健康情報: 桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう) の 効能・効果 と 副作用

2014年7月12日土曜日

桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう) の 効能・効果 と 副作用

明解漢方処方 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.62
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) (吉益家方)

 処方内容 桂枝湯に朮四、〇 附子一、〇を加える。

p.63
類方 ①桂枝加苓朮附湯(東洞家方)
 前方に茯苓四、〇を加えた処方で前方の症に動悸と尿量減少がはなはだしくなったときに用いる。この処方内容は苓桂朮甘湯真武湯甘草附子湯などを含んでおり、慢性リウマチで動悸、目眩、身ふるえる場合に用いる他、梅毒の眼病、筋肉痙攣にも応用する。


 漢方精撰百八方 
66.〔方名〕桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

〔出典〕傷寒論

〔処方〕桂枝、芍薬、大棗、生姜各4.0 甘草2.0 白朮4.0 附子0.5~1.0

〔目標〕自覚的 発汗傾向があって、悪寒し、尿利がしぶり、手足の関節が痛み、或いはその運動が不自由。
他覚的
 脈 浮弱または浮にして軟。
 舌 乾湿中等度の微白苔又は苔なし。
 腹 腹力は中等度以下。

〔かんどころ〕さむけし、汗ばみ、小便しぶり、節々痛んで、手足が不自由。

〔応用〕1.関節リウマチ又は神経痛
2.脳出血後の半身不随
3.関節炎
4.痛風

〔治験〕先哲は本方を脳出血後の半身不随に多用して、よい治験を数多く報告している。確かに本方は脳出血後の半身不随には奏効する場合が多い。しかし陽実証のそれには応ずることが少なく、それには続命湯の応ずる場合が多いように思う。
  私は本方を陽虚証の関節リウマチ或いは神経痛に実に屡々用いる。
  どちらかというと、関節リウマチには桂枝二越婢一加朮附湯、神経痛には本方という傾向がなきにしも非ずではあるが、一概にそうもいえず、かえってとらわれてはいけないようである。
  悪寒とか、発汗傾向とか、尿不利とかは、必ずしも揃って出てくるとは限らないから、全体的に陽虚証で、身体のどこかに疼痛又は運動障害のある場合には、一応本方を試みてみるべきであろう。
  動悸や、尿不利の傾向が更に加わり、又は強まっている時は、茯苓4.0を加えて、桂枝加苓朮附湯として用いるが、このようにして用いる場合の方がむしろ普通である。
  神経痛やリウマチには、あまりに日常多用しすぎて、例を選ぶのにかえって困惑するくらいなので、症例を挙げるのは省略する。                                    
藤平 健




漢方薬の実際知識 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
4 表証
表裏・内外・上中下の項でのべたように、表の部位に表われる症状を表証という。表証では 発熱、悪寒、発汗、無汗、頭痛、身疼痛、項背強痛など の症状を呈する。実証では自然には汗が出ないが、虚証では自然に汗が出ている。したがって、実証には葛根湯(かっこんとう)・麻黄湯(まおうとう)などの 発汗剤を、虚証には桂枝湯(けいしとう)などの止汗剤・解肌剤を用いて、表の変調をととのえる。

〔桂枝加附子湯に朮四を加えたもの。〕
桂枝加附子湯證に、水毒をかねたもので、水毒症状の著明なものに用いられる。したがって、関節の腫痛や尿利減少などを呈する。本方は、貧血、頭痛、気上衝、脱汗、口渇、四肢の麻痺感(屈伸困難)・冷感などを目標とする。

(8) 桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)
桂枝加朮附湯に茯苓(ぶくりょう)四を加えたもの〕
桂枝加朮附湯證で、心悸亢進、めまい、尿利減少、筋肉痙攣などを強く訴えるものを目標とする。本方は、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんと う)(後出、駆水剤の項参照)、真武湯(しんぶとう)、甘草附子湯(かんぞうぶしとう)(いずれも後出、裏証Ⅱの項参照)などの薬方の加減方としても考え られる。



