健康情報: 芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん) の 効能・効果 と 副作用

2014年1月23日木曜日

芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん) の 効能・効果 と 副作用

臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
p.120 産後調理・産後神経症・血の道症・血脚気・ヒステリー
30 芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん) 〔万病回春〕
 当帰・川芎・熟地・白朮・茯苓・陳皮・烏薬・香附子・牡丹 各二・五
 益母・甘草・大棗・乾姜 各一・〇

応用〕 産後一切の気血を調理するというもので、貧血を補い、悪露悪血を去り,脾胃消化器系の働きをよくし,産後血の道症に起こる自律神経失調の諸神経症状に用いてよいものである。
 すなわち産後の調理、産褥熱の軽症、産後の頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、のぼせ等、自律神経失調症状、産後の血の道症、乳汁分泌不足、血脚気、月経不順などに応用される。


目標〕 本方は一貫堂の経験方の一つで、恩師森道伯翁は、産後の常用処方として、気血調理のため必ずこの方を服用させた。産後の悪露を下し、元気を恢復し、乳汁の分泌を促し、産後の神経症、血脚気などの予防に効果があるので、腹部は出産後のこととて真綿(まわた)のごとく軟らかである。日数を経過したものは下腹部に抵抗圧痛が認められることがある。もし下腹部の抵抗圧痛が甚だしく、下肢血栓症の疑いあるものには、第一加減と称し、熟地を去って、芍薬、乾地黄、桃仁、紅花、桂枝、牛膝、枳殻、木香、延胡索、各一・五を加えて、瘀血を駆除する。


主治〕 万病回春(産後門)に、「産後一切の諸病、気血虚損、脾胃怯弱、或は悪露(おろ)行(めぐ)らず、或は血を去ること過多し、或は飲食節を失し、或は怒気相冲し、以て発熱悪寒、自汗口乾き、心煩喘急、心腹疼痛、脇肋脹満、頭暈、眼花、耳鳴、口噤(つぐ)んで語らず、昏憒(こんかい)等の症を治す。」とある。
 牛山活套(産後門)に「産後には芎帰調血飲を用ゆべし。古芎皈湯(当帰、川芎、一名仏手散という)に陳皮、人参を加え、紅花を少し加えて一日の後、芎帰調血飲を用ゆべし。産後の諸病は気血を補うを以て本とす。その中に保産湯は禀賦虚弱の婦人に宜し、調血飲は実体の婦人に宜し」とある。

鑑別
 ○当帰芍薬散 107 (血症血の道症、神経症状・陰虚証、腹痛、臍傍拘攣、水毒)
 ○桂枝茯苓丸 37 (血症血の道症、神経症状・瘀血実証、臍傍臍下抵抗圧痛)
 ○加味逍遙散 23 (血症血の道症、神経症状・少陽病の虚証、胸脇苦満少しくあり、灼熱感、多怒、不眠、性急)
 ○抑肝散加陳皮半夏 145 (血症神経症、肝症、多怒、不眠、腹部動悸)

治例
 私は従来もしばしば本方を用いたことがあり、産婦にはほとんど習慣的に十数日間服用させていた。最近になっても私は本方を、産後相当の年月を経過し、しかも特定の腹証を呈し、かつ特有の血の道症状を呈している者で、諸治療に抵抗している難症に用いて、予想外の効果を収めることがあるのを知るに至った。
 従来先人の治験録の中に、本方について論及したものはほとんどないようである。

 (一) 手指のシビレ感を訴える。
 星〇千〇子、四五歳の主婦である。初診は昭和三七年八月二日であった。
 三年前の七月から、両手の中指、薬指、小指の三本がシビレてきた。同時に後頭部と両方の足の裏にもシビレ感が起こった。内科医の診断は脚気ということであったが、原因不明というところが多かった。
 そのうち両方の脚の筋肉が軟弱無力となり、崩れるように坐ってしまうことがたびたびあるようになった。
病院や診療所を転々としていたが、N大病院の内科で精密検査をしたが、やはり原因らしいものは見つからないから更年期障害の一症であろうということで、ホルモン注射などを受けたが治らなかった。そこでT大学内科に転じたところ、全く病気はないから神経科へ行くようにいわれ神経科の治療も受けたがだめであった。
婦人科では卵巣嚢腫があるかも知れないということであったし、アレルギー性体質のようだともいわれたが、どうしてもシビレ感はとれなかったというのである。お産は昭和一九年と二一年と二回、二度目のお産で腎盂炎を病み、その後で不整出血が続き、子宮癌の疑いをかけられたこともあった。
 体格も栄養も普通である。顔色はやや貧血性で、眼のまわりや頬に肝斑(シミ)が目立っている。本人もこのシミを非常に気にしている。脈は沈んで弱く、血圧は一三〇~七〇である。腹証としては両腹直筋が少し筋ばっているが、全体としては軟かい方で、虚証である。膝蓋腱反射は異常に亢進し、足搐搦(ちくでき)がある。どうも脊髄に異常がありそうにも思える。
 私は本証を血脚気の変症とみて、腹部の軟弱の状が四物湯を用いたいので芎帰調血飲を与えた。本方一〇日分をのんだが、シビレ感も脚無力感も大して変わらないというので、九味檳榔湯加呉茯に転方したが、これも効きそうにないという。そこで痿証方にしてみたら、のむと気持が悪くのめないし、どうも最初の薬がなんとなく効くように思うというので、再び芎帰調血飲にした。このころの訴えを聞くと、立っていると何か強い力で肩を押し下げられるように感じ、また腰に重い物を吊り下げられたように覚え、脚がヘナヘナに力が抜けて坐ってしまうということであった。
 再度の調血飲をのんでから、食欲がとてもよくなった。たちまち二キロも体重が増加した。これに勢いを得て続けてのんだところ、二ヵ月間であの不快なシビレ感は全く消失し、顔色はとてもよくなり、気になっていた頬のシミがほとんどとれてしまった。最近では全身に活気が充実し、脚の力も普通に戻って駈け足ができるようになったという。一二月まで五ヵ月服薬を続けて全治廃薬した。結局のところ本症は気血虚損、脾胃怯弱によるシビレと脚弱であったと思われるものである。

