健康情報: 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)(一貫堂方(いっかんどうほう))の効能・効果と副作用

2014年1月9日木曜日

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)(一貫堂方(いっかんどうほう))の効能・効果と副作用

『漢方一貫堂の世界 -日本後世派の潮流』 松本克彦著 自然社刊
 竜胆瀉肝湯
 さて最後はいよいよ竜胆瀉肝湯で、中島先生が解毒剤三方のうち、殆どこの方だけを使っておられることは前に述べた通りである。
 この竜胆瀉肝湯という方名は、他の二方に比して昔から有名であったらしく、『古今方彙』にも、便血、下疳、淋証、疔瘡、帯下と各門で取り上げられ、『衆方規矩』にもその名が見えている。また海の向うの現代中国でも、袪湿熱の代表方として大抵の方剤学書にその名が載っており、『実用中医学』では汎用方として星印まで付いている。しかしその出典、内容については少しずつ違いがあり、今回整理を試みた。
 即ちまず古い方から取り上げると、『古今方彙』の便毒門に、
 『本方竜胆瀉肝湯
 肝胆経に薀熱するもの、
 柴胡梢、沢瀉、車前子、木通、生地、当帰、竜胆。
 水煎」
という七味からなるものがあり、出典は李東垣の『蘭室秘蔵』となっている。
 中草薬学書には、「春柴胡、軟柴胡、南柴胡、細柴胡は生で用い茎葉を使用する」と書かれているので、柴胡梢はよいとして、何よりも補中益気湯の李東垣がこんな方をとややそぐわない気がし、間違いではないかと考えたがこの書がなく、確かめようもない。ただ『万病回春』にも次のような文がある。
 「李司馬(東垣のことか)茎中痛みをなし、小便淋の如く、口乾き痰を唾(つばき)するは、これ色を思い精降りて火敗る。補中益気湯六味地黄丸を用いて癒やす。
 男子茎中痛み、白津を出して小便閉ずる時癢(痒)をなす。小柴胡湯を用い、山梔子、沢瀉、炒黄連、木通、竜胆草、茯苓を加え、また六味丸を兼ねて痊(い)やす。」
 この内どこまでが李東垣についての文かは分からないが、これから見ても、甘温除熱の李東垣もまんざら無縁のものとは思われず、この方の源もまた、遠く金元の李朱学派に端を発するようである。
 『衆方規矩』の外科門に、
 「下疳、便毒を治す。兼ねて淋病を治し、前陰臭臊なるを治す」
として挙げられているのもこの李東垣の処方である。
 しかし『古今方彙』の多くの門に出ているのは別の処方で、その原典として柴胡清肝散と同じく、「薛氏十六種」を挙げており、これもそのうちの『外科枢要』からかと思われる。しかし、この書もなく、一部に龔廷賢の『済生全書』を挙げている個所もあるため、ここでは『済生全書』の条文を掲げておこう。即ちその便毒門に、
 「竜胆瀉肝湯
 肝経の湿熱にて、両柪(股または胯のことか)腫痛し、或は腹中疼痛し、或は小便渋滞するを治す。兼ねて玉茎瘡を生じ、或は便毒、懸癰、嚢癰にて腫痛潰爛し、睾丸に懸け掛るを治す。
 竜胆草、沢瀉各一銭。車前子、木通、当帰、生地黄、山梔子、黄芩、甘草各五分。
 右水煎し空心に温服す」
とあり、この便毒については本文中に、
 「夫れ便毒は、小腹の下、両腿合縫の間に生じ、その毒初め寒熱を発し、交も腿の間に腫起疼痛をなす。これなり」
ということで、当時各種のいわゆる性病に当てられたのであろうが、前方から柴胡梢が除かれ、代わって山梔子、黄芩、甘草が加えられ、合計九味からなる。
