健康情報: 茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう) の 効能・効果 と 副作用

2014年6月25日水曜日

茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう) の 効能・効果 と 副作用


和漢薬方意辞典 中村謙介著 緑書房
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう) [本朝経験]

【方意】茯苓飲証の脾胃の気滞脾胃の水毒と、半夏厚朴湯証の上焦の気滞気滞による精神症状脾胃の水毒のあるもの。しばしば水毒を伴う。
《太陰病.虚実中間からやや虚証》

【自他覚症状の病態分類】

脾胃の気滞
脾胃の水毒
上焦の気滞
気滞による精神症状
水毒
主証
◎上腹部膨満感
◎食欲不振
◎心下痞
◎胃腸虚弱
◎下痢傾向



◎過緊張
◎抑鬱気分
◎咽中炙臠






客証 ○上腹部振水音
○悪心 ○嘔吐
 噯気
 呑酸
 嘈囃

半夏厚朴湯
茯苓飲
○心悸亢進





半夏厚朴湯
○尿不利
○目眩
 立ちくらみ



半夏厚朴湯
 
 


【脈候】 やや軟・やや弱

【舌候】 乾湿中間の白苔。

【腹候】 腹力やや軟。多くは上腹部に振水音あり、心下痞硬する。

【病位・虚実】 構成病態が気滞と水毒のため、全体的に発揚性でなく陰証であり太陰病に相当する。脈力、腹力共に低下しており虚証に属す。

【構成生薬】 茯苓5.0 白朮4.0 人参3.0 橘皮3.0 枳実2.0 生姜1.5 半夏8.0 厚朴3.0 蘇葉2.0

【方解】 本方は脾胃の気滞と脾胃の水毒とを構成病態とする茯苓飲に、半夏・厚朴・蘇葉が加わったものである。半夏は脾胃の水毒の動揺を鎮め、鎮嘔・鎮静・去痰作用があり、生姜と共に強力に嘔吐を鎮める。厚朴と蘇葉は上焦の気滞と気滞による精神症状を発散し、過緊張・抑鬱気分・咽中炙臠等を治す。

【方意の幅および応用】
 A 脾胃の気滞脾胃の水毒:上腹部膨満感・食欲不振・悪心・嘔吐等を目標にする場合。
   急性胃炎、胃下垂、妊娠悪阻
 B 上焦の気滞気滞による精神症状:過緊張・抑鬱気分・咽中炙臠等を目標にする場合。
   咽喉神経症、神経性食道狭窄症、声門浮腫、急慢性気管支炎、気管支喘息、ノイローゼ、ヒステリー 

【症例】 懐炉の証
最近また懐炉の証を一人治療している。36歳の背の高い婦人で、数年来懐炉を下腹部から離したことがないという。夜間就寝している時も入れているのである。こ英婦人は元来下痢の傾向があって、懐炉を入れないと下痢が強くなり、腹満が甚だしくなる。腹診するに、腹部は空気が抜けかかった浮袋を按ずるようで、膨満していて、ガサガサしている。脈は沈にして弱である。
 まず理中湯去朮加附子を与えた。すなわち理中丸の方後に「腹満のものは朮を去り、附子1枚を加う」とあるのに準拠したのである。この方を殻すること1週間、食欲は大いに進み、大便もやや硬く、腹満もまた少しく減ずるを得た。しかるに、3週間分を服し終わる頃より、悪心が起こり、食欲は減じ、微熱、咳嗽を訴え、身体倦怠の感が起こって来た。よって茯苓飲に変方するに再び下痢が起こり、食欲は依然として出て来ない。この時患者のいうに、先月は月経がなかったので、或いは悪阻ではあるまいかと思うと。先年も悪阻の時に、こんな状態であったという。よって茯苓飲合半夏厚朴湯として投与するに全く効がない。のみならず下痢が続くので、ひどく疲れるという。そこで再び理中湯去朮加附子湯とする。この方に変えると下痢が止み、悪心が去り、食欲も出て来た。続いてこの方を服用せしめているうちに、先の悪心、食欲不振、微熱、咳嗽等は悪阻の症状として発現したものであったことがはっきりして来た。患者は8年ぶりに妊娠したことを喜び、目下なお服薬しているが、懐炉はいまだに腹から離せない。
『大塚敬節著作集』第六巻65




『重要処方解説Ⅱ』  北里研究所付属東洋医学総合研究所医長 花輪壽彦 先生
胃苓湯・茯苓飲合半夏厚朴湯(イレイトウ・ブクリョウインゴウハンゲコウボクトウ)