(著者治験、漢方の臨床 一〇巻二八号)
 (二) ヒステリー発作か
 川○美○ 四三歳の主婦で、初診は昭和三七年九月二八日である。この患者は知人の薬店で処方を出してもらい、長い間服薬を続けていたが、どうしても治らないので薬店からの紹介で来院した。
 患者がこの薬をのんでいましたといって持ってきたのをみると甘麦大棗湯であった。患者の訴えをきくと、二八歳のとき頭を強く打ったことがある。三二歳のとき産後に心配事があって煩え苦しみ、全身痙攣を起こしヒステリーの発作といわれたこどある。四〇歳の三年前から時々意識不明に陥り、癲癇(てんかん)といわれたこともあった。
 この二年間は毎週一回ぐらい倒れるようになった。その発作の前に両方の頸動脈のところが波打ってきて、のぼせがひどくなり、すると倒れるというのである。しかし、以前のように意識不明にはならず、四~五時間ぐらいグッタリしていると次第に平常に戻って痙攣は起こさない。軽いときは頭が痛くてフラッとして、一分間ぐらいボンヤリする程度でよくなることもある。腰から背に上り、首筋へ張ってくると頭がボンヤリしてくるという。
 体格は中等度、栄養も普通である。口唇や眼の囲りが紫色である。脈も普通で舌苔もない。血圧は一二〇~六〇である。月経は順調であるが少ない。腹は全体に軟かで、右の臍下に少し抵抗があるが、それほど充実していない。
 この患者はいろいろの治療を試みたが治らない。現代医学の治療をあきらめて漢方薬も一年近くのんだがやはり見るべき変化がないという。つかみどころのない病証である。
 結局、産後の気血の不調和として芎帰調血飲を与えてみた。一〇日分をのんでみるととても気分がよいという。そして、よく眠れるようになったというので同一処方を続けてみた。一ヵ月後に家庭内でショックがあったが、こんどは腹も立てず、発作も起こさずに済んだ。以前はこのようなショックで怒ると必ず倒れたものであるという。
 この患者の家は高輪の高台に在って、買物には、この坂道を登り山を越えなければならない。いままでは息が切れて登れなかったが、近ごろは平気で坂を登れるようになった。たいへん順調で歯科治療を受け、抜歯したがなんともなく済んだ。いままでは歯科の治療台に上ると脳貧血を起こし倒れるのが常であったという。
 五〇日分のんで、ほとんど訴えがなくなり、発作が止んでしまった。本証は「気血虚損、怒気相冲し、心煩喘急、頭暈、昏憒、口噤(つぐ)んで語らず」に該当しているものであろう。
(著者治験、漢方の臨床 一〇巻八号)

 (三) 貧血による眩暈
 王〇光〇 二七歳婦人。初診は昭和三七年一一月一三日である。
 女学校時代から貧血気味で、しばしば脳貧血を起こすくせがあった。
 こんどの半訴は一ヵ月前に脳貧血を起こして以来、毎日のようにフラッとして倒れそうになる。眩暈がとまらないのである。後頭部が凝り、気分が悪く、食欲が全くなく、ときどき痔出血を起こす。血圧は一一〇~八〇であった。二年前に出産があり、事情があって離婚したという。
 痩せ型で顔色は蒼白である。脈は弱く、腹も軟弱である。腹証が悪露のある特有の軟かい状態である。
 芎帰調血飲を与えたところ、三〇日間で食欲が出て、めまいはとれ、顔色がよくなり、一般状態が好転した。なるほど本方に「気血虚損、脾胃怯弱、頭暈」とあるのは嘘ではないと思われた。 

