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2024年7月14日日曜日

病名からの薬方検索(『漢方薬の実際知識』)

 漢方は、これまで幾度ものべてきたように、随證療法であり、病名のみによって薬方を決めて使用することはありえない。病名はあくまでも手掛かりにすぎないのであって、漢方治療の本質である病の陰陽・虚実・寒熱その他の把握をとおしての證の構成には、それほど重要ではない。

 しかし、まず第一に病人の立場から考えると、近代医学の発達と民衆への定着によって、多くの人びとは、現われている一つ一つの症状よりも病名のみをあげて、個人特有の症状を過小評価していること、第二に同じ理由によって、病変を局所的に考え、その局所と関係がないと考えて症状をのべながいこと、第三に請療者の立場から考えると、病人の訴える各種の症状の有機的なつながりを見出すには、多くの学識と経験が必要であることなどの理由によって、初心者が漢方薬を使用するためには、病名を参考にして薬方を決める安易な方法で急場をしのがなければならない。

 ここでは、病名からの薬方の検索をあげたが、このようにしてえられた薬方は、あくまでも随證療法という過程を経て選ばれたものではないため、本来の意味での漢方ではないことを念頭において使用しなければならない。

 

1 内科疾患

1 呼吸器系疾患

 (1)感冒
 感冒の症状は、千差万別であるから陰陽・虚実・表裏・内外・上中下によって薬方をえらばなければならない。第六章 主薬薬方解説でのべた柴胡剤、順気剤、表証、麻黄剤、裏証Ⅱなどの薬方や五苓散、防已黄耆湯、麦門冬湯、麻黄細辛附子湯などを選用する。
 一般に、初期には葛根湯、虚証には桂枝湯、鼻水の多いものには小青竜湯、こじれて白苔がてきたり、食欲のなくなったものには小柴胡湯、柴胡桂枝湯などが用いられる。老人や病弱者には真武湯を用いることもあるが、附子剤であるから注意を要する。

 (2)インフルエンザ(流行性感冒)
 インフルエンザは、ウィルスによつておこる疾患で、軽いものは感冒と同じような症状を呈するが、重いものは重篤になる。柴胡剤、表証、麻黄剤、裏証Ⅱなどの薬方や麦門冬湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、呉茱萸湯、桃核承気湯、黄連湯、半夏瀉心湯、麻黄細辛附子湯などを選用する。
 一般に、初期には葛根湯、麻黄湯、白苔ができ、食欲のなくなったものには小柴胡湯、腹中雷鳴や下痢などのあるものには半夏瀉心湯、重症で便秘し意識がもうろうとしているものには桃核承気湯、老人や病弱者には真武湯が用いられる。

 (3)気管支カタル(気管支炎)
 気管支カタルも軽いものは感冒とよく似ているが、気管支の炎症によって咳を起こすものである。急性には柴胡剤、表証、麻黄剤、裏証Ⅱなどの薬方や半夏厚朴湯、麦門冬湯、苓甘姜味辛夏仁湯、炙甘草湯、麻黄附子細辛湯などを選用する。慢性には柴胡剤、裏証Ⅱなどの薬方や半夏厚朴湯、麦門冬湯、小青竜湯、小建中湯、六君子湯、桂姜棗草黄辛附湯、炙甘草湯などを選用する。
 一般に、初期には麻黄湯、麻杏甘石湯、白苔ができ、食欲のなくなったものには小柴胡湯、痰の切れが悪く顔を赤くして咳こむものには麦門冬湯が用いられる。なお、気管支英異常感を軽快させるために半夏厚朴湯が合方される。

 (4)気管支喘息
 気管支喘息は、呼吸延長を伴う特有なゼイゼイ鳴る発作性呼吸困難を起こす一症状で、体質的なものが多いから体質改善に心がける必要がある。柴胡剤、順気剤、麻黄剤、裏証Ⅱ、瀉心湯類、解毒剤などの薬方や四物湯、桃核承気湯、桂枝加厚朴杏仁湯、小建中湯、大承気湯、苓甘姜味辛夏仁湯、八味丸、芍薬甘草湯、麻黄細辛附子湯などを選用する。
 一般に、麻杏甘石湯、麻杏薏甘湯、半夏厚朴湯、芍薬甘草湯などの発作をおさえる薬方と小柴胡湯、大柴胡湯、小建中湯などの発作を起こさないようにする薬方を組み合わせて用うる。

 (5)肺炎
 クループ性肺炎は、倦怠感、頭痛、食欲不振、鼻炎、咳嗽から始まり、急激に発熱し、悪寒戦慄を起こし、体温も四〇度以上となり、側胸痛を訴え呼吸困難となり、さび色の痰が出るようになる。気管支肺炎は、症状が多様で潜行性に始まり、気管支炎に続発する際は、悪寒とともに急に発熱し中毒症状を起こす。柴胡剤、麻黄剤、裏証Ⅱ、承気湯類などの薬方や梔子豉湯、梔子甘草豉湯、桃核承気湯、三黄瀉心湯、猪苓湯、桂姜棗草黄辛附湯、炙甘草湯、白虎加人参湯、麻黄細辛附子湯などを選用する。
 一般に、初期には小青竜湯、白苔ができ、食欲がなく、咳や呼吸困難がそれほど激しくないものには小柴胡湯、便秘し、うわ言をいうようになったものには桃核承気湯、老人や虚弱者には真武湯、四逆湯などが用いられる。しかし、桃核承気湯や附子剤の使用は注意を要する。

 (6)肺結核
 肺結核には、柴胡剤、順気剤、駆瘀血剤、建中湯類、裏証Ⅰ、裏証Ⅱ、瀉心湯類、駆水剤などの薬方や桂枝麻黄各半湯、桂枝加黄耆湯、小青竜湯、桂姜棗草黄辛附湯、炙甘草湯、麻黄細辛附子湯などを選用する。
 一般に、初期で倦怠感があり、食欲のないものには小柴胡湯、胸痛の強いものには柴胡桂枝湯、盗汗が多く出て倦怠感が強いものには黄耆建中湯、喀血するものには三黄瀉心湯、黄連解毒湯が用いられる。

 (7)肋膜炎
 肋膜炎も結核菌によるものが多く、まったく症状を欠くものもあるが、多くは刺すよ乗な激しい胸痛より始まるものが多い。柴胡剤、裏証Ⅱなどの薬方や当帰芍薬散、小青竜湯、小建中湯、真武湯、人参湯、苓甘姜味辛夏仁湯などを選用する。
 一般に、小柴胡湯、柴胡桂枝湯が用いられるが、熱が高くなく、悪寒、倦怠感、下痢などのあるものには真武湯が用いられる。

 

2 循環器系疾患

 (1)心臓弁膜症
 心臓弁膜症は、弁膜の位置と閉鎖不全か狭窄かによって、種々の症状を現わす。重症では、狭心痛、浮腫、呼吸困難などを訴える。柴胡剤、駆瘀血剤、駆水剤などの薬方や半夏厚朴湯、小建中湯、六君子湯、防風通聖散、五積散、炙甘草湯などを選用する。
 一般に、不整脈を呈するものには炙甘草湯、動悸や息切れが強く貧血しているものには柴胡桂枝湯、連珠飲が用いられる。

 (2)心臓性喘息
 心臓性喘息は、しばしばショック状態となり死への恐怖を訴える。柴胡剤、駆水剤などの薬方や半夏厚朴湯、当帰芍薬散、十全大補湯、小建中湯、六君子湯、防風通聖散、五積散、炙甘草湯などを選用する。
 一般に、精神不安を解消させる目的で柴胡加竜骨牡蠣湯が用いられ、症状の軽いものには五積散、心下振水音を認め、めまいを訴えるものには苓桂朮甘湯が用いられる。

 (3)心臓神経症
 心臓神経症では、心悸亢進、呼吸困難、針で心臓部をチクチク刺すような胸痛、不安感などを訴える。順気剤、駆瘀血剤、駆水剤などの薬方や小建中湯、防風通聖散、炙甘草湯治どを選用する。
 一般に、咽から胸元にかけてつまったような感じがするものには半夏厚朴湯、興奮しやすく、ヘソ部で動悸を感じるものには柴胡加竜骨牡蠣湯、めまいを伴うものには苓桂朮甘湯が用いられる。

 (4)発作性頻脈症
 発作性頻脈症では、発作的に脈搏が多くなり、動悸や不安感を訴える。順気剤、駆瘀血剤、駆水剤などの薬方や麻杏甘石湯、小建中湯、防風通聖散、炙甘草湯などを選用する。
 一般に、胸脇苦満があり、便秘、腹部で動悸するものには柴胡加竜骨牡蠣湯、気がうっ滞し、不安焦躁にかられるものには半夏厚朴湯、脈の結代や不整脈があり、心悸亢進、動悸、息切れなどのあるものには炙甘草湯が用いられる。

 (5)動脈硬化症
 動脈硬化症には、柴胡剤、駆瘀血剤、瀉心湯類などの薬方や麦門冬湯、大青竜湯、小建中湯、真武湯、苓桂朮甘湯、苓桂味甘湯、防風通聖散、八味丸、炙甘草湯、白虎湯、白虎加人参湯などを選用する。
 一般に、のぼせて顔面充血があり、めまい、耳鳴り、不眠などのあるものには三黄瀉心湯、黄連解毒湯、神経質で胸脇苦満のあるものには柴胡加竜骨牡蠣湯、実証の肥満体質で腹部膨満、便秘のものには防風通聖散、老人などで夜間の排尿回数の多いものには八味丸が用いられる。

 (6)高血圧症
 高血圧症の治療は、血圧を下げることに主眼をおくのではなく、全身の調和をはきり自覚症状を好転させることを目標にする。柴胡剤、駆瘀血剤、瀉心湯類などの薬方や釣藤散、桂枝加朮附湯、桂枝加附子湯、大青竜湯、半夏白朮天麻湯、真武湯、苓桂朮甘湯、防風通聖散、八味丸などを選用する。
 一般に、胸脇苦満があり、便秘のものには大柴胡湯、神経症状の強いものには柴胡加竜骨牡蠣湯、実証の立満体質者には防風通聖散、夜間多尿で、下肢に乳腫のあるものには八味丸が用いられる。

 (7)低血圧症
 低血症では、倦怠感、肩こり、めまい、心悸亢進などを訴える。柴胡剤、裏証Ⅱなどの薬方や半夏厚朴湯、当帰芍薬散、小建中湯、半夏白朮天麻湯、苓桂朮甘湯、連珠飲、八味丸、麻黄細辛附子湯などを選用する。
 一般に、疲労しやすく、めまい、四肢冷感などのあるものには真武湯、胃腸機能が衰え、頭痛、めまいのあるものには半夏白朮天麻湯が用いられる。

 (8)動脈瘤
 動脈瘤は、初期にはほとんど異常を訴えないが、しだいに動脈瘤の生じている部分によって、呼吸困難、胸痛、嚥下困難、腹部膨満など種々の異常を訴えるようになる。駆瘀血剤の薬方や柴胡加竜骨牡蠣湯、苓桂甘棗湯、炙甘草湯などを選用する。
 一般に、胸脇苦満があり、のぼせ、めまい、心悸亢進、動悸などを訴えるものには柴胡加竜骨牡蠣湯、各種の瘀血症状が著明なものには桃核承気湯、桂枝茯苓丸、手足が冷え、頭痛、めまい、動悸などを訴え、下腹部の痛むものには当帰芍薬散が用いられる。


3 消化器系疾患

 (1)食道炎、食道狭窄、食道癌
 三者は、食道の痛みを訴えるものから嚥下困難、吐逆、通過障害を訴えるものまである。柴胡剤、順気剤などの薬方や桃核承気湯、半夏瀉心湯、小半夏加茯苓湯などを選用する。
 一般に、胸中に気がふかがって心中懊憹するものや、熱い餅などを食べたために熱傷をして起こった食道炎には梔子豉湯、梔子甘草豉湯、咽中炙肉感のあるものには半夏厚朴湯、咽喉の乾燥感、刺激感、咳嗽などのあるものには麦門冬湯が用いられる。

 (2)胃カタル(胃炎)
 胃カタルでは、食欲不振、心下部の膨満感、疼痛、吐き気などの症状を訴える。柴胡剤、表証、裏証Ⅰ、裏証Ⅱ、承気湯類、瀉心湯類などの薬方や大黄牡丹皮湯、桃核承気湯、小青竜湯、五苓散、猪苓湯、茯苓沢瀉湯、五積散、小半夏加茯苓湯などを選用する。
 一般に、平毒頑丈な人が暴飲暴食によって腹痛、嘔吐を起こしたものには大柴胡湯、平素から胃痛を訴え、胸脇苦満のあるものには柴胡桂枝湯、食欲不振で腹中雷鳴、心下痞硬のあるものには半夏瀉心湯、平素から胃が弱く、冷え症で食欲のないものには人参湯が用いられる。

 (3)胃アトニー症(胃筋虚弱症)
 胃アトニー症には、消化不良のほかに、胃部膨満感、圧迫感が強く、食物の胃内停滞や嘔吐を伴うものである。建中湯類、裏証1、裏証Ⅱ、瀉心湯類、駆水剤などの薬方や補中益気湯、半夏厚朴湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加芍薬大黄湯、小半夏加茯苓湯などを選用する。
 一般に、足が冷え、常習性頭痛やめまいのあるものには半夏白朮天麻湯、腹直筋が緊張し、肩こり、腹などを訴えるものには小建中湯、元気がなく、頭重、めまい、食後ねむ気をもよおすものには六君子湯、神経質で、胸やけ、胃痛を訴えるものには平胃散が用いられる。

 (4)胃下垂症
 胃下垂症では、胃の膨満感、圧迫感、胸やけ、全身倦怠感などを訴える。建中湯類、裏証Ⅰ、裏証Ⅱ、瀉心湯類、駆水剤などの薬方や加味逍遙散、補中益気湯、半夏厚朴湯、桂枝加芍薬大黄湯、小半夏加茯苓湯などを選用する。
 一般に、常習性の頭痛やめまいを訴得るものには半夏白朮天麻湯、四肢倦怠感、食欲不振、冷えなどを訴えるものには六君子湯が用いられる。

 (5)胃酸過多症および減酸症
 両者は、胸やけ、おくび、胃部の不快感、胃痛などを訴える。柴胡剤、建中湯類、裏証Ⅰ、裏証Ⅱ、瀉心湯類、駆水剤など英薬方や半夏厚朴湯、梔子豉湯、桂枝加附子湯、小青竜湯、五積散、小半夏加茯苓湯などを選用する。
 一般に、ヘソ部の動悸や疼痛を訴えるものには安中散、心下痞硬や胸やけ、おくびのあるものには生姜瀉心湯、冷え症で腹痛を訴えるが嘔吐、胸やけなどがないか、または弱いものひな小建中湯が用いられる。