『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊


桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
方剤構成
 桂枝 芍薬 生姜 大棗 甘草 蒼朮 附子

(略)


 本方剤に茯苓を加えたものを桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)と言い、ほぼ本方剤と同様に用いられる。茯苓には湿を除く作用とともに鎮静作用もあり、桂枝加朮附湯よりさらにそれらの作用が強化されたと考えればよい。


『漢方医学 Ⅰ 総論・薬方解説篇』 財団法人漢方医学研究所
p.227
桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)
■構成
 桂枝4,芍薬4,甘草2,大棗4,生姜4(乾生姜の場合は1),茯苓4,朮1,附子1

■方解
 桂枝加附子湯の加減方に1つである。吉益東洞の創案になるもので,類方に桂枝加朮附湯がある。桂枝加附子湯が冷え症の人の疼痛性疾患や知覚鈍麻に有効なことは前述した通りであるが,この際の附子の薬効の本態については定見を得ていない。東洞は逐水をその本態としたことについては前述したが,これより発展して桂枝加朮附湯に至ったのは『金匱要略』瘙湿喝病篇中の次の条文である。つまり,「傷寒八九日,風湿あいうち,身体疼煩して自ら転側する能わず。嘔せず,渇せず,脈浮虚にして渋なるものは桂枝附子湯これを主る。もし,取便堅く,小便自利する者は去桂加白朮湯これを主る………一服して身の痹れを覚ゆ。半日ばかりにして再服し,三服すべて尽くし,その人冒状の如し。怪しむなかれ。即ちこれ朮附ならびに皮中を直りて水気を追い,未だ除くを得ざるのみ」というのがそれで,これが東洞が附子の薬効の本態を逐水とした根墟ともなっている。桂枝加苓朮附湯は駆水効果をもつ茯苓を加えることによって一層の効果果期待したものであろう。
 また別の眼からみれば桂枝加苓朮附湯は真武湯に桂枝,甘草,大棗三味の加味されたものであり,更に方中に苓桂求甘湯の要素を含むなどより,桂枝加附子湯,桂枝加朮附湯とはやや違ったニュアンスをもっているように思われる。

■応用
 桂枝加附子湯,桂枝加朮附湯二方とほぼ同様の目的に使用される。つまり冷え症,虚弱体質の関節痛神経痛,腰痛,脳卒中後の半身不随などが主要な目標であるが,前述したように真武湯苓桂朮甘湯の要素を含んでいるので,下痢,動悸,めまい等も考慮されよう。これら三方の中では最も広く使われているように思われる。


※瘙湿喝病篇 → 痙湿暍病篇の間違い
苓桂求甘湯 → 苓桂朮甘湯の間違い



『皇漢医学』 湯本求真著 燎原社刊
p.133
桂枝加附子湯方、
桂枝 芍薬 大棗 生姜各七、〇甘草五、〇附子二、五
 煎法用法同前

桂枝加朮附湯
 前方中ニ朮七、〇ヲ加フ
 煎法用法同前

桂枝加苓朮附湯方
 前方ニ茯苓七、〇ヲ加フ
 煎法用法同前

 余曰ク此二方ハ東洞翁ノ創方ナレドモ其實ハ師ノ桂枝加附子湯、桂枝去芍薬加茯苓朮湯ヲ合方セシニ外ナラザレバ本方ニハ勿論此二方ノ精神ヲ宿シ又此二方ノ原方タル桂枝湯ノ方意モ隠レルノミナラズ本方中ニハ茯苓、桂枝、朮、甘草ヲ包含スルガ故ニ苓桂朮甘湯ノ精神ヲ寓シ又茯苓。芍薬、生姜、朮、附子ヲ有スルヲ以テ眞武湯ノ方意ヲモ含蓄ス故ニ本方ハ桂枝湯、桂枝加附子湯、桂枝去借家決加茯苓朮湯、苓桂朮甘湯眞武湯ニ關スル師説及諸説ヲ參照シテ活用スベキモノニシテ之ヲ概括的ニ説明スルハ至難ナリ是レ本方方々意ノ複雜ニシテ臨床上應用範圍ノ廣大ナル所以ナリ。



