健康情報: 温経湯(うんけいとう) の 効能・効果 と 副作用

2013年1月12日土曜日

温経湯(うんけいとう) の 効能・効果 と 副作用

『漢方精撰百八方』

51.〔方名〕温経湯(うんけいとう)
〔出典〕金匱要略

〔処方〕呉茱萸、半夏、麦門冬各3.0g 川芎、芍薬、当帰、人参、桂枝、阿膠、牡丹皮、生姜、甘草各2.0g

〔目標〕
1.五十才ばかりの婦人で、子宮出血が数十日もやまず、日暮れになると熱が出て、下腹が引きつれ、腹が張り、掌がぽかぽかと熱っぽく唇が乾燥するもの。
2.冷え性の婦人で、下腹が冷たく、永い間妊娠しないもの、またこのような婦人で、子宮出血が多かったり、月経が多量に下ったり、また月経の不順があるもの。

〔かんどころ〕全体に皮膚ががさがさしている。殊に唇が乾き、掌も乾燥して熱っぽい。それでいて冷え性で月経異状がある。

〔応用〕更年期出血。指掌角皮症。上肢殊に手の甲、掌、指に限局する湿疹。月経困難症。不妊症。

〔治験例〕
 1.進行性指掌角皮症
  三十二才の主婦、三年前より掌が荒れ、殊に右側の掌は、指紋が消失し、がさがさに乾燥し、冬は殊に増悪する。某病院の皮膚科の治療を受けているが、治らないという。
  栄養、血色、普通。月経は正調、腹診上も、特に変化無く、ただ腹直筋が下腹でやや緊張しているだけである。口唇は乾燥する気味だという。
  そこで温経湯を与えたところ、十日目頃より効果が現れ、二ヶ月あまりで全治した。

2.不妊症。
  結婚後十四年になるも、妊娠しないという三十四才の婦人。栄養、血色ともに普通、ただ冷え性で、腰のあたりが殊に冷え、冷えると腰痛を訴える。月経は正調にくるし、困難症はないが、量が少ない。手の指と甲に湿疹があり、時々憎悪すると、かゆくなる。患部は乾燥して、がさがさしている。
  腹部は一体に緊張が強く、左右の下腹に圧痛がある。
  はじめ当帰芍薬散料を与える。服薬一カ年に及ぶも、何の変化もない。そこで桂枝茯苓丸料とする。これをのむと、気持ちが悪いという。そこで温経湯に転方。これをのみはじめると、湿疹が先ずよくなった。月経の量が多くなった。服薬三カ年にして妊娠、めでたくぶじ分娩。
大塚敬節


《資料》よりよい漢方治療のために 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
3.温経湯(うんけいとう) 金匱要略

半夏4.0 当帰3.0 麦門冬4.0 川芎2.0 芍薬2.0 人参2.0 桂枝2.0 阿膠2.0 牡丹皮2.0 甘草2.0 乾生姜1.0 呉茱萸1.0 

(金匱要略)
○問曰,婦人年五十所,病下利,数十日不止,暮即発熱,少腹裏急,腹満,手掌煩熱,唇口乾燥,何也師曰,此病属帯下,何以故,曽経半産,瘀血在少腹不去,何以知之,其証口唇乾燥,故知之,当以本方主之(婦人雑病)

漢方処方応用の実際〉 山田 光胤先生
○婦人が下腹部が冷えて妊娠しないもの。子宮出血や月経不順,あるいは月経過多,もしくは月経寡少などがあって,下腹部がひきつれ痛み,腹部が膨満するもので手掌が煩熱し,口唇が乾燥するものというのが金匱要略にある正面の目標である。そのほか全身がかっとあつくなるもの,帯下が止まないもの,大便が快通しなかったり秘結するものがあり,帯下は血性のものも血液を混じないものもあると,纂方規範に記してある。
○唇口が乾燥し,手掌が煩熱し,上熱下寒で瘀血塊のないものは温経湯の症である。また塊りが少しぐらいあってもよいと,百疢一貫にある。
○上熱下寒というのは顔色が赤く,腰が冷えるのを感じて逆上(のぼせ)するような場合で月経不調のものだと丹波家方的にある。
○証治摘要に痩せてからだの虚弱な婦人が毎月月経過多で,下腹に力がなく,食が進まないものには,本方に黄連を加えるとよいとある。


漢方処方解説〉 矢数 道明先生
 少陰病に属し,陰虚証のもので,婦人雑病門に掲げられている。気血の虚と寒冷が主目標で,手掌の煩熱(ほてり)と口唇の乾燥,下腹部の膨満感または不快感があり,その他月経不順,帯下,不定期出血,子宮出血,腰部の冷え,腹痛,下痢,のぼせ,嘔気,咳嗽等の症候のいずれかを参考目標とする。脈も腹も力のないものが多い。腹中には腫塊がないことが条件である。


