健康情報

2012年3月31日土曜日

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊

四物湯の加減方、合方
〔四物湯に黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を合方したもの〕
本方は、黄連解毒湯證(後出、瀉心湯類の項参照)に瘀血の症状をかねたもので、諸出血がつづいて貧血状となり、のぼせ、神経の興奮などを呈する。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、温清飲證を呈するものが多い。
一 月経過多、子宮出血、男子の下血、胃や腸の潰瘍による出血その他の諸出血。
一 皮膚掻痒症、湿疹その他の皮膚疾患。
一 そのほか、高血圧症、神経症など。

冬に悪くなる湿疹(益田総子)
(2)荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)  (一貫堂方)
〔当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)、黄連(おうれん)、黄芩(おんごん)、黄柏(おうばく)、梔子 (しし)、連翹(れんぎょう)、防風(ぼうふう)、薄荷(はっか)、荊芥(けいがい)、甘草(かんぞう)、枳殻(きこく)各一・五、柴胡(さいこ)、白芷 (びゃくし)、桔梗(ききょう)各二〕
本方は、温清飲に桔梗、白芷、連翹、荊芥、防風、薄荷、枳殻、甘草を加えたもので、温清飲の作用を表や上焦、特に首から上の部分に作用させ、上焦の炎症(化膿症)を消散させるもので、体質改善薬としても、しばしば用いられる。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、荊芥連翹湯證を呈するものが多い。
一 蓄膿症、鼻炎、衂血、中耳炎、外耳炎その他の耳鼻科疾患。
一 そのほか、面疱、扁桃炎、肺浸潤、肺結核、神経衰弱など。 
『一般用漢方処方の手引き』 厚生省薬務局 監修 薬業時報社 刊
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
〔成分及び分量〕 当帰1.5,芍薬1.5,川芎1.5,地黄1.5,黄連1.5,黄芩1.5,黄柏1.5,山梔子1.5,連翹1.5,防風1.5,薄荷葉1.5,枳殻(実)1.5,甘草1~1.5,白芷1.5~2.5,桔梗1.5~2.5,柴胡1.5~2.5,
(地黄,黄連,黄柏,薄荷葉のない場合も可)

〔用法及び用量〕 湯

〔効能又は効果〕 蓄膿症,慢性鼻炎,慢性扁桃炎,にきび

〔解説〕 一貫堂経験方
本方は解毒症体質(一種の肝臓機能低格症)または腺病性体質を改善する薬方である。



参考文献名
生薬名 当帰 芍薬 川芎 地黄 黄連 黄芩 黄柏 山梔子 連翹 荊芥 防風 薄荷葉 枳殻 甘草 白芷 桔梗 柴胡
診療医典 注1 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2 2 2
処方解説 注2 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2.5 2.5 2.5
治療の実際
1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1 1.5 1.5 1.5

応用の実際

注3

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5

1.5
(枳実)1.5
1

1.5

1.5

1.5
要方解説 注4 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2 2 2
診療の実際 注5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2 2 2
処方集 注6 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 2.5 2.5 2.5

本来は蓄膿症・中耳炎等に用いられるもので,万病回春の耳病門・鼻病園の荊芥連翹湯の加減法である。この特有の体質者に発した諸病に応用される。(臨床応用漢方処方解説より抜粋)

注1 皮膚の色が暗褐色を示し,筋直筋が全体に緊張し,肝経と胃経に相当して腹筋の拘攣を認めることが多い。
青年期腺病体質の改善,急性慢性中耳炎,急性慢性上顎洞化膿症,肥厚性鼻炎などに用いられ,また扁桃炎,衂血,面疱,肺結核,神経衰弱,禿髪症などに応用される。

注2 皮膚の色は概してドス黒く,暗褐色を呈することが多い。脈は緊で,腹は直腹筋が全体に緊張して,肝経と胃経に相当して,腹筋の拘攣を認めることが多い。
本方は主として青年期腺病体質の改善,急性慢性中耳炎,急性慢性上顎洞化膿症,肥厚性鼻炎等に用いられ,また扁桃炎,衂血・肺浸潤,面疱,肺結核(増殖型のもの),神経衰弱,禿髪症等に応用される。

注3 耳が腫れ痛むとき用いる。初期のうちで,熱があるときは葛根湯を用いるが,それでも効果がないときや,やや長びいたときにはこの方がよい。
中耳炎,外耳道炎などにも応用される。

注4 この方の主治は原方の,“両耳腫痛するものを治す。腎経風熱あるなり。”(万病回春・耳病門)の如くであるが,耳病に限らず,解毒症体質の改善薬として広く応用される。清熱,和血,解毒作用あって,青年期に於ける腺病体質者に発する諸症に用いてよい。一般に皮膚浅黒く,光沢を帯び手足の裏に油汗多く,主として上焦に発せる鼻炎,扁桃腺炎,中耳炎,蓄膿症等に用いられる。脈腹共に緊張あるものである。
青年期腺病体質改善薬,急性中耳炎(加蝉退,蔓荊子各1.2g),急慢性上顎洞化膿症,肥厚性鼻炎,扁桃腺炎,鼻衂,肺浸潤初期,面疱にも用応される。

注5 急性穿孔性中耳炎,急性乳様突起炎(加蝉退・蔓荊子),急性鼻炎,慢性鼻カタル,上顎洞化膿症(加辛夷),衂血(加升麻,牡丹皮),アデノイド,扁桃肥大。

注6
体質的に浅黒く手足の裏に油汗多く脈腹好に緊張あるものを目標とする。急性中耳炎,蓄膿症,肥厚性鼻炎,扁桃腺炎,鼻血,にきび,肺結核初期,青年期腺病質改善に応用される。


『漢方処方応用の実際』 山田光胤著 南山堂刊
58.荊芥連翹湯(万病回春)
荊芥,連翹,防風,当帰,川芎,芍薬,柴胡,枳実,黄芩,梔子,白芷,桔梗各1.5, 甘草1.0

目標〕 耳が腫れ痛むとき用いる.初期のうちで,熱があるときは葛根湯を用いるが,それでも効果がないときや,やや長びいたときにはこの方がよい.

応用〕 中耳炎,外耳道炎 など.



『改訂版 漢方薬の選び方・使い方―健康保険が使える』 木下繁太郎著 土屋書店刊
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

症状 体質的に皮膚の色が浅黒く,手足の裏に油汗をかき,腹直筋が緊張して過敏なもので,蓄膿,慢性鼻炎,扁桃腺,にきび,があるようなものに用います。

①体質的に皮膚が浅黒い
②手足の裏に油汗をかきやすい。
③にきび、蓄膿,扁桃腺炎などを患ったことがある。

腹 腹直筋が緊張して過敏で、腹直筋を圧すとくすぐったがり,筋が硬くなったりします。
脈 緊脈。
舌 一定しません。

適応 蓄膿症,慢性鼻炎,慢性扁桃腺炎,にきび,肥厚性鼻炎,鼻血,肺血核,神経衰弱,禿髪症,各種の皮膚疾患。

【処方】当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、塾地黄(じゅくじおう)、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)、連翹(れんぎょう)、防風(ぼうふう)、薄荷葉(はっかよう)、荊芥(けいがい)、甘草(かんぞう)、枳殻(きこく) 各1.5g。柴胡2.0g。白芷(白芷、桔梗(ききょう) 各2.5g。

上記のような,独特の体質(解毒症体質・青年期の腺病体質)の人の体質改善薬で,こういう体質を示す人のいろいろの病気に応用できます。子供の頃には柴胡清肝湯(74頁)のきく体質で,青年期に達すると荊芥連翹湯が使えるようになることが多いようです。

健 シ・建・タ・ツ・虎(一貫堂方)


【一般用医薬品承認基準】
〔成分・分量〕
当帰1.5、芍薬1.5、川芎1.5、地黄1.5、黄連1.5、黄.1.5、黄柏1.5、山梔子1.5、連翹1.5、荊芥1.5、防風1.5、薄荷葉1.5、枳殻(実)1.5、甘草1-1.5、白.1.5-2.5、桔梗1.5-2.5、柴胡1.5-2.5(地黄、黄連、黄柏、薄荷葉のない場合も可)
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの次の諸症:
蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび



【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
〔地黄を含有する製剤に記載すること。〕
(3)´胃腸の弱い人。
〔地黄を含有しない製剤に記載すること。ただし、この場合(3)の項は記載しないこと。〕
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位
症 状
皮 膚
発疹・発赤、かゆみ
消化器
食欲不振、胃部不快感
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
間質性肺炎
階段を上ったり、.し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
偽アルドステロン症、
ミオパチー1)
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
144
肝機能障害
発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
3.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の.ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
〔地黄を含有する製剤に記載すること。〕
(3)´胃腸の弱い人。
145
〔地黄を含有しない製剤に記載すること。ただし、この場合(3)の項は記載しないこと。〕
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の.ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕






【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
  • 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
  • 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が褐色。

【その他】
  • 胃の不快感、食欲不振、吐き気、下痢
  • 発疹、発赤、かゆみ
  • 肝機能値の異常

六君子湯(りっくんしとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

六君子湯(りっくんしとう)
人参 白朮 茯苓 半夏各四・ 陳皮 生姜 大棗各二・ 甘草一・
 本方は四君子湯と二陳湯との合方で、胃腸虚弱にして四君子湯よりは胃内停水の多いものに用いる。心下部痞え・食欲不振・疲労し易く、貧血を呈し脈も腹も共に軟弱で、日常手足の冷え易い虚證のものを目標とする。
本方中の人参・白朮・茯苓・甘草は即ち四君子湯で、胃腸の機能を亢め、消化吸収をよくする。陳皮は人参と共に食欲を進め、半夏は白朮・茯苓と共に胃腸内の停水を去る。
以上の目的に従い本方は慢性胃腸カタル・胃弱症・病後の食欲不振・嘔吐・慢性腹膜炎・悪阻・小児虚弱者の感冒・神経衰弱・胃癌・胃潰瘍(止血後)等に応用される。

香砂六君子湯】(こうしゃりっくんしとう)
人参 朮 茯苓 半夏各三・ 陳皮 香附子各二・ 大棗 生姜各一・五 甘草 縮砂 藿香各一・
本方に香附子・砂仁・藿香を加えたもので、六君子湯の證で、特に心下痞塞を訴え、気鬱し、食欲不振・宿食を兼ね識ものに用いる。一般的にこの加減方が多く用いられる。

【柴芍六君子湯】(さいしゃくりっくんしとう)
六君子湯に柴胡 芍薬各三・を加える。
本方に柴胡・芍薬を加えたもので、六君子湯の症で、腹直筋の拘攣・或は腹痛のあるものに用いられる。


『漢方精撰百八方』
108.〔六君子湯〕(りっくんしとう)
〔出典〕薛立斉十六種

〔附方〕香砂六君子湯、柴芍六君子湯

〔処方〕人参、朮、茯苓、半夏 各3.0 陳皮、生姜、大棗 各2.0 甘草1.5

〔目標〕体質虚弱で、皮膚や筋肉の緊張が悪く、多くは痩せ型で貧血性の、いわゆる弛緩性体質の人。食欲がなく、体重が減り、食物が心下部につかえ、少し食べても胃が張り、吐きけや嘔吐が起こり、胃部の膨満感があり、大便が軟らかい。脈は弱く、腹部は軟弱で心下部や臍の附近に振水音をみとめる。

香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう):六君子湯を用いるような場合で、腹が痛んだり、気分が重く、憂鬱で精神不安があり、頭重、倦怠などがあり、疲れ易いものに用いる。

柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう):六君子湯を用いたいようなときで、胸脇苦満があり、神経質になっているものに用いる。

〔かんどころ〕虚弱体質ではあるが、余り痩せ衰えてはいない。食べ物を少しとると腹が張って食べられなくなる。腹部に心下部振水音がある。

〔応用〕胃アトニー症、胃下垂症、慢性胃腸カタル、神経症

〔治験〕11才の男児、わたしの甥である。  この子は、もともと身長は高いが、やせて顔色の青白い少年で、いつも家にこもって、本を読んだり、模型をいたずらしたりするばかりで、ほかの子供のように、戸外をとび歩いて遊ぶということがなかった。
食欲がなく、少し食事をとると、げぶげぶと吐きそうになるといって、母親がこばしに来た。  腹部を診ると、子供なのに、心下部の振水音が著明である。そこで、六君子湯を投与することにした。これが、昭和39年の5月初である。  それ以来、一日も欠かさず薬を飲ませた。すると、7月末、学校が夏休みになったので、久しぶりに遊びに来た甥を見て、わたしはすっかり驚いてしまった。からだは、がっちりして、顔は丸々と肥り、しかも赤々とした顔色になり、別人のように元気な子供になっていたからである。
  母親は欲が出て、もっともっと丈夫にするといい、その年の末まで薬を飲ませた。
山田光胤

漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
 7 裏証(りしょう)Ⅰ
虚弱な体質者で、消化機能が衰え、心下部の痞えを訴えるも の、また消化機能の衰退によって起こる各種の疾患に用いられる。建中湯類、裏証Ⅰ、 裏証Ⅱは、いずれも裏虚の場合に用いられるが、建中湯類は、特に中焦が虚したもの、裏証Ⅰは、特に消化機能が衰えたもの、裏証Ⅱは、新陳代謝機能が衰えた ものに用いられる。
裏証Ⅰの中で、柴胡桂枝湯加牡蠣茴香(さいこけいしとうかぼれいういきょう)・安中散(あんちゅうさん)は気の動揺があり、神経質の傾向を呈する。半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は、水の上逆による頭痛、嘔吐に用いる。
4 六君子湯(りっくんしとう)  (万病回春)
〔人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(茯苓)、半夏(はんげ)各四、陳皮(ちんぴ)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)各二、甘草(かんぞう)一〕
本方は、四君子湯に半夏、陳皮を加えたもので、四君子湯證よりもさらに胃内停水が強く、心下痞と四肢の厥冷を訴えるものに用いられる。また、 本方は消化機能をととのえる作用が強いため、虚証で貧血、疲労感、食欲不振、胃内停水、心下痞満、四肢の冷え、軟便または下痢便などを目標とする。ときと して浮腫、嘔吐、尿利減少を訴えることがある。また食後右側を下にして横になっていたがる傾向のあることもある。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、六君子湯證を呈するものが多い。
一 慢性胃カタル、胃下垂症、胃アトニー症、胃拡張症、胃潰瘍、胃癌、十二指腸潰瘍、慢性腹膜炎、腸カタルその他の消化器系疾患。
一 神経衰弱、神経症その他の神経系疾患。
一 そのほか、感冒、悪阻、心臓弁膜症など。
六君子湯の加減方
〔六君子湯に香附子(こうぶし)、縮砂(しゅくしゃ)、藿香(かっこう)各二を加えたもの〕
六君子湯證で、気うつし、心下部の痞塞感が強く、食物が停滞するため、食欲不振、腹満、腹痛を訴えるものを目標とする。
(2) 柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)  (本朝経験)
〔六君子湯に柴胡(さいこ)四、芍薬(しゃくやく)三を加えたもの〕
六君子湯證で、腹直筋の拘攣や胸脇苦満の状を呈するもの、あるいは腹痛を伴うものに用いられる。本方は、いちおう柴胡剤であるが、駆水剤(特に胃内停水を去る)である六君子湯の作用が主体であることからここにかかげた。
〔応用〕
六君子湯のところで示したような疾患に、柴芍六君子湯證を呈するものが多い。
その他
一 肝炎、膵臓炎その他の肝臓、膵臓、胆嚢の疾患。


