健康情報: 三物黄芩湯(さんもつおうごんとう) の 効能・効果 と 副作用

2014年5月18日日曜日

三物黄芩湯(さんもつおうごんとう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊
三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)
 本方は所謂血熱治する方剤で、手足の煩熱と頭痛とを目標とする。多くは口渇または口乾を伴う。此方が小柴胡湯の證に似ている場合がある。小柴胡湯證で手足の温いものは煩熱との区別がむずかしいことがある。殊に胸脇苦満が顕著でない場合は、その区別が更にむずかしい。従って三物黄芩湯の證に小柴胡湯加地黄をあてることがある。
本方は地黄・黄芩・苦参の三味からなり、地黄には滋潤・補血の効があって、血熱をさまし、黄芩には消炎・健胃の効があり、苦参には解熱・利尿・殺虫の効がある。
本方は以上の目標の下に、産褥熱・肺結核・不眠・皮膚病・口内炎等に用いる。



 漢方精撰百八方
55.〔方名〕三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)

〔出典〕金匱要略

〔処方〕黄芩2.0g 苦参2.0g 地黄4.0g 

〔目標〕分娩の時に、細菌の感染を受けて、発熱し、四肢が煩熱をおぼえるもの。

〔かんどころ〕四肢の煩熱と、乾燥。

〔応用〕産褥熱。不眠症。皮膚病。とこずれ。

〔治験〕1.みずむし(汗疱状白癬)
  一婦人、水むしだといって、診を乞うた。その状尋常のものと異なり、足のかかとの部分の表皮が増殖して、硬く、それが乾燥して痛み、歩くのにも困るという。すでに数年間、いりいりの治療をしたが、どうしても治らないという。
  患者の体格は頑丈な方で、筋肉の緊張よく、腹力もある。私はこれに三物黄芩湯を与え、これを内服せしめるとともに、この液で患部の温罨法をするように命じた。
  十日後の再診では、患部にしめりが出て、皮膚がやや軟らかくなった。よって、この方法をつづけること三ヶ月で全治した。  その後また一老人の同様の病状のものに、この方を用いて治することができた。

2.膿疱掌
  一男子、左右の掌の拇指を中心にして、発赤腫脹し、その表皮を透して、マッチの点火部位の大きさ位の灰色のものが無数に見える。発病数ヶ月、皮膚科の治療によって、好転しない。患部は僅かにかゆみがあるが、ほとんど苦にならないという。患部には熱感がある。
  私はこれに十味敗毒湯加連翹を用いた。服薬一ヶ月、寸効無し。そこで三物黄芩湯に転じたところ、十日の服薬でほとんど全快。あと十日で全治した。

3.褥瘡
  一老人、脊髄炎で臥床中、臀部に掌大の褥瘡を生じて、ますます拡大する。そこで紫雲膏を患部につけてみたが、はかばかしくない。よって三物黄芩湯の煎汁で、一日三回患部を洗い、そのあとに紫雲膏をぬったところ、急速に軽快した。
  褥瘡になりかけのものには、三物黄芩湯の湿布をしてのち、紫雲膏をぬっておけば効がある。    大塚敬節



臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
p.206 産褥熱・肺結核・不眠症・子宮出血・四肢煩熱

50 三物黄芩湯(さんもつおうごんう) 〔金匱要略〕
 黄芩・苦参 三・〇 乾地黄六・〇

 処方の後に「多く虫を吐下す」とある。苦参の苦味に駆虫の作用があるという。

応用〕 血熱を治す方剤で、血室(子宮)の熱が全身に及び、とくに四肢が熱くて苦しみもだえるのを治すものである。本方は主として産褥熱に用いらけ:また肺結核・ノイローゼ・不眠症・自律神経失調症・口内炎・分娩出血・吐血・下血・産褥中の感冒で四肢熱して煩え苦しむもの・凍傷(しもやけ)・火傷・蕁麻疹・水虫・頑癬・乾癬(熱感と痒みがあって乾燥して赤くなっているもの)・婦人血の道・更年期障害・頭痛・夏まけして手足煩熱して夜甚だしく眠れぬもの・夏の脚気等にも応用される。

