健康情報: 芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう) の 効能・効果 と 副作用

2013年1月23日水曜日

芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際』 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
芎帰膠艾湯
本方は諸出血が続いて、貧血の状を呈するものを目標として種々の場合に用いられる。もし本方によって出血が加わり、貧血高度の場合、または此方を服用して下痢するものは四君子湯類或はその他の方を考えるべきである。
当帰・芍薬・川芎・地黄は造血剤で、貧血を補い、阿膠・艾葉は地黄と共に止血の効能がある。甘草は諸薬を調和する。
本方は以上の目標に従って、子宮出血、子宮内膜炎、流産の流兆のあるもの、産後の出血・痔出血・腸出血・血尿・外傷後の内出血・紫斑病・諸貧血症等に応用される。


『漢方精撰百八方』
 2.[方名] 芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)

[出典]
 金匱要略

[処方]
 川芎 甘草 艾葉各3.0 当帰 芍薬各4.5 乾地黄6.0 阿膠

[目標]
 子宮出血の有るもの、流産後続いて出血するもの、妊娠中出血するもの、妊娠中腹痛して異常妊娠の徴候のあるもの。

[かんどころ] 子宮出血、膀胱出血は時をうつさず応用する。

[応用]
 当帰、芍薬、川芎、地黄は造血剤で、艾葉、阿膠には止血作用がある。甘草は諸薬を調和する作用をする。

 本方は子宮出血に最も屡々用いられるが、子宮出血には本方の他に桂枝茯苓丸が用いられる。また流産の前兆として出血する場合は成るべく早く本方を応用すると流産を未然に防止することが出来ることが多いのでまず試みるべきである。

 膀胱出血の場合にも応用される。六十才女。大学病院で膀胱癌と診断されて手術を指示され出血の著しかったものに本方を用いて二年ほど続けたが、出血が止まって一応癌も治ったように見える。

 腎臓出血にはいろいろの原因があるが、本方で出血のとまる場合が多い。腎臓結石で血尿を出すものに本方を与えたところ、出血が止まると共に腰部の疝痛もとれた例がある。これで見ると腎出血が止まるとその原因としての腎臓結石の方も同時に処理されるものと思われる。痔出血が猛烈で貧血を呈する場合がある。そんな場合でも本方で止まるのである。

 特発性腎出血というのがある。このものは原因不明のものであるが、自律神経失調の二症状と考えられている。この場合洋方では輸血のほか手のほどこしようもないが、本方をやって見ると僅か二、三日で止まることがあるから試みるとよい。

 また本方で潰瘍性大腸炎の出血が僅か一週間ぐらいの服用で止まった例もある。

 同じく出血でも、肺結核の喀血、胃潰瘍の吐血などには本方は適さないようである。

 文献的には方輿輗(有持桂里)にすべての切迫流産に用いると流産を防止することが出来ると言っている。湯本求真氏は常習流産に本方を常用するとよいと言っている。

 また湯本氏は本方の腹証として左直腹筋撃急して按せば痛むものとしている。

[附記] 本方は七味から成っているが、最近西岡一夫氏が本方は四味が金匱の原方であると興味深い学説を立てている(日東誌 14.2)
相見三郎著


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
3 駆瘀血剤
駆瘀血剤は、種々の瘀血症状を呈する人に使われる。瘀血症状 は、実証では便秘とともに現われる場合が多く、瘀血の確認はかんたんで、小腹急結 によっても知ることができるが、虚証ではかなり困難な場合がある。駆瘀血剤は体質改善薬としても用いられるが、服用期間はかなり長くなる傾向がある。
駆 瘀血剤の適応疾患は、月経異常、血の道、産前産後の諸病その他の婦人科系疾患、皮下出血、血栓症、動脈硬化症などがある。駆瘀血剤の中で、 抵当湯(ていとうとう)・抵当丸は陳旧性の瘀血に用いられる。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は瘀血の証と水毒の証をかねそなえたものであり、加味逍遙散はさらに柴胡剤、順気剤の証をかねそなえたものである。

