中湯を与へよ。○腹満時に減じ,之を按じて痛まざる者は虚とす。理中湯之を温む。○汗下の后,関上の脉遅緩にして吐する者は胃寒とす,理中湯之を主る。○中気虚弱にして呑酸る者は理中湯に呉茱萸を加ふ。○口瘡冷薬を服して愈ざる者は中焦の気足らず,虚火汎上制するなし,理中湯を用ゆ。○十有五歳,熱甚しく知に発熱し夕に醒め,咽乾,腹微痛,起れば則ち眩暈し,心腹壅滞食せず,脉弦細濇なるものは,理中湯之を主る。
○下痢,身躯疼痛するは理中湯或は四逆湯。○痢,血色紫黯数々冷薬を服し,下る所愈々多きは理中湯。○理中湯に木香を加へ,胃虚して食化すること能はず,其気検上して吐衂衂血することもあり。かくの如き気剤を用て治することあり。○咳嗽熱湯を呻って暫く止む者は冷嗽なり,理中湯に五味子を加ふ。

4.老医口訣に曰く
 飢えて食を欲し,却って多食すること能はざる者,俗に ちえがつえ と云ふ。世医以て積の致す所とす。人参湯効あり。○反胃に絶粒さして,米煎などを飲しめ,理中湯 大半夏湯,温脾湯の類に宜し。

5.長沙腹診考に曰く
 予郷にありし時,一老母霍乱を患ふ。胸中痺して息すること能はず,人参湯を与て治す。

6.麻疹方訣に曰く
 疹出で自利止まざる証,気虚に属する者は理中丸之を主る。

7.方極に曰く
 理中湯,心下痞鞕して小便不利或は急痛或は胸中痺する者を治す。

8.袖珍方に曰く
 医方小乗に云ふ,涼薬過服して中焦英虚火上逆し口舌赤破,皮なき如く,咽喉痛をなす者は,理中湯加附子或は肉桂。○昆山方に云ふ,水腫諸薬応ぜざる者は附子理中湯之を主る。

9.類聚方広義に曰く
 産后,続て下痢を得,乾嘔して食せず,心下痞鞕し,腹痛小便不利する者,諸病久しく愈へず,心下痞鞕,乾嘔食せず,時々腹痛,大便濡瀉,微腫等の症を見す者,老人寒暑に層る毎に下痢,腹中冷痛し瀝々として声あり小便不禁,心下痞鞕,乾嘔する者は倶に難治となす,人参湯に宜し。

10.方輿輗に曰く
 理中湯,舌の患,寒冷の剤にて治せず,大便実せざる者によろし。○理中湯,黄胖,下血止まざる者を治す。○理中湯,自利に二義あり,下剤をも用ひずして自ら下る者を自利と云,又おぼえ無く下るをも自利と云,一種飲食すれば即ち痛て下るもの有り,方書に此れを脾泄と云へり。これも自利と其治方遠からずして内寒に属するの証なり。さて仲景氏の人に教えるに脈症を以てす。この条の如き自利渇せずの四字を以て内寒を明す。此れを后医の丁寧に臓腑有当を煩しく説くに比すれば,何等の要捷ぞ,何の簡易ぞ。○理中湯加猪胆汁湯,小児嘔吐止まず,或は大便溏泄時に煩して目翻し手搐するの状ある者此方大に奇効あり。

11.先哲医話に曰く
 荻野台州曰く,酒客の吐血は胃中の蓄血に属す。三黄瀉心湯によろし。若し止まざる者は脾血に属す。理中湯によろし。又曰く,崩漏(子宮出血)軽き者は当帰煎によろし。重き者は理中湯,其最も劇しき者は附子を加へ,兼ねて牛肉を餌食すれば更に佳なり。

12.方櫝弁解に曰く
 涎沫を吐すこと頻りに地に満つ。これ脾気怯弱に因て収摂することあたわず,六君子湯に益知を加ふ。虚寒甚しきもの理中湯によし。

13.水腫加言に曰く
 人参湯,虚腫,心下痞,下利,脉沈微或は白膿を下す或は水玉の如き者を治す。

14.向方弁に曰く
 金匱甘姜苓朮湯,理中湯と分量同じからずと雖も,而れども特に人参を去って茯苓を加ふるの異のみ。故に世々温然混用して疑はず。然れどもその実理中は中焦を理するの功あって,下焦を治するの能なし。甘姜苓朮は能く下焦を治して中焦に及ばず。何を以って之を言ふか。経に曰く,理中は中焦を理す,其利は下焦に在り。又曰く,大病差へて后,喜唾久しく了々たらず,胸上寒あり,当に丸薬を以って之を温むべし,理中丸に宜しと。知る,理中は中焦を理するを。更に胸脾に人参湯を用ゆるあり,亦胃陽虚乏して寒飲膈に在って胸痺するを治するの義なり。其の人参湯と名づけ,理中丸と名づく。意胃陽を門にするや明かなり。甘姜苓朮湯の主治に曰く腰中冷,いわく小便自利,曰く病下焦に属すと,竝に下焦陽虚の候なり。而して飲食故の如しと言ふ,則ち中焦に関せざるを知る可し。方薬分量,甘草白朮二両を用ひ,乾姜茯苓則ち之を倍す。知る下焦を理するの功厚し,而し仲中焦を理するの功薄し。

15.續建珠録に曰く
 一婦人,胸痛を患ふること1,2年,発すれば則ち食す識こと能はず,食すれば咽に下らず,手足微厥,心下痞鞕し,之を按ずるに石の如く脉沈結す,乃ち人参湯を与ふ。之を服すること数旬にして諸証漸く退き胸痛全く愈ゆ。

16.勿誤薬室方函口訣に曰く
 此の方(人参湯)は胸脾の虚症を治するの方なれども理中丸を湯となすの意にて中寒,霍乱すべて太陰吐利の症に用ひて宜し。厥冷の者には局方に従て附子を加ふべし。朮附と伍するときは附子湯,真武湯の意にて内湿を駆るの効あり。四逆湯は即ち下痢清穀を以て第一の目的とす。此方の行く処は吐利を以て目的とするなり。

17.橘窓書影に曰く
 竜土組屋敷,太田生女,従来痔疾を患ひ脱肛止まず,之に灸する数十壮,忽ち発熱衂血を発し,心下痞鞕して嘔吐下痢す。一医寒涼剤を以て之を攻めて増劇す。余理中湯を与へて漸く愈ゆ。一医其の薬の緩を攻む。余答て曰く,痞に虚実あり,邪気痞をなす,宜しく疎剤を用ゆべし,若し胃中空虚,客気衝逆して痞を為す者之を攻むれば害あり,古方瀉后膈痞に理中湯を用ひ又理中湯を以て吐血を治す。洵に故あるなり。

18.温知医談,第4号,山田業広曰く
 一婦人平素肥満にして腹膨張すること角觝漢(すもうとり)の如し。疫を患ふ。初起は何方を用ひたるや知らず,追々日を引くゆえ,医大承気湯七,八貼づつ用ゆるに便利せず,因て更に硝黄を倍すれども十余日を経て利せず,漸々食減じ容子あしきとて余を迎ふ。診するに舌上黄苔あれども乾燥せず,脈沈微なり,腹満すれども按じて痛まず。これを問ふに腹張平素より微しく大なるを積ゆと云ふ位なり。脈証の容子大邪巳に去り。胃気衰憊したるなり。胃実にて結糞のあるにはあらずと鑑定したれば先づ試に真武湯を与ふるに少しも障ることなし。一日夜間急に手足微冷汗出づ。これ温補の足らざるゆへならんと考へ,附子理中湯の参附を倍し与ふるに,漸く回陽し少しづつ食気も出づ。前方用ふること二十余日最早苦むところなく,全快に近きに大便尚便ぜず,便気あらば定て結糞にて苦悶すべし。灌腸法にても用ひざれば通じましなと言ひたるに,一日なんの苦痛もなくすらすらと快利して全快せり。大便通ぜざること凡三十七八日なり。先年同藩士に大便不利のときに喜て紫円を用ひしものあり,ある時例に仍て五分を用るに利せず,翌日一匁を用るに尚利せず,いらって日々二匁三匁四匁五匁に至るに便は利せずして煩悶甚しく遂に死せることあり。其証も具らざるに,加程の劇剤を容易に用るは畏るべく戒むべきの甚しきなり。(中略)余三十年前友人監田揚庵の父修三翁附子理中湯を用ひて一諸候の便秘を治したることを伝聞したけれども,倉卒に聴過して心にも留めざりしが、頃日前策を草するに臨て往時の事を思ひ出し,監田氏に其詳なることを聞かんと欲して問ひ合せしに,書面を以て贈りたれば其文のままを此に載て参商に供う。
 高槻候永井弾州年五十余,癇癖家にして,常に治を家厳修三翁に託す。一日別に患ふる所あり。修三をして薬せしむ。数十日にして愈えず。時に柴田氏(麹町に住せり)候家小児の為に出入す。候性急,其荏苒日を延くを倦み柴田氏に請ふ。柴田氏雑治験なし。加ふるに便秘病を以てす。又多紀茞庭先生に治を請ふ。多紀氏修三等と議し、六磨湯及び承気硝費の剤を用ひ至らざる所なし。而して遂に一行の便を得ず。候又医を更へんことを欲し,重臣山藤助之進なる者を以て再び修三に請ふ。修三固辞し且曰く,且今の考按予恐くは衆医に容れられず,蓋し衆医の見る所と氷炭合せず,却て其孤疑を惹かんと。翌日候の侍医瀬川淳庵をして治を修三に懇請す。修三いわく,衆医の処方皆な寒下の剤にして不可なるに非ず,只恐くは其投ずる所太過にして胃腸衰耗し,機化運転を失ふに外ならず,宜しく先づ参附温熱の剤を用ひて,胃腸を鼓舞せば或は前日服する所の薬気頓に効験を奏するを得へしと衆医果して惑う。修三意を決して附子理中丸を進む。未だ一剤を尽さず,水瀉五六行あり,気宇爽快諸証従て減じ数日にして全癒す。

19.聖剤発蘊に曰く
 人参湯 胸状丸くして肉をもち大がかりにて大腹までぼってりとして鳩尾の下に痞鞕大きくしっかりと有て,其外は何もなくやはらかなり,毒動する時は心下につきかけ痛て急にせりつめる者なり。此証小便不利すると雖も小腹に毒を蓄ことは少し。大腹へ飲をもち痞鞕す識者故へ心下痞鞕を治すれば小便自ら利する也。保嬰金鏡録に云く,泄瀉青白,腹痛,腸鳴,酸水を嘔吐し乳養を思はざるを治すと,是れ此方の腹状にして前証を発すること大人小児ともに時々あることなり。故に記して以て后用に具す。又下血を患ひ諸薬効なき者に此腹状あり。此方を用れば奇験あり。痔疾下血亦然り。又口舌瘡を生じ赤く爛れる者間々此方の証あり。世医清涼の剤をいかほど与へても治せざるものなり。又此腹状にて大便通ぜず,平日心下痛て苦悩し いかほど下剤を服しても治せざることあり。此方を与ふれば大便快利し,腹中緩みて痛を忘る者なり。是を以って知るべし。汗吐下我より為す者に非ずして彼より来ることを,是れ其の規矩縄墨を正しくして方を指揮すれば,下剤に非ずして下り汗剤に非ずして吐し,是れより其の宜しきに随て毒去る。何ぞ我より汗吐下の三方を定めて心力を尽すことhせんや。

21.傷寒六書に曰く
 誤つ太陰を下して結胸項強するには大陥胸丸,一法として頻りに理中丸を与ふ。

22.三因方に曰く
 症者飲食過度によって胃を傷り,或は胃虚して消化する能はず,翻嘔吐逆を致す。物気と上衝して胃口に蹙(せま)り決裂して傷る所,其色鮮紅を吐出し,心痛絞痛,自汗自ら流る,名けて傷胃吐血と曰ふ。理中湯よく傷胃吐血の者を止む。其功最も中脘を理するを以って,陰陽を分利し,血脉を安定し,方証広し。局方の如きは但吐血の証を出でず。学者当に自ら之を知るべし。或は只乾姜甘草湯を煮て之を飲むも亦妙なり。

