桂芍知母湯
本方は葛根湯の 葛根の代わりに防風を、大棗の代わりに知母をそれぞれ置き替え、それに朮と附子とを加えたものとみることができる。知母には滋潤・鎮静の効があり、防風に は発汗・解熱・鎮静の効がある。朮には鎮痛・健胃・利尿の効があり、附子は新陳代謝を振興して血行をよくし、鎮痛の効がある。従って本方は葛根加朮附湯の證に似て、それよりも一段と虚して身体枯燥の状があるものを目標とする。
本方は以上の目標に従って、関節リウマチ・神経痛等で身体枯燥の状のあるものに用いる。
『漢方精撰百八方』
8.〔方名〕 桂枝芍薬知母湯(けいししゃくやくちもとう)
〔出典〕 金匱要略
〔処方〕 桂枝4.0 知母4.0 防風4.0 芍薬4.0 甘草2.0 麻黄3.0 白朮4.0 附子0.5~1.0 生姜
〔目標〕 諸肢節疼痛、身体尪羸(病弱で瘠せてよろよろする)、脚腫脱するが如く、息切れがしてむかむかして吐き気のするものに本方が適する。
〔かんどころ〕 慢性関節炎、畸型性関節リウマチで関節のふしくれ立ったものに本方が効く。
〔応用〕 本方は比較的頻用される処方で、殊にの肩胛関節の痛むものによい。 結核性肩胛関節炎。結核性体質の者で肩胛関節炎を患うものでレントゲン写真で特に関節面破壊像の認められないものに本方を与えると比較的短時日に治癒することを経験するが、元来が結核性関節炎の初期はその鑑別が困難なものであるから、いきなりギブスで固定することをせず、一応本方で治療してみることを奨める。
防風は風を治し湿を去る、一身尽く痛むを治すとあり、発汗解熱鎮痛の作用がある。知母には滋潤鎮静の作用があるので、慢性炎症に応用される。
本方の処方構成は葛根湯に類似している。すなわち葛根湯の葛根の代りに防風が、大棗の代わりに知母が入ったものが本方であるから、本方は葛根湯証の慢性化したものとも考えられ。
本方に類似の方として葛根加朮附湯、越婢加朮附湯、桂枝加苓朮附湯があるが、普通の関節リウマチにはこれ等の諸方が適する。
45才女。顔がかっかとほてる、右肩が痛く、疲れ切った感じである。本人は四年前結核性腹膜炎を患い、腹水がたまったのを真武湯を投与して五ヵ月で治癒せしめたことがあるが、未だに顔色が悪く元気がない、そこで桂枝芍薬知母湯を与えたところ一週間分で肩の痛いのは治ったが、顔面に湿疹が出来て痒いと言って来た。そこで桂枝加黄耆湯をやったところ一週間の服薬で治ったが、今度は頭痛がして肩がこるという。そこで葛根湯を投与してーヵ月して全治した。本例からしても本方と葛根湯との近似性が認められる。
60才男。十ヶ月前から心臓が悪く、腰痛と左肩のつけ根が痛い。四十肩と診断されたが治らない。本方投与一ヶ月で全治した。
『漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
4 表証
表裏・内外・上中下の項でのべたように、表の部位に表われる症状を表証という。表証では発熱、悪寒、発汗、無汗、頭痛、身疼痛、項背強痛など の症状を呈する。実証では自然には汗が出ないが、虚証では自然に汗が出ている。したがって、実証には葛根湯(かっこんとう)・麻黄湯(まおうとう)などの 発汗剤を、虚証には桂枝湯(けいしとう)などの止汗剤・解肌剤を用いて、表の変調をととのえる。
3 桂芍知母湯(けいしゃくちもとう) (金匱要略)
〔桂枝(けいし)、知母(ちも)、防風(ぼうふう)、生姜(しょうきょう)、芍薬(しゃくやく)、麻黄(まおう)各三、朮(じゅつ)四、甘草(かんぞう)一・五、附子(ぶし)〇・五〕
本方は、葛根加朮附湯の葛根、大棗を去り、かわりに防風、知母を加えたもので、葛根加朮附湯よりもさらに虚証となり、身体枯燥(表虚)の状を
呈している。したがって、表に属する筋肉は枯燥し萎縮しているが、裏に属する関節は腫れて、あたかも鶴の膝のようになったもの。本方證は、知覚麻痺や運動
障害を訴えるものもある。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、桂芍知母湯證を呈するものが多い。
