健康情報: 清暑益気湯(せいしょえっきとう) の 効能・効果 と 副作用

2014年6月27日金曜日

清暑益気湯(せいしょえっきとう) の 効能・効果 と 副作用


 漢方精撰百八方 

59.〔方名〕清暑益気湯(せいしょえっきとう)

〔出典〕医学六要

〔処方〕人参、朮、麦門冬各3.0g 五味子、橘皮、甘草、黄柏各2.0g 当帰、黄耆各3.0g

〔目標〕夏の暑さに負けて、手足がだるく、からだに熱感があり、小便の量が少なく大便は軟便または下痢で、食欲がないもの。

〔かんどころ〕手足がだるくが、気力がなく、小便は少なくて濃厚で、夏になると病状の憎悪するもの。

〔応用〕夏まけ。肝炎。

〔治験例〕肝炎。
  肝炎には、小柴胡湯大柴胡湯茵蔯蒿湯茵蔯五苓散などを用いる場合が多いが、清暑益気湯がよく効いた例を報告する。
  患者は六三才の男子。無口でおだやかな紳士。主訴は、疲労、倦怠感である。
  脈は緩で、舌には少し苔がある。腹診上、胸脇苦満はないが、深呼吸によって、僅かに肝の辺縁を触知する。腹直筋の緊張なく、腹部は弾力に乏しい。下肢に浮腫がある。血圧120/76である。大便は一日一行で、下痢はしない。食欲はあるが、進む方ではない。口渇はない。尿のウロビリノーゲン反応は、強陽性である。
  口渇があれば、茵蔯五苓散を用いたいところだが、口渇がなく、疲労、倦怠が主訴である。四君子湯にしてみようかとも考えたり、補中益気湯にしてみようかと考えたりしたが、ちょうど七月下旬の暑い日であったので、清暑益気湯を用いてみた。
  これをのむと、十日後には、疲労、倦怠が減じ、下肢の浮腫もとれた。食もすすむようになった。一ヶ月後にはウロビリノーゲンの反応も正常となった。
  ところが、この患者は、その後も、仕事が忙しいと、下肢に浮腫が現れ、疲労がはじまる。そんな時には、この清暑益気湯を用いると、必ず効くが、他の方剤では効がない。冬でも秋でも、季節にかまわず清暑益気湯を用いるが、それで結構きく。
  この患者にヒントを得て、この方を時々肝炎に用いるが、案外この方の応ずる肝炎のあることを知った。むかし夏まけとよんだものには、肝炎が含まれていたのではあるまいか。
大塚敬節


明解漢方処方 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.141
36 清暑益気湯(せいしょえっきとう) (医学六要)
 人参 白朮 麦門冬各三・五 当帰 黄耆 陳皮各三・〇 五味子 黄柏 親枝各一・五(二四・〇)

 補中益気湯の変方で、その名の通り気清め気を益す作用があり、主に夏痩せして食慾なく倦怠感の甚しい者に用いる。夏痩。



『漢方後世要方解説』 矢数道明著 医道の日本社刊

p.33 夏痩せ 暑さ中り
補養の剤
方名及び主治 一四 清暑益気湯(セイショエッキトウ) 医学六要 近製

○ 長夏湿熱大勝、人これに感じ、四肢困倦、身熱心煩、小便少なく、大便溏、或は渇し、或は渇せず、飲食を思わず、自汗す識を治す。

処方及び薬能人参 白朮 麦門冬各三・五 当帰 黄耆 陳皮各三 五味子 黄柏 甘草各一・五

 内外傷弁の方
 人参、白朮、陳皮、当帰、麦門冬、黄耆、蒼朮各三 沢瀉、青皮、葛根各二 五味子、黄柏、神曲、甘草各一 升麻〇・五

解説及び応用○ 此方は注夏病と称する夏やせ、夏まけの方剤である。補中益気湯の変方で平常虚弱の人夏の暑熱に感じて羸痩、倦怠、或は下痢し、或は呼吸苦しく、四肢熱して倦怠甚しく、食欲振わず、自汗の味る者によい。