目標〕 四肢苦煩熱・すなわち手足がほてって苦しいというのが目標である。
 多くは口渇または口乾をともなうものである。小柴胡湯証に似ているところがあるが、腹部は一般に軟弱で不仁(しびれ感)がある。頭痛に用いることもある。また毎年夏になると手のひら、足のうらが熱くなってたまらない。とくに夜が甚だしくて眠れないというものによい。
 舌苔はなく、一皮はいだように紅色を呈して乾燥することがある。腹は一般に軟弱で、産後にみる特有の軟かさで、麻痺感のあることもある。

方解〕 黄芩が君薬で熱をさます。消炎と健胃の効があり、苦参は臣薬で、風を去り、虫を殺し、解熱・利尿・殺虫の作用がある。地黄はその量最も多く、一般に君薬とされているが本来は佐薬で、滋潤補血の効があり、血熱をさます。これらの三味が協力して四肢の煩熱を主症とする血熱、血燥を治すのである。
 苦参の苦味は甚だしく、胃の弱い者にはとてものみにくく感じる。服後心下に痞えて不快を訴えるものは注意すべきである。小柴胡湯加地黄の方がよい。

加減〕 本方証と小柴胡湯加地黄の証とまぎれやすく、両者混同することがある。

主治
 金匱要略(婦人産後門附方)に、「婦人草蓐(ソウジョク)(産褥のこと)ニ在リ、自ラ発露シテ風ヲ得、四肢苦煩熱、頭痛スル者ハ小柴胡湯ヲ与エ、頭痛セズ但ダ煩熱スル者ハ此ノ湯之ヲ主ル」とあるが、頭痛に用いてもよい。
 勿誤方函口訣には、「此ノ方ハ蓐労(じょくろう)(産後の肺結核、産褥熱の長びいたものも含む)ノミニ限ラズ、婦人血症ノ頭痛ニ奇効アリ。又乾血労(カンケツロウ)(陳久瘀血による肺結核)ニモ用ユ。何レモ頭痛煩熱ガ目的ナリ。此ノ症ハ俗ニ疳労(カンロウ)(女子青年期の結核)ト称シテ、女子十七~八ノ時多ク患フ、必ズ此ノ方ヲ用ユベシ。一老医ノ伝ニ、手掌煩熱、赤紋アル者ヲ瘀血ノ候トス。乾血労(カンケツロウ)、此ノ候有ツテ他ノ証候ナキ者ヲ、此ノ方ノ的治トスト。亦一徴ニ備フベシ。凡テ婦人血熱解セズ、諸薬応ゼザル者ヲ治ス」とあり、
 類聚方広義には、「骨蒸労熱(コツジョウロウネツ)(結核熱)、久咳、男女諸血症、支体煩熱甚シク、口舌乾涸、心気鬱塞スル者ヲ治ス。 ○夏月ニ至ル毎ニ手掌足心煩熱堪エ難ク、夜間最モ甚シク、眠ル能ハザル者ヲ治ス。 ○諸失血ノ後、身体煩熱倦怠甚シク、手掌足下熱更ニ甚シク、唇舌乾燥スル者ヲ治ス」とある。

鑑別
 ○小柴胡湯 69 (煩熱・胸脇苦満、寒熱往来、頭痛)
 ○白虎湯 121 (煩熱・舌苔乾燥、身熱、煩渇)
 ○八味丸 116 (煩熱・足裏煩熱、渇、小便不利)
 ○温経湯 5 (煩熱・小腹裏急、手掌煩熱)

治例
 (一) 神経症
 二十余歳の男子。胸中煩悶し、腹を按じてみると、空洞のようで物がなく、神気鬱々として、喜んだり悲しんだり変化がひどい。手足煩熱して油のような汗が出る。口は乾燥し、大便は秘し、朝の間は小便が濁る。夜になると諸症状穏かとなる。三物黄芩湯を主方とし、黄連解毒散を兼用して治った。
(吉益南涯翁、成蹟録)

 (二) 産褥熱頭痛
 日本橋の某妻が、産後煩熱を発し、頭痛破るるが如く、飲食進まず、日に日に衰弱してきた。他の医は多く産後結核といって見放して終った。私はこれに三物黄芩湯四~五日を与えたが煩熱大いに減じ、頭痛は忘れたように治った。

(浅田宗伯翁、橘窓書影)