一 関節リウマチ、神経痛など。
『明解漢方処方』 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.66
桂芍知母湯(けいしゃくちもとう) (金匱)
処方内容 桂枝 芍薬 知母 防風 麻黄各三・〇 朮四・〇 甘草 生姜各一・五 附子一・〇(二三・〇)
急性関節リウマチ 慢性畸型関節リウマチ
必須目標 ①慢性で四肢(特に膝関節)に熱をもって疼痛し、木のコブのように変型していて、その周厚は反って肉落ち痩せているリウマチ。
確認目標 ①皮膚はカサカサに乾燥し体も痩せている。
②ときには両脚微腫していることもある。
初級メモ ①必須目標にあるような変型膝関節リウマチを漢方用語では鶴膝風(かくしつふう)という。
②鶴膝風に使う処方は古方では本方だけしかないから一応収録したが、先輩の治験例を読んでも、本方は余り効果がないらしい。
中級メモ ①本方の効果が余り期待出来ないため、原南陽は附子を烏頭に代えて用いるべきだという。
②鶴膝風には本方よりもむしろ後世方の舒筋立安散(二五味方)に乳香、没薬の二味を鎮痛剤として加味した処方の方が成功している場合が多い。
③吉田一郎氏の説によれば、本方は慢性鶴膝風に用いる処方でなく、外邪によって起った急性関節リウマチに用いるべき処方であるという。(漢方二巻四号)
適応証 慢性畸型関節リウマチ。
追記 この原稿を書き終えてから発見したのだが「漢方の臨床一一巻四号」に矢数道明氏が”舒筋立安散”で卓効のあった治験例を発表しておられる。参照願いたい。ただし従来の竹茹が生姜に代っている。
※竹茹 → 竹筎
『漢方臨床ノート 治験篇』 藤平健著 創元社刊 p.524 関節リウマチ 桂枝芍薬知母湯による慢性関節リウマチの治験 慢性関節リウマチは40歳以後の婦人に見られることが多く、ことに月経閉止後に発病することがしばしばであることから、内分泌的要因があるものと想像されてはいるが、真の原因に関しては未だ定説がない。本症は医療の東西を問わず、頑強に治療に抗して患者を苦しめ、医師を困却せしめる疾患の一つである。近時、新薬の出現によって患者の病苦はかなり軽減せられる場合が多くなってきたとはいえ、いまだ根治の困難な疾病の部類に属しているものということができよう。 最近私は、定型的な桂枝芍薬知母湯証を呈する本症の患者を取り扱い、同湯を投じて順調な経過をたどっている一症例を経験する機会を得たので、ここに、これを報告して、同学の方々の御参考に供したいと考える次第である。 患者は48歳の中背の婦人。初診・昭和32年6月21日。 何の原因もなく、昨年3月初旬から両手の指関節に疼痛と腫脹とが発し来たり、次いで足・膝の関節にも波及してきた。コーチゾンや、その他諸種の治療により、幾分は好転したが、以後は頑として治療に抗して、依然かなりの運動障害と疼痛とに日夜苦しめられつつ今日に至っている。 患者は、顔色わるく、極度に痩せた、公務員の妻。家人に支えられて、ようやく診察台に横臥できた。全身骨と皮ばかりという記容も決して極端ではないというほどの痩せようである。 両側の手関節ならびに足関節は、背側の腫脹が著明で、その皮膚は特殊の光沢を示し、手関節は屈曲位で、足関節は尖足位で、拘縮を呈し、膝関節は紡錘形の腫脹を呈している。両手の指関節は一つ一つが紡錘に腫脹し、中指関節は伸展位、末端指関節は屈曲位拘縮を呈している。両手の骨関節、前膞伸筋、三頭膞筋、三角筋、四頭股筋は、すでにかなりの萎縮を呈している。 自覚症状としては、大便は一日一行、小便は五~六回、夜間尿はない。睡眠は疼痛のひどくないときは普通。食欲がなく、極端に食が細い。口渇はないが口燥があり、口がねばつく。少し歩いても息切れがしやすく、汗ばみやすい。歩行は家人の介助を得てようやく可能の程度。帯をしめることができないが、着物は時間をかければ何とか着ることができる。腫脹した各関節は、常時ではないが、痛んでいることのほうが多い。