 また現代中医学書に出ている『医宗金鑑』の竜胆瀉肝湯というのでは、この柴胡が再び復帰して、合計一〇味になっているようである。
 しかし、日本で竜胆瀉肝湯といえば、以上の条文通り、膀胱炎や睾丸炎、帯下、あるいは下半身の湿疹等にのみ用いられるのに対し、中国での応用範囲はかなり広い。
 『中医方剤学』(南京中医学院)によれば、
 「本方の証は肝火に兼ねて湿熱を挟むことによって生じる。即ち肝火が上逆すれば、脇痛み、口苦く、心中は煩熱し、目赤腫痛、耳聾耳腫が起る。また湿熱が下注すれば、淋濁尿血を生じ、陰腫陰痒し、嚢癰や便毒等の証が現れる。
 この方は肝火を瀉し、湿熱を利する功があり、その為上逆した諸証はすべてこれを治しうる訳で、肝火を降し、湿熱を清(さま)せば、諸証は自ら癒える。
 また本方の肝火を瀉す力は非常に強く、およそ肝経実火の証で津液がまだ傷れていない者は、すべてこの方で苦寒折熱してよいが、苦寒はまたよく胃を損うため、病に適中した時点ですぐ止める方がよく、過剤を用いてはならない。」
としており、実際の中国では、下焦つまり下半身の疾患だけでなく、咽頭部(五官科学)や鼻部(実用中医学)の疾患、さらには各種の皮膚疾患などにも広く利用されている。最近、大阪大学の眼科でベーチェット病の権威である三村康男先生が、本病によくこの方剤エキスを出しておられるが、これで見るとまさしく正解で、中島先生も以前からこの疾患に防風通聖散と合方して用いておられる。防風通聖散荊芥連翹湯さらに洗肝明目散との類似性を考えれば、この二方の合方の意味はよくご理解いただけるであろうが、この場合、上焦眼部の症状が強ければ通聖散の比重を増し、下焦である陰部潰瘍が主な場合は竜胆瀉肝湯にウエートとを置くといった匙加減もよい。また防風通聖散には大黄、芒硝といった瀉下薬があるため、下痢しやすいものでは、これを荊芥連翹湯洗肝明目散に代えるといった配慮も必要だろう。いずれもエキス剤であるため是非試行をお勧めする。速効あるいは大きな効果は望めないにしても、久服させていると確かによいようで、私は全身症状には漢方薬がよく、ブドウ膜炎にはコルヒチンの方が効果が鋭いと考え、この両者を併用していることが多い。
 なお中島先生あるいは我々が使用している竜胆瀉肝湯は、一貫堂の加減方で、市販のエキスは薛立斎の原方であるため、両者に若干の違いはあるが、実はこの薛己の方に防風通聖散あるいは荊芥連翹湯を加えると、黄連、黄柏を除いて一貫堂加減の薬味はそろい、ほぼ一致するのである。どうしても完全に一致させたい場合は、これにさらに黄連解毒湯でも加えればよいであろう。
 さてこの一貫堂加減であるが、薛己の原方に、まず川芎、芍薬、黄連、黄柏を加えて温清飲を完成させ、連翹と薄荷葉の辛涼を加え前二方にそろえている。ただしこれに柴胡清肝散ではわざわざ去った防風を再び付け加えているがこれは防風には発表の作用とともに、肝、脾、膀胱に入って止血、止瀉の効能があるといわれ、下焦に重点を置く本方で主に後者の薬効を取って便血や崩漏に対する備えを強めたと思われる。
 即ち全構成は、
  黄連解毒湯・・・・・・・・・・清熱解毒
  四物湯・・・・・・・・・・・・・・柔肝養血
  薄荷、連翹、竜胆・・・・・清熱瀉火
  沢瀉、木通、車前子・・・泄熱利水
  防風・・・・・・・・・・・・・・・・・止瀉止血
  甘草・・・・・・・・・・・・・・・・・諸薬調和
で、中島先生の湿熱を「下に利す」といわれた意味は一目瞭然である。