 (6) 胃拡張症
 胃拡張症は、過食、過飲などによって胃の機能が弱って拡張したり、幽門部の狭窄によって起こる。軽症では何の異常も訴えないが、重症では口渇、胃痛、胃部圧重膨満感、胃内停水などを訴えるようになる。裏証Ⅰ、瀉心湯類、駆水剤などの薬方や補中益気湯、半夏厚朴湯、小建中湯、人参湯、五積散、小半夏加茯苓湯などを選用する。
 一般に、心下痞硬、口渇、嘔吐、胸やけなどのあるものには生姜瀉心湯、全身倦怠感、四肢厥冷、食欲不振などのあるものには六球子湯が用いられる。

 (7)胃痙攣
 胃痙攣は、胃神経の軽気で、発作時には胃や腹筋が板のように堅くこわばって激しく痛み、顔面も蒼白となる。柴胡剤、建中湯類などの薬方や甘麦大棗湯、呉茱萸湯、甘草湯、黄連湯、五積散、芍薬甘草湯などを選用する。
 一般に、激しい痛みを鎮痛、鎮静させる目的で甘草湯、芍薬甘草湯を頓服する。胸脇苦満、胸やけ、悪心、嘔吐があって腹痛の激しいものには柴胡桂枝湯、虚弱体質で疲労しやすく、手足が冷え、のぼせ、腹痛、動悸などのあるものには小建中湯、腹中に冷えを覚え、嘔吐、腹部膨満があり、腸の蠕動亢進と腹痛の激しいものには大建中湯が用いられる。

 (8)胃、十二指腸潰瘍
 両者は、初期にはきわめて軽度の苦痛しかないが、再発をくり返しているうちに愁訴が漸次増強し、強さも増し、持続日数も長くなる。痛みは食後すぐか、一~二時間後に始まり、一般に、二、三十分から一~二時間持続する。愁訴の中でもったもおもなものは疼痛で、悪心や嘔吐などを訴える。柴胡剤、駆瘀血剤、建中湯類、裏証Ⅰ、裏証Ⅱ、瀉心湯類などの薬方や半夏厚朴湯を選用する。
 一般に、腹筋が緊張し、痛みのあるものには柴胡桂枝湯、心下痞を訴得るものには半夏瀉心湯、吐血するものには三黄瀉心湯、黄連解毒湯、冷え症でヘソの動悸が亢進し、口に水が上ってきたり、胸やけなどのあるものには安中散が用いられる。

 (9)腸カタル(腸炎)
 腸カタルの主症状は、急性では水様性下痢であるが、慢性では腐敗便で、ともに悪臭のあるガスを放出することが多い。柴胡剤、表証、裏証Ⅰ、裏証Ⅱ、承気湯類、駆水剤などの薬方を選用する。
 一般に、心下部が痞え、腹鳴、下痢、嘔吐などのあるものには半夏瀉心湯、口渇が激しく水様性下痢のあるものには五苓散、下痢が長く続くがそれほど苦にならないものや大便の失禁するものには真武湯が用いられる。

 (10)虫垂炎
 虫垂炎は、急性では突発的な痛みで始まり、はじめは腹部全体が痛み、悪心、嘔吐を訴えるが、しだいに右下腹部に痛みが局在するようになる。慢性では体を動かしたときに食物通過に一致した軽い痛みや牽引痛を訴える。柴胡剤、駆瘀血剤、建中湯類、裏証Ⅱ、瀉心湯類などの薬方や桂枝加芍薬湯、桂枝加大黄湯、呉茱萸湯などを選用する。
 一般に、腹部全体が緊張して痛むものには柴胡桂枝湯、慢性で右下腹部に鈍痛と圧痛があるものには桂枝茯苓丸が用いられる。

 (11)腸管狭窄と腸閉塞症
 両者には、建中湯類、瀉心湯類などの薬方や真武湯、苓桂朮甘湯などを選用する。
 一般に、腹満、腹痛を訴え、腸の蠕動が亢進するものには小建中湯、腸の蠕動が腹壁をとおして観察できるものには大建中湯が用いられる。

 (12)腹膜炎
 腹膜炎では、悪心、嘔吐、腹満、腹痛、疲労倦怠感などを訴える。柴胡剤、建中湯類、裏証Ⅱなどの薬方や桂枝茯苓丸、桃核承気湯、桂枝加芍薬湯、分消湯、胃苓湯、桂姜棗草黄辛附湯などを選用する。
 一般に、腹壁が緊張、膨満、腹痛のあるものには小建中湯、腹壁が緊張、腹痛および圧痛のあるものには柴胡桂枝湯、疲労倦怠感、貧血、食欲不振のあるものには補中益気湯が用いられる。

 (13)腹水
 腹水には、柴胡剤、駆瘀血剤、麻黄剤、駆水剤などの薬方や大建中湯、真武湯、防已黄耆湯、桂姜棗草黄辛附湯などを選用する。
 一般に、口渇、尿利減少のあるものには五苓散、実証で全身浮腫のあるものには分消湯が用いられる。

 (14)肝炎
 肝炎の症状は、全身倦怠感、疲労感、食欲不振、嘔き気、便秘などを訴える。柴胡剤、駆水剤などの薬方や茵蔯蒿湯を繁用する。そのほか、梔子豉湯、小建中湯、人参湯、真武湯などを選用する。
 一般に、初期で咽が乾き、胸苦しく便秘するものには茵蔯蒿湯、胸苦しく心下部が痞え、食欲不振、嘔吐などのあるものには大柴胡湯、小柴胡湯、口渇と尿不利を目標に茵蔯五苓散、またしばしば茵蔯蒿湯、茵蔯五苓散、五苓散などは小柴胡湯または大柴胡湯と合方されて用いられる。

 (15)肝硬変
 肝硬変は、食欲不振、体重減少、悪心、嘔吐、下痢または便秘、腹部疼痛、疲労倦怠感、腹水、浮腫、黄疸などを訴える。柴胡剤、駆水剤などの薬方や大青竜湯、竜胆瀉肝湯、桂姜棗草黄辛附湯を選用する。
 一般に、初期には柴苓湯、腹水がたまり腹部全体が硬く張っているものには分消湯と小柴胡湯の合方が用いられる。

 (16)胆嚢炎
 慢性胆嚢炎は、自覚症状も軽く、右季肋部の鈍痛を訴えるだけであるが、急性では悪寒戦慄を伴う高熱と右季肋部の激痛で始まり、悪心、嘔吐、食欲不振、発黄などを訴える。柴胡剤、建中湯類などの薬方や茵蔯五苓散、茵蔯蒿湯、芍薬甘草湯などを選用する。
 一般に、胸脇苦満があり、食欲不振、嘔吐などのあるものには小柴胡湯、痛みの激しいものには柴胡桂枝湯が用いられる。

 (17)胆石症
 発作の場合は、しばしば発熱や悪寒戦慄を伴い、また、疼痛が強く、発作後には嘔吐、圧痛があり、黄疸となることもある。柴胡剤、建中湯類、瀉心湯類などの薬方や柴胡桂枝湯加牡蠣茴香、呉茱萸湯、甘草湯、芍薬甘草湯などを選用する。
 一般に、実証で疼痛、悪心、嘔吐、黄疸などのあるものには大柴胡湯、やや虚証で疼痛が激しく、食欲不振のものには柴胡桂枝湯が用いられる。また、胆石発作の疼痛を緩解する目的で甘草湯、芍薬甘草湯を頓服する。

 (18)黄疸
 黄疸は、肝および胆嚢の疾患において、しばしば現われ、皮膚、粘膜、組織、体液の黄染、食欲不振、全身倦怠感などを呈する。柴胡剤の薬方や茵蔯五苓散、茵蔯蒿湯などを繁用する。そのほか、梔子生姜豉湯、小建中湯、呉茱萸湯、半夏瀉心湯、生姜瀉心湯などを選用する。
 一般に、口渇と尿利減少、便秘、上腹部の膨満感のあるものには茵蔯蒿湯、胸脇苦満、発熱、嘔吐、食欲不振、便秘のあるものには大柴胡湯、虚弱体質者には小建中湯が用いられる。

 

4 泌尿器系疾患

 (1)腎炎、ネフローゼ
 急性腎炎の症状は、軽重さまざまであるが、浮腫、血尿、たんぱく尿、血圧亢進なとを訴える場合が多い。慢性の多くはたんぱく尿、血尿がみられ、高血圧となる。尿量は浮腫のあるときは減少す識が、腎機能障害が進行して代償不全となると、強制多尿の状態となる。ネフローゼでは乏尿ないし無尿を特徴とし、たんぱく尿、血尿がみられ、血圧亢進、肺浮腫などが現われ、悪心、嘔吐、筋脱力、昏睡などの尿毒擦状を起こす。柴胡剤、駆瘀血剤、麻黄剤、駆水剤などの薬方や桂枝加竜骨牡蠣湯、半夏厚朴湯、四君子湯、六君子湯、真武湯、附子湯、人参湯、八味丸、茵蔯蒿湯、防已黄耆湯、防風通聖散、桂姜棗草黄辛附湯などを選用する。
 一般に、口渇、尿利減少、浮腫などのあるものには五苓散、発熱、食欲不振、胸脇苦満のあるものには小柴胡湯、妊娠中毒症で浮腫、たんぱく尿などのあるものには当帰芍薬散、実証で浮腫が著明なものには分消湯が用いられる。

 

 (2)腎盂炎
 腎盂炎は、腎臓部の疼痛と悪寒戦慄を伴い、頻尿と排尿痛などを呈する。柴胡剤、駆瘀血剤などの薬方や、五苓散、猪苓湯、八味丸、竜胆瀉肝湯などを選用する。
 一般に、尿意頻数、排尿痛、口渇のあるものには猪苓湯、小便渋通、滞下、膿尿のあるものには竜胆瀉肝湯、疼痛が激しく、往来寒熱、悪心、嘔吐などのあるものには柴胡桂枝湯が用いられる。なお柴胡剤、駆瘀血剤、五苓散、猪苓湯、竜胆瀉肝湯などは、しばしばたがいに合方して使用される。

 

 (3)萎縮腎
 萎縮腎は、腎臓の組織が破壊されて、腎全体が萎縮する病気で、頭痛、肩こり、耳菌り、めまい、浮腫、腰痛などを訴える。柴胡剤の薬方や桃核承気湯、三黄瀉心湯、八味丸、炙甘草湯などを選用する。
 一般に、胸脇苦満、動悸、息切れなどのあるものには柴胡加竜骨牡蠣湯、脈の結代や浮腫がでて息苦しいものには炙甘草湯、頭痛、肩こり、便秘、小腹急結のあるものには桃核承気湯、便秘、のぼせ、めまい、不眠のあるものには三黄瀉心湯が用いられる。

 

 (4)尿毒症
 尿毒症は、体重減少、疲労感の増強、貧血の進行、食欲不振、悪心、嘔吐などを訴える。麻黄剤、裏証Ⅱ、駆水剤などの薬方や大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、桃核承気湯、当帰芍薬散、呉茱萸湯、大承気湯、防風通聖散、防已黄耆湯、八味丸、桂姜棗草黄辛附湯、白虎加桂枝湯などを選用する。
 一般に、胃腸が丈夫で、倦怠感、頭痛、めまい、尿利異常のあるものには八味丸、頭痛、めまい、悪心、嘔吐などのあるものには茵蔯五苓散、嘔吐、下痢、筋肉の痙攣、手足の冷えなどのあるものには真武湯が用いられる。

 

 (5)膀胱炎
 膀胱炎は、発熱、頻尿、排尿痛、残尿感などを訴える。排尿時、膀胱に疼痛を訴え、少量の尿が灼熱感をもって排泄され、疼痛は尿道方向に放散する。柴胡剤、駆瘀血剤、駆水剤などの薬方や半夏厚朴湯、八味丸、竜胆瀉肝湯、芍薬甘草湯などを選用する。
 一般に、口渇があり、尿意をしばしばもよおすものには五苓散、排尿時に痛み血尿の出るものには猪苓湯、炎症が強く尿が出ししぶり、痛みの強いものには竜胆瀉肝湯が用いられる。

 

 (6)腎臓結核症
 腎臓結核症は、腎臓部の自発痛、圧痛、排尿痛、頻尿、血尿などあ責、ときに激痛を訴える。駆瘀血剤の薬方や当帰建中湯、猪苓湯、八味丸などを選用する。
 一般に、排尿痛、血尿などのあるものには猪苓湯、尿意が頻数で排尿後に不快感のあるものには八味丸が用いられる。また、しばし猪苓湯と四物湯、桂枝茯苓丸が合方される。


 (7)腎臓結石症、膀胱結石症
 両者は、自覚症状を欠くものから疝痛を訴えるものまであり、悪心、嘔吐、疼痛、圧痛、頻尿または無尿、血尿などを訴える。柴胡剤、駆瘀血剤、建中湯類などの薬方や猪苓湯、防風通聖散、八味丸、竜胆瀉肝湯、芍薬甘草湯などを選用する。
 一般に、痛みの激しいものに頓服的に芍薬甘草湯が用いられる。排尿痛や血尿のあるものには猪苓湯、下腹部が膨満し、抵抗と圧痛のあるものには桂枝茯苓丸、桃核承気湯、腹痛が激しく、腸の蠕動が腹壁をとおしてみえるものには大建中湯が用いられる。


 (8)前立腺肥大症
 前立腺肥大症は、排尿時の不快感、排尿困難で始まり、残尿感や尿閉を訴えるようになる。柴胡剤、駆瘀血剤、駆水剤などの薬方や半夏厚朴湯、八味丸、竜胆瀉肝湯、芍薬甘草湯などを選用する。
 一般に、疲労倦怠感があり、胃腸が丈夫で、口渇、排尿困難、残尿感のあるものには八味丸、疼痛が激しく、排尿困難、便秘のあるものには大黄牡丹皮湯が用いられる。


 

5 新陳代謝と内分泌疾患

 (1)貧血症
 貧血は、造血能力の低下、赤血球の破壊が多い、出血が多いなどによって起こり、めまい、動悸、息切れ、耳鳴り、肩こり、手足の冷えなどを訴える。駆瘀血剤、裏証Ⅱ、瀉心湯類などの薬方や桂枝加竜骨牡蠣湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、四君子湯、炙甘草湯などを選用する。
 一般に、貧血の状があって、皮膚乾燥し、ヘソ上に動悸をふれ、胃腸の弱くないものには四物湯、胃腸が虚弱で食欲不振、嘔吐、腹鳴、下痢、四肢倦怠感などのあるものには四君子湯、出血が止まらないで貧血し、のぼせるものには三黄瀉心湯、黄連解毒湯、下部出血があり、貧血して冷えるものには芎帰膠艾湯が用いられる。