 (三) 手足煩熱不眠症
 三三歳の婦人。四年前にお産をし、その後不眠が続き、どうしても治らない。手足がやけて、ほてって、それが苦しくて眠れないという。そのほかには別に苦しいことはない。三物黄芩湯一週間で、六~七時間眠れるようになり、手足の煩熱もよくなった。
(大塚敬節氏、漢方診療三十年)

 (四) 水虫
 二二歳の婦人。両方の手足の数年前から水虫ができて、表皮が乾燥し、ところどころ裂け、瘙痒と疼痛とがあり、口渇を訴える。麻杏薏甘湯十味敗毒湯などは効なく、三物黄芩湯で好転した。
(大塚敬節氏、漢方診療三十年)

 (五) 水虫
 二五歳の女性。五年前より両側指趾の水虫に悩まされ、夏より秋にかけて増悪し、爪床は完全に消失してしまった。皮膚専門の諸治療も無効であった。
 体格中等、両便正常、月経不順、頭にフケ多く、左下腹部に瘀血を認め、足の熱感があって夜間ほてるという。三物黄芩湯を与え、苦参三五〇グラム(指先などは三五・〇ぐらいでもよい)を煎じ、両指趾の局所を洗浄させたところ、瘙痒感消失し、湿潤していた局所が乾燥し(湿性に用いてもよいこたがわかる)、全部の爪の新生が見られた。服薬八ヵ月にして全治し再発をみない。内服薬の効果と苦参の外用が、白癬菌に抗菌的に作用したものと考えられる。
(阪本正夫氏、漢方の臨床 六巻二号)


和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
三物黄芩湯(さんもつおうごんとう) [金匱要略]

【方意】 熱証燥証による四肢苦煩熱・心胸苦煩・身熱・身重等のあるもの。しばしば上焦の熱証による精神症状、時に血証を伴う。
《少陽病.虚実中間証》


【自他覚症状の病態分類】

熱証・燥証 上焦の熱証による
精神症状
血証
主証 ◎四肢苦煩熱
◎掌蹠煩熱
◎心拡苦煩
◎心胸苦煩
◎身熱 ◎身重









客証 ○口舌乾燥
○皮膚肥厚枯燥
 発熱 顔面紅潮
 自汗 手掌赤紋
 局所暗赤色
 激しい瘙痒感
 夏期に悪化

○頭痛
 不眠 不安
 心悸亢進 煩躁 目眩 耳鳴

 出血
 貧血




【脈候】 弦やや弱・沈遅・微緊・時に数等で、浮沈強弱のかたよりが少ない。

【舌候】 乾湿中間で微白苔。または口舌乾燥して無苔或いは微白苔。

【腹候】 やや軟を中心に、軟から軟弱まで。

【病位・虚実】 熱証が中心的病態で陽証である。表証も裏実もなく少陽病に相当する。脈力および腹力から虚実中間を中心に幅広く用いられる。

【構成生薬 地黄8.0 黄芩4.0 苦参3.0

【方解】 地黄には補血・増血・強壮・滋潤・清熱・止血作用がある。黄芩は心下の熱証を消炎・解熱・鎮静作用で取り除く。苦参は健胃・解熱・利尿作用、更に燥証よりの熱感・皮膚枯燥にも有効である。以上三種の構成生薬すべて熱証に対応し、地黄・苦参は燥証にも有効である。血証には地黄が主に働いており、神経症状には黄芩の鎮静作用が有効であるが、血証も神経症状も熱証の関与があり、熱証を冷ます構成生薬すべての作用により、これらの病態も二次的に取り除かれる。

【方意の幅および応用】
A1熱証燥証:四肢苦煩熱・心胸苦煩・身重等を目標にする場合
  血の道症、更年期不定愁訴症候群

 2熱証燥証:掌蹠煩熱・皮膚肥厚枯燥・熱感・瘙痒感等を目標にする場合。
  凍傷、火傷、掌蹠膿疱症、手掌角化症
B 上焦の熱証による精神症状:頭痛・不眠・心悸亢進等を目標にする場合。
  自律神経失調症、ノイローゼ、不眠症  
血証:各種の出血を目標にする場合。
  分娩・産褥時の出血、吐血・喀血・下血等の諸出血

