健康情報: 温清飲(うんせいいん) の 効能・効果 と 副作用

2013年1月16日水曜日

温清飲(うんせいいん) の 効能・効果 と 副作用

『漢方精撰百八方』

80.〔温清飲〕(うんせいいん)
〔出典〕万病回春
〔処方〕当帰、乾地黄 各4.0 芍薬、川芎、黄芩 各3.0 黄連、黄柏、山梔子 各2.0
〔目標〕
  この方は万病回春婦人門に「婦人経脈住(とど)まらず、或いは豆汁の如く、五色相雑え、面色痿黄、臍腹刺痛、寒熱往来、崩漏止まざるを治す」とある。 温清飲は四物湯と黄連解毒湯との合方で、実熱を瀉する黄連解毒湯を、虚熱を治し、血を養い温める四物湯とを組み合わせて作られたものである。  本方証の多くは、慢性に経過したものか、体質的に本方証のあるものが急性症状を発したものである。体質的には皮膚黒褐色または黄褐色を呈し、渋紙の如く、皮膚枯燥の傾向がある。症状としてはソウ痒甚だしく、あるいは粘膜に潰瘍出没し、のぼせて出血の傾向がある。また神経興奮の症状がある。脈は一定しないが弱くはない。腹は柴胡証に似て肋骨弓下部及び腹直筋が緊張し、抵抗があるものが多い。肝障害を伴うものである。

〔かんどころ〕
  皮膚の色が黄褐色で、渋紙の如く枯燥し、慢性的に経過し、あるいは体質的疾患に多く、肝機能障害を伴い、神経症や、アレルギー性のものが多い。虚実寒熱の複雑化したものである。

〔応用〕
  諸出血(子宮出血、血尿、衂血、喀血等)・皮膚掻痒症・皮膚炎・湿疹・蕁麻疹・面皰・肝斑(しみ)・ベーツェット症候群・神経症・高血圧・肝障害・アレルギー性体質改善などに応用される。

〔附記〕
  本方を基本として森道伯翁は、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯を創方し、体質改善薬とした。大塚敬節氏は本方に釣藤、黄耆、魚腥草(どくだみ)を加えて高血圧の、のぼせ、顔面紅潮、不眠、気分の不安定なるものに用いるという。

〔治験〕
  ベーチェット症候群
  33才の主婦。約10ヶ月前より発病し、口中舌頬粘膜、及び陰部に潰瘍ができ、出没常なく、繰り返し発生していた。また下肢に斑点が現れ、陰部に潰瘍ができるときは、悪寒高熱を発して非常に苦しむ。ベーチェット症候群という診断を受け、3ヶ月入院加療を受けたが少しも好転しなかった。これを血熱生瘡久しきものとして温清飲に連翹を加えて与えたところ、1ヶ月後には現発の潰瘍は消失し、新しい潰瘍の発生なく、4ヶ月間服用して全治し、以来数年を経過するが再発をみない。
矢数道明



漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊
四物湯の加減方、合方
(1)温清飲(うんせいいん)  (万病回春)
〔四物湯に黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を合方したもの〕
本方は、黄連解毒湯證(後出、瀉心湯類の項参照)に瘀血の症状をかねたもので、諸出血がつづいて貧血状となり、のぼせ、神経の興奮などを呈する。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、温清飲證を呈するものが多い。
一 月経過多、子宮出血、男子の下血、胃や腸の潰瘍による出血その他の諸出血。
一 皮膚掻痒症、湿疹その他の皮膚疾患。
一 そのほか、高血圧症、神経症など。

黄連解毒湯の加減方
(1) 温清飲(うんせいいん)
   〔黄連解毒湯と四物湯の合方〕(前出、駆瘀血剤の項参照)




《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
4.温清飲(うんせいいん) 万病回春
当帰4.0 地黄4.0 芍薬3.0 川芎3.0 黄芩3.0 梔子2.0 黄連1.5 黄柏1.5

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
 婦人では子宮出血が長びいたり,月経過多で出血が多く,あるいは帯下がつづき,男子では下血が久しくつづいて貧血症状を呈するものである。このときのぼせ,精神興奮,皮膚の熱感を伴う肌荒れなどのあることが少なくない。ただ食欲不振や下痢などの胃腸症状があるときは用いられない。

漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○湿疹や皮膚炎に用いる。目標は患部が乾燥して赤味を帯び,灼熱感があり,瘙痒がひどく,ひっかくと,粉がこぼれるという点にある。消風散を用いる時のように分泌物が流れることはない。顔面,頸部,項部がひどくおかされる傾向がある。矢数氏は「多くは丘疹性の湿疹で,分泌物はなく,枯燥の傾向があり,瘙痒が甚しく,掻把によって出血痕を残しているものが多い。」とのべている。


