健康情報: 白虎湯(びゃっことう) の 効能・効果 と 副作用

2013年11月9日土曜日

白虎湯(びゃっことう) の 効能・効果 と 副作用

漢方診療の實際 大塚敬節 矢数道明 清水藤太郎共著 南山堂刊

白虎湯(びゃっことう)
知母五・ 粳米八・ 石膏一五・ 甘草二・ 
本 方は身熱・悪熱・煩熱等と称する熱症状に用いて解熱させる効がある。この場合、脈は浮滑数乃至洪大で口中乾燥・口渇がある。身熱・悪熱・煩熱等と称する症 状は自覚的に身体灼熱感があって苦しく、通常悪寒を伴わず、他覚的にも軽人の皮膚に掌を当てると一種灼熱感があるものである。この熱状は感冒・肺炎・麻疹 その他諸種の熱性伝染病に現われる。この熱状で便秘し、燥屎を形成し、譫語を発する場合は大承気湯を用いるべきである。本方は病状未だ大承気湯を用いるべ きである。本方は病状未だ大承気湯を用いるべきに至らない場合に用いる。本方の薬物中、知母と石膏が主として清熱に働く。粳米は栄養剤で、高熱による消耗 を補う。甘草は調和剤で知母と石膏の協力を強化するものと考えられる。
本方の応用としては感冒・肺炎・麻疹・その他の熱性伝染病である。また皮膚病で掻痒感の場合に用いて効がある。
白虎加人参湯】(びゃっこかにんじんとう)
白虎湯に人参一・五を加える。
こ れは白虎湯の證で、体液の減少が高度で口渇が甚しく脈洪大の者を治する。白虎湯に人参を加味することによって体液を補い、口渇を治する力が増強する。本方 の応用は諸熱病の他に日射病・糖尿病の初期で未ば甚しく衰弱しない者、精神錯乱して大声・妄語・狂走・眼中充血し、大渇引飲する者等である。




漢方薬の実際知識 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
1 白虎湯(びゃっことう)  (傷寒論)
〔知母(ちも)五、粳米(こうべい)八、石膏(せっこう)一五、甘草(かんぞう)二〕
本方は、三陽の合病に用いられる薬方である。すなわち、陽証で発熱、発汗など表証があり、しかも内に熱があり、煩熱または煩操するものに用いられる。悪寒、煩熱、身体灼熱感、身体重圧感、体液枯燥、口渇、自汗、多尿、尿失禁などを目標とする。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、白虎湯證を呈するものが多い。
一 チフス、麻疹、その他の急性熱性伝染病。
一 感冒、気管支喘息、肺炎その他の呼吸器系疾患。
一 尿毒症、遺尿症、夜尿症、腎炎その他の泌尿器系疾患。
一 湿疹その他の皮膚疾患。
一 そのほか、糖尿病、角膜炎、日射病、火傷、精神病など。

白虎湯の加減方
(1)白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)  (傷寒論、金匱要略)
〔白虎湯に人参三を加えたもの〕
本方は、白虎湯證で体液の減少が高度で、口渇がはなはだしく冷水を多量に飲みたがるものである。したがって、悪寒、悪風(おふう、身体に不愉快な冷気を感ずる意、風にふれると寒を覚える)、発汗、心下痞硬、腹満、四肢疼痛、尿利頻数などを目標とする。
〔応用〕
白虎湯のところで示したような疾患に、白虎加人参湯證を呈するものが多い。
その他
一 脳炎、脳出血、胆嚢炎など。
〔白虎湯に桂枝三を加えたもの〕
本方は、白虎湯證で発熱などの表証が強く、上衝のいちじるしいものに用いられる。
〔応用〕
白虎湯のところで示したような疾患に、白虎加桂枝湯證を呈するものが多い。
その他
一 骨膜炎、関節炎、筋炎など。



明解漢方処方 (1966年) 西岡 一夫著 ナニワ社刊
p.113
類方①白虎湯(傷寒論)
 これが原方で、加人参湯症に較べて体液は缺乏するも胃内までは枯燥には到らない者を目標にするが,殆んど用いない。南涯「病、裏にあり。血気伏して熱を作し、水行く能わざる者をを治す。その症に曰く、以って転側し難し、口不仁、逆冷、遺尿、厥、背微悪寒の者はこれ血気伏するの症なり。曰く譫語、燥渇心煩、渇して水を飲まんと欲す、口乾舌燥はこれ熱を作すなり。曰く腹満身重これ水行かざるなり。しかりと雖も水はその主病に非ず、自汗出るを以ってこれを示すなり。曰く渇して水を飲まんと欲す、煩渇の二症は五苓散に疑似す、何をもって之を別つか、五苓散は水行かずして渇なり。この方伏熱甚しくして渇なり。故に五苓散症は発熱し、この症は発熱せず。五苓散は必ず汗出でて渇、この症は口乾燥、或は身熱して渇なり。五苓散は脉浮数こ英方は脉洪大或は滑。五苓散の症は気急の状、白虎湯の症は気逆の状、これその別なり」。