 ところで以前中島先生が、「竜胆瀉肝湯は六味丸ですから」といわれたことを紹介したことがあり、これについて京都の江部先生ご兄弟が名言だとすっかり感心しておられた。つまりこの方は沢瀉、車前子、木通さらに防風といった腎、膀胱に入る薬味をそろえ、肝胆に入る竜胆、連翹を組ませて、全体として肝腎の熱を清す形となっている。したがって六味丸の適応症、肝腎陰虚による虚火上炎の証と清熱という点では共通するところがあるのである。
 そしてさらに中島先生が三方の清熱剤の中で最終的にはこの方だけに限定しておられるのは、下焦の熱を清せば、全体の熱も下るという確信からではないかと思われ、この点北京の名中医楊甲三先生が、「下を手当てすれば、上は自(おのず)から治る」といって、六味丸加減ばかりを使っておられたのと相通じることころがある。期せずして日中両国の名医が到達されたこの境地には、実は長い歴史的背景があるのである。以下ややむずかしくなるが、これを追ってみよう。
 先日『註解傷寒論』の読書会でちょうどこのような節にぶつかった。
 「(本文)若(も)し脈浮にして発熱し、渇して飲水を欲し、小便利せざる者は、猪苓湯之を主る。
  (註解)これ下した後は、客熱下焦に客するものなり、邪気は表より裏に入り、下焦に客し、三焦はともに熱を帯びるなり。脈浮にして発熱するは、上焦の熱なり。渇して飲水を欲するは中焦の熱なり。小便利せざるは邪下焦に客し、津液下に通ずることを得ざるなり。猪苓湯を与えて小便を利し、もって下焦の熱を瀉すなり」
 註解者の成無己(一〇五六-一一六七・正確には不明)は、北宋、晋、金代の人といわれている。
 次いで以前紹介したが、金元時代の李東垣(一一八〇-一二五一)の『脾胃論』からもう一度一部を再録してみる。
 「火は元気の賊(敵)なり。……元気不足すれば心火独(ひと)り盛ん。心火は陰火なり。下焦に起り、その系は心に系る。心令(役目)を主らざれば相火これに代る。相火は下焦を包絡する火にして元気の賊なり。火と元気をこれ両(ともな)わず。一勝てば一は負く」
 さらにこの後を受けて李朱医学のもう一人、元代の朱丹渓(一二八一-一三五八)の主説を『中国医学史略』から引用する。出典は主に彼の『格致余論』によっている。
 「人身の火に二つあり、一は君火なり、一は相火なり。君火は心火なり。相火は肝腎にあり。膀胱、三焦、心包、胆にもまた相火あり。
 相火は動を主る。天にこの火あらざれば、物を生ずること能わず、人にこの火あらざれば、生あること能わず、故に相火の動節に中(あた)れば(適当である)これ生生して息(やす)まざるの運用なり。
 五性物に感ずれば心火動じ易く、心火動ずれば相火また動ず。相火妄動(走り回る)すれば陰精自ら走る。陰虚すれば則ち病(や)む、陰絶えれば則ち死す……。」
 つまり中島先生は相火の妄動を抑えることを主とされ、楊先生は陰精を補うことに意を用いておられるが、目指すところは一つである。ただし竜胆瀉肝湯の原方は、中医学書の注意書きにもあ改aたように、あくまで津液がまだ敗れていない実火に対する処方であるため、一貫堂では芍薬、川芎を加えて四物湯の形を整え、この欠点をやや補っているのである。
 即ち一貫堂の解毒三方は、それぞれ清熱解表、清熱袪痰、清熱利湿という実火を対象とした激しい清熱剤を選びながらも、一方で四物湯を加えて久服に耐えられるよう工夫し、いわば攻中の補といった形にしていることが共通した特長である。そしてまたこの解毒三方に見られる上から下へ、表から裏へという配列は、前に述べた分心気飲から養胃湯、そして分消湯という一連の理気利水剤の配列とまったく同じパターンを取っていることに、すでにお気付きの方もあるであろう。
 