漢方治療の実際〉 大塚 敬節先生
○瘀血の証で唇口が乾燥することがある。これは温経湯がよくきく。温経湯は,手の甲や掌の乾燥するものにきく,私は指掌角化症に好んでこの処方を用いるが,まことによくきく,唇や掌に限ったことではない。
 ○この方は金匱要略の婦人雑病門に次のように出ている。『問いて曰く,婦人,年50ばかり,下血(1本に下痢とあるが,今下血の方をとる)を病み,数十日止まず,暮には即ち発熱,小腹裏急,腹満,手掌煩熱,唇口乾燥するは何ぞや。師の曰く,此の病帯下に属す。何を以っての故ぞ,かって半産を経て瘀血小腹に在って去らず,何を以って之を知るや。其証唇口乾燥す。故に之を知る。当に温経湯を以って之を主るべし。』この条文によって,私は更年期の永びく子宮出血症にこの方を用いて,著効を得たことがあるが,更に,この方の方後に「婦人,小腹寒えて,久しく胎を受けざるを主る。兼ねて崩中去血或は月水来ること過多及び期に至って来らざるを治す。」とあるによって,この方を不妊症,月経不順などにも用いる。


勿誤方函口訣〉 浅田 宗伯先生
 此方は胞門虚寒(子宮の機能が衰えて冷えている。)と言うが目的には,凡そ婦人血室虚血にして,月水不調,腰冷,腹痛,頭疼,下血,種々虚寒の候ある者に用ゆ。年50云々に拘るべからず,反て方後の主治に拠るべし。又下血の証,唇口乾燥,手掌煩熱,上熱下寒,腹塊なき者を適証として用ゆ。若し癥塊あり,快く血下らざる者は桂枝茯苓丸に宜し。其の又一等重き者を桃核承気湯とするなり。


古方薬嚢〉 荒木 性次先生
 「婦人で下腹が吊り,腹が張り,手足がほてって唇の燥き,あるいは裂る者,或は其れで下利幾日も止まない者,月経が不順であったり,無かったりする者,或は月経の量が多過ぎる者,或は冷え症のため長く妊娠しない者,冷え症にて頭痛し,月経不順の者に宜し。」




【一般用漢方製剤承認基準】

温経湯
〔成分・分量〕 半夏3-5、麦門冬3-10、当帰2-3、川芎2、芍薬2、人参2、桂皮2、阿膠2、牡丹皮2、甘草2、生姜1、呉茱萸1-3

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以下で、手足がほてり、唇がかわくものの次の諸症: 月経不順、月経困難、こしけ(おりもの)、更年期障害、不眠、神経症、湿疹・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、手あれ(手の湿疹・皮膚炎)


【添付文書等に記載すべき事項】
 してはいけないこと 
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は服用しないこと
生後3ヵ月未満の乳児。
〔生後3ヵ月未満の用法がある製剤に記載すること。〕


 相談すること 
 1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること

(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。 
(3)胃腸の弱い人。 
(4)高齢者。 
  〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕 
(5)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。 
(6)次の症状のある人。
      むくみ 
      〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕 
(7)次の診断を受けた人。
       高血圧、心臓病、腎臓病 
     〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること


関係部位症状
皮膚発疹・発赤、かゆみ

まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

症状の名称症状
偽アルドステロン症、
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。

〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕

3.1ヵ月位(下腹部痛、下痢に服用する場合には5~6回)服用しても症状がよくならな
い場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談する
こと
4.長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔1日最大配合量が甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含有する製剤に記載すること。〕


〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
  〔小児の用法及び用量がある場合に記載すること。〕
(2)〔小児の用法がある場合、剤形により、次に該当する場合には、そのいずれかを記載す
ること。〕
1)3歳以上の幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく
注意すること。
 〔5歳未満の幼児の用法がある錠剤・丸剤の場合に記載すること。〕
2)幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないよう、よく注意すること。
 〔3歳未満の用法及び用量を有する丸剤の場合に記載すること。〕
3)1歳未満の乳児には、医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ
服用させること。
 〔カプセル剤及び錠剤・丸剤以外の製剤の場合に記載すること。なお、生後3ヵ月未満の用法がある製剤の場合、「生後3ヵ月未満の乳児」を してはいけないこと に記載し、用法及び用量欄には記載しないこと。〕

保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
  〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
  〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくて
もよい。〕





商品名製造販売元
発売元又は販売元
一日製剤量(g) 添加物 剤形 効能又は 効果 用法及び用量 半夏(ハンゲ) 麦門冬(バクモンドウ) 当帰(トウキ) 川芎(センキュウ) 芍薬(シャクヤク) 人参(ニンジン天: 桂皮(ケイヒ) 阿膠(アキョウ) ゼラチン 牡丹皮(ボタンピ) 甘草(カンゾウ) 生姜(ショウキョウ) 呉茱萸(ゴシュユ)
1 コタロー温経湯エキス細粒 小太郎漢方製薬 12.0 ステアリン酸マグネシウム、トウモロコシデンプ ン、乳糖水和物、プルラ ン、メタケイ酸アルミン 酸マグネシウム 細粒 冷え症で手掌がほてり、口唇が乾燥しやすいつぎの諸症に用いる。 指掌角皮症、更年期神経症、月経不順、月経過多、月経痛、頭痛、腰痛、帯下。 食前又は食間
2~3回
4.0 4.0 3.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 0.5 1.0
2 ツムラ温経湯エキス顆粒(医療用) ツムラ 7.5 日局ステアリン酸マグネ シウム、日局乳糖水和物 顆粒 手足がほてり、唇がかわくものの次の諸症: 月経不順、月経困難、こしけ、更年期障害、不眠、神経症、湿疹、足腰の冷え、しもやけ 食前又は食間
2~3回
4.0 4.0 3.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 1.0 1.0