 胃苓湯(イレイトウ),茯苓飲合半夏厚朴湯(ブクリョウインゴウハンゲコウボクトウ)の2方は,どちらかといえば実証タイプの消化器疾患に使われる処方です。
(中略)


■茯苓飲合半夏厚朴湯・出典・構成生薬
 次に茯苓飲合半夏厚朴湯(ブクリョウインゴウハンゲコウボクトウ)について説明いたします。茯苓飲(ブクリョウイン)は『金匱要略』の付方として収載されている処方です。付方とは宋代に林億(りんおく)らが追加したもので,本来の出典は『外台秘要(げだいひよう)』です。
 条文は「『外台』の茯苓飲は,心胸中に停痰宿水あり,自ら水を吐出して後,心胸間に虚気満ちて食すること能わざるを治す。痰気を消し能く食せしむ」とあります。さらに「茯苓,人参(ニンジン),白朮,枳実(キジツ),橘皮(キッピ),生姜。右六味,水六升にて煮て一升八合をとり分け温めて三服す。人の行くこと八,九里ばかりにして,これを進む」とあります。「八,九里ばかりにしてこれを進む」というのは、8~9里歩くのに2~3時間かかるであろうということで,2~3時間おきに飲んで気分が楽になったらやめるという意味で空¥
 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)は『金匱要略』にある処方で,「婦人咽中炙臠あるが如きは半夏厚朴湯これを主る」とあります。『千金方(せんきんほう』には「胸満,心下堅く,咽中帖々として炙肉有るか如く,これを吐しても出でず,これを呑みて下らず」と表現しております。構成生薬は,半夏(ハンゲ),厚朴,茯苓,生姜紫蘇葉(シソヨウ)です。いくつか共通する生薬もありますので,茯苓飲合半夏厚朴湯は,茯苓飲に半夏,厚朴,紫蘇葉の入った処方ということになります。結局この処方は,茯苓飲の証に,気滞など神経症状を兼ねるものと考えたらよいと思います。
 茯苓飲は,一言でいえば心下に痰飲があって消化器症状をきたすという病態に用いるものですが,大事な点は甘草,大棗が入っていないという点です。つまり本来脾を補うような作用はなくて,しかも水を下にさばくために甘草,大棗を入れていないという点が大事であると思います。したがって茯苓飲の中にある人参は,補うための人参ではなく,心下痞硬を取るという意味だと思います。したがってオタネニンジンよりも竹節人参(チクセツチンジン)(トチバニンジン)の方がよろしいと思います。

■古典における用い方
 この処方の使い方は,尾台榕堂(おだいようどう)の『類聚方広義(るいじゅほうこうぎ)』の頭註をみますと,「胃反,呑酸,嘈囃等にて,心下痞硬,小便不利,或は心胸痛する者を治す」とあります。胃反は現代的にはアカラシア,逆流性食道炎,幽門狭窄などを考えたらよいと思います。それから「老人,常に痰飲に苦しみ,心下痞満,飲食せず,下痢しやすき者を治す。小児,乳食化せず,吐下止まらず,并びに百日咳にて心下痞満,咳逆甚しき者を治す。倶に半夏を加えて殊に効あり」ともあります。尾台榕堂先生は茯苓飲加半夏(ブクリョウインカハンゲ)をよく使われたようです。『橘黄医談(きつこういだん)』という治験録にも茯苓飲加半夏がたびたび出ております。

■現代における用い方
 現代における茯苓飲合半夏厚朴湯の使い方については,大塚敬節先生らのお書きになった『漢方診療医典』が,非常に簡潔に説明していると思います。『漢方診療医典』によれば茯苓飲の説明は,『本方は胃内停水を去り,充満したガスを消す作用があるので,胃炎,胃下垂,胃アトニー,胃拡張などに用いられる。胃にガスが充満して,そのために食べられないという症状を目標にして本方を用いる。噯気,悪心,胸やけを訴えることもある。腹診上では心下痞硬があり、人参湯証よりもやや実証のものを目標とする」と説明しております。
 また大塚先生の著作集などを読んでおりますと、茯苓飲の証にはしばしば不眠,神経衰弱などの精神症状を伴うということが書いてあります。このあたりが半夏厚朴湯をしばしば合方することの理由ではないかと思います。半夏厚朴湯については,「本方は気のうっ滞を散じて気分を明らかにする効があるので,神経症,特に不安神経症に用いる機会が多く,また咽中の塞がる感じ,梅核気と古人が呼んだ症状で,のどに球状のものが詰まっていて,それゃ気になるという症状も本方を用いる目標である。本方を用いる患者は胃腸が弱く,胃部の停滞感,腹部の膨満感などがあり,胃内停水,ガスの貯留などがみられ,これと上記の症状が表裏一体となっていると考えられ,本方を用いることによって,これらの胃腸障害,精神症状,神経症状もともに消散する」と述べておられます。このようなことから,胃腸の不快感を伴う症状,精神症状を伴うようなものに茯苓飲合半夏厚朴湯を使うわけです。
 藤平健先生は,茯苓飲の目標として「心下部の軽い抵抗と,脾塞,膨満感,呑酸,嘈囃,尿不利の傾向,あまり苦しまずにスポッと吐くという嘔吐」と簡潔に述べております。
 本日は主としてやや実証タイプの消化器疾患に対応される胃苓湯と茯苓飲合半夏厚朴湯について簡単に説明いたしました。


