健康情報: 八味疝気方(はちみせんきほう)  の 効能・効果 と 副作用

2012年10月26日金曜日

八味疝気方(はちみせんきほう)  の 効能・効果 と 副作用

臨床応用 漢方處方解説』 矢数道明著 創元社刊
96 八味疝気方(はちみせんきほう) 〔福井楓亭〕
  桂枝・桃仁・延胡・木通・烏薬・牡丹 各三・〇 牽牛・大黄・ 各一・〇(便通あれば大黄を去る)  「寒疝臍を繞って痛み、及び脚攣急するを主治す。或は陰丸腫痛、或は婦人瘀血、血塊痛みを作し、或は陰戸突出(子宮脱出)、腸癰等、凡そ小腹以下諸疾、水閉瘀血に属する者並びに治す。」
  疝気・腸疝痛・脚攣急・下肢血栓性静脈炎・睾丸痛・精系痛・腎石疝痛・子宮脱出などに応用される。

勿誤薬室方函口訣』 浅田宗伯著
八味疝気方
此の方は疝気血分に属する者を主とす。当帰四逆加呉姜は和血の効 あり。此の方は攻血の能ありて虚実の分とす。また婦人血気刺痛を治す。福井にては、小腹に瘀血の塊あって脚攣急し寒疝の形の如き者、或は陰門に引き時々痛 みあり、或は陰戸突出する者、また腸癰等にも用ゆ。楓亭の識見は疝は本水気と瘀血の二つに因りて痛を作す者の病名とす。故に大黄牡丹皮湯、牡丹五等散、無 憂散、四烏湯、烏沈湯等の薬品を採択して一方となすなり。此の意を体認して用ゆべし。『観聚方』烏薬を烏頭に作る。誤なり。



勿誤薬室方函口訣解説(103)』  藤井美樹
八味疝気方
 八味疝気方は、福井楓亭の処方であります。福井楓亭先生は一七二四-一七九二年の方で、優れた名医であります。
『方函』の文章は、「寒疝、臍をめぐりて痛み、及び脚攣急、或は陰丸腫痛、或は婦人瘀血、血塊痛みをなし、あるいは陰戸突出、腸癰等を主治し、凡そ小腹以下の諸疾、水閉瘀血に属する者を並びに治す」とあります。
 処方内容は、「桂枝、桃仁、延胡索、木通、大黄、烏薬、牡丹、牽牛子、右八味」で、「服するに臨み、牽牛子末を点ず。腹痛する者は大黄を去り、七味疝気方と名づく」とあります。
 寒疝という病気は下腹に主に痛みがくる病気でありまして、とくに下腹から腰にかけて冷えたり、冷たいものを摂って内臓を冷やしたりすると痛んでくる病気をいいます。臍をめぐりて痛むという症状は、現在でいえば腸疝痛のようなものに当たると思います。脚攣急は坐骨神経痛などに相当するかと思います。陰丸腫痛は睾丸が腫れ痛む、陰戸突出は子宮の脱出、腸癰は虫垂炎を中心にしてその類の病気です。
 延胡索はエンゴサクの塊茎であり、鎮痛、通経に用います。木通はアケビの茎で消炎、利尿作用があります。烏薬はテンダイウヤクであり、クスノキ科のウヤクの根で、鎮痛、健胃、整腸作用があり、腹痛、下痢などに用います。牽牛子はアサガオの種子で、黒色のものが良品とされており、瀉下、利尿作用があり、尿閉、むくみ、脚気などに使うことがあります。桂枝は有名なもので、ケイの枝の皮です。桃仁、牡丹皮はいずれも駆瘀血剤、大黄は瀉下作用のほかに駆瘀血作用があります。
 『口訣』の文は「此の方は、疝気血分に属する者を主とす。当帰四逆加呉姜は和血の効あり。此の方は攻血の能ありて虚実の分とす。また婦人血気刺痛を治す。福井にては小腹に瘀血の塊あって脚攣急し、寒疝の形の如き者、或は陰門に引き時々痛みあり、或は陰戸突出する者、また腸癰等にも用う」とあります。
 陰戸突出とか、陰門に引きつられるような痛みがあるとか、足が突っ張るとか、要するに小腹に瘀血がある場合に使うし、また腸癰のような場合にも使うということです。ここに当帰四逆加呉茱萸生姜湯が出てきますが、これは和血の功があり、八味疝気方は攻血の働きがあって、虚実の違いがあるということです。すなわち、より実証の方に八味疝気方を使うし、虚証の方に当帰四逆加呉茱萸生姜を使い、そしてそれぞれの働きの違いがあるといっているわけです。
 「福井楓亭は識見の高い人であり、疝は水気と瘀血の二つによって痛みをなすものの病名であるという見解をもっていた」といっております。そういう識見から、「大黄牡丹皮湯、牡丹五等散、無憂散、四烏湯、烏沈湯等の薬品を採択して一方を作った」と述べております。「この方意を体認して用いた方がよい。また『観聚方』に烏薬を烏頭と間違えて書いてある」といっております。
 このように八味疝気方は、福井楓亭の家方であり、楓亭の見識のもとに作られた薬であり、現代医学的には腸疝痛、坐骨神経痛、時には足の血栓性静脈炎、睾丸が痛んだり腎臓の結石痛にも応用できるのではないかと思います。また子宮脱などに応用される薬方であります。私はこの薬方は臨床に使ったことはありませんが、当帰四逆加呉茱萸生姜湯はよく使います。

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