(著者治験、漢方の臨床 一〇巻八号)

 (四) 産後腰痛
 亀〇喜〇 二五歳主婦。初診は昭和三七年一二月二二日である。
 患者は昨年の二月初めて出産をした。お産の後でやむをえず身心の無理を続けていたところ、ひどい腰痛が起こった。坐骨神経痛といわれて加療を受けたが治らない。
 その後、神経過敏となり、頭痛がひどく、眼を開いていられなくなるほどで、ときどい嘔気がある。今年二月に二度目のお産をした。そのためお腹が弛緩して子宮下垂となり、一一月に手術を受けた。しかし頑固な腰痛はかえって増悪し、いても立ってもいられなくなり、腰が抜けるようにだるくなる。黄色い帯下がある。食欲が全くなく、脈も弱く、腹も軟弱でブワブワしている。しかも便秘がちである。
 芎帰調血飲を与えたところ、一〇日後には元気が出て食欲が進み、食事が待ち遠しいほどで、腰痛がきれいにとれてしまった。腰を前に屈げても苦痛がなく、仕事ができるようになり、三〇日間服用して廃薬した。

(著者治験、漢方の臨床 一〇巻八号)

 (考察)
  芎帰調血飲は万病回春の産後諸病門に掲げられた処方で、産後一切の気血を調理するものである。貧血を補い、悪露瘀血を去り、気を順(めぐ)らし、脾胃を益し、産後の肥立ちをよくするに適している。産後出血の止んだに本方を用いると、数日にしてかならず再び出血を起こすといってもよい順血の能がある。
 本方の腹証は、出産後のあの特有の軟弱なのが目標であるが、かならずしも産後ばかりでなく、相当の年月を過ぎたものでも、前述の証を具(そな)えたものには応用してさしつかえないものである。
 すなわち本方は、産後の調理、産褥熱の軽症、産後血脚気、乳汁不足、月経不順、産後悪露不足、血の道症、ヒステリー、産後の頭痛、めまい、食思不振等に応用される。




『漢方後世要方解説』 矢数道明著 医道の日本社刊
 p.61
理血の剤
方名及び主治

六九 芎帰調血飲(キュウキチョウケツイン) 万病回春 産後門
○産後一切諸病、気血虚損、脾胃怯弱、或は悪露行らず、或は血を去ること過多し。或は飲食節を失し、或は怒気相沖し、以て発熱悪寒、自汗、口乾き、心煩喘急、心腹疼痛、脇肋脹満、頭暈、眼花、耳鳴、口噤て語らず、昏憒等の症を治す。


処方及び薬能
当帰、川芎、熟地 白朮 茯苓 陳皮 烏薬 香附 牡丹各二・五 乾姜 益母 甘草 大棗各一 生姜〇・五
 当帰、川芎、熟地=補血、潤血の作用あり。 茯苓、白朮、陳皮、甘草=脾胃を養う。
 烏薬、香附子=気血を順らし。
 牡丹、益母=血熱を涼す。

解説及び応用
○此方は八珍湯方中より芍薬と人参を去り、牡丹、益母の駆瘀血剤、香附、烏薬、乾姜の順気健胃剤を配合せるもので、産後一切の気血を調理するによい。八珍湯、大補湯ほどの虚状のないものに広く用いられる。
即ち貧血を補い、悪露悪血を去り、脾胃を益し、産後の補症に応用される。