《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
79.六君子湯(りっくんしとう) 和剤局方
人参4.0 白朮4.0 茯苓4.0 半夏4.0 陳皮2.0 大棗2.0 甘草1.0 乾生姜0.5
現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
貧血,冷え症で胃部に圧重感があり,軟便気味で疲れやしいもの。
平素から胃腸が虚弱で,しかも貧血気味で手足が冷えやすく,疲れやすくて胃部がたえず重苦しく,食欲が振わない胃腸無力症のものを対象に用いられる。したがって急性症状よりむしろ慢性に経過する前記消化器疾患に適し,人参湯,茯苓飲 などと同様に胃内停水が著明で,胃部振水音を証明し尿量減少の傾向があって水分の胃腸循環がよくないものに,連用させるとよい。本方を慢性胃腸カタルや胃腸無力症に用うる場合,貧血冷え症で軟便,泥状便が長びいたり,疲れやすくて食後すぐ,右を下側にして横になりたくなる傾向があるものによい。また乳児や小児の吐き下しに一般的に五苓散が適するが,吐物や便が消化不良であったり,胃腸機能が悪いものには五苓散よりも本方がよく奏効する。神経質な者や職業的に神経を酷使して,胃腸にストレスを与え,胃下垂,胃アトニー,胃神経症の傾向あるものに本方が適し,特に昼夜の別なく神経を酷使し,胃腸症状を訴えるドライバーに好評を得ている。手術を要しない胃潰瘍で,出血や潜血反応を認めないものに本方で奇効を得ることが少なくない。

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○体質が虚弱で,皮膚や筋肉の緊張が悪く,多く痩せ型の貧血性でいわゆる弛緩体質(無力性体質)の人が心下部(胃部)が痞え,食欲不振,痩削(体重減少)などを訴えるもの。
○疎註要験① 諸病の後で食が進まず,顔色悪く,痩せて皮膚が黄ばみ痰飲(水毒)の気みがあって,時として弱いしゃっくりをくり返したりからえずきするもの,ことに食事しようとすると,からえずきするものによい。四君子湯景の症に似て,更に消化力を打け,水毒を除く力が強いから,小児によく用いられる。
② 浮腫があって,手足がたるく,呼吸促迫し,疲れやすく,大便が下痢気味のものに,先ずこの方を用いるとよいとある。
○愚按口訣① 諸病誤治誤薬のとき,先ず消化機能を調えるため,本方を用いるとよい。
② 消化機能の衰えた人が急激に風寒に侵されたとき,補中益気湯などを用いず,本方を用いた方がよい。
③ 成人,小児をとわず,虚して(体力が低下していて)嘔吐,下痢するときは本方を先ず用いるとよい。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は四君子湯と二陳湯との合方で,胃腸虚弱にして四君子湯よりは胃内停水の多いものに用いる。 心下部痞え,食欲不振,疲労し易く,貧血を呈し脈も腹も共に軟弱で,日常手足の冷え易い虚証のものを目標とする。本方中の人参,白朮,茯苓,甘草は即ち四君子湯で,胃腸の機能を亢め,消化吸収をよくする。陳皮は人参と共に食欲を進め,半夏は白朮,茯苓と共に胃腸内の停水を去る。以上の目的に従い本方は慢性胃腸カタル,胃弱症,病後の食欲不振,嘔吐,慢性腹膜炎,悪阻,小児虚弱者の感冒,神経衰弱,胃癌,胃潰瘍(止血後)等に応用される。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 胃腸の弱い者で,胃内停水があり,脈腹ともに軟弱で,心下部痞塞感があり,食欲衰え,疲労しやすく,貧血して,日常手足冷えやすく,全体に虚証のものを目標とする。
 万病回春(補益門)
 脾胃虚弱,飲食少しく思ひ,或は久しく瘧痢を患ひ,若くは内熱を覚え,或は食飲化し難く,酸を作し,虚火に属するを治す。須らく炮姜を加えて其効甚だ速かなり。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は理中湯の変方にして中気を扶け,胃を開くの効あり,故に老人脾胃虚弱にして痰あり。飲食を思わず,或は大病後脾胃虚し,食味なき者に用ゆ。陳皮,半夏,胸中胃口の停飲を推し開くこと一層力ありて,四君子湯に比すれば,最も活用あり,千金方半夏湯の類数方あれども此方の平穏なるに如かず。

漢陰臆乗〉 百々 漢陰先生
 畢竟脾胃虚弱水湿を帯びるものを治す。予の治験とて別に単方を用ゆること少し。大病の死極まりたるものなど,真武,四逆の類を用いてなる程症はいかにも的当なれども,病人の元気至って虚し,附子の薬力に堪えず,薬煩するもの世にままにあるものなり。其時には此湯を与ふれば元気も引たてて,薬煩もせず,至ってらくなるものなり。

万病回春〉 龔 廷賢 先生
 脾胃虚弱,飲食少しく思ひ,或は久しく瘧痢を患ひ,若しくわ内熱を覚え,或は飲食化難く酸を作し,虚火に属するを治す。須らく炮姜を加えて其効甚だ速也。

医方口訣集〉 長沢 道寿先生
 気虚して痰有る者,脾胃衰弱して湿有る者之を主る。

牛山方考〉 香月 牛山先生
 脾胃虚弱にして痰飲を挟む者をなす。

経験筆記〉 津田 玄仙先生
 六君子湯は皆知っての如く甚だつかい道の多き方也。六君子湯は四君子湯と二陳湯の合方にて,元気虚弱にして痰ある症に用ひては正方の方也と知るべし。
○面色萎黄,脈微弱,手足のだるきは是脾胃の虚也。咳嗽痰涎は痰なり,故に六君子湯を用いたり。


※若しくわ内熱を覚え,→若しくは内熱を覚え,

2012年3月28日水曜日

麦門冬湯(ばくもんどうとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
麦門冬湯(ばくもんどうとう)
麦門冬一〇○・ 半夏 粳米各五・ 大棗三・ 人参 甘草各二・ 
本方は強壮・滋潤のある麦門冬・人参・粳米の外に、去痰・利尿の効ある半夏を配し、更に急迫を治する作用のある大棗と甘草とが伍しているから、大病後或 は慢性諸病・老人・虚人等で身体枯燥して、気上逆して咽喉不利するものを治する効がある。蓋し麦門冬・半夏と伍する時は、気の上逆を下す作用があるからで ある。
本方は主として気管支炎・肺炎等で既に解熱して後発作性に咳嗽が頻発し、顔面潮紅し喀痰の切れ難いもの、或はそのために音声の嘶嗄するも のに用い、急慢性咽喉炎で音声嘶嗄するもの、或は喉頭結核・肺結核にも使用することがある。また糖尿病で八味丸を用いる一歩手前に、本方を用いてよい場合 がある。もし此方を服して食欲減退するもの或は既に下痢の傾向のあるもの、もしくは喀痰が多くて切れ易いものには、本方を禁忌とする。身体枯燥のものに、 本方を使用すると、栄養血色潤沢となり、一時尿量の増加することがある。肺結核の喀血時に、本方に黄連・阿膠・地黄を加えて止血の目的に用い、また脳溢血 で脈洪大・上逆感のある者に、本方に石膏を加えて用いてよい場合がある。


漢方精撰百八方
62.〔方名〕麦門冬湯(ばくもんどうとう)

〔出典〕金匱要略

〔処方〕麦門冬10.0 半夏、粳米各5.0 大棗3.0 人参、甘草各2.0 

〔目標〕上気してのどに何かかかっている感じ。

〔かんどころ〕せきにしても、くしゃみにしても、しゃっくりにしても、下から、きゅっ、きゅっとつきあげてくるという点に眼をつける。

〔応用〕咽喉炎。百日咳。妊娠咳。アレルギー性鼻炎。しゃっくり。肺結核。気管支炎。

〔治験例〕
1.しゃっくり
一老医、脳軟化症にかかり、某病院に入院中。しゃっくりが出てとまらず、病院の医師がこもごも集まって手当をしたが、どうしてもとまらない。そこで、柿のへたを煎じて飲んだらよいだろうということになり、拙著「症候による漢方治療の実際」を買い求めて、よんだところ、呉茱萸湯がしゃっくりに効くとあり、また小承気湯や丁香柿蔕湯のきくこともあるというので、どれをのんでよいかに迷い、私に往診を乞うてきた。
私はこの患者を診察して、麦門冬湯を与えたが、これが奏効し、一服で、しゃっくりは半減し、二日で全治した。
なぜ麦門冬湯を用いたか。
この患者は、長く病床にいたため、栄養衰え、皮膚は枯燥していた。この枯燥は麦門冬湯を用いる目標である。舌も乾燥し、腹力も弱い。脈は大きいが、力に乏しい。
そこでこのしゃっくりを「大逆上気」の変形とみて、麦門冬湯を用いたのである。

2.くしゃみ
一婦人、妊娠中、くしゃみがやまない。アレルギー性のものと医師は診断したという。アレルギー性鼻炎には、葛根湯がよく効くので、これを用いたが効がない。そこで麦門冬湯を用いたところ、著効があり、たちまち、はげしいくしゃみがやんだ。  なぜ麦門冬湯を用いたか。  妊娠咳には、麦門冬湯で治るものが多い。そこで、くしゃみも、せきも「大逆上気」の変形で、同じものだと考えて、この方を用いたのである。  松原一閑斎は、麦門冬湯加石膏を中風で、気がのぼって、ふらつくものに用いている。
大塚敬節


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊

2 順気剤
順気剤は、各種の気の症状を呈する人に使われる。順気剤には、気の動揺 している場合に用いられる動的なものと、気のうっ滞している場合に用い られる静的なものとがある。静的なものは、体の一部に痞えや塞がりを感じるもので、この傾向が強くなるとノイローゼとなったり、自殺を考えたりする。動的 なものは、ヒステリーや神経衰弱症を訴えるが、この傾向が強くなると狂暴性をおびてくる。順気剤は単独で用いられる場合もあるが、半夏厚朴湯(はんげこう ぼくとう)などのように他の薬方と併用されるのもある。
順気剤の中で、半夏厚朴湯・梔子豉湯(しししとう)・香蘇散(こうそさん)は気のうっ滞に用いられ、柴胡加竜骨牡蠣湯・柴胡桂枝乾姜湯・桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は気の動揺が強いものに用いられ、釣藤散(ちょうとうさん)・甘麦大棗麦(かんばくたいそうとう)は気の動 揺と気のうっ滞をかねそなえたもので、麦門冬湯(ばくもんどうとう)は気の上逆による咳嗽を、小柴胡湯・加味逍遙散は、柴胡剤の項でのべたように潔癖症を 呈するものに用いられる。なおこのほか、駆瘀血剤の実証のもの、承気湯類(じょうきとうるい)などにも、精神不安を訴えるものがある。

6 麦門冬湯(ばくもんどうとう) (金匱要略)
〔麦門冬(ばくもんどう)十、半夏(はんげ)、粳米(こうべい)各五、大棗(たいそう)三、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)各二〕
本方は少陽病の虚証で、身体枯燥(湿潤光沢を失って痩削すること)し、気の上逆による痙攣性咳嗽に用いられる。したがって、顔面紅潮(のぼせ)、咽喉乾燥感、咽喉刺激感、咳嗽(顔を赤くして咳き込む、痰の切れは悪い)がつづいて声が枯れるなどを目標とする。
痩削(そうさく) やせこける。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、麦門冬湯証を呈するものが多い。
一 感冒、気管支炎、百日咳、肺炎、肺結核その他の呼吸器系疾患。
一 脳溢血、高血圧、動脈硬化症その他の循環器系疾患。
一 そのほか、糖尿病、喀血など。



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会 
62.麦門冬湯(ばくもんどうとう) 金匱要略
麦門冬10.0 半夏5.0 粳米5.0 大棗3.0 人参2.0 甘草2.0

(金匱要略)
○大逆上気,咽喉不利,止逆下気者,本方主之(肺痿)


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
こみあげてくるような強い咳をしてい顔が赤くなるもの。通常喀痰は少量でねばく且つ喀出困難である,あるいは のぼせて咽喉がかわき,咽喉に異物感があるもの。
本方は劇しく咳込んでいる顔が真赤になるような症状によく用いられるが,この場合,から咳か喀痰はあっても少量,喀出困難で,時には血痰を伴なうこともあるから,喀痰の多い小青竜湯適応症との区別は明らかである。また のぼせ,咽喉の異物感が認められるから,これらの症状がなく発作時に頭汗のある麻杏甘石湯適応症とも鑑別できる。半夏厚朴湯との鑑別はやや困難であるが半夏厚朴湯適応症は神経症状が著明な一方,のぼせ,咽喉のかわきなどの症状は認められない。難治の百日咳は本方に桔梗,石膏を加えて著効を得ることがある。身体の衰弱が甚だしく,本方を与えて劇しい発作はおさまったが,なお咳嗽が続く時は人参養栄湯を試みるとよい。本方適応症で食欲不振があれば小柴胡湯を合方する。本方を服用後食欲減退や胃痛,下痢する場合は不適で安中散,小柴胡湯,柴胡桂枝干姜湯,半夏瀉心湯などで治療し,小柴胡湯,半夏厚朴湯合方などへの転方を考慮すべきである。また浮腫を生ずる場合は五苓散で治療するとよい。喀血に本方と黄連解毒湯を合方して与えると,止血の効果がある。糖尿病でのぼせて咽喉がかわくものに,八味丸を用いる前にも応用することがあるが,この場合は喀嗽はなくてもよい。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
咳がひどくて発咳時顔面が紅潮し,痰は粘く喀出が困難であり,時に血滴が混入したり,咽喉や胸部に異物感があったり,のぼせや口渇の傾向にあるもの。
本方は虚弱者や衰弱と言うほどではないが,その傾向ご認められるものの,下気道(咽喉,気管,気管支)や肺胞などに炎症があると考えられる症候に適する。すなわち前記応用の目標の記載のとおり,粘い痰がのどにからんで息苦しく,咳込んで顔が赤くなり少量の粘いタンを喀出するものによい。本方が適するものは老人に多く、平素のぼせる傾向や半夏厚朴湯証に見る咽喉の異物感,あるいは胸部のふさがるような自覚があって,前述のような咳を頻発するものに繁用されている。また急性気管支炎や肺炎の解熱後あるいは結核,慢性気管支炎や喘息,百日咳,愛煙家や人ごみで咽腔刺激を受けて,咳発作が激しいものや,のどの痛み,声嗄れなどを訴えるものに本方がよく適応する。百日咳その他ひどい咳と痰が主施となるものには,本方にキキョウ・セツコウを加えると効果がある。また老人や虚弱児の感冒で微熱があって,頭痛,さむけがして汗ばみ,ひどい咳が出てタンが出にくいものに本方と桂枝湯を合方すればよい。本方の症状に似て咳やタンで苦しみ,衰弱しているものやその傾向のあるものは,人参養栄湯を考慮すればよい。この合方は慢性に経過するものを目安とし,本方と桂枝湯との合方は急性または亜急性が目標となる。
 ※セツコウ=セッコウ=石膏


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○大逆上気,咽喉不利というのが目標で,のぼせぎみで顔が上気して赤みがかり,急迫性の咳が出て,咳嗽するとき痰が切れにくく,顔を赤くして激しく咳きこみ,痰が切れると一応咳がおさまる。 (大逆上気)咽喉が乾燥していらいらと異物感を生じそのため声が嗄れる。
○下からつきあげる症状を伴うもので,咳ばかりでなく,しゃっくりなどにも用いられる。また上気による難聴,めまいなどするものによい。
○(医療手引草)「此方は虚火を下へ導き,大逆上気を治するともあり,または火逆上気を治するともあり,兎角潤をして気を下方へ行らすと見えたり」「時疫の熱が大体さめて後,余熱あって耳聞こえず,あるいはふらふらするというにすべて用いて調理するなり。世上の大補湯(十全大補湯)などの場合には 古方家は 専ら(麦門冬湯)用うるなり」とある。
○本方は痰が切れにくい場合にはよいが,誤って痰多くてよく切れるものに用いると,かえって喀痰の量が増えて症状が悪化することがあるから注意をする。


漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○痰がのどのおくにへばりついたようで発作性に強くせき込むものに用いる。いろいろの咳のとき薬をのんだが効がないといって来る患者にこの型がある。肺結核の患者にも,気管支炎の患者にみられる。咳の出ない時は半時間も一時間も全く出ないが,出はじめるとあとからあとからひっきりなしに出て顔が赤くなるほどせき込み,へどが出そうになる。場合によっては吐く,そして痰らしいものは出ない。このような咳が永く続いて声が枯れていることもある。これには麦門冬湯を与える。肺に大きな空洞があって,痰がしきりに出るもの,或は気管支拡張症などのため痰の喀出の多い声に麦門冬湯を与えると反って咳がひどくなり,痰の量も多くなり,夜も眠れないほど苦しむことがある。だから痰の多いものには,麦門冬湯はよろしくない。麦門冬湯には滋潤強壮の効があって,からだに潤をつける効があり,これに人参,粳米が協力してこの作用を強化し半夏は痰をとかして気ののぼるのを下す作用があるから,咽喉に潤をつけて痰をとかして咳嗽をしずめる。更に大棗と甘草は緩和剤で急迫をゆるめて咳嗽発作を止める力がある。○古訓医伝「麦門冬湯の証は咳もなく,涎沫も吐せず,下に力なく,逆上の強きにより,咽喉口舌,倶に乾燥して滋潤なく,口中より咽喉の辺まで粘液のあるように思われて,咽喉の心持あしき証なり」とあり,ただのどが乾いて,何んなく気持がわるく,しめりを欲するような場合にも用いる。この方は乳幼児より老年の人に用いる機会が多い。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
本方は強壮,滋潤のある麦門冬,人参,粳米の外に,去痰,利尿の効ある半夏を配し,更に急迫を治する作用のある大棗と甘草とが伍しているから,大病後,或は慢性諸病,老人,虚人等で身体枯燥して,気上逆して咽喉不利するものを治する効がある。蓋し麦門冬,半夏と伍する時は,気の上逆を下す作用があるからで ある。本方は主として気管支炎,肺炎等で既に解熱して後発作性に咳嗽が頻発し,顔面潮紅し,喀痰の切れ難いもの,或はそのために音声の嘶嗄するものに用い,急慢性咽喉炎で音声嘶嗄するもの,或は喉頭結核,肺結核にも使用することがある。また糖尿病で八味丸を用いる一歩手前に,本方を用いてよい場合 がある。もし此方を服して食欲減退するもの或は既に下痢の傾向のあるもの,もしくは喀痰が多くて切れ易いものには,本方を禁忌とする。身体枯燥のものに本方を使用すると,栄養血色潤沢となり,一時尿量の増加することがある。肺結核の喀血時に,本方に黄連,阿膠,地黄を加えて止血の目的に用い,また脳溢血 で脈洪大,上逆感のある者に,本方に石膏を加えて用いてよい場合がある。



漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
運用 大逆上気 咽喉不利
これは金匱要略咳嗽病の「大逆上気し咽喉不利せざるもの。逆を止め気を下す。麦門冬湯之を主る。」によっているが,非常にうまく麦門冬湯の適応証を表現している。大逆を火逆とする説もあるが大逆が宜く,大逆に対して小逆というのは傷寒論太陽病中編火逆の次の誤吐の条にある。逆とか小逆とかに対する大逆なら誤治によることを現わすものだが,此処方を掲げた金匱要略には誤治にはあまり書いてないし,肺痿咳嗽に対して火針等を加える事も考えられないから,火逆と読むのは大体が無理な話である。自然に気が逆したというなら気逆と書くのが普通だし,大いに逆したなら大気逆とでも書くべきだろうが頭項強痛などの例にも見られるように大いに気逆し上気したのを大逆上気と書いたものであろう。大逆上気とは気検甚しということで,之を臨床的には次のように応用する。

(劇しく咳込むもの) 例えば百日咳のようなもの。或は百日咳以外の風邪,肺結核,肺炎などでも劇しい咳が出るものに使う。顔を赤くして咳込むのが大逆上気である。この場合大抵は空咳であって痰はあまり無い,併かも咽喉不利だから咽に刺激感,異物感,狭扼感,乾燥感など要するに通利せぬ感を伴うことが多い。肺結核では劇しい空咳に伴って喀血するときに本方を頻用する。浅田流では地黄,黄連,阿膠を加えて使うが必ずしもそれには及ばない。本方だけで充分目的が果せる。浅田流では百日咳に本方に橘皮,竹茹を加えて使うが,矢張り本方だけでもよく効く,加味すればそれだけよく効くように思うが実際にはそうとは限らない。

(上気するもの) 咳がなくても構わない。例えば脳出血などでのぼせ感と咽喉部の麻痺による異常感を訴えるものに使うことがある。この場合瀉心湯,救逆散などと鑑別を要する。瀉心湯は実証であることと心下痞,便秘などがあることに着眼し,救逆湯はのぼせは同じだが,咽喉不利はないことに着眼する。

(口渇感) 咽喉不利を咽喉乾燥感により,糖尿病などで咽喉乾燥感が強く,水はあまり飲みたくはないが咽を湿すために水を飲まずにはいられないような場合に使う。上気があればなお更よいが無くても差支えない。先輩の口訣により本方の運用法を補っておこう。
和久田先生「竹葉石膏湯の証に似て煩渇の証なく,痰気肺部を犯し,咳嗽あれども痰出がたく,咽喉不利して声朗かならず,或は声唖て出ざるもの,其腹状は胸満して腹部上に逼り,気上衝して小腹力なきもの麦門冬湯の証也。此方や麦門冬を以て主薬として特に分量多し。燥きを潤し煩を解し,疼を去り,咳も止て逆気を低するの意見るべし。或日虚労咳嗽痰出でがたく若くは咳血衂血のもの本方証に随て地黄石膏を加ふ。若くは狂癇にして衝逆するもの石膏,黄連を加ふ。大逆な大に咳嗽気逆するなり。上気は気逆して上部にせまるなり。衝気或は気上衝とな意自ら異り,邪衝気は気上て胸をつくなり。上気は但逆気上部にのぼりあつまるなり。例に曰,上気面浮腫肩息云々,見つべし。咽喉不利とはのどぶえのかよいあしく音声出がたく,痰かはかず,きれがたきの類をいう」
(腹証奇覧翼二編下)

※竹茹=竹筎
※逼(せま)る ← 迫る


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は肺痿,咳唾,涎沫止まず,咽燥而渇する者に用るが的治なり。金匱に大逆上気と計りありては慢然なれども,蓋し肺痿(肺結核)にても頓嗽(百日咳)にても労嗽(慢性気管支炎)にても,妊娠,咳逆にても,大逆上気の意味あるところへ用れば大に効ある故,此の四字簡古にて深旨ありと見ゆ。



2012年3月21日水曜日

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさん;よっかんさんかちんぴはんげ) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
抑肝散加陳皮半夏
(よくかんさんかちんぴはんげ)
当帰 釣藤 川芎各三・ 朮 茯苓各四・ 柴胡二・ 甘草一・五 陳皮三・ 半夏五・
本方は四逆散の変方である抑肝散に陳皮・半夏を加えたものである。抑肝散は肝経の虚熱という虚證の小児が脳神経の刺戟症状を発したものを鎮静させる効があ り、左の脇腹が拘攣するのを目標とする。本方即ち陳皮・半夏を加えたものは転じて成人殊に中年以後の更年期前後に発して神経症状が著しく、全体に虚状を呈 し、脈腹共に軟弱で、腹直筋の緊張は触れず、ただ左の臍傍から心下部にかけて大動悸が湧くが如く太く手に応ずるものを目標として用いる。これは「肝木の虚 と痰火の盛」なる貌として、この腹状を呈し、心悸亢進・胸さわぎ・恐怖・頭重・のぼせ・眩暈・肩凝り・不眠・全身倦怠等の神経症状の伴うものに偉効を奏す ることがある。これは浅井南溟の口伝によるところである。
方中の釣藤鈎は鎮痙薬で、肝木を平にして手足の拘攣を治する効がある。当帰は肝血を潤し、川芎は肝血を疎通し、柴胡・甘草・釣藤と組んで肝気の亢ぶるのを緩解し、茯苓・白朮で胃中の水飲を消導し、陳皮・半夏で痰飲を去る。
以上の目標に従って本方は、神経衰弱・ヒステリー・婦人更年期障害に発する神経症・中風・夜啼・疲労症・四肢萎弱症・悪阻・小児の癇症等に応用される。


『《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会 
78.抑肝散加陳皮半夏(よっかんさんかちんぴはんげ) 本朝経験
当帰3.0 釣藤3.0 川芎3.0 朮4.0 茯苓4.0 柴胡2.0 甘草1.5 陳皮3.0 半夏5.0

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
本方は体力や抵抗力が乏しいと見受けられる者の,精神興奮,不安感,全身倦怠感などの神経症状を目安に応用されている。
本方は目標欄記載のごとく,いわゆる疳(かん)が高ぶる神経過敏を抑制する,漢方の代表的な精神神経安定剤と言えるもので,興奮,緊張過度,不安,恐怖などを緩和させる効果がある。すなわち小建中湯や半夏厚朴湯などが対象になるような体質者で,神経症状が著しく腹部動悸が亢進して,胸脇部に圧迫感があり,頭重,のぼせ,めまい,肩こり,不眠,全身倦怠感,心悸亢進,不安感,恐怖感などを伴うものに,鎮静剤として著効を奏することがある。したかって神経衰弱,ノイローゼ,ヒステリー,神経質など心因性精神病と言われているものに,応用される機会が多い。また更年期に初発しやすい神経症,躁鬱病などにもしばしば用いられる。類方との鑑別は
半夏厚朴湯> 頭重,肩こり,不眠,不安感などで本方証に類似するが,本方は肝機能が悪くて腹部動悸を呼めるに対し,半夏厚朴湯の消化機能が悪く,胸部や咽喉部に痞塞感を自覚する点で異なる。

桂枝加竜骨牡蛎湯> 心悸亢進,のぼせ,頭重,不眠,腹部動悸,倦怠感などの症候群が類似するが,本方適応症状には認められない性的(陰萎,性的ノイローゼ,遺精)症状を伴うので,本方と区別ができる。

柴胡加竜骨牡蛎湯> 桂枝加竜骨牡蛎湯に似て,さらに著しい症状を認めるとともに,体力も旺盛であるものを目安に用いられる。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
抑肝散・・・・・・不機嫌で怒りやすく,神経過敏で,せっかちになり,興奮して夜眠れない。小児では,わけもなく泣きわめき,喧嘩をしたり,落ちつきがない。これらはすべて肝気がたかぶる症状である。また筋肉の過緊張や痙攣にも用いられる。腹証は左の腹直筋が拘攣していることが多いが,必ずしもこれがなくてもよい。
勿誤薬室方函口訣「この方は四逆散の変方で,すべて肝部に属し,筋脈強急(筋肉がこわばっている)を治す。四逆散は腹の任脈通り(正中線)拘急(ひきつれる)し,胸脇の下に衝く者を主とす。此方は左腹拘急よりして四肢筋脈に攣急する者を主とす。此方を大人の半身不随に用いるは東郭の経験なり。半身不随ならびに不寝の症に此方を用ゆるは,心下より任脈通り攣急,動悸あり,心下に気あつまりて痞する気味あり。
医手を以て按ぜばさのみ見えねども,病人に問えば必ず痞えるという。逍遥散と此方とは二味を異にして其効同じからず,ここに着眼して用ゆべし」とある。
抑肝散加陳皮半夏・・・・・・抑肝散証が慢性に経過して虚証になり腹筋が軟弱無力となり,左の腹部大動脈の動悸がひどく亢進したものに用いる。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
本方は四逆散の変方である抑肝散に陳皮,半夏を加えたものである。抑肝散は肝経の虚熱という虚證の小児が脳神経の刺戟症状を発したものを鎮静させる効があり,左の脇腹が拘攣するのを目標とする。本方即ち陳皮,半夏を加えたものは転じて成人殊に中年以後の更年期前後に発して神経症状が著しく,全体に虚状を呈し,脈腹共に軟弱で,腹直筋の緊張は触れず,ただ左の臍傍から心下部にかけて大動悸が湧くが如く太く手に応ずるものを目標として用いる。これは「肝木の虚と痰火の盛」なる貌として,この腹状を呈し,心悸亢進,胸さわぎ,恐怖,頭重,のぼせ,眩暈,肩凝り,不眠,全身倦怠等の神経症状の伴うものに偉効を奏することがある。これは浅井南溟の口伝によるところである。
方中の釣藤鈎は鎮痙薬で,肝木を平にして手足の拘攣を治する効がある。当帰は肝血を潤し,川芎は肝血を疎通し,柴胡,甘草,釣藤と組んで肝気の亢ぶるのを緩解し,茯苓,白朮で胃中の水飲を消導し,陳皮,半夏で痰飲を去る。
以上の目標に従って本方は,神経衰弱,ヒステリー,婦人更年期障害に発する神経症,中風,夜啼,疲労症,四肢萎弱症,悪阻,小児の癇症等に応用される。
保嬰撮要(急驚風門)「肝経の虚熱,搐を発し,或は木土に乗じて嘔吐痰喘,腹張食少なく,唾臥不安なるものを治す」

勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は四逆散の変方にて,凡て肝部に属し,筋脈強急する者を治す。四逆散は腹中任脈通り拘急して,胸脇の下に衝く者を主とす。此方は大人半身不随に用ゆるは,東郭の経験なり,半身不随並びに不寝の証に此方を用ゆるは,心下より任脈通り攣急動悸あり,心下に気聚りて痞する気味あり,医手を以って按ぜばさのみ見えねども,病人に問へば必ず痞えると云ふ。又左脇下柔なれども,少しく筋急ある症ならば,怒気はなしやと問ふべし。若し怒気あらば此方効なしと云ふことなし。又逍遙散と此方とは二味を異にして,其の効用同じからず,此処に着眼して用ゆべし。

浅井腹診録〉 浅井 南溟先生
臍の左の辺りより心下までも,動気の盛なるは,肝木の虚に痰火の甚しき証,北山人まさに抑肝散に陳皮(中)半夏(大)を加ふべし,験を取ること数百人に及ぶ,一子に非ざれば伝ふること勿れ。


日本東洋医学会誌〉 第15巻 第3号
抑肝散について 大塚 敬節先生

抑肝散の腹証

抑肝散の方は,元来小児のために設けたもので,患児とその母とが,ともにこれをのむことになっているが,わが国では,これを大人にも用いている。
新増愚按口訣集をよむと,北山友松が妊娠中の婦人にこの方を用いて著効を得ている。中でも和田東郭は好んでこの方を用い,大人の半身不随にこの方を使用したのは,東郭が最初だと云われている。
そこで東郭がこの方について,どのような考え方をしてい然かを知る必要がある。
蕉窓方意解には,次のようにのべている。
「此薬も亦四逆散の変方にて腹形大抵四逆散と同様なれども,拘攣腹表に浮みたるを抑肝の標的とす。四逆散は拘攣腹底に沈むを標的とすべし。其上抑肝の方には,多怒,不眠,性急の症など甚しきを主症とするなり。多怒,不眠,性急などは,肝気熾盛にして肝血も亦随て損耗す。故に帰芍,肝血を潤し,芎藭肝血を疎通し,柴胡,釣藤,甘草,肝気をゆるむ。既に右の通り,肝気充極して上み胸脇に引上るゆへ,腸胃の水飲も下降せずして,皆上みへ引上る也。右疎肝,緩肝,潤肝の薬にて両脇心下和らぎ,彼水飲も亦下降し易き時節になるゆえ,朮,茯苓にて,小水へ消導する也。本方芍薬なし,甘草の分量も亦少し。按ずるに,此薬専ら肝気を潤し緩むるを以て主とす。故に余常に芍薬甘草湯を合てこれを用ゆ。」
ここで東郭がのべているように,抑肝散の腹証は,四逆散と同様で,腹直筋の拘攣があり,私の経験でも,腹表に浮んで腹直筋を触れるものが多いが,中には腹直筋の拘攣をみとめにくいものもある。
浅田宗伯も,目黒道琢の説を参酌して,次のようにのべている。
「此方は四逆散の変方にて,すべて肝部にぞくし,筋脉強急する者を治す。四逆散は腹中任脉通り拘急して,胸脇の下に衝く者を主とす。此方は左腹拘急よりして,四肢筋脉に攣急する者を主とす。此方を大人半身不随に用ゆるは東郭の経験なり。半身不随並に不寝の症に此方を用ゆるは,心下より任脉通り,攣急動悸あり,心下に気聚りて痞する気味あり。医手を以って按ぜばさのみ見えねども,病人に問えば,必ず痞すと云ふ。また左脇下柔かなれども,少し筋急ある症ならば,怒はなしやと問ふべし。もし怒気あらば,この方効なしと云ふことなし。」