日本東洋医学会誌〉 第12巻第1号
 温清飲の臨床的研究 矢数道明先生 から
 万病回春には本方の主治として,「婦人経脉住らず,或は豆汁の如く,五色相雑え,面色萎黄,臍腹刺痛,寒熱往来,崩漏止まざるを治す。」としている。この主治をみると,子宮出血のほか,種々の色状の帯下があって,貧血,悪液質様の顔色を呈しているものに用いられている。しかしこれは子宮癌等悪性腫瘍によるもののみとは限らない。(中略)回春の説によると「崩漏(子宮出血)は新久或は虚実によって治療法は同じではない。初期実熱に属するものは黄連解毒湯でよいが,久しくなると虚熱に属するようになるから,そのときは血を養い温め,一方火を清しくすべきである。それには温清飲がよいのだ。」といっている。勿誤方函口訣には「此方は温と清と相合する所に妙があり,婦人漏下,或は帯下,或は男子の下血久しく止まざるものに用いて効験がある。小栗豊後の室は,下血の止まざること10余年に及び面色萎黄,腰痛折るが如く,両脚に微腫があって,衆医は手を束ねていたが,余は此方を与えて全く癒えた。」といっている。この例は子宮筋腫,あるいはポリープ,または出血性メトロパチーなどによる出血と考えられる。牛山方考の黄連解毒湯のところには「婦人崩挑の症,血下ること湧くが如く,身熱甚しく,口渇して譫語するもの,四物湯を合わせ,その煎汁にて棕櫚の灰を用いると奇効あり。」と述べてあり,また「婦人赤白帯下,頭面に熱瘡を生じたもの,四物湯を合せ,連翹,白芷,秦艽を加える。」と記載している。これは即ち温清飲加減のことである。(中略)
 (1)本方証の多くは慢性に経過したものか,あ音便f体質的に本方証のあるものが急性に症状を発したものであると思われる。
 (2)本方の適応する体質傾向として,皮膚が黒褐色を呈し,渋紙の如く枯燥しているものが多い。
 (3)皮膚病の場合は多くは丘疹性の湿疹で分泌物はなく,枯燥の傾向があり,瘙痒が甚しく,掻把によって出血痕を残しているものが多い。
 (4)粘膜の場合は潰瘍の出没を繰返している。
 (5)脉は一定しないが,それほど弱い方ではなく,腹証は多くは心下部及び肋骨弓下に抵抗のあるものが多く,柴胡証に似ているものである。或は臍傍臍下に瘀血と思われる抵抗や圧痛の認められることがある。皮膚色の普通のものも,枯燥のないものもある。興味あることは本方のよく適応するものは,この薬の苦味と香気を喜ぶものの多いことである。(後略)



【一般用漢方製剤承認基準】
〔成分・分量〕
 当帰3-4、地黄3-4、芍薬3-4、川芎3-4、黄連1-2、黄芩1.5-3、山梔子1.5-2、黄柏1-1.5

〔用法・用量〕
 湯

〔効能・効果〕
 体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症: 月経不順、月経困難、血の道症注)、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎


《備考》
 注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
 【注)表記については、効能・効果欄に記載するのではなく、〈効能・効果に関連する注意〉として記載する。】

【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。 
(3)胃腸の弱い人。 


2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

関係部位症状
皮膚発疹・発赤、かゆみ


まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。



商 品 名 製造販売元
発売元又は販売元
一日 製剤量
(g)
添加物 剤形 効能又は 効果 用法及び用量 当帰(トウキ) 地黄(ジオウ) 芍薬(シャクヤク) 川芎(センキュウ) 黄連(オウレン) 黄芩(オウゴン) 山梔子(サンシシ) 黄柏(オウバク)
1 オースギ温清飲エキスG 大杉製薬 7.5 乳糖水和物、トウモロコ シデンプン、ステアリン 酸マグネシウム 顆粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
2 クラシエ温清飲エキス細粒 大峰堂薬品工業
クラシエ薬品
6.0 日局ステアリン酸マグネ シウム、日局軽質無水ケ イ酸、日局結晶セルロー ス、日局乳糖水和物、含 水二酸化ケイ素 細粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
3 コタロー温清飲エキス細粒 小太郎漢方製薬 12.0 ステアリン酸マグネシウ ム、トウモロコシデンプ ン、乳糖水和物、プルラ ン、メタケイ酸アルミン 酸マグネシウム 細粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
4.0 4.0 3.0 3.0 1.5 3.0 2.0 1.5
4 ジュンコウ温清飲FCエキス細粒 医療用 康和薬通
大杉製薬
7.5 トウモロコシデンプン、 乳糖水和物 細粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:
月経不順、月経困難症、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
4.0 4.0 4.0 4.0 1.5 3.0 2.0 1.5
5 ツムラ温清飲エキス顆粒(医療用) ツムラ 7.5 日局ステアリン酸マグネ シウム、日局乳糖水和物 顆粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
2~3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
6 テイコク温清飲エキス顆粒 帝國漢方製薬
日医工
9.0 乳糖水和物、結晶セル ロース、ステアリン酸マ グネシウム 顆粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前
3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
7 〔東洋〕温清飲エキス細粒 東洋薬行 6.0 トウモロコシデンプン 細粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
空腹時
3回
3.0 3.0 3.0 3.0 1.5 1.5 1.5 1.5
8 本草 温清飲エキス顆粒-M 本草製薬 7.5 乳糖水和物、結晶セル ロース、メタケイ酸アル ミン酸マグネシウム、ス テアリン酸マグネシウム 顆粒 皮膚の色つやが悪く、のぼせるものに用いる:
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症
食前又は食間
3回
4.0 4.0 3.0 3.0 1.5 3.0 2.0 1.5