健康情報: 自然治癒力と免疫とSODについて

2009年3月2日月曜日

自然治癒力と免疫とSODについて

自然治癒力(しぜんちゆりょく)
自然治癒力とは、生体が疾病(しっぺい)に罹患(りかん)しても、その程度がある程度以下ならば、特別な医療が施されなくても健康状態に回復することのできる力をいいます。

そもそも人間をはじめ、あらゆる動物には、ケガや病気を自分で治す力が備わっています。
ケガや病気にかかり、病院でどんなに発達した手術や治療を受けたとしても、自然治療力がなければ、元の健康な状態に回復することはできません。この力があるからこそ人間は生きていけるのです。

自然治療力は、二つの機能が働いて作用しています。

一つは自己再生機能。ケガをするとは細胞が壊れることで、それを細胞自ら元に戻そうとする力が自己再生機能です。これは人間が「生」を受けたとき、すでに遺伝子によって受け継がれていて細胞に記憶されています。その遺伝子の記憶に従って、細胞が壊れても再生するのです。

もう一つは自己防衛機能といって、外敵と戦う力のことです。しかし、現代人はその自己防衛機能が低下しているといいます。
守る力が低下すると再生能力も落ちいきます。現代人は自然治療力が弱まっているといえるのです。「傷が治りにくい」とか「風邪をひくと長引く」などは、自然治療力の低下が原因と考えられます。
自己防衛機能として重要なのが、「免疫」です。


免疫
免疫とは、もともとは、病(えきびょう;病気)から(まぬが)れる仕組みの意味ですが、現在では、
自分(自己,self)を護るため、自分でないもの(非自己、non-self)をはっきり区別し、それを体から取除く仕組みのことを免疫と呼んでいます。


細胞性免疫液性免疫
異物を排除する免疫の仕組みは、細胞性免疫液性免疫の二つに大きく分けられます。
細胞性免疫キラーT細胞マクロファージ(貪食細胞、大食細胞)といった細胞たちが主体となって抗原を排除する反応で、
液性免疫は、B細胞が発射する抗体が主体となって抗原を排除する反応のことです。この二つの仕組みが力を合わせることで、抗原を排除しています。


自然免疫獲得免疫
免疫を自然(先天性)免疫と獲得免疫に分けることもできます。
自然免疫とは、生体における常設の防衛部体であり、獲得免疫とは、緊急時に動員される防衛部隊にたとえたら分かりやすいでしょう。
自然免疫には、可溶性物質であるリゾチーム補体(complement)、インターフェロン、また細胞としてはマクロファージナチュラルキラー(NK)細胞などがあります。

非常に毒性を持った、もしくは体の中に侵入しやすい病原菌やウイルスに感染した場合には、自然免疫だけでは防ぎきれなくなってしまうことがあります。そこで登場するのが緊急防衛隊である獲得免疫です。獲得免疫系の中には、B細胞のつくる抗体や、T細胞があります。

自然免疫系と獲得免疫系
  自然免疫系 獲得免疫系
一言で言えば 無差別攻撃 集中攻撃
反応の早さ 数時間 数日間
(記憶した抗原に対しては早い)
特生の抗原を記憶 しない する


細胞性免疫液性免疫自然免疫系と獲得免疫系を組み合わせると次のようになります。
  自然免疫系 獲得免疫系
液性免疫 リゾチーム、補体、インターフェロン 抗体
細胞性免疫 マクロファージ、NK細胞 T細胞


SOD
自己防衛機能の中で、免疫とともに重要なのがSOD(スーパー オキシド ディムスターゼ)です。細胞を傷つける活性酸素を抑制する機能が備わっている酵素です。


活性酸素

呼吸によって体内に摂り入れた酸素のうち、約2%は活性酸素になります。
活性酸素は、本来、私達の体内に侵入した細菌などを撃退してくれる頼もしい物質です。ところが、様々な要因により必要以上に作り出されると、細菌などを攻撃するとともに正常な細胞までも攻撃し、体にダメージを与えるようになってしまうのです。
この活性酸素の正体は、酸素の酸化作用が何倍にも強力になったもので、スーパーオキシド過酸化水素ヒドロキシラジカル一重項酸素の4種類が知られています。
これらは、私達の体内の至る所を、まるで鉄が錆びるように蝕んでいきます。現在までの研究でわかっているだけでも、活性酸素が人体に与える弊害は、なんと200種にも上ります。例えば、活性酸素が細胞内の遺伝子を傷つけることで「ガン」が、血管を傷つけると「動脈硬化」が、心臓を傷つけると「心筋梗塞」が引き起こされるのです。

こうなると活性酸素が万病を招くといっても過言ではありません。ですから、私たちは何とかして活性酸素が狂暴化するのを防がなくてはならないのです。
しかし、活性酸素は私達が呼吸をやめない限り、体内で発生し続けます。更に、私達を取り巻く現代社会には、活性酸素を増やす要因が蔓延(まんえん)しています。ストレス、食品添加物、喫煙、排気ガス、そして紫外線なども活性酸素を生み出す原因になるのです。

この活性酸素を抑制しているのがSODと呼ばれる酵素です。しかし、このSODは20歳を過ぎた頃から年齢とともに減少し、40歳になると衰えてきます。また、現代社会には活性酸素を発生させる要因が多いことから、若い世代でもSODの働きが低下するケースもあります。