23.医方選要に曰く
 理中湯は五臓寒に中りて,口噤失音,四肢強直すると治す。兼ねて胃脘に停痰し,冷気刺痛するを治す。

24.衛生宝鑑補遺に曰く
 仲景理中湯,傷寒の陰証,寒毒下痢,臍下寒へ,腹脹満,大便或は黄或は白或は青黄或は清穀あり,及び寒蛔上りて膈に入り蛔を吐するを治す。此胃寒にして実寒にあらず。

25.婦人良方に曰く
 人参理中湯は産后陽気虚弱にして小腹痛をなし,或は脾胃虚弱にして飲食を思ふこと少く,或は後後(大便のことなり)を去ること度無く,或は嘔吐腹痛し或は飲食化し難く,胸膈利せざる者を治す。

26.直指附遺に曰く
 理中湯は柔痙,厥冷自汗するを治す。

27.聖清総録に曰く
 小児躽(身ヲ曲ムコト)啼,脾胃風冷に傷られ,心下虚痞,腹中疼痛,胸脇逆満するを治す。○又理中湯,風腹に入り,心腹 痛,庵逆悪心,或は時に嘔吐し,膈寒通ぜざるを治す。

28.赤水玄珠に曰く
 理中湯は小児吐瀉の后,脾胃虚弱,四肢漸く冷へ,或は面に浮気あり。四肢虚腫して,眼合して開かざるを治す。

29.小青嚢に曰く
 理中湯,悪心乾嘔,吐せんと欲して吐せず,心下映漾として,人の船を畏るる如きを治す。 ○又小児慢驚,脾胃虚寒,泄瀉及び寒を受けて腰痛するを治す。

30.外科正宗に曰く
 理中湯,中気不足,虚火上攻し,咽間の乾燥を致し痛を作し,吐嚥妨碍及び脾胃健ならず,食少く嘔を作し,肚腹陰疼む等の証を治す。


31.瘍医大全に曰く
 理中湯,癰疽潰瘍,臓腑中寒,四肢強直を治す。(中略)

 人参湯証
 さて以上の論議や経験を通じて人参湯証を考えてみるに,人参湯証の患者に屢々観られる症状としては,次の如きものがある。

 1.顔色の蒼いこと,血色が悪くて生気のない人が多い。平素強健な人でも,病気に罹って,人参湯証を呈する様になると,生気を亡ひ,血色がわるくなる。

 2.唾液が稀薄で口内に溜る傾向がある。従って口渇を訴へることがあっても,舌は必ず湿濡している。舌苔のあることは稀である。又咳嗽のある場合には,稀薄な痰が出る。

 3.小便自利を訴える者が多い。下痢をしている場合は小便不利になることが普通であり,浮腫のある場合も亦小便不利になるのが通例であるが,人参湯証では下痢をしていても,小便自利の傾向があり,浮腫があっても小便自利の症状のある者が多い。又足が冷えると小便が近くなるというのも,人参湯の一つの目標となる。

 4.手足の厥冷を訴える者が多い。人参湯証の患者は手足の厥冷を訴え,そのために頭重,不眠を訴へる者すらある。

 5.目眩を訴える者が多い。

 6.心下痞鞕,心胸痛,胸満等の症状がある。腹診するに,腹部が一体に膨満して軟弱で胃内停水を証明するものと,腹壁が菲薄で堅く,直腹筋を板の如く触れるものとある。

 7.浮腫のある者がある。これは虚腫に属する者で,指壓によって陥凹して仲々隆起して来ない場合が多く,皮膚の営養わるく小便自利の傾向がある。

 8.出血を来すものがある。喀血,吐血,子宮出血,衂血等いづれの場所から出血してもよいが,黄連のゆく場合と厳重に鑑別しなければならない。それには他の症状をよく観察することが必要である。

 9.嘔吐,下痢或は便秘を来すことがある。

 10.身体疼痛を訴えることもある。

 11.脈は遅緩,或は遅弱のものと弦細のものとが多い

 最後に人参湯の分量であるが,これは経験薬方分量集に記載する処を標準として,証に従って多少の増減をやればよい。




【一般用医薬品承認基準】
人参湯(理中丸)
〔成分・分量〕
人参3、甘草3、白朮3(蒼朮も可)、乾姜2-3

〔用法・用量〕
(1)散:1回2-3g 1日3回
(2)湯

〔効能・効果〕
体力虚弱で、疲れやすくて手足などが冷えやすいものの次の諸症:
胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎



【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと (守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。 〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以 上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(5)次の症状のある人。 むくみ 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。 高血圧、心臓病、腎臓病 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位 症 状 皮 膚 発疹・発赤、かゆみ

まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称 症 状 偽アルドステロン症、ミオパチー 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

3.1ヵ月位(急性胃炎に服用する場合には5~6回、下痢、嘔吐に服用する場合には1週間 位)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師 又は登録販売者に相談すること

4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕

(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す ること。〕 1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく 注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕

2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕

3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ 服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕

保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

(2)小児の手の届かない所に保管すること。

(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕

【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと 生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g 以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(5)次の症状のある人。 むくみ 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g 以上)含有する製剤に記載すること。〕

2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕

3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと

4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕


【副作用】
【重い副作用】
偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
【その他】 胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気 発疹、発赤、かゆみ


※直指方(宋) じきしほう 楊士瀛(ようしえい)

※肩胛:肩甲(けんこう)
  本来の漢字は、「肩胛骨」だが、医学・解剖学では、「肩甲骨」が普通。現在の医学辞書には「肩胛骨」は載っていないことも多い。「甲」と「胛」は異体字ではなく、意味の違う字 。
「甲」はかぶさるもの、覆うものの意味で、「胛」には「月」(にくづき)がつき、それが体の一部であることを示している。

※上膊(じょうはく):上腕

※扨:さて

※:交雑りて:こもごもまじりて

※『医療衆方規矩大成』(いりょうしゅうほうきくたいせい) 曲直瀬道三(まなせどうさん)  (江戸時代)

※「宣し」となっているが、「宜し」に訂正。

※胸脾は胸痺の誤植?

※角觝漢(すもうとり)
「角」はあらそう、「觝」はふれる意
角觝(かくてい):力比べや相撲をすること。転じて、優劣を争うこと。

※巳に:已にの誤植?

※頃日(けいじつ,きょうじつ):近ごろ。このごろ。また、先日。※荏苒(じんぜん):なすことのないまま歳月が過ぎるさま。また、物事が延び延びになるさま。

多紀(丹波、劉)元堅(茞庭、亦柔)幕府醫官、元簡二男1796--1857:「丹波元堅」「元堅之印」「茞庭」「樂真院」「奚暇齋∕讀本記」「奚暇齋征(?)」「至樂在□裡」

六磨湯(沈香・木香・檳榔子・烏薬・枳殻・大黄各等分)

※氷炭(ひょうたん) 氷と炭。相違のはなはだしいものをたとえていう。
※氷炭相容れず: 性質が反対で、合わないことのたとえ。

※保嬰金鏡録(ほえいきんきょうろく):(明)薜巳著 ・朱明校

※乳養(にゅうよう):乳を与えて養育すること。

※聖清総録? 聖剤総録のことか?

小青嚢(しょうせいのう) 王求如 編次 王 良 一〇巻

※漾 ヨウ ただよう

経験薬方分量集? 経験・漢方処方分量集(医道の日本社刊)のことか?

2012年1月30日月曜日

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
 本方は、癤・癰を発し 易いフルンクロージス及び湿疹の治療に用いられる。フルンクロージス、或は湿疹が一種の毒素によって起こるものと仮定すれば、本方は解毒臓器の機能を盛ん にして、その毒素を解除する効がある。本方は常に連翹を加味して用いられる。本方中で解毒的に効のある薬物は、荊芥・防風・桔梗・柴胡・川芎・桜皮等であ ると考えられる。その他の茯苓・甘草・独活・生姜等は補助的の薬物である。連翹はまた有力な解毒薬として加味されるものである。
 本方の応用としては、癤・癰の初期に解毒剤として用いられ、軽症であれば、そのまま内消する。内消しない場合も、その毒性を挫くことができる。フルンクロージスに対しては体質改善の目的で用いられ、湿疹に対しても屡々著効がある。蕁麻疹にも応用される。
 また本方に石膏を加えて結核性並びに梅毒性の頚部リンパ腺腫に用いて屡々効がある。
 本方は小柴胡湯の適する体質で解毒の効を求める場合に適する。この意味で癤・癰・湿疹の他、肺門結核症・腎臓炎・糖尿病・梅毒・所謂水虫・神経衰弱症等種々の疾患に応用することがある。


漢方精撰百八方
25.〔方名〕十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
〔出典〕華岡青洲伝(春林軒方集)

〔処方〕柴胡2.0 茯苓2.0 川芎2.0 桜皮2.0 生姜2.0 桔梗2.0 防風1.5 独活1.5 荊芥1.0 甘草1.0

〔目標〕滲出性体質、膿毒物質の蓄積、亜急性皮膚炎、顔面や頭部の壅塞感、掻痒感、リンパ腺腫脹、蕁麻疹、水疱疹、乾性皮膚疾患。

〔かんどころ〕化膿性疾患の初期で、発赤、腫脹、疼痛、悪寒、発熱の一段落した後、すなわち初め葛根湯で発散させてから本方を用いる。このような場合は煎剤がよい。体質改善の目的に用いるには散剤を連用する。

〔応用〕本方は太陽病と少陽病の時期にまたがる発表剤で、古方でいえば小柴胡湯証に相当する。明代によく用いられた人参敗毒散や荊防敗毒散などの類方に基づいて華岡青洲が創方した。体内に蓄積して皮膚に病変を来す毒を解して中和させるのが主な目標である。解毒作用をさらに高めるために連翹、石膏、大黄などを適宜加味することもある。亜急性期以後の化膿炎または乾性の皮膚疾患に常用し、アレルギー体質の改善にも欠くことの出来ない処方であるから、アレルギー性眼炎、鼻炎、蓄膿症にも用いる。しかし、アレルギー性の気管支喘息には効かない。この時は半夏厚朴湯や麻杏甘石湯の合方の適応である。皮膚の化膿をくりかえすフルンクロージス、水虫、湿疹、疥癬などの体質改善にも応用する。

〔治験〕四十二才の男。十数年前から両足とも水虫に悩まされ、売薬、新薬、物理療法などあらゆる治療を行ったが一時の効しかなく、病院がよいもしばらく続けたが根治しないので漢方治療を求めてきた。局部は赤く腫れ、皮がむけていたり、膿疱の部分などが混在するが全体としては乾性である。従って本方の適応と考え、煎剤で三ヶ月連服したが著効がない。食養を厳守させて散剤にかえ二ヶ月服用したところ、かなりよくなってが局所の清潔を怠ると再発する。そこでエキス散剤と原末の散剤を等分に混じ一回量二グラム毎食前に用いてみた。これが効を奏し三ヶ月でほとんど全治したが、再発を恐れて患者自身は気候の変わり目には毎年続けて飲んでいるという。三年前の症例である。この例のように本方は剤型をかえると効くことがあるのは興味深い。
石原 明


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊

1 柴胡剤 
 柴胡剤は、胸脇苦満を呈するものに使われる。胸脇苦満は実証では強く現 われ嘔気を伴うこともあるが、虚証では弱くほとんど苦満の状を訴えない 場合がある。柴胡剤は、甘草に対する作用が強く、解毒さようがあり、体質改善薬として繁用される。したがって、服用期間は比較的長くなる傾向がある。柴胡 剤は、応用範囲が広く、肝炎、肝硬変、胆嚢炎、胆石症、黄疸、肝機能障害、肋膜炎、膵臓炎、肺結核、リンパ腺炎、神経疾患など広く一般に使用される。ま た、しばしば他の薬方と合方され、他の薬方の作用を助ける。
 柴胡剤の中で、柴胡加竜骨牡蛎湯・柴胡桂枝乾姜湯は、気の動揺が強い。小柴胡湯・加味逍遥散は、潔癖症の傾向があり、多少神経質気味の傾向が ある。特に加味逍遥散はその傾向が強い。柴胡桂枝湯は、痛みのあるときに用いられる。十味敗毒湯・荊防敗毒散は、化膿性疾患を伴うときに用いられる。
 各薬方の説明(数字はおとな一日分のグラム数、七~十二歳はおとなの二分の一量、四~六歳は三分の一量、三歳以下は四分の一量が適当である。) 

