健康情報: 紫雲膏(しうんこう) の 効能・効果 と 副作用

2012年5月18日金曜日

紫雲膏(しうんこう) の 効能・効果 と 副作用

漢方精撰百八方
24. 〔方名〕紫雲膏(しうんこう)
〔出典〕華岡青洲伝(春林軒膏方)

〔処方〕香油500 蜜蝋150~200 猪脂10~15 当帰50 紫根50

〔製法〕油を加熱し、蝋と脂をいれてとかし、当帰を入れてから火を弱め摂氏140度になったころ紫根を入れ、程よい紫赤色になったら適温の時に麻布でこしてカスを去り、容器に移し冷やして固め保存する。

〔目標〕肉芽形成促進、化膿防止、瘢痕形成予防、皮膚乾燥の回復、色素沈着の除去。

〔かんどころ〕創面の滲出物が多く、著しく湿潤している場合には適さない。化膿を抑制し痛みを止め肉を上げる効があるので外傷、熱傷、凍傷、潰瘍、壊死などで右の禁忌以外のあらゆる創面に貼附してよい。痔や脱肛にも奇効があるが色素のため肌着が着色するから注意を要する。      また本方は製剤する時の温度と湿度に大いに関係し、発色の鮮やかさと香気の良否が薬効を大いに左右するから選品に大いに気をつけなければならない。最低の材料として局方ゴマ油、局方蜜蝋、局方豚脂を用いるが、最良の品を得るならば中華料理用の香油を脱臭ラード、大深当帰と肥大で虫のつかないうるおいのある紫根でなければならず、温度も必ずしも140度にこだわらない。また硬度も年間ほぼ一定すべきである。

〔応用〕漢方外科の代表的膏剤で、切創にはそのまま貼附するが、挫滅創や汚染した創面、擦過傷で滲出液の多い時には用いない。熱傷はすべて適応であるが、水疱の上からは無効であり、破れて化膿の兆あれば伯州散を適量加えて混和したものを貼附する。凍傷では第二度、三度の患部に用い、フルンケル、カルブンケルの自潰後に肉芽の新生を早めるのによい。痔疾患にはあらゆる場合に用いると苦痛を軽減する。      下腿潰瘍、脱疽、ヒョウ疽、膿瘍による組織欠損にも応用する。

〔類方〕鯉鱗紫雲……乳頭炎、咬傷など乳頭のあらゆる外傷に貼附する。
〔処方〕鯉のウロコの黒焼きを粉末とし適量を紫雲膏と混合。

〔附記〕製法不良、または保存不良で油が酸敗し異臭を放つものは用いてはならない。長期間を経過して変色したものも同様である。


漢方薬の実際知識』 東丈夫・村上光太郎著 東洋経済新報社 刊

5 紫雲膏(しうんこう)
〔ゴマ油1000、黄ろう380、豚脂25、当帰100、紫根100〕
潰瘍で肉芽の弛緩し、膿がうすく、あるいは痛むものを治す。
〔応用〕
つぎに示すような疾患に、紫雲膏を外用する。
一 諸潰瘍、凍傷、瘭疽、角皮症、火傷、乾癬、湿疹、ニキビ、イボ、ウオノメ、タコ、アカギレ、水虫、円形脱毛症、外傷、打撲傷、痔瘻、脱肛など。
紫雲膏は、紀州の華岡青洲が明の『外科正宗』(陳実功)に記されている潤肌膏をもとにして製したもので、ゴマ油(1000グラム)を煮て、黄 ろう(380グラム)、豚脂(25グラム)を入れてとかし、当帰(100グラム)、紫根(100グラム)の順に入れる。鮮明な紫赤色になったら、布でこし て冷凝させる。諸潰瘍、凍傷などに外用する。近畿大学の田中康雄、小谷功の両氏は、紫雲膏に抗菌作用もあることを報告している。




臨床応用漢方處方解説 増補改訂版』 矢数道明著 創元社刊
52 紫雲膏(しうんこう) 別名 潤肌膏(じゅんきこう) (華岡青洲)
ゴマ油一、〇〇〇  当帰・紫根一〇〇 黄蠟三八〇 豚油二五

右の五味、まずゴマ油を煮て、黄蠟・豚油を入れて溶かし、次いで当帰を入れる。当帰の色が焦げるのを度として火力を増し、紫根を入れて二~三沸させ、鮮明な紫赤色になったら速やかに火よりおろし布でこす。紫色鮮明を上品とする。紫根を入れるときの温度は一四〇度ぐらいがよい。黄蠟は夏は多く冬は減少する。