臨床応用 漢方處方解説 矢数道明著 創元社刊
p.514
121 白虎湯 (びゃっことう) 〔傷寒論〕
 知母五・〇 粳米八・〇 石膏一五・〇 甘草二・〇

 白虎は中国の四方を守る四獣神の一つで、西方を守る金神である。本方の主薬である石膏の色白きをもって名づけたものであるという。また西方は秋で解熱の意味も含んでいるといわれている。

応用〕 陽証で、表証、肌肉の間にある熱を解するものである。次のような類型に従って用いる(新撰類聚方参照)。
 (1) チフス・流感・麻疹・発疹性伝染病等で高熱・口渇・煩躁し、あるいは譫妄・脳症を発したもの。
 (2) 日射病・熱射病・尿毒症で高熱・口渇・煩躁するもの。
 (3) 喘息で夏に発するもの・遺尿・夜尿・歯痛・眼疾患・糖尿病等。
 (4) 精神病で眼中火のごとく、大声・妄語・放歌・高笑・狂走・大渇引飲のもの。
 (5) 皮膚病一般、湿疹でかゆみ激しく、安眠できず、汁流れ出るもの、手を水の中に入れると痺れるというもの等に応用される。

目標〕 発熱し、汗が出て煩渇し、煩躁するものを目標とする。
 患者は身熱、悪熱、煩熱し、脈は浮滑数または洪大で、悪寒をともなわず、自覚的に身体灼熱感があって暑苦しく、他覚的にも病人の皮膚に手を当てると灼熱感がある。口舌乾燥して大いに渇し、舌は乾いて白苔があり、自汗いでて尿利多く、ときに失禁し、体液枯燥の徴候がある。腹はそれほど充実せず、あるいは腹満を訴えることもある。

方解〕 石膏と知母が主薬で、ともに解熱の働きがある。石膏は清熱と鎮静の能があり、内外の熱をさまし、知母は熱をさまし、燥を潤し、主として内熱をさます働きをする。粳米は補養の薬で、石膏が裏を冷やしすぎないようにし、かつ高熱による消耗を補う。甘草は粳米に協力して裏を補い、急迫症状を緩和し、知母・石膏の働きを調和させるものである。
 以上諸薬の協力により、裏熱、肌肉の熱を清解し、身熱・悪感・煩躁を治するものである。

加減〕 白虎加人参湯は、白虎湯に人参三・〇を加えたものであり、白虎湯証が熱のため、津液枯燥甚だしきものを滋潤し補うものである。
 白虎加桂枝湯は、白虎湯に桂枝三・〇を加えたもので、白虎湯の証で表証が強く、上衝の著しいものに用いる。
 すなわち諸熱性病で高熱のもの・筋肉・骨膜炎・関節炎・湿疹・感染・ストロフルス・陰部瘙痒症・眼疾患等に用いられる。実際には白虎加人参湯白虎加桂枝湯の方が頻繁に用いられる。

主治
 傷寒論(太陽病下篇)に、「傷寒、脈浮滑ナルハ、此レ表ニ熱アリ、裏ニ寒アルニヨル、白虎湯主ヲ主ル」(表に寒あり、裏に熱ありの誤りとする説が多く、これをとる)とあり、
 同(陽明病篇)、「三陽ノ合病ハ、腹満シテ身重ク、以テ転倒シ難ク、口不仁シテ面垢(メンク)(顔に垢がつく)讝語遺尿ス。発汗スレバ則チ、之ヲ下セバ則チ額上汗ヲ生ジテ手足逆冷ス。若シ自汗出ル者ハ、白虎湯之ヲ主ル」とあり、
 同(厥陰病篇)に、「傷寒、脈滑ニシテ厥スル者ハ、裏ニ熱アルナリ、白虎湯之ヲ主ル」とある。
 勿誤方函口訣には、「此方ハ邪熱肌肉ノ間ニ散慢シテ大熱大渇ヲ発シ、脈洪大或ハ滑数ナルモノヲ治ス。成無已ハ此方ヲ辛涼解散静粛肌表ノ剤ト云テ、肌肉ノ間ニ散慢シテ汗ニ成ラントシテ今一イキ出キラヌ者ヲ、辛涼ノ剤ヲ用イテ、肌肉ノ分ヲ清粛シテヤレバ、ヒエテシマル勢ニ発シカケタル汗ノ出キルヤウニナルナリ。譬エテ言エバ、糟袋ノ汁ヲ手ニシメテ絞リキツテ仕舞フ道理ナリ。是ノ故ニ白虎ハ承気ト表裏ノ剤ニテ、同ジ陽明ノ位ニテモ、表裏倶ニ熱スルト云フ、或ハ三陽合病ト云ツテ、胃実デハナク表ヘ近キ方ニ用ユルナリ」とある。また、
 古方薬嚢には、「皮膚の内に熱あるため、身熱したり、身体痛みたり、のど渇きたり、皮膚に発疹したりする者」とある。

