健康情報: 梔子豉湯(しししとう)  の 効能・効果 と 副作用

2012年10月10日水曜日

梔子豉湯(しししとう)  の 効能・効果 と 副作用

【一般用漢方製剤承認基準】
梔子豉湯(しししとう)
〔成分・分量〕 山梔子1.4-3.2、香豉2-9.5

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、胸がふさがり苦しく、熱感があるものの次の諸症:
不眠、口内炎、舌炎、咽喉炎、湿疹・皮膚炎



漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
梔子豉湯(しししとう)
本方は心中の懊悩と身熱 とを目標としている。心中の懊悩とは、心胸中に憂悶の感があって、如何とも名状出来ない状態で、しばしば不眠を訴え、身熱とは悪感を伴わずして身体に熱感 を覚えるのをいい、この際、体温の上昇を認めなくてもよい。またその身熱は、身体の一部分に限局されていてもよい。例えば顔面もしくは肛門の周囲にだけ訴 えることがある。腹診するに心下部には堅硬膨満等の状はないが、軟弱無力という程ではない。
本方は梔子と香豉の二味から成る。梔子には消炎・鎮静の効があり、香豉もまた、鎮静の効がある。故に二味合して心中の苦煩を去り、身熱を消すのである。
本方はカタル性黄疸で心下痞満の状のないものに用いまた食道癌の如き症状を呈するものに用い、奇効を奏することがある。その他不眠・口内炎・痔核等で灼熱感のあるものにも用いることがある。
梔子甘草豉湯は、梔子豉湯に甘草を加えた方剤で、梔子豉湯の證で急迫の状あるもの、例えば呼吸浅表のものを治し、梔子生姜豉湯は梔子豉湯に生姜を加えた方剤で梔子豉湯證で、嘔吐の状あるものに用いる。
一般に、梔子剤は下痢の傾向があるものには用いない。



漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
2 順気剤
順気剤は、各種の気の症状を呈する人に使われる。順気剤には、 気の動揺している場合に用いられる動的なものと、気のうっ滞している場合に用い られる静的なものとがある。静的なものは、体の一部に痞えや塞がりを感じるもので、この傾向が強くなるとノイローゼとなったり、自殺を考えたりする。動的なものは、ヒステリーや神経衰弱症を訴えるが、この傾向が強くなると狂暴性をおびてくる。順気剤は単独で用いられる場合もあるが、半夏厚朴湯(はんげこう ぼくとう)などのように他の薬方と併用されるのもある。
順気剤の中で、半夏厚朴湯・梔子豉湯(しししとう)・香蘇散(こうそさん)は気のうっ滞に用いられ、柴胡加竜骨牡蠣湯柴胡桂枝乾姜湯桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は気の動揺が強いものに用いられ、釣藤散(ちょうとうさん)・甘麦大棗麦(かんばくたいそうとう)は気の動揺と気のうっ滞をかねそなえたもので、麦門冬湯(ばくもんどうとう)は気の上逆による咳嗽を、小柴胡湯加味逍遙散は、柴胡剤の項でのべたように潔癖症を 呈するものに用いられる。なおこのほか、駆瘀血剤の実証のもの、承気湯類(じょうきとうるい)などにも、精神不安を訴えるものがある。
各薬方の説明
2 梔子豉湯(しししとう) (傷寒論、金匱要略)
〔山梔子(さんしし)三、香豉(こうし)四〕
本方も、半夏厚朴湯のように気のうっ滞しているものに使われるが、半夏厚朴湯の ように咽中で気のうっ滞が起こるのではなく、胸中で気のうっ滞 が起こっているものである。したがって、胸中や食道が塞がった感じとなり、程度が強くなる痛むようになる。本方は虚証に用いられ、心中懊憹(しんちゅうお うのう)、身熱(悪寒を伴わない熱感を覚えるもの)、咽喉乾燥、口苦、喘咳、腹満、自汗、身重などを目標とする。本方の身熱は、全身的に現われる場合と局所的な場合がある。また、各種の症状は急激なものが多い。なお、本方は下痢の傾向のあるものには用いられない。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、梔子豉湯証を呈するものが多い。
一 ノイローゼ、神経衰弱、不眠症その他の精神、神経系疾患。
一 食道炎、食道狭窄、食道癌、口内炎、咽喉炎、のどのやけどその他の食道系疾患。
一 肺結核、肺炎その他の呼吸器系疾患。
一 心臓病、高血圧症その他の循環器系疾患。
一 急性肝炎、黄疸、二日酔い、胆嚢炎その他の肝臓や胆嚢の疾患。
一 胃酸過多症、胃酸欠乏症、胃カタル、胃潰瘍その他の胃腸系疾患。
一 喀血、吐血、下血その他各種の出血。
一 湿疹、乾癬、じん麻疹、掻痒症その他の皮膚疾患。
一 そのほか、血の道、凍傷、痔核など。

