p.81
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) (傷寒論)
類方 芍薬甘草附子湯(傷寒論)
本方に附子〇・五を加えた処方で、足厥冷、悪寒、自汗出などの気脱の症(気がなくなった病の意味で陰症の附子の目標)ある者に用いる。
『漢方精撰百八方』
70.〔芍薬甘草湯〕(しゃくやくかんぞうとう)
本方に膠飴を加味して、より効を増すことがあり、また手足に寒冷を覚えたり、悪寒の加わったりする場合には、附子を加えて芍薬甘草附子湯として与えて、一層効果的である場合がある。
『漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
6 芍薬甘草附子湯(しゃくやくかんぞうぶしとう) (傷寒論)
〔芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)各三、附子○・五~一〕
本方は、芍薬甘草湯證で、四肢の冷えるものに用いられる。老人などで故なくぞくぞく寒けがするのを目標とすることもある。
『臨床応用 漢方處方解説』 矢数道明著 創元社刊
p252
61 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) 去杖湯(きょじょうとう) 〔傷寒論〕
p.253
〔加減〕 芍薬甘草附子湯は、すなわち本方に附子〇・五~一・〇を加えたもので、本方の証で悪寒するもの、陰虚証で冷えを加えたものに用いられる。脈は微弱で沈なるものが多い。
p.254
勿誤方函口訣には、(中略)
「芍薬甘草附子湯ハ、発汗後悪寒ヲ治スルノミナラズ、芍薬甘草湯ノ証ニシテ陰位ニ属スル者ヲ治ス。又虫積ノ痛ミ、疝、痛風、鶴膝風(膝が腫れて鶴の膝のようになったもの、結核性関節炎)、足冷等ニ効アリ」(後略)
『和漢薬方意辞典』 中村謙介著 緑書房
p.362
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) [傷寒論]
p.327
【参考】
*本方加附子の芍薬甘草湯は、発汗剤などでほぼ表証は去ったが、なお悪寒してサッハリしないものにも用いる。
【症例】 四肢萎弱症
51歳の男子である。突訓手足の力がなくなってしまったので、驚いて某大学病院に入院した。
両手は全くブラブラになり、ほとんど使用できない。脚の方は人につかまり辛じて歩くことはできるが、自分でしゃがんだり、立ったりすることができない。また腰にも力がなくなって、一人で座っていることができず、後から支えているという。その他には何の自覚症もないが、顔色が悪くひどい貧血があるといわれている。
病院であらゆる精密検査をやったが、病名は決定できないとのことで、仮に削痩性無力性筋萎縮ということになっているとのことであった。病名は決まらないし、治療法ないといわれ、何でも好きなことをして良いといわれたので、漢方の薬を飲ませたいといった相談に来た。
そこで『朱子集験方』で「脚弱力なく、歩行艱難を治す」とあるので、芍薬甘草附子湯を教えたのである。すると20日分飲んだ頃になると、自分で立ち上ることができるようになり、食欲が出て太ってきた。通じがないというので大黄を少し加えた。
4月下旬には便所へ一人で行けるようになり、手が使えるようになって、どんぶり飯を自分で持って食べたという報告があった。
5月下旬には、会社の方が気懸りなので、付添がついて1時間だけ会社へ出勤したということがあった。
病名は詳しく分からないこと故、自然の治癒であったかも知れないが、とにかく本方の服用により全身状態がめきめきと好転して、体力が充実してきたことは確かのようである。5ヵ月後に来院したが、大体勤務に差支えないところまで良くなった。
矢数道明 『漢方の臨床』 11・11・12
『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊
p.325
<註>
芍薬甘草附子湯(しゃくやくかんぞうぶしとう)
芍薬甘草湯に附子を加えたものである。附子は熱性薬の代表であるとともに,鎮痛作用もあるので,芍薬甘草湯を用いたい場合で,冷えや悪寒のある場合に適する。
ことに上下肢が冷えてつれ,痛むものには,格好の方剤である。