〔応用〕 よく肌を潤し、肉を平らかにするというもので、漢方外用薬のうち最も重要なものとされている。
従来の報告によれば、湿疹・乾癬・角皮症・水虫・鶏眼(うおのめ)・胼胝(たこ)・膿加疹・面疱(にきび)・水疱・疣贅(いぼ)・ひび・あかぎれ・あせも・かぶれ・わきが・円形脱毛症・白癜風・白癬(しらくも)等の皮膚疾患、外傷(切傷・擦過傷・打撲傷)・凍瘡・褥瘡・火傷・ 螫刺・潰瘍・下腿潰瘍・瘻孔・痔・痔瘻・脱肛・瘭疽・糜爛等の外科的疾患に広く応用される。とくに○印の疾患によく奏効するようである。

〔目標〕 肌の乾燥・荒れ・潰瘍・増殖性の皮膚異常を目標とするが、しかし必ずしも乾燥したものに限ることはない。また排膿や瘙痒のあるものには奏効しがたいとされているが、よく効くこともある。

〔方解〕 当帰は筋肉皮膚を潤す。滋潤通和の剤で、内用外用ともにその働きは共通している。また旧を去り新を生ずるという作用があって排膿をよくし、肉芽の発生を促すものである。
紫根はムラサキの根で、往年江戸紫と称した紫染料は、この紫根よりとったものである。解熱・解毒・殺菌の効があり、外用すれば肉芽の発生を促進する。
胡麻油・黄蠟・豚脂をもって外用に便ならしめる。
紫雲膏の効能を称賛した大邑重行(おおむらしげゆき)の作といわれている詩がある。よくその作用を表現している。
「紫雲色を吐いて霊奇を抱く。特に緩和を以て燥肌を潤す。清熱已に試む糜爛の瘡。一時に劇痛の疵をも和す可し」
すなわち紫雲膏は、消炎・止血・殺菌・鎮痛・強壮・肉芽形成促進・傷臭防止除去等、広範にわたって重要な作用があるわけである。
理学博士久原藭弦氏は、紫根中より紫草紅 C20H90O15 を発見し、また理学博士黒田チカ子氏は、岩手県産の紫根中より紫色素アセチルシコニン C16H90O15 を検出した。
古くより紫根は悪瘡を治すとされ、紫根牡蛎湯などは悪性腫瘍に対して効果的であることから、紫根の研究はこの方面にも向けられるべきものと考えられる。
紫根成分の薬理学的研究は、信州大薬理、猿橋氏らの報告がなされ、色素成分以外の部分に避妊効果のあることが実験的に証明されている。これはアメリカ-インディアンが、伝承的に避妊薬として内服していることから実験に着手したという。
著者は大戦中、南方ブーゲンビル島にあって、土民の経験医療の調査をしたことがあった。その中で、原住民に多い熱帯潰瘍に対して、路傍に茂る軟かい、紫色の葉を採り、その薄皮をはいで、紫色の葉肉汁を貼用しているのを知った。紫色素の潰瘍治療の原始的形態である:

〔主治〕
本方は外科正宗の白禿瘡(白癬、しらくも)門にある潤肌膏を取捨して、春林軒華岡青洲翁がくふうしたものである。
外科正宗(白禿瘡門)に、「禿瘡、乾枯白斑痒ヲ作シ、髪脱スルヲ治ス。麻油四両、当帰五銭、紫草一銭ヲ用イ、同ジク熬シ(火にて炒る)、薬枯レテ濾シ清クシ、油ヲ将テ再ビイリ、黄蠟五銭ヲ加エ、化シ尽ス。碗内(ちゃわん)ニ傾ケ入レ、頓ニ冷シ、患上ニ搽擦ス」とある。青洲はこれに豚脂を加え、
「肌ヲ潤シ、肉ヲ平ラカニシ、瘡痕色変ジタルモノヲ治ス」とした。
勿誤方函口訣には、「紫雲膏ハ一名潤肌湯ト称シ、肌ヲ潤シ、肉ヲ平ラカニシ、瘡痕色変ズル者、之レヲ貼レバ常ニ復ス」とある。
漢方治療の実際には、「凍傷・火傷・擦過傷などに塗布して、まことによく効く。火傷の軽いものはこれを塗るだけでよい。てんぷらをあげて油が飛び、顔や手に火傷をした娘さんにつけたところ、 たちまち疼痛がとれた。スキーで転倒して、顔の皮をすりむいたのに用いてすぐ治った。凍傷には夜間寝る前にすりこんでおくとよい。切瘡に塗ると化膿を予防し、治癒を早める。また下腿潰瘍に用いると肉芽の発生を促進する」とある。