 (2)紫斑病
 紫斑病は、皮膚や粘膜などの出血斑、疼痛、全身倦怠感などを訴える。駆瘀血剤、建中湯類、裏証Ⅱなどの薬方や柴胡桂枝湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加附子湯、越婢加朮湯、大青竜湯、八味丸などを選用する。
 一般に、往来寒熱、悪心、嘔吐、疼痛のあるものには柴胡桂枝湯、疲労倦怠感が強く、出血で貧血するものには小建中湯、下部出血があり、貧血して冷えるものには芎帰膠艾湯が用いられる。

 (3)肥胖症(脂肪過多症)
 肥胖症は、疲れやすく、息切れ、動悸などを訴える。柴胡剤、駆瘀血剤、承気湯類、解毒剤などの薬方を選用する。
 一般に、腹部が膨満して便秘するものには防風通聖散、胸脇苦満が強く、肩こり、めまいなどがあり、便秘するものには大柴胡湯、腹部膨満が高度で、抵抗と弾力があって便秘のはなはだしいものには大承気湯が用いられる。またしばしば柴胡剤と駆瘀血剤が合方される。

 (4)脚気
 脚気は、足がだるく、麻痺感、動悸、息切れ、浮腫などの症状を訴える。大柴胡湯、当帰芍薬散、桂枝加苓朮附湯、桂枝芍薬知母湯、越婢加朮湯、小建中湯、黄耆建中湯、六君子湯、呉茱萸湯、大承気湯、防風通聖散、八味丸、五積散、小半夏加茯苓湯などを選用する。
 一般に、足に麻痺感があり歩行不能のものや老人には八味丸、胸脇苦満があり、食欲がなく、便秘するものには大柴胡湯、実証体質者で足がだるく、浮腫のあるものには防風通聖散が用いられる。

 (5)糖尿病
 糖尿病はインシュリンの分泌不足によって起こるもので、口渇、尿量の増加、疲労倦怠感などを訴える。柴胡剤、駆瘀血剤、下焦の疾患などの薬方や麦門冬湯、六君子湯、調胃承気湯、五苓散、猪苓湯、防風通聖散、炙甘草湯、白虎加桂枝湯、白虎加人参湯などを選用する。
 一般に、口渇、多尿、疲労倦怠感、胃腸障害のないものには八味丸、口渇、尿利減少には五苓散、実証で赤ら顔、口渇、便秘のものには防風通聖散が用いられる。

 (6)バセドウ氏病
 バセドウ氏病は、甲状腺の機能亢進によって起こるもので、甲状腺の腫大、心悸亢進、眼球突出、手指の振顫、神経衰弱治どを訴える。柴胡剤、駆瘀血剤などの薬方や半夏厚朴湯、甘草瀉心湯、苓桂朮甘湯、六味丸、酸棗仁湯、炙甘草湯、白虎加桂枝湯などを選用する。
 一般に、脈の結代、心悸亢進のあるものには炙甘草湯、動悸、不安感、咽の異常感には半夏厚朴湯、胸脇苦満があり、興奮して動悸、不眠のあるものには大柴胡湯が用いられる。


6 運動器系疾患

 (1)関辺炎
その原因によって種々の別があるが、関節の腫脹、疼痛、発赤、運動障害などを訴える。柴胡剤、駆瘀血剤、表証、麻黄剤、裏証Ⅱなどの薬方や小建中湯、黄耆建中湯、防已黄耆湯、防風通聖散、五積散、白虎加桂枝湯、麻黄細辛附子湯などを選用する。
 一般に、初期で関節浮腫を起こしたものには越婢加朮湯、実証の肥満体質で便秘するものには防風通聖散、いわゆる水ぶとりのものには防已黄耆湯が用いられる。

 (2)リウマチ
 リウマチは、関節、筋肉の炎症や変性、新陳代謝障害、ホルモン障害などによって痛みをきたす症状群を指すが、湿度が高くなると疼痛が激しくなる傾向がある。柴胡剤、駆瘀血剤、表証、麻黄剤、裏証Ⅱなどの薬方や防已黄耆湯を選用する。
 一般に、初期で痛みの軽いものには葛根湯、少し慢性となり、身体が冷えたために痛みの激しくなるものには麻杏薏甘湯、痛みが激しく、赤く腫れて患部に手や衣服がふれても痛みがひどくなるものには甘草附子湯が用いられる。また、表証の薬方はしばしば柴胡剤や駆瘀血剤などの薬方と合方される。


7 神経系疾患

 (1)脳溢血、脳軟化症
 脳溢血は、脳の小さい動物英一部が破れて出血するために起こり、脳軟化症は、動脈の一部がふさがったために起こるものである。頭痛、頭重、めまい、耳鳴り、言語障害、精神の興奮または鈍麻、半身の知覚麻痺と運動障害などを訴える。柴胡剤、駆瘀血剤、瀉心湯類などの薬方や釣藤散、麦門冬湯、桂枝加苓朮附湯、苓桂朮甘湯、防風通聖散、八味丸、白虎湯などを選用する。
 一般に、脳卒中発作直後の精神の興奮をしずめ、出血を止め、充血を去るためには三黄瀉心湯、黄連解毒湯、胸脇苦満があり、精神不安や動悸、めまいのあるものには柴胡加竜骨牡蠣湯、実証体質者で半身不随となり、便秘、のぼせがあるものには防風通聖散が用いられる。

 (2)神経症(ノイローゼ)
 神経症は、心悸亢進、めまい、精神不安、胸内苦悶感、胸中痞塞感、手足の麻痺感、不眠などの気の症状を訴える(前出、気血水の項参照)。柴胡剤、順気剤、駆瘀血剤、建中湯類、裏証Ⅰ、瀉心湯類、駆水剤などの薬方や人参湯、防風通聖散、八味丸、酸棗仁湯などを選用する。
 一般に、気がうっ滞し、咽中痞塞感のあるものには半夏厚朴湯、気が動揺して、精神不安や胸中苦悶の状のあるものには柴胡加竜骨牡蠣湯、胃腸が虚弱で、頭痛、めまい、肩こりのあるものに半夏白朮天麻湯が用いられる。

 (3)ヒステリー
 ヒステリーは、麻痺感、動悸、手足の痙攣や疼痛などの知覚障害や運動障害を訴える。柴胡剤、順気剤、駆瘀血剤、瀉心湯湯などの薬方や小建中湯、人参湯、苓桂朮甘湯、苓桂甘棗湯、猪苓湯、八味丸、酸棗仁湯、芍薬甘草湯などを選用する。
 一般に、咽中痞塞感のあるものには半夏厚朴湯、痙攣発作を起こしたり、心ぼそがって部屋の隅で泣いているようなものには甘麦大棗湯、のぼせて、精神不安、便秘のあるものには三黄瀉心湯、神経過敏で、興奮しやすく、胸脇苦満、動悸、便秘のあるものには柴胡加竜骨牡蠣湯が用いられる。

  (4)神経痛
 神経痛には坐骨神経痛、三叉神経痛、肋間神経痛などがあり、疼痛が神経の走行に一致して発作的に起こるものである。柴胡剤、駆瘀血剤、表証、麻黄剤、建中湯類、裏証Ⅱ、駆水剤、解毒剤などの薬方や桂枝加竜骨牡蠣湯、三黄瀉心湯、八味丸、桂姜棗草黄辛附湯、五積散、芍薬甘草湯、麻黄細辛附子湯などを選用する。
 一般に、三叉神経痛の初期には葛根湯、坐骨神経痛で冷えが強く、腹から下肢にかけて痛むものには当帰四逆湯、坐骨神経痛で腰以下に力がなく、口渇、尿利異常のあるものには、八味丸、慢性的に足、腰、背などが冷えて痛むものには五積散が用いられる。

 (5)精神分裂症
 精神分裂症は、頭重、疲れ、不眠などを訴えるものから、狂暴性をおび、また、妄想にひたり、ぼんやりするも英もある。桂枝加竜骨牡蠣湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、桃核承気湯、小承気湯、大承気湯、黄連解毒湯、三黄瀉心湯などを選用する。
 一般に、

 

2024年6月3日月曜日

漢方病名治療

 感冒・インフルエンザ

 経過が長引いたり、度々再発を繰り返すようであれば、体質改善も考える。

  表証・麻黄剤:麻黄湯・葛根湯・葛根湯加川芎辛夷・桂枝湯・桂枝二麻黄一湯・桂枝麻黄各半湯・桂枝二越婢一湯・麻杏甘石湯・小青龍湯・桂枝去桂加苓朮湯・ 升麻葛根湯・麻黄細辛附子湯・桂枝加朮附湯

  柴胡剤:柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・柴苓湯・柴陥湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯・加味逍遙散・補中益気湯

  瀉心湯類:半夏瀉心湯・黄連湯

  順気剤:半夏厚朴湯・麦門冬湯・香蘇散

  裏証Ⅰ:平胃散・人参湯

  裏証Ⅱ:

                 白虎加人参湯

                 五苓散・

                 防已黄耆湯

                 八味丸

                 麻黄附子細辛湯

                 当帰四逆加呉茱萸湯

                 呉茱萸湯

                 桃核承気湯・十全大補湯

                  参蘇飲

                 華蓋散

                 五積散

               竹筎温胆湯

 

気管支炎(気管支カタル)

 気管支の炎症と咳嗽(喀痰を伴うもの)を伴うものである。

  表証・麻黄剤:麻黄湯・桂枝麻黄各半湯・桂枝二越婢一湯

         神秘湯・麻杏甘石湯・小青龍湯・苓甘姜味辛夏仁湯・麻黄附子細辛湯・

                         桂姜棗草黄辛附湯 

  柴胡剤:大柴胡湯・四逆散・小柴胡湯・柴朴湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

  順気剤:半夏厚朴湯・麦門冬湯・竹葉石膏湯

  裏証Ⅰ:六君子湯・

                 八味丸

                 滋陰降下湯

                 清肺湯

                 滋陰至宝湯

                 炙甘草湯

         小建中湯

 

気管支喘息

 呼吸延長を伴い、特有のゼイゼイ鳴る発作性呼吸困難を起こす一症状である。

  表証・麻黄剤:麻黄湯・神秘湯・小青龍湯・越婢加半夏湯・麻杏甘石湯・小青龍湯・桂枝加厚朴杏仁湯・麻黄附子細辛湯・麻黄附子甘草湯

  柴胡剤:大柴胡湯・大柴胡湯合半夏厚朴湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・柴朴湯・四逆散・柴胡桂枝湯・補中益気湯

  解毒剤:防風通聖散

   順気剤:半夏厚朴湯・麦門冬湯・

  裏証Ⅱ:

  瀉心湯類:

                 桃核承気湯・四物湯

                 小建中湯

                 大承気湯

            八味地黄丸

                  茯苓杏仁甘草湯・苓甘姜味辛夏仁湯

                  木防已湯

                 五虎湯

                 甘草麻黄湯

                 芍薬甘草湯 

 

急性・慢性胃炎・胃カタ

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・柴苓湯・四逆散・柴胡桂枝湯

  瀉心湯類:黄連解毒湯・半夏瀉心湯・生姜瀉心湯・甘草瀉心湯・黄連湯

  裏証Ⅰ:平胃散・胃苓湯・安中散・六君子湯・四君子湯・呉茱萸湯・人参湯・桂枝人参湯・半夏白朮天麻湯

  裏証Ⅱ:

  表証:

                 小青竜湯

                 大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・

  駆水剤:五苓散・茯苓飲・茯苓飲加半夏厚朴湯・茯苓沢瀉湯・猪苓湯・

  承気湯類:大承気湯・調胃承気湯

                 半夏厚朴湯

                 桂枝加芍薬大黄湯・小建中湯

                 五積散

                 小半夏加茯苓湯

                 旋覆花代赭石湯

                 良枳湯

                 黄苓湯

                 葛根黄連黄苓湯

                 備急円

                 瓜蒂散

胃・十二指腸潰瘍

 原因には、食事の不摂生や精神の緊張、過労などがあげられる。症状は、疼痛(みぞおちの痛み)が最も顕著であるが、他に過酸症状、悪心、嘔吐、出血傾向(吐血、下血)などがみられる。

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯・半夏瀉心湯・生姜瀉心湯・

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・四逆散・柴胡桂枝湯・加味逍遙散

  駆瘀血剤:桃核承気湯・温清飲・十全大補湯

  建中湯類:桂枝加芍薬大黄湯・

  裏証Ⅰ:安中散・六君子湯・四君子湯・人参湯

  裏証Ⅱ

                 茯苓沢瀉湯

                 小建中湯

                 甘草乾姜湯

                 半夏厚朴湯

                 芍薬甘草湯

 

胃下垂・胃アトニー(胃筋虚弱症)

 胃アトニー出は、胃下垂を伴う場合が多い。胃部の膨満感、圧迫感、食べ物の胃内停滞や嘔吐、胸焼け、全身倦怠感なとの症状を訴える。

  裏証Ⅰ:安中散・平胃散・六球子湯・呉茱萸湯・加味平胃散・半夏白朮天麻湯

  裏証Ⅱ:人参湯・桂枝人参湯・呉茱萸湯・乾姜人参半夏丸・真武湯

  瀉心湯類:半夏瀉心湯・甘草瀉心湯・

  柴胡剤:小柴胡湯・柴胡桂枝湯・加味逍遙散・補中益気湯

  建中湯類:小建中湯・大建中湯・桂枝加芍薬湯・桂枝加芍薬大黄湯・

                 半夏厚朴湯

                 旋覆代赭湯

                 小半夏加茯苓湯

                 養脾湯

                 堅中湯

                 丁香茯苓湯

                 化食養脾湯

                 良枳湯

 

 急性・慢性腸炎・腸カタル(腸炎

 急性では、水様性下痢、はきけ、嘔阻、腹痛などがあり、慢性では、下痢(腐敗便)、腹痛、腹部不快感などを訴える。

  表証:葛根湯・

  柴胡剤:大柴胡湯・柴苓湯・小柴胡湯・柴胡桂枝湯・

  建中湯類:桂枝加芍薬湯・桂枝加芍薬大黄湯・小建中湯

  駆水剤:五苓散・胃苓湯・

  瀉心湯類:半夏瀉心湯・生姜瀉心湯・甘草瀉心湯・

  裏証Ⅱ:人参湯・桂枝人参湯・真武湯

  裏証Ⅰ:平胃散

  承気湯類:

                 五積散

                  小半夏加茯苓湯

 

過敏性大腸炎

  桂枝加芍薬大黄湯・桂枝加芍薬湯・大建中湯

  半夏瀉心湯

  安中散・四君子湯・

  桂枝人参湯・人参湯・真武湯・四逆湯

 

 

 

本態性高血圧・高血圧随伴症状

 血圧を下げることを目標にするのではなく、動機、頭痛、不眠などの高血圧随伴症状を改善することにより、全身のバランスを整え、その結果として血圧を正常に戻そうとするものである。

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯

  解毒剤:防風通聖散

  礎瘀血剤:大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・七物降下湯・温清飲

  下焦の疾患:八味地黄丸

                 真武湯

  表証:桂枝加龍骨牡蛎湯・桂枝加朮湯・桂枝加附子湯

  麻黄剤:大青竜湯

                 半夏白朮天麻湯・

                 苓桂朮甘湯

         通導散

                 釣藤散 


低血圧

 日常生活に支障がなければ特別の手当を必要としないが、倦怠感、肩こり、めまい、心悸亢進、四肢の冷感などを訴える。神経質な人が多く、胃腸系の愁訴もみられる。

  駆瘀血剤:当帰芍薬散・十全大補湯

     裏証 :半夏白朮天麻湯・安中散 

  裏証Ⅱ:真武湯

  柴胡剤:補中益気湯

                 苓桂朮甘湯・連珠飲

                 八味丸

                 半夏厚朴湯

                 小建中湯

                 麻黄附子細辛湯

 

 

動脈硬化症

 一旦硬化した動脈も適切な治療を行えば、ある程度の改善がみられる。 

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

  解毒剤:防風通聖散

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  順気剤:桂枝加龍骨牡蛎湯・釣藤散・麦門冬湯

                 大青竜湯

                 小建中湯

                  真武湯

                  苓桂朮甘湯・苓桂味甘湯

                 八味地黄丸

                 炙甘草湯

                 白虎加人参湯・白虎湯

 

心臓神経症

 心臓に器質的将害はないのに、心悸亢進、前胸部痛(針で心臓部をチクチク刺すような胸痛)、呼吸困難、不安感などを訴える。

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・柴胡桂枝乾姜湯 

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

  駆水剤:苓桂朮甘湯・苓桂甘棗湯

  順気剤:半夏厚朴湯・桂枝加龍骨牡蛎湯

  駆瘀血剤:当帰芍薬散・加味逍遙散

                 小建中湯

                 防風通聖散・

                 炙甘草湯

                 木防已湯

 

 

脳卒中(脳紀中後遺症)

 脳の動脈の急激な血行障害によって、意識障害と神経系の脱落症状(運動障害、言語障害など)が起こる。

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

   解毒剤:防風通聖散

  駆瘀血剤:消核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  表証:桂枝加龍骨牡蛎湯・桂枝加朮附湯

                 八味丸

                 麦門冬湯

 

狂心症・心筋梗塞

                 木防已湯

                 小陥胸湯

                 括蔞薤白白酒湯

                 増損木防已湯

                 苓桂甘棗湯・茯苓杏仁甘草湯

                 桂枝人参湯

                 当帰湯

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更年期障害・血の道症

 更年期障害は、卵巣の機能が衰え、萎縮したために、他の内分泌器との調和破れて起こるものである。血の道症はさらに範囲が広く、特に器質的病約を認められなくても起こり、症状が全て精神、神経症状であるのが特徴である。

  瀉心湯湯:三黄瀉心湯・甘草瀉心湯・黄連解毒湯

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・加味逍遙散・温経湯・四物湯・温清飲

  柴胡剤:柴胡加龍骨牡蛎湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

  順気剤:甘麦大棗湯・桂枝加龍骨牡蛎湯・半夏厚朴湯

                 六君子湯

                 苓桂朮甘湯

                 八味丸

                 五積散

                 帰脾湯

                 通導散

                  女神散

                  抑肝散加陳皮半夏

 

冷え性

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・加味逍遙散・四物湯・温経湯・十全大補湯

  裏証Ⅱ:人参湯・真武湯・四逆湯・茯苓四逆湯

  裏証Ⅰ:安中散・呉茱萸湯・六君子湯・半夏白朮天麻湯

                 八味丸

                 苓姜朮甘湯

                 五積散

                 当帰四逆加呉茱萸生姜湯

                 人参養栄湯・

 

不妊症

  駆瘀血剤:大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・加味逍遙散・四物湯・温経湯・十全大補湯

                 竜胆瀉肝湯

                 折衝飲

                 薏苡附子敗醤散

                 当帰建中湯

                 平胃散・

 

月経不順・月経異常(無・代償・過少・稀発・早期・頻発・過多月経・月経困難)

  駆瘀血剤:大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・加味逍遙散・

                  四物湯・温経湯・温清飲

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

  柴胡剤:大柴胡湯・加味逍遙散・

  建中湯類:

  順気剤:半夏厚朴湯・香蘇散

                 真武湯

                 苓桂朮甘湯・苓桂味甘湯

                 五積散 

                 防已黄耆湯

                 芎帰膠艾湯

                 芍薬甘草湯

                 薏苡附子敗醤散

                  腸癰湯

                 折衝飲

 

月経困難症  

  大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・加味逍遙散・

  温清飲

  五積散

  温経湯




習慣性流産

  桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  折衝飲・温経湯・芎帰膠艾湯

 

 

妊娠腎

  駆瘀血剤:当帰芍薬散・七物降下湯

  駆水剤:五苓散・猪苓湯・

                 防已黄耆湯

  麻黄剤:

                 小柴胡湯・小柴胡湯合五苓散・小柴胡湯合当帰芍薬散

                 半夏厚朴湯

                 八味地黄丸

 

妊娠悪阻(つわり)・妊娠中毒・

  瀉心湯湯:三黄瀉心湯・半夏瀉心湯

                 半夏厚朴湯・茯苓飲合半夏厚朴湯

                 人参湯・乾姜人参半夏丸・甘草乾姜湯

                 当帰芍薬散

                 六君子湯・呉茱萸湯

                 五苓散・

                 桂枝湯

                 小半夏加茯苓湯

 

子宮内膜炎

 下腹部の不快感を訴え、分泌物が多く、黄白色、海様又は、血液を混じた白帯下があり時には悪臭を放ち、かゆみを訴えるものである。

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・大黄牡丹皮湯

  建中湯類:

  下焦の疾患:竜胆瀉肝湯

                 人参湯・

                 猪苓湯

                 苓姜朮甘湯

                 五積散

 

テーラー症候群

  大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  腸癰湯

  芎帰膠艾湯

  薏苡附子敗醤散

 

尿毒症

  表証・麻黄剤:桂姜棗草黄辛附湯

  裏証Ⅱ:

  駆水剤:茵蔯五苓散

                 大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯

                 桃核承気湯・当帰芍薬散

                 呉茱萸湯

                 大承気湯

                  防風通聖散・防已黄耆湯

                 八味地黄丸・午車腎気丸

                 白虎加桂枝湯

 

尿道炎・膀胱炎

 頻尿、排尿痛、残尿感、尿混濁、膿尿あるいは血膿尿などを訴える。

  下焦の疾患:竜胆瀉肝湯・八味地黄丸・

  駆瘀血剤:大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・当帰芍薬散・加味逍遙散

  駆水剤:五苓散・猪苓湯・五淋散・猪苓湯合四物湯

  柴胡剤:

                 半夏瀉心湯

              小青竜湯

                 清心蓮子飲

                 芍薬甘草湯


尿路結石(尿管結石)・腎臓結石・膀胱結石

 自覚症状を欠くものから、疝痛を訴えるものまであり、悪心、嘔吐、疼痛、圧痛、頻尿又は無尿、血尿などを訴える。再発する可能性が高く、体質改善の必要がある。

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・柴胡桂枝乾姜湯

  駆瘀血剤:大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  駆水剤:猪苓湯・

  建中湯類:大建中湯

                 防風通聖散・

                 八味地黄丸・竜胆瀉肝湯

                 大黄附子湯

                 芍薬甘草湯

 

尿路不定愁訴

  竜胆瀉肝湯

  桃核承気湯・桂枝茯苓丸・

  白虎加人参湯

  五苓散・猪苓湯・苓姜朮甘湯・五淋散・猪苓湯合四物湯

  八味地黄丸・午車腎気丸・六味丸

 

前立腺症(前立腺肥大症)

 排尿時の不快感、排尿困難で始まり、残尿感や尿閉を訴えるようになる。

  駆瘀血剤:桂枝茯苓丸・大黄附子湯湯

  駆水剤:猪苓湯・

  下焦の疾患:八味地黄丸・午車腎気丸・竜胆瀉肝湯

  柴胡剤:柴胡加龍骨牡蛎湯・

                 半夏厚朴湯

                 芍薬甘草湯

 

老人性白内障:白内障

                 大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・十味敗毒湯

                 八味地黄丸・午車腎気丸・六味丸

                 人参湯・

                 当帰芍薬散

                 越婢加朮湯

                 大承気湯

                 三黄瀉心湯・

                  苓桂朮甘湯・苓姜朮甘湯

                 防風通聖散

                 葛根湯・ 


仮性近視

  大柴胡湯・小柴胡湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

  五苓散・苓桂朮甘湯

  小建中湯

 

急性・慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

  表証:葛根湯・葛根湯加川芎辛夷・麻黄湯

  柴胡剤:大柴胡湯・小柴胡湯・四逆散・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯・柴胡清肝散・十味敗毒湯・荊芥連翹湯

  駆瘀血剤:桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・十全大補湯

                 防風通聖散

                 釣藤散・麦門冬湯

                    半夏白朮天麻湯・ 



急性・慢性鼻炎・肥厚性鼻炎

  表証:麻黄湯・葛根湯・葛根湯加川芎辛夷

  麻黄剤:小青竜湯・

  柴胡剤:四逆散・十味敗毒湯・小柴胡湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯・柴胡清肝湯
                 辛夷清肺湯

  駆瘀血剤:荊芥連翹湯・十全大補湯

                 麻黄附子細辛湯

                 麦門冬湯

 

鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)

  葛根湯・

  小青竜湯

  柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

  麦門冬湯

  麻黄附子細辛湯

 

メニエル症候群

  五苓散 ・沢瀉湯・苓桂朮甘湯

  半夏白朮天麻湯

  呉茱萸湯

  真武湯

 

慢性中耳炎(反復性中耳炎)

  表証・麻黄剤:葛根湯・桂枝加黄耆湯

  柴胡剤:大柴胡湯・小柴胡湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯・十味敗毒湯・柴胡清肝湯

  駆瘀血剤:大黄牡丹皮湯・荊芥連翹湯

                 黄耆建中湯

                 三黄瀉心湯・

                 苓桂朮甘湯

                 防風通聖散・

                 伯州散

                 麻黄附子細辛湯


咽頭神経症

  柴胡加龍骨牡蛎湯・加味逍遙散・

  半夏厚朴湯

  桂枝加龍骨牡蛎湯・

 

扁桃炎・扁桃周囲炎・喉頭炎

  表証・麻黄剤:葛根湯・桂枝麻黄各半湯・桂枝二越婢一湯

  柴胡剤:大柴胡湯・小柴胡湯・小柴胡湯加桔梗石膏・柴胡清肝湯・

                 半夏厚朴湯・麦門冬湯

                 荊芥連翹湯

                 桔梗湯

                 甘草湯

                 麻黄附子細辛湯

 

 

口内炎

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯・半夏瀉心湯・甘草瀉心湯

  茵蔯蒿湯・

  調胃承気湯

  温清飲・四物湯

  甘草湯

  柴胡清肝湯・

  黄連阿膠湯

  葛根黄連黄芩湯

  涼隔散


慢性肝炎・肝疾患

 全身倦怠感、疲労感、食欲不振、吐き気、便秘、右上腹部不快感(特に肝部の圧迫感)などを訴える。

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・四逆散・小柴胡湯・柴苓湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯・補中益気湯・加味逍遙散

                 十全大補湯

                 茵蔯蒿湯・茵蔯五苓散・小柴胡湯合茵蔯蒿湯

                 人参湯・真武湯

                 梔子豉湯

                 小建中湯

 

胆嚢炎・胆石症

 腹痛、横断、発熱及び悪心、嘔阻などが主症状で、特に背部放散性の上腹部の発作性激痛は、胆石仙痛として特徴的である。再発する可能性が高く、体質改善の必要がある。

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・四逆散・小柴胡湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

                 良枳湯

                 解労散

     建中湯類:

                 茵蔯蒿湯・茵蔯五苓散

  瀉心湯類:

                 呉茱萸湯

                 甘草湯・芍薬甘草湯

 

黄疸

  柴胡剤:

                 茵蔯蒿湯・茵蔯五苓散

                 梔子生姜豉湯

                 小建中湯

                 呉茱萸湯

                 半夏瀉心湯紙:生姜瀉心湯


胃腸神経症

  安中散・

  半夏瀉心湯

  半夏厚朴湯・茯苓飲合半夏厚朴湯

 

 

食欲不振

  大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・補中益気湯

  隠遁高等・茵蔯五苓散

  安中散・六君子湯・四君子湯・人参湯

  旋覆花代赭石湯

  半夏瀉心湯・生姜瀉心湯

  茯苓飲

  人参養栄湯・清暑益気湯 

  小建中湯

  十全大補湯


下痢・消化不良

  葛根湯・

  葛根黄連黄芩湯・

  黄芩湯

  橘皮大黄朴硝湯

  五苓散・猪苓湯

  平胃散・六球子湯・四君子湯・桂枝人参湯

  柴苓湯

  半夏瀉心湯・生姜瀉心湯・甘草瀉心湯

  清暑益気湯

  真武湯・四逆湯

 

 

腹痛

  大黄牡丹皮湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・温経湯

  大柴胡湯・柴胡桂枝湯・

     当帰四逆加呉茱萸生姜湯

  桂枝加芍薬大黄湯・桂枝加芍薬湯・小建中湯・大建中湯

  大黄附子湯

  甘草湯

  胃苓湯

  芍薬甘草湯

  安中散

  半夏瀉心湯・生姜瀉心湯・甘草瀉心湯・

  温経湯

  当帰湯

 

