健康情報: 康治本傷寒論 第七条 太陽病,発汗,遂漏不止,其人悪風,小便難,四肢微急,難以屈伸者,桂枝加附子湯主之。

2009年8月23日日曜日

康治本傷寒論 第七条 太陽病,発汗,遂漏不止,其人悪風,小便難,四肢微急,難以屈伸者,桂枝加附子湯主之。

『康治本傷寒論の研究』
太陽病、発汗、遂漏不止、其人悪風、小便難、四肢微急、難以屈伸者、桂枝加附子湯、主之。
 [訳]太陽病、汗を発し、遂に漏れて止まず、其の人悪風し、小便難く、四肢微急し、以って屈伸難き者、桂枝加附子湯、これを主る。
 この第七条から第十一条までは第五条と第六条の附属する条文であって、基本条文ではないので、条文のはじめの部分の表現を違えてある。
 太陽病であれば発汗剤を与えて、汗を出すことにより解熱させるのが原則である。しかしここでは遂に漏れて止まずというのだから、その発汗剤が強すぎたか、あるいは量を過したために汗がとまらなくなり、急に陰病に転化したわけである。このときどのような発汗剤を与えたかについて、二つの解釈がある。
①『弁正』では「此れ上条の桂枝湯および桂枝加葛根湯を承けて、其のまさに陰位にゆく者を論ずるなり」、と解釈している。私はこれに賛成する。その根拠は第七条の位置と、後の第九条、第十条、第十一条に「桂枝湯を服成」という句が使われていることである。傷寒論では字句の解釈の仕方を後の条文で示すことがよくあり、これもその一つである。この流儀の効用は石橋を叩いて渡るように字句の解釈に慎重になることである。
①『解説』(159頁)では「太陽病の桂枝湯の証を誤診して、麻黄湯で発汗せしめたために」と説明している。『集成』、『皇漢』、『入門』も同じ解釈をしている。これは桂枝湯は発汗剤ではなく解肌剤であるという解釈をする立場にほかならない。しかしこの立場をとれば第九条から第十一条までに服桂枝湯という表現が共通して使用されていることが誤りになってしまい矛盾をきたす。そのほかに解肌とは発汗にほかならないことを証明することができるから、私は麻黄湯説を採用しない(和漢薬、三○○号、一九七八年、「解肌について」を参照されたい)。
『講義』(28頁)で「此れ本と桂枝の証なり。故に当に微汗して肌を解すべし。然るに微汗ならずして大量に発汗す。是に於て遂に陰位に陥らんとするなり」、という解釈で良いのである。しかし臨床上は麻黄湯を包含していることは言うまでもない。
 次は其人について。『講義』(26頁)では「端をあらたむるの辞。けだし其の証本来無かるべくして今有る者、或は偶々其の証を変ずる者、或はまた其の主証に加うるに更に客証を以ってする者、或はまた他の類証中より特に本病を選びて之を指す時等には、皆其人の二字を冠して其の端を更む」、と説明しているが、要するには「語の発端を改めて言い起こすところに用いる辞」(諸橋大漢和辞典)である。したがって太陽病であった人が汗が流れて止まらなくなり、今までとすっかりかわって次のような症状を引起して陰病になったという意味になる。悪風といい発熱を言わないのだから陰病なのである。
 陰病は体内に冷えがあるから本来は小便自利であるのに、ここでは反対に小便が気持ちよく出ない。その原因は汗を多く出したために体液が減少したことにあり、病的なものではないので小便不利と言努徒に小便難と表現したのである。
 四肢微急とは手足が少しくひきつれること。急は漢字語源辞典では及と同じで、追いかけて捕えること、追いつくこと、という意味から追いかける時の「いらいらした気持ち」を示しているという。それで次の以て屈伸し難しで筋肉痛のあること意味している。これを拘攣するとも言う。『皇漢』では「四肢微急して屈伸し難きもまた体液亡失のため筋肉の栄養失調せられしに由るなり」という。


桂枝三両去皮、芍薬三両、甘草二両炙、生姜三両切、大棗十二枚擘、附子一枚炮去皮破八片。 右六味、以水七升煮、取三升、去滓、温服一升。
 [訳] 桂枝三両皮を去る、芍薬三両、甘草二両炙る、生姜三両切る、大棗十二枚擘く、附子一枚炮じ皮を去り八片に破る。右六味、水七升を以って煮て、三升を取り、滓を去り、一升を温服する。

 陰病であるから附子を加味したのである。重症のときは生附子を用いるが、このように軽症のときは炮附子を用いる。炮という修治法は湿めらせた小麦粉または湿めらせた紙で生薬をくるみ、熱い炭火の中に埋め、包んだ物が黄色に焦げてはじける程度にすることで、附子を炮ずると含有され仲いる植物成分の中で最も毒性の強いアコニチン系のアルカロイドが熱加水分解をうけて毒性の低いベンゾイルアコニチン等にかわり、さらに毒性のほとんどないアコニン等にまで変化する。即ち減毒附子を用いるのである。その作用は
一、冷え、虚脱状態を治し、
二、関節、筋肉等の疼痛を治す。
それで桂枝湯の強壮作用と共力する形となり、また鎮痛作用は桂枝、芍薬、甘草と共力し、鎮痙作用は芍薬と甘草で発揮される。『講義』(29頁)に「若し此の証、更に深く進行すれば芍薬甘草附子湯証に至るべし」、とあるが、深く進行になくてもこれを使用してよいと思う。