10 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
 〔柴胡(さいこ)、桜皮(おうひ)、桔梗(ききょう)、生姜(しょうきょう)、川芎(せんきゅう)、茯苓(ぶくりょう)各二、独活(どっかつ)、防風(ぼうふう)各一・五、甘草(かんぞう)、荊芥(けいがい)各一〕
  本方は、小柴胡湯證の適する体質で化膿性疾患の初期や湿潤期に用いられる。また、アレルギー体質の解毒剤、体質改善薬としても用いられる。本 方は、荊防敗毒散より前胡、薄荷、連翹、枳殻、金銀花、羗活を除き桜皮を加えたものとしても考えられる。したがって、化膿症の初期では、発熱、悪寒、疼痛 があり分泌物があまり多くなく、慢性に経過したものでは、化膿部位は頭部、背部に多く、四肢の場合でも比較的浅位のものである。
 〔応用〕
 つぎに示すような疾患に、十味敗毒湯證を呈するものが多い。
 一 湿疹、じん麻疹、水虫その他の皮膚疾患。
 一 よう、疔、癤などの疾患。
 一 中耳炎、外耳炎、アレルギー性眼疾、麦粒腫、鼻炎、蓄膿症などの耳鼻、眼科の疾患。




《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会 
36. 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) 華岡青洲

柴胡2.5 桔梗2.5 防風2.5 川芎2.5 桜皮2.5 茯苓2.5 独活1.5 荊芥1.5 甘草1.5 乾生姜1.0

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 分泌物があまり多くなく,慢性に経過するもの。
 本方は疲労し易く小柴胡湯がよく適応する体質で,分泌物があまり多くなく患部が乾燥している皮膚疾患によく用いられる。
 患部が湿潤して慢性に経過する場合には消風散が適し、急性で分泌物が多い小水疱期の皮膚病には越婢加朮湯が適する。初期で発熱悪寒し,かゆみあるいは炎症の劇しい紅斑期の症状には葛根湯がよい。化膿疾患には伯州散と併用す識場合が多いが,この合方は炎症の劇しい時期には投与してはならない。便秘がひどい時は大黄を加え,癰,癤,肛囲膿瘍,とびひ,水虫などには紫雲膏などの外用薬を併用すれば治癒を早める。本方単独では所謂瘀血に起因する症状には無効で,この場合は桂枝茯苓丸,桃核承気湯,大黄牡丹皮湯などを用いるべきである。但し本方と桂枝茯苓丸との合方はしばしば瘀血に起因する汚臭がひどくない湿疹,蕁麻疹に奏効する。

漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
 腺病体質や疲れやすいもので,肝機能その他内臓に起因するもの,皮ふが弱くかぶれやすいものの,諸種ヒフ疾患に卓効がある。
 患部は乾燥性のものが対象となり,発赤,瘙痒の程度は緩和なものに用いられる。また軽度の湿潤を認めるものによく適応する。従って初期または回復期や,慢性に経過するもの,あるいは再々繰返して発疹するが,特にとりあげるほどの著しい症状を認めないもの,患部の治療と併行して,体質の改善が必要なものなどに好適な処方である。初期症状で炎症症状が激しく,瘙痒や悪寒を伴うものには葛根湯が良く,水疱や分泌物の多い小水疱期には越婢加朮湯を,考慮すればよい。
 また慢性症状であっても,患部が赤色や暗紫色を呈し,神経症状を伴うものには,本方に桂枝茯苓丸,桃核承気湯などを合方して用いることが多い。何か年もの既往歴があって,患部が湿潤しており発汗したり,夏期になると増悪するというものには,消風散が用いられる。ガンコなもので色々処方を用いたが治療効果の少ないものには,本方と消風散を合方して連用させると著効あることが多い。患部の肉眼的所見はそれほどでもないが,瘙痒の著しいものには本方と,黄連解毒湯の合方がよい。炎症や瘙痒が緩和で肌アレを伴うものには,本方に「はとむぎ」を加えて用いると効果的である。本方はまた夏期に多い乾燥性の水虫に繁用されるが,本方の内服と紫雲膏を外用して好転した例が多い。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○癰,癤,疔,などの化膿性腫物が,あるいは単発しあるいはつぎつぎと続発するもの。蜂窩織炎,その他の化膿性炎症,急性・慢性の蕁麻疹や亜急性以後の皮膚病で瘙痒のあるもの,リンパ腺の腫脹など。
○本方は華岡青州の経験方で勿誤薬室方函には「癰疽,および諸瘡腫,初起増圧壮熱し,疼痛するを治す」とある。
○石原明氏は「本方は太陽病と少陽病の時期にまたがる発表剤で,古方でいえば,小柴胡湯に相当する。明代によく用いられた人参敗毒散や荊防敗毒散などの類方に基いて,華岡青州が創方した。体内に蓄積して皮膚に病変を来す毒を解して中和させるのが主な目標である」と述べている。


漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○この方は癤,癰,リンパ腺炎,乳房炎その他の炎症性の瘡腫の発病初期で悪寒,発熱があって腫れ痛むものに用いる。有持桂里は十味敗毒湯は癰疽,疔腫,一切の瘡毒,焮痛,寒熱,脈緊の者を治すといい,このようなところえ,葛根湯,葛根湯加大黄湯,葛根湯加朮附などを用いても具合のわるいもので,この敗毒湯にまさるものはないとのべている。
○十味敗毒湯はまたフルンクロージスによくきく。
○白髪染めによるかぶれによくきく。
○湿疹や皮膚炎でも,滲出液が多く痂皮を作るようなものには十味敗毒湯はむかない。
○皮膚面からあまり隆起せず,色も少し赤く,ところどころ落屑があり,かゆみもあり,滲出液のないものである。若い男子で,体格のよい人に多く慢性に経過する。この型でかゆみが少く色の赤くないものに葛根湯で治るものがあり,その区別は中々むつかしい。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は癰・癤を発し易いフルンクロージス及び湿疹の治療に用いられる。フルンクロージス,或は湿疹が一種の毒素によって起るものと仮定すれば,本方は解毒臓器機の能を盛んにして,その毒素を解除する効がある。本方は常に連翹を加味して用いられる。本方中で解毒的に効のある薬物は,荊芥,防風,桔梗,柴胡,川芎,桜皮,等であると考えられる。その他の茯苓,甘草,独活,生姜等は補助的の薬物である。本方の応用としては,癤,癰の初期に解毒剤として用いられ,軽症であればそのまま内消する。浴消しない場合も,その毒性を挫くことができる。フルンクロージスに対しては体質改善の目的で用いられ,湿疹に対しても屢々著効がある。蕁麻疹にも応用される。また本方に石膏を加えて結核性並びに梅毒性の頸部リンパ腺腫に用いて屢々効がある。本方は小柴胡湯の適する体質で解毒の効を求める場合に適する。この意味で,癤,癰,湿疹の他,肺結核症,腎臓炎,糖尿病,梅毒,所謂水虫,神経衰弱症等種々の疾患に応用することがある。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 小柴胡湯の適する体質傾向を有し,神経質で胸脇苦満があり,化膿症を繰り返すフルンクロージス,アレルギー性の湿疹,蕁麻疹などを起しやすい体質者が目標である。癰,癤の場合は初期で,発赤腫張疼痛があり,発病後数日以内に用いるのがよい,軽いものは四~五日で消退し治癒する。それ以後は托裏消毒散,または千金内托散,さらに遷延したものは帰耆建中湯や十全大補湯などを用いるようになる。





【一般用医薬品承認基準】
十味敗毒湯
〔成分・分量〕
柴胡2.5-3.5、桜皮(樸樕)2.5-3.5、桔梗2.5-3.5、川芎2.5-3.5、茯苓2.5-4、独活1.5-3、防風1.5-3.5、甘草1-2、生姜1-1.5(ヒネショウガを使用する場合3)、荊芥1-2、連翹2-3 (連翹のない場合も可)

〔用法・用量〕
(1)散:1回1.5‐2g 1日3回
(2)湯

〔効能・効果〕
体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの次の諸症:
化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、湿疹・皮膚炎、水虫



【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる )
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔 生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸の弱い人。
(5)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)今まで薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(7)次の症状のある人。
   むくみ
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(8)次の診断を受けた人。
   高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称
症 状
偽アルドステロン症、ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

3.1ヵ月位(化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期に服用する場合には1週間位)服用して
も症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売
者に相談すること

4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕

5.本剤の服用により、まれに症状が進行することもあるので、このような場合には、服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1) 小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にの
み服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸の弱い人。
(5)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)今まで薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(7)次の症状のある人。
  むくみ
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(8)次の診断を受けた人。
   高血圧、心臓病、腎臓病
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕

2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕

3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと

4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
  〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

2011年12月17日土曜日

黄連解毒湯(おうれんげどくとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
 本方は陽實證の藥方で皆消炎の劑を以て成り立ち、充血を去り,精神の不安を除く効がある。諸熱性病の經過中に用いて、日數を經たる殘餘餘熱を解する。患者は炎症充血による精神不安・煩悶を訴え、尿が赤く、或は諸出血を來し脈は沈んで力があり、心下部が痞えて抵抗がある。
 方中の黄連・黄芩は炎症・充血を去り、心下の痞え不安を治し、梔子・黄柏は消炎に利尿を兼ね、黄連・黄芩に協力する。
 以上の目標に從つて此方は、諸熱性病・喀血・吐血・衂血・下血・腦充血・腦溢血・精神病・血尿・皮膚瘙痒症等に応用される。


『漢方精撰百八方』
94.〔黄連解毒湯〕(おうれんげどくとう)
〔出典〕外台秘要
〔処方〕黄連2.0 黄芩3.0 梔子、黄柏 各2.0
〔目標〕体格はがっしりとして体質が頑丈な人、もしくは体格、体質中ぐらい人がのぼせ気味で、顔色が紅く、脈の緊張がよく、腹部は表面は柔軟であっても底に力があり、次のような症状があるものである。
(1)気分がいらいらし、気持ちが不安で、よく眠れず、胃部がつかえ、腹診すると心下が濡(表面は軟らかく、底の方に抵抗がある)のもの。
(2)上腹部が痛み、心下部一体が膨満して固く張り、押すと圧痛がある。
(3)頭痛、耳鳴、血圧亢進などがある。
(4)吐血、鼻出血、下血、潜出血などの出血があるもの。
 以上のほか、むなぐるしく、手足があつくるしく、或いは黄疸があるなどの点がみられる。
〔かんどころ〕黄連解毒湯の証は、三黄瀉心湯証によく似ているが、その違いは、便秘の傾向のないこととなっている。しかし、時には便秘することもあり、大黄入り黄解丸というのが作られているくらいである。両者の違いは、むしろ、この何ともいいようのない”むなぐるしさ”にある。
 そのほか、顔色の赤みがかっていてのぼせぎみというところも、かんどころである。
〔応用〕諸種の出血(喀血、吐血、衂血、子宮出血、下血、痔出血、脳出血等)、高血圧、不眠症、神経症、精神病、血の道、胃炎、胃潰瘍、胃酸過多症、宿酔、黄疸皮膚病、酒査鼻、肝斑、等
〔治験〕3,4年前、18才ぐらいの少女が母親につれられて来た。
 お腹が痛くて、3日ほど食物を何も食べていないという。また、はじめの夜、少し血を吐いたともいう。体格は中ぐらいで、顔色は余り悪くない。腹診すると、心下部一体がやや膨満しているが、余り固くないので、よほど注意しないと上腹部が緊張していることがわからない。脈も余り特徴がない。
 血を吐くような胃潰瘍があるとはとても思えないので、よく聞いてみると、友人と夜遊びして、洋酒を相当量のんだ翌日から悪くなったと、白状した。黄連解毒湯を与えたところ、2日ほどで痛みが止まり、1週間ほどですっかり治った。病気は急性胃炎であったろう。
山田光胤