『漢方一貫堂医学』出版 石原 明
 竜膽瀉肝湯も一貫堂で使用するものは『万病回春』の原方とは、その処方が多少異なり、やはり四物解毒湯が基本になっています。したがって原方の竜膽瀉肝湯よりは運用範囲が広く、上記の症状を治すばかりでなく、そのような体質をも改善する効があるのです。   竜膽瀉肝湯証の者はやはり解毒証体質でありますから皮膚の浅黒いものが多く、また比較的実証タイプのものに用いるのです。以上の五万が瘀血証体質、臓毒証体質、解毒証体質の三大証に対する一貫堂医学の主力ですが、これらのものは、それぞれ単独に用いるばかりでなく、通導散防風通聖散の合方、また竜膽瀉肝湯と通導散の合方というように、しばしば合方して用いる場合も少なくありません。



明解漢方処方 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.126
竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう) (一貫堂家方)

 処方内容 当帰 芍薬 川芎 地黄 黄連 黄柏 黄芩 山梔子 連翹 薄荷 木通 防風 車前子 甘草各一・五 竜胆 沢瀉各二・〇(二五・〇)
 
 必須目標 ①壮健体質(皮膚浅黒く、胃腸丈夫で脉証も腹証も緊張している) ②泌尿器疾患 ③精神不安 ④右腹直筋拘攣

 確認目標 ①手掌足心が湿潤 ②帯下または膿尿 ③鼠蹊淋巴腺腫張 ④下半身、ことに足に乾性皮膚病がある。

 初級メモ ①本方は森道伯氏が温清飲を基礎に創作された一連の解毒処方の一つで、泌尿器系に働く竜胆、車前子を加え、主として泌尿器の炎症、化膿に用いられる。
 ②経絡説によれば下部の湿熱は肝経に属しており、故に本方のような解毒、清熱剤が適することになる。
 ③もし陰実体質で類似の証なら八味丸、陰虚体質なら清心蓮子飲を考える。

 適応証 急性尿道炎。淋疾。膣炎。膀胱炎。

 文献 「柴胡清肝散」の項参照
     「漢方一貫堂医学」矢数格(医道の日本社) 柴胡清肝散、竜胆瀉肝湯、防風通聖散など一貫堂家方について詳細に解説されている。





医療用漢方製剤
コタロー竜胆瀉肝湯エキス細粒
 
効能 ・ 効果 :
比較的体力 のあるものの次の諸症 : 尿道炎、膀胱 カタル、膣炎 、陰部湿疹、こしけ、陰部痒痛 、子宮内膜炎 。




漢方一貫堂医学 矢数 格著 医道の日本社刊
p.41
 龍胆瀉肝湯証
 竜胆瀉肝湯証は、同じく解毒証体質でも結核性疾患とは比較的比関係である。たまには壮年期の肺尖カタル、腎臓結核、睾丸結核、結核性痔漏、女性の病症腹膜炎等に応用されることもあるが、概して婦人病や泌尿生殖器病、花柳病などに運用される。しかも処方構成の上から言つて、下焦、すなわち臍部より下の疾病によく用いられる。
 竜胆瀉肝湯は元来下疳(げかん)(梅毒潰瘍)の処方であるが、これを四物黄連解毒剤加減と変方したものがわれわれの用いるところのものである。泌尿生殖器病は肝臓の解毒作用を必須とし、腹診上著明な肝経の緊張ないし肝臓腫大を認めるものである。そして、ただ泌尿生殖器に限らず、肝経の緊張を来す疾患で、つぎに述べる竜胆瀉肝湯証の固有証ともいうべきものを呈するものに竜胆瀉肝湯を応用するのである。
 望診 竜胆瀉肝湯証の者はやはり解毒証体むであるから同様に皮膚の色は浅黒い。であるから、青年期以後の男女で、皮膚の色の浅黒い者は多少にかかわらず竜胆瀉肝湯証を持つているものと認めてさしつかえない。
 脈診 竜胆瀉肝湯証の脈は緊脈である。また淋疾を病む者はポカリポカリとした中湿の脈と同様の脈状を呈するものもある。一貫堂では同様湿脈と呼んでいるが、中には緊脈と湿脈とをかねた性状を帯びる者もある。
 腹診 竜胆瀉肝湯証の腹証は肝経の顕著な緊張を認める。図に示すように、臍下、臍傍より両脇下にかけて著明な抵抗を触れる。すなわち、病毒が肝経を伝つて肝臓に伝搬され、肝臓において解毒作用が行なわれている証拠である。  龍胆瀉肝湯証のかかり易い病気  竜胆瀉肝湯証のかかりやすい病気を挙げれば、結核性疾患-肺尖カタル、腎膀胱結核、睾丸結核、結核性痔漏、軽症肋膜炎、腹膜炎等のあるもの、痔核、痔漏、眼病、胃病、淋疾、膀胱炎、睾丸炎、梅毒、女性泌尿生殖器炎性疾患のほとんど全部といつたところであろう。