『健康保険が使える 漢方薬 処方と使い方』
木下繁太朗 新星出版社刊
芍薬甘草附子湯(しやくやくかんぞうぶしとう)
傷寒論(しようかんろん)
健 三
どんな人につかうか
芍薬甘草湯(しやくやくかんぞうとう)に附子(ぶし)を加えたもので、冷(ひ)え(寒証)を伴う痙攣性(けいれんせい)の痛みに用いる基本処方です。冷え症で関節や筋肉が痛み、麻痺感(まひかん)があって、屈伸(くつしん)の困難なものに用い、又筋肉の攣縮(れんしゆく)や腹痛があって、体力がなく冷(ひ)えの強いものに用います。
木下繁太朗 新星出版社刊
芍薬甘草附子湯(しやくやくかんぞうぶしとう)
傷寒論(しようかんろん)
健 三
どんな人につかうか
芍薬甘草湯(しやくやくかんぞうとう)に附子(ぶし)を加えたもので、冷(ひ)え(寒証)を伴う痙攣性(けいれんせい)の痛みに用いる基本処方です。冷え症で関節や筋肉が痛み、麻痺感(まひかん)があって、屈伸(くつしん)の困難なものに用い、又筋肉の攣縮(れんしゆく)や腹痛があって、体力がなく冷(ひ)えの強いものに用います。
目標となる症状
症 ①筋肉の痙攣(けいれん)、疼痛(とうつう)。②腹痛。③関節痛。④麻痺感(まひかん)。⑤四肢の屈伸困難。⑥冷え症、悪寒(おかん)。⑦四肢厥冷(けつれい)。
腹 腹直筋の攣急(れんきゆう)。
脈 微弱で沈んでいる。舌 一定せず。
どんな病気に効くか(適応症)
冷え症で関節や筋肉が痛み、麻痺感(まひかん)があって、四肢の屈伸が困難なものの、慢性神経痛、慢性関節炎、関節リウマチ、筋肉リウマチ、五十肩、肩こり(その他芍薬甘草湯(しやくやくかんぞうとう)<116頁>に準ずる)。
この薬の処方
芍薬(しやくやく)、甘草(かんぞう)各5.0g。附子1.0g。
症 ①筋肉の痙攣(けいれん)、疼痛(とうつう)。②腹痛。③関節痛。④麻痺感(まひかん)。⑤四肢の屈伸困難。⑥冷え症、悪寒(おかん)。⑦四肢厥冷(けつれい)。
腹 腹直筋の攣急(れんきゆう)。
脈 微弱で沈んでいる。舌 一定せず。
どんな病気に効くか(適応症)
冷え症で関節や筋肉が痛み、麻痺感(まひかん)があって、四肢の屈伸が困難なものの、慢性神経痛、慢性関節炎、関節リウマチ、筋肉リウマチ、五十肩、肩こり(その他芍薬甘草湯(しやくやくかんぞうとう)<116頁>に準ずる)。
この薬の処方
芍薬(しやくやく)、甘草(かんぞう)各5.0g。附子1.0g。
この薬の使い方
①前記処方(一日分)を煎(せん)じてのむ。
②三和芍薬甘草附子湯(しやくやくかんぞうぶしとう)エキス細粒(さいりゆう)、成人一日4.5gを2~3回に分け、食前又は食後に服用、又は随時頓用(ずいじとんよう)する。使い方のポイント
①神経痛や、リウマチで、痛みの特にきつい人に用い、頓用より連用することが多い。
②他に症状がなくて手足が痛むという人、冷(ひ)えて関節などが痛む人に用いると良い。
③芍薬甘草湯(しやくやくかんぞうとう)のエキス剤に加工ブシ(45頁)を加えて用いてもよい。
④傷寒論には「発汗させても病が解消せず、却って悪寒するものは、体力が衰えているためである。芍薬甘草附子湯(しやくやくかんぞうぶしとう)がこれを主(つかさど)る」とあり、風邪などで発汗させても、寒気(さむけ)が強いものに良いとしています。
処方の解説
芍薬甘草湯(しやくやくかんぞうとう)に附子(ぶし)を加えたもので、痙攣性疼痛(けいれんせいとうつう)で寒気(さむけ)や冷(ひ)えの強いものに用います。附子(ぶし)は温裏袪寒(おんりきよかん)(裏を温めて、寒を取る)の作用があって、血管拡張、血行促進、鎮痛の効果があり、鎮痛、鎮痙、循環改善が期待できます。
『康平傷寒論解説(15)』
北里研究所附属東洋医学総合研究所副所長 大塚 恭男
厚朴生姜半夏甘草人参湯 茯苓桂枝白朮甘草湯(苓桂朮甘湯) 芍薬甘草附子湯 茯苓回逆湯 調胃承気湯
■芍薬甘草附子湯
条文は「汗を発して病解せず、反って悪寒する者は芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)これを主る」と続きます。発汗剤を与えて病気が治らないで、かえって寒気がするものは芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)の証であるということです。