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
10 瀉心湯類(しゃしんとうるい)
 瀉心湯類は、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)を主薬とし、心下痞硬(前出、腹診の項参照)および心下痞硬によって起こる各種の疾患を目標に用いられる。

4 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)  (外台秘要)
 〔黄芩(おうごん)三、梔子(しし)二、黄連(おうれん)、黄柏(おうばく)各一・五〕
  全身の実熱によって起こる炎症と充血を伴う症状を治す。したがって、胃部が痞え、炎症と充血によって顔面赤く、上衝し、不安焦燥にかられ、心 悸亢進、出血の傾向がある。気分がおちつかずイライラし、のぼせ、不眠などの精神症状などを目標とする。三黄瀉心湯證で、便秘の傾向が弱い。



『《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
6.黄連解毒湯(おうれんげどくとう) 外台秘要方

黄連1.5 黄柏1.5 黄芩3.0 梔子2.0

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 のぼせて胃部がつかえるもの。あるいは軟便で便秘したり,目が充血するもの。
 本方は充血を去り,精神不安を除くから,喀血,吐血には止血と同時に神経症状も消散させる。また本方に配合されている黄連,黄柏は結核菌の化学療法による耐性菌にも有効であるから,本方と小柴胡湯を併用すれば食欲増進作用もあって,肺結核で療養中の者にしばしば著効が得られる。平素あまり強健でない人で2,3日便通がなく,しかも排便すれば軟便であるような場合に適するが,硬便で便秘するものには三黄瀉心湯のほうがよい。本方でも下痢するものには半夏瀉心湯が無難である。本方が高血圧に適応するものには目標欄記載の症状で特に項(うなじ)がこるものによいが,血圧降下作用は一過性であるから,高血圧症の根本治療には柴胡剤と合方すべきである。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
 本方は消炎,止血,鎮静作用が顕著なところから単方または他薬と合方して繁用されている。また本方に配合されているオウレン,オウバクの有効成分ベルベリンは,結核菌の化学療法による耐性菌にも有効であるところから,本方と柴胡剤の合方が補助療法として重宝されている。
(1) 諸出血 本方が適応する出血は比較的に量が多く出血の割に,著しい貧血を認めないもの。
(2) 高血圧,脳充血,脳溢血 目標欄記載の症状があるが,全般的に緩和なものに応用され,特に後頭部から首筋にかけてこりやすく,目が充血するものによい。
(3) 神経症 頭痛,不眠,肩こり,のぼせなどの神経症状を目安に,平素あまり強健でないものに応用する。
(4) ヒフ疾患 本方の消炎,解毒,止痒作用はヒフ疾患に必需的な存在になっている。すなわち小柴胡湯,十味敗毒湯,桂枝茯苓丸,四物湯などと合方して患部や全身瘙痒を訴えるもに投与すると,偉効を奏する。
(5) 二日酔 本方は五苓散とともに二日酔の不快症状を比較的速やかに消失せしめる。特に頭痛を伴うものによいが,五苓散と合方して用いるのもよい。
(6) 打撲症 打撲症および打撲の後遺症に,本方と等量の小麦粉を混和し,卵白か水でねり,患部に貼用する。古くてひどい打撲はチアノーゼが再現して後に治癒する。
(7) 便秘症 間歇的に便秘するが軟便で,下剤をのむと下痢や腹痛を起こすものによい。ひどい便秘で硬便には三黄瀉心湯を応用する。

 注意事項 出血多量で貧血したり,貧血症の諸出血には本方を用いず,芎帰膠艾湯を考える。三黄瀉心湯との鑑別は赤ら顔の卒中体質で硬便や宿便の便秘で本方症状があれば三黄瀉心湯が適応する。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
 体格はがっしりとして体質が頑丈な人,もしくは体句,体質が中ぐらいの人が,のぼせ,上逆感などの上衝の傾向があって瀉心湯(三黄瀉心湯)の証に準じ,しかも便秘の傾向がなく,さらに心煩,心中懊憹,煩熱,あるいは黄疸などがある場合である。


漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
 この方は発病後,日数を経て余熱が内にこもり,舌は乾燥し,時には黒苔を生じ,胸苦しく,口が渇き,悪心,不眠などのあるものに用いる。このさい体の表面にくわっくわっとした浮び出た熱はなく,深く沈んで小さくても力がある。腹にも底力がある。悪風や悪寒のある場合にはこの処方は用いない。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は陽実証の薬方で皆消炎の剤を以て成り立ち,充血を去り,精神の不安を除く効がある。諸熱性病の経過中に用いて,日数を経たる残余余熱を解する。患者は炎症充血による精神不安,煩悶を訴え,尿が赤く,或は諸出血を来し脈は沈んで力があり、心下部が痞えて抵抗がある。方中の黄連,黄芩は炎症,充血を去り,心下の痞え不安を治し,梔子,黄柏は消炎に利尿を兼ね.黄連,黄芩に協力する。以上の目標に従って此方は諸熱性病,喀血,吐血,衂血,下血,脳充血,脳溢血,精神病,血尿,皮膚瘙痒症等に応用される。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 三焦(上中下の三焦)の実熱によって起こる,炎症と充血をともなった諸症を治するのが目標である。小柴胡湯類の半外半裏の熱でもない一種特異の遷延熱を解するものである。実証で腹残力があり,脈も十分力があって,熱はあるが沈の傾向を帯びたものである。一般雑病のうち炎症と充血のため顔色赤き上衝し,不安焦躁,心悸亢進の気味があり,出血の傾向を有するものを参考として用いる。本方を不眠症として用いるときは,頭がさえてなかなか眠れない。気分が落ちつかず,つまらないことが気にかかる,いらいらする,のぼせる,というようなことを目標にする。高血圧症や更年期障害のときの不眠にこの症がある。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は胸中熱邪を清解するの聖剤也。一名倉公の火剤とす。其目的は梔子豉湯の証にして熱勢劇しき者に用ゆ。苦味に堪えかぬる者は泡剤にして与ふべし。大熱有て下利洞泄する者或痧病等の熱毒深く洞下する者を治す又狗猫鼠などの毒を解す又喜笑不止者を治す。是亦心中懊憹のなす所なれば也,又可氏は此方の弊を痛く論すれども実は其妙用を知らぬ者なり又酒毒を解するに妙なり。外台の文を熟読すべし。又外台に黄柏去り大黄を加えて大黄湯と名ずく。吉益東洞は其方を用し由証に依て加減すべし。


漢方と漢薬〉 第4巻 第10号 矢数 道明先生
(前略) 黄連解毒湯は肘後方の傷寒時気温病門に出で,黄連3両,黄柏,黄芩各2両,梔子14枚の4味で,主治は熱極,心下煩悶,狂言鬼を見,起走せんと欲す,煩嘔眠るを得ざるを治す。といふのである。
 此の方は三焦之火を瀉すと云ふて,火を消す薬である,即ち消炎,解熱,清涼の能があり,三黄瀉心湯の類似方に属する。而もその消炎作用が,血中の遊火,残熱余熱を司るものであり,発散によるものではなく,柴胡の和解によるものでもなく,大黄芒硝の瀉下によるものでもなく,石膏の主治する処でもないといふ熱をよくこの方によって治し得らるるといはれてゐる。茲に黄芩は上焦の火を瀉し,梔子は五臓の遊火を瀉すとて,三焦の火を悉く消してくれるといふのである。
 さて外台秘要巻1傷寒門に崔氏が方として本方の記載がある。それによると前軍督護劉車なる者が時疫を得て3日,已に汗して解した。因て酒を飲んだところ復劇しくなり煩悶乾嘔口燥に苦しむ,呻吟錯語臥すを得ず,そこで余此の黄連解毒湯を作らんことを思ひ,方,黄連3両,黄芩,黄柏各2両,梔子14枚,擘右四味切て水6升を以て似て2升を取り,1服を服せしめた処,目明かとなり。両服して粥を進むると。此に於て漸く差えた。余以て凡そ大熱盛んにして煩嘔呻吟錯語眠るを得ざるもの皆佳しと,語り伝へて諸人之を用ひて亦効があった。此れは直ちに熱毒を解し,酷熱を除くので,必ずしも酒を飲んで劇しき者のみでない。云々とあるが面白い記載である。目標としては私は和田東郭翁の口訣に如くはないと思ふてゐる。即ち之を利用すると,
(1)黄連解毒湯は半表半裏の熱にも非ず,又石膏,知母,麦門,粳米の類にて清涼潤燥する肉中の熱にも非ず,又大黄芒硝にて効を取る裏実の熱にもあらざるを云也,解毒湯の的症は日数を経ること久しく,俗に残熱余熱など云ふ位の熱にて,肌表はさのみ熱にてもなく底がつよくしぶくとき熱候を標的とすべし。これを名けてふるびたる熱とは云也。故に日数深からずクワックワッと勢つよき熱には用ゆべからず。且つ老少に限らず肌膚枯燥してかさかさとしたる手当りのものを標的とし,舌候は黒苔にして乾燥甚しきもの標的とすべし,黄苔白苔のものには宜しからず。云々。
(2)然れども此の症実火の症にして虚火の症にあらず,故に満腔上み心下に攣縮し,任脈水分に動悸なく,其の脈沈細,或は軟弱なれども底にしかと力あるものなり。此の脈腹と舌候及熱候とを以て標的とすべし。
とあって、即ち脈は沈細にして底に力あり、腹は心下に攣縮あり,動悸なく,舌は黒苔乾燥(必ずしも黒苔を要せざるものと思ふ),その證としては日数を経てふるびたる残余余熱により煩渇乾嘔眠るを得ず不安,等を目標とするものである。
 又蕉窓方意解に,結毒沉涸して諸薬効あらざるもの奇良軽粉の類を施せども効なきものに用ゆとあるが,先師森道伯先生は本方を以て胎毒による虚弱体質改造薬及諸種の病毒駆逐の根本とした。即ち柴胡清肝散竜胆瀉肝湯,荊芥連翹湯等の基本は四物湯と黄連解毒湯の合方即ち温清飲である。(後略)










【一般用漢方製剤承認基準】
黄連解毒湯
〔成分・分量〕
黄連1.5-2、黄芩3、黄柏1.5-3、山梔子2-3
〔用法・用量〕
(1)散:1回1.5-2g 1日3回
(2)湯
〔効能・効果〕
体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症:
鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症注)、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎
《備考》
注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】


【添付文書等に記載すべき事項】
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称 症状
間質性肺炎 階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
肝機能障害 発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
3.1ヵ月位(鼻出血、二日酔に服用する場合には5~6回)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の.ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。

2011年12月14日水曜日

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
 半夏五・ 黄芩 乾姜 人参 甘草 大棗各二・五 黄連一・
 本方の目標は心下部痞塞感・悪心・嘔吐・食欲不振等で、他覚的には心下部に抵抗を増し、屡々胃内停水・腹中雷鳴・下痢を伴い、舌には白苔を生ずる。
 半夏は胃内停水を去り、嘔吐を止め、黄連・黄芩と共に胃腸の炎症を去る。黄連・黄芩は苦味剤で、消炎健胃の効があり、人参と乾姜は胃腸の血行をよくして機能の回復を促す。甘草・大棗は諸薬を調和してその協同作用を強化するものである。
  本方と黄連湯とは類似しているがその相違は、黄連湯では腹痛が目標の一つになっている。また腹部に圧痛がある。本方では腹痛及び腹部圧痛を伴うこともある が、黄連湯の恒常的なるに似ず、また程度も軽い。舌苔は黄連湯に著明であり、本方では欠くことが多い。本方の応用は胃カタル・腸カタルである。
 加減方としては生姜瀉心湯と甘草瀉心湯とがある。
【生姜瀉心湯】(しょうきょうしゃしんとう)
 半夏瀉心湯から乾姜一・を減じ生姜二・を加える。
  本方は半夏瀉心湯の處方中、乾姜の量を減じて生姜を加えたものである。応用目標は半夏瀉心湯の證で、噫気・食臭を発し、腹中雷鳴・下痢は胃腸内で発酵が盛 んな為であってこれは生姜の治する所である。応用は胃腸カタル・発酵性下痢・過酸症・胃拡張等である。
【甘草瀉心湯】(かんぞうしゃしんとう)
 半夏瀉心湯に甘草一・を加える。
 本方は半夏瀉心湯の處方中、甘草の量を増したものであって、半夏瀉心湯の證で腹中が雷鳴して不消化下痢を起し、或は下痢せずに心煩して気分不穏を覚える者を治する。甘草を増量したのは、甘草は急迫症状を緩和する効があって心煩・気分不穏を除くからである。
 本方の応用としては胃腸カタル、産後の口内糜爛を伴う下痢、神経衰弱・不眠症等である。