藿香正気散は実証の暑さ中りに一時的に用いてよく、この方は虚証の人に持薬として用い体力を強める。近製方を良しとするも、老人などの長期服用には内外傷弁の方を用いる。

応用
 ① 注夏病(夏やせ、夏まけの薬)



臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
p.667 夏やせ・暑さまけ(注夏病)
62 清暑益気湯(せいしょえっきとう) 〔医学六要〕
 人参・白朮・麦門 各三・五 当帰・黄耆・陳皮 各三・〇 五味・黄柏・甘草 各一・〇

 「長夏湿熱大勝、人これに感じ、四肢困倦、身熱心煩、小便少なく、大便溏(とう)(下利)、或は渇し、或は渇せず、飲食を思わず、自汗するを治す。」
 補中益気湯の変方で、近製と称する薬方である。注夏病と称する夏やせ、夏まけの専剤である。
 細野史郎氏(漢方の臨床 二巻八号) 陳厚銘氏(漢方の臨床 一一巻八号)の発表がある。
 注夏病(夏やせ・夏まけ・暑さまけ)




和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
清暑益気湯(せいしょえっきとう) [医学六要]

【方意】 脾胃の虚証による食欲不振・下痢傾向等と、虚証による疲労倦怠感と、熱証燥証による身熱・心煩・口渇等のあるもの。時に湿証も伴う。
《太陰病.虚証》

【自他覚症状の病態分類】

脾胃の虚証 虚証 熱証・燥証 湿証
主証
◎食欲不振
◎下痢傾向
◎疲労倦怠



客証  飲食無味
 食後倦怠感
○不眠傾向
 無気力
 息切れ
 るいそう
○口渇
 自汗
 頭痛 
 遷延性炎症
 尿不利
 或いは自利


【脈候】 やや軟・やや弱。

【舌候】 湿潤して微白苔。または無苔。

【腹候】 腹力やや軟。心下部痞満して煩悶感を伴う。

【病位・虚実】 熱証が本方意の構成病態に存在しており陽証。表証も裏の実証・裏の熱証もなく少陽病に位置する。自覚症状からも、また脈力および腹力の低下からも虚証である。

【構成生薬】 人参3.5 白朮3.5 麦門冬3.5 当帰3.0 黄耆3.0 黄柏2.0 五味子2.0 陳皮2.0 甘草2.0

【方解】 人参は滋養・強壮・滋潤作用があり、白朮には強壮・健胃・利水作用がある。人参・白朮の組合せは脾胃の虚証を改善し食欲不振・食後倦怠感を治す。陳皮の健胃作用はこれに協力する。黄耆の止汗・利尿・強壮作用は人参と共に虚証に対応する。黄耆はまた当帰の補血作用を増し、更に湿証にも有効に働いて遷延性の炎症状態を治す。黄柏の寒性は熱証に対応して身熱・心煩等を去り、麦門冬の微寒性と滋潤作用は黄柏を助ける。五味子は温性で収斂作用があり、黄耆と共に湿証に有効に働く。一方では人参・麦門冬・五味子は生脈散であり、虚証に対応し、表証を止汗し、燥証を滋潤する作用がある。


【方意の幅および応用】
 A 脾胃の虚証:食欲不振・下痢傾向等を目標にする場合。
   食欲不振、下痢を主として消化不良、慢性胃腸炎
 B 虚証:疲労倦怠等を目標にする場合。
   四肢倦怠感の強い食欲不振、疲労倦怠感の強い慢性肝炎
 C 熱証湿証:身熱・心煩・口渇・遷延性炎症等を目標にする場合。
   身熱、鬱熱、夏負け、心煩の強い夏痩せ、慢性頭痛