『phil漢方 No.37』 
処方紹介・臨床のポイント
新宿海上ビル診療所 室賀 一宏 日本TCM 研究所 安井 廣迪
桂枝加苓朮附湯(方機)
組成:桂枝4.0 芍薬4.0 大棗4.0 乾生姜1.0 甘草2.0 朮4.0 茯苓4.0 加工附子0.5~1
主治:陽気不通、寒湿痺
効能:通陽散寒祛湿、止痛

プロフィール
  吉益東洞が『傷寒論』の桂枝加附子湯に朮を加えて桂枝加朮附湯と名づけ、更に茯苓を加えて、その適応症を「湿家、眼目明らかならざる者、或は耳聾、或は肉 瞤筋愓する者、桂枝加苓朮附湯之を主る」(『方機』)と述べたものが、すなわち本方である。東洞の常用処方であり、後に尾台榕堂もこの処方を多用した。湯本求真は桂枝加朮附湯ではなくこの桂枝加苓朮附湯のみを用いると記し(『皇漢医学』)、その中には苓桂朮甘湯真武湯の方意をも含蓄すると述べている。浅田宗伯が本方を用いてフランス公使レオン・ロッシュを治療した有名な逸話がある(『橘窓書影』)。医療用漢方製剤には桂枝加朮附湯と桂枝加苓朮附湯がともに存在し、同じように使用されている。

方解
  本方は、基本骨格は桂枝湯であるが、基本的には寒湿痺を治療する処方である。桂枝湯は営衛を調和して風寒邪の侵襲を防御し、同時に配剤された附子の散寒温 通の作用を加えて陽気と血を温通させ、寒が主たる原因で生じた疼痛や痺れを改善する。蒼朮は祛風湿し、茯苓は利水によって寒湿の邪を外泄する。芍薬は関節 痛、筋肉痛に対して緩急止痛に働き、甘草、大棗、生姜は中焦を鼓舞する。生姜には附子の散寒作用を増強する働きもある。

四診上の特徴
  本方に関する四診上の特徴を述べた記載は少ない。長谷川らはその使用目標について、「本方は、比較的体力が低下し、四肢冷感を訴える例の、四肢関節の疼 痛・腫脹、筋肉痛、麻痺、しびれ感などを目標に用いる。腹部は、一般に腹力が弱く、時に心窩部振水音、腹直筋の緊張を認める。一般に、関節痛・筋肉痛(寒 冷により増悪)のほか、微熱、盗汗、手足のこわばり、浮腫などを伴う」と述べている。
 尾台榕堂は、「心悸、目眩、身瞤動者」には、桂枝加朮附湯に茯苓を加味して桂枝加苓朮附湯として用いるように指示している。これは、苓桂朮甘湯もしくは真武湯の方意を反映させたもので、眩暈、立ちくらみ、労作時の動悸などを伴う場合のあることを示唆している。

臨床応用
  適応疾患は、関節痛、神経痛、筋肉痛など疼痛性疾患と、麻痺やしびれを呈する疾患である。関節リウマチ、肋間神経痛、上腕神経痛、三叉神経痛、肩関節周囲 炎、諸種の関節痛ならびに筋肉痛、腰痛症、変形性膝関節症、脳卒中後遺症などに用いられる。花輪は、交通事故外傷、むちうち症、リウマチ、神経痛などで 「冷えると古傷が疼く」ものに有用で、「胃腸にやさしい鎮痛剤」と記載している。しかし、初期でも病態が合えば使用可能である。