○応用
①産後の調理、
②産褥熱の病症、
③産後頭痛、耳鳴、動悸、眩暈、上衝等を訴えるもの、
④血の道、
⑤乳汁不足、
⑥血脚気、
⑦月経不順。




『漢方一貫堂の世界 -日本後世派の潮流』 松本克彦著 自然社刊

p.22
血について

芎帰調血飲及び第一加減

 血の概念

 北京である外国人から「日本人と中国人は同じ漢字を使っているので、相互理解が非常にし易い。」と羨ましがられたが、その反面、なまじ同じ文字を使っているために微妙に意味が食い違い、かえって誤解を生む場合も多く、 例えば勉強という言葉にしても、中国ではあくまでも勉めを強いることで、日本とは少しニュアンスが違うようである。
 漢方でいう「血」という言葉にしても、我々はすぐ血液のことと思い込みがちであり、また最近の中医学教科書でも、血或いは営血は、ほぼ血液に近い概念として整理しつつあるように思われる。しかしこの血という古い言葉は、元来それ程はっきりと医学的に定義されてできたものではなく、人体の生飲活動のもとは気と血だという認識から、気をその機能的な側面とすれば、それに対するいわば物質的な基盤を表わす言葉として、体液及びそれに含まれる諸成分をひっくるめた大ざっぱな概念であったと思われる。即ち『傷寒論』中にも「大いに汗を発し、また数(しばしば)大いにこれを下せば、その人亡血す。」とあり、この場合体液即ちいわゆる陰液はすべて血という言葉で一括されている。
 そしてこの陰液は時代と共に、次第に血液とそれ以外の体液即ち津(しん)液とに分けられるようになり、全体的な陰液は腎、そのうち血は肝と心、津液は脾と肺というように、それぞれ関連する臓腑を定められ、陰虚と血虚、或いは補陰と補血等についての症候や治療法も区別されるようになったのであろう。しかし現代医学においてさえ、体液と血液とを厳密に分けることは困難で、さらに治療に当って、もともと多数の化学成分を含む生薬をさらに数多く組合せて用いる漢方では、補陰の薬、補血の薬といっても、あまり厳密に区別しようとすれば、かえって誤りを犯すことにもなろう。
 というのは、この血という概念には、単なる血液とは違って、さまざまな生理機能が背負わされているからである。即ち「血が虚すれば胞脈(子宮及び衝任の脈)は栄養が行き渉らず、月経は不調となって崩漏下血等が起り、また血の運行は遅く滞りがちとなるため、月経時に腹痛が起る」などと説明されているが、女性の生理、妊娠、出産等に深い関連があるとされている。したがって女性特有の諸疾患は、多くは血が原因していると考えられ、「血の道症候群」とか「瘀血症候群」とかいう言葉にもみられるように、すべて血の病として治療されているのである。
 一方また、循環系或は血液についての諸疾患も、当然ながら血とは切り離すことはできず、また「肝血が不足すれば肝陽は上亢する」等といわれ、血の不足は自律神経系の失調にも関係が深いようで、さらに各種の内分泌系疾患、自己免疫疾患でも血が関与していると考えられ、血薬によって治療されていることは多い。
 これらの症候或いは疾患は、現代医学において、個々には血液中ないしは体液中に含まれる諸成分と関連付けて、或る程度理解することができるかも知れない。が同時に、これらすべてに共通し一つ包含してしまうこの素朴な血という概念に、正しく対応し得る医学的概念或いは用語は、現在見当らないようである。我々は漢方を使用するに当って、部分の集合は必ずしも全体とはならないということをも、併せて考えてみる必要があろう。

 方名と方意

 芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)は、名の如くこのような血を調える方剤として『古今方彙』の産後門の筆頭にあげられているが、原典といわれる『万病回春』では、芎帰補血という名になってい識。しかしここでは、これまで我が国で通用してきた芎帰調血飲という名称を踏襲す識ことにする。
 さて『万病回春』ではこの方の主治について、「産後一切の諸病、気血虚損、脾胃怯弱、或は悪露行らず、或は血去ること過多、或いは飲食節を失し、或は怒気相衝(つ)き、もって発熱悪寒を致し、自汗口乾、心煩喘急、心腹疼痛、脇肋脹満、頭暈(ずうん)眼花、耳鳴、口噤(とじ)て語らず、昏憒(こんかい)等の症を治す」とあり、方後に三十に及ぶ加減方が附されている。そしてこれらの加減方は、そのまま『古今方彙』にも引き継がれ、あらゆる産後の病に対応し得るようになっているのである。
 このような症状がすべてそろった人に出合うことはめったにないが、我々の研究所の所員の家族等でも産後、体の調子が悪いといえば顔も見ずにこの方を出し、大抵の場合は調子がよくなったと喜ばれている。
 しかし中島先生が、「この方は産後とは書いてあるが男に使うことも多く、原方とその三十の加減方が理解できれば、血の病につ感ての大方は分る」といわれるように、我々はこの方を一般的には、補気に対する補中益気湯のごとく、さまざまな血の病症に対して調血・補血の代表方として使用しているのである。

 処方構成

 当帰・川芎・白朮・白茯苓・熟地黄・陳皮・烏薬・香附子・乾姜・益母草・甘草
 右一剤を挫して、生姜(きょう)一片、棗一枚と水煎して温服す。
 この構成について、矢数道明先生は、八珍湯から芍薬と人参を去り、他の五味を加えたものとして解説しておられ、産後の気血調理の方剤として、この解釈は当を得たものと思われるが、ここでは少し趣をかえて、四物湯去芍薬と苓姜朮甘湯との合方に、他の薬味を加えたものとして考えてみたい。