悪寒、頭痛、腰痛、発熱、耳鳴、肩こり等はない。 他覚症状としては、脈は沈にして、やや細。舌には湿潤するでもなく、乾燥するでもない、薄い白苔がある。腹力は、表面は硬く、内部は軟弱である。すなわち、左右の腹直筋は強く拘攣して、さながら二枚のうす板を張ったようである。しかしよく安じてみると、内部の方はスカッとしていて力がない。胸脇苦満、瘀血の圧痛点等は証明されない。 以上の自他覚症状を総合して、本症は『金匱要略』所載の「諸肢節疼痛シ、身体尪羸(おうるい)、脚腫脱スルガ如ク、頭眩短気シ、温々トシテ吐セント欲スルモノハ、桂枝芍薬知母湯之ヲ主ル」に該当するものと判断した。よってこれを投与。 二週間目には疼痛がかなり減退し、食欲も相当に出てきた。投薬五週間後には介助なしに、ほとんど普通に歩行できるようになり、歩いても息切れがしなくなった。腫脹していた諸関節は一様に腫脹の減退を認め、当初のほぼ半ばの程度となり、拘縮も著減し、帯がひとりで結べるようになった。投薬八週間後には、身体全体にわずかながら肉がつき、体力も出てきて、少量の洗濯や掃除ができるようになった。四ヵ月後の現在もない服薬中であるが、現在では、諸関節の腫脹は著明に減退し、疼痛は全く消失し、食欲は亢進して、血色も良好となり、単独で苦痛を感ずることもなく来院できるようになっている。いまだ完治の域に達しているわけではないが、この状態で経過すれば、遠からず完治に近い状態に到達しうるのではないかと思う。 以上の治療経験から見て、本症例が桂枝芍薬知母湯の証を呈していたことは、方に質してこれを立証したわけであるから、まちがいのなかったものと考えてよいと思う。前述の桂枝芍薬知母湯の条文中の「身体尪羸」の解釈に諸説があって、あるいは、これを身体の痩せ衰得ている意味に取り(『類聚方広義』頭注)、あるいはこれを疼痛する関節が木のこぶしの如く腫起している意にとって、決っして身体が痩せている意味ではないとしている(『勿誤薬室方函口訣』『金匱要略述義』)等、まちまちであるが、私はわずか一例の経験から早急な断定を下すことは危険であるとは思うが、以上の治療経験から見て、両方の意味をともに含んでいるものと見てよいのではないかと考える次第である。 なお、方中の附子は白河附子を使用し、1日量1.8gを用いた。 (「日本東洋医学会誌」8巻3号、昭和32年12月) |
『臨床応用 漢方處方解説』 矢数道明著 創元社刊 p.654 32 桂芍知母湯(けいしゃくちもとう)〔金匱・歴節病〕 |
桂枝・知母・防風・芍薬・麻黄・生姜(乾生姜一・〇)各三・〇 朮四・〇 甘草一・五 附子〇・五~一・〇 「諸肢節疼痛、身体尪羸(おうるい)(痩せる)脚腫脱する如く、頭眩、短気、温々吐せんと欲するもの。」 関節リウマチ・関節炎などで、腫脹疼痛があり、膝関節が腫れて、上下の筋肉が萎縮し、鶴の膝のようになったもの、また下肢の運動および知覚の麻痺したものなどに応用される。 |
『-考え方から臨床の応用まで- 漢方処方の手引き 』 小田 博久著 浪速社刊 p.156 桂芍知母湯(けいしゃくちもとう) (金匱) 桂枝・知母・防風・芍薬・麻黄:三、白朮:四、甘草:一・五、乾生姜一、附子:〇・五~一。 (主証) 慢性関節リウマチで、関節変形して上下の筋肉に萎縮。 (客証) 皮膚乾燥(ガサつく)。痩(や)せている。めまい。 (考察) 長期服用の必要。 関節変形して軟骨がせり出し、その周囲筋に萎縮のみられるものは、鶴膝風(かくしつふう)と呼ばれる。 金匱要略(歴節病) 「諸肢節疼痛、身体尩羸(おうるい)(やせる)、脚腫脱する如く、頭眩、短気、温々吐せんとするもの。」 |
『和漢薬方意辞典』 中村謙介著 緑書房
桂枝芍薬知母湯(けいししゃくやくちもとう) [金匱要略]
【方意】 表の水毒・寒証による激しい関節痛・関節腫脹・寒がり等と、表の寒証による頭痛・悪寒・発熱等と、熱証による局所の熱感・自汗・顔面紅潮等と、虚証による疲労倦怠等のあるもの。