関節リウマチ(RA)
 桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯は、RAの代表的治療薬の一つとして用いられてきた。これまでの報告では、主にStageⅠ・Ⅱの比較的関節変化の少ない患者が対象であり、関節の腫脹、熱感が軽い場合に適応となるとされている。
  谷崎らは、classical又はdefinite RAと診断されプロトコールを満たした36例に桂枝加朮附湯を投与し、4、8、12週ごとに臨床症状などを評価した結果、12週投与した27例中14例 (51.9%)に明らかな臨床効果が認められたと報告している。投与対象は関節の腫脹・疼痛のみられる比較的活動性の高い症例であった。
  Imadayaらは95例のRAに対し漢方治療を行い、ランスバリー指数により判定を行ったところ、68%の有効率であった。有効処方は桂芍知母湯、桂枝加苓朮附湯、桂枝二越婢一湯の順で有効であり、全体の94%を占めていた。特に桂枝加苓朮附湯は発病初期の活動性の高い症例に有効であったと報告してい る。
 同様に古田らは、活動性の高い36例のRAに対し随証治療を行い、14例で桂枝加苓朮附湯を使用した。うち8例が有効であり、単独投 与は6/8例で有効であった。また松多は52例のRA患者で、桂枝加苓朮附湯または桂枝加朮附湯のみで2ヵ月経過を診た患者に対し、各種DMARDを追加 して治療効果を検討したところ、金製剤との併用が効果的であったと報告している。
 安田らもclassical又はdefinite RAと診断されて治療中の患者に対し、「手足の冷え」を主要項目とし、「手足の痺れ」、「四肢の腫脹」、「自然発汗」、「尿量減少」がみられた症例に桂枝加苓朮附湯を投与した。その結果、全般改善度でやや改善以上の効果がみられた割合は7/13例(53.8%)であり、特に「手足の冷え」がみられた場合に有効であったと述べている。

変形性膝関節症
  高岸は27名に桂枝加朮附湯を用いた結果、全般改善度は著明改善1例、中等度改善11例、軽度改善10例で中等度改善以上は44%であったと述べている。 患者自身の評価では「良くなった以上」は48.1%、「やや良くなった以上」は81.5%であった。さらに、高齢者になるにしたがい、「改善以上」の比率 が上昇したと報告している。

腰下肢痛(骨粗鬆症を含む)
  大竹は、腰痛症の治療結果をまとめた報告で、桂枝加朮附湯は変形性腰椎症より骨粗鬆症に伴う痛みに有効なことが多いと述べている。その中で、骨粗鬆症患者 では小腹不仁などの腎虚の兆候が少なかったと報告している。さらに、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)との治療効果を比較したとこ
ろ、投与4週目ではNSAID投与群と桂枝加朮附湯を中心とした漢方治療群で治療効果に差を認めなかったが、12週後では有意に漢方治療群で痛みが軽減していた。さらに、骨量(骨皮質幅・MCI)と骨密度の推移をDIP法とm-BMD法で9ヵ月間追跡したところ、無治療群と比較し有意に増加していた。
 さらに、骨粗鬆症治療薬のイプリフラボン、NSAID、桂枝加朮附湯をそれぞれ投与した3 群でMCI の変化を9ヵ月間追跡した結果、桂枝加朮附湯とNSAID では同様な鎮痛効果を示したがNSAID 投与群では骨量が維持されなかった。桂枝加朮附湯ではイプリフラボンと同等な骨量維持効果を認めた
た め、桂枝加朮附湯は単に疼痛改善のみならず骨代謝に直接影響している可能性が示唆された。また、骨代謝マーカー(Osteocalcin、intact- Osteocalcin、ALPⅢ)の変動があるか否かをDXAでの骨量測定(BMD)と同時に行った結果、ALPⅢは3ヵ月で有意に低下し、BMDは 6ヵ月後には有意に増加した。またいずれの骨代謝マーカーにおいても、初期に明らかに高値で高回転を示した症例においては、3ヵ月後に低下していた。よっ て、特に高回転型と思われる骨粗鬆症に対し桂枝加朮附湯は骨代謝を抑制したと考えられる。
 田北はビタミンD製剤と桂枝加朮附湯を併用することにより、煎じ薬では骨密度を増加させ、エキス剤の場合には低下させないと報告している。
 佐々木らは腰椎変性疾患で疼痛を訴えている20例に桂枝加苓朮附湯を用いたところ、著効2例、有効9例、やや有効4例、無効5例であったと報告している。

