健康情報: 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう) の 効能・効果 と 副作用 別名:麻黄細辛附子湯(まおうさいしんぶしとう) 略称:麻附細(まぶさい)

2012年5月26日土曜日

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう) の 効能・効果 と 副作用 別名:麻黄細辛附子湯(まおうさいしんぶしとう) 略称:麻附細(まぶさい)

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
麻黄四・ 細辛三・ 附子○・五~一・
本方は少陰病で表證のあるものに用いられる。従って虚弱者や老人の感冒・気管支炎に用いられる。その目標は、悪寒・微熱・脈沈細・全身倦怠・無気力・嗜臥 等である。これに対して本方を用いると、悪寒は去り、気力は回復し、諸症快癒する。また虚弱者の咳嗽で、時々背部に悪寒を覚え、稀薄な水様の喀痰を吐き、 尿も稀薄で多量、脈沈細・貧血性・無気力の者にも本方はよく奏効する。
附子・細辛は温薬であって、血行を盛んにして身体に温感を生じさせる。麻黄は麻黄湯の麻黄と同じく、悪寒・発熱を治する。虚弱者で脈が沈細・無気力であるから麻黄に附子・細辛を配伍してこれを治するのである。本方は脈浮緊の者、病状の発揚性の者に用いてはならない。
本方の応用としては、虚弱者の感冒・気管支炎があるが、甚しく頭部の冷痛に苦しむ者に防風・川芎を加えて効がある。本方に桂枝去芍薬湯を合方した方剤は、 桂姜棗草黄辛附湯と称し、桂枝の加味によって温剤としての力が増強し、甘草・生姜・大棗の加味によって薬性が調和されたもので、麻黄附子細辛湯と同様の場 合に用いられ、また肺結核末期の消耗熱・半身不随・浮腫・乳癌・バンチ病・慢性蓄膿症・皮膚の悪性腫瘍等に応用される。
 

漢方精撰百八方』 
16.[方名] 麻黄細辛附子湯(まおうさいしんぶしとう)
[出典] 傷寒論

[処方] 麻黄3.0 細辛3.0 附子0.5~1.0

[目標] 少陰病というのは脈微細、ただ寝ていたいという症状のもので、生活反応の活発でない状態で、急性の時期から慢性期に移行する病体の症状で、老年期にはいるとカゼの症状がいきなりこの少陰病になってしまう場合が少なくない。本方はこの少陰病で発熱して脈沈の者に適する。

[かんどころ] 老人でカゼの症状で発熱し咳をするものに用いる。

[応用] 本方は老人のカゼの方剤として有用である。
      細辛は宿飲停水を主治するもので、心下に水気があり、咳き込むものに細辛をやると、鎮咳作用を呈する。つまり本方はぜいぜいする咳をするもので、しかも太陽病でないもの、すなわち悪寒発熱頭痛などの急性症状のないものに適するもので、たとえば倦臥、かじかんだ形で臥床していて、小便清利、つまり水のように透んだ小便をするもの、といういかにも非科学的な観察のようだが、実際問題としていちいち小便の成分の定量分析をしているわけにはいかないので、かえって肉眼的検尿による証の判定というようなコツを再検討することもわれわれ現代医家の反省を促すことである。
       附子は陰証の用薬で、強心作用があり、新陳代謝の緩慢になったもの、生活力の減衰したものに用いて、血液循環を良くし、新陳代謝を亢進させる作用をするものであるから、本方は老人のカゼの薬というようなものでないことがわかるであろう。これが傷寒論でも本方に具体的な適応症を指定せず単に少陰病の処方と漠然と言っているわけである。
      麻黄は喘咳水気を治すとあって、すべて水腫浮腫粘液分泌過多の症状にて適する薬であるが、悪風悪寒といって外気にあうとぞくぞくする感じのするもの、また身疼骨節痛ともあるので、麻黄には自律神経亢奮に対する鎮静作用のあることも想像されるわけであるが、エフェドリンの迷走神経鎮静作用や覚醒剤としての応用から推測しても、本方の内臓諸器官に対する機能恢復の作用があることが推測される。
       七十二才男。十日前からカゼをひいて頭痛発熱し、咳が出たが、それが喘息になってしまった。本方を投与したら即効があり、同時に腰痛もなおってしまった。
相見三郎