 四物湯(和剤局方)
 補血の代表的な基本方としてよく知られているが、もとは分心気飲と同じく『和剤局方』の「婦人の諸疾を治す」という篇に収録されており、
「営衛を調養し、気血を滋養す。衝任虚損すれば、月水調はず、臍腹㽲(きゅう)痛して崩中漏下し、血瘕は塊硬にて、発歇(間歇的に)疼痛す。妊娠宿冷し、将に理宜しきを失すれば、胎動して安からず、血下りて止まず。及び産後の虚に乗じて風寒内に搏てば、悪露は下らず結して瘕聚(かじゅ)(腹中のしこり)を生じ、時に寒熱を作すを治す」
とあり、まとめると婦人の生理不順、妊娠及び産後とすべてに渉る基本方剤である。
 またこの構成について、最近の中医方剤学書によると、
「方中の熟地黄は滋陰養血、当帰は補血和血で、この二薬が補血を主として主薬となり、白芍は柔肝養血、川芎は行気活血で補助薬である。しかし一方血薬としての綜合的な作用から見ると、熟地黄、白芍は血中の血薬即ち陰薬で当帰、川芎は血中の気薬即ち陽薬であり、このような二対の組み合せにより、補して滞らせず、営衛を調和させるので、本方は補血、養血、活血行気の効果を併せもつといえる」
と説明され、主薬と補助薬にそれぞれ陰薬と陽薬を巧みに組み合せたものであるが、本方ではこれからわざと芍薬を除いている。
 芍薬は漢方的には養血斂陰、柔肝止痛、平肝陽で、また陰を斂(おさ)める。陰を育(はぐ)む等といわれているが、細野史郎先生を中心として、現代薬理学的にもよく研究されている。そして濃度の違いにもよるといわれるが、例えば腸管運動等に対して興奮と抑制という相反するようで、このことから収斂作用をもつといわれている。
 以前中島先生に、最も漢方薬らしい漢方薬といえば何でしょうかと伺ったところ、言下に「芍薬でしょう」と答えられたが、一般に西洋医薬品が一方向性の作用しか持たないのに対し、このような両面のはたらきをもつ芍薬を、最も漢方的な薬物として挙げられたのではないかと思われる。
 しかし本来、産後の薬である調血飲では、この芍薬を除いて活血、袪瘀、行気の目的を強めているのであろう。

 苓姜朮甘湯(金匱要略)
 『金匱要略』の「五臓の風寒、積聚(しゃくじゅ)の病の脈証ならびに治」の篇に、
「腎著の病は、その人身体重く、腰中冷え、水中に坐するが如し。形水状の如くにして、反って渇せず、小便自利し、飲食故の如きは、病下焦に属す。身労して汗出で、衣裏冷湿すること久々にしてこれを得。腰以下冷痛して、重きこと五千銭を帯ぶるが如きは、甘姜苓朮湯これを主る」とあり、この次に篇は変るが苓桂朮甘湯がくる。この苓桂朮甘湯の方は、水毒、或は水気の上衝に対する方剤として現在よく用いられているが、ただ一味の違いにより苓姜朮甘湯の方はやや影が薄いようである。この両者の違いについて、湯本求真先生が『皇漢医学』に分りやすく書いておられるので紹介しよう。
苓姜朮甘湯には乾姜なくして桂枝があるが故に、その証は必ず上衝目眩の症あり。これ水毒の上衝によるものなれば、この毒は主として上半身に集まり、前症のほか胃内停水を現わすも、本方(苓姜朮甘湯)には桂枝なくして乾姜あるをもって、水毒は上衝せずして下降し、主として下半身に集中にす。故にその症には上衝目眩の症あることなく、胃内停水はまったく存するも僅微なり。しかのみならず乾姜は附子と併称される大熱薬にして、且つ水毒駆逐の作用あるものなれば、その証には必ず寒冷或は厥冷と水毒の陰見するを認む。これ師が身体重く・・・・・・と説ける所以なり。」
 苓桂朮甘湯四物湯との合方は、連珠飲として有名であるが、これを苓桂朮甘湯の上に対し四物湯の下という組み合せと考えれば、芎帰調血飲は下と下という組み合せにる。
 この血と水の二方の組み合せを基礎にして、烏薬と香附子という理気薬と、牡丹皮と益母草という化瘀薬を加えたのが本方の構成である。
 中草薬学書によれば、烏薬の薬効は順気止痛、散寒温腎で、香附子の方は疏肝理気、調経止痛とあり、これらと木香との違いについて、
 「香附子、木香、烏薬には、いずれも行気止痛の作用があるが、木香は行気寛中しよく腸胃の気滞を調え、一般に脘腹脹満、瀉痢、腹痛に用いられ、香附子は疏肝解鬱で調経止痛に特色があり、脇痛や痛経に用いられ、烏薬はよく下焦の気を行らし、肝腎の気滞を調えるので、疝気、痛経、腎虚尿頻、小便作脹に用いられることが多い」
と解説されてお責、結局木香が消化管への作用が主なのに対し、香附子、烏薬は肝や腎に関連する季肋部の体壁反射や、子宮、膀胱の平滑筋に選択的に作用するようである。
 牡丹皮と益母草という二つの袪瘀薬についても偶々取り上げ現れたものではなく、牡丹皮は「血熱を清すると共によく活血散瘀し、瘀滞を散じて気血を流通させ疼痛を除く」とあるが、同じ牡丹科として芍薬と共通性もあり、四物湯から除いた芍薬の代りに斂陰の作用を補うべく選択され、また益母草にも活血調経、袪瘀生新という主作用の他に、利尿作用があるといわれるので、これまた苓姜朮甘湯の利水の作用を助ける目的で選ばれたのではないかと思われる。
 全体の構成を整理してみると、
  四物湯去芍薬・・・・・・・・・・養血活血
  牡丹皮・益母草・・・・・・・・・活血化瘀
  烏薬・香附子・・・・・・・・・・・行気止痛
  苓姜朮甘湯・・・・・・・・・・・・温腎利水
となり、すべての構成はあくまで中下焦に重点を置いて温化、利水、養血、行気、止痛を計っている。