《太陰病から少陰病、虚実中間からやや虚証》
【自他覚症状の病態分類】
表の水毒・寒証 | 表の寒証 | 熱証 | 虚証 | 脾胃の虚証 | |
主証 | ◎激しい関節痛 ◎関節腫脹 ◎下腿足部腫脹 ◎寒がり |
◎頭痛 ◎悪寒 ◎発熱 |
◎局所の熱感 ◎自汗 ◎顔面紅潮 |
◎疲労倦怠 | |
客証 | 手足攣痛 腰痛 神経痛 運動知覚麻痺 顔色不良 冷え 微腫 尿不利 |
カゼ引き易い 咳嗽 |
高熱 口渇 皮膚粘燥 |
目眩 息切れ 筋萎縮 るいそう |
乾嘔 嘔吐 悪心 |
【脈候】 浮数でやや力あり・浮弱・微弱・沈で力あり。
【舌候】 口舌乾燥、或いはやや湿潤し、多くは無苔時に白苔。
【腹候】 少しく陥凹して軟、時に腹直筋の緊張がある。
【病位・虚実】 水毒・寒証が中心的病態であり陰証で太陰病から少陰病の相当する。しかし表証・熱証が顕著な場合には太陽病或いは少陽病に相当した病状を呈する。脈力および腹力より、また自他覚症状より虚実中間からやや虚証である。
【構成生薬】 蒼朮5.0~10.0 桂枝4.0 知母4.0 防風4.0 芍薬3.0 麻黄3.0 甘草2.0
生姜1.0 附子a.q.(0.5)
【方解】 本方は桂枝加朮附湯から大棗を去り、知母・防風・麻黄を加えたものと考えられる。桂枝加朮附湯は寒証・表の水毒・表の寒証・表の虚証を構成病態としている。本方意にもこれらの構成病態があり、麻黄が加わったために表の水毒・表の寒証を除く作用が強調される。更に防風も温性で表の代謝を亢進させて発汗し鎮痛作用がある。本方ではで麻黄・桂枝の組合せとなっており、表の虚実に関しては桂枝加朮附湯と異なり表の実証である。知母は寒性で清涼・解熱・止渇作用があり、熱証に有効である。本方意は寒証を主としているが、熱証も混在しているものである。なお、脾胃の虚証には桂枝湯と同じく生姜・大棗が対応している。
【方意の幅および応用】
A 表の水毒・寒証:激しい関節痛・関節腫脹等を目標にする場合。
関節リウマチ、関節炎、神経痛、末梢神経炎、片麻痺
B 表の寒証:悪寒・発熱等を目標にする場合。
関節リウマチの急性増悪期、急性副鼻腔炎
【参考】 *諸肢節疼痛し、身体尪羸(おうるい)し、脚腫れて脱するが如く、頭眩短気し、温々として吐せんと欲す、桂枝芍薬知母湯之を主る。
『金匱要略』
*風毒腫痛し、寒を憎み、壮熱し、渇して脈数、膿を成さんと欲する者を治す。痛風、走注して骨節疼痛し、手足攣痛する者を治す。痘瘡、貫膿十分ならず、或は期を過ぎて結痂せず、憎悪身熱成、一処疼痛し、脈数なる者は、余毒癰を成さんと欲する也。此の方に宜し。若し膿已に成る者は、早に披針にて割開すべし。伯州散を兼用す。
『類聚方広義』
*此の方は身体瘣★(かいらい)(木の瘤)と言うが目的にて、歴節数日を経て頭眩、乾嘔などする者を治す。又腰痛、 鶴膝風(鶴の脚のように膝のみの腫脹)にも用ゆ。又俗にきびす脚気と称する者、此の方効あり。脚腫如脱とは足首腫れて、靴脱するが如く、行歩すること能わざるを言う。
『勿誤薬室方函口訣』
*本方は鶴膝風と言われる膝関節の変形・疼痛のあるものに用いられるが、表の寒証の存在す識場合に有効とされる。これがない場合には烏頭湯を第一に考える。
*患秀の栄養が悪くて痩せていて、罹患関節は腫れ、周囲の肉が落ち、皮膚はガサガサと枯燥しているものを目標にする。桂枝加朮附湯では及ばない場合に用いる。
※尪=鬼-ム+王
※★(疒+畾)
年は24歳、女子。始め左足首が痛み出し、次にはその痛みが膝に上って、歩くのが苦痛だというのです。押すと痛むし、屈伸するのが一番辛いようです。左足には腫れも出現。越婢加朮湯をやりましたが効きません。
陽が虚している所に、水が絡んでこうなったのだろうという風に考えて、桂枝や附子や白朮の入っている甘草附子湯に代えました。