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
8 麻黄細辛附子湯(まおうさいしんぶしとう)  (傷寒論)
〔麻黄(まおう)四、細辛(さいしん)三、附子(ぶし)○・五~一〕
本方は、麻黄附子細辛湯とも言われ、少陰病で表証のあるものに用いられる。したがって、悪寒、微熱、全身倦怠、無気力、嗜臥(横になってばかりいたい)、咳嗽、身体疼痛、尿はうすく量も多いものか、尿不利によって浮腫となる。虚弱体質生や老人にあらわれることが多い。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、麻黄細辛附子湯證を呈するものが多い。
一 感冒、気管支炎、気管支喘息、肺炎その他の呼吸器系疾患。
一 そのほか、蓄膿症、虚弱者など。
略して、麻附細(まぶさい)と呼ばれることもある。
麻黄細辛湯の加減方
(1) 桂姜棗草黄辛附湯(けいきょうそうそうおうしんぶとう)  (金匱要略)
〔麻黄細辛附子湯に桂枝去芍薬湯を加えたもの〕
本方は、虚弱体質者で頭痛、喘咳、身体痛、関節痛、尿の回数・量がともに多く、希薄なものなどを目標とする。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、桂姜棗草黄辛附湯證を呈するものが多い。
一 感冒、気管支炎その他の呼吸器系疾患。
一 そのほか、乳癌、舌癌など。






《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
73.麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう) 傷寒論
麻黄4.0 細辛3.0 附子1.0

(傷寒論)
少陽病,始得之,反発熱,脈沈者,本方主之(少陰)


現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
微熱があって頭痛や頭重を伴い,悪寒と全身倦怠感がひどく,無気力なもの。
主として老人や虚弱者の感冒に応用されているが,熱症状よりも悪寒,全身倦怠感,脱力感,無気力などを対象に用いる処方である。本方が適応するものは虚弱で生体防衛反応が乏しく,その症状も緩和であるが,気力がなく横臥していたいという無気力,貧血性のもので,したがって抵抗力の少ない老人の感冒や気管支炎に繁用されるが,平素丈夫なものであっても,筋肉労働やスポーツなど過激な運動後の疲労困憊時の感冒,あるいは夏の寝冷えによる感冒など,ヒフ,筋肉など表在部位の抵抗力が減退し,ヒフ呼吸や体温調節が非生理的な状態のときにかかりやすい感冒にも応用される。本方はまた虚弱者の気管支炎で,背部に水を流すような悪寒を自覚し,咳嗽とともに稀薄な水様の喀痰があって,割合に量的な排尿あるものに鎮咳効果がある。この症状に似た苓甘姜味辛夏仁湯は,喘鳴,呼吸困難がひどく,また小青竜湯は貧血や冷えの傾向が認められない。そのほか冷え症,貧血症,虚弱者で身体冷感を自覚すると,頭が痛くなるというものに効果がある。これに関連して特定の疾患を認めないものの,低血圧症に応用されている。心身ともに疲労感がつよく,頭痛,起立性めまい,立ちくらみ,冷感などを対象に用いるが,一過性の効果と考えられるので,補中益気湯六君子湯十全大補湯などとの併用療法も考慮するほうがよい。低血圧症に用いる目安は苓桂朮甘湯に類似するが,本方にはのぼせや心悸がないので区別できる。

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○身体が虚弱で,悪寒ばかりで熱感がなく,微熱,倦怠,無気力,脈が沈細で力がない,などの症状があり,身体や手足が痛む,蒼白な顔をして寒そうにし,元気がなくて横臥している。手足が冷え,咳,咽痛,頭部冷痛などを訴える。
○本方は少陰病で表熱裏寒のものに用い,このさいの熱は仮りの熱で,これを真寒仮熱といい,脈が沈んで力のないものである。このとき,誤って発汗剤を用いてはならない。

漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
本方は少陰病で表証のあるものに用いられる。従って虚弱者や老人の感冒,気管支炎に用いられる。その目標は,悪寒,微熱,脈沈細,全身倦怠,無気力,嗜臥等である。これに対して本方を用いると,悪寒は去り,気力は回復し,諸症状快癒する。また虚弱者の咳嗽で,時々背部に悪寒を覚え,稀薄な水様の喀痰を吐き,尿も稀薄で多量,脈沈細,貧血性,無気力の者にも本方はよく奏効する。附子,細辛は温薬であって,血行を盛んにして身体に温感を生じさせる。麻黄は麻黄湯,葛根湯の麻黄と同じく,悪寒,発熱を治する。虚弱者で脈が沈細,無気力であるから麻黄に附子,細辛を配伍してこれを治するのである。本方は脈浮緊の者,病状の発揚性の者に用いてはならない。本方の応用としては,虚弱者の感冒,気管支炎があるが,甚しく頭部の冷痛に苦しむ者に防風川芎を加えて効がある。本方に桂枝去芍薬湯を合方した方剤は桂姜棗草黄辛附湯と称し,桂枝の加味によって温剤としての力が増強し,甘草,生姜,大棗の加味によって薬性が調和されたもので,麻黄附子細辛湯と同様の場合に用いられ,また肺結核末期の消耗熱,半身不随,浮腫,乳癌,バンチ病,慢性蓄膿症,皮膚の悪性腫瘍等に応用される。

漢方処方解説〉 矢数 道明先生
老人や虚弱者に現われることが多く,あるいは初期に誤って発汗が過ぎた場合に起こる。少陰の証でしかも表証のあるものである。悪寒がして微熱があり,脈は沈んで細く,全身倦怠,無気力で臥すことを好む。顔色は蒼白,貧血性で,水枕を欲せず,頭を冷やすことをきらう。その他,身体疼重,手足冷え,咳嗽,背部,頭部に悪寒を覚え,稀薄な痰を吐き,尿も稀薄で量が多く,あるいは浮腫,尿不利のこともある。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
此方少陰の表熱を解するなり,一老人咳嗽吐痰,午後背酒淅(水をそそぐこと)悪寒し,後微似汗を発して止まず,一医陽虚の悪寒とし医王湯を与えて効なし。此方を服す,僅か五貼にして愈ゆ。凡て寒邪の初発を仕損じて労状をなす者,此の方及び麻黄附子甘草湯にて治することあり。此方はもと表熱を兼ぬる者故(後略)


【一般用漢方製剤承認基準】
麻黄附子細辛湯
〔成分・分量〕 麻黄2-4、細辛2-3、加工ブシ0.3-1
〔用法・用量〕 湯
〔効能・効果〕 体力虚弱で、手足に冷えがあり、ときに悪寒があるものの次の諸症: 感冒、アレルギー性鼻炎、気管支炎、気管支ぜんそく、神経痛




【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸の弱い人。
(5)のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人。
(6)発汗傾向の著しい人。
(7)高齢者。
(8)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(9)次の症状のある人。
排尿困難
(10)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能障害
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること


関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ
消化器 吐き気・嘔吐、食欲不振、胃部不快感
その他 発汗過多、全身倦怠感、発熱、動悸、のぼせ、ほてり

まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称 症状
肝機能障害 発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。


3.1ヵ月位(感冒に服用する場合には5~6日間)服用しても症状がよくならない場合は服
用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。

〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載すること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させること。
〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」をしてはいけないことに記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕


【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕
2.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸の弱い人。
(5)のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人。
(6)発汗傾向の著しい人。
(7)高齢者。
(8)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
(9)次の症状のある人。
排尿困難
(10)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能障害
2´.服用が適さない場合があるので、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔2.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には2´.を記載すること。〕
3.服用に際しては、説明文書をよく読むこと
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