【参考】 *此の方は注夏病を主とす。『医学入門』に春末夏初に遇う毎に、頭疼脚軟、食少体熱するは注夏病と名づく。之の方にて治す。補中益気湯去升柴加黄蘗・芍薬・五味子・麦門冬。即ち此の方一類の薬なり。
『勿誤薬室方函口訣』*『内外傷弁』の清暑益気湯は、『医学六要』に神麹・沢瀉・青皮・葛根・蒼朮・升麻の六味を加える。
*長夏湿熱大いに勝(さか)んに、人之に感じ、四肢困倦し、身熱心煩し、小便少なく、大便溏なり。或は渇し、或いは渇せず、飲食を思わず、自汗するを治す。
『内外傷弁』
*本方は夏まけの薬として用いられる。補中益気湯の方意を含み、補剤としての作用が強い。同名で同様の薬効のものが『内外傷弁』にあるが、そちらは多味で老人の持薬に良く、即効果得るには『医学六要』の本方が良いとされる。
*本書では湿証とは体質的な水毒に虚証・熱証、更には寒証もからんで、遷延性の難治な病態をいう。水毒体質のため尿不利の傾向がみられる。湿証を呈する代表的な疾患としては、慢性下痢・膀胱炎・口内炎・関節リウマチ・痔瘻・フイステル等を挙げることができる。これらの急性期の症状は去り、慢性期に移行したもので、炎症症状が少なくなり、稀薄な分泌液をいつまでも排出して、治癒傾向のみられないものが本書の湿証である。
【症例】 慢性肝炎
 60歳の主婦で、この婦人は4年前ひどく疲れるので医師に診断を乞うたところ、肝炎と診断されて1年あまり入院治療して、肝臓の機能は正常だから食事に注意すれば、薬は飲まないで良いと言われた。毎日寝てばかりいても仕方がないので、漢方の薬局に相談したところ、これを飲んでみなさいと補中益気湯をくれた。しかしやっぱり気力が出ないという。
 脈大弱にして微。舌苔はないがやや乾燥。食事はとれるが、少し無理をし仲食べるとひどく疲れるという。胸脇苦満なく、腹に弾力が乏しい。血圧90/52、低血圧である。安眠できず、動くのが大儀でいつもごろごろしている。大便は軟らかいのに出にくい。清暑益気湯を投与。
 2週間分を飲んで再来した患者は、3年間の悩みが消えましたと挨拶して、安眠でき、疲れを忘れ、大便が硬くなり快通するという。血圧108/62。その後128/80、130/82と正常になり、血色も良く元気になった。
『大塚敬節著作集』 第五巻121


夏季熱
 6ヵ月の男児。主訴は約1ヵ月半の37℃台の熱と数日来の粘液性下痢。色の白い、ロウのように透き通った滲出性体質の子供である。皮膚は湿潤で、やや白い舌苔がある。発熱は11時から朝3時頃が最高でしょうと問うてみると、患児の祖母が「そうですそうです」と感激する。詳細に診察したが大した症例もないので夏季熱として、清暑益気湯エキス0.4mgに賦形薬を加え、下痢があるので檳榔エキス0.25mgを加える。翌日来院時に36.5℃になった。2日服用して2日休薬し来院、少し熱が出たという。今度は下痢なし。1日服薬、3日休薬、また2日服用。不真面目な服用を責めると、父親が大酒飲みで薬代が続かないという。半ヵ月経って今度は少し嘔吐が加わった発熱で些か慌てて、1週間服薬。11月、感冒でやって来た来は、筋肉はしまり、滲出性の外観はなぬなっていた。
陳厚銘 『漢方の臨床』 11・8・32



『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊


清暑益気湯(せいしょえっきとう) <出典>医学六要(明時代)

方剤構成
 人参 白朮 甘草 当帰 黄耆 陳皮 麦門冬 五味子 黄柏

方剤構成の意味
 補中益気湯から生姜・大棗のペアと升麻・柴胡を除いて,麦門冬以下を加えたものである。すなわち補中益気湯を暑気対策向けにつくり変えたものである。
 升麻・柴胡が升性であるのに反して,麦門冬・五味子・黄柏はいずれも降性であり,麦門冬・五味子が潤性であること,五味子・黄柏が収斂性であることと合わせて,汗の出過ぎや興奮をしずめるのに適することがわかる。汗の出過ぎには,もちろん黄耆も大切な薬物である。麦門冬の清熱作用,五味子の止汗作用,黄柏の消炎作用も暑気対策として充分納得できる。 補中益気湯が基本であるから,寒虚証者で,汗かきの者の,夏バテ用の方剤と見ることができる。