抑肝散の証に2つの型があり,1つは緊張興奮型で,他の1つは弛緩沈鬱型である。この弛緩沈鬱型の患者の腹証は,腹部は全般的に弛緩し,僅に季肋下で腹直筋を軽くふれるか,全く腹直筋の緊張をみとめず,臍の左側から,みずおちにかけて動悸の亢進をみとめるものがある。この臍部から,みずおちにかけて強く動悸をふれる患者に,浅井南溟は抑肝散加陳皮半夏を用いて著効を得たといい,矢数道明博士も,これを追試して奇効を得たことを報告している。私も同様の治験をもっているが,このような患者に,陳皮半夏を加えずに,抑肝散だけを用いても効のあることを,最近私は経験したが,これは症例が少いので,他日まとめて報告することにし,今日は緊張興奮型のものだけをまとめてみた。これらの症例の腹証は第2表にみられる通りである。この内の第4例と第5例とは,緊張型と弛緩型の中間にあって,どちらとも,きめかねたが,その腹証を他のものと比較するためにここに入れておいた。
第4例だけに,胸部において動悸の亢進している点に注意してほしい。

抑肝散の加方
すでにのべたように,和田東郭は抑肝散に芍薬を加えて用いたが,津田積山,浅田宗伯等も芍薬を加えている。ところで,山田椿庭は,椿庭夜話の中で,抑肝散に芍薬を加えるのは,立方の趣旨に反するといい,これに羚羊角を加えている。また北山人と浅井南溟は,この方に陳皮半夏を加えて,特異の腹証のものに用いている。私はこの方に芍薬黄連を加え,或は芍薬厚朴を加えて用いる。

抑肝散の二つの型
抑肝散に2つの型がある。1つは緊張,興奮型で,他の1つは弛緩,沈鬱型であることについては,腹証のところで,ちよっとふれておいた。東郭は,緊張,興奮型に,抑肝散を用いたので,芍薬を加え,甘草を増量した。北山人や浅井南溟は,弛緩,沈鬱型に,この方を用いたので,芍薬を加えずに,陳皮,半夏を加えた。ところで,山田業精は,浅井南溟ならば抑肝散加陳皮半夏を用いたであろう患者に,抑肝散を用いて著効を得ている。私も,このひそみにならって,最近抑肝散を用いてみるに,やはり効顕がある。参考のために,山田業精の治験を,和漢医林新誌から引用してみよう。

その1。本郷真砂町志母谷氏は皇居御造営掛を勤む。其人1日気力大に衰弱し,但平臥を嗜むのみ。気宇鬱閉,食に味ひなく,二便利せず,夜中快寝せず,其脉弦,腹部軟弱にして微動あり。乃ち抑肝散を法の如く蜜丸に作りて与ふるに,霍然として治す。

その2。神田湊川町鍛冶職中川氏至て貧にして大に職務に勉励す。而して1日,其妻貧を厭ふにより離別を乞て,其家を去れり。爾後,其人気力漸々に衰へ,唯平臥するを嗜む。食味美ならず,頭痛,肩背強急,二便不利,診するに,其脉弦,其腹軟,両脇下微脹,臍上大に動あり,前方を与て治す。

その3。駒込東片町茶商,川口弥十,年二十四,なり,腰以下力なく歩行し難く,終日坐するのみ。大便微溏,小便赤渋,飲食美ならず,夜中安眠しがたく,只夢みるのみ。診するに,其脉沈弦,腹中軟弱にして両肋下拘急せり。乃ち前方を与えて治す。

その4。本郷2丁目菓子商,青木政吉,年六十許,1日四支痿弱,起居転側自由ならず,遺尿,失便,診するに,脉弦にして腹部軟弱,心下拘急,一身温にして言語平の如く,気分大に変せず。前方を蜜煉にして服さしむ。頓に治す。

その5。本郷西竹町,車夫伊藤,次男幸蔵と云へる児齢四年なり。1日右手の5指とも悉く縦緩して自ら屈することを得ず,而して唇吻左方に曲り,食飲減少,気宇閉て快然ならず。其脉弦にして遅なり。其右手を検するに氷冷恰も死体を撫でるが如し。余以て肝蔵鬱閉の所為となし,前方を与ふるに,追日快く,遂に左耳より膿汁淋出して瘳えたり。これらの治験は,いづれも,弛緩,沈鬱型で,その脉は弦であるが,腹部は軟弱で,ただ僅に季肋下において,腹筋の拘急をみるだけで,緊張興奮型の腹型とは異なるものである。

自家経験

第2表は,抑肝散を緊張興奮型の患者に用いた例で,第3例以外はすべて,抑肝散加芍薬黄連を用い,第3例は,抑肝散加芍薬厚朴を用いた。表によって説明する。
1) 約半ヶ年前に脳出血のため右半身に麻痺が起り,50日ほど某病院に入院した。発病以来,非常に気むづかしくなり,不眠を訴えるようになった。便秘気味である。初診時の血圧は124~86。左右の腹直筋が硬く突っばっている。右が殊にひどい。臍下の正中線に,軽く棒状の抵抗をふれる。
気むづかしいという症状,腹証によって,抑肝散加芍薬黄連を用いる。
服薬2ヵ月目位から,麻痺はほとんど回復し,安眠もできるようになった。ただ,便秘がつづくので,3週間目より,大黄3.0を加えた。

2) この患者は,時々癲癇様の痙攣発作があり,真正癲癇を疑って,某大学で診察をうけたが,脳波の検査では,癲癇ではないと診断せられた。不眠があって,食欲がない。のぼせと,頭重がある。月経は不順である。左右の腹直筋が図のように緊張している。のほせと不眠を目標に,黄連解毒湯を用いたところ,ねむれるようになったが,毎日,じんましんが出るようになり,頭痛,食欲不振がつづき,時々嘔吐を起すようになった。そして,服薬4週間目に,嘔吐のあとで,痙攣を起して,意識が消失した。そこで,不眠,嘔吐,痙攣,食欲不振という症状と腹証を目標にして,抑肝散加芍薬黄連にしたところ,1回の痙攣発作を起しただけで,他の症状も軽快した。

3) チック病で,のどをしきりに鳴らしたり,顔をゆがめたりする。それにいらいらして落つきがない。食欲が少い。腹直筋を季肋下で,少し硬くふれる。抑肝散加芍薬厚朴とする。これで漸次軽快,4ヵ月でほぼ全治。

4) 白内障と慢性腎炎がある。あごがだるいというのが主訴である。食事は1椀がやっとである。それに右側腹が坐位から立位に移る時に痛み,急に立ち上れない。気分が重い。腹直筋の緊張はなく,臍部で動悸をふれる。右の肩から肩胛間部がいたむ。抑肝散加芍薬黄連とする。10日の服薬で,あこのだるいのが治り,背や側腹の疼痛も1ヵ月あまりで消えた。

5) この患者は副鼻腔炎で手術をうけたことがあるが,約1ヵ年ほど前から,まばたきが多くなり,医師から結膜炎と診断せられて,治療をうけている中に,右の眼瞼がたれ下って,開かなくなった。右の肩がひどくこる。便秘の傾向がある。
腹診をしてみると,胸脇苦満があり,右の腹直筋が緊張している。
眼瞼を無理に押し開けようとすると,痙攣する。
抑肝散加芍薬黄連を用いる。
これをのむと,大便の通じがよくなり,何となく気分がよい。30日目頃から,少しづつ眼が開く。くびのつるのも軽快。疲れると,眼がしぶくなって,眼をつむりたくなるが,その他はよい。右季肋下の緊張がとれた。
10ヵ月ほど服薬して,全治。

6) 主訴は,何となく,自分に自信がないというだけである。それに時々幻聴がある。その他一切つかまえどころがない。腹診では,右季肋下がやや硬い。
抑肝散加芍薬黄連を用いる。
2週間分で,幻聴も消え,自分らしくなったと休薬。

7) この患者は,メニエール病とのふれこみで来院したが,めまい,耳鳴,嘔吐,足冷,発作性の多汗があり,脉は結滞し,便秘があった。腹部は膨満,緊張して,殊に下腹が膨満していた。
私はこれに抑肝散加芍薬黄連を用いたが,これでめまい,耳鳴,嘔吐がよくなり,便通も毎日あるようになり,1ヵ月足らずで全治した。

8) この患者は,物が二重にも,三重にも見えて,眼をあけていると,ひどいめまいと悪心が来て歩けない。左眼をつむってていると,どうやら歩ける。不眠がある。左の眼球が強直状になって,廻旋しない。某大学では,脳に何か異常を起しているらしいから,手術をしてみようと云われたが,手術を欲せず,当院に治を乞うた。
腹診してみるに,左右の腹直筋が緊張している。
抑肝散加芍薬黄連を用いる。漸々に軽快。全治まで10ヵ月あまりを要したが,手術をせず,漢方薬だけで,眼球が正常に運動するようになった。

9) 約3年前より健康を害し,高血圧があり,腰痛を訴えるようになり,最近は,下腹にも鈍痛があり,腰がひどく冷える。口渇,肩こり,頻尿があり,気分がいらつく。
腹診すると,胸脇苦満があり,臍下には,あまり力がない。大便は1日1行。ウロビリノーゲン陽性。
私はこれに抑肝散加芍薬黄連を用いたが,雨のふる日だけ肩がこる。いらつかなくなり,元気が出た。朝早く眼がさめるようになり,肉がしまり,血圧も正常となった。

10) 真性癩癇で,3歳より10年間,アレビアチンやルミナールをのみつづけた。ところが,1ヵ年ほど前から,これらの薬をのんでも効なく,毎日発作が起る。
発作時には,踊るような奇妙な恰好をする。それに幻聴がある。この幻聴は,専門の某医が,根本から治る薬だといって調合してくれた薬をのみはじめてから起るようになった。そのため,夜も,幻聴におびやかされて眠らない。しかし発作は少い。
腹部は,板のように硬い。診察中も,奇声を発する。便秘がある。
抑肝散加芍薬黄連を用いる。
これをのむと,便通が快通し,食がすすむようになった。幻聴も少くなった。1ヵ月ほどたつと,肉づきがよくなり,発作もなく落付いたが,ひどい口渇を訴えるので,白虎加人参湯とする。効がない。
そればかりか,ひどく興奮する。そこで,柴胡加竜骨牡蠣湯加芍薬去大黄を用いる。
口渇は依然として甚しく,幻聴がまた多く,奇声を発して,踊るような奇妙な恰好をする,夜間に,痙攣発作が頻発する。
そこで,柴胡桂枝湯中の芍薬を増量して与えたが,依然として変化がない。
そこで,また抑肝散加芍薬黄連にもどしたところ,急激に,発作が減じ,幻聴がなくなり,落付いている。

11) この患者は,23歳の時に,突然に意識が消失して,言語を発することが出来なくなり,それから1ヵ月に,2,3回癩癇様の発作を繰返すようになった。しかし発作のない時は,平素とかわらなかった。ところが,昭和36年の1月にまた意識が消失して,某病院に入院して,頭蓋骨を切開してもらった。
現在もやはり,1ヵ月15,6回の発作と,左半身不随があり,言語障害もある。安眠する。便秘の傾向。



【一般用漢方製剤承認基準】

抑肝散
〔成分・分量〕
当帰3、釣藤鈎3、川芎3、白朮4(蒼朮も可)、茯苓4、柴胡2-5、甘草1.5
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:
神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症注)
《備考》
注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】





抑肝散加芍薬黄連
〔成分・分量〕
当帰5.5、釣藤鈎1.5、川芎2.7、白朮5.3(蒼朮も可)、茯苓6.5、柴胡2、甘草0.6、芍薬4、黄連0.3
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度以上をめやすとして、神経のたかぶりが強く、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:
神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症注)
《備考》
注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】


抑肝散加陳皮半夏
〔成分・分量〕
当帰3、釣藤鈎3、川芎3、白朮4(蒼朮も可)、茯苓4、柴胡2-5、甘草1.5、陳皮3、半夏5
〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:
神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症注)、歯ぎしり
《備考》
注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】




抑肝散
【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1. 次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
2. 服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位
症 状
皮 膚
発疹・発赤、かゆみ
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
間質性肺炎
階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
偽アルドステロン症、
ミオパチー1)
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
肝機能障害
発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1
g以上)含有する製剤に記載すること。〕
3. 1ヵ月位(小児夜泣きに服用する場合には1週間位)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
4. 長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状及び身体症状のことである。
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1. 次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2. 次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)
含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3. 服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4. 直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状及び身体症状のことである。



抑肝散加陳皮半夏
【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位
症 状
皮 膚
発疹・発赤、かゆみ
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
3.1ヵ月位(小児夜泣きに服用する場合には1週間位)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸の弱い人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
〔効能又は効果に関連する注意として、効能又は効果の項目に続けて以下を記載すること。〕
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。







※搐(ちく):ひきつる、痙攣(けいれん)する


※浅井 南溟 (あさい なんめい)
1734-1781 江戸時代中期の医師。
享保19年11月18日生まれ。浅井図南の長男。
京都の人。朝廷につかえ,安永9年父の跡をついで尾張名古屋藩の藩医。
脈法に通じ,診脈の祖と称された。
天明元年10月13日死去。48歳。
名は正路(まさみち)。
字は由卿。
通称は周碩。

津田積山  津田玄仙
天明から文化年間にかけて、上総(干葉県)の片田舎に名医と崇敬された医家がいた。それが津田玄仙である。玄仙は元文二年(一七三七)岩代国(福島県)桑折村に生まれた。

玄仙は名を兼詮、号を積山と称し、また玄僊とも書く。後に田村家に入り、田村玄仙といった。津田氏は代々奥州白河藩松平越中守の待医で、奥羽の間に名が 聞こえていたが、父津田玄琳はなぜか辞職して白河を去り、岩代国桑折村に隠退した。玄仙は医業を家庭で学び、やや年長になってから水戸に遊学し、医業を芦 田松意に学び、さらに京都で饗庭道庵を師匠にして、その秘伝を受け、久しい間京都大坂に居た。後に江戸に来て開業したが、その治療は好評で、また医術を学 ぼうとする人も多かった。それが如何なる理由なのか、上総の片すみの馬籠(現在は木更津市に編入)に引っ込んだ。

この地に享保時代から、田村という医家があった。玄仙が馬籠に来て医業の盛名が上がっている頃、田村家に後継者がなくなり、玄仙が養嗣として迎えられ た。先人の記載に、玄仙は長身肥大で、音声は鐘の鳴るようであり、威厳があってしかも温容で、誠意をもって人に接したので、誰も敬服、心酔するばかりで あった。また、病家への往診にはいつも牛にのって出かけ、書物を牛の角に引っかけて読みながら行ったという。

この馬籠時代に、玄仙は次々と名著を残す。『療治茶談』『療治経験筆記』などがそれである。とりわけ『茶談』は日常の臨床経験による貴重な口訳集録で、 刊本で広くゆきわたったので、患者は門前市をなし、門人も百有余人あって、五十余州にわたったという。玄仙は文化六年(一八○九)没した。行年七十三歳。 墓は現在も子孫の田村家の家敷内にある。

玄仙の師、饗庭道庵の経歴はよくわかっていないが、専ら臨床経験によって処方を運用しようとする医家であったと考えられている。玄仙はその医風を継いで、補中益気湯をはじめとして、実際の臨床に役立つ医術をみがき、広めていった。

