健康情報: 桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)の効能・効果と副作用

2014年6月29日日曜日

桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)の効能・効果と副作用

漢方診療の實際 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
桂枝加黄耆湯
本方は桂枝湯の證で盗汗の出る者を治する。黄耆には盗汗を止める効がある。また虚弱児の感冒並びに湿潤性の皮膚病に用いて効がある。



 漢方精撰百八方 

53.〔方名〕桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)

〔出典〕金匱要略

〔処方〕桂枝、芍薬、大棗、生姜各4.0g 甘草、黄耆各2.0g

〔目標〕1.汗が多く出る、下半身が冷える、皮膚にしまりがなく、筋肉が水をふくんだ様にぶくぶくする、盗汗が出る、疲れやすい。
2.皮膚ががさがさして、栄養が悪く、はれものができたり、化膿したりして、治りにくい、しびれ感がある。

〔かんどころ〕皮膚に生気が無く、しまりが悪く、ぶくぶくしていうものと、肌が荒れて汚く、しびれ感がある。

〔応用〕多汗症。下腿潰瘍。中耳炎。むしにかまれるとそれがいつまでも治らない、下肢のしびれ感。
 
〔附記方名〕帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)

〔出典〕華岡青洲創方

〔処方〕桂枝加黄耆湯加当帰2.0g

〔応用〕るいれき。寒性膿瘍。肉芽発育不良。瘻孔。

〔治験〕1.汗疹(あせも)
 肥満した色の白い婦人、汗が出て、夏はあせもがひどくできる。桂枝加黄耆湯であせもがよくなり、からだが軽く動けるようになった。

2.中耳炎
  三才の幼児、かぜをひきやすく、かぜから中耳炎となり、耳鼻科にかかっているが、膿がとまらない。桂枝加黄耆湯を用い二週間で、排膿はやんだが、半年ほどこれをつづけ、かぜもひかなくなり、中耳炎も再発しない。

3.虫垂炎手術後の瘻孔
  二十八才の主婦、虫垂炎の手術をしたところ、半年後も、瘡口から分泌物が出て、口がふさがらない。医師は、今一度手術をする必要があるというが、手術をしたくないので来院。腹診するに、腹部はやや膨満していて、手術の瘡口のまわりに抵抗と圧痛がある。瘻孔は鉛筆の芯が通くらいものである。私はこれに帰耆建中湯を与えたところ、十日ほどたって糸切れのようなもの出て、瘡口は完全に癒合した。
大塚敬節


漢方薬の実際知識 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
4 表証
表裏・内外・上中下の項でのべたように、表の部位に表われる症状を表証という。表証では発熱、悪寒、発汗、無汗、頭痛、身疼痛、項背強痛など の症状を呈する。実証では自然には汗が出ないが、虚証では自然に汗が出ている。したがって、実証には葛根湯(かっこんとう)麻黄湯(まおうとう)などの 発汗剤を、虚証には桂枝湯(けいしとう)などの止汗剤・解肌剤を用いて、表の変調をととのえる。
4 桂枝湯(けいしとう)  (傷寒論、金匱要略)
〔桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)各四、甘草(かんぞう)二〕
本 方は、身体を温め諸臓器の機能を亢進させるもので、太陽病の表熱虚証に用いられる。したがって、悪寒、発熱、自汗、脈浮弱、頭痛、身疼痛な どを目標とする。また、本方證には気の上衝が認められ、気の上衝によって起こる乾嘔(かんおう、からえずき)、心下悶などが認められることがある。そのほ か、他に特別な症状のない疾患に応用されることがある(これは、いわゆる「余白の證」である)。本方は、多くの薬方の基本となり、また、種々の加減方とし て用いられる。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、桂枝湯證を呈するものが多い。
一 感冒、気管支炎その他の呼吸器系疾患。
一 リウマチ、関節炎その他の運動器系疾患。
一 そのほか、神経痛、神経衰弱、陰萎、遺精、腹痛など。
(3) 桂枝加黄耆湯
〔桂枝湯に黄耆三を加えたもの〕
桂枝湯證で、自汗の度が強く、盗汗の出るものに用いられる。



明解漢方処方 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.59
桂枝加黄耆湯(けいしかおーぎとう) (金匱)

 處方内容 桂枝湯に黄耆三、〇を加える。

 必須目標 ①上半身、殊に背面に汗の多い体質 ②尿量減少 ③浮腫はないかあっても軽微である ④脉は浮

 確認目標 ①倦怠感 ②食後に上半身に汗をかく ③下肢冷感 ④精神不安 ⑤黄汗

 初級メモ ①本方は多汗症で皮膚に湿気のある体質でこれを応用して小児のストロフィルス、水いぼ、とびひなどの湿性皮膚病に用いる。
 ②もし水滞が更に深部に入り、浮腫、関節腫、身重などの症を現わしてくると防已黄耆湯の証になる。
 ③黄汗については黄耆建中湯の項を参照のこと。