 便秘 

 対症療法に留まらず、体質改善によって営習性の便秘から脱却させることを目的とする

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・加味逍遙散

  防風通聖散・

  承気湯類:調胃承気湯・麻子仁丸・大黄甘草湯・潤腸湯・大黄附子湯

  駆固結剤:大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・

  厚朴三物湯

  桂枝加芍薬大黄湯・小建中湯

  八味丸

  安中散

  人参湯

  通導散

 

反復性臍疝痛

  大黄附子湯

  桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  良枳湯

  芍薬甘草湯

  小健中湯・大建中湯

 

周期性嘔吐症

  五苓散・

  茵蔯五苓散

  二陳湯

  六球子湯・人参湯・桂枝人参湯・

  小半夏加茯苓湯

  乾姜人参半夏丸

 

 

糖尿病

 インスリンの分泌不足によって起こるもので、口渇、尿量の増加、疲労感などを訴える。  

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡暇・柴胡桂枝湯・桂枝桂枝乾姜湯

                 防風通聖散

                 白虎加人参湯・白虎加桂枝湯 

  下焦の疾患:八味丸・

                 五苓散・猪苓湯・

                 六君子湯・四君子湯

   駆瘀血剤:

                 麦門冬湯・

                    調胃承気湯

                  炙甘草湯

                 竹葉石膏湯

 

 

関節リウマチ

 多数の関節を転々と移動する疼痛を主とするが、関節局所の炎症、変性症状だけでなく、血管炎や臓器障害を併発する全身性疾患。

  表証・麻黄剤:麻黄加朮湯・桂枝二越婢一湯・越婢加朮湯・麻杏薏甘湯・桂枝加朮湯・桂枝加朮附湯

  解毒剤:防風通聖散・防已黄耆湯

  裏証Ⅱ:真武湯・四逆湯・

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

                 芍薬甘草湯

                 五積散

                 薏苡仁湯

                 疎経活血湯

 

肩関節周囲炎・関節炎

 関節の腫脹、疼痛、発赤、運動障害などを訴える。

  表証・麻黄剤:葛根湯・桂枝二越婢一湯・越婢加朮湯・麻杏薏甘湯・桂枝加朮湯・桂枝加朮附湯・薏苡仁湯・麻黄附子細辛湯

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・柴胡桂枝湯・

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  裏証Ⅱ:

                 小建中湯・黄耆健中湯

                 防風通聖散・防已黄耆湯

                 芍薬甘草湯

                 白虎加桂枝湯

                 五積散

                 二朮湯

 

変形性膝関節症

                 越婢加朮湯・麻杏薏甘湯・

                 薏苡仁湯

                 五積散

                  防已黄耆湯

 

打撲症・むちうち症

  表証・麻黄剤:葛根湯・桂枝二越婢一加朮附湯・桂枝去桂加茯苓朮湯

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯・

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・加薏苡仁・桂枝茯苓丸合黄連解毒湯・当帰芍薬散

                 柴胡加龍骨牡蛎合桂枝茯苓丸

                 半夏厚朴湯

                 当帰四逆湯

                 通導散

                 治打撲一方

 

貧血

 貧血は、造血能の低下、赤血球の崩壊が多い、出血が多いなどによって起こり、目まい、動悸・ 息切罪、肩凝り、手足の冷えなどを訴える。

  柴胡剤:小柴胡湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯・加味逍遙散・補中益気湯

  駆瘀血剤:当帰芍薬散・四物湯・十全大補湯

  裏証Ⅰ:六君子湯・四君子湯・四逆加人参湯・茯苓四逆湯

  裏証Ⅱ:人参湯・

                 桂枝加龍骨牡蛎湯・

                 小建中湯

                 苓桂朮甘湯

                 芎帰膠艾湯

                 加味帰脾湯・帰脾湯

                 炙甘草湯

                 人参養栄湯

 

出血傾向による貧血

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

                 温清飲

                 芎帰膠艾湯 


慢性頭痛・偏頭痛

 頭の片側に限局して(時には両側に)発作的に頭痛が起こるもので、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、食欲不振などの消化器症状や、目まい、心悸亢進、肩こり、神経症状などを伴うこともある。

  表証:葛根湯・

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  駆水剤:五苓散・苓桂朮甘湯

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・柴胡桂枝湯・加味逍遙散・

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

  裏証Ⅰ:半夏白朮天麻湯・呉茱萸湯

                 五積散

                 釣藤散

                 三物黄芩湯

                 当帰四逆加呉茱萸生姜湯

                 桂枝人参湯

 

脳卒中後遺症・脳いっ血・脳軟化症

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・

                 抑肝散

                 続命湯

                 苓桂朮甘湯

                 桂枝加朮附湯・桂枝加苓朮附湯

  駆瘀血剤:当帰芍薬散

                 八味地黄丸 

                 疎経活血湯

                 釣藤散

                 麦門冬湯・

                 防風通聖散・

                 白虎湯

 

腰痛

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  表証:麻黄湯・桂枝加朮附湯・桂姜棗草黄辛附湯

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・柴胡桂枝湯

                 防風通聖散・防已黄耆湯

                 八味地黄丸・牛車腎気州

                 芍薬甘草湯

                 五積散

                 当帰四逆加呉茱萸生姜湯

                 苓姜朮甘湯

                 通導散

                 疎経活血湯

 

神経痛

  表証・麻黄剤:葛根湯・桂枝加附子湯・桂枝加朮附湯・麻杏薏甘湯・小青竜湯・桂姜棗草黄辛附湯・麻黄附子細辛湯

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・ 当帰芍薬散

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・柴朴湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

   建中湯類:

  裏証Ⅱ茯苓四逆湯

  駆水剤:五苓散

  解毒剤:防風通聖散

  順気剤:桂枝加龍骨牡蛎湯・

  芍薬甘草湯

  五積散

  八味地黄丸

  三黄瀉心湯

  小陥胸湯

  二朮湯

  疎経活血湯

 


肥胖症

  解毒剤:防風通聖散・防已黄耆湯

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸

  承気湯類:大承気湯・

 

痛風

  防風通聖散・防已黄耆湯

  大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯

  桃核承気湯・

 

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

 基礎代謝の上昇、発汗、頻脈、心悸亢進、神経衰弱、手指の振せん、甲状腺の肥大、眼球突出などの症状を訴える。

  柴胡剤:柴胡加龍骨牡蛎湯・加味逍遙散・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

  順気剤:半夏厚朴湯・半夏厚朴湯合桂枝加龍骨牡蛎湯・桂枝加龍骨牡蛎

                 甘草瀉心湯・

                 苓桂朮甘湯

                 六味丸・

                 酸棗仁湯

                 白虎加桂枝湯

                 十六味流気飲

                  炙甘草湯

 

ネフローゼ症候群・急性・慢性糸球体腎炎

 浮腫、血尿、蛋白尿、血圧亢進などを訴える。

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・柴苓湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

  駆水剤:分消湯・五苓散・猪苓湯・茯苓杏仁甘草湯・猪苓湯合四物湯・木防已湯

  表証・麻黄剤:越婢加朮湯・小青龍湯・桂姜棗草黄辛附湯

  裏証Ⅰ:六球子湯・四君子湯・胃苓湯

  裏証Ⅱ:真武湯・附子湯・人参湯

  解毒剤:防風通聖散・防已黄耆湯

  駆瘀血剤:当帰芍薬散・十全大補湯

  下焦の疾患:八味丸・午車腎気丸

  順気剤:桂枝加龍骨牡蛎湯・半夏厚朴湯

                 茵蔯蒿湯

                 甘草麻黄湯

 

腎盂炎

 腎臓部の疼痛と悪寒戦慄を伴い、頻尿と排尿痛を呈する。

  柴胡剤:大柴胡湯・小柴胡湯・柴苓湯・柴胡桂枝湯・

  駆瘀血剤:大黄牡丹皮湯・桂枝茯苓丸

  駆水剤:五苓散・猪苓湯・猪苓湯合四物湯

  下焦の疾患:八味地黄丸

 

浮腫

  木防已湯

  防風通聖散・防已黄耆湯

  分消湯・五苓散・猪苓湯・茯苓杏仁甘草湯・

  茵蔯蒿湯・茵蔯五苓散

  桃核承気湯・当帰芍薬散

  越婢加朮湯

  小青龍湯・苓甘姜味辛夏仁湯

  柴苓湯・

  八味地黄丸・午車腎気丸・六味丸

 

湿疹

  表証・麻黄剤:葛根湯・桂枝加黄耆湯・升麻葛根湯・越婢加朮湯・越婢加朮附湯 

  解毒剤:防風通聖散・清上防風湯

  駆瘀血剤:大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・荊芥連翹湯・ 温清飲・温経湯

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・柴胡桂枝乾姜湯・柴胡清肝湯・加味逍遙散・十味敗毒湯・加味逍遙散合四物湯

  承気湯類:

  瀉心湯湯:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

  下焦の疾患:

                 真武湯・附子湯

                 五苓散・苓桂朮甘湯

                 白虎湯・白虎加桂枝湯・白虎加人参湯

                 当帰飲子

                 消風散

                 治頭瘡一方

 

皮膚そうよう症

                 温清飲 

                 桃核承気湯・温清飲・加味逍遙散・加味逍遙散・

                 桂枝麻黄各半湯・大青竜湯

                 真武湯

                 三黄瀉心湯・黄連解毒湯

                 八味地黄丸・竜胆瀉胆湯

                 茵蔯蒿湯・

                 白虎加人参湯・白虎加桂枝湯

                 当帰飲子

 

じんましん

  表証・麻黄剤:葛根湯・桂枝麻黄各半湯・升麻隻根湯

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・十味敗毒湯・柴胡清肝湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

  駆瘀血剤:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・温清飲

                 茵蔯蒿湯・茵蔯五苓散

                 香蘇散

                 苓桂朮甘湯

  承気湯類:

                 梔子豉湯

                 附子湯・真武湯

                 三黄瀉心湯・黄連解毒湯

                 防風通聖散・

                 八味地黄丸

  白虎湯類:白虎湯・白虎加人参湯・白虎加桂枝湯

                 調胃承気湯 

                 消風散

                 橘皮大黄朴硝湯

                 当帰飲子

 

アレルギー性皮膚炎

  十味敗毒湯

  治頭瘡一方

  消風散

  升麻葛根湯

  越婢加朮湯・越婢加朮附湯

  温清飲

  荊芥連翹湯

 

尋常性痤瘡(面包・ニキビ)

  解毒剤:清上防風湯・防風通聖散

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・十味敗毒湯・荊芥連翹湯

  駆瘀血剤:桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸加薏苡仁・当帰芍薬散加薏苡仁・温清飲・桃核承気湯

  表証・麻黄剤:

                 三黄瀉心湯・黄連解毒湯

                 当帰四逆加呉茱萸生姜湯

 

イボ

  駆瘀血剤:当帰芍薬散加薏苡仁・加味逍遙散加薏苡仁

                 十味敗毒湯

                 麻杏薏甘湯

                 半夏瀉心湯

                 五苓散

                 芍薬甘草湯

 

 

進行性指掌角皮症

  十味敗毒湯

  大黄牡丹皮湯・桂枝茯苓丸・温清飲・当帰芍薬散・加味逍遙散・温経湯

  防風通聖散・

  麻杏薏甘湯

  八味丸

  三物黄芩湯

  薏苡附子敗醤散

  紫雲膏


肝斑(しみ)

  駆瘀血剤:大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸:当帰芍薬散・四物湯・温清飲・加味逍遙散

  柴胡剤:大柴胡湯・小柴胡湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯

 

皮膚そう痒症

  消風散

  竜胆瀉肝湯

  茵蔯蒿湯・

  白虎加人参湯・白虎加桂枝湯

  桂枝麻黄各半湯・升麻葛根湯

  黄連解毒湯・

  温清飲

  当帰飲子

  真武湯

 

神経症・不安神経症・ヒステリー・ノイローゼ

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・柴朴湯・柴胡清肝湯・柴胡桂枝乾姜湯・
                 加味逍遙散・四逆散・
                 抑肝散加陳皮半夏・抑肝散
                 女神散

  駆水剤:苓桂朮甘湯・苓桂甘棗湯・猪苓湯

                 黄連解毒湯・半夏瀉心湯・甘草瀉心湯

  順気剤:半夏厚朴湯・甘麦大棗湯・桂枝加龍骨牡蛎湯・香蘇散・

                 茯苓飲合半夏厚朴湯

                 当帰四逆加呉茱萸生姜湯

                 加味帰脾湯

  駆瘀血剤:温経湯

  建中湯類:小建中湯

  裏証Ⅰ:

  裏証Ⅱ:人参湯

  瀉心湯類:

                 人参湯

                 防風通聖散・

                 八味地黄丸・

                 酸棗仁湯

                 芍薬甘草湯


不眠症

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・加味逍遙散・柴胡桂枝乾姜湯

  駆瘀血剤:桃核承気湯・当帰芍薬散・温清飲

  瀉心湯類・三黄瀉心湯・黄連解毒湯・甘草瀉心湯

  順気剤:釣藤散・甘麦大棗湯・桂枝加龍骨牡蛎湯・半夏厚朴湯

  緒罪医湯・

  酸棗仁湯

  五積散

  八味丸

  抑肝散加陳皮売南・抑肝散

  三物黄芩湯

  加味帰脾湯

  温経湯

  竹筎温胆湯

 

神経症・自律神経失調症

  心悸亢進、めまい、精神不安、胸内苦悶感、胸中痞塞感、手足の麻痺感、不眠などの症状(精神・神経の異常)を訴える。

  柴胡剤:大柴胡湯・柴胡加龍骨牡蛎湯・小柴胡湯・柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯・柴胡清肝湯

  解毒剤:防風通聖散

  駆瘀血剤:桃核承気湯・加味逍遙散・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・温清飲・四物湯

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯・半夏瀉心湯・

   順気剤:味蘇散・半夏厚朴湯・甘麦大棗湯・桂枝加龍骨牡蛎湯

  猪苓湯

  八味丸

  六球子湯

  人参湯

  五積散

  折衝飲

  加味帰脾湯・抑肝散加陳皮半夏

  女神散

 

術後不定愁訴

  加味逍遙散・補中益気湯

  桂枝加芍薬湯・桂枝加芍薬大黄湯・

  竹筎温胆湯

  十全大補湯

  人参養栄湯

 

 

痔疾

  駆瘀血剤:大黄牡丹皮湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  柴胡剤:大柴胡湯・補中益気湯・十全大補湯・乙字湯

  表症:麻杏甘石湯

                 桂枝加芍薬湯

                 甘草湯(忘憂湯)

