健康情報: 桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう) の 効能・効果 と 副作用

2014年8月10日日曜日

桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

桂枝加葛根湯
本方は桂枝湯の證で項背部の緊張する者を治する。葛根は項背部の緊張を治する効がある。本方は感冒薬として用いられ、また平素肩凝りを訴える者にも用いられる。


漢方薬の実際知識 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
4 表証
表裏・内外・上中下の項でのべたように、表の部位に表われる症状を表証という。表証では発熱、悪寒、発汗、無汗、頭痛、身疼痛、項背強痛など の症状を呈する。実証では自然には汗が出ないが、虚証では自然に汗が出ている。したがって、実証には葛根湯(かっこんとう)麻黄湯(まおうとう)などの 発汗剤を、虚証には桂枝湯(けいしとう)などの止汗剤・解肌剤を用いて、表の変調をととのえる。
4 桂枝湯(けいしとう)  (傷寒論、金匱要略)
〔桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)各四、甘草(かんぞう)二〕
本 方は、身体を温め諸臓器の機能を亢進させるもので、太陽病の表熱虚証に用いられる。したがって、悪寒、発熱、自汗、脈浮弱、頭痛、身疼痛な どを目標とする。また、本方證には気の上衝が認められ、気の上衝によって起こる乾嘔(かんおう、からえずき)、心下悶などが認められることがある。そのほ か、他に特別な症状のない疾患に応用されることがある(これは、いわゆる「余白の證」である)。本方は、多くの薬方の基本となり、また、種々の加減方とし て用いられる。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、桂枝湯證を呈するものが多い。
一 感冒、気管支炎その他の呼吸器系疾患。
一 リウマチ、関節炎その他の運動器系疾患。
一 そのほか、神経痛、神経衰弱、陰萎、遺精、腹痛など。

(2) 桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)  (傷寒論)
〔桂枝湯に葛根六を加えたもの〕
桂枝湯證で、項背拘急が強いものに用いられる。


『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊

<註>
①桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)
 本方剤中の麻黄を欠いたものは,すなわち桂枝加葛根湯で,桂枝湯を使いたいような体質,すなわち自然に汗の出やすい体質で,肩こりや首筋の凝りを訴える場合に用いる。
 逆に言えば,葛根湯を用いたいが,自然に汗の出やすい体質なので用い難いという場合に,用うべき方剤である。



『健康保険が使える 漢方薬 処方と使い方』
木下繁太朗 新星出版社刊

桂枝加葛根湯(けいしかかつこんとう)
傷寒論(しようかんろん)
 東

どんな人につかうか
 桂枝湯(けいしとう)に葛根(かつこん)をねあたもの。頭痛、頚(くび)、肩(かた)のこり、寒気(悪寒(おかん))がして発汗するものに用い、虚弱な人の風邪(かぜ)のひきはじめに応用。

目標となる症状
 ①頭痛。②寒気(さむけ)(悪風)。③自然発汗。④のぼせ。⑤頚(くび)、肩(かた)のこり(項背のこり)。
  桂枝湯(けいしとう)に同じ。

 浮脈。

どんな病気に効くか(適応症) 
 身体虚弱な人の風邪の初期で肩こりや頭痛のあるもの。感冒、発熱性疾患の初期、神経痛、肩こり、五十肩、結膜炎。

この薬の処方
 葛根(かつこん)6.0g。桂枝(けいし)、芍薬(しやくやく)、大棗(たいそう)、生姜(しようきよう)各4.0g。甘草(かんぞう)2.0g。(桂枝湯(けいしとう)<72頁>に葛根(かつこん)を加味)
この薬の使い方
前記の処方を一日分として煎(せん)じてのむ。
東洋桂枝加葛根湯(けいしかかつこんとう)エキス散、成人一日6.0gを2~3回に分け、食前又は食間にのむ。

使い方のポイント
桂枝湯(けいしとう)に葛根(かつこん)を加えたもの。葛根湯(かつこんとう)(48頁)を使うような状態で発汗のある場合に用います。なお桂枝湯(けいしとう)に葛根(かつこん)と麻黄(まおう)を加えれば葛根湯(かつこんとう)です。
傷寒論には「太陽病、項背(こうはい)強(こわば)ること几几(しゆしゆ)、反(かえ)って汗出で悪風(おふう)する者は桂枝加葛根湯(けいしかかつこんとう)之(これ)を主(つかさ)どる」とあります。

処方の解説
 桂枝湯(けいしとう)(72頁)に葛根(かつこん)を加えたもので、葛根(かつこん)は発汗作用があり、又項背部(こうはいぶ)の筋緊張(きんきんちよう)を和(やわ)らげます。
 葛根はクズの根で、クズの根からとったでん粉が吉野葛などのクズ粉です。葛根だけを一日量8~15gを煎じて温服(400mlを半量に煎じる)すると、風邪や神経痛に効くが、汗をかきやすい体質虚弱の人には桂枝湯に加えて使えば良い。これが桂枝加葛根湯です。



和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう) [傷寒論]