 芎帰調血飲第一加減
 前にも述べたように『万病回春』には、この方の後に三十の加減方が附されているが、その三番目に、「産後悪露尽きず、瘀血は上衝し昏迷して醒めず、腹満硬痛するものは、当に悪血を去るべし。依って本方に桃仁、紅花、肉桂、牛膝、枳殻、木香、延胡索に童便、姜汁を少し許り加え、熟地黄を去る」という加減方があり、これを一貫堂では、芎帰調血飲第一加減と称しているが、普通童便と姜汁は使用していない。
 加味されている薬味の主効は、以下の如くである。
 桃仁・・・・・・・・・破血袪瘀、潤腸滑腸
 紅花・・・・・・・・・活血袪瘀、通経
 牛膝・・・・・・・・・活血袪瘀、強筋壮骨、引血下行
 延胡索・・・・・・・活血、利気、止痛
 木香・・・・・・・・・行気止痛
 枳殻・・・・・・・・・消積除脹、破気瀉痰
 桃仁・紅花は活血袪瘀の代表的なもので、これに牛膝を加えたのは、引血下行の意味をもたせたと思われる。延胡索は香附子や烏薬とともに肝腎に関連のある利気止病矢で、一方木香、枳殻の方は脾胃への作用が主で、苓姜朮甘湯との組み合せで止痛以外に消積(食滞を除く)利湿の役割りを果していると考えられる。
 全体を今一度通覧してみると、
 四物湯去芍薬・熟地黄  活血
 牡丹皮・益母草・桃仁   化瘀
 紅花・牛膝          化瘀
 香附子・烏薬・延胡索   利気(肝腎)
 木香・枳殻          利気(脾胃)
 苓姜朮甘湯          利水
となり、血薬から気薬、利水薬に至る、きれいな配列で、この中に主な調経止痛薬はほとんど含まれている。例えば賀川玄悦の『産論』に見られる折衝飲も、四物湯にこの加減を行ったものとみなすこともできよう。
 重要なことは、一般に袪瘀剤には下剤が含まれていることが多く、一貫堂の常用処方でも通導散を初め、活血散瘀湯、柴胡疎肝湯等すべて大黄、芒硝が入っているのに対し、同じ活血化瘀剤でも、本方はあくまで産後の体虚を考えて組まれているため、強い瀉薬を嫌い、あくまで補剤の性格を残していることである。
 瘀血とは結局のところは全身的ないし局所的な循環障害といわれているが、女性の生理不順から出産等に関連する骨盤腔内の鬱血や慢性炎症、及びこれらに伴なうさまざまな身体的・精神的失調だけでなく、その他各種の慢性炎症から循環障害まで、いわゆる活血化瘀剤の適応は広く多種の方剤がある。しかし、その中で補の性格をもつものは案外少なく、この意味からも本方は極めて利用価値が高いといえよう。

 臨床での運用
 このように芎帰調血飲及びその第一加減は、単に産後の諸症状だけでなく、さまざまな疾患に幅広く用いられるが、これに似たものとして当帰芍薬散が挙げられよう。
 当帰 川芎 芍薬 白朮 茯苓 沢瀉 この両者は補血・活血と利水というほぼ同じ方意を持ち、私も講習会等で芎帰調血飲がなければ当帰芍薬散でもいいでしょうと答えることにしている。
 しかし当帰芍薬散は、あくまで「婦人妊娠の病」(金匱要略)に対する処方で、芎帰調血飲と違って母胎にはかかせない芍薬があり、白朮、茯苓、沢瀉を重ねて妊娠中の利水を強めている一方、妊娠中の嘔気を考えて熟地黄はなく、流産のおそれのある化瘀薬も当然ながら含まれず、産後を目的とした芎帰調血飲とは明らかな違いがある。
 即ち当帰芍薬散は、母胎保護を旨とし、全体しては緩和であるのに対し、芎帰調血飲、さらにその第一加減となるに従い、積極的に活血行血しようとする姿勢の違いがある。
 勿論どちらにも各々その特長があり、優劣の問題ではないが、内容から考えれば、例えば冷え症や生理痛、或は化瘀といった面では調血飲の方がやや効果は強いといえるが、反面強すぎる場合もあろうし、特に第一加減は妊娠中には禁忌となる。このような違いはあるにせよ、婦人諸疾患についての一般的な適応症は、これまで当帰芍薬散についてすでに充分知られており、これに準じてよいと思われるので、特に本方に特長的と思われる使用法をいくつか述べる。