2012年3月20日火曜日

人参養栄湯(にんじんようえいとう) の 効能・効果 と 副作用

《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
57.人参養栄湯(にんじんようえいとう) 和剤局方

地黄4.0 当帰4.0 朮4.0 茯苓4.0 桂枝2.5 芍薬2.0 遠志2.0 陳皮2.0 黄耆1.5 人参3.0 甘草1.0 五味子1.0


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
やせて血色悪く,微熱,悪寒,咳嗽がとれずに倦怠感が著しく,食欲不振で精神不安,不眠,盗汗 などもあり,便秘気味のもの。
本方は黄耆建中湯の変方と見なされる処方で,病後で衰弱した場合によく用いられ,特に肺結核に応用されることが多い。即ち小柴胡湯補中益気湯を用いても微熱,悪寒,咳嗽がとれず,更に食欲が減退するものに奏効する。また頑固な咳嗽が続き,衰弱のため麻黄剤は使えないが麦門冬湯半夏厚朴湯,柴胡剤などでも効果がない場合本方を試みるとよい。本方適応症状には便秘の傾傾が認められるが,排泄される便は軟いのが普通である。従って衰弱したものや虚弱な老人の便秘にも応用される。本方と柴胡桂枝干姜湯との鑑別は,柴胡桂枝干姜湯適応症は神経症状が更に強く,胸内苦悶,胸部あるいは腹部に動悸を訴え,下痢の傾向があるから区別出来る。
従って本方服用後頭痛,のぼせを訴えるときは柴胡桂枝干姜湯を,胃痛,腹痛を訴えるときは小建中湯を考慮すべきである。


漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
本方は呼吸器疾患と消化器疾患が併発し,熱症状と胃腸症状ならびに神経症状などを伴う点で,あたかも柴胡桂枝湯の適応症状に似ているが,まったく異質なもので本方が適応するものは,応用の目標らんに記載のごとく,病勢が進んで体力が消耗し,それがために消耗熱や咳嗽,神経症状などを発現するものが対象になる。とくに本方投与の投象は病巣が進展する結核症に多く,内的再感染の傾向やシューブの疑いがあるなどのもので発熱しているが,一般解熱剤の投与に一考を要し,しかも激しい咳嗽と粘稠な痰を喀出し,消化障害があって食思が振るわず,ネアセ,精神不安など重篤な複合症候あるものによく適応する。

類似症状の鑑別 本方は以上のとおり病勢が発揚性で消耗熱,咳,タン,胃腸症状を目安にする。

柴胡桂枝干姜湯 臨床的にはまったく本方と似ているが,さらに衰弱が著しく内臓機能も全般的に悪く,消化不良性の下痢便,口渇,不眠,胸部の動悸や腹部の動悸が亢進して,本方以上に神経症状が著明な者によい。

十全大補湯 本方症状に似ているが病勢がややおちついて,熱,咳,喀痰などが緩和となり衰弱の徴候が主となるものを目安に用いる。

補中益湯気 病勢が停止し回復の傾向あるものの体力を増強し,自然治癒能力を高度に発揮させる薬方で,衰弱,貧血,疲労倦怠,無気力,食欲不振などを対象に応用する。


後世要方解説〉 矢数 道明先生
○和剤局方「積労虚損,四肢沈滞,骨肉酸疼,吸々として少気,行動喘啜,小腹拘急,腰背強痛,心虚驚悸,咽乾唇燥,飲食味ひ無く陽陰衰弱,悲憂惨戚,多臥少起,久しき者は積年,急なる者は百日,漸く痩削に至る。五臓気竭き,振復すべきこと難きを治す。又肺と大腸と倶に虚し,咳嗽下利,嘔吐,痰涎を治す。」
○医方口訣集「気血虚して心室衰ふる者之を主る」
即ち本方は補病困憊の極で,元気衰え,貧血を来し,津液枯涸して皮膚栄養が衰え,悪液質を呈し,五体の活気が悉く衰えたものを賦活しようとするものである。主治に咳嗽下利とあるが,咳嗽下痢のある場合は注意を要する。


当荘庵家方口解〉 矢数 道明先生
十全大補湯の症に似て,どこやら少し熱あるによし。心虚したる云ふ目的に用ひる也。心虚痰鬱の症にも用ひて効あることあり,虚人によし。


経記筆記〉 津田 玄仙先生
人参養栄湯を諸病に用ゆる目的は,第1毛髪随全,第2顔色無沢,第3忽々喜忘,第4只痰不食,第5心悸不眠,第6周身枯痰,第7爪枯筋涸 以上を人参養栄湯の七症と云ふなり。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方は気血両虚を主とすれども十補湯に比すれば遠志,橘皮,五味子ありて脾肺を維持するの力を優なり。三因には肺与大腸倶虚を目的にて下利喘乏に用てあり,万病とも此意味のある処に用ゆべし又傷寒壊病に先輩炙甘草湯と此方を使ひ分てあり熟考すべし 又虚労熱有て咳し下痢する者に用ゆ。


【一般用医薬品承認基準】
人参養栄湯
〔成分・分量〕
人参3、当帰4、芍薬2-4、地黄4、白朮4(蒼朮も可)、茯苓4、桂皮2-2.5、黄耆1.5-2.5、陳皮(橘皮も可)2-2.5、遠志1-2、五味子1-1.5、甘草1-1.5

〔用法・用量〕


〔効能・効果〕
体力虚弱なものの次の諸症:
病後・術後などの体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血


【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人
(6)次の症状のある人。
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位
症 状
皮 膚
発疹・発赤、かゆみ
消化器
胃部不快感
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称
症 状
偽アルドステロン症、ミオパチー1)
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
肝機能障害
発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
〔1)は、1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
539
3.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬
剤師又は登録販売者に相談すること
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
〔成分及び分量に関連する注意として,成分及び分量の項目に続けて以下を記載すること.〕
本剤の服用により,糖尿病の検査値に影響を及ぼすことがある.
〔1日最大配合量がオンジとして1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること.〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくても
よい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(4)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人
(6)次の症状のある人。
540
むくみ
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(7)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

2012年2月25日土曜日

人参湯(にんじんとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

人参湯(にんじんとう)
 人参 甘草 朮 乾姜各三・〇

 別名を理中湯と云い、胃腸の機能を整調するの作用がある。
  一般に本方證の患者は、胃腸虚弱にして、血色があく、顔に生気がなく、舌は湿潤して苔なく、尿は稀薄にして、尿量多く、手足は冷え易い。また往々希薄な唾 液が口に溜まり、大便は軟便もしくは下痢の傾向である。また屡々嘔吐・目眩・頭重・胃痛等を訴える。脈は遅弱或は弦細のものが多い。腹診するに、腹部は一 体に膨満して軟弱で、胃内停水を證明する者と、腹壁が菲薄で堅く、腹直筋を板の如くに触れるものとがある。
 本方は人参・白朮・乾姜・甘草の四味 からなり、四味共同して胃の機能を亢め、胃内停水を去り、血行を良くする効がある。従って急性慢性の胃腸カタル、胃アトニー症・胃拡張・悪阻等に用い、時 に畏縮腎で、顔面蒼白・浮腫・小便稀薄で尿量が多く、大便下痢の傾向のものに用い、また小児の自家中毒の予防及び治療に用いて屡々著効を得る。時として貧 血の傾向ある弛緩性出血に、前記の目標を参考にして用いる。
 本方に桂枝を加えて、甘草の量を増して、桂枝人参湯と名付け、人参湯の證の如くにして表證があって発熱するものに用いる。
 また人参湯に附子を加えて、附子理中湯と名付け、人参湯證にして、手足冷・悪寒・脈微弱のものに用いる。


漢方精撰百八方
103.〔人参湯〕(にんじんとう)

〔出典〕傷寒論

104.(附方)〔附子理中湯〕(ぶしりちゅうとう)(直指方)

〔処方〕人参、甘草、朮、乾姜 各3.0

〔目標〕
 からだが虚弱で、血色の悪い、生気にとぼしい人。多くは痩せた人である。腹痛、胃痛、時に胸痛、めまい、頭重感などを訴え、下痢や嘔吐することがある。
 手足が冷え、舌が湿って苔はなく、尿は水のように薄く量も回数も多い。また、往々うすいツバが口の中にたまる。
 脈は緊張が弱く、あるいは沈遅、あるいは弦である。腹部は軟弱無力で、心下部に振水音をみとめるか、あるいは反対に、痩せているので腹部の肉付きが少なく、しかも、腹壁が板のように固く張っている。
 からだや手足の冷えが甚だしく、四肢が痛んだり、尿がことに近くて、脈が沈遅のものは、附子理中湯がよい。

〔かんどころ〕
全体から受ける印象に生気がない。尿が水様透明で量が多い。口の中にうすいツバがたまる。腹証。これらは、本方を用いる目標として、重要な順にあげたものである。

〔応用〕
胃下垂症、胃アトニー症、胃カタル、小児自家中毒症、妊娠悪阻、肋間神経痛、急性吐瀉病、神経症等

〔治験〕
77才 男子 2年ばかり前、脈が結代したので、ある病院にかかった。そのとき、血圧が170程あり、脳軟化症のけがあるといわれたという。それ以来、味覚がなくなり、足に力がなくて歩きにくくなった。
 最近よだれが出て困る。大便が秘結するので漢方薬店でハブ草に大黄を加えたものをすすめられたが、それをのむと、便通の前にひどく腹が痛むという。
 患者はやせて顔色が悪い。手が冷たく、夜寝てから3回ぐらい小便にゆくという。脈は沈小で弱、舌は白く湿っているが、苔はない。血圧は126/70  腹部は、腹壁薄く、ぺしゃんこで、しかも板のように固く、両側の腹直筋が上の方で変急していて、心下部には振水音がある。  たずねると、よだれは薄いものだと答えたので、附子理中湯を与えた。すると、1週間後には、よだれが殆ど止まり、心下部の振水音が聞こえなくなった。しかし、その他の症状があるので、まだ治療をつづけている。  

附子理中湯 人参、肝臓、朮、乾姜 各3.0 附子1.0
山田光胤



漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
8 裏証(りしょう)Ⅱ
 
 虚弱体質者で、裏に寒があり、新陳代謝機能の衰退して起こる各種の疾患に用いられるもので、附子(ぶし)、乾姜(かんきょう)、人参によって、陰証体質者を温補し、活力を与えるものである。
 
 各薬方の説明
 
 1 人参湯(にんじんとう)  (傷寒論、金匱要略)
 〔人参(にんじん)、朮(じゅつ)、甘草(かんぞう)、乾姜(かんきょう)各三〕
  本方は、理中湯(りちゅうとう)とも呼ばれ、太陰病で胃部の虚寒と胃内停水のあるものを治す。貧血性で疲れやすく、冷え症、頭痛、めまい、嘔 吐、喀血、心下痞、胃痛、腹痛、身体疼痛、浮腫、下痢(水様便または水様性泥状便)、食欲不振(または食べるとながく胃にもたれる)、尿は希薄で量が多い などを目標とする。本方の服用によって、浮腫が現われてくることがあるが、つづけて服用すれば消失する。五苓散(ごれいさん)を服用すれば、はやく治る。 本方を慢性病に使用するときは丸薬を用いる。
 〔応用〕
 つぎに示すような疾患に、人参湯證を呈するものが多い。
 一 胃酸過多症、胃アトニー症、胃下垂症、胃カタル、胃拡張症、胃潰瘍、大腸炎その他の胃腸系疾患。
 一 萎縮腎その他の泌尿器系疾患。
 一 心臓弁膜症、狭心症その他の循環器系疾患。
 一 肋間神経痛その他の神経系疾患。
 一 肺結核、気管支喘息、感冒その他の呼吸器系疾患。
 一 吐血、喀血、腸出血、痔出血、子宮出血などの各種出血。
 一 そのほか、悪阻、肋膜炎、糖尿病など。
 
 2 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)  (傷寒論)
 〔人参湯に桂枝四を加えたもの〕
 人参湯證で、表証があり、裏が虚し(特に胃部)表熱裏寒を呈するもの、特に動悸、気の上衝、急迫の状などが激しいものに用いられる。発熱、発汗、頭痛、心下痞、心下痛、心下悸、四肢倦怠、足の冷え、水様性下痢などを目標とする。
 〔応用〕
 人参湯のところで示したような疾患に、桂枝人参湯證を呈するものが多い。
 その他
 一 偏頭痛、常習性頭痛など。
 
 3 附子理中湯(ぶしりちゅうとう)
 〔人参湯に附子○・五を加えたもの〕
 本方は、人参湯の加味方で、人参湯證で悪寒や四肢の厥冷を訴えるものである。四肢の疼痛、排尿頻数、精神不安(不眠、神経過敏)などがはなはだしくなることを目標とする。
 〔応用〕
 人参湯のところで示したような疾患に、附子理中湯證を呈するものが多い。
 その他
 一 ノイローゼ、神経衰弱その他の精神、神経系疾患。
 



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会 
56.人参湯(にんじんとう) 傷寒論
 人参3.0 甘草3.0 朮3.0 乾姜2~3.0

(傷寒論)
○霍乱,頭痛,発熱,身疼痛,熱多欲飲水者,五苓散主之,寒多不用水者,本方主之(霍乱)
○大病差後,喜唾久不了々,胸上有寒,当以丸薬温之,宜本方 (差後)

(金匱要略)
○胸痺,心中痞気,気結在胸,胸満,脇下逆搶心,本方主之 (胸痺)


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
貧血冷え症で胃部の重圧感や,時に胃痛を自覚し,あるいは頭重,めまい,悪心,嘔吐などを伴い,軟便または下痢の傾向のあるもの。
 アトニー性体質や内臓下垂の虚弱な体質に多く見られる胃腸の緊張感や蠕動運動が弱く,それがために応用の目標欄記載の症状を現わす消化器疾患に用いる。すなわち栄養や容ぼうとも不良で,自覚的には四肢の末端や腰部に冷感を覚え,たえず心窩部が重苦しくあるいは膨満感やつかえる感じがあって,軟便か下痢気味で平素から食事量が少ないと訴えるいわゆる胃のアトニー症に好適の処方である。通常こうした胃腸症状のあるものには,大柴胡湯,小柴胡湯,半夏瀉心湯証に見られる舌苔を認めるが,本方にはほとんどと言ってよいくらい舌苔は見当らない。また患者は胃部のひどいつかえを訴えるが,触診上心窩部は 軟弱なものが多く,胃部拍水音を証明する。本方証の心下痞巧は,人参,干姜が対象になる自覚症状と考え現れる。人参湯に最も類似する六君子湯は症候群が全く似ているが,具体的には本方よりさらに胃部の重圧感が著明で,他覚的にも心窩部の抵抗を認めるものを対象にする。茯苓飲は人参湯や六君子湯が適応するような症候群があって,これら二方が適する体質よりやや丈夫で,胃部がつかえて著明な膨満感あることが目安となる。平胃散は茯苓飲の症状に似て,さらに丈夫な体質が応用の目標となる。以上の四処方はいずれも胃腸病を対象にするが,体格や体質,内臓緊張力の程度の差によって選別投与し,これら条件の,そろったものからあえて序列をつけるなれば,平胃酸,茯苓飲,六君子湯,人参湯と言った順位になると考えられる。


漢方診療30年〉 大塚 敬節先生
○人参湯は1名を理中湯という。その脈は沈弱または沈遅のものが多いが沈弦,浮大のこともある。しかしいずれの場合も底力がないのを特徴とする。その腹は軟弱無力で振水音を証明する場合と腹壁が板のように硬い場合とある。
○人参湯の証には食欲の不振または食べるといつまでも胸にもたれる傾向がある。胃痛や嘔吐のあることもある。冷え症で,尿量が多い。下痢をすることもあるが,下痢をしないこともある。口にうすい水が上ってきたり,のみこめないようなうすいつばが口にたまることもある。これらの症状は古人の言にしたがえば,裏に寒があるためであるから人参湯で,この裏寒を温めてやるとよくなる。
○人参湯を数回のんでいるうちに浮腫の現われることがある。これはよい徴候であるが,この浮腫を早く去ろうと思えば五苓散を与えるとよい。2~3日の服用でよくなる。
○人参湯に附子を加えたものを附子理中湯という。人参湯証で裏寒の甚しいものに用いる。
桂枝人参湯は人参湯の証に似ていて,動悸がしたり,体表に熱のあったりするものに用いる。