帯状疱疹後神経痛(PHN)
  本方は帯状疱疹の急性期よりも、その後に生じるPHNに対して使用される機会が多く、特に胸神経領域に頻用される。菅谷らは、PHNに対する桂枝加朮附湯 の効果を検討した。27例の投与群と30例の非投与群に対し、10段階の疼痛スコアで評価した結果、開始時が10として、1ヵ月後で投与群が 7.33±1.3、非投与群が7.87±1.1(p<0 .05="" 7.16="" p=""> また、里村らは、体力に乏しく筋肉の緊張が弱く冷え症など 虚証タイプで、発症1ヵ月以上経過した48~89歳のPHN患者40名に対し、神経ブロックの補助療法として桂枝加朮附湯を投与した。その結果、1ヵ月後 で有効以上34例(85%)、3ヵ月後は36例(90%)で、胸神経領域に比較し三叉神経第1枝領域では不変の割合が高かったと述べている。
 白藤は、PHNの部位と有効処方の関係を考察し四肢末梢の寒湿性疼痛を訴える場合に桂枝加朮附湯を用いると効果的であると述べている。

三叉神経痛及び顎・顔面痛
  堀江らは、虚証を呈する三叉神経痛の患者5例に対しカルバマゼピンと桂枝加朮附湯を併用したところ疼痛の改善を認め、3例ではカルバマゼピンを中止できた と報告している。神野らは、虚証あるいは虚実中間証で冷えを有する根管治療後疼痛7例、非定型顔面痛6例、三叉神経痛2例、顎関節症1例の計16例に、桂枝加朮附湯を投与し効果を検討した。その結果、各疾患で著効、有効を合わせた有効率はそれぞれ6/7例、1/6例、1/2例、1/1例で、全体として 56.2%であった。この他、複合性局所疼痛症候群(カウザルギー)や放射線治療後などの疼痛、上眼窩神経炎などにも有効であったと報告がある。

脳血管障害後遺症
 吉益東洞は脳卒中の後遺症(半身麻痺など)に本方をしばしば用いた。尾台榕堂にも著効を示した症例報告がある。大塚は、7ヵ月前に脳出血を発症した半身不随の65歳の男性に対して効果のあった興味深い症例を記している。
 脳血管疾患の後遺症、特にしびれや痛みに対して本方を使用した報告がいくつかみられる。佐々木らは桂枝加苓朮附湯を被核出血の後遺症に、後藤らは桂枝加苓朮附湯及び桂枝加朮附湯を視床痛の症例に用いて効果を得たと報告している。

その他
 赤澤は、糖尿病性神経障害による痛みやしびれを訴える50例に対し桂枝加朮附湯を投与したところ、著効34%、有効30%、改善30%、やや改善6%であったと報告している。
 また、城石らは八味地黄丸がしびれや冷感に対して70~80%の効果であるが、桂枝加朮附湯は冷感に対して62.5%、疼痛に対して50%の効果があることを報告している。
  関矢らは、クローン病、下痢を伴う直腸癌術後の吻合部からの出血、急性腸炎の下痢、チョコレート嚢胞による生理痛に、目眩と腹痛・腹満の5例において効果 を得たと述べている。これらの症例では腹直筋の緊張がみられ、桂枝加苓朮附湯を桂枝加芍薬湯真武湯または苓桂朮甘湯の合方と解釈して用いると応用が広がる可能性を示唆している。
 また渡辺らは、サルコイドーシスの患者5例において、四肢冷感や関節痛、しびれなどを目標に用いて、症状の改善と同時にACEやsIL-2受容体などの検査成績も改善したとしている。