 慢性膀胱炎
 漢方の適応症として膀胱炎はよく取り上げられ、炎症症状のあるものに対しては、猪苓湯五淋散竜胆瀉肝湯など有名な処方が多いが、我々の研究所を訪れる患者は、殆んどは急性列を過ぎており、「泌尿器科で検査してもらっても異常がないといわれるが、排尿後どうもすっきりしない」とか「下腹部に何か異和感が残る」或は「冷え症で毎年夏にクーラーに当ると再発するので予防したい」等という訴えが多い。
 これらに対しては、苓姜朮甘湯四物湯という方意から考えても本方が適応となり、事実大抵の場合一~二週間の服用で症状が改善される。しかし急性炎症に対して間違って使用しないよう注意が肝腎である。

 膝関節症
 四十代、五十代の婦人で、膝の内側が痛み、階段の昇降等の不自由さを訴える人は多く、潜延して変形を来たす場合もよくあるが、案外よい治療法は少ないようで、よく針灸を希望して来院される。このような症状は、勿論針灸の適応となるが、初期のうちなら芎帰調血飲の第一加減を一ヵ月程度服用するだけで軽快することも多い。この場合本方のもつ温腎利湿、活血化瘀から、さらに牛膝のもつ引血下行と、強筋壮骨の薬効まで綜合的に作用していると考えられるが、関節水腫に対する防已黄耆湯と共に覚えておくと便利である。

 慢性虫垂炎
 医学的にこのような病名が妥当かどうかは別として、回盲部に痛みを生じ、病院で検査しても手術する程の炎症所見はなく、しばらくすると治まるが、また環境の変化等で同じことをくり返すといった人ははまま見られる。このような症状に対しても、芎帰調血飲ないしはその第一加減がよく適応する。一般に慢性の腹痛は冷えか瘀血によることが多く、この両者に効果的な本方は、慢性の下腹部痛に対して広く応用される。しかしこれも誤って急性の虫垂炎等に投与しないよう注意しなければならない。

 合方について
 我々な更年期障害を初めとするさまざまな婦人の神経症に、調血飲と分心気飲を合方することがよくあり、上の頭痛やめまいと下の生理不順に対する上下の組み合せと感ってい識が、どちらか一方だけ用いるよりも効果的なことが多い。
 そしてまたこの同じ組み合せを心臓神経症から狭心症等種々の機能的心疾患に対しても用い、ニトログリセリンを殆んど不要とする程度にまで改善することも多いが、これについては気と血の組み合せだと考えている。即ち連珠飲からの発展である。
 中島先生は「基本方はワードでこれを組み合せてセンテンスにもって行くのだ」といわれるが、このようにいくつかの薬方をあたかも薬物であるかのように合方する方法は、一貫堂独自のもので、一味一味を大切にする中国、厳密な成方の規定を守る古方派両者とも理解しにくい面はあると思われる。しかし随証治療をたてまえとする漢方の特長を残し、一方エキス剤の普及を目指す今日の我が国東洋医学の現状を考えると、最も現実的な解決策が、ここにあるような気がする。そしてさらに「急性病は薬味が少なく一材量の多い大剤を、慢性病には薬味数が多く一味一味の材量の少ない小剤を」という原則もあり、複雑な病態が今後漢方慢性病が治療の主流となるであろうことを考え併せたとき、成方エキス剤を用いての匙加減という方法も、今後積極的に検討する必要があると思われる。
 ただしこの場合、一味一味の薬効から、基本方の構成に至るまで充分な漢方的理解が必要なことはいうまでもないことである。


和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
芎帰調血飲(きゅうちょうけついん) [万病回春]

【方意】 血虚瘀血による産後・貧血・悪露等のあるもの。時に熱証・燥証、血証・上焦の熱証による精神症状、脾胃の虚証を伴う。
《太陰病.虚証》
【自他覚症状の病態分類】

血虚・瘀血 熱証・燥証 血証・上焦の熱証による精神症状 脾胃の虚証
主証 ◎産後
◎貧血
◎悪露






客証  月経閉止
 腹痛
 腰痛
 麻痺 脱力
 ほてり
 自苗
 口乾
 心煩
 頭痛 目眩
 耳鳴
 心悸亢進
 胸満
 胃腸虚弱
 疲労倦怠


【脈候】

【舌候】 

【腹候】 

【病位・虚実】 本方は四君子湯合四物湯の八珍湯の去加方である。四君子湯の主たる構成病態の脾胃の虚証も、四物湯の血虚も太陰病に相当する。またこの脾胃の虚証も血虚も、本方を虚証で用いることを示している。

【構成生薬】 当帰2.0 川芎2.0 熟地黄2.0 白朮2.0 茯苓2.0 陳皮2.0 烏薬2.0 香附子2.0 牡丹皮2.0 益母草1.5 大棗1.5 乾姜1.0 甘草1.0 