『漢方精撰百八方』
106.〔半夏瀉心湯〕(はんげしゃしんとう)
〔出典〕傷寒論、金匱要略
〔附方〕生姜瀉心湯、甘草瀉心湯
〔処方〕半夏4.0 黄芩、人参、甘草、大棗 各3.0 乾姜2.0 黄連1.0
〔目標〕食物が心下部(みぞおち)につかえ、食欲不振、吐きけ、嘔吐などがある。  
 腹が鳴って下痢する。  
 心下部がつかえて肩が凝る。  
 胃の異和感、存在感があって精神不安が起こる。このとき、舌に白苔を生じ、脈、腹部の緊張は中くらいで、腹証としては心下部が固く張り圧痛がある。ときに心下部に振水音をみとめる。  
 本方の適応症は、体格、体質が中等度のものである。  

 甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)は、半夏瀉心湯を用いたいような症状で、しかも腹鳴、下痢のひどい場合に用いる。  

 半夏瀉心湯や甘草瀉心湯を用いる下痢は、裏急後重がなくて渋り腹でなく、一度下痢すれば一応気持ちがよくなるような場合で、水瀉性下痢から軟便程度まで、ひどさはいろいろである。

 生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)は、半夏瀉心湯を用いたいような場合で、しかも嘈囃(むねやけ)がひどいときに用いる。

〔かんどころ〕体質中ぐらいの人。食べ物が胃部につかえ、みぞおちが張って、胃の存在感がある。舌に白苔がある。

〔応用〕急、慢性胃腸カタル、不眠症、神経症

〔治験〕34才の男子、旧知の青年が、このごろおかしいから診てくれと、その妻に連れられてきた。
 約1ヶ月前から、食欲がなくなり、便秘をさかんに訴えた。近所の医師にかかったが、よくならず、次第に痩せて、その上神経過敏になり、夜眠らなくなった。2週間ばかり前からつまらぬことを気にして、わけのわからないことを言うようになった。そのため勤めも休んでいるという。患者は、中肉中背。筋肉の緊張も大体良好、顔色悪く、憂鬱な顔つきで、余り口もきかない。舌に白苔があり、脈は緊張がよく、腹部をみると心下痞鞕がみとめられ、みぞおちに抵抗があって、圧迫すると痛みを訴える。半夏瀉心湯を用いたところ、10日ほどで食欲が出て、元気になった。神経症状も勿論なくなった。

 甘草瀉心湯:半夏瀉心湯に甘草1.0を加える。

 生姜瀉心湯:半夏瀉心湯から乾姜1.0を減じ、生姜2.0を加える。
山田光胤




漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
10 瀉心湯類(しゃしんとうるい)
 瀉心湯類は、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)を主薬とし、心下痞硬(前出、腹診の項参照)および心下痞硬によって起こる各種の疾患を目標に用いられる。

 6 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)  (傷寒論、金匱要略)
 〔半夏(はんげ)五、黄芩(おうごん)、乾姜(かんきょう)、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)各二・五、黄連(おうれん)一〕
  本方は、少陽病で瘀熱(おねつ、身体に不愉快な熱気を覚える)と瘀水が心下に痞え、その動揺によって嘔吐、腹中雷鳴、下痢などを程するものに 用いられる。したがって、悪心、嘔吐、心下部の痞え(自覚症状)、食欲不振、胃内停水、腹中雷鳴、上腹痛、軟便、下痢(裏急後重)、精神不安、神経過敏な どを目標とする。
 本方の心下痞をつかさどる黄連のかわりに胸脇苦満をつかさどる柴胡に、冷えをつかさどる乾姜のかわりに生姜に変えたものが小柴胡湯(前出、柴胡剤の項参照)である。
 〔応用〕
 つぎに示したような疾患に、半夏瀉心湯證を呈するものが多い。
 一 胃カタル、腸カタル、胃アトニー症、胃下垂症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍その他の胃腸系疾患。
 一 月経閉止、悪阻その他の婦人科系疾患。
 一 そのほか、不眠症、神経症、口内炎、食道狭窄、宿酔)など。


《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
64.半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) 傷寒論
 半夏5.0 黄芩2.5 乾姜2.5 人参2.5 甘草2.5 大棗2.5 黄連1.0 

(傷寒論)
「傷寒五六日,嘔而発熱者,柴胡証具,而以他薬下之,柴胡証仍在者,復与柴胡湯,此雖巳下之,不為逆,必蒸々而振,却発熱汗出而解,若心下満而硬痛者,此為結胸也,大陥胸湯主之」但満而不痛者,此為痞,「柴胡不中与之」宜半夏瀉心湯(太陽下)

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社

 胃部がつかえ,悪心や嘔吐があり,食欲不振で胃部に水分停滞感があり,腹鳴を伴なって下痢するもの。あるいは,軟便や粘液便を排出するもの。
 本方は下腹部で腹鳴がある冷え症の胃腸機能を高め,消化を助け,栄養の吸収をよくし,便通を整え血色をよくするので,漢方処方中胃腸薬と形r最も多く用いられる。安中散も冷え症に用いられる力置、安中散適応症状には水分停滞あるいは腹鳴はない。本方はあまり腹痛のひどくない慢性の下痢に奏効し,急性の水瀉性下痢あるいは発熱悪寒を伴なう下痢には無効で,この場合は五苓散,または葛根湯が適する。腹痛の激しい下痢には柴胡桂枝湯平胃散小建中湯大建中湯などを考慮すべきである。また虚弱者で下痢と便秘が交互にくるものにもよいが,同じ症状で充実体質には大柴胡湯が適応する。本方はまた黄連解毒湯でも強すぎる虚弱者の便秘によい。真武湯半夏厚朴湯茯苓飲との鑑別はそれぞれの処方の項を参照のこと。本方を服用後なお疲労倦怠感,食欲不振がとれない場合には小柴胡湯あるいは補中益気湯に転方すべきである。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
 本方は平素から若干の冷えを自覚したり,胃腸機能が悪い傾のものの,応用の目標欄記載の症候複合がある消化器疾患に用いられている。したがって腸内水分の再吸収や,利尿ホルモンのバランスがlくずれているもので,胃内や腸管に水分停滞が多く,それがために腸内腐敗現象や,消化管内水分停滞による腹鳴あるものが,本方応用のポイントになる。また本方が対象になる下痢は,比較的に排便量が少なく下痢便や軟便でありながら,間歇的に便秘して下剤を投与すると,その作用が激しく現われる下剤禁忌症であることが,他適応症と異なる。
 類似症状の鑑別
 安中散,冷えを自覚する消化器疾患に応用するが水分停滞感や腹鳴,または下痢軟便は認めない。
 五苓散,激しい水瀉性の下痢便で,口渇や微熱あるいは頭痛,頭重などを伴う点で区別する。
 平胃散,水分の停滞が主として胃に局限し,それがため消化不良,胃拡張をきたして下痢(水容便)し,下痢しても倦怠感や衰弱する傾向がなく,かえって爽快感をもたらすことが,平胃散適応の特徴といえる。
 半夏厚朴湯,悪心,嘔吐,胃腸機能が悪い点で類似するが,半夏厚朴湯が適応するものには,腹鳴や下痢がなく,精神不安が著しい点を考慮すればよい。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○体質,体力が中ぐらいの人で,食物が心下部(みぞおち)に痞え,食欲不振,嘔きけ,嘔吐,時に軽い上腹痛がある。腹が鳴って下痢する。心下部が痞えて肩がこる。みぞおちに異和感があり,胃の存在を感じ,精神不安,神経過敏を呈す。舌に白苔を生じ,脈,腹部の緊張は中ぐらいで,腹部は心下痞硬(心下部が硬く張って圧痛がある)時に心下部振水音を呈する。
○着眼点は心下痞硬である。心下は胸骨剣状突起より下で,臍より上の部分である。本方の心下痞硬は,その部分に軽い抵抗をふれるものである。
○心下痞硬がはっきりしないとき,細野史郎氏は胸骨剣状突起の直下を押してみて,圧痛があれば心下痞硬であるといっている。
○先哲医話(福井楓亭)に「脾労(胃弱)の証,心下痞し,腹中雷鳴し,痛まず下痢し,痢後心下が不快で,反って痞張するものは半夏瀉心湯がよい」とある。しかし半夏瀉心湯証の下痢は水瀉性下痢から軟便程度まで程度はいろいろあるが,裏急後重がなく,一度下痢すれば一応さっぱりする。
○山田業精の聞見録に「脳漏(蓄膿症などの鼻漏)に半夏瀉心湯がよいものがある。これは心下痞硬を目標にする。また半夏瀉心湯は張満(腹膜炎などで腹が張る病気)及び月経不順にもよいことがある」と書いてある。
○袖珍方には本方が車酔,船酔によいとある。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方の目標は心下部痞塞感,悪心,嘔吐,食欲不振等で,他覚的には心下部に抵抗を増し,屡々胃内停水,腹中雷鳴,下痢を伴い,舌には白苔を生ずる。半夏は胃内停水を去り,嘔吐を止め,黄連,黄芩と共に胃腸の炎症を去る。黄連,黄芩は苦味剤で,消炎,健胃の効があり,人参と乾姜は胃腸の血行をよくして機能の回復を促す。甘草,大棗は諸薬を調和してその協同作用を強化するものである。
本方と黄連湯とは類似しているがその相違は黄連湯では腹痛が目標の一つになっている。また腹部に圧痛がある。本方では腹痛及び腹部圧痛を伴うこともある が黄連湯の恒常的なるに似ず,また程度も軽い,舌苔は黄連湯に著明であり,本方では欠くことが多い。本方の応用は胃カタル,腸カタルである。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 心下部の痞塞感が第一で,悪心,嘔吐,食欲不振を訴え,他覚的には心下部に抵抗を認め,しばしば胃内停水腹中雷鳴,下痢を伴い,舌白苔を生ずることが多い。


漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
(構成)  乾姜の代りに生姜,黄連の代りに柴胡にすると小柴胡湯になる。言換えると本方は小柴胡湯に構成が近いからその適応症も稍それに近いのである。近いのは作用する部位が心下で,症状が嘔なのである。小柴胡湯は胸脇苦満,脇下満だし,本方は心下痞である。
 運用 1. 心下部が痞え,嘔又は腸鳴する。
 心下部とは胸元がつかえるという自覚症状で,他覚的に之を証明することは出来ない。心下部を触診すると多少の緊張を認めることはあるが,強く押しては深部に抵抗を証し得ない。嘔と腹鳴は相伴うこともあり,一方だけのこともある。要するに心下に痞えた気が上に動いて嘔になり,腹で動いて腸鳴すると思えばよい。「嘔して腸鳴し心下痞するもの」(金匱要略嘔吐)はこのことであり,小柴胡湯と似た所は「傷寒五六日,嘔して発熱するものは柴胡の証具る。而るに他薬を以て之を下し,柴胡の証仍を在るものは復た柴胡湯を与ふ。これに巳に之を下すと雖も逆となさず。必ず蒸々として振ひ,却て発熱汗出でて解す。若し心下満して硬痛する者は此を結胸となす。大陥胸湯之を主る。ただ満して痛まざるものは此を痞となす。柴胡之を与ふるに中らざるなり。半夏瀉心湯之を主る。」(傷寒論太陽病下篇)
 長文だがその要点は大陥胸湯,小柴胡湯,半夏瀉心湯の鑑別であって,痛むものは結胸で大陥胸湯,満だけで痛まぬのは気の痞えだから半夏瀉心湯,苦満又は痞硬するは痞に似てはいるが,実鬱だから小柴胡湯だというのである。同じく満しても気だけで充塞するものがないのを痞と云い,充塞があるのを痞硬とする。心下痞と嘔とを目標にして半夏瀉心湯は胃カタル,胃腸カタル,胃酸過多症,胃拡張,胃下垂,胃潰瘍,十二指張潰瘍,悪阻,蛔虫,薬剤副作用による悪心嘔吐,神経性嘔吐等の胃症状には頻用する。胸元は痞える位だから食欲は無論減退しており,舌は薄い白苔を被っていることがある。脉は普通であまり傾りはない。



勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は飲邪併結して心下痞硬する者を目的とす。故に支飲或は澼飲の痞硬には効なし。飲邪併結より来る嘔吐にも,噦逆にも,下痢にも皆運用して特効あり。千金翼に附子を加ふるものは,即ち附子瀉心湯の意にて,飲邪を温散させる老手段なり。又虚労或は脾労等心下痞して下痢する者,此方に生姜を加えてよし,即ち生姜瀉心湯なり。


【一般用漢方製剤承認基準】
半夏瀉心湯
〔成分・分量〕
半夏4-6、黄芩2.5-3、乾姜2-3、人参2.5-3、甘草2.5-3、大棗2.5-3、黄連1
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便又は下痢の傾向のあるものの次の諸症:
急・慢性胃腸炎、下痢・軟便、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症


2011年11月16日水曜日

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
 本方は急迫性の筋肉の攣急を目標に、頓服として用いる方剤で、四肢の筋肉ばかりでなく、腹直筋その他の筋肉の攣急にも用いられる。
 本方は芍薬と甘草の二味からなり、筋肉の急迫性攣急を治する効がある。
 本方は以上の目標に従って、四肢の筋痛、腎石・胆石等からくる急迫性腹痛などに用いられる。また排尿痛の激しいものにも用いることがある。多くは頓服として一時の急を凌ぐために便利な方剤である。


『漢方精撰百八方』
70.〔芍薬甘草湯〕(しゃくやくかんぞうとう)
〔出典〕傷寒論

〔処方〕芍薬、甘草各3.0

〔目標〕自覚的 身体諸処が劇しく痛み、腰脚がひきつり痛む。 他覚的 脈 やや軟に近いが、ときには緊。 舌 苔なく、多くは湿潤。 腹 腹力はやや軟で、両腹直筋がつよく緊張して、あたかも二本の棒を、臍をはさんで平行にたてたような感を呈する。

〔かんどころ〕脚はひきつり、腹筋すじばり、あちこち痛んでがまんが出来ない。

〔応用〕 1.諸種の疼痛の激甚な場合
2.小児の腹痛又は夜啼症
3.諸種の神経痛で、腹直筋の緊張のつよいもの
4.胆石、腎石等で疼痛の激しい場合
5.泌尿器、生殖器疾患で下付苦痛の激しい場合

〔治験〕本方は諸種の疼痛を、頓挫的に緩解させるはたらきがつよい。随意筋、不随意筋の別なく、その痙攣による疼痛をゆるめる作用は、予想以上のものがある。その痛みが激甚ならば激甚なるほど、本方は即座に奏効する。  本方に膠飴を加味して、より効を増すことがあり、また手足に寒冷を覚えたり、悪寒の加わったりする場合には、附子を加えて芍薬甘草附子湯として与えて、一層効果的である場合がある。  二十三才の男子。猛烈な腰の痛みで、家中を転げ廻っているから、至急往診してほしいとの訴え。行ってみると、なるほど、泣き叫ばんばかりの様相で輾転反側している。両腹直筋はピンと緊張して、二本の竹の棒を立てたようである。あらかじめ用意していった本方を煎じ与えて五分、嘘のように痛みはおさまり、静かになった。あと一週間分を服して完治した。  三才の女児。疳がつよくて、何事にも反抗し、かつ夜は突然にとび起きて啼きわめく。
本方を与えること二週間で正常状態に復した。
藤平 健


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) (傷寒論)
 〔芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)各三〕
 本方は、急迫性の激しい筋肉の痙攣と疼痛に頓服薬として用いられる。本方證の疼痛は、表裏・内外・上中下を問わず局所の痛みを訴えるものである。
 〔応用〕
 つぎに示すような疾患に、芍薬甘草湯證を呈するものが多い。
 一 坐骨神経痛、腰痛、五十肩、リウマチその他の神経および運動器系疾患。
 一 胃痙攣、腸疝痛、腸閉塞、胆石痛、胆嚢炎、膵臓炎その他の消化器系疾患。
 一 腎臓結石、排尿痛その他の泌尿器系疾患。



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
34.芍薬甘草湯 傷寒論
芍薬4.0~8.0 甘草4.0~8.0

(傷寒論)
傷寒脉浮,自汗出,小便数,心煩,微悪寒,脚攣急,「反与桂枝湯,欲攻其表,此誤也」(中略)若厥愈,足温者,更芍薬甘草湯与之,其脚即伸(後略) (太陽病)

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 四肢筋肉や腹直筋その他筋の急迫性の痛みに,頓服的にあるいは他処方と合方し用いる。
 漢方でいう筋の拘攣,拘急,攣急などを対象に鎮痙鎮痛剤として繁用されているもので,平滑筋(内蔵筋)や横紋筋(骨句筋)の異常緊張に伴う急迫性の痛みを緩和させる。したがって単に鎮痛作用だけでなく,筋または筋群の痛みを発作性収縮に著効がある。なお筋の異常緊張により痛みを伴う場合,葛根湯柴胡桂枝湯桂枝加芍薬湯小建中湯桂枝加朮附湯など多くの処方に本方を構成する芍薬甘草湯が配合されている。胆嚢炎,胆石症などで胸脇部痛や胃痙攣痛があって,柴胡桂枝湯で痛みがとれないとき本方を加える。大柴胡湯が適応する肝臓疾患や胃腸病で,痛みを愁訴するものに,本方を合方する。平胃散が対象になる胃炎,胃拡張などで心窩部の直腹筋が時々拘攣して,痛みを訴えるものに頓用する。神経痛,関節炎,筋肉リウマチなどで麻杏薏甘湯だけで,痛みが好転しない場合本方を加味する。猪苓湯適応証の膀胱炎,尿道炎,腎臓結石,尿道結石などに猪苓湯単味で痛みがとれないとき,本方を頓用せしめる。パーキンソン氏病で脳血管動脈硬化が認められ,桂枝加朮附湯が対象になる症状と,筋硬直と運動障害を目安に本方を投与すると,奇効を奏す識ことがある。また半夏厚朴湯に本方を合方して応用することもある。急性胃腸カタルや腹部内蔵の発作性痛みに,本方を頓服的に用いると速効効果がある。海水浴や水浴中に起こりやすい下肢の痙攣に本方を服用させると著効がある。

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
 急激におこった筋肉の拘攣による症状(痛み)に頓服として用いる。拘攣か骨格筋におきれば,四肢,手足の攣急性疼痛となり,消化管の滑平筋におきれば,胃腸の痙攣性激痛となる。腹証は,両側の腹直筋が攣急していることが多いがこれのないこともある。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は急迫性の筋肉の攣急を目標に,頓服として用いる方剤で,四肢の筋肉ばかりでなく,腹直筋その他の筋肉の攣急にも用いられる。本方は芍薬と甘草の二味からなり,筋肉の急迫性攣急を治する効がある。本方は以上の目標に従って,四肢の筋痛,腎石・胆石等からくる急迫性腹痛などに用いられる。また排尿痛の激しいものにも用いることがある。多くは頓服として一時の急を凌ぐために便利な方剤である。

漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 本方は急迫性の激しい筋肉の攣急と疼痛が主目標で,多くは腹直筋の攣急を現わす。本方は表裏ともに作用し,四肢腹部腰背の筋攣急ばかりでなく,胃痙攣や胆石症,腎石疝痛等裏の急迫性疼痛にもよく奏効し,その疼痛は筋肉局所のみの症状であることが多い。局所の筋肉が堅く,強く収縮し,痙攣を起こしているものによいので,多くの場合,腹直筋の攣急をともなっている。しかし腹壁の弛緩しているものでも腹底のどこかにひっぱりのあるものに用いてよいことがある。

日本東洋医学会誌〉第3回第1号 細野 先生等
 身体の筋肉の攣急は,ただに躯幹や四肢の筋肉の如き表在性のものに止まらず,体内に深在する滑平筋臓器,殊に胃腸,気管,胆嚢,輸胆管,輸尿管等々の滑平筋性管状臓器における攣急さえも広く応用して卓効があると考えられる。筋肉の痙攣であれば,骨骸筋,或は滑平筋の如何をとわず,中枢性と末梢性とを問わず,よく鎮静的作用を現わすものである。

※滑平筋? 平滑筋の誤植?

朱子集験方
 「去杖湯(本方の別名)脚弱力なく,行歩艱難なるを治す。」

医学心悟
 芍薬甘草湯,腹痛を止むこと神の如く。

勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此の方は脚攣急を治するが主なれども,諸家腹痛及び脚気両足,或は膝頭痛んで屈伸すべからざる者,其他諸急痛に運用す。又釣藤,羚羊を加えて驚癇の勁急(激しい痙攣のこと)を治す。又松心(松のひでといって油脂成分の多いところ)を加へて,淋痛甚しく,昼夜号泣する者を治す。又梅毒諸薬を服して羸劣骨節,なお痛み,攻下すべからざる者,松心を加えて効あり,或は虎脛骨を加ふるも佳なりと云う。

漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
 運用 1. 筋肉痙攣
 古方家的に言えば芍薬,筋の拘攣を緩め,甘草,急迫を治す。故に筋つり痛むものに用いると言う所だが,些か蛇虫を加えたい。
 芍薬甘草湯はひとり筋拘攣を治すのみならず下肢運動麻痺にも用いるから筋拘攣では割切れない。芍薬甘草湯の証は傷寒論太陽病上篇に出ている。
 「傷寒脉浮,自汗出で小便数,心煩,微悪寒,脚攣急するに,反って桂枝銀を与へ其表を攻んと欲するはこれ誤なり。之を得れば便ち厥し,咽中乾き煩躁吐逆せんとするものは甘草乾姜湯を作りて之を与え,以て其の陽を復す。若し厥癒え足温かなるものは更に芍薬甘草湯を作り之を与ふれば其脚即ち伸ぶ。」(中略)
 筋肉には血が多く含まれており,筋も血も陰に属する脚も亦上肢に対しては陰である。特に脚といった所に意味があり,伸びたまま縮まないのは陽だし,曲ったまま伸びないのは陰で,陰が勝っている状態である。陰の部の腹が痛む時はこごみ,背が痛いときは身を反して背に力を入れることを考えれば類推できよう。芍薬の気味は苦平になっている。苦は血に行き,芍薬は陰血を益す。血虚を治し筋の攣縮を緩め弛緩を補力する所以である。甘草の気味は甘平,甘は緩め補う。急迫を緩和し,弛緩を補力する所以である。芍薬の血,甘草の気相俟って血虚による脚筋拘攣を治し,陰気を補ってここにはじめて陰陽の調和を図ることができる。芍薬甘草湯は臨床上腹痛などにも用いる。すると表裏の関連をどう説明すべきかが問題になってくるが,漢方的には芍薬は脾血を益す。苦は火,脾は土,火土を生ずるの相生を以て説明するのは,この場合些か機械的でしっくりしない。脾は四肢を主り,脾虚せば四肢伸びずして攣縮くるに至る。表裏の相互関係である。芍薬甘草湯は臨床的には次のようなことに応用される。
 1.熱病発汗過多により脚攣急するもの,条文の通りである。