 p.63
 (三)龍胆瀉肝湯  竜胆瀉肝湯は解毒証体質の下焦の病気に主として用いられ、したがつて、小児期にはそのような病気は稀れであるから、竜胆瀉肝湯は青年期以後に応用されることが多いのである。
  竜胆瀉肝湯の処方は、当帰、川芎、芍薬、地黄、黄連、黄芩、黄柏、梔子、連翹、甘草、薄荷葉、竜胆、沢瀉、木通、車前子、防風、各一・五以上十六味、各等量一日量である。
  すなわち、四物黄連解毒湯から柴胡を去つて、薄荷葉、竜胆、沢瀉、木通、車前子、防風を加えたものであるから、荊芥連翹湯より荊芥、桔梗、白芷、枳殻の治風剤を去り、竜胆、沢瀉、車前子、木通の竜肝利水剤を加えたことになるのである。処方中、
 竜胆は「大苦大寒、沈陰下行す。肝胆を益して火を瀉す。兼ねて膀胱腎経に入り、下焦の湿気を除く。」とあり、
 沢瀉は「甘淡鹹。膀胱に入りて小便を利し、腎経の火の邪を瀉す。」
 清渇、嘔吐、瀉利、淋瀝、尿血、洩精、痰飲、陰汗、腫脹、水痞、疝痛、脚気、湿熱の病を治す。」とあり、
 車前子は「甘寒、肺肝の風熱を清し、膀胱湿熱を滲し、小便を利して気走らず、湿痺、癃閉、暑湿、瀉利、目赤、障翳を治す(能く肝熱を除す)」とある。
 また、「万病回春」の便毒の項に竜胆瀉肝湯について、
 「肝経の湿熱、或は嚢癰、便毒、下疳、懸癰、腫痛焮作(やくがごとくおこり)、小便渋滞、或婦人陰癃痒痛、或男子陽挺腫脹、或は膿水出ずるを治す。
 車前子、木通、地黄、帰尾、山梔子、黄芩、甘草各二・〇、沢瀉、竜胆草、各三・〇、以上九味一日量」とある。

 湿熱とは花柳病性の熱毒のことで、この毒は肝臓に伝搬されて解毒作用が行なわれるので肝経湿熱と言うのである。また嚢癰とは、淋毒性副睾丸炎のことで、便毒とは現代の横痃のこと、下疳はやはり現代の下疳のことである。また懸癰とは一つは懸壅垂の瘡を意味するが、この場合は会陰部の癰を指すのである。
 すなわち、竜胆瀉肝湯は、副睾丸炎、横痃、下疳、淋疾、会陰の癰、婦人外陰部の炎症等に用いられたのである。
 「外科正宗」の竜胆瀉肝湯は、同方にさらに黄連、連翹、大黄を加えている。
 以上二処方の合方より大黄を去り、川芎、芍薬を加えて、四物湯とし、黄柏を加えて黄連解毒湯とかえ、さらに防風薄荷葉を添えたものが我々言う竜胆瀉肝湯である。「牛山方考」の竜胆瀉肝湯と比べれば、それは全くの瀉肝導水剤であつて、方中黄連解毒剤は全く除外されているのである。
 柴胡、沢瀉、車前子、木通、地黄、当帰、竜胆草青:
 この方処では治淋剤としては効があるかもしれないが、そのほかの応用範囲が狭ことと、薬理の上で不備をまぬがれないと思う。
 そこで、我々の用いる竜胆瀉肝湯の特色を述べると、それはまず第一に四物黄連解毒湯を基本とすることで、したがつて、この方が単に花柳病治剤に止まらず、その他いろいろな病気に応用され、また長期の連用に堪え得られるので、解毒証体質の主宰薬剤たりうることは一つにはこの点にあるのである。
 経験によれば、解毒証体質者は淋病に罹患し易い傾向がある。
 この病理は、この体質者が持つている体毒(すなわち解毒)のためだと解せられ、一貫堂では、竜胆瀉肝湯方に黄連解毒剤を加味することになるので、また、四物湯とする理由は、竜胆瀉肝湯が、比較的強い肝臓攻撃剤であるから、肝血を和して、この鋭鋒を矯めんがためにほかならないのである。