【方解】 当帰・川芎・熟地黄は血虚を治し、牡丹皮・益母草は共な微寒で熱性の瘀血に作用して悪露を下し、瘀血による精神症状を去る。香附子・烏薬・陳皮には気を行らして精神症状に作用すると同時に、瘀血・水毒も疎通する。白朮・茯苓は脾胃の虚証を補う。茯苓には鎮静・強心作用もある。陳皮・大棗・乾姜・甘草は他薬の脾胃に及ぼす作用を穏やかにする。本方は四君子湯合四物湯の八珍湯より芍薬・人参を去って、他薬を加えている。つまり人参を用いるぼと虚証ではないが、血虚を補い、産後の悪露瘀血を去り、消化機能を亢進させて、血の道症の精神神経症状を治す。更には産後に限らず一切の気血水の停滞に効果が期待できる。

【方意の幅および応用】
 A 血虚瘀血:産後・貧血・悪露を目標にする。
   産後の調理、軽症の産褥熱、産後頭痛、耳鳴、動悸、血の道症、食欲不振

【症例】 産後の腰臀部痛
 28歳の初産の婦人。産後3日目から腰が痛んで寝返りもできなくなった。左の大腿部から臀部が非常に腫れて、膝にかけて痛みが激しくて10日間も泣きあかしたというのです。入院していたが思わしくなく退院して来たということでした。以来鍼をしたり、注射をしたりで10日ほどして半分寝返り位は動けるようになったというところへ往診したのです。診ると左の臍傍に塊のような瘀血があり、ちょって触れてもひどく痛むのです。それで本来ならば桃核承気湯で下したいところですが、産後とことではあり、皮膚枯燥があるものですから、地糖剤の方が良いと思い芎帰調血飲に紅花を加えて与えたところ、甥青右現f下りものがあって、それ以来軽くなり、10日目には便所へ行かれるようになりました。初めこれは桃核承気湯にしようか桂枝茯苓丸にしようか四物湯にしようかと迷いました。
矢数道明 『漢方の臨床』11・7・13


 手足のしびれ感
 45歳の主婦。3年前の7月から、両手の中指、薬指、小指の3本がしびれてきた。同時に後頭部と両方の足の裏にもしびれ感が起こった。そのうち両方の筋肉が軟弱無力となり、崩れるように坐ってしまうようになった。N大病院で精密検査を受けたが原因不明。更年期障害であろうと治療を受けたが治らなかった。そこでT大内科に転じたが、これも無効。
 体格も栄養も普通である。顔色はやや貧血性で眼のまわりや頬に肝斑(シミ)が目立っている。脈は沈んで弱く、血圧は130/70である。腹証としては両腹直筋が少し筋ばっているが、全体としては軟らかく虚証である。膝蓋腱反射は異常に亢進し、足に搐搦がある。脊髄に異常がありそうにも思える。
 私は本証を血脚気の変証とみて芎帰調血飲を与えたが大して変わらないというので、四味檳榔湯加呉茱萸・茯苓、次に痿証方に転じたが、結局最初の薬が良さそうだというので再び芎帰調血飲にした。再度の調血飲を飲んでから食欲が良くなり2kgも体重が増加した。服薬2ヵ月で不快なしびれ感は全く消失し、顔色は良くなり、気になっていた頬のシミがほとんど取れた。脚の力も普通に戻って馳け足ができるようになり5ヵ月間服薬を続けて全治廃薬した。結局のところ本症は気血虚損、脾胃袪弱によるしびれと脚弱であったと思われた。
矢数道明 『漢方治療百話』第二集295

血の道症と腎炎
 37歳の婦人。昨年2月のこと、生後6ヵ月になる小児を腸重積で失いすっかり落胆していた。その頃外出して突然めまいと烈しい心悸亢進が起こった。その後顔がむくんで尿中の蛋白が強陽性となり、脳貧血を起こしてしばしば倒れそうになる。全身倦怠感がひどく、布団の上げ下げにも動悸がする。家族が付き添ってやっと来院した。栄養は良い方で、顔色は少し赤味をおび、のぼせを覚える。脈は弦数である。血圧は145/85あった。心音は不純、尿蛋白(+)であった。
 私はこれに産後の気血不調を調えるという意味から芎帰調血飲を与えた。すると2ヵ月後には家事一切の仕事をしても疲れないようになった。その後嘔気を訴えてきたので半夏瀉心湯にした。そして日赤産院で診断を受けると妊娠3ヵ月であった。しかも妊娠したのに尿蛋白陰性になっていた。血圧は125/70でつわりが非常に軽く、当帰芍薬散を服用しながら元気で予定日を待っている。
矢数道明 『漢方治療百話』第一集101


副作用
1) 重大な副作用
①偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定など)を十分に行い,  異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切 な処置を行うこと。
②ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

2) その他の副作用
消化器:食欲不振,胃部不快感,悪心,嘔吐,下痢等

   

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