自然治癒力の低下
現代人は、自然治癒力が弱体化していると言われています。
例えば一時絶滅に近づいていたはずの結核がまた増えはじめています。これは免疫力の低下が招いている現象ではないかと考えられています。また、若い世代で風邪や傷の治りが遅いと訴える人が増えています。次のような兆候が見えらたら、自然治癒力の低下を疑いましょう。

1.口内炎になりやすくなった
病原体が侵入しやすい敏感な粘膜部分に炎症が起きるのは自然治癒力が低下している証拠です。

2.下痢しやすくなった
心因性・細菌性の下痢はともに自然治癒力の低下の証拠です。

3.疲れやすくなった
睡眠不足や疲労時には自然治癒力が低下します。

4.風邪や傷が治りにくくなった。
病気や怪我が治りにくいのも自然治癒力が低下した証拠です。


なぜ、このように自然治癒力が弱くなってしまったのでしょうか?
その原因の一つとして、現代人を取り巻く環境が挙げられます。

人間の身体の中で、自己防衛機能が出来上がるのは15歳頃の思春期までの間。
この時期に豊かで快適な生活を送っていると、敵と戦う機会が減ってしまい、自己防衛力が弱まってしまうのです。

また、食事を制限する無理なダイエットは、防衛機構に栄養が行き届かないため、自ら弱体化させているようなものです。

更に私達を取り巻く環境も追い打ちをかけています。排気ガスや大気汚染、紫外線の増加など、社会環境の悪化がそれです。細胞を脅かす外敵をどんどん増やす結果になっていて、これでは今までの防衛力では間に合わず、守りが追いつかない状況です。

自己防衛力が低下するもう一つの原因として、サーカディアンリズムの乱れが上げられます。現代人の不規測な生活や夜型人間の増加が自己防衛力を低下させていると考えられています。そもそも人間の身体には、陽が昇ると起き、陽が沈むと寝るという生活リズムが刻み込まれています。それは人類が誕生して数十億年もの間、脈々と受け継がれてきた生体リズムです。この生体リズムをサーカディアンリズムといいます。

サーカディアンリズムが乱れ、夜型の生活になると、血液中の顆粒球(かりゅうきゅう)が増え、リンパ球が減ってしまいます。顆粒球が増えすぎると、過剰反応して正常な細胞まで傷つけてしまいます。
炎症が治らないとか、傷口がふさがらない症状を引き起こしてしまいます。
更にウイルスと戦うリンパ球が少ないので、免疫力が低下します。ケガが治りにくいばかりでなく、風邪などを引き起こすウイルスにも弱く、病気にかかりやすく治りづらい身体になってしまいます。不摂生は自らの手で首を絞めているようなものなのです。


自然治癒力を上げるには、どのようにしたら良いのでしょうか。

1.規則正しい生活をおくる
まずはバランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、精神的疲労や肉体的疲労を残さないなど、基本的な生活リズムを守ることが大切です。

2.ドーパミンの分泌を増やす
ドーパミンの分泌を増やすようにすることも重要です。昔から「病は気から」といいますが、これには快感ホルモンと呼ばれるドーパミンが関連していると言われています。ドーパミンが多く分泌されるとリンパ球が活性化されて免疫力が上昇するからです。また、ドーパミンには細胞の再生を促進させる働きもあります。このようにドーパミンの分泌が多くなれば防衛機能も再生機能も高まり病気になりにくくなるわけです。ポジティブなプラス思考でドーパミンを分泌させましょう。気持ちが切り替わらないときは、まず先に笑顔をつくってみましょう。笑いには精神をリラックスさせ免疫力を高める効果があります。

3.抗酸化物質(スカベンジャー)の摂取
ほとんどの慢性病にかかわっていると言われているのが活性酸素です。この活性酸素を抑制するのがSODですが、SODの働きが低下している場合は、これに代わる対抗手段を持たなくてはなりません。それが、抗酸化物質です。抗酸化ビタミン(VC、VE)、カロチノイド(β-カロチン、アスタキサンチン、リコピン等)、ポリフェノール類(ぶどう・そば・コーヒー・ピクノジェノール・イチョウ等)が代表的なものです。中でもポリフェノールは水溶性と脂溶性の両方で抗酸化力を示すので、優れた抗酸化物質といえます。
ただし、その効果はわずか2~3時間なので、様々な食材から上手にポリフェノールを摂ることが必要です。

4.SODをパワーアップさせる
活性酸素の害を防ぐには、体内のSODをパワーアップさせることも必要です。このSODをパワーアップさせるには、その数を増やすことと、SOD自身を活性化させることが大切です。
SODはタンパク質でできた酵素の一つです。そこでタンパク質(アミノ酸)を補うことは、SODを増やすのに重要です。
(アミノ酸のグルタミン酸とアルギニンには、マクロファージとキラーT細胞を強化する働きもあります。)
また、SODの核には亜鉛が含まれていますので、亜鉛を摂取するとSODが活性化すると言われています。
つまり、タンパク質食物と亜鉛の豊富な食物を一緒に食べれば良いわけです。


5.腸内環境を整える
腸管免疫系は最も大きな免疫系で、免疫系全体の60%の細胞や抗体から構成されています。
腸内環境を整えることで、免疫系が活性化されると考えられています。
腸内環境を整えるには、食物繊維を多く含む食物を食べることが一番です。
また、乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌を摂取すること(プロバイオティクス)や、難消化性のオリゴ糖や食物繊維を摂取すること(プレバイオティクス)も重要です。