 2.下肢痙攣,その原因が脚気であろうと,捻挫,筋肉リウマチ,関節炎などであろうと,末梢神経性,中枢神経性,症候性等を問わずに急劇に起ったものに有効である。慢性でも劇甚なものには対症療法として用いるべきである。その際他に例えば発熱悪風の如き何等かの特徴のある症状を伴っていれば別の処方を選ぶべきで,芍薬甘草湯は専ら局所症状だけのものと思えばほぼ誤りはない。私の乏しい経験では上肢に起ったものはなく,皆下肢ばかりだったが,上肢でも勿論有効であろう。(中略)

 3.局所的な筋肉のトーヌス低下,主に下肢の無力症で,脚弱と称し歩行困難のもの,矢張り局所所見があるだけのものに使う。若し他に所見があれば越婢加朮湯,八味丸,桂枝加附子湯などである。

 4.気管支喘息で呼吸困難のため筋肉に力を篭めているもの,敢て喘息ばかりに限らず咳の劇しいもの,痛みのはげしいもの,小便が出ないでいきんでいるものなどに芍薬甘草湯を使うと一時の急を救うことが出来るから意を以って応用の機会をひろげてみるようにする。私は嘗て肺結核で劇しく咳込み如何ともし難きものに,咳をするとき四肢背筋にあらん限りの力を籠めているのに目を付け本方を用いた所,咳も緩解した経験を持っている。甘草は急迫を治すとて古人も嘔逆,淋病で痛み,小便が出ないもの,脱肛,痔発作などに使っているが,甘草には副腎皮質ホルモン促進的の薬理作用があるから,汎適応症候群の見方から見ると正に急迫症状を呈する抗ショック期に甘草が有効であることが考えられる。

 運用2. 腹痛
 芍薬甘草湯は表のみならず裏にも働き,痙攣,疼痛を緩和する。就中腹痛で代表的なのは胃痙攣や胆石痛などの急劇な疼痛であって,原因不明の一過性腹痛や重大な器質性変化なき胃痙攣などは本方が治ってしまうことが多い。その他一定の器質性変化がある病気でも鎮痛剤として対症療法的に用いて効果を期待することが出来る。例えば蛔虫,小児の原習不明の腹痛,急性虫垂炎,胃潰瘍などに使った例がある。但し内臓の穿孔,腸閉塞症,膵臓壊死などはたとえ本方で一時の急を救ったにせよ原病に対する適切な療法を怠っては取返しがつかぬことになる。芍薬甘草湯を使うべきは腹痛は腹筋が強く収縮していて,疼痛も劇しい。鈍痛,慢性の腹痛,腹壁弛緩せるもの,他に著明の症状を伴っているものなどには効かない。(後略)


※蛇虫……蛇足の誤植か?



一般用漢方製剤
芍薬甘草湯
〔成分・分量〕
芍薬3-8、甘草3-8
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力に関わらず使用でき、筋肉の急激なけいれんを伴う痛みのあるものの次の諸症:
こむらがえり、筋肉のけいれん、腹痛、腰痛

してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
1.次の人は服用しないこと
(1)生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
(2)次の診断を受けた人
心臓病
2.症状があるときのみの服用にとどめ、連用しないこと
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の診断を受けた人。
高血圧、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤
師又は登録販売者に相談すること
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。


症状の名称 症状 間質性肺炎
階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
偽アルドステロン症、ミオパチー1)
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
うっ血性心不全、
心室頻拍
全身のだるさ、動悸、息切れ、胸部の不快感、胸が痛む、めまい、失神等があらわれる。
肝機能障害
発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。

〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
3.5~6回服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬
剤師又は登録販売者に相談すること
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
(1)生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
(2)次の診断を受けた人
心臓病
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の診断を受けた人。
高血圧、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
321
上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕



医療用漢方製剤
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
 1.アルドステロン症の患者
 2.ミオパシーのある患者
 3. 低カリウム血症のある患者
 [1~3:これらの疾患及び症状が悪化するおそれがある。]

【使用上の注意】
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
高齢者(「5.高齢者への投与」の項参照)
2.重要な基本的注意
(1)本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投
与すること。なお、経過を十分に観察し、症状・所見の改善
が認められない場合には、継続投与を避けること。
(2)本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧
  値等に十分留意し、異常が認められた場合には投与を中止する
  こと。
(3)他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意する
  こと。
3.相互作用
  併用注意(併用に注意すること)





4.副作用
 本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実
 施していないため、発現頻度は不明である。
(1)重大な副作用
1)間質性肺炎:咳嗽、呼吸困難、発熱、肺音の異常等があら
われた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線、
胸部CT等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の
投与等の適切な処置を行うこと。
2)偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリ
 ウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン
 症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測
 定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止
 し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
3)うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍(Torsades de
 Pointes を含む):うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍
 (Torsades de Pointes を含む)があらわれることがあるの
 で、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、動悸、
 息切れ、倦怠感、めまい、失神等の異常が認められた場合
 には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
4)ミオパシー:低カリウム血症の結果として、ミオパシー、
 横紋筋融解症があらわれることがあるので、脱力感、筋力
 低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺、CK(CPK)上昇、血中及び尿
 中のミオグロビン上昇が認められた場合には投与を中止し、
 カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
5)肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、γ-GTP
 の上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある
 ので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与
 を中止し、適切な処置を行うこと。

5.高齢者への投与 
 一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注
 意すること。
6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は
 妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性
 を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
7.小児等への投与
 小児等に対する安全性は確立していない。[使用経験が少ない]






・夜啼き(生後百日くらい、夜半に泣き出す)
・芍甘湯(しゃっかんとう)と略称されることもある。

2011年11月7日月曜日

四逆散(しぎゃくさん) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
四逆散(しぎゃくさん)
本方は大柴胡湯よりも虚し、小柴胡湯より実し、二方の中間に位する方剤である。腹證上では胸脇苦満があり、腹直筋が季肋下で拘急している。また柴胡の證で手足の厥冷するものを治し、或は所謂癇の亢ぶるものを治する。
本方は柴胡・芍薬・枳実・甘草からなり、大柴胡湯の黄芩・半夏・大黄・生姜・大棗の代りに甘草を加えたものであるから、嘔吐や便秘の症状はなく、急迫性の心下痛は却って強いことがある。
本方の応用は大柴胡湯及び小柴胡湯に準ずるが、胆嚢炎・胆石症・胃炎・胃潰瘍・鼻カタルなどに用いられる機会がある。


『漢方精撰百八方』
43.〔方名〕四逆散(しぎゃくさん)
〔出典〕傷寒論

〔処方〕甘草2.0 枳実2.5 柴胡5.0 芍薬4.0

〔目標〕証には、四肢厥冷し、咳嗽、動悸、小便不利、腹痛し、或いは泄利下重する者、とある。
即ち、四肢厥冷し、胸腹部が微満し、腹痛、下痢の傾向があり、また咳嗽、心悸亢進、小便不利、不定愁訴等のあるものに適用する。
更に別の表現をすれば胸脇苦満、腹直筋の攀急があり、大柴胡湯小柴胡湯との中間に位する薬方である。

〔かんどころ〕大柴胡湯の腹証に似ていて、やや虚しているもので、腹直筋の攀急が著明なものである。柴胡加竜骨牡蛎湯証に似た神経症状があることもある。

〔応用〕
(1)熱候がないか、又は熱候が著しくなくて下痢し、微痛があり、胸脇苦満あり、手足に冷感があるもの、脈沈緊。

(2)胆嚢炎、胆石症で、目標の症状をあらわすもの。

(3)副鼻腔炎。胸脇苦満、腹直筋の攀急あるもの。
伊藤清夫


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
1 柴胡剤
柴胡剤は、胸脇苦満を呈するものに使われる。胸脇苦満は実証では強く現 われ嘔気を伴うこともあるが、虚証では弱くほとんど苦満の状を訴えない 場合がある。柴胡剤は、甘草に対する作用が強く、解毒さようがあり、体質改善薬として繁用される。したがって、服用期間は比較的長くなる傾向がある。柴胡 剤は、応用範囲が広く、肝炎、肝硬変、胆嚢炎、胆石症、黄疸、肝機能障害、肋膜炎、膵臓炎、肺結核、リンパ腺炎、神経疾患など広く一般に使用される。ま た、しばしば他の薬方と合方され、他の薬方の作用を助ける。
柴胡剤の中で、柴胡加竜骨牡蛎湯柴胡桂枝乾姜湯は、気の動揺が強い。小柴胡湯加味逍遥散は、潔癖症の傾向があり、多少神経質気味の傾向が ある。特に加味逍遥散はその傾向が強い。柴胡桂枝湯は、痛みのあるときに用いられる。十味敗毒湯荊防敗毒散は、化膿性疾患を伴うときに用いられる。

3 四逆散(しぎゃくさん) (傷寒論)
〔柴胡(さいこ)五、芍薬(しゃくやく)四、枳実(きじつ)二、甘草(かんぞう)一・五〕
大柴胡湯證と小柴胡湯の中間の證を現わすものに用いられる。胸脇苦満は著明で、腹直筋が季肋下で拘急している。しかし、大柴胡湯ほど実してい ないため、嘔吐、便秘の症状はないか、あっても軽い。便秘のかわりに腹痛、泄痢下重(せつりげじゅう、冷えによって起こる下痢で、あとがさっぱりしない) する場合もある。大柴胡湯よりも芍薬の量が多いので、心下部の痛みをとる作用が強い。本方は、四肢の冷え、精神不安、咳嗽、心悸亢進、動悸、腹痛、腹満、 裏直筋の緊張、尿利減少などを目標とする。
〔応用〕
柴胡剤であるために、大柴胡湯のところで示したような疾患に、四逆散證を呈するものが多い。


『漢方処方 応用の実際』 山田 光胤 南山堂刊
109.四逆散(傷寒論)
柴胡5.0,枳実2.0,芍薬4.0,甘草2.0

〔目標〕  体格肉づき中ぐらいの人で,腹証に心下痞硬 および 胸脇苦満と腹直筋の攣急があり,腹直筋は季肋下で甚だしく緊張し,腹に2本の棒を立てたようにふれる場合である.
一般症状では 咳嗽,腹痛,動悸や軽い精神不安,尿利減少 などを訴えるものが多い.

〔説明〕  本方は,大柴胡湯と小柴胡湯の中間の体質,体力の場合に用いられる.
諸薬のうち,芍薬の目標は腹直筋の攣急(腹皮攣急)である.しかし 腹皮攣急は小建中湯にも,柴胡桂枝湯の証にもある.これらの区別は微妙であるが,簡単にいえば,四逆散の方が柴胡桂枝湯証より,腹部全体の緊張もよいし,腹直筋も硬く張っている.
また 小建中湯証では,腹部全体が軟弱で,腹直筋のみが拘攣し緊張しているほか,胸脇苦満はみられない。

〔参考〕  1) 本方を鼻疾患に用いることがある.その場合は辛夷,川芎,細辛 などを加えるとよい.
2) 餐英館療治雑話には本方証に 怒りやすい という症状をあげている.
3) 梧竹楼は,脾胃の虚寒による吃逆(しゃっくり)によいといっている.脾胃の虚寒というのは,胃腸の衰弱寒冷の意味である.
4) また 和田東郭は,疫(熱性下痢症)で譫語,煩躁し吃逆を発するものによいといっている.

〔応用〕  大・小柴胡湯に準ずるほか,胃炎,十二指腸炎,胃・十二指腸潰瘍,胆嚢炎,胆石症,神経症,鼻炎,蓄膿症 など.

〔鑑別〕  柴胡桂枝湯の項 参照

〔症例 1〕  蓄膿症 22~23歳の青年,2年ほど前から鼻がわるく,最近2~3ヵ月食べ物のにおいがわからなくなったという.
中肉中背で,体力中等とみられた.はじめ葛根湯加辛夷・川芎を1週間与えたが,全然変化がみられなかった.
そこで,腹直筋の攣急と季肋下にわずかながら抵抗をみとめたので,四逆散加辛夷,川芎に転方した.これをのむと,1週間後に鼻閉が少しよいといってきた.そこで同湯をつづけて服用させたところ,2ヵ月ほどあったある日,喜んでやってきた.「昨日,昼食にラーメンをたべたら,そのにおいがよくわかった」というのである.その後1ヵ月ばかり服薬してやめた.

