健康情報: 加減涼膈散(浅田)(かげんりょうかくさん・あさだ)  の 効能・効果 と 副作用

2012年9月23日日曜日

加減涼膈散(浅田)(かげんりょうかくさん・あさだ)  の 効能・効果 と 副作用

【一般用漢方製剤承認基準】
加減涼膈散(浅田)(かげんりょうかくさん・あさだ) 
〔成分・分量〕 連翹3、黄芩3、山梔子3、桔梗3、薄荷2、甘草1、大黄1、石膏10

〔用法・用量〕 湯

〔効能・効果〕 体力中等度以上で、胃腸の調子がすぐれないものの次の諸症:
口内炎、口の中の炎症



『勿誤薬室方函口訣』 浅田 宗伯
三焦の火盛、口舌瘡を生ずるを治す。桔梗・防風・菊花・木通・車前子を加へ、眼疾を治す。 此方は涼膈散よりは用ひ易く、口舌を治するのみならず、諸病に活用すべし。古人、涼膈散を調胃承気の変方とすれども、その方意は膈熱を主として瀉心諸類に近し。故に涼膈散の一等劇しき処へ、三黄加芒硝湯を用ふるなり。


『勿誤薬室方函口訣解説(12)』 内炭 精一
加減涼膈散
 本方の出典は、同じく龔廷賢の著書である『万病回春』の口舌門であります。ここで気付きますことは、『万病回春』では、処方名が涼膈散加減となっており、処方内容は、連翹、黄芩、山梔子、桔梗、黄連、薄荷、当帰、生地黄、枳殻、芍薬、甘草の十一味となっており、浅田先生の方函とは、かなりの去加があります。これは浅田先生があまたの経験から、このように去加されたと考えられます。私も本方を常用処方として頻用いたしますが、そのつど卓効を得ております。
 本方の条文は「万病回春』では「三焦の火盛んにして、口舌瘡を生ずるを治す」とあります。三焦の火盛んと申しますと、上焦、中焦、下焦英火が強いということで、上焦は心と肺の火を、中焦は脾と胃の火を、下焦は肝と腎の火を指すものであります。火とはここでは実熱の火で、炎症症状すなわち発赤、灼熱、腫脹、疼痛(rubor,calor,tumor,dolor)などがきわめて強いことを指すのであります。そして口腔や舌に炎症性のおできや糜爛あるいは潰瘍を生ずるのであります。
 つまり口腔や舌に炎症性のおできや糜爛あるいは潰瘍を生じて、その炎症症状がきわめて強い、しかしただきわめて強いといってもよくわからないので、その強さの度合いを三焦の火盛んと表現したのであります。三焦の火が盛んであれば、どんな症状を現わすかといいますと、口腔や舌では口舌に瘡を生じます。瘡とは、ここでは化膿性病変や、糜爛あるいは潰瘍を指します。そこでまず、(一)に咽喉腫痛は上焦の実火であります。(二)に燥渇は、口腔や舌が乾燥して口渇があることで、これは下焦の実火に属します。(三)は便閉ずで、便秘ということであり、中焦の実火であります。
 以上をまとめてみますと、口腔や舌に炎症性のおできや糜爛あるいは潰瘍ができて、炎症症状がきわめて強く、咽頭が腫れ上がって狭くなり、また裂けて潰瘍を作って痛み、口腔や咽頭、舌などが、カラカラに乾燥して口渇があり、口臭が強く、小便が赤くなつて便秘を起こしてきたような場合は加減涼膈散の適応症であります。もちろん脈は充実して力があります。
浅田先生の口訣では、「この方は涼膈散(大黄、芒硝、桔梗、連翹、山梔子、黄芩、薄荷、甘草)よりは用いやすく、口舌の病いを治すだけでなく、諸病に活用できる。古人は涼膈散を調胃承気湯(大黄、芒硝、甘草)の変方と考えたが、その方意は、膈熱(横隔膜周辺の炎症)を主として、瀉心湯類(ここでは大黄黄連瀉心湯あるいは三黄瀉心湯など)に近い。故に涼膈散より炎症症状がなお一層激しい状態には三黄瀉心湯加芒硝(大黄、黄連、黄芩、芒硝)を用いるのである」といっております。
なお、処方内容のあとに、「桔梗、防風、菊花、木通、車前子を加えて眼疾を療す」とありますが、前述しましたように、前眼部の炎症、たとえば、急性結膜炎で炎症症状のとくに強い場合、すなわち結膜の発赤が強く、眼脂は粘稠、濃厚といった場合に応用できます。そのほか急性扁桃炎、口角炎、口唇炎などで炎症反応の強いものにもよく、古人の経験では、急性中耳炎にも用いられています。



『漢方方意ノート』 千葉古方漢方研究会著 丸善株式会社刊
238 凉膈散
方意
上焦の熱証による疼痛性の口内炎・発疹等と、気の実証による便秘のあるもの。
《少陽病から陽明病.実証》

方意の巾
A-1上焦の熱証:疼痛性の口内炎を目標に用いる場合.
 -2上焦の熱証:疼痛性の発疹・発熱性疾患の発疹・鼻出血等を目標に用いる場合.
 -3上焦の熱証:発熱・煩躁・痙攣を目標に用いる場合.

自他覚症状の病態分類

上焦の熱証 裏の実証

主証 ◎口内炎
◎強い疼痛
◎尿赤濁
◎便秘

客証  発疹 鼻出血
 口渇 冷水を好む
 口臭 口唇亀裂
 舌腫脹 咽喉腫痛
 顔面紅潮
 結膜充血
 発熱 煩躁
 痙攣 発狂




脈候
やや浮・やや緊・力あり・数

舌候
紅舌乾燥し,白苔・白黄苔・黄苔.

腹候
腹力中等度からやや実.

病位・虚実
上焦の熱証であるために少陽病であるが,裏の実証も存在し陽明にまたがって用いられる。
便秘し脈力もあって実証である。

処方
連翹5.0 桔梗3.0 黄芩3.0 山梔子2.0 薄荷1.0 甘草1.5 芒硝3.0 大黄a.q.(0.5)

構成生薬
黄芩・山梔子は上焦の熱証を治す.連翹・桔梗は清熱・解毒・排膿作用があり、薄荷も発散・消炎作用がある.以上五味は協力して上焦の熱証に対応する.大黄・芒硝は裏の実証をつかさどり便秘を治し,清熱作用も強力である.甘草は諸薬を調和する.


参考
*『勿誤薬室方函口訣』には「古人は本方を陽明・調胃承気湯の変方と考えているが,膈熱(横膈膜上下の熱)を主としており少陽・三黄瀉心湯に近い」と記されている.
*加減涼膈散は本方より大黄・芒硝を去り,黄連・枳殻・当帰・芍薬・地黄を加えたものである.黄連は上焦の熱証に対応し,枳殻は腫脹をやわらげ,当帰・芍薬・地黄は血虚・燥証を去る.このため加減涼膈散証は上焦の熱証は一層強いが,裏の実証は無く,他方血虚・燥証を伴うものである.なお血虚・燥証がさらに顕著となれば清熱補血湯が適応する.

応用
A上焦の熱証+裏の実証
 -1口内炎:難治性の口内炎,歯齦炎,口唇舌の腫痛
        齲歯,歯槽膿漏,口唇ヘルペス,腺窩性扁桃炎
        ベーチェット病
 -2発疹・鼻出血:面疔,頭瘡,皮膚炎,麻疹,眼球打撲
            衂血
 -3煩躁・痙攣:高熱性疾患に伴う精神神経症状