 中級メモ ①原典の条文は甚だ錯乱していて真を伝えていない。これを古型に眼原されたのは荒木正胤氏である(漢方と漢薬一〇巻九号、越婢湯について)。
 ②南涯「裏より外行するなり。血気急し、水気皮膚に在る者を治す。その症に曰く、腰より上汗出、煩躁、これ血気急するなり。腰髖弛痛し、物有りて皮中に在る状の如き、身疼重、これ水気皮膚に在るなり。曰く小便不利、これ裏水外行を示すなり」。

 適応証 湿潤性皮膚病。慢性中赤炎。皮膚の潰瘍。


臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
p.140 盗汗・自汗・多汗症・皮膚病
(4) 桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)
 桂枝湯の症で盗汗の出る者に用いる。また虚弱児の感冒・湿潤性の皮膚病・筋肉リウマチ・盗汗・多汗症・黄疸等に用いて有効である。




和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう) [金匱要略]

【方意】 表の水毒表の虚証による自汗・盗汗等のあるもの。しばしば気の上衝を伴う。
《太陽病.虚証》
【自他覚症状の病態分類】

表の水毒・表の虚 気の上衝
主証
◎上半身の自汗
◎盗汗





客証 ○稀薄な滲出液
 化膿
 身疼痛 腰痛
 蟻走感 しびれ感
○尿不利
 上半身の浮腫
 黄汗 脱汗
 足冷
 疲労倦怠
○のぼせ





【脈候】 浮弱・浮虚・浮洪弱・沈遅。

【舌候】 乾湿中間、やや乾燥に傾くこともある。

【腹候】 やや軟。

【病位・虚実】 水毒は表位にあり、特別に裏証がないために太陽病である。脈候、腹候および平素の虚弱傾向より虚証。

【構成生薬】 桂枝4.5 大棗4.5 芍薬4.5 甘草3.0 生姜1.0 黄耆3.0~6.0

【方解】 本方は桂枝湯に黄耆の加わったものである。黄耆は肌表の水毒を去り、止汗・利尿・強壮作用があり、虚弱・疲労倦怠・栄養不良・自汗・盗汗・滲出性の皮膚病変・浮腫・尿不利に有効に働く。桂枝湯同様に表の虚証であり、元来肌表のしまりが悪く、加えて表の水毒のため自汗傾向が一層顕著である。また一方で桂枝・甘草の組合せがあり気の上衝に有効である。

【方意の幅および応用】
 A1 表の水毒表の虚証:自汗・盗汗を目標にする場合
    虚弱児の感冒、盗汗、黄汗、黄疸
2 表の水毒表の虚証:稀薄な滲出液・化膿を目標にする場合。
    湿疹、ストロフルス、とびひ、あせも、伝染性軟粟腫、皮膚潰瘍、不良肉芽、痔瘻、
    慢性副鼻腔炎、中耳炎、臍炎
  3 表の水毒表の虚証:疼重・しびれ等を目標にする場合。
    筋肉痛、胸痛、腰痛症、顔面神経麻痺 

【参考】 *黄汗の病、両脛自ら冷え、又腰より以上必ず汗出で、下に汗無く、腰髖(腰と腰骨)弛痛し、物有りて皮中に在るが如く、劇しき者は食すること能わず、身疼痛し、煩躁し、小便不利す、桂枝加黄耆湯之を主る。
『金匱要略』
*諸種の黄病、但だ其の小便を利すべし。
『金匱要略』
*桂枝湯証にして、自汗、或は盗汗し、若しくは黄汗する者を治す。
『方極附言』

*此の方、能く盗汗を治す。又当帰を加え、芍薬を倍して帰耆建中湯と名づけ、痘瘡及び諸瘡瘍の内托剤(体力を補い、それにより病毒を体外に出す薬剤)とす。又反鼻を加えて奇発の効尤も優なり。
『勿誤薬室方函口訣』
*本方意の皮膚疾患および化膿は、薄い多量の分泌液を伴うことが多い。時には汚れたヤニ様の局面を呈する。
*本方証の患者が裏の虚証を伴うと黄耆建中湯が第一選択となる。また華岡青洲の帰耆建中湯は肉芽の新生には十全大補湯よりも強力であるとされる。