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○元来が虚弱体質の人あるいは衰弱により,体力が低下した人の腹痛,あるいは胸痛に用いる。血色が悪く,生気が乏しく,疲れやすく,多くは痩せた人である。腹痛は主に上腹部,胃部におこり,時として下痢,嘔吐,下血などのあることもある。特徴として,手足が冷え,舌が湿って苔がなく,尿が無色透明で水のように薄く,量も回数も多い。また往々うすい唾液が口の中に溜ることがある。脈は緊張が弱く,沈遅(沈んでいて拍動数が少くて遅い)あるいは沈弦(弓のつるを張ったように細くて異様に緊張している)である。腹部は軟弱無力で心下部に振水音をみとめるものと,痩せた肉づきの少ない薄い腹壁が,反って板のように固くなっている場合とがある。

○先哲の口訣
(医療手引草) 中焦虚弱(中焦の気,すなわち消化力が弱く)で呑酸するものは理中湯加呉茱萸がよい。
(方読弁解) 涎沫(よだれつば)をしきりに吐くのは,脾気(胃の消化力)が弱くて,これを収納できないからである。これには六君子湯加益智がよいが,虚寒(衰弱して新陳代謝が衰え,体が冷えているもの)の甚だしいものは理中湯がよい。
(医療手引草) 下痢して顔色が蒼黒く,たびたび冷薬を用いてよきいに下痢するものは理中湯を陽いる。
(老医口訣) ひどく空腹を感じて食物を食べたいと思うが,多くを食べることができないものは,俗にチカガツエといい,人参湯が効く。もし飢えて食物を貪り,多食して止まぬものは甘麦大棗湯がよい。
(方輿輗) 黄胖で下血止まぬもの(黄胖は貧血して動悸,息切れする病気)
(医療手引草) 胃弱で消化がわるく気逆上して吐血,衂血するものは理中湯加木香がよい。
(先哲医話) 荻野台州「酒のみの吐血は,胃中の畜血(うっ血)で三黄瀉心湯がよいが,もしそれでも止血しないのは脾血なので,理中湯がよい」「子宮出血の軽いものは当帰煎がよい。重みものは理中湯,最も激しいものは附子を兼ねて牛肉を食べると一層よい」
(古家方則) 大便通のたびに脱肛したり,歩行すると脱肛ものは人参湯を煉薬にして連用するとよい。又消化力が弱くて便秘するものには,下剤を用いるより,人参湯がよいとも書いてある。また白帯下で色がうすく,水のように漏れ下るものによい。
(医療手引草) 咳嗽で熱い湯をのむとしばらく止むようなものは冷嗽で理中湯加五味子がよい。また口腔の瘡で冷薬をのんで癒らないものは,中焦の気(胃の消化力)足らず,理中湯を用いるとよい。甚しいものは附子か桂枝を加えてすすってのむとよい。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 別名を理中湯と云い,胃腸の機能を整調するの作用がある。一般に本方證の患者は胃腸虚弱にして,血色が悪く,顔に生気がなく,活は湿潤して苔なく,尿は稀薄にして尿量多く,手足協冷え易い,また往々稀薄な唾液が口に溜り,大便は軟便もしくは下痢の傾向である。また屢々嘔吐,目眩,頭重,胃痛等を訴える。脈は遅弱或は弦細のものが多い。腹診するに,腹部は一体に膨満して軟弱で胃内停水を証明する者と,腹壁が菲薄で堅く,腹直筋を板の如くに触れるものとがある。本方は人参,白朮,乾姜,甘草の四味からなり,四味共同して胃の機能を亢め,胃内停水を去り,血行をよくする効がある。従って急性慢性の胃腸カタル,胃アトニー症,胃拡張,悪阻等に用い,時に萎縮腎で顔面蒼白,浮腫,小便稀薄で尿量が多く,大便下痢の傾向のものに用い,また小児の自家中毒の予防及び治療に用いて屢々著効を得る。時として貧血の傾向ある弛緩出血に前記の目標を参考にして用いる。本方に桂枝を加えて,甘草の量を増して,桂枝人参湯と名ずけ,人参湯の証の如くにして表証があって発熱するものに用いる。また人参湯に附子を加えて,附子理中湯と名付け,人参湯証にして手足冷,悪寒,脈微弱のものに用いる。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 体質は虚証で筋肉は弛緩し,貧血性で疲れやすい。おもな訴えは,疲労しやすく,胃腸の症状,胸痛のどれかがある。胃腸症状は心下痞え,下痢,胃痛,嘔吐のこともある。下痢は水様便または泥状便で,腹痛はない。唾液分泌過多を訴えるものもある。あるいは身体疼痛,浮腫,頭重,眩暈,不眠,小便自利,腹部冷感,喀血,吐血,腸出血,のうちいずれかを伴うものである。脈は軟弱で遅く,腹証は腹壁一体に膨満するもの,あるいは軟弱のものもある。または薄く緊張するもの,腹直筋が板のように触れるものもあり,胃内停水を証明することが多い。



漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
 運用 1. 胃腸のアトニー症状
 虚証の体質で貧血性,冷え性,疲労しやすく,胃症状としては食欲不振,胃部が痞える感じ或は重苦しい感じ,時には鈍痛,腸症状として水様便又はそれに近い泥状便の下痢を起し易い。脉は沈んで弱いことが多く,腹部も腹壁が軟かく,胃部も軟かいのが普通だが自覚的に痞える感じが強い時には胃部が薄く比較的強く緊張していることがある。しかし押すと深部には力がない。胃部を押すと気持がよいという者もあり,極端な例では胃部を押すと他部に於ける症状が軽快することすらある。しばしば拍水音を認め,患者は腹が冷えると訴えるものがある。足が冷え,小便が近くて量が多い。なお疲労性を伴い,頭重感を訴えるものがある。胃アトニ,胃下垂,胃腸カタル,急性慢性腸カタル,胃腸性神経衰弱,肺結核,などで右の所見があるときに頻用する。発熱を伴うときには症状が劇しく,「霍乱,頭痛,発熱,身疼痛,熱多く,水を飲まんと欲するものは五苓散之を主る。寒多きは水を用ひず,理中丸之を主る。」(傷寒論霍乱病)とて吐瀉頭痛身疼痛を起すに至る。胃腸アトニー症状に対して本方と類証鑑別すべきは
 桂枝加芍薬湯,小建中湯は胃腸アトニー状態だが,寒や停水はない。真武湯も虚寒停水症状があるが動揺性で人参湯は停滞性である。虚は同等,停水は真武湯に著しく,寒は人参湯に著しい。例えば真武湯は小便不利し,人参湯は自利する。甘草瀉心湯は下利,心下痞硬のときは症状としては共通するが,甘草瀉心湯は腹鳴があり,脉も人参湯ほど弱くなく下利も泥状便。

 運用 2. 虚寒性の胸痛
 虚寒性は無熱であるが発熱しても熱感が伴わず手足も冷え症で貧血に傾き,脉も弱いことで判定する。こういう状態に於て前胸部側胸部を問わず任意の場所が痛むもの,但し咳などは殆ど伴わないときに使う。「胸痺,心中痞す,留気結ばれて胸に在り,胸満し,脇下より心に逆槍す」(金匱要略胸痺)痺は知覚麻痺,疼痛を意味する。心中が痞える感じは留気結ぼれて胸に在るためだと説明されている。病理的には水が寒によって凝結し,停滞すると解釈すると水分の代謝障害と局所的貧血があって起る知覚障害と推定される。そよために胸痛や知覚障害が起るのであろう。脇下より心下に逆槍すとは右側の肋骨弓下部から左上方に狙って槍で刺されるような劇痛との意だが,必ずしも左右を問わなくてもよい。これにより肋間神経痛,肋膜炎による側胸痛などに本方を使う機会がある。また逆槍が肩まで突抜けると考えれば肩胛上膊部の麻痺,疼痛になるから,40肩,50腕,及び各種の病に際しての同部疼痛麻痺にも使い得るものである。事実,荒木性次氏も私も使った経験があり,幕末の岑少翁先生は腕をひっきりなしに風車のように速く振廻す奇病に際し心下部を押えるとその不随意運動が止るのによって本方を使ったが,肩胛関節に関する所より見ればその方からの説明も下し得られよう。

 運用 3. 唾の多いもの
 「大病差後喜唾 久しく 了々たらざるは,胸上に寒あり,当に丸薬を以て之を温むべし」
 (傷寒論差後労復篇)
 胸中の寒や胃中冷のときにはしばしば涎沫や唾液分泌過多を伴うもので,人参湯の場合は乾姜がそれに与って奏功する。甘草乾姜湯に涎沫があることを思うべきだ。臨床的には唾液分泌過多症,小児のよだれ多きもの。悪阻で生唾が多く出るもの。大人でも唾が口にたまり,話すときに泡を飛ばすというような人。蛔虫で唾が多いことも度々ある。なぜ人参湯にせずに理中丸を用いるかは検討を要する問題だが,恐らくは胸痺の如く急を要しないから湯液にして吸収の迅速なることを期待する必要がないばかりか,人参の苦味,乾姜の辛味などが胸になずんで呑みにくいから丸薬として用いる方が一層適切である。丸薬を以て温むべしとは,煎剤よりも丸薬が除々に溶解して乾姜が直接に胃腸粘膜を刺戟した方が局所の温熱刺戟としては目的にかなうであろう。殊に吸収が除々であるから,急速に吸収されて他部に影響を与えることの望ましくない大病差後の状態に於ては益々丸薬の合理性が肯かれる。霍乱に丸薬を使うのは急性症という点で,この考え方と矛盾するが,下痢嘔吐の劇症でしかも虚寒だから湯液を用いて反応が強く症状が劇化するおそれがあったり,嘔吐で湯薬を飲んでも吐いてしまうおそれがあるので殊更に丸薬を用いたと解釈しておこう。私は戦前と現在は虚労や虚寒証の慢性病には好んで丸薬を使用して所期の効を得ている。

 運用 4. 虚寒性の出血
 恐らくは乾姜が主で,人参にもそ英作用があると思うが,私は虚寒証の喀血,吐血,腸出血等に人参湯を用いて奏効した経験を持っている。その際,喀血,吐血の柏葉湯や下血の桃花湯は虚寒証は共通するが,停水症状がないので人参湯と区別する。

 運用 5. その他
 浮腫に使う,蓋し停水症状に著眼したもので,他の多くの浮腫が小便不利なのに対して人参湯が自利の点が特長的である。貧血性で萎縮腎などの如く夜間や冷えると余計に悪化するときに用いる。
 心悸亢進に使う。虚寒証の体質で苓桂朮甘湯の如く頭部にまで迫らず,心下痞して小便自利するものによい。
例えば心臓弁膜症,胃腸性神経衰弱症などの神経性心悸亢進など。方後の加減方をみると臍上動悸や悸があるのに着眼したのである。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此の方は胸痺(狭生症様疾患)の虚証を治する方なれども,理中丸を湯と為すの意にて,中寒,霍乱すべて太陰吐利の症に用ひて宜し。厥冷の者には局方に従て附子を加ふべし。朮附と伍するときは附子湯,真武湯の意にて内湿を駆るの効あり。四逆湯とは其の意稍や異なり,四逆湯は即ち下痢清穀を以て第一の目的とす。此方は吐利を目的とするなり。


漢方と漢薬〉 第5巻 第2号 
人参湯について  大塚 敬節先生

 人参湯に関する古人の論説,治験
 人参湯は古来広く応用された薬方であるから,古人のこれに関する論説は頗る多い。左の引用は我邦徳川時代の諸家の説を主としたものであるが,難波抱節の類聚方集成に千金方以下痘証宝筏に至る支那人の論議が15条列記してある英でその中12条を併せて採録する。

1.古方節議に曰く
 理中丸及湯 按ずるに此方夏月外風冷に感じ内冷物に傷られ停滞して化せず,嘔逆泄瀉脉沈細或は伏する者は太陰に属して是れ霍乱の症也。裏寒する故食滞りて化せず。故に乾姜を用ひて内を温め邪を散ず。参朮甘草湯を扶けて気を益す。甘辛を滞らず燥からざるなり。此方本外寒邪に感じ内冷物に傷られ,霍乱をなす者の為に設けり。后世活して温補の総司とする也。此方内外の邪を理する方にて,理の字と補の字とちがいあり。理中湯もとより温補の剤なれども,仲景霍乱に用ひられたは外風寒の邪,内冷食の邪,内外の邪を理するために建立したる方也。理は治と同く内外の邪を治むる合点にて指出て補中の意にてはなし。然れども薬は至極の補薬也。后人附子を加えて附子理中湯と名つく。手足厥冷する者の主方とす。手足厥冷は四逆湯甚だ勝れり。急に温むる時,前にも云通り白朮の緩き物反て邪魔になることあり。されども附子理中湯補の重剤と云ふものにて,立方の本意は格別の法と心得べし。扨又霍乱と云ふものは風寒暑湿飲食生冷の邪,交雑りて一時に吐瀉霍乱をなす。表に甚しき時は発熱悪寒し,裏に甚しき時は吐瀉して腹中大に痛む。或は転筋厥冷して冷汗出づ。暑甚しき時は大に渇して引飲して己まず,病因同じからず。故に治方も亦各々異なり。惟其因を詳にすべし。一概に誤り混ずべからず。熱多く水を飲んと欲する者は飲熱也。五苓散を以て其命熱両解すべし。若し水を飲むことを欲せざる者は是れ中寒する也。理中湯を以て其中を温むべし。

2.衆方規矩大成に曰く
 理中湯 寒気五蔵に中りて口くひつめ音いです,手足こはりすくむを治す。兼て胃脘に痰を停め冷気刺すが如く痛み,及び臓毒下冷く泄痢腹はり大便或は黄或は白く或は黒或は清穀あるを治す。

3.医療手引草に曰く
 直中太陰の症,胸膈満,手足冷,臍上痛み,清穀下痢して渇せず,是れ内冷物に傷られ,此症を致す,理中湯によろし。○傷寒誤て之を下し,始て結胸の症を覚ゆ。急に理中湯を与へよ。○腹満時に減じ,之を按じて痛まざる者は虚とす。理中湯之を温む。○汗下の后,関上の脉遅緩にして吐する者は胃寒とす,理中湯之を主る。○中気虚弱にして呑酸る者は理中湯に呉茱萸を加ふ。○口瘡冷薬を服して愈ざる者は中焦の気足らず,虚火汎上制するなし,理中湯を用ゆ。○十有五歳,熱甚しく知に発熱し夕に醒め,咽乾,腹微痛,起れば則ち眩暈し,心腹壅滞食せず,脉弦細濇なるものは,理中湯之を主る。
○下痢,身躯疼痛するは理中湯或は四逆湯。○痢,血色紫黯数々冷薬を服し,下る所愈々多きは理中湯。○理中湯に木香を加へ,胃虚して食化すること能はず,其気検上して吐衂衂血することもあり。かくの如き気剤を用て治することあり。○咳嗽熱湯を呻って暫く止む者は冷嗽なり,理中湯に五味子を加ふ。

4.老医口訣に曰く
 飢えて食を欲し,却って多食すること能はざる者,俗に ちえがつえ と云ふ。世医以て積の致す所とす。人参湯効あり。○反胃に絶粒さして,米煎などを飲しめ,理中湯 大半夏湯,温脾湯の類に宜し。

