一時期は肝炎といえば小柴胡湯(しょうさいことう)と、病名漢方での使用が増え、異常なまでに小柴胡湯が使われましたが、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)の副作用問題が起こり、急激にその使用量が減りました。
当時は漢方薬に副作用があることで話題となりましたが、現在は落ちついているようです。
単なる肝炎という病名で小柴胡湯を用いるのではなく、他の症状、体質などを考慮して漢方薬を服用すれば、良くなることもあります。
代表的な薬方とその症状は下記の表のとおりです。
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慢性肝炎に良く用いられる漢方薬方の表(『漢方処方類方鑑別便覧』より) |
症状 | 大柴胡湯 | 小柴胡湯 | 茵蔯蒿湯 | 茵蔯五苓散 | 柴胡桂枝湯 | 四逆散 | 柴胡桂枝乾姜湯 | 補中益気湯 | 十全大補湯 | 人参湯 | 平肝流気飲 | 乾姜人参半夏丸料 |
便秘がち | ◎ | ◎ | ||||||||||
下痢しやすい | ○ | ○ | ◎ | |||||||||
尿の出が少ない | ◎ | ◎ | ○ | △ | ○ | |||||||
食欲不振 | △ | △ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | |||
不眠傾向 | △ | ○ | ○ | △ | ○ | |||||||
汗をかきやすい | ○ | ○ | ○ | |||||||||
上半身に汗をかく | ○ | |||||||||||
首から上に汗をかく | ◎ | |||||||||||
寝汗をかく | ○ | ○ | ||||||||||
顔色が悪い(貧血傾向) | ◎ | ◎ | ◎ | |||||||||
皮膚が乾燥する | ◎ | |||||||||||
黄疸 | △ | ○ | ||||||||||
疲れやすい・だるい | △ | △ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ||||
のぼせやすい | ◎ | △ | ||||||||||
肩が凝る | ◎ | ○ | ○ | ◎ | △ | |||||||
咳・痰 | △ | ○ | △ | ○ | △ | △ | ||||||
口・のどが渇く | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | |||||||
口の中が粘つき、苦い | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |||||||
薄い泡のような唾がたまる | ◎ | ◎ | ||||||||||
吐き気・嘔吐 | △ | △ | △ | △ | ○ | ◎ | ||||||
動悸がする | △ | ◎ | ||||||||||
鳩尾がつかえる感じ | ○ | △ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
お腹が張っている | △ | ◎ | △ | |||||||||
冷たいものを欲しがる | ◎ | |||||||||||
手足が冷える | ◎ | ○ | ||||||||||
感情が不安定 | ○ | ○ | ◎ |
肝臓病と言うと小柴胡湯がまっ先に思いうかべますが、小柴胡湯に限定せず、虚実等を勘案して、柴胡剤(さいこざい)から選択する必要があります。一般に柴胡剤と呼ばれるものは、大柴胡湯(だいさいことう)、柴胡加龍骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、四逆散(しぎゃくさん)、小柴胡湯、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが入ります。広義では、柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)等も柴胡剤になりますが、柴胡剤に含めることは稀です。
当然ながら、肝臓病でも、柴胡剤以外の薬方が用いられることがあります。
柴胡剤は、いわゆる胸脇苦満(きょうきょうくまん)を目標に用いられることが多いですが、
胸脇苦満が無くても使われることがあります。
胸脇苦満の変形として、肩こりや背部痛などがあらわれることがあります。
茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)や茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)は、黄疸(おうだん)の際に良く使われ、柴胡剤と併用されることが多いようです。
茵蔯五苓散は、五苓散に茵蔯蒿(いんちんこう)を加えたものです。
柴胡剤は、いわゆる胸脇苦満(きょうきょうくまん)を目標に用いられることが多いですが、
胸脇苦満が無くても使われることがあります。
胸脇苦満の変形として、肩こりや背部痛などがあらわれることがあります。
茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)や茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)は、黄疸(おうだん)の際に良く使われ、柴胡剤と併用されることが多いようです。
茵蔯五苓散は、五苓散に茵蔯蒿(いんちんこう)を加えたものです。
大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、茵蔯蒿湯等には、下剤である大黄(だいおう)が含まれていますので、下痢には注意が必要です。煎じ薬でしたら、量を調節した方が良いでしょう。ただ、下痢したほうが、症状が良くなることが多いようです。
大黄は単なる下剤ではありません。下痢を恐れて大黄を抜くと効果は弱くなる(効かなくなる)可能性があります。
エキス剤の柴胡加龍骨牡蠣湯の中には、大黄を除いているものがありますので、注意が必要です。
これは、エキス製造メーカーから相談を受けた故大塚敬節先生が、大黄は適宜加減した方が良いと言ったことから、抜いたとのことです。このことを知らずに使うと、効果が出にくいので、注意しましょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯については、もともとの処方が不明で、一説には大柴胡湯に竜骨・牡蛎を加えたものであるとか、小柴胡湯に龍骨・牡蠣を加えたものであるとかの話もあります。
また、傷寒論に記載されている薬方では、鉛丹が入っていますが、鉛中毒の可能性があるので、現在、鉛丹を入れることはほとんどありません。
大柴胡湯も、傷寒論に記載の大柴胡湯は、大黄が入っていないようですが、多分、転写の際の誤りであろうと言われています。金匱要略の大柴胡湯には、大黄が含まれています。