経過が良いといっている中に、今度は膝ががくがくとして膝から下が抜けそうだといい出しました。そこで気が付いて桂枝芍薬知母湯をやりますと数日の患いが一遍に吹っ飛んでしまいました。桂枝芍薬知母湯の証に「脚腫脱するが如し」とあるのを目標にしました。『勿誤薬室方函口訣』に「俗にきびす脚気と称する者、此の方効あり。脚腫如脱とは足首腫れて、靴脱するが如く、行歩すること能わざるを言う」とある。
荒木性次『七合』279
『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊
p.310
桂芍知母湯(けいしゃくちもとう)
<方剤構成>
附子 芍薬 蒼朮 生姜 麻黄 甘草 桂枝 防風 知母
<方剤構成の意味>
附子・芍薬・蒼朮・生姜は真武湯から茯苓を去り,白朮を蒼朮(発散性が強い)に代えたもの,麻黄・甘草・桂枝は麻黄湯から杏仁を去ったものに相当する。桂枝・芍薬・生姜・甘草は桂枝湯から大棗を去ったものであるから,方剤中には桂麻各半湯が,より湿証向きに手直しされて(潤性薬である杏仁と大棗が除かれている)含まれているとも見ることができる。
防風は発散・鎮痛薬,知母も発散性の解熱・消炎薬で,真武湯に発表剤としての効果を賦与し,さらに燥湿効果を強化したものと見ることができよう。附子・芍薬・防風の鎮痛作用,知母の消炎作用も,発散・燥湿作用とともに,この方剤の欠くことのできない一要素と考えねばなるまい。附子を主薬としする真武湯がもとになっている方剤であるから,寒虚証向きであることは言うまでもない。
<適応>
慢性関節リウマチ。ただし,湿寒虚証で,寒証は著しいが,汗かきでないことを条件とする。
『健康保険が使える 漢方薬 処方と使い方』
木下繁太朗 新星出版社刊
桂枝芍薬知母湯(けいししゃくやくちもとう)
金匱要略(きんきようりゃく)
健 三
どんな人につかうか
手足の関節に慢性の痛みがあり、肉が落ちて関節だけ(特に膝(ひざ)関節)が木のこぶのように腫(は)れて変形(鶴の膝(ひざ)の様な形)しているので、体力が衰え、やせて皮膚がかさかさしているものに用い、関節リウマチ、神経痛に応用します。
木下繁太朗 新星出版社刊
桂枝芍薬知母湯(けいししゃくやくちもとう)
金匱要略(きんきようりゃく)
健 三
どんな人につかうか
手足の関節に慢性の痛みがあり、肉が落ちて関節だけ(特に膝(ひざ)関節)が木のこぶのように腫(は)れて変形(鶴の膝(ひざ)の様な形)しているので、体力が衰え、やせて皮膚がかさかさしているものに用い、関節リウマチ、神経痛に応用します。
目標となる症状
症 ①関節の腫張(しゅちょう)、変形(鶴膝風(かくしつふう))。②関節痛。③四肢筋肉(ししきんにく)の萎縮。④下肢の運動、知覚の麻痺。⑤頭痛、めまい。⑥息切れ。むかつき(乾嘔)。⑦皮膚枯燥(こそう)。⑧やせ。⑨足のむくみ。
腹 一定せず。脈 沈、細。舌 舌質淡紅(ぜつしつたんこう)、舌苔は白。
どんな病気に効くか(適応症)
関節リウマチ、神経痛。変形性膝関節リウマチ(鶴膝風(かくしつふう))、関節炎、多発性関節炎、変形性関節症。
この薬の処方
桂枝(けいし)、知母(ちも)、防風(ぼうふう)、生姜(しようきよう)、芍薬(しやくやく)、麻黄(まおう)各3.0g。朮(じゆつ)4.0g。甘草1.5g。附子(ぶし)1.0g。
症 ①関節の腫張(しゅちょう)、変形(鶴膝風(かくしつふう))。②関節痛。③四肢筋肉(ししきんにく)の萎縮。④下肢の運動、知覚の麻痺。⑤頭痛、めまい。⑥息切れ。むかつき(乾嘔)。⑦皮膚枯燥(こそう)。⑧やせ。⑨足のむくみ。
腹 一定せず。脈 沈、細。舌 舌質淡紅(ぜつしつたんこう)、舌苔は白。
どんな病気に効くか(適応症)
関節リウマチ、神経痛。変形性膝関節リウマチ(鶴膝風(かくしつふう))、関節炎、多発性関節炎、変形性関節症。
この薬の処方
桂枝(けいし)、知母(ちも)、防風(ぼうふう)、生姜(しようきよう)、芍薬(しやくやく)、麻黄(まおう)各3.0g。朮(じゆつ)4.0g。甘草1.5g。附子(ぶし)1.0g。
この薬の使い方①前記処方を一日分として煎(せん)じてのむ。