5.長沙腹診考に曰く
 予郷にありし時,一老母霍乱を患ふ。胸中痺して息すること能はず,人参湯を与て治す。

6.麻疹方訣に曰く
 疹出で自利止まざる証,気虚に属する者は理中丸之を主る。

7.方極に曰く
 理中湯,心下痞鞕して小便不利或は急痛或は胸中痺する者を治す。

8.袖珍方に曰く
 医方小乗に云ふ,涼薬過服して中焦英虚火上逆し口舌赤破,皮なき如く,咽喉痛をなす者は,理中湯加附子或は肉桂。○昆山方に云ふ,水腫諸薬応ぜざる者は附子理中湯之を主る。

9.類聚方広義に曰く
 産后,続て下痢を得,乾嘔して食せず,心下痞鞕し,腹痛小便不利する者,諸病久しく愈へず,心下痞鞕,乾嘔食せず,時々腹痛,大便濡瀉,微腫等の症を見す者,老人寒暑に層る毎に下痢,腹中冷痛し瀝々として声あり小便不禁,心下痞鞕,乾嘔する者は倶に難治となす,人参湯に宜し。

10.方輿輗に曰く
 理中湯,舌の患,寒冷の剤にて治せず,大便実せざる者によろし。○理中湯,黄胖,下血止まざる者を治す。○理中湯,自利に二義あり,下剤をも用ひずして自ら下る者を自利と云,又おぼえ無く下るをも自利と云,一種飲食すれば即ち痛て下るもの有り,方書に此れを脾泄と云へり。これも自利と其治方遠からずして内寒に属するの証なり。さて仲景氏の人に教えるに脈症を以てす。この条の如き自利渇せずの四字を以て内寒を明す。此れを后医の丁寧に臓腑有当を煩しく説くに比すれば,何等の要捷ぞ,何の簡易ぞ。○理中湯加猪胆汁湯,小児嘔吐止まず,或は大便溏泄時に煩して目翻し手搐するの状ある者此方大に奇効あり。

11.先哲医話に曰く
 荻野台州曰く,酒客の吐血は胃中の蓄血に属す。三黄瀉心湯によろし。若し止まざる者は脾血に属す。理中湯によろし。又曰く,崩漏(子宮出血)軽き者は当帰煎によろし。重き者は理中湯,其最も劇しき者は附子を加へ,兼ねて牛肉を餌食すれば更に佳なり。

12.方櫝弁解に曰く
 涎沫を吐すこと頻りに地に満つ。これ脾気怯弱に因て収摂することあたわず,六君子湯に益知を加ふ。虚寒甚しきもの理中湯によし。

13.水腫加言に曰く
 人参湯,虚腫,心下痞,下利,脉沈微或は白膿を下す或は水玉の如き者を治す。

14.向方弁に曰く
 金匱甘姜苓朮湯,理中湯と分量同じからずと雖も,而れども特に人参を去って茯苓を加ふるの異のみ。故に世々温然混用して疑はず。然れどもその実理中は中焦を理するの功あって,下焦を治するの能なし。甘姜苓朮は能く下焦を治して中焦に及ばず。何を以って之を言ふか。経に曰く,理中は中焦を理す,其利は下焦に在り。又曰く,大病差へて后,喜唾久しく了々たらず,胸上寒あり,当に丸薬を以って之を温むべし,理中丸に宜しと。知る,理中は中焦を理するを。更に胸脾に人参湯を用ゆるあり,亦胃陽虚乏して寒飲膈に在って胸痺するを治するの義なり。其の人参湯と名づけ,理中丸と名づく。意胃陽を門にするや明かなり。甘姜苓朮湯の主治に曰く腰中冷,いわく小便自利,曰く病下焦に属すと,竝に下焦陽虚の候なり。而して飲食故の如しと言ふ,則ち中焦に関せざるを知る可し。方薬分量,甘草白朮二両を用ひ,乾姜茯苓則ち之を倍す。知る下焦を理するの功厚し,而し仲中焦を理するの功薄し。

15.續建珠録に曰く
 一婦人,胸痛を患ふること1,2年,発すれば則ち食す識こと能はず,食すれば咽に下らず,手足微厥,心下痞鞕し,之を按ずるに石の如く脉沈結す,乃ち人参湯を与ふ。之を服すること数旬にして諸証漸く退き胸痛全く愈ゆ。

16.勿誤薬室方函口訣に曰く
 此の方(人参湯)は胸脾の虚症を治するの方なれども理中丸を湯となすの意にて中寒,霍乱すべて太陰吐利の症に用ひて宜し。厥冷の者には局方に従て附子を加ふべし。朮附と伍するときは附子湯,真武湯の意にて内湿を駆るの効あり。四逆湯は即ち下痢清穀を以て第一の目的とす。此方の行く処は吐利を以て目的とするなり。

17.橘窓書影に曰く
 竜土組屋敷,太田生女,従来痔疾を患ひ脱肛止まず,之に灸する数十壮,忽ち発熱衂血を発し,心下痞鞕して嘔吐下痢す。一医寒涼剤を以て之を攻めて増劇す。余理中湯を与へて漸く愈ゆ。一医其の薬の緩を攻む。余答て曰く,痞に虚実あり,邪気痞をなす,宜しく疎剤を用ゆべし,若し胃中空虚,客気衝逆して痞を為す者之を攻むれば害あり,古方瀉后膈痞に理中湯を用ひ又理中湯を以て吐血を治す。洵に故あるなり。

18.温知医談,第4号,山田業広曰く
 一婦人平素肥満にして腹膨張すること角觝漢(すもうとり)の如し。疫を患ふ。初起は何方を用ひたるや知らず,追々日を引くゆえ,医大承気湯七,八貼づつ用ゆるに便利せず,因て更に硝黄を倍すれども十余日を経て利せず,漸々食減じ容子あしきとて余を迎ふ。診するに舌上黄苔あれども乾燥せず,脈沈微なり,腹満すれども按じて痛まず。これを問ふに腹張平素より微しく大なるを積ゆと云ふ位なり。脈証の容子大邪巳に去り。胃気衰憊したるなり。胃実にて結糞のあるにはあらずと鑑定したれば先づ試に真武湯を与ふるに少しも障ることなし。一日夜間急に手足微冷汗出づ。これ温補の足らざるゆへならんと考へ,附子理中湯の参附を倍し与ふるに,漸く回陽し少しづつ食気も出づ。前方用ふること二十余日最早苦むところなく,全快に近きに大便尚便ぜず,便気あらば定て結糞にて苦悶すべし。灌腸法にても用ひざれば通じましなと言ひたるに,一日なんの苦痛もなくすらすらと快利して全快せり。大便通ぜざること凡三十七八日なり。先年同藩士に大便不利のときに喜て紫円を用ひしものあり,ある時例に仍て五分を用るに利せず,翌日一匁を用るに尚利せず,いらって日々二匁三匁四匁五匁に至るに便は利せずして煩悶甚しく遂に死せることあり。其証も具らざるに,加程の劇剤を容易に用るは畏るべく戒むべきの甚しきなり。(中略)余三十年前友人監田揚庵の父修三翁附子理中湯を用ひて一諸候の便秘を治したることを伝聞したけれども,倉卒に聴過して心にも留めざりしが、頃日前策を草するに臨て往時の事を思ひ出し,監田氏に其詳なることを聞かんと欲して問ひ合せしに,書面を以て贈りたれば其文のままを此に載て参商に供う。
 高槻候永井弾州年五十余,癇癖家にして,常に治を家厳修三翁に託す。一日別に患ふる所あり。修三をして薬せしむ。数十日にして愈えず。時に柴田氏(麹町に住せり)候家小児の為に出入す。候性急,其荏苒日を延くを倦み柴田氏に請ふ。柴田氏雑治験なし。加ふるに便秘病を以てす。又多紀茞庭先生に治を請ふ。多紀氏修三等と議し、六磨湯及び承気硝費の剤を用ひ至らざる所なし。而して遂に一行の便を得ず。候又医を更へんことを欲し,重臣山藤助之進なる者を以て再び修三に請ふ。修三固辞し且曰く,且今の考按予恐くは衆医に容れられず,蓋し衆医の見る所と氷炭合せず,却て其孤疑を惹かんと。翌日候の侍医瀬川淳庵をして治を修三に懇請す。修三いわく,衆医の処方皆な寒下の剤にして不可なるに非ず,只恐くは其投ずる所太過にして胃腸衰耗し,機化運転を失ふに外ならず,宜しく先づ参附温熱の剤を用ひて,胃腸を鼓舞せば或は前日服する所の薬気頓に効験を奏するを得へしと衆医果して惑う。修三意を決して附子理中丸を進む。未だ一剤を尽さず,水瀉五六行あり,気宇爽快諸証従て減じ数日にして全癒す。

19.聖剤発蘊に曰く
 人参湯 胸状丸くして肉をもち大がかりにて大腹までぼってりとして鳩尾の下に痞鞕大きくしっかりと有て,其外は何もなくやはらかなり,毒動する時は心下につきかけ痛て急にせりつめる者なり。此証小便不利すると雖も小腹に毒を蓄ことは少し。大腹へ飲をもち痞鞕す識者故へ心下痞鞕を治すれば小便自ら利する也。保嬰金鏡録に云く,泄瀉青白,腹痛,腸鳴,酸水を嘔吐し乳養を思はざるを治すと,是れ此方の腹状にして前証を発すること大人小児ともに時々あることなり。故に記して以て后用に具す。又下血を患ひ諸薬効なき者に此腹状あり。此方を用れば奇験あり。痔疾下血亦然り。又口舌瘡を生じ赤く爛れる者間々此方の証あり。世医清涼の剤をいかほど与へても治せざるものなり。又此腹状にて大便通ぜず,平日心下痛て苦悩し いかほど下剤を服しても治せざることあり。此方を与ふれば大便快利し,腹中緩みて痛を忘る者なり。是を以って知るべし。汗吐下我より為す者に非ずして彼より来ることを,是れ其の規矩縄墨を正しくして方を指揮すれば,下剤に非ずして下り汗剤に非ずして吐し,是れより其の宜しきに随て毒去る。何ぞ我より汗吐下の三方を定めて心力を尽すことhせんや。

21.傷寒六書に曰く
 誤つ太陰を下して結胸項強するには大陥胸丸,一法として頻りに理中丸を与ふ。

22.三因方に曰く
 症者飲食過度によって胃を傷り,或は胃虚して消化する能はず,翻嘔吐逆を致す。物気と上衝して胃口に蹙(せま)り決裂して傷る所,其色鮮紅を吐出し,心痛絞痛,自汗自ら流る,名けて傷胃吐血と曰ふ。理中湯よく傷胃吐血の者を止む。其功最も中脘を理するを以って,陰陽を分利し,血脉を安定し,方証広し。局方の如きは但吐血の証を出でず。学者当に自ら之を知るべし。或は只乾姜甘草湯を煮て之を飲むも亦妙なり。

23.医方選要に曰く
 理中湯は五臓寒に中りて,口噤失音,四肢強直すると治す。兼ねて胃脘に停痰し,冷気刺痛するを治す。

24.衛生宝鑑補遺に曰く
 仲景理中湯,傷寒の陰証,寒毒下痢,臍下寒へ,腹脹満,大便或は黄或は白或は青黄或は清穀あり,及び寒蛔上りて膈に入り蛔を吐するを治す。此胃寒にして実寒にあらず。

25.婦人良方に曰く
 人参理中湯は産后陽気虚弱にして小腹痛をなし,或は脾胃虚弱にして飲食を思ふこと少く,或は後後(大便のことなり)を去ること度無く,或は嘔吐腹痛し或は飲食化し難く,胸膈利せざる者を治す。

26.直指附遺に曰く
 理中湯は柔痙,厥冷自汗するを治す。

27.聖清総録に曰く
 小児躽(身ヲ曲ムコト)啼,脾胃風冷に傷られ,心下虚痞,腹中疼痛,胸脇逆満するを治す。○又理中湯,風腹に入り,心腹 痛,庵逆悪心,或は時に嘔吐し,膈寒通ぜざるを治す。

28.赤水玄珠に曰く
 理中湯は小児吐瀉の后,脾胃虚弱,四肢漸く冷へ,或は面に浮気あり。四肢虚腫して,眼合して開かざるを治す。

29.小青嚢に曰く
 理中湯,悪心乾嘔,吐せんと欲して吐せず,心下映漾として,人の船を畏るる如きを治す。 ○又小児慢驚,脾胃虚寒,泄瀉及び寒を受けて腰痛するを治す。

30.外科正宗に曰く
 理中湯,中気不足,虚火上攻し,咽間の乾燥を致し痛を作し,吐嚥妨碍及び脾胃健ならず,食少く嘔を作し,肚腹陰疼む等の証を治す。


31.瘍医大全に曰く
 理中湯,癰疽潰瘍,臓腑中寒,四肢強直を治す。(中略)

 人参湯証
 さて以上の論議や経験を通じて人参湯証を考えてみるに,人参湯証の患者に屢々観られる症状としては,次の如きものがある。

 1.顔色の蒼いこと,血色が悪くて生気のない人が多い。平素強健な人でも,病気に罹って,人参湯証を呈する様になると,生気を亡ひ,血色がわるくなる。

 2.唾液が稀薄で口内に溜る傾向がある。従って口渇を訴へることがあっても,舌は必ず湿濡している。舌苔のあることは稀である。又咳嗽のある場合には,稀薄な痰が出る。

 3.小便自利を訴える者が多い。下痢をしている場合は小便不利になることが普通であり,浮腫のある場合も亦小便不利になるのが通例であるが,人参湯証では下痢をしていても,小便自利の傾向があり,浮腫があっても小便自利の症状のある者が多い。又足が冷えると小便が近くなるというのも,人参湯の一つの目標となる。

 4.手足の厥冷を訴える者が多い。人参湯証の患者は手足の厥冷を訴え,そのために頭重,不眠を訴へる者すらある。

 5.目眩を訴える者が多い。

 6.心下痞鞕,心胸痛,胸満等の症状がある。腹診するに,腹部が一体に膨満して軟弱で胃内停水を証明するものと,腹壁が菲薄で堅く,直腹筋を板の如く触れるものとある。

 7.浮腫のある者がある。これは虚腫に属する者で,指壓によって陥凹して仲々隆起して来ない場合が多く,皮膚の営養わるく小便自利の傾向がある。

 8.出血を来すものがある。喀血,吐血,子宮出血,衂血等いづれの場所から出血してもよいが,黄連のゆく場合と厳重に鑑別しなければならない。それには他の症状をよく観察することが必要である。

 9.嘔吐,下痢或は便秘を来すことがある。

 10.身体疼痛を訴えることもある。

 11.脈は遅緩,或は遅弱のものと弦細のものとが多い

 最後に人参湯の分量であるが,これは経験薬方分量集に記載する処を標準として,証に従って多少の増減をやればよい。




【一般用医薬品承認基準】
人参湯(理中丸)
〔成分・分量〕
人参3、甘草3、白朮3(蒼朮も可)、乾姜2-3

〔用法・用量〕
(1)散:1回2-3g 1日3回
(2)湯

〔効能・効果〕
体力虚弱で、疲れやすくて手足などが冷えやすいものの次の諸症:
胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎



【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと (守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。 〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以 上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(5)次の症状のある人。 むくみ 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。 高血圧、心臓病、腎臓病 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位 症 状 皮 膚 発疹・発赤、かゆみ

まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称 症 状 偽アルドステロン症、ミオパチー 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

3.1ヵ月位(急性胃炎に服用する場合には5~6回、下痢、嘔吐に服用する場合には1週間 位)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師 又は登録販売者に相談すること

4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕

(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す ること。〕 1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく 注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕

2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕

3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ 服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕

保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕

(2)小児の手の届かない所に保管すること。

(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕

【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと 生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g 以上)含有する製剤に記載すること。〕
(4)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(5)次の症状のある人。 むくみ 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病 〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g 以上)含有する製剤に記載すること。〕

2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕

3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと

4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕


【副作用】
【重い副作用】
偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
【その他】 胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気 発疹、発赤、かゆみ


※直指方(宋) じきしほう 楊士瀛(ようしえい)

※肩胛:肩甲(けんこう)
  本来の漢字は、「肩胛骨」だが、医学・解剖学では、「肩甲骨」が普通。現在の医学辞書には「肩胛骨」は載っていないことも多い。「甲」と「胛」は異体字ではなく、意味の違う字 。
「甲」はかぶさるもの、覆うものの意味で、「胛」には「月」(にくづき)がつき、それが体の一部であることを示している。

※上膊(じょうはく):上腕

※扨:さて

※:交雑りて:こもごもまじりて

※『医療衆方規矩大成』(いりょうしゅうほうきくたいせい) 曲直瀬道三(まなせどうさん)  (江戸時代)

※「宣し」となっているが、「宜し」に訂正。

※胸脾は胸痺の誤植?

