健康情報: 康治本傷寒論 第二十二条 発汗,若下之後,煩躁者,茯苓四逆湯主之。

2009年10月8日木曜日

康治本傷寒論 第二十二条 発汗,若下之後,煩躁者,茯苓四逆湯主之。

『康治本傷寒論の研究』
発汗若下之後、煩躁者、茯苓四逆湯、主之。

 [訳] 汗を発し、若しくはこれを下して後、煩躁する者は、茯苓四逆湯、これを主る。

 今まで陽病における煩躁は青竜湯(第一六条)を用いる時にあったし、陰病における煩躁は甘草乾姜湯一一条および第一八条)を用いる時に存在した。甘草乾姜湯は少陰病の治療剤であるから、これよりさらに悪化した厥陰病の煩躁もあることをここで示したのである。
 第一一条で「重ねて汗を発する物は、四逆湯、これを主る」とだけ表現していて、重ねて汗を発するとどのような症状を引起すかについては何も示さなかった。具体的なことは少陰病篇で論ずるためである。
 そしてそれが一層悪化すると再び煩躁という熱症状があらわれる。これを真寒仮熱と称しているのは、裏と内の寒を温めると熱症状がとれてしまい、熱は冷やすという治療原則に反する現象が起るからである。ちょうど陽病における合病の場合と同じように、厥陰病における煩躁は一種の反射現象のようなものである。
 そこで四逆湯を基本にして、それに鎮静剤としての茯苓と、強壮剤としての人参を加えて治療をするということになる。
 第一一条四逆湯の症状を何も述べていないのだから、茯苓四逆湯の場合も煩躁とだけしか言うことができない。詳しくは厥陰病篇を見よ、というわけである。それを『解説』二三八項では「煩躁のほかにも余症があるはずであるが、余症に拘わらず、ただ煩躁の一症をとって、直ちに茯苓四逆湯の証とするのである」という。このように決断を下すことをこの条文で示したと解釈することは論理的におかしいことは明白である。だからすぐその後で「ここには煩躁の一症だけを挙げてはいるが、診察にあたっては、脈はもちろんのこと、その他の症状も参酌しなければならない」と書いている。それならば最初から臨床に即してこの条文を解釈すべきではないか。
 『講義』八九項には「本方証は少陰位にありて而も陽勢を示す」とあり、『解説』でもこれを少陰病だとしている。詳しくは少陰病篇で述べることにするが、これは厥陰病と言うべきである。

茯苓四両、甘草二両炙、乾姜一両半、附子一枚生用去皮破八片、人参二両。  右五味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。

 [訳]茯苓四両、甘草二両炙る、乾姜一両半附子一枚生、用うるには皮を去り八片に破る、人参二両。  右五味、水三升を以って、煮て、一升二合を取り、滓を去り、分けて温めて再服する。

 茯苓を最初にあげているのは煩躁を問題にしているのだから、鎮静剤として評価しているのであり、利尿剤と見ているのではない。茯苓は人参を配合すると強壮作用を発揮することもここでは重要である。次の甘草、乾姜、附子は四逆湯のことである。最後に強壮剤としての人参をあげている。康治本では人
(艹+浸)と書いてある。これは人参より古い名称である。宋板では薬物の順序は、茯苓、人参、甘草、乾姜、附子、康平本では茯苓、人参、附子、甘草、乾姜となっている。康治本の順序が処方の意味を考える時に最も役に立つことは、意味のあることなのである。



『傷寒論再発掘』
22 発汗若下之後、煩躁者、茯苓四逆湯主之。
   (はっかんもしくはこれをくだしてのち、はんそうするものは、ぶくりょうしぎゃくとうこれをつかさどる。)
   (発汗したあと或は瀉下した後、もだえ苦しむ(煩躁する)状態になるようなものは、茯苓四逆湯がこれを改善するのに最適である。)