誌上漢方講座 症状と治療
 生薬の配剤から見た漢方処方解説(3) 村上光太郎
 6.附子について
 附子は新陳代謝機能を復興ないし亢進させる生薬であるため、実証の人に用いることはできない生薬であり、もし誤って使用すれば死をまねくのに対し、虚寒証の人に用いれば驚くほどの効果が認められる。従ってその効果を期待して繁用されている生薬ではあるが、その組み合わせの事を知らずに使用して、虚寒証の人に用いているのにかえって害を生じたり、無効であったりの例が繁々見られる。というのも、附子は単独で用いるものではなく、他の生薬と配剤して附子の作用を選択的に要所要所に効かせる工夫をしなければならないことをわすれているからにほかならない。
 すなわち附子を表に行く生薬(例、麻黄、葛根、桂枝、防風)と共に用いると、附子の作用は表に誘導されて、表の組織を温め、表の新陳代謝機能を亢める働きとなっているが、附子を半表半裏ないし裏に行く生薬(例、黄連、黄芩、乾姜、人参、茯苓)と共に用いると、附子の作用は半表半裏から裏に誘導されて内臓諸器管の新陳代謝機能を亢めるようになる。ところが附子を全身(表、半表半裏、裏)に行く生薬(例、防已、細辛、白朮、芍薬)と共に用いれば附子の作用は全身に誘導される。しかしこの様に全身に誘導される場合は、前二者に比べて附子の作用は弱くなって、新陳代謝の賦活という面よりも水毒症状を治功という作用に変わってしまう。また附子を食道、咽部、胸部に行く生薬(例、半夏、梔子)と共に用いると附子の作用は食道、咽部、胸部に誘導され、食道、咽部、胸部の新陳代謝機能を亢めるようになる。
 これを実際に桂枝湯の加減方にあてて見ると更によく理解できる。すなわち桂枝湯に附子を加えた桂枝加附子湯では、附子の作用は桂枝によって表に誘導されると共に、芍薬によって全身に誘導される。しかし全身に誘導されると作用は弱くなるため、主に表、即ち筋肉の部位に達し、麻痺、刺激、温補作用を示すようになり(関節の部位にも少し働く)、四肢痙攣、運動障害、麻痺、小便難などを治すようになる。また桂枝湯から芍薬を除いて附子を加えた桂枝附子湯では附子は桂枝によって表に誘導されるだけであるため、表証があり、裏に邪のないもの、関節に痛みなく、ただ筋肉が痛むだけのものに用いる薬方となっている。桂枝湯に白朮と附子とを加えた桂枝加朮附湯は、附子の作用を表に誘導する桂枝と、全身に誘導する芍薬、白朮がある。全身に誘導するものが、このように多くなれば表のみならず全身に効くようになるため、筋肉だけでなく、関節にも効くようになる。従って水毒症状が著明となり、四肢の麻痺、屈伸困難、尿利減少などに用いる。この桂枝加朮附湯に更に茯苓を加えたものが、桂枝加苓朮附湯である。本方には附子の作用を表に誘導する桂枝と、半表半裏から裏に誘導する茯苓と、全身に誘導する芍薬、白朮があるため、結局、附子は全身に働き、水毒症状を除く作用にしかなりえず、心悸亢進、めまい、筋肉の痙攣(茯苓と桂枝と甘草の組み合わせの薬効の増強)、尿利減少(桂枝と白朮の組み合わせの薬効の増強)などのみとなる。ところが、この桂枝加苓朮附湯より桂枝、大棗、甘草を除いたものは真武湯(茯苓、芍薬、生姜、白朮、附子)で本方には附子の作用を半表半裏から裏に誘導する茯苓と、全身に誘導する芍薬、白朮があるため、全身にも誘導されるが、多くは半表半裏から裏に誘導され、内臓諸器管の新陳代謝機能を亢めるように働く。従って本方と桂枝加朮附湯とは表裏の関係にある薬方であることがわかる。
 葛根加朮附湯葛根湯に白朮と附子を加えたもので、附子の作用を表に誘導する葛根、麻黄、桂枝と、全身に誘導する芍薬、白朮があるが、表に誘導するものが多いため、主に表の新陳代謝機能を亢めるように働いている。甘草附子湯(桂枝、白朮、甘草、附子)や麻黄細辛附子湯(麻黄、細辛、附子)では表に誘導するものと、全身に誘導するものが一つずつ含まれているため、主に表に働き、筋肉の痛みなどを治すが、関節にも少し働く。真武湯と附子湯(茯苓、芍薬、白朮、人参、附子)とを比べると生姜と人参が入れ替わっているにすぎない。この生姜は胃内停水を除くが、人参は全身の水の偏調を調えるように働く。