健康情報: 瘀血(おけつ)とは 

2008年12月4日木曜日

瘀血(おけつ)とは 

 瘀血(おけつ)とは、西洋医学にはない漢方独特の概念で、種々の説があるが、一般には血(血液またはこれに類するもの)の変調(停滞や欝血、出血傾向等)と考えられている1)
この瘀血は種々の疾患、すなわち動脈硬化、脳卒中等のいわゆる生活習慣病(成人病)や慢性病に関与していると言われている2),3)。瘀血の存在については、戦時中、藤平健の調査したところによると、当時健康男子とみなされていた兵員(陸軍)中、およそ66%に腹診上、瘀血の徴候が認められたといっている4)。また、近年では高木嘉子が、若い女性に瘀血が増えていると、診療経験等から述べている5)
 この様に瘀血は多くの人に存在するが、この瘀血の解消を目標として駆瘀血剤を使用することにより、生活習慣病や慢性病が改善されることが多いとされている2),3)
 生活習慣病・慢性病に利用される駆瘀血剤については、次の3種に分けることが出来る1),6),7)
   1)陽証に用いられる駆瘀血剤  牡丹皮、桃仁等
   2)陰証に用いられる駆瘀血剤  当帰、川芎等
   3)陳久瘀血に用いられる駆瘀血剤 虻虫、水蛭、䗪虫等
 1)に用いられる薬方としては、桃核承気湯や大黄牡丹皮湯、桂枝茯苓丸等があり、
2)に用いられる薬方としては、当帰芍薬散や四物湯、芎帰膠艾湯等があり、
3)に用いられる薬方としては、抵当湯、下瘀血湯、大黄䗪虫丸等がある。
 陳久瘀血(ちんきゅうおけつ)とは、陳旧瘀血とも呼ばれ、瘀血が永年の経過を経たもので、なかなか治りにくいものとされている1)。現在主に利用されている漢方エキス剤は、1)、2)及びその中間型に相当するもの1),6),7)で、3)の陳久瘀血に利用される漢方エキス剤はない。
 近年、生活習慣病の増加が社会問題化しているが、これには前述のとおり瘀血が関与していると言われている。そして高齢化が進む中、瘀血が長期化する、すなわち陳久性の瘀血が増加することは容易に想像できる。この陳久瘀血を除くには通常の駆瘀血剤では不可能で、虻虫や水蛭等の動物性の駆瘀血剤が必要とされている1),6),7)。すなわち、今後更に陳久瘀血に対応する漢方薬が必要とされると考えられる。これについて、田畑隆一郎は、「現代生活の歪みの一つである、食生活の異常、環境の悪化は人間生活に予期しない疾病の増加をもたらすのではなかろうか。漢方家は「瘀血」問題に今までよりも深刻に取り組まざるを得ない状況になるであろう。桂枝茯苓丸、桃核承気湯に止まらず、動物生薬の力まで借りなければ解決のつかない陳旧化した瘀血の出現は必至である。」と述べている8)
 上記のとおり、虻虫・水蛭を配合した薬方は、陳久瘀血を除くには欠くべからざるもので、今後更にその重要性が増すものと考えらる。