〔症例 2〕  不食症 36歳,男子,初診34・9・15,主訴は食意喪失.
現病歴  数年来食欲が全くなく,空腹を少しも感じないで腹がすくことがない.朝は食事を殆んどとらない.各種の強肝剤やビタミン剤 などをのんだが効果がなく,数人の医師はどこもわるくないという.
性格は 単純,淡白,物にこだわらず,物事を気にしない.神経症になるような性格ではない.
現症  訴えは淡々とし,主訴以外に何らの訴えもなく,こちらからたずねる自覚症状はすべてないという.神経症とは考えられない.
身体的には,器質的異常は何らみとめられない.ただ 尿ウロビリノーゲン(以下尿ウと略称)が中等度陽性をみとめられる.
体格,肉づき中等,色はやや黒く,登山家で,過去に病気をしたことはないという.舌は白きて湿り,脈は沈小,腹証は右季肋下に軽度の抵抗と圧痛があり,両側の腹直筋が攣急している(右がやや強度).腰背部志室と臂部に圧痛がある.
治療・経過  四逆散加茯苓生姜を,胸脇苦満と腹皮攣急を目標に投与した.茯苓,生姜は,舌と脈から陰証の傾向があると判断したので加味した.
1週後 少し食欲が出て,具合のよいのがわかるという.
2週後 続いて食欲があったが,出張旅行で服薬できなかったら,また食事が全然とれなくなったという.
3週後 再び食事がすすむようになったと.
4週後 順調で食欲は正常.しかし 飲酒すると頭痛するという.
5週後 かぜを引き,悪寒,鼻汁が出るというので,陰証とみて 桂姜棗草黄辛附湯 を4日投与し治癒した.
2ヵ月後 食事量は正常という.右季肋下の圧痛消失,尿ウ正常となる.
3ヵ月後 尿ウ正常,右季肋下の抵抗軽減す.


『臨床応用漢方處方解説 増補改訂版』 矢数道明著 創元社刊
55 四逆散(しぎゃくさん) 〔傷寒論〕
柴胡五・〇  芍薬四・〇  枳実二・〇  甘草一・五
右は煎薬とする場合の一日量である。粉末として用いる場合はおのおと等分、末として混和し,一日量六・〇を三回に分けて、重湯にまぜてのむとよい。

〔応用〕 胸脇苦満があって、大柴胡湯証と小柴胡湯証との中間ぐらいの病状のものに用いる。
本方は主として胆嚢炎・胆石症・胃炎・胃酸過多症・胃潰瘍・肋膜炎等に用いられ、また肺結核・急性慢性気管支炎・喘息・心悸亢進・急性慢性大腸炎・直腸炎・直腸潰瘍・結核性腹膜炎の肥厚または硬結・肩こり・ヒステリー・神経質・癲癇・癇症・神経過敏症・鼻炎・上顎洞炎などに応用される。

〔目標〕 大柴胡湯より虚証で,小柴胡湯よりは少し実証,二方の中間に位する病証というのが目標である。腹証は胸脇苦満があり,腹直筋が季肋下で拘急している。柴胡の証で手足の厥冷するもの,あるいはいわゆる癇のたかぶる神経過敏症のものに用いられる。大柴胡湯よりも熱状が少なく,胸脇苦満・心下痞硬の程度が軽く、筋直筋は硬く緊張して臍傍にまで及んでいる。

〔方解〕 大柴胡湯の黄芩・半夏・大黄・生姜・大棗のかわりに甘草を加えたもので,大体は大柴胡湯に近い。肝部の実は同じであるが,脾胃がやや虚していると解釈される。
柴胡は胸脇に気血が凝滞し、血熱を生じ、水の流通を妨げられているのを治すものである。枳実は気を開き凝結を破り,水の流通をよくする。芍薬は血液の凝滞をめぐらし、四肢の筋肉の攣縮を緩める。甘草は胃の虚を補い、心下や四肢筋肉の緊張を緩め、急迫症状を緩和させる。
胸脇部と心下に気が凝滞し、緊張症状を起こして、四肢に気がめぐらぬ状態を治す能がある。
すなわち肝の病・胃の病・筋緊張の病・神経症状の諸疾患に適用される。

〔主治〕
傷寒論(少陰病篇)に、「少陰病四逆シ、其ノ人或ハ咳シ、或ハ悸シ、或ハ小便利セズ、或ハ腹中痛ミ、或ハ泄利下重スル者ハ四逆散之ヲ主ル」とある。
蕉窓方意解には、「大柴胡湯ノ変方ニテ、其ノ腹形専ラ心下及ビ両肋下ニツヨク聚リ、其ノ凝リ胸中ニモ及ブ位ノコトニテ、竝に両脇バラモ強く拘急ス。サレド熱実スルコト少キユエ、大黄・黄芩ヲ用ヒズ、唯心下、両肋下ヲ緩メ和ラグルコトヲ主トスル薬ナリ。本論ハ症ヲ説クコト今少シ詳ナラズ、且ツ文章モ亦正文トモ見エズ。(中略)
余多年此ノ薬ヲ疫症及ビ雑病ニ用イテ種々ノ異症ヲ治スルコト勝テ計フベカラズ。稀代ノ霊方ナリ。常ニ用イテ其ノ効ノ凡ナラザルヲ知ルベシ」とあり、
餐英館療治雑話には、「心下常ニ痞シ、両脇下火吹筒ヲ立テタル如ク張ツテ凝リ、左脇最モ甚シク、心下凝リツヨキ故ニ胸中マデモ痞満ヲ覚エ、何トナク胸中不快、モノ事怒リツヨク、或ハ肩背ハリ、或ハ背中七~九ノ辺リハリ、此等ハ皆肝鬱ノ候ナリ。此方ヲ用ユベシ、当今肝鬱ノ証多キ故、此ノ方ノ応ズル証極メテ多シ。
和田家ニテハ雑病人、百人治療スレバ五~六十人ハ此方ニ加減シテ用ユト門人ノ話ナリ。水分ノ動キツヨキ証ハ山薬・生地黄ヲ加エテ効アリト云ウ。余近来此方ヲ用テ毎ニ効ヲ取レリ、又疝気ニ此方ノ応ズル証多シ」とあり。
勿誤方函口訣には、「此ノ方ハ大柴胡ノ変方ニシテ少陰ノ熱厥ヲ治スルノミナラズ、傷寒ニ癇ヲ兼ルコト甚シク、譫語煩躁シ、噦逆ヲ発スル等ノ証ニ特験アリ。其ノ腹形専ラ心下及ビ両脇下ニ強ク聚リ、其ノ凝リ胸中ニモ及ブ位ニテ、拘急ハツヨケレドモ、熱実ハ少キ故、大黄、黄芩ヲ用ヒズ。唯心下両肋ヲ緩メテ和グルコトヲ主トスル也。東郭氏多年此ノ方ヲ疫症及ビ雑病ニ用テ種々ノ異証ヲ治スルコト勝テ計フベカラズト云フ。仲師(張仲景のこと)ノ忠臣ト謂フベシ」とある。
漢方(一巻三号、龍野一雄氏)「腹診の本をみると、両側の直腹筋が、棒を並べたように緊張していることを示し、二本棒などと称している。たしかに腹直筋の緊張だが、緊張の仕方に特徴があって、腹壁はやや陥凹しているように感じられ、腹直筋は細くすじ張って感じられる。そして白線の部が深く落ち込んでいるように触れる。腹直筋の緊張する範囲は上腹部に限ることが多いが、ときには臍辺、または臍下に及ぶことがある」といっている。

〔鑑別〕
○大柴胡湯92 ○小柴胡湯69 各項参照
皇漢医学には、「本方ノ腹証ハ大柴胡湯ニ酷似スレドモ、異ル所ハ彼ハ大黄ヲ含ムニヨリ、其ノ腹部ハ一般ニ実状ニシテ内部充実ノ触覚アリ。按ズレバ抵抗ヲ覚ユレドモ、本方ニハ大黄アラザレバ虚状ノ観アリ。内部空虚ニシテ按ズルニ抵抗ナシ。悪心嘔吐ナク、熱勢劇ナラズ、舌苔モ稀ナリ、腹筋ノ攣急急迫ハ甚シ」とあるが本方との鑑別である。

〔参考〕
龍野一雄氏、四逆散の展開(漢方と漢薬 一一巻七号)。 松本一男氏、四逆散に就て(漢方の臨床 二六巻五号)。
細野史郎氏等、四逆散の臨床医学的観察、第十五回日本東洋医学会総会発表(未掲載)

〔治例〕
(一)神経症
久留島伊予守年十四、気宇閉塞(気鬱、ノイローゼ)、顔色青惨、身体羸痩す。医以て労瘵(肺結核)とす。余之を診するに任脈拘急し、胸中動悸あり、左脇下かより鳩尾にかけて妨悶す。余以為く癖疾の為す所と、四逆散加別甲・茯苓を与ふ。数日にして妨悶去り拘急解し、気宇(気分)大に開く。四肢力なく物に対して倦怠す、因て千金茯苓湯を与え数旬にして全治す。 (浅田宗伯翁、橘窓書影)

(二)蓄膿症(上顎洞炎)
徳見某なる者、鼻淵(蓄膿症)を患うこと三年、諸医肺虚に因るとして百治すれども寸効を得ず。その人両鼻より濁涕を流すこと夥しく、四逆散に呉茱萸・牡蛎を加えて与ふ。京を発して東武に赴く途中日に三貼づつ服したるに、品川へ着く前日より、屋の夥しくたらたらとたれたる鼻水さつぱりと止みたり。此症古来より肺部の病とて辛夷白芷の類を多く用ひたり。是れは尽く肝火の上み肺部へつきつめたる処より、上下の気隔塞して成ることなり。  (和田東郭翁、蕉窓雑話)


『明解 漢方処方』 西岡 一夫著 浪速社刊
四逆散(傷寒論)
処方内容 柴胡 芍薬 枳実各二・〇 甘草一・〇(七・〇)

必須目標 ①左右直腹筋の著しい攣急 ②心下痞硬 ③四肢冷

確認目標 ①動悸 ②下痢 ③腹痛 ④咳嗽 ⑤脈は沈緊が多い。

初級メモ ①和田東郭お得意の処方で、薬味の中に芍薬甘草湯を含む故に直腹筋の攣急は当然想像されるところであるが、実際は更に甚しく、所謂四逆散の二本棒といわれる程、著明な腹証であり、また柴胡、枳実を含む故、大柴胡湯に似て胸脇苦満(季肋下抵抗圧痛)、心下痞鞕(胃部の痞え)を認める。
②浅田流では呉茱萸二・〇、茯苓五・〇を加え“四逆加呉茯”と称し、胃酸過多症、胃潰瘍に繁用している。(時には牡蛎三・〇も加味する)

中級メモ ①本方の四肢厥冷は白虎湯類と同じく熱厥であって、陰証の厥冷とは脉証腹証を異にする。
②和田東郭は原典の条文について「症を説くこと今少し詳ならず、且つ文章もまた正文とも見えず、恐らくは後人の作にてもあらんか」と疑っており、南涯もまた後人の作として削っている。
③本方は抑肝散の原方として有名で、婦人にはむしろその方が繁用される。

適応症 胃酸過多症。胃潰瘍。胆のう炎。副鼻腔炎(蓄膿症)。遺精。






【副作用】
①使用成績調査色e副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である。

②重大な副作用
(a)偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う
(b)ミオパシー:低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う

【高齢者への投与】
一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意する


一般用漢方製剤
115.四逆散
【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後次の症状があらわれた場合は、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師 又は登録販売者に相談すること
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
偽アルドステロン症、ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
3.1ヵ月位(胃炎、胃痛、腹痛に服用する場合には1週間位)服用しても症状がよくならな
い場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
294
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