適応
 虚弱者で汗かきの者の夏やせ・夏まけ


『健康保険が使える 漢方薬 処方と使い方』
木下繁太朗 新星出版社刊

清暑益気湯(せいしょえっきくとう)
 ツ
医学六要(いがくろくよう)

どんな人につかうか
 夏やせ、夏まけに用いる薬で、食欲が減退して、手足がだるく、水っぽいものを欲しがり、足の裏がほてったり、下痢したり、自然発汗があったりする者に用い、夏でなくても食後だるくて眠くなったりする人、老人や胃腸の弱い人の持薬にも使えます。

目標となる症状
 ①夏やせ、夏まけ、夏ばて、暑さまけ。②食欲不振。③水分をほしがる。④下痢、軟便。⑤自然発汗(自汗)。⑥尿量減少。⑦手足がほてる。⑧全身倦怠感。⑨食後の嗜眠、倦怠感。⑩平素胃腸虚弱。⑪息切れ、無力感。⑫口渇、喉の渇き。

 腹壁軟弱で、臍部(さいぶ)に動悸がふれる。

 微細、頻数、散大。

 舌質(ぜつしつ)は紅色で乾燥、舌苔(ぜつたい)はうすい黄色。[気津両傷(きしんりようしよう]


どんな病気に効くか(適応症) 
 暑気あたり暑さによる食欲不振下痢全身倦怠夏やせ(注夏病(ちゆうかびよう)。
 手術後、熱傷、出血、日射病、熱射病、自律神経失調症。

この薬の処方
 人参(にんじん)、朮(じゆつ)、麦門冬(ばくもんどう)各3.5g。当帰(とうき)、黄耆(おうぎ)、陳皮(ちんぴ)各3.0g。五味子(ごみし)、黄柏(おうばく)、甘草(かんぞう)各1.0g。


この薬の使い方
前記処方(1日分)を煎(せん)じてのむ。
ツムラ清暑益気湯(せいしよえつきとう)エキス顆粒、成人一日7.5gを2~3回に分けて、食前又は食後に服用する。

使い方のポイント
補中益気湯(ほちゆうえつきとう)(198頁)の変方で微熱のある時は補中益気湯の方がよい。
疲労感、無力感、息切れ、食欲減退等の気虚(ききよ)と、口渇(こうかつ)、咽(のど)の乾き、尿量減少など、津虚(しんきよ)の症状のある時に用います。

処方の解説
 中医学では黄耆(おうぎ)人参(にんじん)朮(じゆつ)甘草(かんぞう)は補気(ほき)、健脾(けんぴ)の作用、麦門夏(ばくもんどう)は生津(せいしん)作用、当気(とうき)は補血(ほけつ)作用、五味子(ごみし)は収渋(しゆうじゆう)作用、陳皮(ちんぴ)は理気(りき)の効果、黄柏(おうばく)は清熱化湿(せいねつかしつ)の効果があり、これらの組み合わせで気津両傷(きしんりょうしょう)、つまり気虚(ききょ)と津虚(しんきょ)の両方があるような状態を治すとされています。




副作用
1)重大な副作用と初期症
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
2) ミオパチー: 低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
[理由]
厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。

[処置方法]
原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度によ り適切な治療を行うこと。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等により電解質バランスの適正化を行う。

2) その他の副作
過敏症:発疹、蕁麻疹等
このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
[理由]
本剤には人参(ニンジン)が含まれているため、発疹、蕁麻疹等の過敏症状があらわれるおそれがあるため。

[処置方法]
原則的には投与中止により改善するが、必要に応じて抗ヒスタミン剤・ステロイド剤投与等の適切な処置を行うこと。


消化器:食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等
[理由]  本剤には当帰(トウキ)が含まれているため、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等の消化器症状があらわれるおそれがあるため。

[処置方法]  原則的には投与中止により改善するが、病態に応じて適切な処置を行う。


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