【参考】 *四肢煩熱に苦しみ、頭痛まずして、但だ煩する者、三物黄芩湯之を主る。『金匱要略』
*心胸苦煩する者を治す。『類聚方』
* 天行熱(流行病)病むこと五六日以上を療す。此の方は蓐労(産後の発熱し衰弱するもの)のみに限らず、婦人血症の頭痛に奇効あり。又乾血労(閉経時の康弱)にも用ゆ。何れも頭痛、煩熱が目的なり。此の症、俗に疳労(小児栄養失調)と称して、女子十七八の時多く患う。必ず此の方を用うべし。一老医の伝に、手掌煩熱、赤紋ある者を瘀血の候とす。乾血労、此の候有りて他の証候なき者を此の方の的治とす。亦一徴に備うべし。凡て婦人、血熱解せず、諸薬応ぜざる者を治す。旧友尾台榕堂の長女、産後血熱解せず、午後頭痛甚だしく、殆んど蓐労状を具す。余此の方を処して、漸々愈を得たり。爾後、其の症発動するときは自ら調剤して之を服すと言う。
『勿誤薬室方函口訣』
*煩熱は小柴胡湯証にもみられるが、小柴胡湯は胸脇部を中心に上焦に向かう傾向がある。このため心煩・頭痛に用いる。本方意は下焦・末梢に向う傾向があるため、子宮の熱・四肢の煩熱に用いる。
*本方意の血証は三黄瀉心湯黄連解毒湯等と同じく熱証のかかわったものであり、熱証を去って血出を止めるものである。
*本方意は血熱といわれ、血証と熱証とか共存するものである。

【症例 出題と解答 接触性皮膚炎
 患者は40歳の婦人。昨年夏から両手の指、殊に第1関節の周節に発疹ができて痒く、水虫或いは洗剤かぶれが疑われている。
 指先はみたところさほど他覚的な症状は著明ではないが、痒くてほてり、うっとうしい感じだという。腹証としては腹直筋の触れる虚証の腹証というぐらいのところで他になし。口渇はあるが、頭痛はない。
 これに処方として古方のあるものを用いたところ、1週後には指先の皮膚が脱落したようになって、自覚的にも他覚的にも治ったといっても良い状態になった。
 この処方はなにでしょうか。
 〔解答〕麻杏薏甘湯と三物黄芩湯に紫雲膏の外用(1名)、桂麻各半湯(1名)、加味逍遥散合四物湯(1名)、苦参湯(1名)、温経湯(1名)、消風散(1名)。
 〔出血者解答〕私の用いた処方は三物黄芩湯でありました。
相見三郎『漢方の臨床』12・11・40


副作用
1) 重大な副作用と初期症状
1) 間質性肺炎 :発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。また、発熱、咳嗽、呼吸困難等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、ただちに連絡するよう患者に対し注意を行う。

[理由]
本剤によると思われる間質性肺炎の企業報告の集積により、厚生労働省内で検討された結果。(平成17年4月1日付事務連絡「使用上の注意」の改訂についてに基づく改訂)

[処置方法]
直ちに投与を中止し、胸部X線撮影・CT・血液ガス圧測定等により精検し、ステロイド剤 投与等の適切な処置を行う。

2) 肝機能障害、黄疸: AST(GOT) 、ALT(GPT) 、Al‑P、γ‑GTP等の著しい上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う。

[理由]  本剤によると思われる肝機能障害、黄疸の企業報告の集積により、厚生労働省内で検討さ れた結果
(平成17年4月1日付事務連絡「使用上の注意」の改訂についてに基づく改訂)

[処置方法]  原則的には投与中止により改善するが、病態に応じて適切な処置を行うこと。


 2)その他の副作用

頻度不明
過敏症注1) 発疹、発赤等、 痒等
消化器 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等

注1) このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。

過敏症
[理由]  本剤によると思われる発疹、発赤、痒等が報告されている(企業報告)ため。
[処置方法]  原則的には投与中止にて改善するが、必要に応じて抗ヒスタミン剤・ステロイド剤投与等 の適切な処置を行う。

消化器
[理由]  本剤には地黄(ジオウ)が含まれているため、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等の消化 器症状があらわれるおそれがある。
また、本剤によると思われる消化器症状が文献・ 学会で報告されている。
これらのため、上記の副作用を記載。 
[処置方法]  原則的には投与中止にて改善するが、病態に応じて適切な処置を行う 。

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