②サンワ桂枝芍薬知母湯(けいししやくやくちもとう)エキス細粒(サンワロンT末)、成人一日9.0g。2~3回に分け、食前又は食間にのむ。
使い方のポイント・処方の解説
①四肢や軀幹(くかん)のしびれ、痛み、冷え、関節の腫張(しゆちよう)があり、関節に発赤、熱感、疼痛(とうつう)のあるもので、体力が衰え、全身的な熱症状のないものを目標に用います。
②桂枝(けいし)、防風(ぼうふう)、附子(ぶし)、麻黄(まおう)は冷(ひ)えをとり、湿(しつ)を利し、風を去る温性の効果があり、知母(ちも)は、ユリ科のハナスゲの根茎で、清涼(せいりよう)、解熱(げねつ)、鎮静(ちんせい)、利尿(りによう)作用があり、関節の熱をとってくれます。芍薬(しゃくやく)は、痛みをとめ、血行を良くし、朮(じゆつ)、甘草(かんぞう)、生姜(しようきよう)は、胃腸の働きを良くし、浮腫(ふしゆ)を取ります。
以上の総合効果で、鎮痛、血液循環の促進、浮腫(ふしゆ)を治し、消炎、鎮痛の効果をあらわします。
重大な副作用と初期症状
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
2) ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
[理由]
厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。
[処置方法] 原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等 により電解質 バランスの適正化を行う。
その他の副作用
注1) このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
②サンワ桂枝芍薬知母湯(けいししやくやくちもとう)エキス細粒(サンワロンT末)、成人一日9.0g。2~3回に分け、食前又は食間にのむ。
使い方のポイント・処方の解説
①四肢や軀幹(くかん)のしびれ、痛み、冷え、関節の腫張(しゆちよう)があり、関節に発赤、熱感、疼痛(とうつう)のあるもので、体力が衰え、全身的な熱症状のないものを目標に用います。
②桂枝(けいし)、防風(ぼうふう)、附子(ぶし)、麻黄(まおう)は冷(ひ)えをとり、湿(しつ)を利し、風を去る温性の効果があり、知母(ちも)は、ユリ科のハナスゲの根茎で、清涼(せいりよう)、解熱(げねつ)、鎮静(ちんせい)、利尿(りによう)作用があり、関節の熱をとってくれます。芍薬(しゃくやく)は、痛みをとめ、血行を良くし、朮(じゆつ)、甘草(かんぞう)、生姜(しようきよう)は、胃腸の働きを良くし、浮腫(ふしゆ)を取ります。
以上の総合効果で、鎮痛、血液循環の促進、浮腫(ふしゆ)を治し、消炎、鎮痛の効果をあらわします。
重大な副作用と初期症状
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
2) ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
[理由]
厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。
[処置方法] 原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等 により電解質 バランスの適正化を行う。
その他の副作用
頻度不明 | |
過敏症注1) | 発疹、発赤、瘙痒等 |
自律神経系 | 不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮等 |
消化器 | 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等 |
泌尿器 | 排尿障害等 |
その他 | のぼせ、舌のしびれ等 |
注1) このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。