 この条文は、発汗や瀉下の度合が過ぎて、血管内水分が激減して、もだえ苦しむような状態になった時の対応策を述べたものです。
 発汗の度が過ぎて煩躁するようになったものについては、既に第11条で述べており、甘草乾姜湯を使用しています。また、それを更に発汗してしまった場合は四逆湯を使用しています。発汗のみでなく瀉下においても、その度合が過ぎて、血管内水分が激減した場合は、基本的に甘草乾姜湯が使用できることが分かります。この条文の場合、この上に、附子(第16章17項)と茯苓(第16章14項)と人参(第16章15項)など、みな体内に水分をとどめる作用を持つものが追加されています。それだけ、血管内水分の欠乏を改善する作用も増強されていんわけです。茯苓にはさらに「鎮静作用」も期待され得ることでしょう。

22' 茯苓四両、甘草二両炙、乾姜一両半、附子一枚生用、去皮破八片、人参二両。
   右五味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。
   (ぶくりょうよんりょう、かんぞうにりょうあぶる、かんきょういちりようはん、ぶしいちまいしょうよう、かわをさりはっぺんにやぶる、にんじんにりょう。みぎごみ、みずさんじょうをもって、にていっしょうにごうをとり、かすをさり、わかちあたためてさいふくする。)

 この湯の形成過程は、まず甘草乾姜湯に附子が加わり、そこに茯苓と人参が追加されていったのでしょうが、「原始傷寒論」が初めて書かれた時「煩躁」を改善ということと関連して、「茯苓」が生薬配列の最初にもってこられて、茯苓甘草乾姜附子人参という生薬配列にされ、湯名は茯苓+四逆湯(甘草乾姜附子)+人参になったと推定されます。
 「宋板傷寒論」も「康平傷寒論」も、茯苓四逆湯の生薬配列は、茯苓人参附子甘草乾姜となっており、四逆湯の生薬配列は甘草乾姜附子となっていますので、湯名と生薬配列との間にある「法則性」は全く乱れてしまっています。
しかも、そういうものが、「教科書」とされてきたのですから、全く驚くべき世界です。混乱と無統一が支配している世界、これを少しでも改善していく為には、「原始傷寒論」を出発点として、近代精神の要請のもとに、根本から研究し直していく必要がありそうです。この『傷寒論再発掘』という研究も究極的には、そういうことを目指しているわけです。従ってあまり細事にこだわらず、目標をしっかりと見つめて、進んでいきたいと思っています。


『康治本傷寒論解説』
第22条
【原文】  「発汗,若下之後,煩躁者,茯苓四逆湯主之.」
【和訓】  発汗若しくは之を下して後,煩躁する者は,茯苓四逆湯之を主る.
【訳 文】  太陽病を発汗し、或いは陽明病を下して後,厥陰の中風(①寒熱脉証 沈遅 ②寒熱証 手足逆冷 ③緩緊脉証 緩 ④緩緊症 小便自利) となって,煩躁という特異症候が存在する場合には,茯苓四逆湯でこれを治す.
【解 説】  本条は,四逆湯証にして心下部の動悸(茯苓・煩躁)と心下痞(他覚的なもの)のある場合を論じています.
【処方】  茯苓四両,甘草二両炙,乾姜一両半,附子一枚生用去皮破八片,人参二両,右五味以水三升,煮取一升二合,去滓分温再服.
【和訓】  茯苓四両,甘草二両を炙り,乾姜一両半,附子一枚生を用いて皮を去って八片に破る,人参二両,右五味水三升をもって,煮て一升二合に取り,滓を去って分かちて温服すること再服する.


証構成
  範疇 胸寒緩病(厥陰中風)
 ①寒熱脉証   沈遅
 ②寒熱証    手足逆冷
 ③緩緊脉証   緩
 ④緩緊証    小便自利
 ⑤特異症候
  イ煩躁(乾姜)


康治本傷寒論の条文(全文)

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