芍薬甘草附子湯の方は、「芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)各三両、炙る。附子一枚、炮じて皮を去り八斤を破る。右三味、水五升を以て煮て一升五合を取り、滓を去り、分温三服す」とあります。
芍薬甘草附子湯は、非常に頻繁に使われる処方ではありませんが、そんなに使われないというものでもありません。汗を発するとよいからと、表証があって発汗剤を与えたが病気が治らないで、かえって寒気がする、つまり少陰病に転じてしまって悪寒するという証であります。
類似の処方として、麻黄甘草附子湯(マオウカンゾウブシトウ)、芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)などがあり、したがってこの処方の主治するところが自ずから明らかになってきます。芍薬甘草湯は『傷寒論』の条文では「脚攣急する者」とあり、また鎮痙的な意味も持っており、平滑筋の攣縮状態を緩解します。それに附子が加わっているわけで、附子は冷えを取りますから、寒冷が原因でこういうことが起こってくる場合は、かえって悪寒するということで、附子が入ることによって、寒が原因でこういう状態が起こっている場合は、芍薬甘草附子湯がよいであろうといえると思います。
そのほか類似処方に芍甘黄辛附湯(シャクカンオウシンブトウ)(芍薬、甘草、大黄(ダイオウ)、附子、細辛(サイシン))、桂枝加附子湯(ケイシカブシトウ)などがあります。芍薬、甘草、附子というきわめて簡単な内容ですが、現在は傷寒という病気がありませんから、「汗を発して云々」ということが必ずしもなくても、寒気がして、どこかが痛い、手足が冷える症状に使ってよい処方であると思います。
芍薬甘草附子湯
次は芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)です。出典は『傷寒論』です。「即ち芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)方中附子(ブシ)を加う。此の方は、発汗後の悪寒を治するのみならず、芍薬甘草湯の症にして陰位に属するものを治す。また附子を草烏頭(ソウウズ)に代えて妙に虫積の痛を治す。又疝あるいは痛風鶴膝風等に活用す。痛風より鶴膝たちになり、綿にて足を包むというほど冷えるに効あり。凡て下部の冷え、専ら腰にかかるは苓姜朮甘(リョウキョウジュツカン)なり。専ら脚にかかるは此の方なり。又、湿毒の後、足大いに冷ゆる者にも用う。もし余毒あるものは伯州散(ハクシュウサン)を兼用すべし」とあります。
湿毒は梅毒のことです。伯州散は伯耆国(鳥取)の民間治療薬であったものを、江戸時代の漢方医たちが、漢方薬のようにして取り入れたものです。鹿の角、サワガニ、マムシを個別に黒焼きにし、それを等分に混ぜ合わせたもので、江戸時代には非常によく用いられましたし、よく効いたものです。今用いてもよく効きます。
芍薬甘草附子湯は、芍薬甘草湯に附子が入ったもので、太陰の状態、陰証に傾いてきているものに用います。したがって芍薬甘草湯の証であって、冷えがある、ことに足の方が冷え、そして痛むという場合に用いるとよいのです。芍薬甘草湯の同じように、いろいろな痛みを伴う疾患に用いてよく効きます。リウマチ、神経痛などに使います。
本日お話しいたしました薬方は、皆実際によく使えるものですから、活用していただきたいと思います。
副作用
重大な副作用と初期症状
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
2) ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
[理由]
厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。
[処置方法] 原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等 により電解質 バランスの適正化を行う。
その他の副作用
頻度不明 | |
その他 | 心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ 、悪心等 |