〔鑑別〕
華岡家常用の膏薬適応症
○左突膏(松脂・瀝青・黄蠟・麻油) 性温で堅硬を和し、膿を醸し、腐肉を分離し、新肉を長ぜしむ。温補の効あり、虚候をあらわすものに用いる。 ○青蛇膏(烏賊骨・乳香・緑青・枯礬・丹礬・黄蠟・松脂・麻油・酢) よく膿血を吸い出し、腐肉を去り、腐蝕を止める。 ○破敵膏(左突膏を七分、青蛇膏を三分の割合に混和する) よく膿を吸い、 穢物を去り、肉を長ぜしめ、腐蝕を止める。 ○白雲膏(麻油・白蠟・官粉・椰子油・軽粉・竜脳) 性清涼にして、腐蝕を収斂し、速やかに瘡口を癒やすの効がある。

〔参考〕
龍野一雄氏(紫貴雲軟膏治験集)。矢数道明、紫雲膏の運用について(漢方の臨床 一八巻四~五号)。
渡辺武・後藤実氏、紫雲膏の研究(日東洋医会誌 五巻四号一九ページ)
信州大、猿橋氏、紫根成分の薬理学的研究(日薬理誌 五五巻一号)
紫貴雲というのは、昭和三〇年から滝沢紫雲研究所が、龍野一雄氏の指導のもとに、在来の紫雲膏の中に、薏苡仁・フラシン・水溶性クロロフィールを配合し、新しく製剤化したものであった。

紫貴雲軟膏治験集を見ると、
(1)汗疱(水虫)、(2)増殖性皮膚疾患(魚の目・たこ・いぼ)、(3)下腿潰瘍、(4)凍傷、(5)火傷、(6)切創、(7)糜爛等に対する臨床報告がなされている。
汗疱では湿性のものでも乾性のものでも、二~五日で全治または軽快率九二%に及び、痒みは一~六時間で消失するという。
鶏眼(うおのめ)は一〇~一二日(脱脂綿にのばして絆創膏で固定する)で全治、胼胝(たこ)は五~一〇日、疣贅(いぼ)は一四日間、下腿潰瘍は二週間、火傷は一一日~一ヵ月の加療により著効をおさめたという報告がなされている。
著者の用いたのは在来の紫雲膏であり、ときどき指頭につけてすりこんだだけであるが、治療日数は比較的長時日を要している。いぼ・たこ・うおのめなどに用いるときは、脱脂綿につけて患部に貼り、絆創膏で固定し、一日二回交換するがよい。すると治療日数は短縮される。

〔治例〕
(一) 胼胝(たこ)
著者はかつて百味箪笥の把手の刺激を繰り返すうち、左手中指の中央に大豆大の胼胝ができ数年に及んだ。刺激を緩和する意味で薬室に入って調剤ののち、ときどき紫雲膏をするこんでいたところ、半年ほどすぎたある日、紫雲膏をつけようとして中指を見ると、いつの間にかきれいにとれていた。その後七歳の女児の人さし指にできた大きい胼胝に用いたが、これも半年かかってきれいにとれた。  (著者治験)

(二) 鶏眼(うおのめ)
四三歳の婦人。数年前から左名の裏に大きな鶏眼ができ、石のように硬くなり、歩くと痛んで困っていた。外科的治療もうけたが、根治しなかった。
紫雲膏をつけたところ、局部が軟かになり、歩行するとき少しも痛みを感じなくなった。その苦痛は使用後二~三日目から消失した。長期外用すれば治癒するものと思われる。  (著者治験)