『健保適用エキス剤による 漢方診療ハンドブック 第3版』
桑木 崇秀 創元社刊


茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)
 茯苓飲を使うべき胃下垂・胃アトニー者で,のどのつかえ感など,不安神経症のある者に,半夏厚朴湯を合方して用いる。ただし,生姜・茯苓は共通するので,茯苓飲に半夏・厚朴・紫蘇葉を加えたものということになる。
 胸やけ・吐き気・イライラ,時には動悸を訴えるような状態に用いる。



『健康保険が使える 漢方薬 処方と使い方』
木下繁太朗 新星出版社刊

茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)
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本朝経験方(ほんちょうけいけんほう)

どんな人につかうか
 茯苓飲(ぶくりょういん)(190頁)と半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)(183頁)を合方したもので、抑うつ気分で、のどに異常感(梅核気(ばいかくき))があり、胃部の膨満感(ぼうまんかん)、痞(つか)え感、吐き気、胸やけ、動悸、めまいを伴う人に用い、胃炎、不安神経症、つわりなどに応用します。

目標となる症状
 ①抑うつ症状。②咽頭部の異物感。③胃部膨満感(ぼうまんかん)。④めまい。⑤動悸。⑥悪心。⑦胸やけ。⑧尿量減少。⑨食欲不振。⑩嚥下(えんか)困難。

 心窩部(しんかぶ)に振水音(胃内停水)。

 滑。

 湿ってうすい白苔(はくたい)。

どんな病気に効くか(適応症) 
 気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、時に動悸、めまい、吐き気、胸やけなどがあ責、尿量の減少するものの、不安神経症神経性胃炎つわり溜飲胃炎。胃下垂症、胃酸分泌過多症、胃アトニー症、胃酸分泌過多症、胃アトニー症、胃腸虚弱症、食道痙攣、食道浮腫、小児消化不良、血の道症、気管支喘息、気管支炎、扁桃炎、嗄声(かせい)、急性・慢性気管支炎、陰嚢水腫、胃性神経症、神経性食道狭窄、更年期障害、ヒステリー、バセドー病。

この薬の処方
 半夏(はんげ)6.0g。茯苓(ぶくりょう)5.0g。蒼朮(そうじゅつ)4.0g。厚朴(こうぼく)、陳皮(ちんぴ)、人参(にんじん)各3.0g。蘇葉(そよう)2.0g。枳実(きじつ)1.5g。生姜(しょうきょう)1.0g。


この薬の使い方
前記処方(一日量)を煎(せん)じてのむ。
ツムラ茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)エキス顆粒、成人一日7.5gを2~3回に分け、食前又は食間に服用する。

使い方のポイント・処方の解説
 胃部膨満感、心窩部振水音、胸やけ、悪心などの茯苓飲を効くような消化器症状に、精神不安、抑うつ、咽頭異常感、動悸、咳、嗄声などの、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の適応症状が、いろいろの程度にダブっているような状態に用い、かなりいろいろな場合に使えます。半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、茯苓飲(ぶくりょういん)の処方解説を参照下さい。



副作用
1) 重大な副作用と初期症状
 特になし

2) その他の副作用
過敏症:発疹、蕁麻疹等
このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
[理由]
本剤には人参(ニンジン)が含まれているため、発疹、蕁麻疹等の過敏症状があらわれるおそれがあるため。

[処置方法]
原則的には投与中止により改善するが、必要に応じて抗ヒスタミン剤・ステロイド剤投与等の適切な処置を行うこと。
 



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