『傷寒論再発掘』
7 太陽病、発汗 遂漏不止、其人悪風、小便難、四肢微急、難以屈伸者 桂枝加附子湯主之。
  (たいようびょう、はっかん、ついにもれてやまず、そのひとおふう、しょうべんなん、ししびきゅう、もってくっしんしがたきもの、けいしかぶしとうこれをつかさどる。)
  (太陽病で、発汗したが汗が流れて止まらなくなり、その結果、状態がすっかり変わって、悪風し、小便が出にくくなり、四肢が少しひきつれ、屈伸し難くなったようなものは、桂枝加附子湯がこれを改善するのに最適である。)

 この条文は桂枝湯の加味方の第二番目の条文です。第6条は陽病のままで項背の凝りが著名な場合でしたが、この第7条は発汗したあと、汗が出すぎて、多分、体液が激減してしまった場合すなわち、陰病に進んでしまった場合の対応策の一つについての条文です。桂枝湯に附子を加えた桂枝附子湯によって、発汗の過多がおさえられ、体内に水分が保持され、悪風や小便難や四肢微急や屈伸に伴う疼痛などが改善されるようです。附子にはこのような疼痛の改善作用がありますので、慢性関節リウマチや神経痛やその他の疼痛の改善に活用されています。
 本条文は「発汗過多」に対して改善策を述べた第一番目の条文です。そして次の第8条は「瀉下後」の異和状態の改善策についての条文となっています。

7’ 桂枝三両去皮 芍薬三両 甘草二両炙 生姜三両切 大棗十二枚擘、附子一枚炮去皮破八片。
  右六味、以水七升煮、取三升、去滓、温服一升。
  (けいしさんりょうかわをさる、しゃくやくさんりょう、かんぞうにりょうあぶる、しょうきょうさんりょうきる たいそうじゅうにまいつんざく、ふしいちまいほうじかわをらしはっぺんにやぶる。みぎろくみ みずななしょうをもってにて、さんじょんをとり かすをさり、いっしょうをおんぷくする。)

 大棗のところまでは桂枝湯の時と全く同じです。附子を追加するところが相違しています。「炮」というのは修治法の一種で、湿った紙で生薬をつつみ、熱い炭火の灰の中に埋めて、熱を加えたものです。毒性を減じるものとされています。「原始傷寒論」の中での使い方を見てみますと、炮じない生の附子は乾姜と一緒にのみ使用されていて、それ以外はすべて炮附子が使用されています。その理由はまだ分かっていません。これからの課題でしょう。


『康治本傷寒論解説』
 【原文】  「太陽病,発汗,遂漏不止,其人悪風,小便難,四肢微急,難以屈伸者,桂枝加附子湯主之.」
 【和訓】  太陽病,発汗して遂に漏れて止まず,その人悪風し,小便難く,四肢微急し,以て屈伸し難き者は,桂枝加附子湯これを主る.
 【訳文】  太陽病中風を発汗して,汗が遂に漏れて止まらず(病症変化して,少陰病の中風となって,脉は沈微細,緩で,手足厥冷し、自汗があり),それがために小便は不利の状態となり,四肢が微急して屈伸しにくく,その人背悪感する場合には,桂枝加附子湯でこれを治す.
 【句解】
  手足厥冷(シュソクケツレイ):少陰病の熱型で,自覚的に冷えていることがわかる場合をいう.
  悪寒(オカン):悪寒には附子剤と石膏剤で訴え方に以下に記したような相違があります。
 ・附子剤の場合は,背中側の腎臓の位置するあたりから上部に広がった感じで,寒気を訴えます。
 ・石膏剤では,背微悪寒といって心臓の位置する背中側の極限られた範囲にあらわれます。
 また,小青竜湯にみられる「背寒冷手大如」は,心窩部の裏側(背部)に見られ,ちょうど手のひら大の範囲に寒気を訴える場合をいう.
 【解説】  この条は,太陽病から少陰病へ移行する病道パターン(桂枝湯証の方剤

 【処方】  桂枝三両去皮、芍薬三両、甘草二両炙、生姜三両切、大棗十二枚擘、附子一枚炮去皮破八片,右六味以水七升煮取三升去滓,温服一升.
 【和訓】  桂枝三両皮を去り,芍薬三両,甘草二両を炙り,生姜三両を切り、大棗十二枚をつんざき,附子一枚を炮じて皮を破り去って八片となす,右六味水七升を以て煮て三升に取り,滓を去って温服すること一升す.

 炮:和紙を濡らして,厚く包んで熱灰の中に埋めて蒸した状態で加工する方法をいう.

    証構成
  範疇  肌寒緩病 (少陰中風)
①寒熱脉証  沈微細
②寒熱証   手足厥冷
③緩緊脉証  緩
④緩緊証   自汗
⑤特異症候
  イ背悪寒 (附子)


康治本傷寒論の条文(全文)

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