参考文献
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2.有地滋,漢方診療革命,河出書房新社,p.71-73(1984)
3.近畿大学薬学部久保道徳研究室編,慢性病と漢方,三一書房,p.6-8(1984)
4.長濱善夫,東洋医学概説,創元社,p.82-90(1961)
5.高木嘉子,女性の病気は瘀血が原因だ,大泉書店,p.82-116 (1997)
6.小田博久,漢方処方の手引き,浪速社,p.63-67(1988)
7.松下嘉一,漢方の臨床,43巻6号,p.29-52(1996)
8.田畑隆一郎,傷寒論の謎,源草社,p.291-297
9.矢数道明,臨床応用 漢方処方解説,創元社,p.394-398(1966)
10.千葉古方漢方研究会,漢方方意ノート,丸善,p.378-379(1993)
11.厚生省薬務局監修,一般用漢方処方の手引き,薬業時報社,p.172-174,189-191(1975)
12.東丈夫,村上光太郎,漢方薬の実際知識,東洋経済新報社,p.70-74(1972)
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16.西岡一夫,明解漢方処方,浪速社,p.145(1966)
17.大塚敬節,臨床応用 傷寒論解説,創元社,p.290-295(1966)
18.大塚、矢数、清水,漢方診療医典,南山堂,p.404-405(1969)
19.木下繁太朗、鎌江真五,臨床医の漢方,医歯薬出版株式会社,p.375,381(1969)
20.高柳一成編,薬理学マニュアル,南山堂,p.85(1989)
21.高木敬次郎、小澤光編,薬物学,南山堂,p.419-421(1987)
22.厚生省医薬安全局審査研究会監修,医薬品製造指針1998年版,薬業時報社,p.32(1998)
23.高木敬次郎監修,木村正康編,漢方薬理学,南山堂,p.382-383,385-386(1997)
24.難波恒雄,原色和漢薬図鑑(下),保育社,p.251-252,333-334(1980)
25.小学館編,上海科学技術出版社、中薬大辞典,小学館,p.1354-1356,2383-2384(1985)
26.白剛,肖洪彬主編,中薬方剤研究与応用大全,中国科学技術出版社,p.133,832,836,(1995)
27.張浩良主編,中国方剤精華辞典,天津科学技術出版社,p.107-108,272,670,933,981,1428(1996)
28.張恩勤主編,中国名優中成薬,上海中医学院出版社,p.169-171(1990)
29.藤平健、勝田正泰,新・あなたにあった漢方薬がわかる本,法研,p.194-195 (1992)
30.伊藤清夫、藤平健,漢方通信講座初級 テキスト〔1〕漢方概論Ⅰ ,
 日本漢方協会,p.38-40,ガイドp.12
31.花輪壽彦,漢方診療のレッスン,金原出版,p.178-179,181,212,229,(1996),
32.藤平健、小倉重成,漢方概論,創元社,p.197-198,232,353-354,356-357,546-547,646,656
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33.寺沢捷年,症例から学ぶ和漢診療学,p.48,146,319,(1998)
34.中田敬吾,漢方の臨床,46巻4号,p.11-13(1999)
35.田畑隆一郎,漢法サインポスト,源草社,p.93,(1997)
36.伊藤康夫,漢方の臨床,37巻8号,p.29-36(1990)
37.矢数有道,漢方と漢薬,4巻4号,p.369-375(1937)
38.中川良隆,東静漢方研究会誌,Vol.2,No.5,p.9-14(1976)
39.竹内達,日本東洋医学雑誌,Vol.4,No.3,p.48(1954)
40.藤平健,日本東洋医学雑誌,Vol.4,No.3,p.44-45(1954)
41.杵渕ら,日本東洋医学雑誌,Vol.37,No.1,p.23-29(1986)
42.三浦ら,治療学,10(supple),p.54-64(1983)
43.堀野雅子,漢方の臨床,第41巻10号,p.1308-1310(1994)
44.矢数、清水、大塚ら,漢方の臨床,3巻8号,p.14-19(1956)


※瘀血(おけつ)の「瘀」という文字は、JISの第2水準までにないので、環境によっては文字化けすることがあります。
第3水準 区点=8848 16進=7850 シフトJIS=ECCE Unicode=7600 です。
これを回避するため、悪血と書いたり、於血と書いている場合がありますが、正式にはやまいだれ(病-丙)+於です。漢字での表記をあきらめてお血やオ血と書く場合もあります。

川芎(せんきゅう)の「芎」も同様に文字化けを起こす可能性がありますが、草冠に弓です。
䗪虫(しゃちゅう)の「䗪」も同様に文字化けを起こす可能性がありますが、庶の下に虫です。

最近は、UNICODE(ユニコード)が普及しておりますので、かなり多くの漢字がネット上で使えるようになっています。

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