梔子豉湯の加味方
(1) 梔子甘草豉湯(ししかんぞうしとう) (傷寒論)
〔梔子豉湯に甘草二を加えたもの〕
梔子豉湯證で急迫の状を訴えるものに用いられる。呼吸促拍、掻痒のはなはだしいものを目標をする。
〔応用〕
梔子剤であるために、梔子豉湯のところで示したような疾患に、梔子甘草豉湯證を呈するものが多い。

(2) 梔子生姜豉湯(しししょうきょうしとう) (傷寒論)
〔梔子豉湯に生姜四を加えたもの〕
梔子豉湯證で、嘔吐の状を訴えるものに用いられる。
〔応用〕
梔子剤であるために、梔子豉湯のところで示したような疾患に、梔子生姜豉湯證を呈するものが多い。


臨床応用 漢方處方解説』 矢数道明著 創元社刊
59 梔子豉湯(しししとう) 〔傷寒・金匱〕
 梔子三・〇 香豉四・〇

 水三〇〇ccをもって、まず山梔子を煮て二〇〇ccとし、次に香豉を布に包んで加え、再び煮て一〇〇ccとし滓を去って二回に分服する。一般にはそのまま一緒に煎じて用いている。服後吐を生じた者は後の分はのませなくてもよいとある。香豉は黒大豆を特殊の醗酵方法によって製するのであるが、中国原産のもののないときは普通の納豆を乾燥したもの、あるいは大豆を蒸してから乾燥したものを代用してもよい。

応用

 虚証に属するもので、胸中に気が塞がって、心中懊悩するものに用いる。
 本方は主としてカタル性黄疸、食道癌・食道狭窄・不眠症・口内炎等に用いられ、また舌炎・咽喉炎・痔核・二日酔い・発汗吐下の後の虚煩・喀血・吐血・下血・身熱・心中懊悩・高血圧症・神経衰弱・ノイローゼ・血の道症・心臓病・肺結核・肺炎・流行性黄疸・胆嚢炎・凍傷・湿疹・乾癬・ヘルペス・蕁麻疹などで煩熱する者、胃炎・胃酸過多症・胃酸欠乏症・胃痛・胃潰瘍・夏に四肢煩熱して眠れぬもの等に応用される。
 臨床的には胸中煩熱・不眠・出血・瘙痒・心下部の疼痛・口内の炎症・食道狭窄・黄疸等を主症として運用されるものである。

目標
 心中の懊悩と身熱とが目標である。すなわち、心胸中に憂悶の感があって、いかんとも名状しがたい状態である。しばしば不眠を訴える。身熱というのは悪寒をともなわず、身体に熱感を覚えることで、体温の上昇はなくともよい。また身体の一部に限局されるてもよみもので、たとえば手足、顔面もしくは肛門の周囲にだけ訴えることもある。心下部は緊硬膨満というほどのことはなく、またそれほど軟弱でもない。

方解
 山梔子は胸中の熱煩を治し、香豉は胸になじむ気を順らし、かつ胃の虚熱を去る働きや解毒作用があると考えられる。梔子には消炎鎮静の効があり、香豉にも鎮静の効がある。
 主治条項に掲げてある諸症状を、龍野一雄氏は次のように整理した。
(1) 胸部症状。心中懊悩・心中結痛・心憒憒、胸中窒・喘。
(2) 神経症状。不得眠。讝語・煩・煩操。
(3) 腹部症状。腹満・胃中空虚・客気動膈・不結胸・心下濡・飢不能食・口苦・舌上苔。
(4) 体症状。身熱・悪熱・煩熱・躁・煩躁・怵惕(おそれること)・反履顚倒・身重・頭汗・手足温。
(5) 熱症状。虚煩・煩熱・煩躁・外熱・咽燥。
これらの複雑な諸症状を、山梔子と香豉の二味によって好転させるというものである。
これらの症状は余邪が心胸間に鬱滞して、虚煩するもので、この二味がよく胸中の欝邪を解するものというべきである。