鑑別
 ○大承気湯 93 (発熱・腹堅満、燥屎、脈沈実)
 ○大青竜湯 94 (発熱煩躁・汗出でず、身痛、表実証、脈浮緊)
 ○五苓散 41 (・小便不利、心下部拍水音、水逆)
 ○八味丸 116 (・小便不利、臍下不仁、脈沈、弦)

治例
 (一) 湿疹
 一女児全身に湿疹を生じ、痒み劇しく、夜も眠れず、皮膚ぐちゃぐちゃとして汁流れ、瘉えざること数年、医薬温泉等に手を尽して効無かりし者、本方三分の一量にて数日を経ずして瘉えたるものあり。
(荒木性次氏、古方薬嚢)

 (二) 両眼の痒みと羞明
 一男子、二~三日前より両眼に痒みを覚えたるが、今朝に至り充血甚しく、目やに多量に出でて眼を閉じ、まばくゆして明るき方を見る能はざる者、白虎湯一日分を服して全く瘉えたり。 (荒木性次氏、古方薬嚢)

 (三) 九官鳥の熱病
 近藤頼母公は隠居して九官鳥を飼っていた。この九官鳥が病気になり、鳥の病学を治すのが上手だという人が手をつくしたが治らなかった。その病状は、人の熱病と同じて、水ばかりのみ、餌は少しも食わず、血液も枯燥し渇きたりとみえ、体すくんで死を待つのみという。よって白虎湯三貼を与え、冷服させたところ、元気となり、更に三貼服用して益々良好、余熱をとるべく竹葉石膏湯を三貼与えて平癒した。そこで松の木に吊ったところ、下で仕事をしていた植木屋の言葉の口真似をした。
(尾台榕堂翁、方技雑誌)

『勿誤薬室方函口訣(106)』 日本東洋医学会評議員 岡野 正憲
 白虎湯
 まず白虎湯(ビャッコトウ)です。出典は『傷寒論』です。内容は知母(チモ)、石膏(セッコウ)、甘草(カンゾウ)、粳米(コウベイ)の四味より構成されています。
 この薬方は、外からの邪気によって起こった邪気よって起こった熱が、皮膚や筋肉という体の表面の部分に広的広がっていて、そのために体表の熱や、劇しい喉の乾きを起こし、脈は大きく盛んな脈となったり、滑数という玉を転がすようで早い脈を示すような場合の治療に用います。ここに出ている大熱とは、高い熱という意味ではなく、体表に出てきた熱という意味だということです。
 金の時代に『註解傷寒論』を著した成無己は、この薬方を、辛くて熱を冷まし病邪を解き散ささばせて体表の邪を、またそれによって起こる熱という現象を含めて、邪熱を平らかに鎮静させる薬方と申していて、邪が皮膚や筋肉という体表の部分に広く広がっていて、発汗しようとしても少し手前で発汗の起こらないものに、辛くて熱を冷ます薬方を用いて、皮膚や筋肉に広がる邪熱を平らかに鎮静させてやると、体表の冷えてしまってくる勢いで、発汗しそうになっている状態の汗が外に出きってしまうようになるので、通俗的なたとえで申しますと、糠の入った袋を手で絞って汁を絞りきって出してしまうという理屈と同じてあります。
 こういうわけで、白虎湯というものは、承気湯(ジョウキトウ)とは表と裏の関係にあって、いずれも陽明の病位に用いますが、体表も裏(内臓)も、ともに邪熱があり、あるいは三陽の合病といわれる太陽病と少陽病と陽明病との同時に発したもの、具体的に申しますと、表証である脈浮、頭項胸痛して悪寒するというものと、表裏の間の口苦く喉乾き、めまいするものと、胃家実というものとが同時に存在するものに用いるわけですが、この場合の陽明の証は、胃実という内臓に邪の充満しているという状態ではなく、表証に近いような裏の熱証に用いるものと解釈していると『口訣』ではいっているわけです。


 


【副作用】
1) 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等) を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
2) ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う。
処置方法
 原則的には投与中止により改善するが、血清カリウム値のほか血中アルドステロン・レニ ン活性等の検査を行い、偽アルドステロン症と判定された場合は、症状の種類や程度により適切な治療を行う。低カリウム血症に対しては、カリウム剤の補給等 により電解質 バランスの適正化を行う。

3)本剤にはセッコウが含まれているため、口中不快感、食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢 等の消化器症状があらわれるおそれがある。