【症例】 慢性腎炎
  23歳の主婦。本年1月出産後、腎炎に罹り、某市立病院に入院。厳重なる蛋白と食塩制限療法を受けたが、盗汗と全身倦怠が強く、蛋白尿も少しも減少しないので2ヵ月にして退院、漢方治療を求めて来た。
 患者は食事に極端に神経質になり、食事そのものに恐怖を抱き、神経性拒食症の状態になっている。まず東洋的食養法を説き、西洋流の食事制限は誤りであることを教えて玄米食を奨めた。蛋白尿は強陽性であるが、血圧は130/70にして妊娠腎ではなく、産後の急性腎炎が慢性化したものとみた。
 東洋医学的には小柴胡湯の証を呈したので、始めに2週間小柴胡湯を投薬したが、流れるような盗汗が少しも取れない。桂枝加黄耆湯の証と再検討し、黄耆1日5.0を桂枝湯に加え投薬。2ヵ月後には蛋白尿もほとんど消失した。
 今年の夏は酷暑のためが発汗が著しいと患者が訴えていたが、盗汗が消失して全身倦怠感が取れてから、昼間も発汗が減少した。生気感が溢れて初診から約半年後の診察の際は、東洋医学による治療によって救われたと心から感謝の辞を述べた。
阪本正夫 『漢方の臨床』 14・11・29
腰痛
 49歳、女性。本年4月胃癌の開腹手術を受け、11月半ばから腰痛を訴え寝たきりである。癌が腰椎または腰髄に転移したのではないかとの懸念を持ちながら診察すると、下肢にしびれや痛みはなく、腰椎も臨床的には変化がみられぬ。脈は浮弱、大小便は普通、上腹部は正中線の手術創痕を中心にして一般に緊張が強い。背腰部の特に腎兪あたりが緊張して圧痛がある。趺陽の脈は軟、少陰の脈は触れ難い。足は冷たい。
 黄汗の「両脛自冷、腰髖弛痛」と思い出して桂枝加黄耆湯を使った。これで治らなければ他に手なく、尻尾を巻く覚悟である。
 10日ほどたって連絡があり、腰痛が取れたという。20日ほどたって再び連絡があり、腰痛は取れたが排便時に腹が痛むというので烏頭桂枝湯に転方した。
龍野一雄 『漢方の臨床』 2・3・48


『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊


桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)
 桂枝湯に黄耆を加えたものである。黄耆は皮膚の栄養を高め,汗を調節する要薬で,盗汗・汗かきにはなくてはならない生薬である。もともと桂枝湯が汗の出やすい体質向きの方剤であるから,桂枝加黄耆湯は一層汗の出やすい虚証者向きの方剤と言える。
 カゼや急性熱性疾患の初期(悪寒や頭痛を訴える時期)に用いるほか,虚弱児のアセモその他の皮膚疾患(比較的軽症のもの)に用いて奏効することが多い。



『健康保険が使える 漢方薬 処方と使い方』
木下繁太朗 新星出版社刊

桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)
 東
金匱要略(きんきようりゃく)

どんな人につかうか
 桂枝湯(けいしとう)に黄耆(おうぎ)を加えたもの。上半身に汗をかきやすく(特に食後)、下肢(かし)が冷(つめ)たく、疲れやすく,精神不安があり、尿量の少ない人に用い、盗汗(ねあせ)、とびひ、小児ストロスルス、多汗症、風邪(かぜ)などに応用します。

目標となる症状
 ①上半身ことに背中に汗をかきやすい。②食後に発汗(上半身)。③動くとすぐ汗をかく。④黄汗(汗でシャツが黄ばむ)。⑤下肢冷感。⑥倦怠感(だるい)。⑦尿量が少ない。⑧精神不安。⑨寒がる。⑩風邪をひきやすい。

  桂枝湯(けいしとう)に準ずる。

 浮。


どんな病気に効くか(適応症) 
 体の衰えているものの、盗汗あせも。多汗症、とびひ、小児ストロフルス、水いぼ、慢性の皮膚病、中耳炎、黄疸(おうだん)、顔面神経麻痺(まひ)、虚弱者の感冒(かんぼう)。

この薬の処方
 黄耆(おうぎ)2.0g 桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)各4.0g。甘草2.0g。(桂枝湯(けいしとう)<72頁>に黄耆(おうぎ)を加味)

この薬の使い方
前記処方を一日分として煎(せん)じてのむ。
東洋桂枝加黄耆湯エキス散、成人一日6.0gを一日2~3回に分、食前又は食間にのむ。

使い方のポイント
 ちょっとしたことで、すぐ汗をかく(上半身)。寒がる(特に下肢)。風邪(かぜ)をひきやすいといった状態(衛虚(えきょ))に用いるものです。金匱要略(きんきようりゃく)には「腰から上に汗が出て下には汗をかかず、腰、大腿部にひきつるような痛みがあり、激しい時は食欲が全くなく、身体が重く、煩躁(はんそう)して、小便の出が悪く、このために黄ばんだ汗が出る時に用いると良い」とあります。
この薬の処方  桂枝湯(けいしとう)に黄耆(おうぎ)を加えたもの。黄耆(おうぎ)は皮膚の血行を良くして発汗をとめ、しびれを軽くし、浮腫をとる作用がある。




副作用
1)重大な副作用と初期症
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
2) ミオパチー: 低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
[理由]
厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。

[処置方法]
原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度によ り適切な治療を行うこと。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等により電解質バランスの適正化を行う。

2) その他の副作
過敏症:発疹、発赤、瘙痒等
このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
[理由]
本剤には桂皮(ケイヒ)が含まれているため、発疹、発赤、瘙痒等の過敏症状があらわれるおそれがあるため。

[処置方法]
原則的には投与中止により改善するが、必要に応じて抗ヒスタミン剤・ステロイド剤投与等の適切な処置を行うこと。

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