※角觝漢(すもうとり)
「角」はあらそう、「觝」はふれる意
角觝(かくてい):力比べや相撲をすること。転じて、優劣を争うこと。

※巳に:已にの誤植?

※頃日(けいじつ,きょうじつ):近ごろ。このごろ。また、先日。※荏苒(じんぜん):なすことのないまま歳月が過ぎるさま。また、物事が延び延びになるさま。

多紀(丹波、劉)元堅(茞庭、亦柔)幕府醫官、元簡二男1796--1857:「丹波元堅」「元堅之印」「茞庭」「樂真院」「奚暇齋∕讀本記」「奚暇齋征(?)」「至樂在□裡」

六磨湯(沈香・木香・檳榔子・烏薬・枳殻・大黄各等分)

※氷炭(ひょうたん) 氷と炭。相違のはなはだしいものをたとえていう。
※氷炭相容れず: 性質が反対で、合わないことのたとえ。

※保嬰金鏡録(ほえいきんきょうろく):(明)薜巳著 ・朱明校

※乳養(にゅうよう):乳を与えて養育すること。

※聖清総録? 聖剤総録のことか?

小青嚢(しょうせいのう) 王求如 編次 王 良 一〇巻

※漾 ヨウ ただよう

経験薬方分量集? 経験・漢方処方分量集(医道の日本社刊)のことか?

2012年1月30日月曜日

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
 本方は、癤・癰を発し 易いフルンクロージス及び湿疹の治療に用いられる。フルンクロージス、或は湿疹が一種の毒素によって起こるものと仮定すれば、本方は解毒臓器の機能を盛ん にして、その毒素を解除する効がある。本方は常に連翹を加味して用いられる。本方中で解毒的に効のある薬物は、荊芥・防風・桔梗・柴胡・川芎・桜皮等であ ると考えられる。その他の茯苓・甘草・独活・生姜等は補助的の薬物である。連翹はまた有力な解毒薬として加味されるものである。
 本方の応用としては、癤・癰の初期に解毒剤として用いられ、軽症であれば、そのまま内消する。内消しない場合も、その毒性を挫くことができる。フルンクロージスに対しては体質改善の目的で用いられ、湿疹に対しても屡々著効がある。蕁麻疹にも応用される。
 また本方に石膏を加えて結核性並びに梅毒性の頚部リンパ腺腫に用いて屡々効がある。
 本方は小柴胡湯の適する体質で解毒の効を求める場合に適する。この意味で癤・癰・湿疹の他、肺門結核症・腎臓炎・糖尿病・梅毒・所謂水虫・神経衰弱症等種々の疾患に応用することがある。


漢方精撰百八方
25.〔方名〕十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
〔出典〕華岡青洲伝(春林軒方集)

〔処方〕柴胡2.0 茯苓2.0 川芎2.0 桜皮2.0 生姜2.0 桔梗2.0 防風1.5 独活1.5 荊芥1.0 甘草1.0

〔目標〕滲出性体質、膿毒物質の蓄積、亜急性皮膚炎、顔面や頭部の壅塞感、掻痒感、リンパ腺腫脹、蕁麻疹、水疱疹、乾性皮膚疾患。

〔かんどころ〕化膿性疾患の初期で、発赤、腫脹、疼痛、悪寒、発熱の一段落した後、すなわち初め葛根湯で発散させてから本方を用いる。このような場合は煎剤がよい。体質改善の目的に用いるには散剤を連用する。

〔応用〕本方は太陽病と少陽病の時期にまたがる発表剤で、古方でいえば小柴胡湯証に相当する。明代によく用いられた人参敗毒散や荊防敗毒散などの類方に基づいて華岡青洲が創方した。体内に蓄積して皮膚に病変を来す毒を解して中和させるのが主な目標である。解毒作用をさらに高めるために連翹、石膏、大黄などを適宜加味することもある。亜急性期以後の化膿炎または乾性の皮膚疾患に常用し、アレルギー体質の改善にも欠くことの出来ない処方であるから、アレルギー性眼炎、鼻炎、蓄膿症にも用いる。しかし、アレルギー性の気管支喘息には効かない。この時は半夏厚朴湯や麻杏甘石湯の合方の適応である。皮膚の化膿をくりかえすフルンクロージス、水虫、湿疹、疥癬などの体質改善にも応用する。

〔治験〕四十二才の男。十数年前から両足とも水虫に悩まされ、売薬、新薬、物理療法などあらゆる治療を行ったが一時の効しかなく、病院がよいもしばらく続けたが根治しないので漢方治療を求めてきた。局部は赤く腫れ、皮がむけていたり、膿疱の部分などが混在するが全体としては乾性である。従って本方の適応と考え、煎剤で三ヶ月連服したが著効がない。食養を厳守させて散剤にかえ二ヶ月服用したところ、かなりよくなってが局所の清潔を怠ると再発する。そこでエキス散剤と原末の散剤を等分に混じ一回量二グラム毎食前に用いてみた。これが効を奏し三ヶ月でほとんど全治したが、再発を恐れて患者自身は気候の変わり目には毎年続けて飲んでいるという。三年前の症例である。この例のように本方は剤型をかえると効くことがあるのは興味深い。
石原 明


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊

1 柴胡剤 
 柴胡剤は、胸脇苦満を呈するものに使われる。胸脇苦満は実証では強く現 われ嘔気を伴うこともあるが、虚証では弱くほとんど苦満の状を訴えない 場合がある。柴胡剤は、甘草に対する作用が強く、解毒さようがあり、体質改善薬として繁用される。したがって、服用期間は比較的長くなる傾向がある。柴胡 剤は、応用範囲が広く、肝炎、肝硬変、胆嚢炎、胆石症、黄疸、肝機能障害、肋膜炎、膵臓炎、肺結核、リンパ腺炎、神経疾患など広く一般に使用される。ま た、しばしば他の薬方と合方され、他の薬方の作用を助ける。
 柴胡剤の中で、柴胡加竜骨牡蛎湯・柴胡桂枝乾姜湯は、気の動揺が強い。小柴胡湯・加味逍遥散は、潔癖症の傾向があり、多少神経質気味の傾向が ある。特に加味逍遥散はその傾向が強い。柴胡桂枝湯は、痛みのあるときに用いられる。十味敗毒湯・荊防敗毒散は、化膿性疾患を伴うときに用いられる。
 各薬方の説明(数字はおとな一日分のグラム数、七~十二歳はおとなの二分の一量、四~六歳は三分の一量、三歳以下は四分の一量が適当である。) 

10 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
 〔柴胡(さいこ)、桜皮(おうひ)、桔梗(ききょう)、生姜(しょうきょう)、川芎(せんきゅう)、茯苓(ぶくりょう)各二、独活(どっかつ)、防風(ぼうふう)各一・五、甘草(かんぞう)、荊芥(けいがい)各一〕
  本方は、小柴胡湯證の適する体質で化膿性疾患の初期や湿潤期に用いられる。また、アレルギー体質の解毒剤、体質改善薬としても用いられる。本 方は、荊防敗毒散より前胡、薄荷、連翹、枳殻、金銀花、羗活を除き桜皮を加えたものとしても考えられる。したがって、化膿症の初期では、発熱、悪寒、疼痛 があり分泌物があまり多くなく、慢性に経過したものでは、化膿部位は頭部、背部に多く、四肢の場合でも比較的浅位のものである。
 〔応用〕
 つぎに示すような疾患に、十味敗毒湯證を呈するものが多い。
 一 湿疹、じん麻疹、水虫その他の皮膚疾患。
 一 よう、疔、癤などの疾患。
 一 中耳炎、外耳炎、アレルギー性眼疾、麦粒腫、鼻炎、蓄膿症などの耳鼻、眼科の疾患。




《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会 
36. 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) 華岡青洲

柴胡2.5 桔梗2.5 防風2.5 川芎2.5 桜皮2.5 茯苓2.5 独活1.5 荊芥1.5 甘草1.5 乾生姜1.0

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 分泌物があまり多くなく,慢性に経過するもの。
 本方は疲労し易く小柴胡湯がよく適応する体質で,分泌物があまり多くなく患部が乾燥している皮膚疾患によく用いられる。
 患部が湿潤して慢性に経過する場合には消風散が適し、急性で分泌物が多い小水疱期の皮膚病には越婢加朮湯が適する。初期で発熱悪寒し,かゆみあるいは炎症の劇しい紅斑期の症状には葛根湯がよい。化膿疾患には伯州散と併用す識場合が多いが,この合方は炎症の劇しい時期には投与してはならない。便秘がひどい時は大黄を加え,癰,癤,肛囲膿瘍,とびひ,水虫などには紫雲膏などの外用薬を併用すれば治癒を早める。本方単独では所謂瘀血に起因する症状には無効で,この場合は桂枝茯苓丸,桃核承気湯,大黄牡丹皮湯などを用いるべきである。但し本方と桂枝茯苓丸との合方はしばしば瘀血に起因する汚臭がひどくない湿疹,蕁麻疹に奏効する。

漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎先生
 腺病体質や疲れやすいもので,肝機能その他内臓に起因するもの,皮ふが弱くかぶれやすいものの,諸種ヒフ疾患に卓効がある。
 患部は乾燥性のものが対象となり,発赤,瘙痒の程度は緩和なものに用いられる。また軽度の湿潤を認めるものによく適応する。従って初期または回復期や,慢性に経過するもの,あるいは再々繰返して発疹するが,特にとりあげるほどの著しい症状を認めないもの,患部の治療と併行して,体質の改善が必要なものなどに好適な処方である。初期症状で炎症症状が激しく,瘙痒や悪寒を伴うものには葛根湯が良く,水疱や分泌物の多い小水疱期には越婢加朮湯を,考慮すればよい。
 また慢性症状であっても,患部が赤色や暗紫色を呈し,神経症状を伴うものには,本方に桂枝茯苓丸,桃核承気湯などを合方して用いることが多い。何か年もの既往歴があって,患部が湿潤しており発汗したり,夏期になると増悪するというものには,消風散が用いられる。ガンコなもので色々処方を用いたが治療効果の少ないものには,本方と消風散を合方して連用させると著効あることが多い。患部の肉眼的所見はそれほどでもないが,瘙痒の著しいものには本方と,黄連解毒湯の合方がよい。炎症や瘙痒が緩和で肌アレを伴うものには,本方に「はとむぎ」を加えて用いると効果的である。本方はまた夏期に多い乾燥性の水虫に繁用されるが,本方の内服と紫雲膏を外用して好転した例が多い。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○癰,癤,疔,などの化膿性腫物が,あるいは単発しあるいはつぎつぎと続発するもの。蜂窩織炎,その他の化膿性炎症,急性・慢性の蕁麻疹や亜急性以後の皮膚病で瘙痒のあるもの,リンパ腺の腫脹など。
○本方は華岡青州の経験方で勿誤薬室方函には「癰疽,および諸瘡腫,初起増圧壮熱し,疼痛するを治す」とある。
○石原明氏は「本方は太陽病と少陽病の時期にまたがる発表剤で,古方でいえば,小柴胡湯に相当する。明代によく用いられた人参敗毒散や荊防敗毒散などの類方に基いて,華岡青州が創方した。体内に蓄積して皮膚に病変を来す毒を解して中和させるのが主な目標である」と述べている。


漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○この方は癤,癰,リンパ腺炎,乳房炎その他の炎症性の瘡腫の発病初期で悪寒,発熱があって腫れ痛むものに用いる。有持桂里は十味敗毒湯は癰疽,疔腫,一切の瘡毒,焮痛,寒熱,脈緊の者を治すといい,このようなところえ,葛根湯,葛根湯加大黄湯,葛根湯加朮附などを用いても具合のわるいもので,この敗毒湯にまさるものはないとのべている。
○十味敗毒湯はまたフルンクロージスによくきく。
○白髪染めによるかぶれによくきく。
○湿疹や皮膚炎でも,滲出液が多く痂皮を作るようなものには十味敗毒湯はむかない。
○皮膚面からあまり隆起せず,色も少し赤く,ところどころ落屑があり,かゆみもあり,滲出液のないものである。若い男子で,体格のよい人に多く慢性に経過する。この型でかゆみが少く色の赤くないものに葛根湯で治るものがあり,その区別は中々むつかしい。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は癰・癤を発し易いフルンクロージス及び湿疹の治療に用いられる。フルンクロージス,或は湿疹が一種の毒素によって起るものと仮定すれば,本方は解毒臓器機の能を盛んにして,その毒素を解除する効がある。本方は常に連翹を加味して用いられる。本方中で解毒的に効のある薬物は,荊芥,防風,桔梗,柴胡,川芎,桜皮,等であると考えられる。その他の茯苓,甘草,独活,生姜等は補助的の薬物である。本方の応用としては,癤,癰の初期に解毒剤として用いられ,軽症であればそのまま内消する。浴消しない場合も,その毒性を挫くことができる。フルンクロージスに対しては体質改善の目的で用いられ,湿疹に対しても屢々著効がある。蕁麻疹にも応用される。また本方に石膏を加えて結核性並びに梅毒性の頸部リンパ腺腫に用いて屢々効がある。本方は小柴胡湯の適する体質で解毒の効を求める場合に適する。この意味で,癤,癰,湿疹の他,肺結核症,腎臓炎,糖尿病,梅毒,所謂水虫,神経衰弱症等種々の疾患に応用することがある。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 小柴胡湯の適する体質傾向を有し,神経質で胸脇苦満があり,化膿症を繰り返すフルンクロージス,アレルギー性の湿疹,蕁麻疹などを起しやすい体質者が目標である。癰,癤の場合は初期で,発赤腫張疼痛があり,発病後数日以内に用いるのがよい,軽いものは四~五日で消退し治癒する。それ以後は托裏消毒散,または千金内托散,さらに遷延したものは帰耆建中湯や十全大補湯などを用いるようになる。





【一般用医薬品承認基準】
十味敗毒湯
〔成分・分量〕
柴胡2.5-3.5、桜皮(樸樕)2.5-3.5、桔梗2.5-3.5、川芎2.5-3.5、茯苓2.5-4、独活1.5-3、防風1.5-3.5、甘草1-2、生姜1-1.5(ヒネショウガを使用する場合3)、荊芥1-2、連翹2-3 (連翹のない場合も可)

〔用法・用量〕
(1)散:1回1.5‐2g 1日3回
(2)湯

〔効能・効果〕
体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの次の諸症:
化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、湿疹・皮膚炎、水虫



【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる )
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔 生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕

相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸の弱い人。
(5)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)今まで薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(7)次の症状のある人。
   むくみ
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕
(8)次の診断を受けた人。
   高血圧、心臓病、腎臓病
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称
症 状
偽アルドステロン症、ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

3.1ヵ月位(化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期に服用する場合には1週間位)服用して
も症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売
者に相談すること

4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以
上)含有する製剤に記載すること。〕

5.本剤の服用により、まれに症状が進行することもあるので、このような場合には、服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1) 小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にの
み服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸の弱い人。
(5)高齢者。
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)今まで薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(7)次の症状のある人。
  むくみ
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕
(8)次の診断を受けた人。
   高血圧、心臓病、腎臓病
   〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g
以上)含有する製剤に記載すること。〕

2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕

3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと

4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
  〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