【方意】 桂枝湯の表の寒証表の虚証および時に気の上衝、脾胃の虚証があり、項背強の顕著なもの。
《太陽病.虚証》
【自他覚症状の病態分類】

表の寒証・表の虚証 気の上衝 脾胃の虚証
主証 ◎項背強
◎頭痛
◎悪風 ◎発熱
◎自汗



客証  知覚異常
 身疼痛 関節痛
 発疹
 のぼせ  腹痛
 下痢




【脈候】 浮数・浮数弱・浮緩。

【舌候】 著変なし。

【腹候】 やや軟、時に腹直筋の緊張がみられる。


【病位・虚実】 桂枝湯証に項背強の加わったもので、脈・舌・腹候および平素の虚弱傾向より、太陽病の虚証である。

【構成生薬】 桂枝4.5 大棗4.5 芍薬4.5 甘草3.0 生姜1.0 葛根8.0

【方解】 本方は桂枝湯に葛根が加味されたものである。そのため桂枝湯の項で説明したように表の寒証・表の虚証、気の上衝ならびに脾胃の虚証の病態に作用する。葛根は項背強および上焦の炎症性・充血性の諸疾患に有効である。このため桂枝湯証で項部更には背部までこわばり痛むものや炎症性疾患に対応する。

【方意の幅および応用】
 A 1表の寒証表の虚証:頭痛・悪風・発熱・自汗等を目標にする場合。
    感冒、急慢性副鼻腔炎、小児麻痺、日本脳炎、破傷風
   2表の寒証表の虚証:疼痛・知覚異常を目標にする場合。
    神経痛、腰痛症、関節リウマチ、半身不随
   3表の寒証表の虚証:発疹を目標にする場合。
    麻疹等の発疹性疾患、皮膚化膿症
B  脾胃の虚証:腹痛・下痢を目標にする場合。
【参考】 *項背強ばること几几、反って汗出でて悪風す、桂枝加葛根湯之を主る。『傷寒論』
*桂枝湯証にして項背強急するものを治す。『方極附言』
*自汗は大多数にみられるが必発ではない。一部には無汗もある。しかしその場合でも脈は浮弱数が多い。
*奥田謙蔵は長浜善夫の副鼻腔炎に本方加薏苡仁を用いて効果をあげている。

【症例】 漢方研究室 問題 眼部帯状疱疹
 23歳、男性。甥読年現f右眼が鬱陶しく霧視を覚える。右眼の内眼角部を中心にして、その上下の右鼻孔の開孔部粘膜とに発疹がみられる。眼には毛様充血があり、角膜は12時の所から瞳孔領にかけて混濁し、顕微鏡的には角膜表層の微細な白点の集まりとして認められる。
 三叉神経の第1枝と第2枝との領域にわたって、角膜と皮膚に知覚鈍麻が検出される。視力は右0.7(0.9✕~0.5D)左1.0~1.2(1.5✕0.5D)である。
 体格は強大で自覚的には二便に著変なく、自然発汗傾向、右偏頭痛、口燥あり。他覚的には脈は浮いてやや力があり、舌は微白苔を被り、腹力は中等度で、胃部と右季肋部と左右臍傍の抵抗圧痛、右腹直筋の異常緊張、項背筋の凝りが認められる。
〔出題者解答〕眼部帯状疱疹は漢方で初発に挫く事は極めて当を得た手段である。
自汗、項背強、季肋下抵抗、脈浮やや力ありより、桂枝加葛根湯、桂麻各半湯、桂枝二麻黄一湯、柴胡桂枝湯、または葛根湯症の自然に治りつつある途中の段階等が考えられる。
 一応柴胡桂枝湯を投じてみた。治療を加えながらも一旦特有の皮疹は増え、右鼻がふさがり、樹枝状の角膜炎は角膜上を移行して行った。頭痛も一進一退し、5日ほど治療しても夜中に3時間位右偏頭痛が続くので、10日後には改めて考え直さざるを得なくなった。
 急性症という事を考えると、まず表証をもって始まるのが普通である。とすれば柴胡の証はあっても、表証の半表半裏の証との兼証とせずに、半表半裏の証は一時措き、表証のみを攻めるべきであろう。そこで体格に拘泥せずに、脈と自汗と項背強から桂枝加葛根湯を選んだ。
 その晩から夜間の右偏頭痛が去り、翌日には角膜と皮膚の炎症が消退し始め、早急に治癒に赴き、10日間で廃薬した。しかしながら適方を投ずるのが遅れたために、角膜の混濁が残り、視力は右0.5~0.6(m.c.)左1.2(n.c.)で、今後角膜翳の消退にはかなりの日時を要する見込である。
小倉重成 『漢方の臨床』 12・3・54


副作用
重大な副作用と初期症状
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
2) ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
[理由]
 厚生省薬務局長より通知された昭和53年2月13日付薬発第158号「グリチルリチン酸等を含 有する医薬品の取り扱いについて」に基づく。
 [処置方法]  原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等 により電解質 バランスの適正化を行う。


その他の副作用

頻度不明
過敏症注1) 発疹、発赤、瘙痒等

注1) このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。