主治
 傷寒論(太陽病中篇)に、「発汗シテ後、虚煩眠ルコトヲ得ズ、若シ劇シキ者ハ、必ズ反履顚倒、心中懊悩(もだえ苦しむ)ス。梔子豉湯之ヲ主ル。若シ少気ノモノハ梔子甘草豉湯之ヲ主ル。若シ嘔スル者ハ、梔子生姜豉湯之ヲ主ル」とあり、
 また「発汗若クハ下シ、而シテ煩熱胸中窒ル者ハ、梔子豉湯之ヲ主ル」
 「傷寒五六日、大ニ下シテ後、身熱去ラズ、心中結瘕スル者ハ、未ダ解セント欲セザルナリ、梔子豉湯之ヲ主ル」とある。
 また陽明病篇に、「陽明病、脈浮ニシテ緊、咽燥口苦、腹満シテ喘シ、発熱汗出デ、悪寒セズ、反テ悪熱シ、身重シ、若シ汗ヲ発スレバ則チ躁シ、心憒憒(カイカイ;心思いみだれる貌)トシテ反テ譫語ス。若シ焼鍼ヲ加フレバ、必ず怵惕(ジュッテキ;おそれること)煩躁眠ルコトヲ得ズ。若シ之ヲ下セバ則チ胃中空虚、客気膈を動ジ心中懊悩ス。舌上苔アル者ハ、梔子豉湯之ヲ主ル」
 「陽明病、之ヲ下シテ、其ノ外ニ熱アリ、手足温カク、結胸セズ、心中懊悩、饑エテ食スルコト能ハズ、但ダ頭汗出ル者ハ、梔子豉湯之ヲ主ル」とあり、
 厥陰病篇には、「下痢ノ後、更ニ煩シ、之ヲ按ジテ心下濡(ナン;軟かい)ナル者ハ、虚煩ト為スナリ。梔子豉湯之ヲ主ル」とある。
 類聚方広義には、「此方梔子、香豉ノ二味ノミ、然レドモ之ヲ其ノ証ニ施スルトキハ、其効響ノ如シ。親ラ之ヲ病者ニ試ムルニアラザレバ、焉ンゾ其ノ効ヲ知ランヤ」といっている。
 古方薬嚢には、「熱のある病気にて、汗をとったり、吐かせたり、又は下剤を与えて下したりした後、胸の中が空っぽの様な、たよりない気持だして眠れず、そのひどいときには転展として落着かれない者。以上のような状態で、のどのふさがる者、或は胸の中や胃の中が痛むもの、或は手足が温かく、胸中が苦しいので、腹がへっても食べることのできない者」が梔子豉湯の証であるといっている。

加減
 梔子甘草豉湯。梔子豉湯に甘草二・〇を加えた方剤で、梔子豉湯の証で、急迫の状のあるもの、たとえば呼吸浅表のもの、瘙痒激しいものなどに用いる。
 梔子生姜豉湯。梔子豉湯に生姜四・〇(乾生姜は一・五)を加えたもので、梔子豉湯の証に嘔吐の状あるものに用いる。

治例
(一) 子宮出血
 村民金五郎の妻、年廿五歳。子宮出血が数日続き、全身倦怠・心煩・微熱、諸薬を服するも効かなかった。梔子豉湯二貼を与えると出血は半減し、更に数貼を与えて落治した。

(二) 子宮出血
 岳母某が転んで腰を打ち、その後子宮出血が続いて下腹が軽く痛いという。いろいろの薬をのんだが効がないという。余が思うに、この病は転倒して驚き惕れて起こったものである。そこで梔子豉湯を数貼与えたところ、それですっかり治った。

(三) 衂血
 月洞老妃、年七十余。鼻血がどんどん出で、止血の薬をいろいろのんだが効かない。余はその様子を訊いてみると、どうも虚煩(衰弱していて神経が興奮している)の状がある。よって梔子豉湯を作って与えたところ、すぐよくなった。 (以上三例は、腹証奇覧、松川世徳の治験)

(四) 肛門瘙痒
 五七歳の男子。痔核の手術を三回うけたが、そのあとで肛門の周囲がかゆくなった。夜はそのため眠れないという。身熱、虚煩眠るを得ず。心中懊悩等の傷寒論の条文にヒントを得て、梔子甘草豉湯を与えたが、三週間で全快した。(大塚敬節氏、漢方診療三十年)

(五) 食道炎
 私自身が焼きたての熱い餅を急いで食べたので、食道を痛めて困った。食道に火傷を起こしたのであろう。胸中のふさがるもの、心中の結痛するものということから、梔子豉湯を思いつき、香豉がないので、山梔子と甘草二味を煎じて一服のむと著効があり、そのすばらしさに驚いた。 (大塚敬節氏、漢方診療三十年)

(六) 急性肺炎
 四九歳の婦人。四〇度を越える高熱が数日続き、脳症を発して讝語狂乱の状を呈した。患者の訴えるところによれば、胸が苦しい、胸部正中線から、右乳下部にかけて苦しい。見ていると咳嗽がある。喀痰はさび色である。舌には厚い褐色の苔があり、それほど乾燥していない。脈は沈で遅のようである。腹は右季肋心下に抵抗を触れ、圧すと苦悶し、咳嗽を誘発する。右胸全面濁音で、大小水泡音を聴取する。大葉性肺炎である。
 柴胡桂枝湯に、桃核承気湯を小服兼用したが、好転しない。翌日往診してみると口渇がある。一刻も水を離せない。苦しい息づかいで、呼気性呼吸困難ともいうべきものである。すなわち呼気するごとにクックッと異様な音声をたて、煩躁悶乱の状である。顔面は紅潮し、胸全体がいうにいわれず苦しいという。体温は三九度であった。
 「発汗吐下の後、虚煩眠を得ず、反履顛倒、心中懊悩」「急迫の状」であるので、大塚敬節氏の助言によって、梔子甘草豉湯を与えたところ、服後時余にして粘痰が音もなく流れ出し、解熱、食欲出で、咳嗽も著しく好転し、数日にして全治した。  (著者治験、漢方百話)

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