しかしそれ以上に大切な事は、真武湯では附子の作用を半表半裏から裏に誘導するものは茯苓のみで、全身に誘導するものは芍薬と白朮があるが、附子湯を見ると、附子の作用を半表半裏から裏に誘導するものが茯苓と人参の二種となり、全身に誘導するものは真武湯と同じ芍薬と白朮であるため、附子湯の方が半表半裏から裏の新陳代謝機能を亢める作用が強く、虚証の薬方である事がわかる。附子理中湯人参湯加附子〕(人参、白朮、甘草、乾姜、附子)は附子の作用を半表半裏から裏に誘導する人参、乾姜と、全身に誘導する白朮があるため、ほとん選;内臓諸器管の新陳代謝機能を亢めるように働く。四逆湯(甘草、乾姜、附子)も同様に半表半裏ないし裏に効く。しかし本方と前方は附子と乾姜の組み合わせとなるため、新陳代謝を亢める作用は相乗的に亢まるため、非常に虚証(虚寒証)に用いる薬方となっている。利膈湯(半夏、梔子、附子)では、附子の作用は半夏、梔子によって食道、咽部、胸部に誘導されるため、咽喉が塞って嚥下困難をきたし、嘔吐、粘痰を吐し、口渇を訴えるものに用いる薬方であることがわかる。
 以上の様に附子を配剤した場合には、虚実を注意することは勿論、附子がどこに効いているかを常に考えながら使用しなければとんでもない事になるのはまれではない。例えば当帰芍薬散(当帰、芍薬、川芎、茯苓、白朮、沢瀉)を服用している婦人があったとする。この人が、冷えが強く、新陳代謝機能もおとろえているというので附子を加えたとすれば、附子の作用を全身に誘導する芍薬、白朮と、半表半裏から裏に誘導する茯苓があるため、附子は多くは半表半裏から裏に作用し、その部位の新陳代謝機能を亢め、冷えを除くように働く。普通の場合はこれでよいのであるが、もしこの婦人が妊婦であったならどうであろうか。胎児の位置は裏位であるので、附子の作用は胎児にも強く作用する。しかしいくら母親が虚証であっても、胎児は新陳代謝の盛んな実証であるため、実証に附子を与えることになり、危険である。このような事は、附子の温補作用のみに注意し、その作用する位置を考えなかったために起こる問題であり、よく注意しなければならない。また、冷えが強く、手が真白く、ロウのようになった時に、附子の効く位置の事を考えず温補作用のみ考え、すぐ真武湯をと考える傾向があるが、これなども半表半裏から裏に強い寒があるのなら真武湯を用いてもよいが、それほど強くない場合は附子の作用を表に誘導して表を温め、表の新陳代謝機能を亢めるようにすべきであることは今さら言うに及ばないことであろう。

※内臓諸器管? 内臓諸器官では
※一般的には、桂枝加朮附湯の駆水作用を強めたものが桂枝加苓朮附湯と言われ、ほぼ同じように使われていますが、上記のように、村上光太郎先生は、桂枝加附子湯と桂枝加苓朮附湯は全く異なるものとされています。村上先生の理論では、桂枝加苓朮附湯は、関節リウマチなどの関節に対する症状に対しては、効果が期待できないことになります。



副作用
 本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である。

a 重大な副作用
1) 偽アルドステロン症 :低カリウム血症、血圧上昇、 ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増 加等の偽アルドステロン症があらわ  れることがあるので、観察(血清カリ ウム値の測定等)を十分に行い、異常 が認められた場合には投与を中止  し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

2) ミオパシー :低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。


その他の副作用

頻度不明
過敏症注1) 発疹、発赤、瘙痒等
その他 心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ、悪心等
注1)このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。


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