健康情報: 慢性肝炎に使われる漢方薬

2008年12月24日水曜日

慢性肝炎に使われる漢方薬

慢性肝炎に使われる漢方薬には色々なものがあります。
一時期は肝炎といえば小柴胡湯(しょうさいことう)と、病名漢方での使用が増え、異常なまでに小柴胡湯が使われましたが、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)の副作用問題が起こり、急激にその使用量が減りました。
当時は漢方薬に副作用があることで話題となりましたが、現在は落ちついているようです。
単なる肝炎という病名で小柴胡湯を用いるのではなく、他の症状、体質などを考慮して漢方薬を服用すれば、良くなることもあります。
代表的な薬方とその症状は下記の表のとおりです。

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慢性肝炎に良く用いられる漢方薬方の表(『漢方処方類方鑑別便覧』より)
症状 大柴胡湯 小柴胡湯 茵蔯蒿湯 茵蔯五苓散 柴胡桂枝湯 四逆散 柴胡桂枝乾姜湯 補中益気湯 十全大補湯 人参湯 平肝流気飲 乾姜人参半夏丸料
便秘がち
下痢しやすい
尿の出が少ない
食欲不振
不眠傾向
汗をかきやすい
上半身に汗をかく
首から上に汗をかく
寝汗をかく
顔色が悪い(貧血傾向)
皮膚が乾燥する
黄疸
疲れやすい・だるい
のぼせやすい
肩が凝る
咳・痰
口・のどが渇く
口の中が粘つき、苦い
薄い泡のような唾がたまる
吐き気・嘔吐
動悸がする
鳩尾がつかえる感じ
お腹が張っている
冷たいものを欲しがる
手足が冷える
感情が不安定


肝臓病と言うと小柴胡湯がまっ先に思いうかべますが、小柴胡湯に限定せず、虚実等を勘案して、柴胡剤(さいこざい)から選択する必要があります。一般に柴胡剤と呼ばれるものは、大柴胡湯(だいさいことう)柴胡加龍骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、四逆散(しぎゃくさん)、小柴胡湯柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)加味逍遙散(かみしょうようさん)補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが入ります。広義では、柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)等も柴胡剤になりますが、柴胡剤に含めることは稀です。

当然ながら、肝臓病でも、柴胡剤以外の薬方が用いられることがあります。

柴胡剤は、いわゆる胸脇苦満(きょうきょうくまん)を目標に用いられることが多いですが、
胸脇苦満が無くても使われることがあります。
胸脇苦満の変形として、肩こりや背部痛などがあらわれることがあります。


茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)は、黄疸(おうだん)の際に良く使われ、柴胡剤と併用されることが多いようです。
茵蔯五苓散は、五苓散に茵蔯蒿(いんちんこう)を加えたものです。


大柴胡湯柴胡加竜骨牡蠣湯茵蔯蒿湯等には、下剤である大黄(だいおう)が含まれていますので、下痢には注意が必要です。煎じ薬でしたら、量を調節した方が良いでしょう。ただ、下痢したほうが、症状が良くなることが多いようです。
大黄は単なる下剤ではありません。下痢を恐れて大黄を抜くと効果は弱くなる(効かなくなる)
可能性があります。

エキス剤の柴胡加龍骨牡蠣湯の中には、大黄を除いているものがありますので、注意が必要です。
これは、エキス製造メーカーから相談を受けた故大塚敬節先生が、大黄は適宜加減した方が良いと言ったことから、抜いたとのことです。このことを知らずに使うと、効果が出にくいので、注意しましょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯については、もともとの処方が不明で、一説には大柴胡湯に竜骨・牡蛎を加えたものであるとか、小柴胡湯に龍骨・牡蠣を加えたものであるとかの話もあります。
また、傷寒論に記載されている薬方では、鉛丹が入っていますが、鉛中毒の可能性があるので、現在、鉛丹を入れることはほとんどありません。

大柴胡湯も、傷寒論に記載の大柴胡湯は、大黄が入っていないようですが、多分、転写の際の誤りであろうと言われています。金匱要略の大柴胡湯には、大黄が含まれています。