                 芍薬甘草湯

                 芎帰膠艾湯

                 紫雲膏


躁うつ病

 躁病は、気分の高揚と多弁、多動を特徴とし、うつ病は、気分が沈うつで、何事にも 悲観的、絶望的であること特徴とする。躁とうつが交互に現れるも英や、片方だけのものもあるが、うつ状態を繰り返すことのほうが多い。

  順気剤:柴胡加龍骨牡蛎湯・加味逍遙散・小柴胡湯・香蘇散・甘麦大棗湯・桂枝加龍骨牡蛎湯・半夏厚朴湯

  承気湯類:大承気湯・調胃承気湯

  瀉心湯類:三黄瀉心湯・黄連解毒湯

  駆瘀血剤:桃核承気湯・

                 加味帰脾湯

 

てんかん

 柴胡剤:柴胡加龍骨牡蛎湯・柴胡桂枝湯・

  駆水剤:五苓散・苓桂甘棗湯

                 桂枝加龍骨牡蛎湯・甘麦大棗湯

  駆瘀血剤:

  瀉心湯類:呉茱萸湯

                 甘草湯

                 小承気湯

 

小児虚弱体質

  柴胡剤:柴胡桂枝湯・柴胡桂枝乾姜湯・小柴胡湯・柴胡清肝湯・補中益気湯

  裏証Ⅰ:六球子湯

  裏証Ⅱ:人参湯

  建中湯類:小建中湯

                 桂枝加黄耆湯・麻杏甘石湯・

                 五苓散・

                 十全大補湯

 小児夜尿症

  柴胡剤:柴胡加龍骨牡蛎湯・柴胡桂枝湯・小柴胡湯

  表証・麻黄剤:越婢加朮附湯・越婢加朮湯

                 五苓散・苓姜朮甘湯

                 桂枝加龍骨牡蛎湯・

                 小建中湯

                 小建中湯

                 八味地黄丸・六味丸

  駆瘀血剤:桂枝茯苓丸・当帰芍薬散

  裏証Ⅰ:六球子湯・四君子湯・

  裏証Ⅱ:人参湯・甘草乾姜湯

                 白虎湯・白虎加人参湯

                 伯州散

         


(終)

  

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※古い資料が出てきたので記録として記載します。

村上光太郎先生は、いわゆる病名漢方には否定的で、良く「余白の証」を話題にされていました。しかし、このような病名漢方の資料も作成されていました。

 「龍」と「竜」、「蛎」と「蠣」、「遙jと「遥」のようないわゆる異体字について、基本的に書いてあるままにしています。

「Ⅰ」「Ⅱ」はそれぞれローマ数字の「1」「2」です。機種依存文字ですので、うまく表示されないことがあります。

『漢方薬の実際知識』や漢方系統図に記載のない薬方名が色々と出てきています。

 ○○剤:の後に薬方名が無いものは、○○剤の中から適当なものを選ぶという意味だと思いますが、今となっては確認しようがありません。
また、○○剤の後に薬方名があるものは、あくまでその病名に対して良く使われる代表的な薬方が書かれているだけで、これに限ったものでは無いと思います。これも今となっては確認しようがありません。

急性・慢性胃炎・胃カタルの裏証Ⅰに人参湯・桂枝人参湯が書かれているが、人参湯・桂枝人参湯は裏証Ⅱ

茯苓飲加半夏厚朴湯 は 茯苓飲合半夏厚朴湯 の間違い?

黄苓湯 は 黄芩湯 の間違い? 

葛根黄連黄苓湯 は 葛根黄連黄芩湯 の間違い?

原文は「駆お血剤」 と書かれていますが、「駆瘀血剤」に改めます。

 胃アトニー出 ? 胃アトニ~症の間違い?

 呉茱萸湯は裏証Ⅰ、裏証Ⅱに書かれている呉茱萸湯は?

 動機 → 動悸

 

裏証 :半夏白朮天麻湯・安中散  ?   → 裏証1:半夏白朮天麻湯・安中散   ?

辛夷清敗湯 → 辛夷清肺湯   

桂枝加黄湯 → 桂枝加黄耆湯 

 小柴胡湯加桔梗石膏 ? 小柴胡湯に芍薬が無いので、桔梗+芍薬の組み合わせにならず、村上先生の理論に合わないのでは?  

 

仙痛?  疝痛? 

黄疽 → 黄疸 

清夏益気湯 → 清暑益気湯 

 動機 → 動悸

 かた凝り → 肩凝り

 


通風 → 痛風 

発刊 → 発汗

振せん 振顫 振戦 

越婢加朮附子湯 → 越婢加朮附湯 

荊艾連翹湯 → 荊芥連翹湯 

皮膚そうよう症 → 皮膚掻痒症

温清湯 → 温清飲 

白虎湯 → 白虎湯類

白虎湯・白虎加人参湯・白虎加人参湯 → 白虎湯・白虎加人参湯・白虎加桂枝湯 

当帰四逆加呉茱萸湯  → 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 


皮膚そうよう症 と 皮膚そう痒症 があり、書いてある薬方(処方)も異なる ?

香蘓散 → 香蘇散

痔疾の柴胡剤に十全大補湯が書かれている。 十全大補湯には柴胡は含まれない。
補中益気湯の誤りか。補中益気湯には升麻が含まれ、脱肛などに用いられる。

 躁うつ → 躁鬱 「鬱」は2010年に常用漢字に 「躁」な常用漢字にありません。

うつ病ハ → うつ病は

 

【参考】

1.柴胡剤

01.大柴胡湯

02.柴胡加竜骨牡蠣湯

03.四逆散

04.小柴胡湯

05.柴胡桂枝湯

06.柴胡桂枝乾姜湯

07.加味逍遙散

08.補中益気湯

09.荊防敗毒散

10.十味敗毒湯

11.乙字湯


2.順気剤

01.半夏厚朴湯

02.梔子豉湯
        (1)梔子甘草豉湯
        (2)梔子生姜豉湯

03.香蘇散

04.釣藤散

05.甘麦大棗湯

06.麦門冬湯

07.柴胡加竜骨牡蠣湯

08.柴胡桂枝乾姜湯

09.桂枝加竜骨牡蠣湯

10.小柴胡湯

 

3.駆瘀血剤

01.大黄牡丹皮湯 

02.桃核承気湯

03.桂枝茯苓丸

04.当帰芍薬散

05.加味逍遙散

06.抵当湯・抵当丸

07.四物湯
        (1) 温清飲
        (2)荊芥連翹湯
        (3)七物降下湯
        (4)八物湯
        (5)連珠飲
        (6)十全大補湯
        (7)芎帰膠艾湯


4.表証

01.麻黄湯

02.葛根湯

03.桂芍知母湯

04.桂枝湯
        (1)桂枝加桂湯
        (2)桂枝加葛根湯
        (3)桂枝加黄耆湯
        (4)桂枝加厚朴杏仁湯
        (5)桂枝加竜骨牡蛎湯
        (6)桂枝加附子湯
        (7)桂枝加朮附湯
        (8)桂枝加苓朮附湯
        (9)桂枝附子湯

05.桂枝加芍薬湯
        (1)桂枝加芍薬大黄湯

06.桂枝麻黄各半湯


5.麻黄剤

01.麻黄湯

02.葛根湯

03.麻杏甘石湯

04.麻杏薏甘湯

05.大青竜湯

06.小青竜湯

07.越婢湯
  (1)越婢加朮湯


6.建中湯類

01.小建中湯

02.黄耆建湯中

03.当帰建中湯

04.帰耆建中湯

05.大建中湯

06.中建中湯

07.附子粳米湯

08.当帰四逆湯

09.当帰四逆加呉茱萸生姜湯


7.裏証Ⅰ

01.柴胡桂枝湯加牡蠣茴香

02.安中散

03.四君子湯

04.六君子湯
  (1)香砂六君子湯
  (2)柴芍六君子湯

05.半夏白朮天麻湯

06。呉茱萸湯

07.平胃散

 

8.裏証Ⅱ

01.人参湯 

02.桂枝二参湯

03.附子理中湯

04.真武湯

05.附子湯

06.甘草湯(裏証Ⅱとは薬効的に関係はない)

07.甘草乾姜湯

08.甘草附子湯

09.四逆湯

10.通脈四逆湯

11.四逆加人参湯

12.茯苓四逆湯

 

 

9.承気湯類

01.大承気湯

02.小承気湯

03.調胃下気湯

04.桃核承気湯

 

 

10.瀉心湯類

01.大黄黄連瀉心湯

02.三黄瀉心湯

03.附子瀉心湯

04.黄連解毒湯
  (1)温清飲
  (2)柴胡解毒湯

05.黄連湯

06.半夏瀉心湯

07.生姜瀉心湯

08.甘草瀉心湯

09.椒梅瀉心湯

 

11.駆水剤

01.分消湯

02.五苓散
  (1)胃苓湯
  (2)柴苓湯

03.茵蔯五苓散

04.猪苓湯

05.茯苓沢瀉湯

06.苓桂朮甘湯
  (1)連珠飲

07.苓姜朮甘湯

08.茯苓甘草湯

09.苓桂甘棗湯

10.苓桂味甘湯

11.苓甘姜味辛夏仁湯


12.則毒剤

01.防風通聖散

02.清上防風湯

03.荊防敗毒散

04.防已黄耆湯

 

13.下焦の実疾

01.八味丸
  (1)牛車腎気丸
  (2)六味丸

02.竜胆瀉肝湯

 

14.皮膚疾患

01.排膿散

02.排膿湯

03.消風散

04.伯州散

05.紫雲膏

 

15.白虎湯類 (漢方薬の実際知識では白虎湯類は分かれておらずその他)

01.白虎湯
  (1)白虎加人参湯
  (2)白虎加桂枝湯

02.消風散 



16.その他

01.茵蔯蒿湯

02.五積散

03.酸棗仁湯

04.炙甘草湯

05.芍薬甘草湯

06.芍薬甘草附子湯

07.小半夏加茯苓湯

08.(白虎湯)

09.麻黄細辛附子湯(麻黄附子細辛湯)
  (1)桂姜棗草黄辛附湯(麻黄附子細辛湯合桂枝去芍薬湯)


2021年11月11日木曜日

『漢方薬の実際知識』の生薬の配剤からみた薬方解説

 まえがき

 昨今、日増しに伝えられる公害問題や薬の副作用などによって、漢方薬が見なおされ、いわゆる副作用のない薬として、一般大衆の漢方への関心がたかまってきている。これらのことを反映して、漢方薬関係書が数多く出版されている。したがって、近時一般大衆の漢方薬への知識は、かなりたかくはなっているが、まだ民間薬との区別さえわからない人がほとんどといってよい。そのため、なまはんかな勉強をした一般大衆による素人療法がまかりとおっている。しかし、漢方薬も誤った使い方をすれば、死への転帰をたどったり、あるいは病気が悪化したり、下痢が止まらなくなったりすることもまれではない。一般素人がいだいている”漢方薬だから作用はおだやかである”という考えだけで使用することは、おそろしい結果を招くことにもなる。

 一般素人のかたが漢方薬を使用する際には、専門家の指導を受ける必要のあることはいうまでもないことである。

 ところで、漢方薬を系統的に記した書物は、あんがい、みあたらないようである。そこで本書は、これらのことを考え、漢方薬の薬方を構成する意義から説き起こし、各薬方の関連性についてのべ、主要漢方生薬の解説を行なった。さらにその内容については、一般素人にもわかりやすく、正しい漢方薬の知識がえられ、また、漢方薬について知識のある人にとっても、薬方の整理をする一助ともなれるように心がけたつもりである。

 昭和四七年一一月

 

増補によせて

 本書は「まえがき」で記しているように、漢方薬が薬方を構成する意義から説き起こし、各薬方の関連性について述べ、主要薬方解説を記したが、漢方薬が薬方を構成する理由のところでほんの一部を記したにすぎないため、主要薬方解説での、1 柴胡剤、2 順気剤、3 駆瘀血剤、……などの区分がなぜなされているかの理由を明瞭には記していない。したがってともすればこの区分を、ただ単なる薬方の羅列であると思い、安易に見過ごしがちである。

 しかし本書の区分はただ単に薬方を分類するためにあるのではなく、一面では生薬の配剤による変化を追うとともに、他面では類似の薬効(薬方の効く部位、病人の体力、病勢)を追って区分されている。いいかえれば本書の区分の意図は、薬方の方意を正しく把握し、随證療法を単純化することにある。

 随證療法の単純化は次のようにして行なわれる。すなわち、患者の病状により得られた各種の情報を気、血、水に分類し、それが主に気だけの場合には気順剤を、主に水だけの場合には駆水剤を、主に血だけあるいは気と血、血と水、気と血と水の場合には駆瘀血剤(気と血と水の場合には解毒剤、下焦の疾患、その他の項に記された薬方を用いることもある)を用いる。しかし、それが気と水の場合には複雑で、患者の症状によって種々のものが用いられる。すなわち、1 胸脇苦満あるいはそれに類する症状があれば柴胡剤を、2 症状が表証のみであれば、表証、麻黄剤を、3 中焦の症状が主であれば建中湯類を、4 裏証の症状が主であれば裏証Ⅰ(冷え)、裏証Ⅱ(冷えと新陳代謝の低下)を、5 便秘なら承気湯類を、6 心下痞があれば瀉心湯類を、7 以上のいずれにも該当しなければ解毒剤、下焦の疾患、皮膚疾患、その他の項に記載の薬方を用いる。

 いうまでもないことであるが、合病であるならば同じことを再度繰り返して薬方を合わせて使用すればよいのである。しかし、生薬は組み合わせて用いれば薬効が変化することがあり、いま、合方した薬方がはたして目的とする薬効を発現させるかどうかを見きわめなければ使用することはできない。このためにも組合わせによる変化を正しく把握しておかなければならない。

 このような理由により、「第九章 生薬の配剤からみた薬方解説」を追加したものである。

 昭和五六年六月

 

2 漢方薬が薬方を構成する理由

 生薬を二種以上、同時に使用した場合、そのときに現われる薬効が、単にそれぞれ単独で使用したときに起こる作用を合わせただけ(相加作用という)であるならば、症状をみて各症状に有効な生薬を加え合わせればよいことになる(漢方薬以外の薬は、このような考え方で組み合わされている)。