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 第三類 竜胆瀉肝湯
 内科 
 肺結核
 肺尖カタルの時期に、壮年期の者で竜胆瀉肝湯証を呈するものがある。この程度の肺結核は治し易い。

 心臓病
 心臓病に肝臓肥大を伴うことは必発の症候であるが、漢方医学的病理からするならば、これは木生火の関係であって、肝臓は心臓の母であるから、子供の病気は母親に影響することもちろんである。このような肝臓欝血は肝経に緊張を来すので、竜胆瀉肝湯加減を用いるときは心臓病の症状を軽快させることができるのである。
 解毒証体質の胃腸病の中に、肝臓を主とし胃を従とすべきものがある。すなわち竜胆瀉肝湯証を呈する胃腸病は、直接に脾胃に向かつて処方することは当をえないので、本方によつて肝を理して治すものがある。

 瘧疾中、腎盂炎はこの竜胆瀉肝湯の治す処である。

 婦人の腹膜炎と診断されるもので、たんに肝経の緊張にすぎないもの、すなわち竜胆瀉肝湯証を呈するものもまた本方の治すところである。

 痔核、痔漏は解毒証体質の者に来やすく、本方と防風通聖散との合方が用いあれることがある。

 解毒証体質者の眼病、特に結核性角膜炎が多いが、これに用いる洗肝明目湯はこの竜胆瀉肝湯加蒺藜子、菊花、荊芥、石膏、決明子、木賊、羗活、蔓荊子、桔梗、大黄である。

 婦人科
 婦人科における竜胆瀉肝湯の応用は極めて広いが、単独で用いられる場合は少なく、ふつう通導散または防風通聖散と合方されることが多い。

 崩漏
 四物黄連解毒湯(温清飲)で治す子宮出血に本方加桃仁、牡丹皮、紅花を用い、また通導散を合方して止血を図ることがある。

 帯下
 帯下を来す病気に通導散と合方して本方を用いることの多いことは、すでに通導散の項で述べた通りである。特に淋毒性帯下には本方が必要である。また、婦人生殖器の炎症性疾患には、そのほとんど全部に本方を用いると言つてもよいほどである。しかし、その際に、いろいろな兼用が必要であることは言うまでもない。

 外科
 嚢癰
 特に淋毒性副睾丸炎には不可欠の処方である。同時に精系炎を治すことはもちろんで、本方加山帰来、薏苡仁、大黄を用いる。

 淋疾
 淋毒性尿道炎あるいは淋毒性膀胱炎には、本方加山帰来、薏苡仁、大黄を用う。

 その他、生殖器官の炎症には病名の如何にかかわらず本方を用いてみるもよい。

 梅毒には、下疳、横痃、楊梅瘡、第三期以後も、防風通聖散とともに補助療法として山帰来、薏苡仁、大黄を加えて用いる。



副作用
1) 重大な副作用 と初期症状
間質性肺炎 : 咳嗽 、呼吸困難 、発熱 、肺音の異常初期症状等があらわれた場合には、本剤 の 投与を中止 し 、 速やかに胸部 X 線、胸部 CT等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。


偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽 アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行 い、異常 が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

ミオパシー:低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤 の投与等の適切な処置を行うこと。

肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、Al - P、γ − GTP等の著 しい上昇 を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

2)  その他の副作用
 消化器:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等

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