嘈囃(そうそう)とは、『プロメディカ2007』(南山堂)で検索すると、胸やけ(pyrosis)と簡単に書いてあります。
『漢方医語辞典』でも同様に ○むねやけ ○(食+曹)雑(そうざつ)に同じ。 とあります。ただし読みは「そうざつ」としています。
この嘈囃に用いる漢方薬には安中散(あんちゅうさん)、香蘇散(こうそさん)、旋覆花代赭石湯(せんぷくかたいしゃせきとう)、生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)、黄連湯(おうれんとう)などが使われます。
半夏瀉心湯、生姜瀉心湯、甘草瀉心湯は良く似た薬方で、大雑把に言うと、半夏瀉心湯を基本として、そこに生姜(生のショウガ)を加えると生姜瀉心湯になり、甘草を倍量に増やすと甘草瀉心湯になります。「腹鳴(ふくめい)」と「下痢」は共通の主目標となりますが、下痢の程度は半夏瀉心湯が最も弱く、甘草瀉心湯がもっとも激しいと言われています。
この他、半夏瀉心湯には「ガスの排出が多い」、生姜瀉心湯には「噫気(あいき;げっぷ)、胸焼けが強い」、甘草瀉心湯には、「不眠、イライラなどの神経症状がみられる」など、それぞれ特徴的な症状があり、それを目標に三者を使い分けます。
生姜瀉心湯にするには、日局ショウキョウ(いわゆる乾生姜)を用いては、余り効果は望めません。すなわち、乾生姜を用いた生姜瀉心湯は、半夏瀉心湯とほぼ同じものになってしまいます。一般的にエキス剤は日局ショウキョウを用いていますので、噫気や胸やけが強い場合には、生のショウガ(ヒネショウガ)を買ってきて、加えた方が良さそうです。チューブの生姜で代用できるか20年前くらいに顕微鏡で調べた先生の話によると、香料などで味付けしていただけで、実際には、生姜はほとんど入っていなかったそうです。現在のものはどうなっているかわかりませんが、八百屋で生薑を買ってきた方が良さそうです。
黄連湯も半夏瀉心湯に良く似た薬方で、腹痛、下痢、嘔気・嘔吐、心煩などがある時に用いられる事が多いとされています。簡便には、半夏瀉心湯証で腹痛を伴う場合、として使われることも多いようです。
旋覆花代赭石湯は、生姜瀉心湯に似て、それよりも一段と虚しているもので、生姜瀉心湯を用いても効のないものに用いられます。ただ、薬味は、旋覆花・大棗・代赭石・甘草・人参・半夏・生姜で、黄連・黄芩が含まれていませんので、瀉心湯類とは異なります。大黄等の下剤を用いると、却って腹痛・裏急後重等を訴えて、下剤を使用できないものの便秘に効果があることもあります。