7 四物湯(しもつとう)  (和剤局方)
〔当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)各四〕
駆 瘀血剤の中で虚証に属するものである。本方は婦人の聖薬といわれ、自律神経失調などの神経症状を呈し、出血によって、また、血液の偏在に よって貧血し、皮膚枯燥、腹部の動悸、発熱、不眠、煩操、冷え症などを目標とする。しかし、口唇が蒼白となるほどの貧血、胃腸の虚弱なものには用いられな い。本方は単独で用いることはまれで、種々の加減や合方が行なわれる。
〔応用〕
駆瘀血であるために、大黄牡丹皮湯桃核承気湯のところで示したような疾患に、四物湯證を呈するものが多い。

四物湯の加減方、合方


(7)芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)  (金匱要略)
〔乾地黄(かんじおう)六、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)各四、川芎(せんきゅう)、甘草(かんぞう)、艾葉(がいよう)、阿膠(あきょう)各三〕
本方は、四物湯に甘草、艾葉、阿膠を加えたものとして考えることができる。阿膠や艾葉には、止血作用が強いため瘀血によって出血がやまず、貧血状を呈しているものの止血および清血に用いられる。また、下腹部の知覚麻痺、四肢煩熱、下肢の疼痛などを目標とする。本方の服用によって、出血が強くな り、貧血が高度になったものや下痢するものは、四君子湯その他を考える。
〔応用〕
一 子宮内膜炎、子宮癌、月経過多、流産癖、帯下、産後の出血その他子宮出血を伴う婦人科系疾患。
一 腎臓結石、腎臓結核、血尿その他の泌尿器系疾患。
一 痔出血、肛門出血、腸出血、吐血、喀血、衂血、眼底出血、外傷による内出血、紫斑病その他の各種出血。
一 そのほか、諸貧血症。



《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
14.芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう) 金匱要略
川芎3.0 甘草3.0 艾葉3.0 当帰4.5 芍薬4.5 乾地黄6.0
 右法の如く煎じ滓を去り阿膠3.0を加え再び火に上せ溶解し尽すを度としこれを温服す。

(金匱要略)
○師曰,婦人有漏下者,有半産後,因続下血都不絶者,有妊娠下血者,仮令妊娠腹中痛,為胞阻膠艾湯主之。(妊娠)

現代漢方治療の指針〉 薬学の友社
 冷え症で出血過多により貧血するもの。本方はその増血作用により各種出血による貧血を治すものである。従って一次性の貧血症には無効であるから,その場合は柴胡桂枝干姜湯,補中益気湯などを考慮すべきである。
 本方を服用後更に出血がひどくなる時は,黄連解毒湯2グラムを冷水で服用させると止血できる。また本方で胃腸障害を起し,悪心または下痢をもよおす場合も不適で,このような場合は半夏瀉心湯などで治療すればよい。充血による出血には三黄瀉心湯あるいは黄連解毒湯が適する。


漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○下血その他主に身体下部の諸血および,うっ血があり,出血が長びいて貧血状を呈するもの。
○痔が痛んだり,出血がつづいたりして貧血したもの。貧血が甚だしいときは,めまい,四肢脱力,下腹部の刺すような痛み,などがおこることがある。
○婦人の子宮出血,流産ぐせ,流産の前徴があるとき,流産のあとで出血が止まないもの,妊娠中の子宮出血を伴う腹痛など。
○本方の証は瘀血による症状である。しかし,桃核承気湯桂枝茯苓丸と異なり,桂枝がないので上衝することがなく,茯苓がないので心悸亢進がない。また桃仁,牡丹皮がなく,代りに当帰,川芎,艾葉があることから本方の証は陰虚証である。したがって本方の適応する患者の腹証は軟弱であり,ときには軟弱無力である。



漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○芎帰膠艾湯と当帰芍薬散はともに当帰,川芎,芍薬あり,前者には地黄,甘草,艾葉,阿膠があり,後者には茯苓,朮,沢瀉がある。だから前者は多く血に働き,後者は多く水に働く,尾台榕堂は類聚方広義の中で,芎帰膠艾湯の条で“腸痔,下血,綿々として止まず,身体痿黄,起れば則ち眩暈し,四肢力なく,小腹刺痛する者を治す”といい、当帰芍薬散の条では“脱肛,腫痛,水を出して止まざる者に奇効あり”とのべている。痿黄は貧血のこと。
○芎帰膠艾湯は痔出血によく用いられるが、出血に疼痛を兼ねたもの。手術後,または注射,軟膏等で,腐蝕せしめたのち,患部の瘡面癒合せず,疼痛,出血等のあるものに用いる。


漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水 三先生
 本方は諸出血が続いて,貧血の状を呈するものを目標として種々の場合に用いられる。もし本方によって出血が加わり,貧血高度の場合,または此方を服用して下痢するものは四君子湯類或はその他の方を考えるべきである。当帰,芍薬,川芎,地黄は造血剤で,貧血を補い,阿膠,艾葉は地黄と共に止血の効能がある。甘草は諸薬を調和する。本方は以上の目標に従って,子宮出血,子宮内膜炎,流産の前兆のあるもの,産後の出血,痔出血,腸出血,血尿,外傷後の内出血,紫斑病,諸貧血症等に応用される。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 虚寒証(虚証で寒冷性)の出血,もしくは貧血があってさらに瘀血の証があり,左腹直筋の攣急,腹部は一般に軟弱無力で,下腹部に知覚鈍麻,四肢煩熱,下腹の疼痛を目標とする。



漢方入門講座〉 竜野 一雄先生
 構成 本方から阿膠,甘草,艾葉を抜くと後世方の四物湯になる。当帰芍薬散にくらべると水に行く薬の代りに血に行く薬ばかりになっている。(中略)

 運用 子宮出血
 虚寒性の子宮出血を治す。虚寒性であることは処方内容が温補の薬から成立っているので知られる。虚寒性だから冷え性で,腹も軟く,出血の模様も弛緩性でだらだら出るものが多い。腹に寒があれば腹痛も起る。「師の曰く,婦人漏下あるものは半産後因って続いて下血都て絶えざるものあり,妊佐下血するものあり。たとえば妊娠腹中痛むを胞阻となす。膠艾湯之を主る。」(金匱要略妊娠)
(中略)
 臨床的には妊娠や流産の有無に関せず本方を使うのであって,子宮出血を起す各種の産婦人科疾患に対し病名の如何を問わず使ってよい。また下血を子宮出血ばかりでなく男女の前陰後陰の出血,即ち血尿,肛門出血,痔出血等に転用する。凡て弛緩性の出血である。脉,腹その他の条件を参照して使うことは言うまでもない。
 浅田宗伯先生曰く「此方は止血の主薬とす。故に漏下胞阻に用いるのみならず,千金,外台には妊娠失仆傷産及打撲傷損諸諸失出に用ゆ。(中略)又痔疾又一切下血此方を与。」(勿誤薬室方函口訣)(中略)吐血のみならず,睡血即ち喀血,口内出血にも使い得る。類証鑑別を要するのは当帰芍薬散,当帰建中湯,桃花湯,八味丸,土瓜根散,猪苓湯桂枝茯苓丸桃核承気湯大黄牡丹皮湯などである。

 運用 2. 下腹痛
 出血の有無に拘らず下腹部の鈍痛に使うことが出来る。私が経験したのは脉腹ともに著しく弱く,貧血性の冷え性の人で,大小便普通,腹部の深部に著変を認め得なかった。


古方薬嚢〉 荒木 性次先生
 婦人妊娠中夥しく出血ありて,腹中大いに痛む者,又は所謂永血とて経水月を過ぎて止まざる者,此場合腹は痛む者もあり,痛まざるものもあり。


類聚方広義〉 尾台 榕堂先生
 腸痔,下血綿々として止まず,身体痿黄,起きれば即ち眩暈,四肢力なく,少腹刺痛する者を治す。若し胸中煩悸,心悸鬱結して大便燥結する者には瀉心湯,黄連解毒湯を兼用す。




【一般用漢方製剤承認基準】
芎帰膠艾湯
〔成分・分量〕 川芎3、甘草3、艾葉3、当帰4-4.5、芍薬4-4.5、地黄5-6、阿膠3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、冷え症で、出血傾向があり胃腸障害のないものの次の諸症: 痔出血、貧血、月経異常・月経過多・不正出血、皮下出血
 


【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(4)高齢者。
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(5)次の症状のある人。
     むくみ
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕
(6)次の診断を受けた人。
     高血圧、心臓病、腎臓病
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位症状
皮膚発疹・発赤、かゆみ
消化器食欲不振、胃部不快感、腹痛
 


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