(三) 贅肉
五三歳の男子。ヒゲを剃っているとき、下唇の中央より左下方の所を傷つけた。その後いつの間にか大豆よりも、もっと大きい疣様の贅肉が高く突起し、先端はザラザラになって、出血しやすくなっている。なんとなく悪性腫瘍に変質するのではないかと心配され仲きた。
市販の疣を治すという薬を一ヵ月間つけたが、とれなかったという。そこで紫雲膏を脱脂綿にのばして贅肉上に貼り、絆創膏で固定させた。半年長続ける約束をしたが、患者はそれを守り、漸次縮小しつつちょうど六ヵ月目に跡方もなくとれた。  (著者治験)


明解漢方処方』 西野一夫著 浪速社刊
原料 胡麻油五〇〇・〇(市販品は混合物あり。局方品を用いる) 蜜蠟一五〇・〇~二〇〇・〇(夏には多く冬少なくする)  豚脂五一・〇 当帰四〇・〇 紫根六〇・〇
製法 先ず胡麻油を一~二時間加熱して 水分を飛ばし、その一滴を水中に落すに直ちに凝結して球状となるを度とし、これに豚脂、蜜蠟を加えて熔解し、次に熱を弱くし一四〇℃程度で細剉の当帰を入れて、撹拌し焦色を呈するようになったら 滓を去り、中切の 紫根を加えて、色素が溶出して鮮紫色(朱色の強いのは失敗品)となったとき、火を止め絹布で沪過して放冷する。

必須目標 ①化膿していない ②分泌物が多くない ③深い切傷でない。

初級メモ ①目標に否定用語を三つ並べましたが、つまりそれ以外なら何にでも使えるという意味である。用途の広いことは適応証を見て頂きたい。
②製法にはコツがあり、指示通り操作してもなかなか鮮紫色に仕上らない。むしろ信用あるメーカ品を使うほうが便利である。
③本間棗軒(華岡青洲の高弟)の瘍科秘録に“肌肉を潤し、疼痛を止め、肉を長ず”とあり、肉芽形成促進作用とヒノン系薬剤の殺菌作用がある。
④この原方は明の外科正宗に出ている潤肌膏(四味)で、これに豚脂を加え改良したものが青洲である。

適応証 婦人鮫肌(根本治療には駆瘀血剤の内服が必要)。凍傷。火傷。ひび。あかぎれ。痔核。脱肛。湿疹など。

文献 「紫雲膏の臨床的応用」 大塚敬節 (日東医5、1、63)

※ヒノン系薬剤? キノン系薬剤のことか?


注意
・化膿していないこと
・創面が大きくないこと
・分泌物が多くないこと

リップクリーム代わりに使う人もいる
(紫根には避妊効果があるとも言われているので、妊娠を望む女性は使わない方が無難)


【一般用漢方製剤承認基準】
紫雲膏
〔成分・分量〕
紫根100-120、当帰60-100、豚脂20-30、黄蝋300-400、ゴマ油1,000

〔用法・用量〕
外用

〔効能・効果〕
ひび、あかぎれ、しもやけ、魚の目、あせも、ただれ、外傷、火傷、痔核による疼痛、肛門裂傷、湿疹・皮膚炎




【添付文書等に記載すべき事項】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
次の人は使用しないこと
(1)本剤又は本剤の成分によるアレルギー症状を起こしたことがある人。
(2)湿潤・ただれ・やけど・外傷のひどい人。
(3)傷口が化膿している人。
(4)患部が広範囲の人。
相談すること
1. 次の人は使用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
医師の治療を受けている人。
2. 使用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに使用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ



〔用法及び用量に関連する注意として、用法及び用量の項目に続けて以下を記載すること。〕
(1)小児に使用させる場合には、保護者の指導監督のもとに使用させること。
(2)外用にのみ使用すること。
(3)目に入らないよう注意すること。
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること。
〔( )内は必要とする場合に記載すること。〕
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
〔容器等の個々に至適表示がなされていて、誤用のおそれのない場合には記載しなくてもよい。〕
【外部の容器又は外部の被包に記載すべき事項】
注意
1.使用に際しては、説明文書をよく読むこと
2.次の人は使用しないこと。
(1)本剤又は本剤の成分によるアレルギー症状を起こしたことがある人。
(2)湿潤・ただれ・やけど・外傷のひどい人。
(3)傷口が化膿している人。
(4)患部が広範囲の人。
3.次の人は使用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
医師の治療を受けている人。
3´.使用が適さない場合があるので、使用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
〔3.の項目の記載に際し、十分な記載スペースがない場合には3´.を記載すること。〕
4.直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい所に(密栓して)保管すること
〔( )内は必要とする場合に記載すること。




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