 しかし、二種以上の生薬をまぜて服用したときに起こる現象は、ただ単にそれぞれの生薬によって起こる作用を加え合わせたということでは、説明のつかないことが多い。あるときはその作用が、ただ単に加え合わせたと考えられる以上に強くなり(相乗作用という)、あるときは弱くなり(相殺作用という)、またあるときは、まったく別の作用を示す(方向変換という)。たとえば、麻黄(まおう)を例にとってみると、麻黄単独の作用は、発汗剤で皮膚の排泄機能障害を治すものである。ところが、この麻黄に桂枝(けいし)を加えると、発汗剤となり、石膏を加えると、止汗剤(方向変換)となる。さらに麻黄と桂枝と石膏の三種を合わせると、麻黄と桂枝の作用である発汗作用が助長される(相乗作用)。また麻黄に朮(じゅつ)を加えると、利尿剤(方向変換)となり、麻黄に杏仁(きょうにん)を加えると、鎮咳剤(方向変換)になる。このように、加えられる相手によってその作用が変わっていくわけである。

 附子の作用は、組み合わされた相手によって、その作用するところが異なってくる。たとえば、附子に桂枝、葛根(かっこん)、麻黄などの表(ひょう)へ行く生薬を加えると、附子の作用は表に誘導され、表の組織を温め、表皮の新陳代謝機能をたかめるが、乾姜(かんきょう)、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、人参(にんじん)、茯苓(ぶくりょう)など半表半裏(はんぴょうはんり)から裏(り)へいく生薬を加えると、附子の作用は半表半裏から裏に誘導されて、内臓諸器官の新陳代謝をたかめ、体表にまではその作用がおよばない(第九章参照)。また防已(ぼうい)、細辛(さいしん)、白朮(びゃくじゅつ)、芍薬(しゃくやく)など全身にいく生薬を加えると附子の作用は全身にゆきわたり、全身の新陳代謝機能をたかめるようになり、半夏(はんげ)、梔子(しし)など咽部から胸部にいく生薬を加えると、附子の作用は食道、咽部、胸部の新陳代謝機能をたかめるようになる。

 したがって、一つ一つの薬物の作用を知っているだけでは、組み合わされたものの薬効はわからない。しかし、すべての生薬の組み合わされた作用を知ることは無理であり、また実用的飛はない。ここに、発病から死にいたるまでを克明に記録し:病勢の変化をとらえ、そのときどきに必要な一連の薬方をさきにつくっておき、病人の現わした症状から、どの時期であるかをみきわめ、それに対応する薬方を与えるほうが合理的である。このように漢方では、生薬単独の作用のみならず、まぜ合わされたときの作用も明確に把握するために薬方というものがつくられたわけである。

 

第九章 生薬の配剤からみた薬方解説

 漢方治療は随證療法であることは既に述べたが、このことは言い方を変えれば、病人の現わしている「病人の證」と、生薬を組み合わさたときにできる「薬方の證」とを相対応させるこということである。 「病人の證」は四診によって得られた各種の情報を基に組み立てされ、どうすれば(何を与えれば)治るかを考えるのであるが、「薬方の證」は配剤された生薬によって、どのような症状を呈する人に与えればよいかが決定される。したがって「病人の證」と「薬方の證」は表裏の関係にある。「薬方の證」は一つの薬方では決まっており、「病人の證」は時とともに変化し、固定したものではない。

 しかし、「病人の證」、「薬方の證」いずれもが薬方名を冠しているため、あたかも證の変化がないように「病人の證」を固定化して考え、変化のない薬方の加減、合方などを極端に排除したり、あるいは反対に各薬味の相加作用のみによって薬方が成立していると考え、無責任な加減がなされるなど、間違ったことがよく行われている。本書の薬方解説は 第二章 2漢方薬が薬方を構成する理由 のことろで明記しているように、生薬の配剤を基に記しているが、配剤に関しての説明が不十分である。したがって薬方解説の各節の区分の理由を明確にし、加減方、合方などを行なうときの参考となれるよう記した。

 二種以上の生薬を組み合わせて使用したときに起こる現象は相加作用、相殺作用、相乗作用、方向変換などで言い表わされることは既に述べたが、一般の薬方のような多種類の生薬が配剤された場合においてはさらに複雑で、桂枝、麻黄、半夏、桔梗、茯苓、附子などのように個々の生薬の相互作用で理解できるものと、柴胡、黄連・黄芩、芍薬などのようにその生薬の有無、量の多少によって薬方の主證あるいは主證の一部が決定するものとがある。したがってある薬方の薬能を考えたり、薬方を合方して使用する場合にはそれらのことを注意して考えなければならない。

1 生薬の相互作用で理解できるもの

1 桂枝について

 消えしは発汗剤であるが、麻黄または防風と組み合わされれば発汗作用はさらに強くなり(相加作用)、大棗と組み合わされれば反対に止汗作用(方向変換)を現わすようになる。したがって麻黄湯(麻黄、杏仁、甘草、桂枝)では桂枝+麻黄の組合せとなり、発汗剤として働くが、桂枝湯(桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草)では桂枝+大棗の組合せとなり、止汗剤として働いている。また桂枝は芍薬と組み合わされれば緩和剤(方向変換)となり、筋肉の緊張やひきつれて痛むのを治すようになる。白朮や茯苓と組み合わされれば利尿剤(方向変換)となり、 地黄と組み合わされれば強壮剤(方向変換)となる。

 先の桂枝湯では桂枝+芍薬の組合せを含むため、肩こり、身体疼痛など筋肉の緊張やひきつれて痛むのを治す。したがって、そのような痛みがない場合には桂枝去芍薬湯として投薬する。痛みがなくても芍薬を入れておいてもよいのではないかと考えられる人もあるかと思うが、一般には生薬は相乗効果のある組合せを除いて考えれば、その効果は、1 単独で使用する(民間薬)、2 四~五種類を組み合わせて使用する(例、古方)、3 七種以上を組み合わせて使用する(例、後世方の順に、すわわち薬味の数が増えるにしたがって薬方の作用は弱くな識傾向がある。(相乗効果があれば、組み合わせて使用するほうが薬方の作用が強くなるのほ当然である)。

 しかし適応證の範囲、言い換えれば證の取りやすさという点で考えると、作用とは逆に薬味が増えるにしたがって安易に薬方を使えるようになる利点がある。以上のことから考えれば、先の桂枝去芍薬湯も必要でない緩和作用を除き、より強く、スムースに治癒させることを目的に行なわれているのである。

 これらの組合せでできたものの多くは、第六章 主要薬方解説 4表証に記されている。

 

2.麻黄について

 麻黄(地上部の節を除いたもの)は、第二章 漢方薬について 2漢方薬が薬方を構成する理由のところで記したように、桂枝と同じく発汗剤となるが、石膏と組み合わせると止汗剤となる。麻黄+桂枝は先に述べたように発汗剤であったが、これと麻黄+石膏の止汗剤と組み合わせれば麻黄+桂枝+石膏の組合せとな責、発汗作用は強烈となる。このことは注意しなければならないことで、知らずに薬方を合方して使用し、失敗することは多い。たとえば桂枝湯(桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草)〔桂枝+大棗・止汗剤〕と越婢湯(麻黄、石膏、生姜、大棗、甘草)〔麻黄+石膏・止汗剤〕の二つの薬方を合方すれば麻黄+桂枝+石膏の組合せができ、非常に強い発汗剤となる。すなわち虚証の薬方どうしの組合せなのに、非常に実証の薬方へと一変する。同様なことはしばしば見られることで、同方する場合には十分注意しておかなければ失敗することはまれではない。 

 また葛根湯(葛根、麻黄、桂枝、甘草、生姜、大棗)のように、同一薬方内に麻黄+桂枝と桂枝+大棗のように相反する組合せが生じた場合には実の薬味(この場合は麻黄)の方の組合せの薬効が現われる(このとき注意しなければならないのは、附子が入っている薬方では虚の附子の薬効の方が優先することである)。したがって本方は麻黄+桂枝の組合せの発汗作用が現われるようになる。

 ここで注意しなければならないのは発汗と無汗ということ仲;ある(図36参照)。これはただ単に体表の汗の有無をいうのではなく、体表に汗を出そうとしているかどうかが問題となる。すなたい、体表よりスムーズに汗が出ている(実像の発汗)か、たとえ汗は出ていなくても森より表に水が移動してきて、表に水が溜まって浮腫を形成している過程(浮腫はおすと軟らかい)ならば(虚像の発汗)汗が出ているものとして止汗剤、たとえば越婢湯、麻杏甘石湯(麻黄、杏仁、甘草、石膏)などを与える。

 反対に浮腫が形成される傾向がなく、体表に汗が出ていない(実像の無汗)か、たとえ汗が出ているようにみえても、表に水が溜まって実腫(浮腫はおすと硬い)となっている、すなわち裏より表への水の移動がないならば、その汗の出方は水がもれ出るような感じとなる(虚像の無汗)、このような場合には発汗剤、たとえば麻黄湯、小青竜湯(麻黄、桂枝、芍薬、乾姜、甘草、細辛、五味子、半夏)などを与える。その他、麻黄は杏仁と組み合わせれば鎮咳剤となり、白朮と組み合わせれば利尿剤となる。したがって麻黄加朮湯では麻黄+桂枝(無汗・浮腫)、麻黄+杏仁(咳)、麻黄+白朮(浮腫、尿不利)の組合せとなり、それぞれの薬効が現われる。

 これらの組合せでできたものの多くは、第六章 主要薬方解説 4表証、5麻黄剤 に記されている。

 

3 半夏について
 半夏を単独で用感れば咽喉痛を引き起こし、胃がむかむかし、強くなれば嘔吐を引き起こすようになるため、半夏は一般に単独では用いず、常に生姜(乾姜)あるいは大棗・甘草と組み合わせて使用される。しかし利膈湯(半夏、梔子、附子)などの薬方のように生姜または大棗・甘草がなくて使用されることもあるが、これらは例外的な薬方である。すなわち、半夏は生姜と組み合わされれば鎮吐作用を現わし、大棗・甘草と組み合わされれば鎮痛、鎮静磁用を現わすようになる。

 この組合せを基本薬方とし、薬効の変化がよく理解できる一連の薬方があるので以下に記す。すなわち、半夏と生姜を合わせたものは小半夏湯といわれ、鎮吐作用を目的に使用される。これに胃内停水の症状が加われば小半夏湯に茯苓を加えた、小半夏加茯苓湯として使用する。したがって胃内停水があり、ときに嘔吐する人に与えるのであるが、胃内停水が嘔吐として体外に出ることができず、咽部まで上がってきて、そこに留まるような感じ、すなわち咽部の異常感の出てくるようになったものには気(第四章 漢方の診断法 3気血水説 参照)の異常と考えて順気作用のある生薬の厚朴、蘇葉を入れ、半夏厚朴湯として与える。

 この半夏の組合せは種々の薬方に応用されるため、一つの系列としてはとりえない。

4 茯苓について
 茯苓の組合せは体の中に水の偏在を治すのを目的に作られたもので、単独あるいは組み合わされることにより種々の水の移動を生じるため、絶対的なものではないが、主な薬効は次のようになる。すなわち茯苓と白朮を組み合わせれば胃の機能を亢め、胃内停水を除くように働き、茯苓と猪苓、沢瀉を組み合わせれば尿利をよくするように働き、茯苓と桂枝・甘草を組み合わせれば心悸亢進やめまいを鎮めるように働く。

 したがって胃内停水があり、その瘀水が気の上衝とともに移動して心悸亢進やめまいを起こすようなものには茯苓+白朮(胃内停水)、茯苓+桂枝・甘草(心悸亢進、めまい)の組み合わされた苓桂朮甘湯(茯苓、桂枝、白朮、甘草)を用いるが、胃内停水が気の上衝がないため移動せず、かえって胃から腰のあたりに瘀水が溜まって冷たく感じるようになれば、体を温める乾姜と胃内停水を除く茯苓+白朮を組み合わせた苓姜朮甘湯(茯苓、乾姜、白朮、甘草)を用いるようになる。苓桂朮甘湯と同じように症状を現わすが、胃内停水がそれほど強くなければ茯苓+白朮の組合せでなくても、胃内停水を除く作用のある生姜だけの駆水作用で十分であるから、茯苓甘草湯(茯苓、桂枝、生姜、甘草)とする。

 胃内停水ではなく、気管支に水毒があれば生姜のかわりに五味子を入れた苓桂味甘湯(茯苓、桂枝、五味子、甘草)に、反対に精神的な症状が加われば、虚証の人では大棗(実証の人には大棗では効果がない)と変えた苓桂甘棗湯(茯苓、桂枝、甘草、大棗)とするなどがある。

 これらの組合せでできたものの多くは、第六章 主用薬方解説 11駆水剤 に記されている。

 5.桔梗について

 桔梗は単独で用いれば膿や分泌物のあるときに使用し、膿や分泌物を除く作用がある。これに芍薬が組み合わされると作用は一変して、発赤、腫脹、疼痛に効くようになるが、誤って膿や分泌物のあるときに使用すればかえって悪化する。しかし桔梗に芍薬と薏苡仁を加えれば発赤腫脹の部分があり、しかも分泌物が多く出ている部分もある場合に効くようになる。桔梗に荊芥、連翹を加えても同様の効果がある。

 たとえば排膿湯(桔梗、甘草、生姜、大棗)は桔梗単独の作用、すなわち患部に膿や分泌物のあるときに用いるが、排膿散(桔梗、芍薬、枳実、卵黄)となれば、桔梗と芍薬の組合せとなり、発赤、腫脹、疼痛のあるものに用いるようになる。誤って使用しやすい例に葛根湯の加減方がある。すなわち葛根湯加桔梗石膏の桔梗と石膏はあたかも相反した、寒い用いる桔梗と、熱に用いる石膏が組み合わされているようにみえるが、桔梗は葛根湯の中に含まれている芍薬と組み合わされたものであり、石膏との相加作用を目的に作られたものである。したがって本方は上焦の部位に発赤、腫脹、疼痛のあるときに用いられる。もし炎症もあるが膿もたくさん出るというようになれば前記の組合せにしたがって、葛根湯加桔梗薏苡仁にしなければならい。
 これらの加減は同じ表証の薬方中では、桂枝湯にはそのまま代用できるが、麻黄湯には芍薬とともに考えなければならないことは、いまさら言うに及ばないことであろう。この桔梗の組合せは種々の薬方に応用されるため、一つの系列としてはとりえない。

6 附子について

 附子の作用は組み合わされた相手によって、その作用する位置(部位)の変わってくることとは、すてに、第二章 漢方薬について 2漢方薬が薬方を構成する理由 の項で述べた。

 いま、ここに桂枝湯(桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草)を例にとって考えると、その違いが明らかになってくる。すなわち、桂枝湯に附子を加えると桂枝加附子湯になるが、この場合は附子の作用を表に誘導する桂枝と、全身に誘導する芍薬の組合せとなる。全身に誘導するものは作用が弱いため、桂枝加附子湯の附子はほとんど表の組織に対して、麻痺、刺激、温補作用を現わす。したがって裏に近い関節に働くよりも、表の筋肉に働くようになり、筋肉に関係した症状すなわち筋肉の痛、痙攣、麻痺を主とし、芍薬の作用も加わって運動障害などを治す。

 いま、桂枝加附子湯から芍薬を除けば桂枝附子湯となるが、本方では附子の作用は桂枝にのみ誘導されるため、表の組織へのみ作用し、筋肉の痛み、痙攣、麻痺などを治すようになる。したがって本方の目標に「骨節に痛みなく、ただ身体疼痛するもの」とあるのは容易に理解できる。

 桂枝加附子湯に白朮を加えれば桂枝加朮附湯となり、附子の作用を全身に誘導するものが芍薬、白朮の二種類となるため、しだいに全身に対する作用が出始める。そのため関節に関係した症状が加わり、全身的な水毒症状も明らかとなる。したがって四肢の麻痺、屈伸困難、尿利減少などを治す。

 桂枝加朮附湯にさらに茯苓を加えれば桂枝加苓朮附湯となるが、茯苓は附子の作用を半表半裏~裏に誘導するため、表に誘導する桂枝、全身に誘導する芍薬、白朮と組み合わされて、附子の作用はどこにも偏らず、全身を温める作用となり、水毒症状を呈する人に用いるようになる。

 本方より、附子の作用を表に誘導する働きのある桂枝と、附子の作用とは関係のない大棗、甘草を除いたものが真武湯(茯苓、芍薬、生姜、白朮、附子)であり、附子の作用は、全身に対する作用もあるが、、主に半表半裏~裏に働くようになる。したがって本方は桂枝加朮附湯と表裏が相対応する薬方である。

 また当帰芍薬散(当帰、芍薬、川芎、茯苓、白朮、沢瀉に附子を加えれば、附子の作用を全身に誘導する芍薬、白朮と、半表半裏~裏に誘導する茯苓があるため、全身に対する作用もあるが、主に半表半裏~裏に働くようになる。したがって半表半裏~裏に強い冷えがある場合によく附子を加えるのであるが、いくら冷えが強いからといっても妊婦には使用してはならない。なぜなら、胎児は裏位にあるため、附子の作用は胎児にも強く作用する。しかし、いくら母親は虚証であっても、胎児は新陳代謝がさかんな実証であるため、実証に附子を与えることになりき、危険である。このようなことは附子の温補作用のみに注意し、その作用する位置を考えなかったために起こることであり、よく注意しなければならない。

 その他、 特殊な例として、半夏や梔子は附子の作用を咽部から胸部に誘導する働きがあるため、利膈湯(半夏、梔子、附子)などでは咽喉の新陳代謝が衰えて咽喉がふさがったり、嚥下困難などを呈するようになったものに用いる。

 これらの組合せでできたものの多くは、第六章 主要薬方解説 4表証、8裏証Ⅱ に記されている。


7 その他の生薬について

 相加作用のみで考えることのできる生薬は多く、黄耆(寝汗、黄汗)、薏苡仁(皮膚を潤し、瘀血、血燥を治す)、人参(全身の水)、生姜(胃内停水)、駆瘀血生薬(当帰、芍薬、桃仁、牡丹皮、地黄など)など種々がある。

 また下剤、温補剤の関係は表裏の関係であり、便秘していても実証か虚証かによって使い分けなければならないことはいうまでもない。気のうっ滞を治す順気剤である厚朴、枳実、蘇葉と大黄+芒硝を加えたもの、たとえば大承気湯(大黄、芒硝、枳実、厚朴)は最も実証の人に用い、大黄のみを加えたもの、たとえば小承気湯(大黄、厚朴、枳実)がこれに継ぐ。気の上衝を治す順気剤である桂枝と大黄+芒硝を加えたもの、たとえば桃核承気湯(大黄、芒硝、桂枝、桃仁、甘草)はさらに弱くなり、大黄のみを加えたもの、たとえば柴胡加竜骨牡蠣湯(柴胡、半夏、茯苓、桂枝、黄芩、大棗、人参、竜骨、牡蛎、生姜、大黄)がこれに継ぐ。 順気剤のない大黄+芒硝を加えたもの、たとえば調胃承気湯(大黄、芒硝、甘草)はさらに弱くなり、大黄のみを加えたもの、たとえば三黄瀉心湯(大黄、黄芩、黄連)がこれに継ぐ。ここまでは実証の便秘に用いられる。

 次いで梔子を加えたもの、たとえば黄連解毒湯(梔子、黄芩、黄連、黄柏)が続く。虚証の便秘となると、さらに虚したときに用いる乾姜を加えたもの、たとえば人参湯(人参、白朮、甘草、乾姜)を用いる。新陳代謝がさらに衰えると附子を加えたもの、たとえば真武湯(茯苓、芍薬、生姜、白朮、附子)を用い、さらに虚になると附子+乾姜を加えたもの、たとえば四逆湯(甘草、乾姜、附子)を用いて新陳代謝機能を亢進させる。下痢の場合でも虚実によって同様に使用する。

 これらの組合せでできたものの多くは、第六章 主要薬方解説 3駆瘀血剤、9承気湯類 に記されているほか、種々の薬方に応用されている。

 

 2 生薬の有無、量の多少によって薬方の主證あるいは
 主證の一部が決定するもの

 1 柴胡について

 柴胡は三~四グラム以上(大人量)、薬方に加えられると、その薬方の主證あるいは主證の一部は胸脇苦満として決まってしまうもので、加えられた柴胡の量が多くなれば胸脇苦満が強く認められるが、少なければ胸脇苦満としては認められない。

 たとえば小柴胡湯(柴胡、半夏、l生姜、大棗、甘草、黄芩、人参)は柴胡が七・〇グラムあり、四逆散(柴胡、芍薬、枳実、甘草)は柴胡が五・〇グラムあるためいずれも胸脇苦満を認められが、補中益気湯(柴胡、黄芩、人参、白朮、当帰、陳皮、生姜、大棗、甘草、升麻)は柴胡が二・〇グラムのため胸脇苦満はほとんど認められない。また柴芍六君子湯は六君子湯に柴胡(四・〇グラム)と芍薬(三・〇グラム)を加えたものであるが、柴胡が四・〇グラムのため胸脇苦満を強く呈するものもあるが、ほとんど認められず六君子湯證のみめだつものもある。したがって加えられた柴胡の量は薬方の薬能を知るうえで重要なことである。これらの組合せでできたものは、第六章 主要薬方解説 1柴胡剤 に記されている。 

 2 黄連・黄芩について

 黄連、黄芩がともに、あるいはいずれかが薬方に加えられると、その薬方の主證あるいは主證の一部は心下痞として決まってしまうもので、量の変化は心下痞の強さとは一致せず、一般に一・〇グラム以上ずつ加えると心下痞を治すようになる。

 たとえば三黄瀉心湯(大黄、黄連、黄芩)と黄連解毒湯(黄芩、黄連、黄柏、梔子)では前者は寺連、黄芩が各三・〇グラム(煎剤として長期服用する場合)であり、後者は各一・五グラムであるため、量の多少が心下痞の強さと一致するように見えるが、黄連湯(半夏、黄連、乾姜、人参、桂枝、大棗)と半夏瀉心湯(半夏、黄芩、黄連、乾姜、人参、甘草、大棗)では前者は黄連のみ三・〇グラム入っているが、後者は黄芩二・五グラムと黄連一・〇グラムが入っているため、量から見ると後者が実証のように思えるが:実際は前者が実証の薬方となる。いずれにしても、黄連、黄芩の有無は薬方の薬能を知るうえで重要である。

 これらの組合せでできたものは、第六章 主要薬方解説 10瀉心湯類 に記されている。


3 甘草について

 甘草は単独で用いると急迫症状(精神的)を緩解させる作用があるが、芍薬と組み合わせれば急迫性の激しい筋肉の痙攣と疼痛に効くようになる。

 したがって甘草湯(甘草)は神経の興奮による各種の急迫症状を緩解するが、芍薬枝湯(芍薬、甘草)では急迫性の激しい筋肉の痙攣と疼痛に用いる。しかし甘草のこれらの作用は他に強い作用の薬物があれば表には現われにくくなり、ほとんど効果を期待できなくなる。このことは甘草湯や芍薬甘草湯を用いる場合に、注意しなければならない。ただ柴胡桂枝湯(柴胡、半夏、生姜、大棗、甘草、芍薬、桂枝、黄芩、人参)は例外で、家種の薬物が組み合わされたにもかかわらず鎮痛作用を現わす。しかし、この場合の痛みは急迫性の痛みというより鈍痛である。


4 芍薬について

 芍薬は少量(四・〇グラム以下)使用する場合と多量(六・〇グラム以上)使用する場合では薬方の効く位置き変化を生じる。すなわち、少量の場合には体の各所の筋肉の緊張を緩解するが、多量となると奏位(主に中焦)にのみ働き、腹満や腹部の緊張を緩解するようになる。


※證 一般的には「証」が使われるが、村上先生は旧字体である「證」を使われていた。

※『漢方薬の実際知識 増補版』の昭和五十六年頃は、まだ、白虎湯類が無い。

※その他の項 に 旧版 では排膿散及湯 があるが、増補版には無い。
 その間に、桔梗の組み合せ に気付き、排膿散及湯は使わなくなった。 

 ※長沢元夫先生は、生薬の組み合わせによる効能の変化は否定的。

※薬方
 一般的には漢方処方と言われるが、村上先生は(漢方)薬方と呼んでいた。 
処方は単に薬物を組み合わせたもの、薬方は方意のあるもの。

※病人の現わしている「病人の證」と、生薬を組み合わさたときにできる「薬方の證」とを相対応させるこということである。
いわゆる「方証相対」のこと。

※「薬方の證」は一つの薬方では決まっており
 実際に応用する際は、色々な使い方があり、「薬方の證」は一見沢山あるように見える。「余白の證」「転用」なども重要。

※白朮や茯苓と組み合わされれば利尿剤(方向変換)となり
 桂枝自体は尿を止める働きがあるので、注意が必要。

 

※桂枝湯と越婢湯の二つの薬方を合方
  桂枝湯と越婢湯とを合わせた薬方に桂枝二越婢一湯がある。
    太陽病、発熱悪寒、熱多寒少、脈微弱者、此無陽也、不可発汗、宜桂枝二越婢一湯。

※実像の発汗、虚像の発汗、実像の無汗、虚像の無汗
  漢方用語の虚実とは無関係なので注意。
  

※茯苓の組合せは体の中に水の偏在を治すのを目的に作られたもので、単独あるいは組み合わされることにより種々の水の移動を生じるため、絶対的なものではない
 茯苓は組み合わされることにより、作用が強調されるが、基本的に組み合わせと関係ない作用も弱いながらある。


※排膿湯と排膿散
排膿散と排膿湯とを合方したものを排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)と言い、一般には排膿散と排膿湯との両方の効果を持つもの、すなわち、発赤・腫脹・疼痛があり、膿や分泌物がある時に用いると言われているが、村上先生の理論では、排膿散及湯は、桔梗と芍薬の組み合わになるので、結局は排膿散の効果である、発赤・腫脹・疼痛のある時に使うべきもので、膿や分泌物がある時には使えない。膿や分泌物がある時に使うと、治らないばかりか悪化する可能性がある(治ることもある)。
『漢方薬の実際知識』をの初版が出た頃は、この組み合わせのことがわかっておらず、排膿散及湯を使って良い場合と効果が無い場合、悪化する場合があり、改訂版を出す頃に桔梗と芍薬の組み合わせがわかったとのこと。
発赤・腫脹・疼痛があり、膿や分泌物がある時は、桔梗+芍薬+薏苡仁の組合せか、桔梗+荊芥・連翹の組み合わせを用いる。

※本方は上焦の部位に発赤、腫脹、疼痛
葛根湯は上焦に用いる薬方なので。

※炎症もあるが膿もたくさん出るというようになれば前記の組合せにしたがって、葛根湯加桔梗薏苡仁にしなければならい。
 花粉症、アレルギー性鼻炎などに応用できるが、エキス剤に無い。

 ※桔梗の組み合わせ
 桔梗に唐辛子を組合わせると、桔梗の作用が無くなる。韓国料理のトラジ(桔梗)に唐辛子を組合せたものは、薬効が無くなるので食品として食べても問題無い。(膿や分泌物が無い時でも食べられる)。

 

※桂枝加朮附湯にさらに茯苓を加えれば桂枝加苓朮附湯となるが、……全身を温める作用となり、水毒症状を呈する人に用いるようになる。
 多くの漢方の解説書では、桂枝加苓朮附湯は、桂枝加朮附湯より、より水毒の強い関節炎などに用いるとある。村上先生の説では、桂枝加苓朮附湯は関節炎には効果が期待できない。

※柴胡は三~四グラム以上(大人量)、薬方に加えられると、その薬方の主證あるいは主證の一部は胸脇苦満

 通常、柴胡が入れば柴胡剤と呼ばれるが、柴芍六君子湯は、柴胡はあるものの、余り柴胡剤とは呼ばれない。あくまでも六君子湯の加減。 

 また、柴胡剤の中でも柴胡湯類と他の柴胡剤は分けられることがある。
四逆散や柴胡桂枝乾姜湯は柴胡剤ではあるが、柴胡湯類ではない。

 

※量の変化は心下痞の強さとは一致せず、一般に一・〇グラム以上ずつ加えると心下痞を治すようになる。
量の変化は心下痞の強さとは一致せず、一般に合わせて一・〇グラム以上加えると心下痞を治すようになる。に訂正すべき。

 合わせて1gなので、黄連と黄芩のどちらか一方だけでも良いが、通常は黄連・黄芩を合わせて用いる。大黄黄連瀉心湯や黄連湯は、黄連のみで黄芩は含まれていない。黄芩のみで黄連が含まれていない薬方は?
一般的な生薬として考えると、黄連にはベルベリンが含まれ、黄柏にもベルベリンが含まれており、一般に代用薬として使われることがあるが、漢方的には、黄柏は心下痞に用いられず、黄連の代用とはならない。

※煎剤として長期服用する場合
 急性期に振り出して飲む際は、生薬の量は多い。


※他に強い作用の薬物があれば表には現われにくくなり
「表」は、部位をあらわす表裏の「表」ではなく、単に「おもて」の意味。

 

※甘草のこれらの作用は他に強い作用の薬物があれば表には現われにくくなり、ほとんど効果を期待できなくなる。
甘草瀉心湯は?